説明

樹脂板、並びにそれを用いた耐擦傷性樹脂板、ディスプレイ用保護板およびタッチパネル用保護板

【課題】耐擦傷性樹脂板の樹脂基板として使用でき、透明性、表面硬度、耐衝撃性および耐色ムラ性に優れる耐擦傷性樹脂板を実現することのできる樹脂板、並びにそれを用いた耐擦傷性樹脂板、ディスプレイ用保護板およびタッチパネル用保護板を提供することである。
【解決手段】耐擦傷性樹脂板における樹脂基板として使用される樹脂板であって、ポリカーボネート系樹脂からなる層(A)の少なくとも一方の面に樹脂組成物からなる層(B)を積層してなり、前記樹脂組成物が、メタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体およびスチレン−ブタジエン系共重合体の合計100重量%を基準に1〜20重量%の割合でスチレン−ブタジエン系共重合体を含有する。この樹脂板を用いた耐擦傷性樹脂板、ディスプレイ用保護板およびタッチパネル用保護板を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐擦傷性樹脂板における樹脂基板として使用される樹脂板、この樹脂板を樹脂基板とする耐擦傷性樹脂板、この耐擦傷性樹脂板からなるディスプレイ用保護板およびタッチパネル用保護板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂基板の少なくとも一方の面に硬化被膜を形成してなる耐擦傷性樹脂板が知られている。耐擦傷性樹脂板としては、ポリカーボネート樹脂層の少なくとも一方の面にアクリル樹脂層を積層した樹脂板を樹脂基板とし、この樹脂基板のアクリル樹脂層の面に硬化被膜を形成したものが一般的である。
【0003】
耐擦傷性樹脂板は、ディスプレイやタッチパネルの保護板として使用されることが多く、それゆえ透明性、表面硬度および耐衝撃性等が求められ、さらに視認性を確保する上で、光の干渉による色ムラ(干渉縞)が生じ難い耐色ムラ性等も要求される。
しかし、従来の耐擦傷性樹脂板は、要求される性能のうち、特に耐色ムラ性が十分ではなかった。
【0004】
この問題を解決するために、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂層の少なくとも一方の面に積層されるアクリル樹脂層をメチルメタクリレートとスチレンの共重合体で構成し、これにより干渉縞の発生を抑制することが記載されている。
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている耐擦傷性樹脂板は、耐衝撃性が十分ではなかった。したがって、透明性、表面硬度、耐衝撃性および耐色ムラ性の全てに優れる耐擦傷性樹脂板の開発が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−44163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、耐擦傷性樹脂板の樹脂基板として使用でき、透明性、表面硬度、耐衝撃性および耐色ムラ性に優れる耐擦傷性樹脂板を実現することのできる樹脂板、並びにそれを用いた耐擦傷性樹脂板、ディスプレイ用保護板およびタッチパネル用保護板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
(1)樹脂基板の少なくとも一方の面に硬化被膜が形成されてなる耐擦傷性樹脂板における前記樹脂基板として使用される樹脂板であって、前記樹脂板が、ポリカーボネート系樹脂からなる層(A)と、該層(A)の少なくとも一方の面に積層され、かつ樹脂組成物からなる層(B)とを有し、前記樹脂組成物が、メタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体と、スチレン−ブタジエン系共重合体とを含有し、前記スチレン−ブタジエン系共重合体の含有量が、メタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体およびスチレン−ブタジエン系共重合体の合計100重量%を基準に1〜20重量%であることを特徴とする樹脂板。
(2)前記層(B)が層(A)の両面に積層されている前記(1)に記載の樹脂板。
(3)前記(1)または(2)に記載の樹脂板の少なくとも一方の面に硬化被膜を形成してなる耐擦傷性樹脂板。
(4)前記(3)に記載の耐擦傷性樹脂板からなるディスプレイ用保護板。
(5)前記(3)に記載の耐擦傷性樹脂板からなるタッチパネル用保護板。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂板によれば、透明性、表面硬度、耐衝撃性および耐色ムラ性の全てに優れる耐擦傷性樹脂板を得ることができるという効果がある。したがって、この樹脂板を使用した耐擦傷性樹脂板をディスプレイやタッチパネルの保護板として用いると、多様な環境下でもこれらの表面を効果的に保護することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂板は、ポリカーボネート系樹脂からなる層(A)と、該層(A)の少なくとも一方の面に積層され、かつ特定の樹脂組成物からなる層(B)とを有している。
【0011】
層(A)を構成するポリカーボネート系樹脂としては、例えば二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法等で反応させることにより得られるもの、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法等で重合させることにより得られるもの、環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0012】
前記二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0013】
中でも、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれる二価フェノールを単独で、または2種以上用いるのが好ましく、特に、ビスフェノールAの単独使用や、ビスフェノールAと、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンと、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれる1種以上の二価フェノールとの併用が好ましい。
【0014】
前記カルボニル化剤としては、例えばホスゲン等のカルボニルハライド、ジフェニルカーボネート等のカーボネートエステル、二価フェノールのジハロホルメート等のハロホルメート等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0015】
一方、層(B)は、メタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体と、スチレン−ブタジエン系共重合体とを含有する樹脂組成物からなる。これらの共重合体のうちメタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体は、耐擦傷性樹脂板に要求される性能のうち、特に透明性、表面硬度および耐色ムラ性に寄与するものである。
【0016】
メタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体としては、特に限定されるものではなく、例えばメタクリル酸アルキルとスチレンとを所望の割合で塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等で重合させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0017】
この共重合体を構成するメタクリル酸アルキルのアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基等の炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルキル基が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、スチレンとしては、置換スチレン類を用いることもでき、該置換スチレン類としては、例えばクロロスチレン、ブロモスチレンのようなハロゲン化スチレン類や、ビニルトルエン、α−メチルスチレンのようなアルキルスチレン類等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0018】
メタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体には、メタクリル酸アルキルおよびスチレン以外に、これらと共重合し得る他の単量体が共重合されていてもよい。この他の単量体としては、例えばメタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアクリル酸エステル類;メタクリル酸、アクリル酸のような不飽和酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0019】
前記スチレン−ブタジエン系共重合体としては、特に限定されるものではなく、例えばスチレンとブタジエンとを所望の割合で塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等で重合させることにより得られるもの等が挙げられる。また、この共重合体を構成するスチレンとしては、置換スチレン類を用いることもでき、該置換スチレン類としては、上述したメタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体で例示したのと同じ置換スチレン類が挙げられる。また、この共重合体には、スチレンおよびブタジエン以外に、これらと共重合し得る他の単量体が共重合されていてもよく、該他の単量体としては、上述したメタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体で例示したのと同じ他の単量体が挙げられる。
【0020】
ここで、上述したメタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体およびスチレン−ブタジエン系共重合体を含有する樹脂組成物は、メタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体およびスチレン−ブタジエン系共重合体の合計100重量%を基準に、前記スチレン−ブタジエン系共重合体を1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%の割合で含有する。これにより、耐擦傷性樹脂板の耐衝撃性を向上させることができる。
【0021】
すなわち、前記樹脂板の少なくとも一方の面に硬化被膜を形成して耐擦傷性樹脂板とし、この耐擦傷性樹脂板をディスプレイやタッチパネルの保護板として用いる場合、前記耐擦傷性樹脂板は、通常、層(B)が表側(視認者側)、層(A)が裏側(ディスプレイ側・タッチパネル側)を向くように設置される。このような配置で使用される耐擦傷性樹脂板において、層(B)を構成する樹脂組成物にスチレン−ブタジエン系共重合体を特定の割合で含有させると、層(B)の耐衝撃性が向上し、その結果、耐擦傷性樹脂板の耐衝撃性が優れたものになる。これに対し、前記スチレン−ブタジエン系共重合体の含有量があまり少ないと、耐衝撃性が向上し難くなり、また、あまり多いと表面硬度が低下し易く、透明性も低下する傾向にある。
【0022】
メタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体およびスチレン−ブタジエン系共重合体は、いずれも市販のものを用いることができる。また、これらの共重合体を含有する樹脂組成物におけるスチレン−ブタジエン系共重合体の含有量は、例えばスチレン−ブタジエン系共重合体が所定の割合で含有されている市販のメタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体に、市販のメタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体を所定の割合で加えることによって調整することができる。
【0023】
スチレン−ブタジエン系共重合体が所定の割合で含有されている市販のメタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体としては、例えば日本エイアンドエル(株)製の“クララスチックST−600”等が挙げられる。また、市販のメタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体としては、例えばいずれも電気化学工業(株)製の“デンカTXポリマーTX−100S”、“デンカアクリスターKT−75”等が挙げられる。
【0024】
なお、層(A),(B)には、それぞれ必要に応じて、例えば光拡散剤、艶消剤、染料、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を1種または2種以上、添加してもよい。
【0025】
樹脂板は、層(A)の一方の面にのみ層(B)が積層されてなる2層構造の他、層(A)の両面に層(B)が積層されてなる3層構造のものであってもよい。樹脂板の耐環境性の点からは、層(A)の両面に層(B)が積層されてなる3層構造の樹脂板が好ましい。3層構造の場合には、両面の層(B)の組成や厚みは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
樹脂板は、層(A)と層(B)とを共押出成形で積層一体化することにより、好適に製造される。この共押出成形は、2基または3基の一軸または二軸の押出機を用いて、層(A)の材料と層(B)の材料とをそれぞれ溶融混練した後、フィードブロックダイやマルチマニホールドダイ等を介して積層することにより行うことができ、積層一体化された溶融積層樹脂体は、例えばロールユニット等を用いて冷却固化すればよい。共押出成形により製造した樹脂板は、粘着剤や接着剤を用いた貼合により製造した樹脂板に比べて、二次成形し易い点で好ましい。
【0027】
樹脂板は、通常、シート状ないしフィルム状であり、その厚さは、通常0.3〜3mm、好ましくは0.3〜2mm、さらに好ましくは0.4〜1.6mmである。該樹脂板において、層(B)の厚さは、通常30〜200μm、好ましくは40〜150μm、より好ましくは50〜100μmである。
【0028】
一方、樹脂板は、樹脂基板の少なくとも一方の面に硬化被膜が形成されてなる耐擦傷性樹脂板における前記樹脂基板として使用されるものである。つまり、耐擦傷性樹脂板は、前記樹脂板の少なくとも一方の面に硬化被膜を形成してなる。耐擦傷性樹脂板をディスプレイやタッチパネルの保護板として使用する場合には、ディスプレイやタッチパネル側を向く面と反対側の面に硬化被膜を形成するのが好ましく、該反対側の面に加えて、ディスプレイやタッチパネル側を向く面にも硬化被膜を形成するのが好ましい。なお、ディスプレイやタッチパネル側を向く面にのみ硬化被膜を形成することもできる。
【0029】
耐擦傷性樹脂板の層構成としては、下記(i)〜(v)が挙げられる。
(i)層(B)/層(A)/硬化被膜
(ii)硬化被膜/層(B)/層(A)/硬化被膜
(iii)硬化被膜/層(B)/層(A)
(iv)硬化被膜/層(B)/層(A)/層(B)
(v)硬化被膜/層(B)/層(A)/層(B)/硬化被膜
なお、樹脂板の両面に硬化被膜を形成する場合には、両面の硬化被膜の組成や厚みは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0030】
前記硬化被膜は、硬化性塗料組成物を硬化させて形成されている。該硬化性塗料組成物は、耐擦傷性をもたらす硬化性化合物を必須成分とし、必要に応じて、例えば硬化触媒、導電性粒子、溶媒、レベリング剤、安定化剤、酸化防止剤、着色剤等を含有するものである。
【0031】
前記硬化性化合物としては、例えばアクリレート化合物、ウレタンアクリレート化合物、エポキシアクリレート化合物、カルボキシル基変性エポキシアクリレート化合物、ポリエステルアクリレート化合物、共重合系アクリレート化合物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエーテルエポキシ樹脂、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。中でも、硬化被膜の耐擦傷性の点から、多官能アクリレート化合物、多官能ウレタンアクリレート化合物、多官能エポキシアクリレート化合物等のラジカル重合系の硬化性化合物や、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等の熱重合系の硬化性化合物等が好ましく用いられる。これらの硬化性化合物は、例えば電子線、放射線、紫外線等のエネルギー線を照射することにより硬化するものであるか、加熱により硬化するものであるのがよい。これらの硬化性化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
特に好ましい硬化性化合物は、分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。ここで、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基をいい、その他、本明細書において、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等というときの「(メタ)」も同様の意味である。
【0033】
分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する前記化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ−またはテトラ−(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサ−(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ−、ペンタ−、ヘキサ−またはヘプタ−(メタ)アクリレートのような、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート;分子中にイソシアナト基を少なくとも2個有する化合物に、水酸基を有する(メタ)アクリレートを、イソシアナト基に対して水酸基が等モル以上となる割合で反応させて得られ、分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数が3個以上となったウレタン(メタ)アクリレート〔例えば、ジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートの反応により、6官能のウレタン(メタ)アクリレートが得られる〕;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、ここには単量体を例示したが、これら単量体のままで用いてもよいし、例えば2量体、3量体等のオリゴマーの形になったものを用いてもよい。また、単量体とオリゴマーを併用してもよい。これらの(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独か、または2種以上を混合して用いられる。
【0034】
分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する前記化合物は、市販のものを用いることができ、具体例としては、例えばいずれも新中村化学工業(株)製の“NKハ−ド M101”(ウレタンアクリレート系)、“NKエステル A−TMM−3L”(ペンタエリスリトールトリアクリレート)、“NKエステル A−TMMT”(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、“NKエステル A−9530”(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)および“NKエステル A−DPH”(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、日本化薬(株)製の“KAYARAD DPCA”(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、サンノプコ(株)製の“ノプコキュア 200”シリーズ、大日本インキ化学工業(株)製の“ユニディック”シリーズ等が挙げられる。
【0035】
なお、硬化性化合物として分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を用いる場合には、必要に応じて、他の硬化性化合物、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートのような、分子中に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を併用してもよいが、その使用量は、分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物100重量部に対して、通常20重量部までである。
【0036】
前記硬化性塗料組成物を紫外線で硬化させる場合には、硬化触媒として光重合開始剤を使用するのがよい。該光重合開始剤としては、例えばベンジル、ベンゾフェノンやその誘導体、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、ヒドロキシケトン類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。光重合開始剤の使用量は、硬化性化合物100重量部に対して、通常0.1〜5重量部である。
【0037】
前記光重合開始剤は、市販のものを用いることができ、具体例としては、例えばいずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の“IRGACURE 651”、“IRGACURE 184”、“IRGACURE 500”、“IRGACURE 1000”、“IRGACURE 2959”、“DAROCUR 1173”、“IRGACURE 907”、“IRGACURE 369”、“IRGACURE 1700”、“IRGACURE 1800”、“IRGACURE 819”、“IRGACURE 784”等の、IRGACURE(イルガキュア)シリーズおよびDAROCUR(ダロキュア)シリーズ、いずれも日本化薬(株)製の“KAYACURE ITX”、“KAYACURE DETX−S”、“KAYACURE BP−100”、“KAYACUREBMS”、“KAYACURE 2−EAQ”等の、KAYACURE(カヤキュア)シリーズ等が挙げられる。
【0038】
前記硬化性塗料組成物に導電性粒子を含有させることにより、硬化被膜に帯電防止性を付与することができる。前記導電性粒子としては、例えばアンチモン−スズ複合酸化物、リンを含有する酸化錫、5酸化アンチモン等の酸化アンチモン、アンチモン−亜鉛複合酸化物、酸化チタン、インジウム−錫複合酸化物(ITO)のような無機粒子が好ましく用いられる。前記導電性粒子は、固形分濃度が10〜30重量%程度のゾルの形態で使用することもできる。
【0039】
前記導電性粒子の粒子径は、通常0.5μm以下であり、硬化被膜の帯電防止性や透明性の点からは、平均粒子径で表して、好ましくは0.001μm以上であり、また好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。導電性粒子の平均粒子径が小さい程、耐擦傷性樹脂板の曇度を低くすることができ、透明性を高めることができる。
【0040】
前記導電性粒子の使用量は、硬化性化合物100重量部に対して、通常2〜50重量部、好ましくは3〜20重量部である。導電性粒子の使用量が多い程、硬化被膜の帯電防止性が向上する傾向にあるが、導電性粒子の使用量があまり多いと、硬化被膜の透明性が低下するので好ましくない。
【0041】
前記導電性粒子は、例えば気相分解法、プラズマ蒸発法、アルコキシド分解法、共沈法、水熱法等により製造することができる。また、導電性粒子の表面は、例えばノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等で表面処理されていてもよい。
【0042】
前記硬化性塗料組成物には、その粘度調整等を目的として、溶媒を含有させるのがよく、特に導電性粒子が含まれる場合には、その分散のために溶媒を含有させるのがよい。導電粒子および溶媒を含有する硬化性塗料組成物を調製する場合には、例えば導電性粒子および溶媒を混合して、溶媒に導電性粒子を分散させた後、この分散液を硬化性化合物と混合してもよいし、硬化性化合物と溶媒を混合した後、この混合液に導電性粒子を分散させてもよい。
【0043】
前記溶媒は、硬化性化合物を溶解することができ、かつ塗布後に容易に揮発し得るものであるのがよく、また塗料成分として導電性粒子を用いる場合には、それを分散させることができるものであるのがよい。このような溶媒としては、例えばジアセトンアルコール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールのようなケトン類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、水等が挙げられる。溶媒の使用量は、硬化性化合物の性状等に合わせて、適宜調整すればよい。
【0044】
前記硬化性塗料組成物にレベリング剤を含有させる場合には、シリコーンオイルが好ましく用いられ、その例としては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、シラノール基含有シリコーンオイル、アルコキシ基含有シリコーンオイル、フェノール基含有シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらのレベリング剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。レベリング剤の使用量は、硬化性化合物100重量部に対して、通常0.01〜5重量部である。
【0045】
前記レベリング剤は、市販のものを用いることができ、具体例としては、例えばいずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の“SH200−100cs”、“SH28PA”、“SH29PA”、“SH30PA”、“ST83PA”、“ST80PA”、“ST97PA”および“ST86PA”、いずれもビック・ケミー・ジャパン(株)製の“BYK−302”、“BYK−307”、“BYK−320”および“BYK−330”等が挙げられる。
【0046】
こうして得られる硬化性塗料組成物を、前記樹脂板の少なくとも一方の面に塗布して、硬化性塗膜とし、次いで硬化させて、硬化被膜とすることにより、耐擦傷性樹脂板が得られる。硬化性塗料の塗布は、例えばバーコート法、マイクログラビアコート法、ロールコート法、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、ダイコート法、スプレーコート法等のコート法により行えばよい。硬化性塗膜の硬化は、硬化性塗料組成物の種類に応じて、エネルギー線の照射や加熱等により行えばよい。
【0047】
エネルギー線の照射により硬化させる場合のエネルギー線としては、例えば紫外線、電子線、放射線等が挙げられ、その強度や照射時間等の条件は、硬化性塗料組成物の種類に応じて適宜選択される。また、加熱により硬化させる場合において、その温度や時間等の条件は、硬化性塗料組成物の種類に応じて適宜選択されるが、加熱温度は、樹脂基板が変形を起こさないよう、一般的には100℃以下であるのが好ましい。硬化性塗料組成物が溶媒を含有する場合には、塗布後、溶媒を揮発させた後に硬化性塗膜を硬化させてもよいし、溶媒の揮発と硬化性塗膜の硬化とを同時に行ってもよい。
【0048】
前記硬化被膜の厚みは、好ましくは0.5〜50μmであり、より好ましくは1〜20μmである。硬化被膜の厚みが小さい程、亀裂が生じ難くなる傾向にあるが、あまり小さいと、耐擦傷性が不十分になり好ましくない。
【0049】
得られた耐擦傷性樹脂板には、必要に応じて、その表面に、コート法やスパッタ法、真空蒸着法等により反射防止処理を施してもよい。また、別途作製した反射防止性のシートを耐擦傷性樹脂板の片面または両面に貼合して、反射防止効果を付与してもよい。
【0050】
かくして得られる耐擦傷性樹脂板は、透明性、表面硬度、耐衝撃性および耐色ムラ性に優れるため、各種用途に用いることができるが、中でもディスプレイ保護板およびタッチパネル保護板として好適に用いられる。
【0051】
保護されるディスプレイの種類としては、例えばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ等が挙げられる。また、保護されるディスプレイの用途としては、例えばテレビやコンピューターのモニター、携帯電話やPHS(Personal Handy-phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯型情報端末の表示窓、デジタルカメラやハンディ型ビデオカメラのファインダー部、携帯型ゲーム機の表示窓等が挙げられる。
【0052】
保護されるタッチパネルの用途としては、例えばカーナビゲーションシステム、携帯型情報端末、銀行のATM、産業機械等の操作パネル、パーソナルコンピューターの画面、携帯型ゲーム機等のタッチパネル等が挙げられる。
【0053】
本発明の耐擦傷性樹脂板から、ディスプレイ保護板およびタッチパネル保護板を作製するには、まず必要に応じて耐擦傷性樹脂板に印刷、穴あけ等の加工を行い、必要な大きさに切断処理すればよい。しかるのちに、ディスプレイまたはタッチパネルにセットすれば、ディスプレイおよびタッチパネルを効果的に保護することができる。その際、積層板の一方の面に硬化被膜が形成されている場合には、硬化被膜が形成されている面が表側(視認者側)となるように設置するのがよい。また、層(A)の一方の面に層(B)が積層されてなる積層板の両方の面に硬化被膜が形成されている場合には、層(B)が表側(視認者側)となるように設置するのがよい。
【0054】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特記ない限り重量基準である。
【0055】
実施例および比較例において、樹脂板の作製に使用した樹脂は、以下の4種である。
・樹脂1:住友ダウ(株)製の芳香族ポリカーボネート樹脂「カリバー301−10」を用いた。
・樹脂2:日本エイアンドエル(株)製のメタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂「クララスチックST−600」を用いた。
・樹脂3:電気化学工業(株)製のメタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂「デンカTXポリマーTX−100S」を用いた。
・樹脂4:電気化学工業(株)製のメタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂「デンカアクリスターKT−75」を用いた。
【0056】
上述した樹脂1〜4のうち樹脂2は、スチレン−ブタジエン共重合体を、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体およびスチレン−ブタジエン共重合体の合計100%を基準に21%の割合で含有するものである。なお、この含有量は、次のようにして算出した値である。
【0057】
まず、樹脂2をテトラヒドロフラン(THF)に加え、不溶分を分別した。この不溶分は、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析によって組成分析した結果、スチレン−ブタジエン共重合体であった。次いで、この不溶分を乾燥させた後、その重量を式:(不溶分の重量/樹脂2の重量)×100に当てはめ、スチレン−ブタジエン共重合体の含有量を算出した。
【0058】
実施例および比較例において、耐擦傷性樹脂板の作製に使用した硬化性塗料は、以下の通りである。
・硬化性塗料:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔新中村化学工業(株)製の「NKエステル A−DPH」〕25部、光重合開始剤〔チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製の「IRGACURE 184」〕2部、5酸化アンチモン微粒子ゾル〔触媒化成工業(株)製の「ELCOM V−4514」;固形分濃度20%、平均粒子径0.1μm未満〕10部、1−メトキシ−2−プロパノール24部、イソブチルアルコール24部、およびジアセトンアルコール15部を混合して調製した硬化性塗料を用いた。
【0059】
[実施例1,2および比較例1,2]
〔樹脂板の作製〕
まず、層(B)の形成材料として、上述した樹脂2〜4を表1に示す組み合わせと割合で混合し、樹脂組成物を得た。次いで、層(A)の形成材料である樹脂1を直径65mmφの東芝機械(株)製の一軸押出機で、層(B)の形成材料である樹脂組成物を直径45mmφの日立造船(株)製の一軸押出機で、それぞれ溶融させた。
【0060】
次いで、これらを設定温度260℃のマルチマニホールド型ダイスを介して積層して押出した。そして、得られるフィルム状物を、一対の表面が平滑な金属製のロールの間に挟み込んで成形・冷却し、厚さ360μmの層(A)の両面に、各々の厚さが70μmである層(B)が積層されてなる、総厚さ500μmの樹脂板を得た。
【0061】
〔耐擦傷性樹脂板の作製〕
まず、得られた樹脂板を100mm×80mmの大きさに切断し、ディッピング法にて樹脂板の両面に硬化性塗料の塗膜を形成した。次いで、室温で1分間乾燥し、さらに50℃の熱風オーブン内で3分間乾燥して溶媒を揮発させた後、この塗膜に、120Wの高圧水銀ランプを用いて、0.5J/cm2の紫外線を照射して硬化させ、樹脂板の両面に各々の厚さが3.5μmである硬化被膜が形成された耐擦傷性樹脂板を得た。
【0062】
〔評価〕
得られた樹脂板および耐擦傷性樹脂板について、全光線透過率、曇度、鉛筆硬度、落球強度、および耐色ムラ性を評価した。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表1に示す。
【0063】
<全光線透過率>
JIS K7361−1に従い、樹脂板の全光線透過率(Tt)を測定した。
【0064】
<曇度>
JIS K7136に従い、樹脂板の曇度(Haze)を測定した。
【0065】
<鉛筆硬度>
JIS K5600に従い、樹脂板の鉛筆硬度を測定した。
【0066】
<落球強度>
樹脂板の落球強度を、次のようにして評価した。まず、樹脂板を85mm×65mmの大きさに切断し、試験片を得た。次いで、外形寸法85mm×65mm、内形寸法47mm×35mm、厚さ1mmの金属製型枠を落球面側に、外形寸法85mm×65mm、内形寸法47mm×35mm、厚さ2mmの金属製型枠を反落球面側に配置し、これらの金属製型枠で試験片を挟み、その下に85mm×65mmで厚さ1mmのアクリル板を、さらにその下に85mm×65mmの金属板を配置して、落球面側が上方を向くように試験片を固定した。
【0067】
そして、重量36gで直径20mmφの金属球を、50cmの高さから試験片の中央に落下させた。このとき、試験片が割れなかったものを○、試験片が割れたものを×として評価した。
【0068】
<耐色ムラ性>
耐擦傷性樹脂板における色ムラの有無を、目視観察した。このとき、色ムラが目立たなかったものを○、色ムラが目立ったものを×として評価した。
【0069】
【表1】

【0070】
表1から明らかなように、実施例1,2は、透明性(全光線透過率・曇度)、表面硬度(鉛筆硬度)、耐衝撃性(落球強度)、および耐色ムラ性の全てに優れているのがわかる。これに対し、スチレン−ブタジエン共重合体を含有していない比較例1は、耐衝撃性(落球強度)に劣る結果を示した。また、スチレン−ブタジエン共重合体の含有量が20重量%よりも多い比較例2は、表面硬度(鉛筆硬度)が劣り、透明性(全光線透過率・曇度)についても、実施例1,2より劣る結果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板の少なくとも一方の面に硬化被膜が形成されてなる耐擦傷性樹脂板における前記樹脂基板として使用される樹脂板であって、
前記樹脂板が、
ポリカーボネート系樹脂からなる層(A)と、
該層(A)の少なくとも一方の面に積層され、かつ樹脂組成物からなる層(B)とを有し、
前記樹脂組成物が、
メタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体と、スチレン−ブタジエン系共重合体とを含有し、
前記スチレン−ブタジエン系共重合体の含有量が、メタクリル酸アルキル−スチレン系共重合体およびスチレン−ブタジエン系共重合体の合計100重量%を基準に1〜20重量%であることを特徴とする樹脂板。
【請求項2】
前記層(B)が層(A)の両面に積層されている請求項1に記載の樹脂板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂板の少なくとも一方の面に硬化被膜を形成してなる耐擦傷性樹脂板。
【請求項4】
請求項3に記載の耐擦傷性樹脂板からなるディスプレイ用保護板。
【請求項5】
請求項3に記載の耐擦傷性樹脂板からなるタッチパネル用保護板。

【公開番号】特開2012−176495(P2012−176495A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39161(P2011−39161)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】