説明

樹脂架橋剤

【課題】カルボジイミド化合物を水性樹脂に架橋剤として添加した場合に、耐スカッフ性及び耐薬品性を向上させることができる樹脂架橋剤を提供する。
【解決手段】カルボジイミド基を少なくとも1つ以上有するカルボジイミド化合物の末端が、ジアルキルアミノアルコール、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、及び(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物(親水性有機化合物I)と、該親水性有機化合物Iより親水性が高く、かつ少なくとも一つの水酸基を有する化合物とにより封止されてなるカルボジイミド化合物、並びに水和性液状化合物からなる、樹脂架橋剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂架橋剤に関し、より詳しくは、耐スカッフ性及び耐薬品性を向上させることができる樹脂架橋剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性または水分散性である水性樹脂は、塗料、インキ、繊維処理剤、接着剤、コーティング剤など、多くの分野で使用されている。
この水溶性または水分散性の水性塗料は、水性媒体を用いることから、環境汚染や火災などの心配がないうえに、刷毛、ローラ、スプレーガンなどの塗装機器の掃除や、塗料汚染の後始末なども水で簡単にできるので、近年、特にその需要が伸びてきている。
水性樹脂には、樹脂自体に水溶性または水分散性を付与するために、一般にカルボキシル基が導入されている。このため、塗膜中に残存するカルボキシル基が加水分解を誘引し、塗膜の強度、耐久性、美観を損ねることがあった。
【0003】
このような水性樹脂の塗膜の強度、耐水性、耐久性などの諸物性を向上させる手段として、上述したカルボキシル基などと反応して架橋構造を形成し得る水性メラミン樹脂、アジリジン化合物、水分散型イソシアネート化合物などの外部架橋剤を併用する方法が、一般に採用されている。
しかし、これらの架橋剤は、毒性、反応性などの問題から使用しにくい場合がある。すなわち、上記架橋剤による架橋反応は、カルボキシル基をつぶしながら進行するものであるため、カルボキシル基の減少により、塗膜の強度、耐水性、耐久性などを向上させることはできるが、未反応の架橋剤が残存すると塗膜に毒性が生じる場合がある。一方、塗膜中に未反応のカルボキシル基が残存すれば、塗膜の耐水性や耐久性が低下する。このように、架橋剤および水性樹脂中のカルボキシル基が100%反応しない場合、様々な問題が生じることになる。
【0004】
毒性の問題を解決するため、カルボジイミド化合物が最近注目を集めている。例えば、特許文献1には、反応性および保存性が良好であって、水性樹脂用架橋剤として取り扱いを容易にした水性ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドが開示されている。
この水性ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドは、毒性がなく、ポットライフも十分であるといった特徴を有している。
また、特許文献2には、耐水性、耐溶剤性、密着性を向上させることができ、カルボジイミド化合物を水性化する際に、水性ウレタン系樹脂や水性アクリル系樹脂などが持つ構造に近いグリコール酸メチル・乳酸メチルを末端に導入した水溶性または水分散性のカルボジイミド化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−7462号公報
【特許文献2】特開2009−235278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら本発明者らは、上記カルボジイミド化合物は、安全性が高く取り扱いが容易である半面、タイルやフローリングなどの床用コート剤として使用した場合、耐水性、密着性は得られるものの、特に室温で水性樹脂を硬化させた場合の耐スカッフ性及び耐薬品性を十分に満たすことができないという問題を有することを発見した。
従って本発明は、カルボジイミド化合物を水性樹脂に架橋剤として添加した場合に、耐スカッフ性及び耐薬品性を向上させることができる樹脂架橋剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の親水性有機化合物と、該特定の親水性有機化合物より親水性の高い有機化合物との混合物で、イソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物のイソシアネート末端を封止したカルボジイミド化合物と、水和性液状化合物を組み合わせてなる樹脂架橋剤により、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1.カルボジイミド基を少なくとも1つ以上有するカルボジイミド化合物の末端が、ジアルキルアミノアルコール、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、及び(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物(親水性有機化合物I)と、該親水性有機化合物Iより親水性が高く、かつ少なくとも一つの水酸基を有する化合物とにより封止されてなるカルボジイミド化合物、並びに水和性液状化合物からなる、樹脂架橋剤、
2.カルボジイミド化合物が、一般式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、nは1〜15の整数を表し、L1は、炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜13の2価の脂環族炭化水素基、炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜12の2価の複素環基であり、複数のL1は同一であっても異なっていてもよく、R1は、ジアルキルアミノアルコール、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、及び(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物(親水性有機化合物I)と、該親水性有機化合物Iより親水性が高く、かつ少なくとも一つの水酸基を有する化合物との混合物の残基を表す。)
で表されるカルボジイミド化合物である、上記1に記載の樹脂架橋剤、
3.ジアルキルアミノアルコール、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、及び(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物(親水性有機化合物I)と、該親水性有機化合物Iより親水性が高く、かつ少なくとも一つの水酸基を有する化合物との比率(モル比)が9:1〜1:9である、上記1又は2に記載の樹脂架橋剤、
4.R1が、一般式(A):
(R22−N−CH2−CHR3−OH ・・・(A)
(式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)
で表されるジアルキルアミノアルコール、
一般式(B):
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R4は炭素数1〜3のアルキル基であり、R5は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
で表されるヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、
及び一般式(C):
6−O−(CH2−CHR7−O)m−H ・・・(C)
(式中、R6は炭素数1〜4のアルキル基、R7は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、mは1〜3の整数である。)
で表される(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物(親水性有機化合物I−a)と、
該親水性有機化合物I−aより親水性が高い化合物であって、かつ一般式(D):
8−O−(CH2−CHR9−O)m−H ・・・(D)
(式中、R8は炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基、R9は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、mは4〜30の整数である。)
で表されるアルコキシ基またはフェノキシ基で末端封鎖されたポリアルキレンオキサイドとの混合物の残基である、上記1〜3のいずれかに記載の樹脂架橋剤、
5.水和性液状化合物が、一般式(2):
10O−(CH2−CHR11−O)m−R12 ・・・(2)
(式中、R10およびR12は炭素数1〜4のアルキル基若しくはアシル基、水素原子またはフェニル基、R11は水素原子またはメチル基であり、mは1〜3の整数である。)
で表される水和性液状化合物を含む、上記1〜4のいずれかに記載の樹脂架橋剤、
6.水和性液状化合物は、炭素数3〜10のモノアルコールである、上記1〜4のいずれかに記載の樹脂架橋剤、及び
7.L1はジシクロヘキシルメタン2価の基又はテトラメチルキシリレン基である、上記1〜6のいずれかに記載の樹脂架橋剤
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、カルボジイミド化合物を水性樹脂に架橋剤として添加した場合に、耐スカッフ性及び耐薬品性を向上させることができる樹脂架橋剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明の樹脂架橋剤は、カルボジイミド基を少なくとも1つ以上有するカルボジイミド化合物の末端が、ジアルキルアミノアルコール、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、及び(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物(親水性有機化合物I)と、該親水性有機化合物Iより親水性が高く、かつ少なくとも一つの水酸基を有する化合物とにより封止されてなるカルボジイミド化合物、並びに水和性液状化合物からなる。
なお、本明細書において、ジアルキルアミノアルコール、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、及び(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物のことを、「親水性有機化合物I」ということがある。
【0015】
本発明に用いるカルボジイミド化合物は、親水性有機化合物Iと、該親水性有機化合物Iより親水性の高い有機化合物との混合物でカルボジイミド化合物のイソシアネート末端を封止したカルボジイミド化合であって、下記一般式(1)で表されるカルボジイミド化合物が好ましい。
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、nは1〜15の整数を表し、L1は、炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜13の2価の脂環族炭化水素基、炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜12の2価の複素環基であり、複数のL1は同一であっても異なっていてもよく、R1は、ジアルキルアミノアルコール、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、及び(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物と、該ジアルキルアミノアルコール、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、及び(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物より親水性が高く、かつ少なくとも一つの水酸基を有する化合物との混合物の残基を表す。)
【0018】
上記一般式(1)におけるnは、1〜15の整数であり、好ましくは2〜10の整数である。nが上記範囲内であれば、ポリカルボジイミド化合物は、水性塗料組成物に対して可溶性又は水分散性を有する。
上記L1で表される炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜13の2価の脂環族炭化水素基、炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基及び炭素数3〜12の2価の複素環基は置換基を有していてもよく、置換基として好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基、芳香族複素環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基である。
【0019】
上記一般式(1)のL1における炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基、2−フェニルイソプロピル基、ベンジル基、α−フェノキシベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、α,α−メチルフェニルベンジル基、α,α−ジトリフルオロメチルベンジル基、α−ベンジルオキシベンジル基等の2価の基が挙げられる。
上記一般式(1)のL1における炭素数3〜13の2価の脂環族炭化水素基としては、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、トリシクロヘプチル基、アダマンチル基等の2価基やジシクロヘキシルメタンの2価基が挙げられ、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基又はアダマンチル基の2価基或いはジシクロヘキシルメタンの2価基が好ましい。
上記一般式(1)のL1における炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基としては、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントラニレン基、ペリレニレン基、ピレニレン基等が挙げられ、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基が好ましい。
上記一般式(1)のL1における炭素数3〜12の2価の複素環基としては、具体的には、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、オキサジアゾリン、インドリン、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノン、ピラロジン、イミダゾリジン、ピペリジン等が挙げられる。
上記一般式(1)のL1としては、上記に例示される基を単一で用いてもよいし、複数の基を組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(1)のL1としては、ジシクロヘキシルメタンの2価の基又はテトラメチルキシリレン基がより好ましい。
【0020】
(親水性有機化合物I)
本発明において、親水性有機化合物Iとして、ジアルキルアミノアルコール、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、及び(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物を用いる。
ジアルキルアミノアルコールは、具体的には下記一般式(A)で表されるジアルキルアミノアルコールである。
(R22−N−CH2−CHR3−OH ・・・(A)
(式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)
さらに具体的には、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、3−ジエチルアミノ−1−プロパノール、1−ジエチルアミノ−2−プロパノール、ジエチルイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン等を挙げることができる。中でも、ジエチルイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミンが好ましく、ジエチルイソプロパノールアミンがより好ましい。
また、上記一般式(A)で表される親水性有機化合物Aとしては、1種単独でも、または2種以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
ヒドロキシカルボン酸アルキルエステルは、具体的には一般式(B)で表されるヒドロキシカルボン酸アルキルエステルである。
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、R4は炭素数1〜3のアルキル基であり、R5は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
上記一般式(B)のR4及びR5における炭素数1〜3のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
また、上記一般式(B)で表される親水性有機化合物Bとしては、それぞれ、1種単独でも、2種以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(B)で表される親水性有機化合物Bとしては、グリコール酸メチル及び乳酸メチルが好ましい。
【0023】
(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルは、具体的には下記一般式(C)で表される(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルである。
6−O−(CH2−CHR7−O)m−H ・・・(C)
(式中、R6は炭素数1〜4のアルキル基、R7は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、mは1〜3の整数である。)
上記一般式(C)のR6の炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が挙げられる。
また、上記一般式(C)のR7の水素原子または炭素数1〜4のアルキル基具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が挙げられる。
また、上記一般式(C)で表される親水性有機化合物Cとしては、1種単独でも、または2種以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(親水性有機化合物Iより親水性の高い有機化合物)
本発明に用いる親水性有機化合物Iより親水性の高い有機化合物は、上記親水性有機化合物Iより親水性が高く、かつ少なくとも一つの水酸基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、前記親水性有機化合物A〜Cから選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「親水性有機化合物I−a」ともいう。)より親水性の高い化合物であり、下記一般式(D)で表されるアルコキシ基またはフェノキシ基で末端封鎖されたポリアルキレンオキサイドを例示することができる。
8−O−(CH2−CHR9−O)m−H ・・・(D)
(式中、R8は炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基、R9は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、mは4〜30の整数である。)
具体的にはポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノフェニルエーテル等を挙げることができ、特にポリエチレングリコールモノメチルエーテルが好適である。
上記一般式(D)のR8及びR9における炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が挙げられる。
また、上記一般式(D)で表される親水性有機化合物Dとしては、1種単独でも、または2種以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明に用いるカルボジイミド化合物は、例えば、有機ジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応により、イソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物を合成した後、ジアルキルアミノアルコール、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、及び(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物と、親水性の高い有機化合物の混合物とを反応させることで得ることができる。
【0026】
イソシアネート末端カルボジイミド化合物の原料となる有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネート化合物、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物、複素環ジイソシアネート化合物およびこれらの混合物が挙げられる。具体的には、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(2,6)−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどが挙げられる。
【0027】
有機ジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応は、カルボジイミド化触媒の存在下で進行する。この触媒としては、例えば、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドや、これらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシドなどを使用することができ、中でも反応性の面から、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドが好適である。なお、上記触媒の使用量は触媒量とすることができる。
【0028】
有機ジイソシアネート化合物の縮合反応における反応温度は、通常80〜200℃程度である。
また、イソシアネート末端カルボジイミド化合物に、好ましくは、親水性有機化合物A及び/又は親水性有機化合物Bと親水性有機化合物Cとの混合物を反応させて、親水性セグメントを付加する際の反応温度は、通常60〜180℃、好ましくは100〜160℃である。
【0029】
以上のようにして得られるカルボジイミド化合物の中でも、本発明の樹脂架橋剤としては、反応性や保存安定性の点から、脂肪族系カルボジイミド化合物を用いることが好ましく、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド及びテトラメチルキシリレンカルボジイミドを用いることがより好ましく、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドを用いることが特に好ましい。このジシクロヘキシルメタンカルボジイミドは、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを、上述したカルボジイミド化触媒の存在下に縮合させて、イソシアネート基末端ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドを得、これを上述した好ましくは、親水性有機化合物A〜Cから選ばれる少なくとも1種の化合物(親水性有機化合物I−a)と親水性有機化合物Dとの混合物と反応させ、末端イソシアネート基を親水性セグメントで封止して得ることができる。
【0030】
上記一般式(A)で表される親水性有機化合物Aは、イソシアネート末端カルボジイミド化合物のイソシアネート基と反応し、下記一般式(a)で表される基を形成し、上記一般式(B)で表される親水性有機化合物Bは、イソシアネート末端カルボジイミド化合物のイソシアネート基と反応し、下記一般式(b)で表される基を形成し、上記一般式(C)で表される親水性有機化合物Cは、イソシアネート末端カルボジイミド化合物のイソシアネート基と反応し、下記一般式(c)で表される基を形成し、上記一般式(D)で表される親水性有機化合物Dは、イソシアネート末端カルボジイミド化合物のイソシアネート基と反応し、下記一般式(d)で表される基を形成する。
【0031】
(R22−N−CH2−CHR3−O− ・・・(a)
(式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)
【0032】
【化5】

【0033】
(式中、R4は炭素数1〜3のアルキル基であり、R5は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
6−O−(CH2−CHR7−O)m− ・・・(c)
(式中、R6は炭素数1〜4のアルキル基、R7は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、mは1〜3の整数である。)
8−O−(CH2−CHR9−O)m− ・・・(d)
(式中、R8は炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基、R9は水素原子またはメチル基であり、mは4〜30の整数である。)
【0034】
親水性有機化合物Iと、該親水性有機化合物Iより親水性の高い有機化合物との混合物におけるそれぞれの比率(モル比)は、好ましくは9:1〜1:9、より好ましくは3:1〜1:3である。この比率であると水溶性または水分散性である水性樹脂に添加した際、十分な親和性を示し、かつ目的の性能を得る事が出来る。
【0035】
本発明に用いる水和性液状化合物としては、下記一般式(2)で表される水和性液状化合物、または炭素数3〜10のモノアルコール等が挙げられる。
10O−(CH2−CHR11−O)m−R12 ・・・(2)
(式中、R10およびR12は炭素数1〜4のアルキル基若しくはアシル基、水素原子またはフェニル基、R11は水素原子またはメチル基であり、mは1〜3の整数である。)
一般式(2)のR10およびR12における炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が挙げられ、炭素数1〜4のアシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基などが挙げられる。
【0036】
前記水和性液状化合物としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のポリアルキレングリコールジアセテート類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノフェニルエーテル類;プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール等のモノアルコール類などが挙げられる。
さらに、本発明に明細書に用いる水和性液状化合物としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン(NEP)等のN−置換アミド類;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートなども挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
本発明の樹脂架橋剤は本発明の効果を損なわない範囲で、溶媒として水和性液状化合物のほかに予め水と混合して使用する事も構わない。その際、水和性液状化合物と水との混合比率は、好ましくは1:9〜10:0、より好ましくは2:8〜9:1の質量比率で使用することができる。すなわち、上記記載の水和性液状化合物に予め上記カルボジイミド化合物を希釈し、樹脂に添加することにより耐スカッフ性及び耐薬品性が向上する。
本発明の樹脂架橋剤において、カルボジイミド化合物と溶媒(水和性液状化合物及び必要に応じて用いる水の総和)との比率(固形分濃度)は、架橋剤としての性能を有するとともに取り扱い性に影響の無い範囲で適宜選択することができるが、例えば10〜80質量%程度を例示することができる。固形分濃度が10質量%以上では架橋性能を得るために水性樹脂に対して多量に架橋剤を添加する必要がなく、80質量%以下であれば溶液粘度が高くなることなく、取扱い性を著しく向上させることができる。以上の観点から、上記比率(固形分濃度)は、20〜70質量%が好ましい。
【0038】
本発明の樹脂架橋剤は、架橋型水性樹脂に添加して水性塗料組成物とすることができる。
架橋型水性樹脂としては、水性アクリル系樹脂、水性ポリエステル系樹脂、水性ポリウレタン系樹脂、水性エポキシ系樹脂、水性アミノ系樹脂等が挙げられる。
上記水性塗料組成物において、各成分の配合割合は任意であるが、得られる塗膜の物性および経済性のバランスなどを考慮すると、水性樹脂100質量部に対し、本発明の樹脂架橋剤を、0.5〜15質量部の割合で用いることが好ましく、1〜10質量部の割合で用いることがより好ましい。
また、水性樹脂を含む水溶液または水分散液の樹脂濃度に特に制限はないが、得られる水性塗料組成物の塗工性および塗工層の乾燥性などの点から、15〜50質量%程度が好ましく、20〜40質量%程度がより好ましい。
【0039】
上記水性塗料組成物には、用途などに応じ、必要であれば各種添加成分、例えば、顔料、充填剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを、適宜配合することができる。
【0040】
上記水性塗料組成物を、所定の基材上に塗布することで塗工層を形成して塗膜を得ることができる。
この場合、塗布法としては従来公知の方法を適宜用いることができ、例えば、刷毛塗り、タンポ塗り、吹付塗り、ホットスプレー塗り、エアレススプレー塗り、ローラ塗り、カーテンフロー塗り、流し塗り、浸し塗り、ナイフエッジコートなどを用いることができる。
塗工層を形成後、硬化を促進するために硬化処理を行うこともできる。硬化処理は、通常、加熱処理して塗膜の架橋反応を促進させる方法が用いられる。加熱処理方法に特に制限はなく、例えば電気加熱炉、熱風加熱炉、赤外線加熱炉、高周波加熱炉などを用いる方法を採用することができる。
【実施例】
【0041】
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下文中の「%」は、特に断りの無い限り質量基準である。
【0042】
実施例での各分析は以下の方法にて行った。
(1)赤外吸収(IR)スペクトル
FTIR−8200PC(島津製作所製)を使用した。
(2)GPC
RI検出器:RID−6A(島津製作所製)
カラム:KF−806、KF−804L、KF−804L
展開溶媒:THF 1ml/min.
ポリスチレン換算により算出した。
(3)NCO%
平沼自動滴定装置COM−900(平沼産業(株)製)、タイトステーション K−900(平沼産業(株)製)を使用し、既知濃度のジブチルアミン/トルエン溶液を加え、塩酸水溶液で電位差滴定により算出した。
【0043】
合成例1(イソシアネート末端カルボジイミドの重合)
4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート 1572gとカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)7.86gとを、還流管および撹拌機付き3000ml反応容器に入れ、窒素気流下185℃で10時間撹拌し、イソシアネート末端4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド(重合度=3)を得た。赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。NCO%を測定した結果9.16%であった。
【0044】
合成例2(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及びジエチルイソプロパノールアミン封止)
合成例1で得られたイソシアネート末端4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド(重合度=3)51.8gを120℃で溶解し、これにポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量400)22.6gとジエチルイソプロパノールアミン7.41gを加え、130℃まで加温して撹拌しながら5時間反応させた後、赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2200〜2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認して、淡黄色透明なポリカルボジイミドを得た。GPCの測定により、ポリスチレン換算数平均分子量は1500であった。
【0045】
合成例3(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及びジメチルエタノールアミン封止)
合成例1で得られたイソシアネート末端4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド(重合度=3)51.8gを120℃で溶かし、これにポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量400)22.6gとジメチルエタノールアミン5.0gを加え、150℃まで加温して撹拌しながら5時間反応させた後、赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2200〜2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認して、淡黄色透明なカルボジイミドを得た。GPCの測定により、ポリスチレン換算数平均分子量は1500であった。
【0046】
合成例4(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及びジブチルエタノールアミン封止)
合成例1で得られたイソシアネート末端4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド(重合度=3)51.8gを120℃で溶かし、これにポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量400)22.6gとジブチルエタノールアミン9.79gを加え、150℃まで加温して撹拌しながら5時間反応させた後、赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2200〜2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認して、淡黄色透明なカルボジイミドを得た。GPCの測定により、ポリスチレン換算数平均分子量は1500であった。
【0047】
合成例5(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及び乳酸メチル封止)
合成例1で得られたイソシアネート末端4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド(重合度=3)51.8gを120℃で溶かし、これにポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量400)22.6gと乳酸メチル5.88gを加え、150℃まで加温して撹拌しながら5時間反応させた後、赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2200〜2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認して、淡黄色透明なカルボジイミドを得た。GPCの測定により、ポリスチレン換算数平均分子量は1500であった。
【0048】
合成例6(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及びグリコール酸メチル封止)
合成例1で得られたイソシアネート末端4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド(重合度=3)51.8gを120℃で溶かし、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量400)22.6gとグルコール酸メチル5.1gを加え、150℃まで加温して撹拌しながら5時間反応させた後、赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2200〜2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認して、淡黄色透明なカルボジイミドを得た。GPCの測定により、ポリスチレン換算数平均分子量は1500であった。
【0049】
合成例7(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル封止)
合成例1で得られたイソシアネート末端4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド(重合度=3)51.8gを120℃で溶かし、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量400)22.6gとプロピレングリコールモノメチルエーテル5.1gを加え、150℃まで加温して撹拌しながら5時間反応させた後、赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2200〜2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認して、淡黄色透明なカルボジイミドを得た。GPCの測定により、ポリスチレン換算数平均分子量は1500であった。
【0050】
実施例1
合成例2で得られたカルボジイミド化合物を、ジエチレングリコールモノブチルエーテルにカルボジイミド化合物の固形分濃度が40%となるように混合し、樹脂架橋剤を作製した。
ウレタン樹脂水分散体(Bonakemi社製「443−47T」、固形分濃度32%)10gに、得られた樹脂架橋剤をカルボジイミド化合物の固形分濃度が2.8%となるように加えてよく撹拌して水性塗料組成物を調製した。
木材にスポンジブラシを用いて、アクリル樹脂を下塗りした後、得られた水性塗料組成物を厚さ20μmでコートし、25℃で2時間乾燥し、乾燥後サンドペーパー(#320)で研磨し、その工程を3度繰り返し、水性塗料組成物を3層塗りした試料を作製した。
【0051】
実施例2〜6
合成例2で得られたカルボジイミドを合成例3〜7で得られたカルボジイミドに変更した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物を3層塗りした試料を作製した。
【0052】
実施例7
合成例2で得られたカルボジイミド化合物を、ジエチレングリコールモノブチルエーテルと水の混合溶液(質量比50:50)にカルボジイミド化合物の固形分濃度が40%となるように混合し、樹脂架橋剤を作成した。
ウレタン樹脂水分散体(Bonakemi社製「443−47T」、固形分濃度32%)10gに、得られた架樹脂橋剤をカルボジイミド化合物の固形分濃度が2.8%となるように加えてよく撹拌して水性塗料組成物を調製した。
木材にスポンジブラシを用いて、アクリル樹脂を下塗りした後、得られた水性塗料組成物を厚さ20μmでコートし、25℃で2時間乾燥し、乾燥後サンドペーパー(#320)で研磨し、その工程を3度繰り返し、水性塗料組成物を3層塗りした試料を作製した。
【0053】
実施例8〜12
合成例2で得られたカルボジイミドを合成例3〜7で得られたカルボジイミドに変更した以外は実施例7と同様にして水性塗料組成物を3層塗りした試料を作製した。
【0054】
比較例1
合成例2で得られたカルボジイミド化合物を、水にカルボジイミド化合物の固形分濃度が40%となるように混合し、樹脂架橋剤を作成した。
ウレタン樹脂水分散体(Bonakemi社製「443−47T」、固形分濃度32%)10gに、得られた架橋剤をカルボジイミド化合物の固形分濃度が2.8%となるように加えてよく撹拌して水性塗料組成物を調製した。
木材にスポンジブラシを用いて、アクリル樹脂を下塗りした後、得られた水性塗料組成物を厚さ20μmでコートし、25℃で2時間乾燥し、乾燥後サンドペーパー(#320)で研磨し、その工程を3度繰り返し、水性塗料組成物を3層塗りした試料を作製した。
【0055】
比較例2〜6
合成例2で得られたカルボジイミドを合成例3〜7で得られたカルボジイミドに変更した以外は比較例1と同様にして水性塗料組成物を3層塗りした試料を作製した。
【0056】
実施例13〜19
実施例7のジエチレングリコールモノブチルエーテルと水の比を表4に示す比に変更した以外は実施例7と同様にして水性塗料組成物を3層塗りした試料を作製した。
【0057】
実施例20〜37
実施例1のジエチレングリコールモノブチルエーテルを、表5及び6に示す他の水和性化合物に変更した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物を3層塗りした試料を作製した。
【0058】
上述のようにして作製した試料について、下記の方法で物性測定を行った。
作製した試験片を各々常温で3日、7日、14日経過した時点で、下記の評価を実施した。
(1)耐薬品性試験
作製した試験片上に1%水酸化ナトリウム水溶液を染込ませた脱脂綿を置き、2時間経過後の塗膜の変化を観察した。
(評価基準)
○・・・湿潤時、乾燥後ともに外観変化なし
△・・・湿潤時、塗膜に変化は無いが、基材(木材)に浸透し、変化が確認でき、かつ乾燥後は、元の外観に戻る状態。
×・・・湿潤時、塗膜が著しく膨潤し乾燥後も深刻なダメージ残る。
【0059】
(スカッフ性試験)
アイスホッケーに使用されるパックを取り付けた先端重量1kg振り子半径1mの振り子状試験器具を使用し、高さ1mの位置より試験片塗膜表面に擦りつけ、黒い跡(ブラックヒールマーク)をつける。その後、布で拭き取り、外観を評価した。
(評価基準)
◎・・・拭き取り後、黒い跡が完全に消え、塗膜にダメージが確認されない
○・・・拭き取り後、黒い跡が完全に消え、塗膜に若干のダメージが確認されるが、使用上問題ないレベルである。
△・・・拭き取り後、黒い跡が完全に消えるが、塗膜にダメージが残り、擦り跡が確認できる。
×・・・拭き取り後、黒い跡が消えず、明らかに塗膜にダメージが残る。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
表1〜6に示されるように、実施例1〜37で形成した本発明に属する樹脂架橋剤を含有する水性塗料組成物は、比較例1〜6と比べて優れた耐薬品性及び耐スカッフ性を有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の樹脂架橋剤は、耐スカッフ性、耐薬品性に優れるため、水性樹脂に添加してタイルやフローリングなどの床用コート剤、塗料、コーティング剤などとして好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボジイミド基を少なくとも1つ以上有するカルボジイミド化合物の末端が、ジアルキルアミノアルコール、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、及び(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物(親水性有機化合物I)と、該親水性有機化合物Iより親水性が高く、かつ少なくとも一つの水酸基を有する化合物とにより封止されてなるカルボジイミド化合物、並びに水和性液状化合物からなる、樹脂架橋剤。
【請求項2】
カルボジイミド化合物が、一般式(1):
【化1】

(式中、nは1〜15の整数を表し、L1は、炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜13の2価の脂環族炭化水素基、炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜12の2価の複素環基であり、複数のL1は同一であっても異なっていてもよく、R1は、ジアルキルアミノアルコール、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、及び(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物(親水性有機化合物I)と、該親水性有機化合物Iより親水性が高く、かつ少なくとも一つの水酸基を有する化合物との混合物の残基を表す。)
で表されるカルボジイミド化合物である、請求項1に記載の樹脂架橋剤。
【請求項3】
ジアルキルアミノアルコール、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、及び(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物(親水性有機化合物I)と、該親水性有機化合物Iより親水性が高く、かつ少なくとも一つの水酸基を有する化合物との比率(モル比)が9:1〜1:9である、請求項1又は2に記載の樹脂架橋剤。
【請求項4】
1が、一般式(A):
(R22−N−CH2−CHR3−OH ・・・(A)
(式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)
で表されるジアルキルアミノアルコール、
一般式(B):
【化2】

(式中、R4は炭素数1〜3のアルキル基であり、R5は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
で表されるヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、
及び一般式(C):
6−O−(CH2−CHR7−O)m−H ・・・(C)
(式中、R6は炭素数1〜4のアルキル基、R7は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、mは1〜3の整数である。)
で表される(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物(親水性有機化合物I−a)と、
該親水性有機化合物I−aより親水性が高い化合物であって、かつ一般式(D):
8−O−(CH2−CHR9−O)m−H ・・・(D)
(式中、R8は炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基、R9は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、mは4〜30の整数である。)
で表されるアルコキシ基またはフェノキシ基で末端封鎖されたポリアルキレンオキサイドとの混合物の残基である、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂架橋剤。
【請求項5】
水和性液状化合物が、一般式(2):
10O−(CH2−CHR11−O)m−R12 ・・・(2)
(式中、R10およびR12は炭素数1〜4のアルキル基若しくはアシル基、水素原子またはフェニル基、R11は水素原子またはメチル基であり、mは1〜3の整数である。)
で表される水和性液状化合物を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂架橋剤。
【請求項6】
水和性液状化合物は、炭素数3〜10のモノアルコールである、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂架橋剤。
【請求項7】
1はジシクロヘキシルメタン2価の基又はテトラメチルキシリレン基である、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂架橋剤。

【公開番号】特開2011−132374(P2011−132374A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293233(P2009−293233)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】