説明

樹脂注型装置

【課題】主剤と硬化剤の粘度を同様にし、短時間で均一に混合できる樹脂注型装置を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂の主剤を保管する主剤保管タンク1と、硬化剤を保管する硬化剤保管タンク2と、主剤保管タンク1に主剤用パイプ6で接続されるとともに、主剤の所定量を計量する主剤計量タンク5と、硬化剤保管タンク2に硬化剤用パイプ9で接続されるとともに、硬化剤の所定量を計量する硬化剤計量タンク8と、主剤計量タンク5と硬化剤計量タンク8とに接続された混合タンク11と、混合タンク11に接続された樹脂注型金型13とを備え、主剤保管タンク1と硬化剤保管タンク2とのそれぞれにヒータ3、4を設け、硬化剤よりも主剤の樹脂温度を高くしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エポキシ樹脂のような絶縁材料を樹脂注型金型に充填し、硬化物を製造する樹脂注型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂注型装置は、エポキシ樹脂の主剤と硬化剤を保管し所定量を計量する計量装置と、これらを真空中で混合する混合装置と、混合されたエポキシ樹脂を加熱硬化させる樹脂注型金型で構成されている。計量装置と混合装置では、ポットライフを確保するため、樹脂温度が40〜60℃の低温に保たれている。一方、樹脂注型金型では、短時間で注型品を得るため、金型温度が120℃以上の高温となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ここで、計量装置から混合装置までは樹脂温度が低温の一定に保たれているものの、主剤と硬化剤の粘度の温度特性が異なっており、これらを同一温度下で混合すると、多大の時間を要していた。常温で比較すると、硬化剤よりも主剤の粘度が2〜3桁高い。なお、不均一な混合状態あれば、硬化物の諸特性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−81560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ポットライフを確保するため樹脂温度を低温の一定に保っているが、少なくとも混合時には主剤と硬化剤の樹脂温度を制御して粘度を同様にし、短時間で均一に混合できる樹脂注型装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態の樹脂注型装置は、エポキシ樹脂の主剤を保管する主剤保管タンクと、前記エポキシ樹脂の硬化剤を保管する硬化剤保管タンクと、前記主剤保管タンクに主剤用パイプで接続されるとともに、前記主剤の所定量を計量する主剤計量タンクと、前記硬化剤保管タンクに硬化剤用パイプで接続されるとともに、前記硬化剤の所定量を計量する硬化剤計量タンクと、前記主剤計量タンクと前記硬化剤計量タンクとに接続された混合タンクと、前記混合タンクに接続された樹脂注型金型とを備え、前記主剤保管タンクと前記硬化剤保管タンクとのそれぞれにヒータを設け、前記硬化剤よりも前記主剤の樹脂温度を高くしたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例1に係る樹脂注型装置の構成を説明する概略図。
【図2】本発明の実施例1に係る樹脂温度と粘度の関係を示す特性図。
【図3】本発明の実施例2に係る樹脂注型装置の構成を説明する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0009】
先ず、本発明の実施例1に係る樹脂注型装置を図1、図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係る樹脂注型装置の構成を説明する概略図、図2は、本発明の実施例1に係る樹脂温度と粘度の関係を示す特性図である。
【0010】
図1に示すように、樹脂注型装置は、二液性エポキシ樹脂の主剤と硬化剤を保管する樹脂保管部1aと、樹脂量を計量する樹脂計量部1bと、これらを真空中で混合する樹脂混合部1cと、真空注型により硬化物を得る樹脂注型金型部1dとで構成されている。
【0011】
樹脂保管部1aには、例えば、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂の主剤を保管する主剤保管タンク1と、例えば、脂環式酸無水物系の硬化剤を保管する硬化剤保管タンク2が設けられている。主剤保管タンク1には第1のヒータ3が設けられ、また、硬化剤保管タンク2には第2のヒータ4が設けられ、主剤と硬化剤が所定の温度に保たれている。それぞれの樹脂温度は、後述する。
【0012】
樹脂計量部1bには、主剤計量タンク5が設けられ、主剤用パイプ6で主剤保管タンク1と接続されている。主剤用パイプ6は、例えば、発泡ポリエチレン樹脂からなる筒状の第1の保温材7で覆われ保温されている。また、硬化剤計量タンク8が設けられ、硬化剤用パイプ9で硬化剤保管タンク2と接続されている。硬化剤用パイプ9は、主剤用パイプ6と同様に、例えば、発泡ポリエチレン樹脂からなる第2の保温材10で覆われ保温されている。
【0013】
樹脂混合部1cには、混合タンク11が設けられ、主剤計量タンク5と硬化剤計量タンク8で計量された主剤と硬化剤が投入されるようになっている。混合タンク11には、第3のヒータ12が設けられ、混合した樹脂を所定の温度で保温している。樹脂温度は、後述する。樹脂注型金型部1dには、樹脂注型金型13が設けられ、混合タンク11と接続されている。樹脂注型金型13には、第4のヒータ14が設けられ、充填された樹脂の加熱硬化が行われる。
【0014】
次に、樹脂温度について、図2を参照して説明する。
【0015】
図2に示すように、主剤と硬化剤の粘度を常温t0(25℃)で比べると、主剤の方が2〜3桁高い値を示す。このため、主剤保管タンク1では、第1のヒータ3を制御し、例えば樹脂温度t1を60℃とし、また、硬化剤保管タンク2では、第2のヒータ4を制御し、例えば樹脂温度t2を40℃としている。これにより、粘度は、互いが数10mpa・sとなり、ほぼ同様の値となる。
【0016】
主剤は硬化剤よりも樹脂温度が高いので、第1の保温材7は第2の保温材10よりも、保温材の厚さなどを厚くし、保温力を高めている。保温された主剤と硬化剤は、それぞれ所定量が計量され、混合タンク11で混合される。混合開始時においては、主剤と硬化剤の粘度がほぼ同様のため、短時間で均一に混合させることができる。
【0017】
混合タンク11内では、時間経過に伴って、主剤と硬化剤の樹脂温度が変化するが、第3のヒータ12を制御し、中間値の例えば樹脂温度を50℃に制御している。このため、主剤保管タンク1、硬化剤保管タンク2から混合タンク11までは、低温に保たれ、ポットライフを確保することができる。樹脂注型金型13では、短時間で硬化物を得るため、金型温度を120℃以上の高温に保っている。
【0018】
上記実施例1の樹脂注型装置によれば、硬化剤保管タンク2よりも主剤保管タンク1の樹脂温度を高くして主剤と硬化剤を保管し、計量後、混合タンク11で混合するようにしているので、混合時に主剤と硬化剤の粘度をほぼ同様とすることができ、短時間で均一に混合させることができる。このため、諸特性の優れた硬化物を得ることができる。
【0019】
ここで、温度40〜60℃をポットライフを確保するための低温、温度120℃以上を加熱硬化を促進するための高温と定義する。
【実施例2】
【0020】
次に、本発明の実施例2に係る樹脂注型装置を図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施例2に係る樹脂注型装置の構成を説明する概略図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、計量タンクの樹脂温度を制御することである。図3において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0021】
図3に示すように、主剤計量タンク5には、樹脂温度を制御する第4のヒータ15を設けている。また、硬化剤計量タンク8にも、樹脂温度を制御する第5のヒータ16を設けている。樹脂温度は、主剤計量タンク5では主剤保管タンク1と同様とし、硬化剤計量タンク8では硬化剤保管タンク2と同様としている。
【0022】
これにより、主剤と硬化剤は、混合タンク11に投入される直前まで所定温度に保温され、粘度をほぼ同様とすることができるので、より均一に混合させることができる。主剤と硬化剤は保温材7、10で保温されものの、パイプ6、9が長尺になった場合などの温度低下を補うことができる。
【0023】
上記実施例2の樹脂注型装置によれば、実施例1による効果のほかに、計量タンク11に投入する直前まで、主剤と硬化剤の粘度をほぼ同様とすることができる。
【0024】
以上述べたような実施形態によれば、エポキシ樹脂の主剤と硬化剤の樹脂温度は、同一温度で比べると主剤の方が粘度が大きいものの、硬化剤よりも主剤の方の樹脂温度を高くし、粘度をほぼ同様にしているので、短時間で均一に混合することができる。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1a 樹脂保管部
1b 樹脂計量部
1c 樹脂混合部
1d 樹脂注型金型部
1 主剤保管タンク
2 硬化剤保管タンク
3、4、12、14、15、16 ヒータ
4 第2のヒータ
5 主剤計量タンク
6、9 パイプ
7、10 保温材
8 硬化剤計量タンク
11 混合タンク
13 樹脂注型金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂の主剤を保管する主剤保管タンクと、
前記エポキシ樹脂の硬化剤を保管する硬化剤保管タンクと、
前記主剤保管タンクに主剤用パイプで接続されるとともに、前記主剤の所定量を計量する主剤計量タンクと、
前記硬化剤保管タンクに硬化剤用パイプで接続されるとともに、前記硬化剤の所定量を計量する硬化剤計量タンクと、
前記主剤計量タンクと前記硬化剤計量タンクとに接続された混合タンクと、
前記混合タンクに接続された樹脂注型金型とを備え、
前記主剤保管タンクと前記硬化剤保管タンクとのそれぞれにヒータを設け、前記硬化剤よりも前記主剤の樹脂温度を高くしたことを特徴とする樹脂注型装置。
【請求項2】
前記主剤用パイプと前記硬化剤用パイプとにそれぞれ保温材を設け、前記硬化剤用パイプよりも前記主剤用パイプの保温力を高めたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂注型装置。
【請求項3】
前記主剤計量タンクにヒータを設け、
前記硬化剤計量タンクにもヒータを設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂注型装置。
【請求項4】
前記混合タンクの樹脂温度を前記主剤計量タンクと前記硬化剤タンクとの中間値にしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の樹脂注型装置。
【請求項5】
前記主剤保管タンクと前記硬化剤保管タンクから前記混合タンクまでの温度を40〜60℃の低温とし、
前記樹脂注型金型の温度を120℃以上の高温としたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の樹脂注型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−59919(P2013−59919A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200030(P2011−200030)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】