説明

樹脂用組成物

【課題】高耐熱性でかつ染色性が良好な樹脂と光学材料に適した樹脂用組成物を提供する。
【解決手段】末端にチオール基を有するピロメリット酸誘導体およびトリメリット酸誘導体とポリイソシアネート化合物、ポリイソチオシアネート化合物、およびイソシアネート基を有するイソチオシアネート化合物から選択された少なくとも1種のイソシアネート類を含んでなる樹脂用組成物、並びに該樹脂用組成物を重合硬化させた樹脂及び光学材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂用組成物に関する。本発明のポリチオールは、光学材料、合成樹脂原料、架橋剤、エポキシ樹脂硬化剤、加硫剤、重合調整剤、金属錯体生成剤、中でもプラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基盤、フィルター等の光学材料、特にプラスチックレンズに好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料は軽量かつ靭性に富み、また染色が容易であることから、各種光学材料、特に眼鏡レンズに近年多用されている。光学材料、中でも眼鏡レンズに特に要求される性能は光学物性が良好なことであり、さらには高耐熱性、高染色性である。
従来より用いられているプラスチックレンズ用の樹脂として、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)がある。しかしながらこの樹脂は屈折率が1.50と低く、レンズが肉厚となることが避けられない。このため、より屈折率の高いレンズ樹脂が望まれている。
これらの問題を解決するために、特許文献1〜3に記載された組成物が提案されている。しかしながらいずれも耐熱性が不十分であり、染色性も悪いことから、高耐熱性でかつ染色性が良好な樹脂用組成物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−270859
【特許文献2】特開平5−208950
【特許文献3】特開平7−252207
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、高耐熱性でかつ染色性が良好な樹脂用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このような状況に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、本課題を解決し、本発明に至った。具体的には、(1)式または(2)式で表される化合物とポリイソシアネート化合物、ポリイソチオシアネート化合物、およびイソシアネート基を有するイソチオシアネート化合物から選択された少なくとも1種のイソシアネート類を含んでなる樹脂用組成物により本課題を解決し、本発明に至った。更に本発明の詳細を以下に示す。
1.(1)式表される化合物とイソ(チオ)シアナト基を2個以上有するポリイソ(チオ)シアネート化合物を含む樹脂用組成物。
【化1】

(式中、XはOまたはS原子を表し、R〜Rはそれぞれ独立で[(CHS]から選択され、aは1から4の整数、bは1または2の整数を示す。)
2.(1)式で表される化合物のSH基とイソ(チオ)シアナト基を2個以上有するポリイソ(チオ)シアネート化合物のNCO基およびNCS基の割合が、SH/(NCO+NCS)=0.5〜2.0である請求項1記載の樹脂用組成物。
3.第1項記載の樹脂用組成物を重合硬化させて得られる樹脂。
4.第1項記載の樹脂用組成物を重合硬化させて得られる光学材料。
5.(2)式で表される化合物とイソ(チオ)シアナト基を2個以上有するポリイソ(チオ)シアネート化合物を含む樹脂用組成物。
【化2】

(式中、XはOまたはS原子を表し、R〜Rはそれぞれ独立で[(CHS]から選択され、aは1から4の整数、bは1または2の整数を示す。)

6.(2)式で表される化合物のSH基とイソ(チオ)シアナト基を2個以上有するポリイソ(チオ)シアネート化合物のNCO基およびNCS基の割合が、SH/(NCO+NCS)=0.5〜2.0である第5項記載の樹脂用組成物。
5.第5項記載の樹脂用組成物を重合硬化させて得られる樹脂。
8.第5項記載の樹脂用組成物を重合硬化させて得られる光学材料。
【発明の効果】
【0006】
本発明の化合物により、従来技術の化合物を原料とする限り困難であった高耐熱性でかつ染色性が良好な樹脂用組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明で言う(1)式または(2)式で表される化合物とは、下記の化合物である。
【化3】

【化4】

(式(1)および式(2)中、XはOまたはS原子を表し、R〜Rはそれぞれ独立で[(CHS]から選択され、aは1から4の整数、bは1または2の整数を示す。)
中でも好ましい化合物はXがS、aが1または2、bが1または2であり、より好ましい化合物は下記式(3)〜式(10)の化合物である。特に好ましい化合物は下記式(3)〜式(6)の化合物であり、最も好ましい化合物は式(3)、式(4)である。
【化5】

(3)

【化6】

(4)

【化7】

(5)

【化8】

(6)

【化9】

(7)

【化10】

(8)

【化11】

(9)

【化12】

(10)
【化13】

(11)
【0008】
(1)式もしくは(2)式の化合物の合成方法としては、一般的なチオールの合成方法である前駆体であるハロゲン化物もしくはポリオールをチオ尿素と反応させてイソチウロニウム塩とし、これを加水分解で製造することも可能であるが、収率やコスト面から考慮した場合、好ましい方法は酸クロライドとチオールの反応で得ることである。酸クロライドは、カルボン酸と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応、カルボン酸と酸ハロゲン化物、α、α−ジハロゲノエーテル、ハロゲン化アルキルアミン、有機リンハロゲン化物等の有機ハロゲン化物との反応、カルボン酸のアルカリ金属塩もしくはアミン塩と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応、エステルまたはラクトンとトリフェニルハロホスホニウムハロゲン化物との反応、酸無水物と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応、酸無水物とα、α−ジハロゲノエーテル、ハロゲン化アルキルアミン、有機リンハロゲン化物等の有機ハロゲン化物との反応、カルボン酸とN、N‘−カルボニルイミダゾールとの反応によって得られるが、反応性を考慮すれば好ましくはカルボン酸と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応、カルボン酸と酸ハロゲン化物、α、α−ジハロゲノエーテル、ハロゲン化アルキルアミン、有機リンハロゲン化物等の有機ハロゲン化物との反応、酸無水物と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応、酸無水物とα、α−ジハロゲノエーテル、ハロゲン化アルキルアミン、有機リンハロゲン化物等の有機ハロゲン化物との反応であり、より好ましくはカルボン酸と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応、酸無水物と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応であり、最も好ましくは酸無水物と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応である。具体的には、無水トリメリット酸、もしくは無水ピロメリット酸と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リンの反応で得ることが好ましい。
【0009】
(1)式もしくは(2)式の化合物の合成方法を、以下にさらに詳しく述べる。酸クロライドは無水トリメリット酸、もしくは無水ピロメリット酸と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リンとの反応で得られる。反応性を考慮すれば好ましくは塩化チオニル、五塩化リンであり、最も好ましくは五塩化リンである。反応は溶媒を使用しても、無溶媒でも可能であるが、好ましくは無溶媒で行う。なお、使用する場合は、好ましくはトルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、THF等のエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系炭化水素であり、特に好ましくはトルエンである。塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リンの使用量は特に制限はないが、反応時間やその後の精製を考慮すると酸無水物に対して0.50〜4.0当量、好ましくは0.80〜2.0当量、より好ましくは1.0〜1.5当量である。反応温度は反応が進行すれば特に制限はないが、反応時間や収率を考慮すれば好ましくは10℃〜300℃である。特に無水トリメリット酸を用いる場合は20〜250℃が好ましく、より好ましくは30〜150℃、特に好ましくは50〜100℃である。無水ピロメリット酸を用いる場合は20〜280℃が好ましく、より好ましくは50〜250℃、特に好ましくは100〜220℃である。反応時の圧力は常圧、減圧、加圧いずれも可能であるが、経済性を考慮すれば常圧が好ましい。また、不純物の生成を抑制するために不活性ガス雰囲気下での反応はより好ましく、最も好ましくは窒素雰囲気下である。反応時間は、反応が進行すれば特に制限はないが、収率や反応性を考慮すれば好ましくは1分〜24時間、より好ましくは10分〜12時間、最も好ましくは30分〜5時間である。
【0010】
このようにして得られる酸クロライドは、精製しても、精製しなくとも次の工程に用いることができる。精製する場合は、ろ過、再結晶、カラム、蒸留等の手法を用いることが可能であるが、好ましくはろ過、蒸留である。
【0011】
このようにして得られた酸クロライドとジチオール化合物もしくはヒドロキシ基を有するチオール化合物を、塩基性化合物の存在下、もしくは非存在下反応させて(1)式もしくは(2)式の化合物を得ることができる。ここで用いられるポリチオール化合物もしくはヒドロキシ基を有するチオール化合物の好ましい例としては、メタンジチオール、1,2−ジメルカプトエタン、1,3−ジメルカプトプロパン、1,4−ジメルカプトブタン、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2−メルカプトエタノールが挙げられる。より好ましくは1,2−ジメルカプトエタン、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィドであり、最も好ましくはビス(2−メルカプトエチル)スルフィドである。ポリチオール化合物は本発明で用いる酸クロライドに対して0.50〜30当量、好ましくは1.0〜20当量用いる。
【0012】
収率の向上のためには塩基性化合物を用いることが好ましいが、好ましい塩基性化合物としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アミン、アンモニア、ホスフィン、アンモニウム塩などが挙げられる。より好ましくはアミンまたはアルカリ金属水酸化物、さらに好ましくはアミンである。アミンの具体例としては、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等が挙げられる。好ましくは、トリエチルアミン、ピリジンである。塩基化合物の添加量は本発明で用いる酸クロライドに対して0.50〜10.0当量、好ましくは0.8〜5.0当量、より好ましくは1.0〜5.0当量である。
【0013】
反応は溶媒を使用しても、無溶媒でも可能であるが、好ましくは溶媒を用いて行う。溶媒は使用可能であれば構わないが、好ましくはトルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、THF等のエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤である。反応温度は反応が進行すれば特に制限はないが、反応時間や収率を考慮すれば−20℃〜100℃である。好ましくは−10〜80℃、より好ましくは0〜50℃である。反応時の圧力は常圧、減圧、加圧いずれも可能であるが、経済性を考慮すれば常圧が好ましい。また、不純物の生成を抑制するために不活性ガス雰囲気下での反応が好ましく、好ましくは窒素雰囲気下である。反応時間は、反応が進行すれば特に制限はないが、収率や反応性を考慮すれば好ましくは1分〜24時間、より好ましくは10分〜12時間、最も好ましくは30分〜5時間である。
このようにして得られるポリチオール化合物は、トルエン等の有機溶剤によって抽出後、酸洗浄、塩基洗浄、水洗浄、濃縮、ろ過、再結晶等の一般的な手法により精製ができ、必要に応じて蒸留もできる。
【0014】
(1)式または(2)式で表される化合物と、イソ(チオ)シアナト基を2個以上有するポリイソ(チオ)シアネート化合物を含む樹脂用組成物により高耐熱性かつ染色性が良好なレンズ材料を得ることができる。イソシアナト基を2個以上有するポリイソシアネート化合物としては、ジエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、2,6−ビス(イソシアナートメチル)デカヒドロナフタレン、リジントリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3−(2’−イソシアネートシクロヘキシル)プロピルイソシアネート、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート、イソプロピリデンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2、2’−ビス(4−イソシアナートフェニル)プロパン、トリフェニルメタントリイソシアネート、ビス(ジイソシアナートトリル)フェニルメタン、4,4’、4’’−トリイソシアネート−2,5−ジメトキシフェニルアミン、3,3’−ジメトキシベンジジン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナートビフェニル、4,4’−ジイソシアナート−3,3’−ジメチルビフェニル、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,1’−メチレンビス(4−イソシアナートベンゼン)、1,1’−メチレンビス(3−メチル−4−イソシアナートベンゼン)、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(2−イソシアナート−2−プロピル)ベンゼン、2,6−ビス(イソシアナートメチル)ナフタレン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ビス(イソシアナートメチル)テトラヒドロジシクロペンタジエン、ビス(イソシアナートメチル)ジシクロペンタジエン、ビス(イソシアナートメチル)テトラヒドロチオフェン、ビス(イソシアナートメチル)ノルボルネン、ビス(イソシアナートメチル)アダマンタン、ダイマー酸ジイソシアネート、1,3,5−トリ(1−イソシアナートヘキシル)イソシアヌル酸、チオジエチルジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート、ビス〔(4−イソシアナートメチル)フェニル〕スルフィド、2,5−ジイソシアネート−1,4−ジチアン、2,5−ジイソシアナートメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジイソシアナートメチルチオフェン、ジチオジエチルジイソシアネート、ジチオジプロピルジイソシアネートを挙げることができる。さらには上記のイソシアネート類のイソシアネート基の全部または一部をイソチオシアネート基に変えたポリイソチオシアネート化合物、およびイソシアネート基を有するイソチオシアネート化合物等を挙げることができる。
以上具体例を示したが、これらに限定されるわけではなく、またこれらは単独でも2種以上を混合して使用しても構わない。以上の中で好ましい化合物はポリイソシアネート化合物であり、より好ましくは1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナートメチル)ノルボルネン、2,5−ジイソシアナートメチル−1,4−ジチアン、1,3−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼンである。
ポリチオールとイソ(チオ)シアナト基を2個以上有するポリイソ(チオ)シアネート化合物の割合は、通常はSH基/(NCO+NCS)基の割合が0.5〜2.0の範囲であるが、好ましくは0.7〜2.0であり、より好ましくは0.8〜1.5であり、さら好ましくは0.9〜1.2である。
【0015】
本発明の硬化触媒として、公知のウレタン化触媒を用いることが可能であるが、好ましくは有機スズ化合物である。より好ましい化合物はジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジクロライド、ブチルスズトリクロライド、ジオクチルスズジクロライド、オクチルスズトリクロライド、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジメチルスズジアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジアセテートである。さらに好ましい化合物は、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレートである。
触媒の添加量は樹脂用組成物100重量部に対して0.002から6.0重量部であり、好ましくは0.005から4.0重量部であり、より好ましくは0.01から1.0重量部であり、さらに好ましくは0.02から0.8重量部である。
【0016】
本発明の樹脂用組成物を重合硬化して材料を得る際、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤等の添加剤を加えて、得られる材料の実用性をより向上せしめることはもちろん可能である。
紫外線吸収剤の好ましい例としてはベンゾトリアゾール系化合物が挙げられる。中でも好ましい化合物はベンゾトリアゾール系化合物であり、特に好ましい化合物の具体例は2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールである。ブルーイング剤の好ましい例としてはアントラキノン系化合物が挙げられる。これらの酸化防止剤、紫外線吸収剤およびブルーイング剤の添加量は、通常、樹脂用組成物100重量部に対してそれぞれ0.000001〜5重量部である。
【0017】
本発明の樹脂用組成物が重合後に型から剥がれにくい場合は、周知の外部および/または内部離型剤を使用または添加して、得られる硬化物の型からの離型性を向上せしめることも可能である。離型剤とは、フッ素系ノニオン界面活性剤、シリコン系ノニオン界面活性剤、燐酸エステル、酸性燐酸エステル、オキシアルキレン型酸性燐酸エステル、酸性燐酸エステルのアルカリ金属塩、オキシアルキレン型酸性燐酸エステルのアルカリ金属塩、高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステル、パラフィン、ワックス、高級脂肪族アミド、高級脂肪族アルコール、ポリシロキサン類、脂肪族アミンエチレンオキシド付加物などがあげられ、これらは単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。添加量は通常、樹脂用組成物100重量部に対して0.0001〜5重量部である。
【0018】
本発明の樹脂用組成物を重合硬化して材料を製造する方法は、さらに詳しく述べるならば以下の通りである。前述した各組成成分、酸化防止剤、紫外線吸収剤、重合触媒、離型剤などの添加剤を全て同一容器内で同時に撹拌下に混合しても良く、また各原料を段階的に添加混合しても良く、さらに数成分を別々に混合後さらに同一容器内で再混合しても良い。各原料および副原料はいかなる順序で混合してもかまわない。混合にあたり、設定温度、これに要する時間等は基本的には各成分が十分に混合される条件であれば良い。
【0019】
本発明では樹脂用組成物に対し、あらかじめ脱気処理を行うが、これにより材料の高度な透明性が達成される場合がある。脱気処理は、組成成分の一部もしくは全部と反応可能な化合物、重合触媒、添加剤の混合前、混合時あるいは混合後に、減圧下に行う。好ましくは、混合時あるいは混合後に、減圧下に行う。処理条件は、0.001〜50Torrの減圧下、1分〜24時間、0℃〜100℃で行う。減圧度は、好ましくは0.005〜25Torrであり、より好ましくは0.01〜10Torrであり、これらの範囲で減圧度を可変しても構わない。脱気時間は、好ましくは5分〜18時間であり、より好ましくは10分〜12時間である。脱気の際の温度は、好ましくは5℃〜80℃であり、より好ましくは10℃〜60℃であり、これらの範囲で温度を可変しても構わない。脱気処理の際は、撹拌、気体の吹き込み、超音波などによる振動などによって、樹脂用組成物の界面を更新することは、脱気効果を高める上で好ましい操作である。脱気処理により、除去される成分は、主に硫化水素等の溶存ガスや低分子量のチオール等の低沸点物等である。さらには、これらの樹脂用組成物および/または混合前の各原料を0.05〜10μm程度の孔径を有するフィルターで固形物等を濾過し精製することは本発明の材料の品質をさらに高める上からも好ましい。
【0020】
このようにして得られた樹脂用組成物は、ガラスや金属製の型に注入し、加熱や紫外線などの活性エネルギー線の照射によって重合硬化反応を進めた後、型から外し製造される。好ましくは、加熱によって重合硬化する。この場合、硬化時間は0.1〜200時間、通常1〜100時間であり、硬化温度は−10〜160℃、通常−10〜140℃である。重合は所定の重合温度で所定時間ホールドし、0.1℃〜100℃/時間で昇温し、0.1℃〜100℃/時間で降温およびこれらの組み合わせで行う。また、重合終了後、硬化物を50〜150℃の温度で10分〜5時間程度アニール処理を行う事は、本発明の材料の歪を除くために好ましい処理である。さらに必要に応じて染色、ハードコート、耐衝撃性コート、反射防止、防曇性付与等表面処理を行うことができる。
【実施例】
【0021】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、物性測定は以下の手法で実施した。
光学物性:アタゴ社製アッベ屈折計NAR−4Tを用い、d線での屈折率を25℃で測定した。
染色性:水1lにセイコープラックスダイヤコートブラウンD2g、セイコープラックス染色助剤3g、ベンジルアルコール20gを加えた染色浴に90℃で10分浸漬して全光線透過率を測定した。数値が低いほど染色されている。
耐熱性:3mm厚の試料に直径1mmのピンを乗せて10gの荷重を与え、30℃から10℃/分で昇温してTMA測定を行い、熱膨張が変化したピークの値を測定した。
【0022】
合成例1
窒素雰囲気下無水ピロメリット酸245gに五塩化リン492gを加え混合攪拌し、185℃で3時間反応を行い、その後155℃で4時間反応させた。反応終了後未反応の五塩化リンをろ過で除去した。その後0.5Torr、150℃で蒸留することにより、330gのピロメリット酸クロライドを得た。
次いで窒素雰囲気下ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド188g、ピリジン20gを混合攪拌して10℃にしたのち、そこへ200mlのジクロロメタンに溶解した20gのピロメリット酸クロライドを30分かけて滴下した。その後10℃で1時間、25℃で1時間反応させた。反応終了後、1N塩酸を用いて分液操作を行った後、有機層を水洗し、5Torr減圧下未反応のビス(2−メルカプトエチル)スルフィドを除去し、続いてトルエンとヘキサンの混合溶媒を用いて再結晶を行い、目的化合物である(3)式の化合物を38g得た。
【化14】

(3)
【0023】
合成例2
窒素雰囲気下無水トリメリット酸225gに五塩化リン500gを加え混合攪拌し、70℃で4.5時間反応を行った。反応終了後未反応の五塩化リンをろ過で除去した。その後0.5Torr、147℃で蒸留することにより、234gのトリメリット酸クロライドを得た。
次いで窒素雰囲気下ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド175g、トリエチルアミン20gを混合攪拌して10℃にしたのち、そこへ200mlのジクロロメタンに溶解した20gのトリメリット酸クロライドを30分かけて滴下した。その後10℃で1時間、25℃で1時間反応させた。反応終了後、1N塩酸を用いて分液操作を行った後、有機層を水洗し、5Torr減圧下未反応のビス(2−メルカプトエチル)スルフィドを除去し、続いてトルエンとヘキサンの混合溶媒を用いて再結晶を行い、目的化合物である(4)式の化合物を25g得た。
【化15】

(4)
【0024】
合成例3
窒素雰囲気下無水ピロメリット酸245g(1.12モル)に五塩化リン492g(2.36モル)を加え混合攪拌し、185℃で3時間反応を行い、その後155℃で4時間反応させた。反応終了後未反応の五塩化リンをろ過で除去した。その後0.5Torr、150℃で蒸留することにより、ピロメリット酸クロライド330g(1.01モル)を得た。
次いで窒素雰囲気下ビスメルカプトメタン98g(1.21モル、ピロメリット酸クロライドに対して20当量)、ピリジン20gを混合攪拌して10℃にしたのち、そこへ200mlのジクロロメタンに溶解したピロメリット酸クロライド20g(0.06モル)を30分かけて滴下した。その後10℃で1時間、25℃で1時間反応させた。反応終了後、1N塩酸を用いて分液操作を行った後、有機層を水洗し、5Torr減圧下未反応のビスメルカプトメタンを除去し、酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒を用いたシリカゲルクロマトグラフィー(富士シリシア化学(株)製球状シリカ)で精製を行い、目的化合物である(10)式の化合物を21g得た。
【化16】

(10)

【0025】
合成例4
窒素雰囲気下無水ピロメリット酸245g(1.12モル)に五塩化リン492g(2.36モル)を加え混合攪拌し、185℃で3時間反応を行い、その後155℃で4時間反応させた。反応終了後未反応の五塩化リンをろ過で除去した。その後0.5Torr、150℃で蒸留することにより、ピロメリット酸クロライド330g(1.01モル)を得た。
次いで窒素雰囲気下2−メルカプトエタノール477g(6.09モル、ピロメリット酸クロライドに対して20当量)、ピリジン100gを混合攪拌して10℃にしたのち、そこへ1500mlのジクロロメタンに溶解したピロメリット酸クロライド100g(0.30モル)を30分かけて滴下した。その後10℃で1時間、25℃で1時間反応させた。反応終了後、1N塩酸を用いて分液操作を行った後、有機層を水洗し、5Torr減圧下未反応の2−メルカプトエタノールを除去し、粗生成物を150g得た。この粗生成物を酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒を用いたシリカゲルクロマトグラフィー(富士シリシア化学(株)製球状シリカ)で精製を行い、化合物(11)式の化合物を11g得た。
【化17】

(11)

【0026】
実施例1
合成例1で得た(3)式の化合物13.6g(0.017モル)、m−キシリレンジイソシアネート6.4g(0.034モル)に触媒としてジブチルスズジクロライド10mg、内部離型剤としてジブチルリン酸2mgを加え室温で攪拌し均一液とした。次いでこれを10Torrで10分間脱気した後ろ過し、レンズ用モールドに注入し、オーブン中で40℃から120℃まで24時間かけて昇温して重合硬化させた。その後型から外し、120℃で1時間加熱してアニール処理を行った。得られたレンズは透明であり、良好な外観であった。物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0027】
実施例2
(4)式の化合物13.3g(0.023モル)、m−キシリレンジイソシアネート6.7g(0.035モル)に触媒としてジブチルスズジクロライド10mg、内部離型剤としてジブチルリン酸2mgを加え室温で攪拌し均一液とした。次いでこれを10Torrで10分間脱気した後ろ過し、レンズ用モールドに注入し、オーブン中で40℃から120℃まで24時間かけて昇温して重合硬化させた。その後型から外し、120℃で1時間加熱してアニール処理を行った。得られたレンズは透明であり、良好な外観であった。物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0028】
実施例3
合成例3で得た(10)式の化合物11.4g(0.023モル)、m−キシリレンジイソシアネート8.6g(0.045モル)に触媒としてジブチルスズジクロライド10mg、内部離型剤としてジブチルリン酸2mgを加え室温で攪拌し均一液とした。次いでこれを10Torrで10分間脱気した後ろ過し、レンズ用モールドに注入し、オーブン中で40℃から120℃まで24時間かけて昇温して重合硬化させた。その後型から外し、120℃で1時間加熱してアニール処理を行った。得られたレンズは透明であり、良好な外観であった。物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0029】
実施例4
合成例4で得た(11)式の化合物11.4g(0.023モル)、m−キシリレンジイソシアネート8.6g(0.046モル)に触媒としてジブチルスズジクロライド10mg、内部離型剤としてジブチルリン酸2mgを加え室温で攪拌し均一液とした。次いでこれを10Torrで10分間脱気した後ろ過し、レンズ用モールドに注入し、オーブン中で40℃から120℃まで24時間かけて昇温して重合硬化させた。その後型から外し、120℃で1時間加熱してアニール処理を行った。得られたレンズは透明であり、良好な外観であった。物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0030】
比較例1
1,2−ビス〔(2−メルカプトエチル)チオ〕−3−メルカプトプロパン9.4g(0.038モル)、m−キシリレンジイソシアネート10.6g(0.056モル)に触媒としてジブチルスズジクロライド10mg、内部離型剤としてジブチルリン酸2mgを加え室温で攪拌し均一液とした。次いでこれを10Torrで10分間脱気した後ろ過し、レンズ用モールドに注入し、オーブン中で40℃から120℃まで24時間かけて昇温して重合硬化させた。その後型から外し、120℃で1時間加熱してアニール処理を行った。得られたレンズは透明であり、良好な外観であった。物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0031】
比較例2
2−(2−メルカプトエチルチオ)−1、3−メルカプトプロパン8.3g(0.041モル)、m−キシリレンジイソシアネート11.7g(0.062モル)に触媒としてジブチルスズジクロライド10mg、内部離型剤としてジブチルリン酸2mgを加え室温で攪拌し均一液とした。次いでこれを10Torrで10分間脱気した後ろ過し、レンズ用モールドに注入し、オーブン中で40℃から120℃まで24時間かけて昇温して重合硬化させた。その後型から外し、120℃で1時間加熱してアニール処理を行った。得られたレンズは透明であり、良好な外観であった。物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0032】
比較例3
4、8−ジメルカプトメチル−1、11−ジメルカプト−3、6、9−トリチアウンデカン、4、7−ジメルカプトメチル−1、11−ジメルカプト−3、6、9−トリチアウンデカン、5、7−ジメルカプトメチル−1、11−ジメルカプト−3、6、9−トリチアウンデカンの混合物9.9g(0.027モル)、m−キシリレンジイソシアネート10.1g(0.054モル)に触媒としてジブチルスズジクロライド10mg、内部離型剤としてジブチルリン酸2mgを加え室温で攪拌し均一液とした。次いでこれを10Torrで10分間脱気した後ろ過し、レンズ用モールドに注入し、オーブン中で40℃から120℃まで24時間かけて昇温して重合硬化させた。その後型から外し、120℃で1時間加熱してアニール処理を行った。得られたレンズは透明であり、良好な外観であった。物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0033】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)式表される化合物とイソ(チオ)シアナト基を2個以上有するポリイソ(チオ)シアネート化合物を含む樹脂用組成物。
【化1】

(式中、XはOまたはS原子を表し、R〜Rはそれぞれ独立で[(CHS]から選択され、aは1から4の整数、bは1または2の整数を示す。)
【請求項2】
(1)式で表される化合物のSH基とイソ(チオ)シアナト基を2個以上有するポリイソ(チオ)シアネート化合物のNCO基およびNCS基の割合が、SH/(NCO+NCS)=0.5〜2.0である請求項1記載の樹脂用組成物。
【請求項3】
請求項1記載の樹脂用組成物を重合硬化させて得られる樹脂。
【請求項4】
請求項1記載の樹脂用組成物を重合硬化させて得られる光学材料。
【請求項5】
(2)式で表される化合物とイソ(チオ)シアナト基を2個以上有するポリイソ(チオ)シアネート化合物を含む樹脂用組成物。
【化2】

(式中、XはOまたはS原子を表し、R〜Rはそれぞれ独立で[(CHS]から選択され、aは1から4の整数、bは1または2の整数を示す。)
【請求項6】
(2)式で表される化合物のSH基とイソ(チオ)シアナト基を2個以上有するポリイソ(チオ)シアネート化合物のNCO基およびNCS基の割合が、SH/(NCO+NCS)=0.5〜2.0である請求項5記載の樹脂用組成物。
【請求項7】
請求項5記載の樹脂用組成物を重合硬化させて得られる樹脂。
【請求項8】
請求項5記載の樹脂用組成物を重合硬化させて得られる光学材料。

【公開番号】特開2011−132408(P2011−132408A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294533(P2009−294533)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】