説明

樹脂用配合剤

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートから成る樹脂用配合剤に関し、より詳細には、樹脂に配合したときの透明性、熱安定性、アンチブロッキング性等に優れた樹脂用配合剤に関する。
(従来の技術)
フィルム等の樹脂成形品に、種々の機能を付与するために、無機充填剤等の各種配合剤を配合することが行われている。この配合剤は、樹脂の化学的性質の改質を目的とした化学改質用配合剤と、樹脂成形品の物理的性質の改質を目的とした物性改質用配合剤とに大別される。前者の例は、塩素含有重合体の脱塩化水素反応を抑制する熱安定剤や、オレフィン系樹脂中に含有されるハロゲン化物系触媒残渣による劣化を抑制するための安定剤等であり、後者の例は、延伸樹脂フィルムのブロッキングを防止するためのアンチブロッキング剤等である。
ケイ酸カルシウム等のケイ酸塩を化学改質用配合剤や物性改質用配合剤として用いることは古くから知られており、例えば特公昭52−32899号公報には合成ケイ酸カルシウムを塩素含有重合体に熱安定剤として配合することが記載されており、また特公昭61−36866号公報には酸処理ゼオライトをアンチブロッキング剤として樹脂フィルム中に含有させることが記載されている。
(発明が解決しようとする問題点)
ケイ酸カルシウム等のケイ酸塩粒子は顔料性がよく、樹脂への配合性能や分散性能に優れており、塩化水素や塩素イオンと反応してこれを捕捉するという特性を有し、且つフィルム表面に凸部を形成してアンチブロッキング性や滑り性を向上させるという特徴を有しているが、これを配合した樹脂組成物のヘーズ(Haze)を増大させ、透明性を損うという欠点がある。
樹脂フィルムの場合、透明性の低下は致命的な欠点であり、また着色フィルムや他の着色樹脂成形品の場合でも透明性の低下は配合する着色剤の量を増大させねばならない等の不利益をもたらす。
本発明者等は、以下に詳述する微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートは、フィルム等の樹脂成形品中に配合したとき、著しく透明であり、化学改質用配合剤や物性改質用配合剤の用途に著しく有用であることを見出した。
即ち、本発明の目的は、樹脂に配合したとき透明であり、しかも塩化水素や塩素イオンの捕捉性等の化学的改質性能やアンチブロッキング性等の物性改質性能に優れているケイ酸カルシウム系の樹脂用配合剤を提供するにある。
(問題点を解決するための手段)
本発明によれば、主成分として式 CaO・xSiO2・nH2O …(1)
式中、xは1.0乃至2.0、特に1.1乃至1.8の数であり、nは0.3乃至1.0、特に0.5乃至0.9の数である。
で表わされる化学組成を有し、面間隔3.04乃至3.08Å、2.78乃至2.82Å及び1.81乃至1.84ÅにX線回折ピークを有し、且つ1.49乃至1.57の屈折率を有する微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートから成ることを特徴とする樹脂用配合剤が提供される。
本発明に用いる微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートは、下記式 IS=tanθ2/tanθ …(2)
式中、θは面間隔3.04〜3.08ÅのX線回折ピークにおけるピーク垂線と挟角側ピーク接線とがなす角度、θは該ピークにおけるピーク垂線と広角側ピーク接線とがなす角度を示す、で定義される積層不整指数(IS)が1.75以上、特に1.8乃至2.0の範囲内にあるのがよく、またこの微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートは、電子顕微鏡下で0.1乃至10μm、特に0.1乃至5μmの数平均粒子径(二次粒子径)と、50乃至250ml/100g、特に80乃至200ml/100gの吸油量(JIS K 5101)と60乃至200m2/g、特に70乃至150m2/gの比表面積(BET)とを一般に有している。
(作 用)
ケイ酸カルシウムには、ネコアイト(Nekoite)、オケナイト(Okenite)、ゾノトライト(Xonotlite)、フオーシャガイド(Foshagite)、ジェンナイト(Jennite)、メタジェンナイト(Metajennite)等のケイ灰石グループ;14Åトバモライト(Tobermorite)、11Åトバモライト、9.3Åトバモライト等のトバモライトグループ;ジャイロライト(Gyrolite)、トルスコタイト(Truscottite)、Z−フェーズ(phase)等のジェイロライトグループ;カルシオ−コンドロダイト(Calcio−chondrodite)、アフウイライト(Afwillite)等のγ−C2Sグループ等極めて多種の鉱物が知られているが、本発明の微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートは、前記式(1)で示される化学組成と、面間隔3.04乃至3.08Å、2.78乃至2.82Å及び1.81乃至1.84ÅにX線回折ピークとを有することが顕著な特徴である。
本発明に用いる微結晶カルシウムシリケートハイドレートは、Ca/Siの比が約5/6に近い値を示す点で、化学組成上トバモライト、即ち Ca5(Si6O18H2)・mH2O …(3)
mは8、4または0であるに類似しているが、水和量及び結晶構造において顕著な相違が認められる。
即ち、式(1)におけるnの値が、14Åタイプのものでは1.8,11Åタイプのものでは約1及び9.3Åタイプのものでは0.2であるのに対して、本発明の微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートではnの値が0.3乃至1.0であって、11Åタイプのものと9.3Åタイプのものとの中間的な値を示す。
添付図面第1図は本発明の微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートのX線回折図であり、第2図は11ÅタイプのトバモライトのX−線回折像を示す。
また、第3図は本発明の微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートの走査型電子顕微鏡であり、第4図は上記11Åタイプのトバモライトの走査型電子顕微鏡写真である。
第1図と第2図との比較から、本発明の微結晶カルシウムシリケートアーハイドレートは、トバモライトに特有の面間隔3.04乃至3.08Å及び1.81乃至1.84Åに弱い回折ピークを有するが、強度の大きい面管轄3.07乃至3.09Å及び2.80乃至3.00Åの二つのピークの代りに面間隔3.04乃至3.08Åに単一のピークを有し、またトバモライトに特有の面間隔12.0乃至11.0Åの回折ピークは殆んど有しないことが明らかである。
また、第3図と第4図とを参照すると、11Åトバモライトの場合は板状結晶の一次粒子の存在が明確に認められるのに対して、本発明の微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートでは、不定形の凝集二次粒子構造が認められるのみである。従来、トバモライトグループのカルシウムシリケート・ハイドレートの内結晶化度の低いものとしては、繊維状カルシウムシリケート・ハイドレートが知られているが、本発明の微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートは、不定形粒状でしかも下記に詳述する通り、層状結晶構造を本質的に備えている点で全く異なる鉱物であるものと認められる。
トバモライトは、SiO4の四面体層を間に挟んで2つのCaO6の八面体層でサンドイッチした三層構造を基本とし、この基本三層構造がC軸方向に多数積層された層状結晶構造を有しているものと認められる。本発明の微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートでは、二次元方向(hk)の回折ピークは認められることからこの基本三層構造は或る程度発達しているが、挟角側ピークが実質上存在しないことからC軸方向の積み重ねはされていないものと認められる。
本発明による合成微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートにおいては、前述した各層は平行には重なっているが、各層の相対的位置には、一定の特有の不規則性が認められる。添付図面第5図は、第1図のX−線回折スペクトルにおけるd=3.08Å付近の回折ピークを拡大した線図である。この第5図から、このピークは挟角側(2θの小さい側)では立上りが比較的急で、広角側(2θの大きい側)では傾斜のゆるやかな非対象ピークを示す。層の積み重ねが規則的な構造では、このピークが対称的であり、上述した非対称ピークは各層の相対的位置には或る不規則性が存在していることを示す。
本明細書において、カルシウムシリケート・ハイドレートの積層不整指数(IS)は、次のように定義される。即ち、後述する実施例記載の方法で、第5図に示すようなX−線回折チャートを得る。このd=3.04〜3.08 11Åのピークについて、ピークの挟角側最大傾斜ピーク接線aと広角側最大傾斜ピーク接線bを引き、接線aと接線bの交点から垂線cを引く。次いで接線aと垂線cとの角度θ、接線bと垂線cとの角度θ2を求める。積層不整指数(IS)は IS=tanθ2/tanθ …(2)
の値として求める。この指数(IS)は、ピークが完全対称な場合は1.0であり、非対称の程度が大きくなる程大きな値となる。
本発明による合成微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートは、この積層不整指数(IS)が1.75以上、特に1.8乃至2.0の範囲にある。
本発明の微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートは、上述した結晶構造を有することに関連して、屈折率(▲n20D▼)が1.49乃至1.57、特に1.52乃至1.56の範囲に制御されており、樹脂に配合しても樹脂の曇り度(Haze)を増大させることがなく、フィルム等の樹脂成形品の透明性を高いレベルに維持できるという利点を与える。また、この微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートは、結晶でありながら表面積が比較的大で、塩化水素や塩素イオン等との反応性に優れており、樹脂を安定化する作用が著しく大である。また、非晶質鉱物と異なって化学的にも物理的にも安定であり、しかも二次粒子構造も安定で凝集しにくいことから、樹脂中への分散性に優れており、しかも二次粒子構造の安定さによって、フィルム等に配合されたときアンチブロッキング性の付与が有効にしかも安定確実に行われることになる。
本発明の微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートは、第3図に示す通り、明確でしかも粒径の揃った二次粒子構造を有し、その数平均粒径は0.1乃至10μの範囲にあり、これは樹脂配合剤として顕著な利点の一つである。また、この微結晶構造に関連して、このカルシウム・シリケートハイドレートは吸油量が比較的大きく、一般に50乃至250ml/100g、特に80乃至200ml/100gの範囲にある。更に、このカルシウムシリケート・ハイドレートは一般に60乃至200m2/g、特に70乃至150m2/g、のBET比表面積を有する。BET比表面積SA(m2/g)と一次粒子径D(nm)との間には、式

で表される関係があり、この式(4)から算出される一次粒子径Dは10乃至50nm、特に15乃至40nmの範囲にあることから、本発明の微結晶カルシウムシリケート・ハイドレート結晶は通常の電子顕微鏡では観察限界を超えて微細であり、二次粒子としてはじめて検出可能であることを示している。
(発明の好適態様)
本発明に用いる微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートは、非晶質シリカと水酸化カルシウムとを、水の存在下にメカノケミカル的に反応させることにより得られる。メカノケミカル的反応とは、非晶質シリカに機械的な摩砕力が加わる条件下での反応であり、一般にボールミル、チューブミル、振動ミル、ビーズミル等の反応装置を使用し可及的に低い温度、一般に70℃以下の温度、特に15乃至50℃の温度で反応を行う。非晶質シリカとしては、ホワイトカーボン、その他の湿式法非晶質シリカや、スメクタイト族粘土鉱物、例えば酸性白土、モンモリロナイト、フラースアース等の粘土鉱物を酸処理して得られるシリカが使用される。この非晶質シリカは一般に150乃至400m2/gのBET比表面積を有するものであり、その二次粒子径は1乃至10μm、特に1乃至5μmの範囲にあるのがよい。水酸化カルシウムは、可及的に反応性の高いものがよく、一般に石灰乳と呼ばれるものが、CaO分として4乃至8重量%のものが使用される。メカノケミカル反応時間は、ミルの容量や摩砕条件等によっても相違するが、一般に6乃至80時間の範囲から前記特性の微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートが生成するように条件を選ぶ。反応後得られる生成物を必要により、濾過、水洗、乾燥して製品とする。
本発明の微結晶シリケートには、予め可塑剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防虫剤、防虫忌避剤、防菌剤、香料、着色剤、薬効成分等の有機成分を担持させて使用することもできる。更にまた、この配合剤は、前述の各種有機成分を担持させた充填剤も含め各種金属石鹸、ワックス類、樹脂、界面活性剤、各種カップリング剤等で予め表面処理しておくこともできる。担持及び表面処理に使用する有機成分は、微結晶シリケート当り1乃至10重量%、特に2乃至8重量%の範囲とするのがよい。
本発明の充填剤は、前述した特性を利用して、種々の樹脂、例えば、ポリプロピレン、低−、中−、高密度の或いは線状低密度のポリエチレン、結晶性プロピレン−エチレン共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン系樹脂:ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル:6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,8−ナイロン等のポリアミド:塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂等の塩素含有樹脂類:ポリカーボネート:ポリスルホン類:ポリアセタール等の熱可塑性樹脂に配合して、その安定性、特に熱安定性を向上させるために、或いは形成される樹脂成形品に、スリップ性乃至はアンチブロッキング性を与えるために使用できる。また、被覆形成用の混練組成物乃至は液状組成物に配合して、被覆にアンチブロッキング性を付与することができる。
この目的に対して、本発明の配合剤は樹脂100重量部当り0.5乃至100重量部、特に1乃至10重量部の量で配合することができる。
(発明の効果)
本発明による微結晶カルシウムシリケートは、特異な結晶構造、粒子構造及び屈折率を有することから、樹脂に配合しても樹脂の曇り度(Haze)を増大させることがなく、フィルム等の樹脂成形品の透明性を高いレベルに維持できるという利点を与える。また、この微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートは、結晶でありながら表面積が比較的大で、塩化水素や塩素イオン等との反応性に優れており、樹脂を安定化する作用が著しく大である。また、非晶質鉱物と異なって化学的にも物理的にも安定であり、しかも二次粒子構造も安定で凝集しにくいことから、樹脂中への分散性に優れており、しかも二次粒子構造の安定さによって、フィルム等に配合されたときアンチブロッキング性の付与が有効にしかも安定確実に行われることになる。
実施例1 本発明による微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートの微粉末から成る樹脂用配合剤(以後CHSと記す)を調製するための、シリカ原料に粘土鉱物の酸性白土(山形県櫛引町産)の酸処理物である層状シリカ(活性ケイ酸)を用いて得られたCSHについて以下に説明する。
CSHの製法とその物性 試薬酸化カルシウム(CaO分、99.9%)170.6gを3■のビーカーにとり、蒸留水2670gを加えて撹拌下に水和処理を行ない、CaO分6%の石灰乳スラリーを得た。次いでこの石灰乳の一部である375g(CaO分、22.4g)と平均粒径5μmの活性ケイ酸粉末46g(SiO2含量、93.5%)とを磁性ボールと共に1■のポットミルに入れ、24時間摩砕反応を行ない、濾過・水洗後110℃にて乾燥させ、次いで小型のサンプルミルで粉砕し、本発明のCSH(試料No CS−1)を得た。なお同様にして48時間摩砕反応で得られたCSHを試料No CS−2とした。
次いで下記に示す物性を測定しその結果を第1表に示した。
測定方法(1)X線回折 理学電機製のRAD−IBシステムを用いて、Cu−Kαにて測定した。
ターゲット Cu フィルター Ni 検出器 SC 電圧 30KVP 電流 15mA カウント・フルスケール 1000C/S スムージングポイント 15 走査速度 1゜/min ステップサンプリング 0.02゜ スリット DS 1゜RS0.15mm SS1゜ 照角 6゜(2)積層不整指数(IS
理学電機のRAD−IBシステム及び同社製Kα−Kα分離コンピュータソフトV.3.14を用い、CuKα1にて測定した。
ターゲット Cu フィルター Ni 検出器 SC 電圧 40KVP 電流 20mA カウント・フルスケール 2000C/S スムージングポイント 5 走査方法 ステップ・スキャン 走査速度 0.5゜/min 照射固定時間 10sec/゜ ステップサンプリング 0.01゜ プロットサイズ 3cm/deg スリット DS 1゜RS0.15mm SS1゜ 照角 6゜ 測定回折角範囲 27゜〜30.5゜(2θ)
ISの算出方法 上記X線回折によって得られた回折角(2θ)29.0〜29.4゜のピークの挟角側と広角側でそれぞれ勾配の絶対値が最大になるようにピーク接線(a,b)を引く。次に、挟角側ピーク接線aと広角側ピーク接線bの交点より、垂線cを下ろし、接線aと垂線cのなす角θ及び接線bと垂線cのなす角θを求め、次式により積層不整指数(IS)を求める。


(3)屈折率 予めアッベの屈折計を用いて、屈折率既知の溶媒(α−ブロムナフタレン、ケロシン)を調製する。次いで下記のLarsenの油浸法に従って、試料粉末数mgをスライドガラスの上に採り、屈折率既知の溶媒を1滴加えて、カバーグラスをかけ、溶媒を十分浸漬させた後、光学顕微鏡でベッケ線の移動を観察して求める。
Larsenの油浸法 粉末を液体中に浸し、光学顕微鏡で透過光線を観察すると、粉末と液体の境界線が明るく輝いて見える。これをベッケ線(Backe)という。このとき顕微鏡の筒を上下させると、このベッケ線が移動する。筒を下げたとき明るい線が粒子の内側に移動し粒子が明るく見え、筒を上げると明るい線が外側に移動し粒子が暗く見えるときは液体の方が粉末よりも屈折率が大きい場合である。粉末の屈折率の方が大きいと逆の現象が見られる。適当な液体で測定し粉末より大きい屈折率をもつものと、小さいものとを選び出せば、この二種の液体の屈折率の中間の値として粉末の屈折率が求められる。
(4)平均粒径 明石ビームテクノロジー(株)製走査電子顕微鏡WET−SEM(WS−250)を用いて、制限視野像中の各粒子の粒子径(μm)を算術平均して数平均粒子径を求めた。
(5)吸油量 JISK−5101−19に準拠して測定した。
(6)比表面積 カルロエルバ社製Sorptomatio Series 1800を使用し、BET法により測定した。
(7)定数x及びn 試料の2.5gを110゜で乾燥後、関係湿度60%のデシケータ中に24時間放冷して精秤した後、JIS R3101のソーダ石灰ガラスの化学分析法に準拠して、SiO2/CaO,H2O/CaOのモル比を測定しx及びnを算出した。
(8)一次粒子径 BET比表面積SA(m2/g)と一次粒子径D(nm)との間にはRalph K.Ilerにより以下の関係があることが知られており、その関係式よりD(nm)を算出する。


*:Ralph K.Iler,The Colloid Chemisting of Silica and Silicates,Cornell University Press(1955)
実施例2 シリカ原料に平均粒径3pmの市販ホワイトカーボン(シオノギ製薬製カープレックス#80,SiO2分95%)32g(SiO2分:30g)と実施例1で得た石灰乳スラリー374g(CaO分:22.4g)を用いた以外は、実施例1の試料No CS−1と同様に実施し、白色微粉末のCSH(試料No CS−3)を得た。
なお同じく摩砕反応48時間で得たCSHを試料No CS−4とし、それぞれ第1表にその物性を示した。
実施例3 市販のケイ酸ソーダ溶液と硫酸との同時添加で得られたシリカ・ヒドロゲルを濾過・水洗後、湿式ミルで粉砕したシリカヒドロゲルスラリーをシリカ原料とした以外は、実施例1の試料 CS−1と同様にしてCSH(試料No CS−5)を調製し、その物性を第1表に示した。
比較例1 実施例1においてポットミルによる摩砕反応をせずに、活性ケイ酸と石灰乳とのスラリーを2■のビーカー中で撹拌下に95℃で6時間反応させた以外は、実施例1と同様にして白色の微粉末(試料No H−1)を得た。
比較例2 実施例2で用いた市販ホワイトカーボンと石灰乳とのスラリーを比較例1と同様に反応させて白色の微粉末(試料No H−2)を得た。
比較例3 試薬石灰砂50gと蒸留水450gを朝鮮ボール(直径2cm)とともに1■ポットミルに入れ、湿式粉砕を行い、濾過し、110℃にて乾燥後、卓上小型サンプルミルで粉砕し、数平均粒子径2μm、SiO2

含有量98%(110℃乾燥物基準、JIS R 3101)の石英微粉末を得た。
蒸留水750gとともに、1■のオートクレーブ容器にとり、500回転/分の撹拌条件下で180℃で16時間水熱合成反応を行なった。冷却後反応物をとりだし濾過・水洗後、110℃で乾燥したのち、小型サンプルミルで粉砕し、白色微粉末(試料No H−3)を得た。この試料をX線回折したところ結晶構造的に11Åトバモライトに属するもので本発明のCSHではなかった。
応用例1乃至5 実施例1乃至5及び比較例1乃至3で得られたケイ酸カルシウム系の試料を硬及び軟質の塩素含有重合体(PVC)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンエチルアクリル酸エステル共重合体(EEA)及びポリエチレン(PE)樹脂にそれぞれ配合し、本発明のCSHの透明性、耐熱性及びアンチブロッキング性を評価しその結果を第2乃至6表に示した。
各種樹脂シートの作成と物性評価(1)硬質塩化ビニルシート(PVCシート)
第一PVC100重量部に安定剤NL−120(水澤化学工業(株)製Mg−Zn石ケン系安定剤)2.5PHR、サンプル1.0pHRを添加し、170℃5分間3.5インチロールにて混練後、185℃5分間プレス成形し2mm厚のシートを作製した。
(2)軟質塩化ビニルシート(PVCシート)
第一PVC100重量部に可塑剤DOP50PHR、安定剤NL−120(水澤化学工業(株)製)2.5pHR、サンプル2.0PHRを添加し、150℃5分間3.5インチロールにて混練後、180℃5分間プレス成形し2mm厚のシートを作製した。
(3)エチレン酢酸ビニル共重合体シート(EVAシート)
三菱油化(株)製酢酸ビニル含量28%、メルトインデックス150g/minのEVAにサンプル4.0PHR添加し、3.5インチロールにて110℃5分間混練後160℃5分間プレス成形し、2mm厚のシートを作製した。
(4)エチレンエチルアクリル酸共重合体シート(EEA)シート 三井・デュポンケミカル製EEAにサンプル4.0PHR添加し110℃5分間3.5インチロールにて混練後、160℃5分間プレス成形し2mm厚のシートを作製した。
(5)ポリエチレンシート(PEシート)
出光石油化学製低密度ポリエチレンにサンプル4.0PHR添加と同様の条件下に成形し、2mm厚のシートを作製した。
(6)ブランク 試料;珪酸カルシウムの添加していないブランクシートを示す。
(7)耐熱性能 185℃のギヤオーブン中に供試シートを入れシートが熱劣化するまでの時間で耐熱性能を表示した。
(8)透明性能 珪酸カルシウム試料を含まないブランクシートど試料を含むシートの透明性を相対的に目視比較判定する。
○ 透明、× 不透明(9)耐ブロッキング効果 JIS Z 1514 6.7に準拠し、重ね合せたシートを75℃の恒温槽に5hr 4kgの加重下に放置後室温に戻してシートを剥離し粘着の有無を調べる。
粘着有り 耐ブロッキング効果低い 粘着無し 耐ブロッキング効果高い











実施例4 実施例1の試料No CS−1と同様にして合成したCSHのスラリー1000gを2■のビーカにとり、撹拌下60℃に加温し、3gのステアリン酸を加え約1.5時間の撹拌処理をした後、濾過・水洗をし90℃で乾燥させ、脂肪酸を被覆させたCSH粉末を得た。
このものを応用例2及び応用例5に同様にして配合させたものは、樹脂マトリックス中への分散が容易になり、透明性を向上させるばかりでなく、加工時にはプレートアウトを防止し、ロール金型剥離性を良好にしゲル化促進効果を伴って実用価値を更に向上させ得ることが判明した。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明実施例1で得た微結晶カルシウムシリケートハイドレートのCu−Kα線によるX線回折スペクトルである。
第2図は、11ÅトバモライトのCu−Kα線によるX線回折スペクトルである。
第3図は、本発明実施例1で得た微結晶カルシウムシリケートハイドレートの粒子構造を示す1万倍の走査型電子顕微鏡写真である。
第4図は、11Åトバモライトの粒子構造を示す1万倍の走査型電子顕微鏡写真である。
第5図は、本発明実施例1で得た微結晶カルシウムシリケートハイドレートのCu−Kα線によるX線回折スペクトルにおけるd=3.08Å付近の回折ピークを拡大した線図であり、積層不整指数(IS)の算出のためのθ1の求めかたを図示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】式CaO・xSiO2・nH2O式中、xは1.0乃至2.0の数であり、nは0.3乃至1.0の数である、で表される化学組成を有し、面間隔3.04乃至3.08Å、2.78乃至2.82Å及び1.81乃至1.84ÅにX線回折ピークを有し、且つ1.49乃至1.57の屈折率を有する微結晶カルシウムシリケート・ハイドレート。
【請求項2】請求項1に記載の微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートを主成分とする樹脂用配合剤。
【請求項3】前記微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートが、下記式Is=tanθ1/tanθ式中、θは面間隔3.04〜3.08ÅのX線回折ピークにおけるピーク垂線と挟角側ピーク接線とがなす角度、θは該ピークにおける接線と広角側ピーク接線とがなす角度を示す、で定義される積層不整指数(Is)が1.75以上である請求項2に記載の樹脂用配合剤。
【請求項4】前記微結晶カルシウムシリケート・ハイドレートが電子顕微鏡下で0.1乃至10μの数平均粒子径と50乃至250ml/100gの吸油量と60乃至200m2/gの比表面積を有することを特徴とする請求項2記載の樹脂用配合剤。

【第1図】
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【第5図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【特許番号】第2833827号
【登録日】平成10年(1998)10月2日
【発行日】平成10年(1998)12月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−118545
【出願日】平成2年(1990)5月10日
【公開番号】特開平4−15237
【公開日】平成4年(1992)1月20日
【審査請求日】平成8年(1996)11月11日
【出願人】(999999999)水澤化学工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開 平3−33162(JP,A)
【文献】特開 平2−225314(JP,A)