説明

樹脂発泡体の製造方法、樹脂発泡体、断熱材料並びに回路板用材料

【課題】 圧縮加工を省略して生産性の向上を図ることができ、断熱性を確保できる樹脂発泡体の製造方法、樹脂発泡体、断熱材料並びに回路板用材料を提供する。
【解決手段】 イミド化反応が未完了の部分を残したポリイミド系樹脂製の成形体に不活性ガスを加圧下で含浸させ、成形体のポリイミド系樹脂に作用する圧力を急激に開放するとともに、加熱してポリイミド系樹脂を発泡させることにより樹脂発泡体を形成する。その後、加熱によりイミド化反応を選択的に進行させ、製造した樹脂発泡体を建築物の断熱材料や電気電子機器の回路板用材料に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気電子等の分野、特に高周波の用途等に使用される樹脂発泡体の製造方法、樹脂発泡体、断熱材料並びに回路板用材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イミド系樹脂の発泡体の製造方法については、従来より広く知られ、例えば特許文献1、2には、ポリエーテルイミドの発泡体の製造方法が開示されている。しかしながら、ポリエーテルイミドは、ガラス転移点(Tg)が217℃と低いので、エンジン周りや半田リフロー等の高温に晒される電気電子の用途に使用する場合には、不十分な耐熱性しか得ることができない。
また、特許文献3には、ガラス転移点(Tg)が300℃以上の発泡ポリイミドの製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開昭62‐39225号公報
【特許文献2】特開平7‐138402号公報
【特許文献3】特開2003‐82100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献3の製造方法の場合には、発泡倍率が20倍以上となるため、適正な発泡倍率を得るために圧縮加工が必要となり、生産性の向上を図ることができないという大きな問題がある。また、係る製造方法で製造された発泡体は、ガス透過性を有しているため(連泡)、断熱性に欠けるおそれが少なくない。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたもので、圧縮加工を省略して生産性の向上を図ることができ、しかも、断熱性を確保することのできる樹脂発泡体の製造方法、樹脂発泡体、断熱材料並びに回路板用材料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては上記課題を解決するため、イミド化反応が未完了の部分を残したポリイミド系樹脂に不活性ガスを加圧下で含浸させ、ポリイミド系樹脂に作用する圧力を開放し、その後、加熱してポリイミド系樹脂を発泡させることにより樹脂発泡体を形成することを特徴としている。
【0006】
なお、ポリイミド系樹脂を溶液キャスト法により略シート状に製膜し、この製膜したポリイミド系樹脂に不活性ガスを加圧下で含浸させることができる。
また、樹脂発泡体を形成した後にイミド化反応を進行させることができる。
【0007】
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1ないし4いずれかに記載の樹脂発泡体の製造方法により樹脂発泡体を製造したことを特徴としている。
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1ないし4いずれかに記載の樹脂発泡体の製造方法により製造した樹脂発泡体を断熱材料に用いたことを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1ないし4いずれかに記載の樹脂発泡体の製造方法により製造した樹脂発泡体を回路板用材料に用いたことを特徴としている。
【0009】
さらにまた、イミド化反応が未完了の部分を残したポリイミド系樹脂に超臨界流体を超臨界状態で含浸させ、ポリイミド系樹脂に作用する圧力を開放し、その後、加熱してポリイミド系樹脂を発泡させることにより樹脂発泡体を形成することを特徴としても良い。
【0010】
ここで、特許請求の範囲におけるポリイミド系樹脂には、少なくともイミド化反応が未完了の部分を一部に残したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等が含まれる。このポリイミド系樹脂には、上記各樹脂を変性した変性物、他の樹脂を混合した混合物が含まれる。さらに、樹脂発泡体、断熱材料、回路板用材料は、電気、電子、通信、建築、自動車等の分野で広く使用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧縮作業を省略して生産性の向上を図ることができ、しかも、断熱性を維持向上させることができるという効果がある。
また、樹脂発泡体を形成した後に加熱してイミド化反応を進行させれば、耐熱性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における樹脂発泡体の製造方法は、イミド化反応が未完了の部分を残したポリイミド系樹脂からなる成形体に不活性ガスを加圧下で含浸させ、この成形体のポリイミド系樹脂に作用する圧力を急激に開放するとともに、加熱してポリイミド系樹脂を発泡させることにより樹脂発泡体を形成し、その後、加熱によりイミド化反応を選択的に進行させ、製造した樹脂発泡体を建築物の断熱材料や電気電子機器の回路板用材料に適宜使用するようにしている。
【0013】
ポリイミド系樹脂は、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等からなり、一般的に化学式1、2のような構造を有するとともに、化学式3、4のようなイミド化反応が未完了の部分を有しており、各種形状の成形体に形成される。
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
ポリイミドとポリアミドイミドは、耐熱性の観点からガラス転移点(Tg)がそれぞれ300℃以上、260℃以上であることが好ましい。ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンから得られる分子内にポリアミド酸を有することが好ましい。また、ポリアミドイミドは、PMDA方法、酸クロリド法、あるいは脱フェノール法により得られる分子内にアミック酸を有することが好ましい。
【0019】
イミド化反応が未完了の部分を必要とするのは、イミド化の進行状況を調整することにより、発泡の状態を制御することができるからである。すなわち、イミド化が完結したポリイミドやポリアミドイミドは、発泡温度における貯蔵弾性率が高く、ガスの膨張を抑制して充分な発泡を得ることができない。また、貯蔵弾性率の低くなる領域が300℃以上と非常に高温であり、この領域では不活性ガスの急激な膨張により、破泡や気泡の合一を生じ、均一な樹脂発泡体を得ることができないからである。
【0020】
これに対し、ポリイミド系樹脂にイミド化反応が未完了の部分を残存させれば、充分かつ均一な樹脂発泡体を容易に得ることができる。イミド化の進行状況は、イミド化温度中に放置する時間により調整することができる。また、ポリイミド系樹脂の貯蔵弾性率は、良好な発泡を得る観点から105Pa〜108Paが好ましい。
【0021】
ポリイミド系樹脂の成形体は、キャスティング成形、押出成形、カレンダー成形、あるいは圧縮成形等の成形法により形成することができるが、押出成形、カレンダー成形、圧縮成形等の溶融成形では、成形中にイミド化反応が進行したり、イミド化の制御が困難であるため、イミド化の制御が容易なキャスティング成形が好ましい。
【0022】
このキャスティング成形により成形体を製造する場合には、先ず、ポリイミド系樹脂を極性溶剤に溶解し、その後、この溶液をダイスにより薄膜として金属製、樹脂製のエンドレスベルトあるいは二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム等の支持体上に塗布し、乾燥し、剥離することにより、フィルムあるいはシートの成形体を製造することができる。極性溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等の溶剤があげられる。
【0023】
押出成形により成形体を製造する場合には、単軸押出機や二軸押出機にTダイスあるいは丸ダイスを取り付けた成形設備でポリイミド系樹脂を溶融混練して押出し、次いで引き取りロールにより引き取れば、フィルムあるいはシートの成形体を製造することができる。
【0024】
カレンダー成形により成形体を製造する場合には、逆L型、L型、直立3本型、直立2本型、傾斜2本型、Z型、傾斜Z型等のカレンダー装置を使用することができ、ポリイミド系樹脂をカレンダーロールにより圧延することにより、フィルム、シート、板形の成形体を製造することができる。
【0025】
圧縮成形により成形体を製造する場合には、ポリイミド系樹脂を融点以上の温度に加熱した金型内に充填し、加熱圧縮すれば、板形の成形体を製造することができる。また、ポリイミド系樹脂を一旦ミキシングロールで溶融混練し、融点以上に加熱した金型内に溶融混練物を充填すれば、板形の成形体を得ることもできる。
【0026】
上記の方法により得られたポリイミド系樹脂製の成形体は、発泡成形を行える範囲内で熱処理し、イミド化して使用することができる。イミド化の熱処理は、ポリイミド系樹脂製の成形体の収縮を制限して行うことが望ましい。これは、自由収縮で乾燥させた場合には、部分収縮が起こるため、厚み斑となったり、さらには成形体の平面性が損なわれるおそれがあるからである。収縮を制限しつつ熱処理するには、例えばテンター乾燥機や金属枠に挟んで熱処理を行なえば良い。
【0027】
成形体には、本発明の特性を損なわない範囲で無機充填剤、有機充填剤、電磁波吸収剤、熱伝導性粒子、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、延伸助剤、あるいは滑剤等の添加剤を添加することができる。また、成形体の厚みは、特に限定されるものではないが、5〜5000μm以下が好ましい。
【0028】
不活性ガスとしては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等があげられるが、ポリイミド系樹脂中への含浸量を増大させたり、含浸速度を速める状態の作りやすさの観点から二酸化炭素が好ましい。この不活性ガスの含浸の条件としては、常温やそれ以上であれば良いが、含浸速度、含浸量、圧力開放により形成される発泡核の数、気泡径、気泡径の均一性の観点から常温以上、5MPa以上、より好ましくは二酸化炭素が超臨界状態となる31℃以上、7.4MPa以上が良い。また、この段階でのイミド化を進行させないため、200℃以下、高圧ガス取り扱いの安全性から30MPa以下が良い。
【0029】
超臨界状態とは、ガスの種類で定まった温度、及び圧力(臨界点)以上になると、超臨界流体の生じる状態をいい、換言すれば、臨界点以上における物質の状態をいう。例えば二酸化炭素の場合には、臨界温度が31.0℃、臨界圧力が7.4MPa、窒素の場合には、臨界温度が−147.0℃、臨界圧力が3.4MPaである。超臨界流体は、気体と液体の中間の性質を有し、液体並の高密度、気体並の拡散性(溶融樹脂中への溶解性)を併せ持つ流体である。このため、超臨界流体を使用すれば、ポリイミド系樹脂中への含浸速度が気体状態のガス等よりも早くなり、実に好ましい。
【0030】
不活性ガスの含浸時間は、特に限定されるものではなく、適宜変更すれば、発泡倍率や発泡状態を制御することも可能である。すなわち、含浸時間を短縮すれば、樹脂発泡体の熱伝導率や誘電率の調整が可能となる。また、ガス含浸量が0〜飽和状態までの間で含浸時間を任意に選択することにより、発泡倍率を調整することができ、これにより表層のみ発泡した樹脂発泡体を作成することもできる。
【0031】
ポリイミド系樹脂に作用する圧力は、1MPa/秒以上の速度で急激に開放されるが、この圧力の急激に開放に伴う熱力学的不安定性の誘発により発泡核が形成され、ポリイミド系樹脂と不活性ガスの混合物が得られる。1MPa/秒以上の速度を要するのは、1MPa/秒未満の場合には、発泡核の数が少なくなり、気泡が大きく不均一になるからである。圧力の開放速度は速ければ速いほど良い。
【0032】
ポリイミド系樹脂と不活性ガスの混合物が得られたら、これを加熱すれば、発泡核を基点としたガスの膨張が生じ、気泡が成長して樹脂発泡体を製造することができる。加熱温度は、必要とする発泡倍率や気泡径により選択すれば良いが、樹脂の貯蔵弾性率が105Pa〜108Paになる領域の温度が好ましい。これは、105Pa未満になる高温の場合には、ガスの急激な膨張により破泡、気泡の合一が生じ、均一な樹脂発泡体を得られないからである。また、108Paを超える場合には、ガスの膨張が妨げられ、発泡不足となるからである。
【0033】
樹脂発泡体に耐熱性が必要な場合には、発泡後の加熱によりイミド化反応を進行させて完全にすれば良い。
【0034】
上記方法によれば、適正な発泡倍率を得るための圧縮作業が不要となり、生産性の向上を図ることができる。また、樹脂発泡体に優れた断熱性を付与することもできる。さらに、耐熱性のある均一微細な独立気泡を有する樹脂発泡体を製造することができ、280℃を超える耐熱性を要する断熱材、低誘電率・ハンダリフロー耐熱を必要とする回路板用材料の提供が可能となる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明に係る樹脂発泡体の製造方法、樹脂発泡体、断熱材料並びに回路板用材料の実施例を比較例と共に説明する。
実施例1、2、3と比較例1、2の樹脂発泡体をそれぞれ製造してその貯蔵弾性率、発泡倍率、気泡の生成状態、表面性、イミド化率、熱伝導率、及び誘電率等を測定し、その結果を表1等にまとめた。
【0036】
貯蔵弾性率(E´)
幅7mm、長さ32mmの試験片と粘弾性アナライザー〔レオメトリック社製 RSA−11〕とを用い、振動周波数1Hz、昇温速度5℃/分、加重100gの条件で測定した。
発泡倍率
樹脂発泡体の密度(ρf)を水中置換法により測定し、発泡前の成形体の密度(ρ)との比ρ/ρfで算出した。
【0037】
気泡の生成状態
樹脂発泡体の断面を走査型電子顕微鏡〔日本電子社製 JSM−5300LV〕で写真撮影し、目視によりA、B、Cの評価基準で評価した。
A: 均一(気泡径が約30μmであった)
B: 不均一(気泡径が数μm〜数十μmの気泡が混在し、気泡数が少なく、気泡の生成が
まばらであった)
C: 不均一(破泡や気泡の合一で生成した、気泡径が数mmの巨大気泡が混在し、気泡数
がごく僅かであり、気泡の生成がまばらであった)
【0038】
表面性
樹脂発泡体の表面を目視により○、×の評価基準で評価した。
○: 樹脂発泡体の表面に膨れ等がなく、未発泡体と同等の表面を有していた
×: 樹脂発泡体の表面に数百μm〜数mmの巨大な膨れが認められた
【0039】
イミド化率
フィルム化前のポリアミドイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂フィルムの赤外線吸収スペクトル〔センサーテクノロジーズ社製 赤外分光分析装置マイクロATR〕を全反射吸収測定法で測定し、イミドカルボニル基の対称伸縮振動帯(1780cm-1、平行2色性)と、内部標準としてベンゼン間骨格伸縮振動体(1500cm-1、平行2色性)との吸光度比A1780/A1500で評価した。吸光度比が一定となったときにイミド化が完結した。
【0040】
イミド化率は以下の式により求めた。
イミド化率=X−Y/Z−Y×100
X: ポリアミドイミド樹脂フィルムの吸光度比A1780/A1500
Y: フィルム化前のポリアミドイミド樹脂の吸光度比A1780/A1500
Y=0.08
Z: イミド化が完結したポリアミドイミド樹脂フィルムの吸光度比A1780/A1500
Z=0.23
【0041】
熱伝導率
迅速熱伝導率計〔京都電子工業社製、QTM−500〕を用い、基準物質との比較により求めた。基準物質は、発泡ポリエチレン(熱伝導率:0.0357W/mK)、シリコーンゴム(熱伝導率:0.238W/mK)、及び石英ガラス(熱伝導率:1.409W/mK)の3種類を使用した。
誘電率
RFインピーダンスマテリアルアナライザー〔ヒューレットパッカード社製、HP4291A〕を用いて測定した。
【0042】
実施例1
先ず、ポリアミドイミド樹脂100質量部を固形分濃度が30質量%となるようにN−メチル−2−ピロリドン中に溶解してポリアミドイミド樹脂溶液を調製し、このポリアミドイミド樹脂溶液を、乾燥後の厚さが100μmとなるようバーコート法で厚さ100μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、150℃に加熱した熱風オーブン中に1.5時間放置して乾燥させた。
【0043】
熱風オーブンで乾燥させた後、常温まで冷却して二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離し、平均厚さが96μmの成形体であるポリアミドイミド樹脂フィルムを得た。ポリアミドイミド樹脂フィルムを得たら、その吸光度比A1780/A1500と貯蔵弾性率をそれぞれ測定し、図1に貯蔵弾性率を示した。ポリアミドイミド樹脂フィルムの吸光度比A1780/A1500は0.13であり、イミド化率は33%であった。
【0044】
なお、フィルム化前のポリアミドイミド樹脂の吸光度比A1780/A1500は、0.08であり、イミド化が完結したポリアミドイミド樹脂フィルムの吸光度比A1780/A1500は、0.23であった。
【0045】
次いで、ポリアミドイミド系樹脂フィルムを20cm×20cmに切り出して質量を測定し、耐圧容器中に封入して温度40℃、圧力8MPaの超臨界状態の二酸化炭素中に1時間静置し、二酸化炭素を含浸させた。二酸化炭素を含浸させたら、直ちにポリアミドイミド系樹脂フィルムの質量を測定し、二酸化炭素の含浸量を測定してその結果を表1にまとめた。
【0046】
次いで、二酸化炭素を含浸させたポリアミドイミド系樹脂フィルムを温度160℃に加熱したオイルバス中に1分間浸漬、発泡させ、樹脂発泡体を製造するとともに、発泡倍率を測定してその結果を表1にまとめた。得られた発泡体の密度は0.39g/cm3であった。
なお、ポリアミドイミド樹脂の密度は、1.29g/cm3であった。また、樹脂発泡体の断面を走査型電子顕微鏡で写真撮影し、図2とした。
【0047】
実施例2
実施例1で得られたポリアミドイミド系樹脂フィルムを金属製枠に固定して温度260℃の熱風オーブン中に30分間放置し、得られたポリアミドイミド樹脂フィルムの吸光度比A1780/A1500及び貯蔵弾性率をそれぞれ測定し、図3に貯蔵弾性率を示した。ポリアミドイミド樹脂フィルムの吸光度比A1780/A1500は0.15であり、イミド化率は47%であった。
【0048】
次いで、得られたポリアミドイミドフィルム樹脂フィルムを20cm×20cmに切り出してその質量を測定し、耐圧容器中に封入して温度60℃、圧力10MPaの超臨界状態の二酸化炭素中に30分間静置し、二酸化炭素を含浸させた。こうして二酸化炭素を含浸させたら、直ちにポリアミドイミド系樹脂フィルムの質量を測定し、二酸化炭素含浸量を測定してその結果を表1にまとめた。
【0049】
次いで、二酸化炭素を含浸させたポリアミドイミド系樹脂フィルムを温度200℃に加熱した隙間0.2mmに金属製金型に1分間入れ、発泡させて樹脂発泡体を製造し、発泡倍率を測定してその結果を表1にまとめた。得られた発泡体の密度は0.47g/cm3であった。なお、ポリアミドイミド樹脂の密度は、1.32g/cm3であった。
【0050】
実施例3
実施例2で得られたポリアミドイミド系樹脂フィルムを金属製枠に固定して温度315℃の熱風オーブン中に10分間放置し、ポリアミドイミド樹脂フィルムの吸光度比A1780/A1500及び貯蔵弾性率をそれぞれ測定し、図4に貯蔵弾性率を示した。ポリアミドイミド樹脂フィルムの吸光度比A1780/A1500は0.20であり、イミド化率は80%であった。
【0051】
次いでポリアミドイミドフィルム樹脂フィルムを20cm×20cmに切り出してその質量を測定し、耐圧容器中に封入して温度25℃、圧力6MPaの超臨界状態の二酸化炭素中に3時間静置し、二酸化炭素を含浸させた。含浸後、直ちにポリアミドイミド系樹脂フィルムの質量を測定し、二酸化炭素含浸量を測定してその結果を表1にまとめた。
【0052】
次いで、二酸化炭素を含浸させたポリアミドイミド系樹脂フィルムを温度300℃に加熱した隙間0.2mmに金属製金型に1分間入れ、発泡させて樹脂発泡体を製造し、発泡倍率を測定してその結果を表1にまとめた。得られた樹脂発泡体の密度は0.55g/cm3であった。なお、ポリアミドイミド樹脂の密度は、1.34g/cm3であった。
【0053】
比較例1
実施例2で得られたポリアミドイミド系樹脂フィルムを金属製枠に固定して温度315℃の熱風オーブン中に1時間放置し、完全にイミド化させた。得られたポリアミドイミド樹脂フィルムの吸光度比A1780/A1500及び貯蔵弾性率をそれぞれ測定し、貯蔵弾性率の測定結果を図5に示した。ポリアミドイミド樹脂フィルムの吸光度比A1780/A1500は0.23であり、イミド化率は100%であった。
【0054】
ポリアミドイミド系樹脂フィルムを20cm×20cmに切り出してその質量を測定し、耐圧容器中に封入して温度40℃、圧力8MPaの超臨界状態の二酸化炭素中に1時間静置し、二酸化炭素を含浸させた。含浸後、直ちにポリアミドイミド系樹脂フィルムの質量を測定し、二酸化炭素含浸量を測定してその結果を表1にまとめた。また、樹脂発泡体の断面を走査型電子顕微鏡で写真撮影し、図6とした。
【0055】
比較例2
先ず、ポリアミドイミド系樹脂をミキシングロールにより温度340℃で5分間溶融混練し、ミキシングロールからポリアミドイミド樹脂を剥離し、ポリアミドイミド樹脂混練物を作製した。こうしてポリアミドイミド樹脂混練物を作製したら、このポリアミドイミド樹脂混練物を冷却して金属製の金型に入れ、350℃で予熱し、引き続き350℃、20MPaの圧力を加えて5分間圧縮成形し、20MPaの圧力を加えた状態で常温により冷却し、厚み530μmの板状成形物を作製した。ポリアミドイミド樹脂の板状成形物の貯蔵弾性率を図7に示した。
【0056】
次いで、得られたポリアミドイミドフィルム樹脂の板状成形物を20cm×20cmに切り出してその質量を測定し、耐圧容器中に封入して温度25℃、圧力6MPaの二酸化炭素中に3日間静置し、二酸化炭素を含浸させた。含浸後、直ちにポリアミドイミド樹脂の板状成形物の質量を測定し、二酸化炭素含浸量を測定してその結果を表1にまとめた。
【0057】
そして、二酸化炭素を含浸させたポリアミドイミド系樹脂フィルムを温度300℃に加熱した金属製金型に1分間入れ、発泡させてその結果を表1にまとめた。
【0058】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る樹脂発泡体の製造方法の実施例1における貯蔵弾性率を示すグラフである。
【図2】本発明に係る樹脂発泡体の製造方法の実施例1における樹脂発泡体の断面を示す写真である。
【図3】本発明に係る樹脂発泡体の製造方法の実施例2における貯蔵弾性率を示すグラフである。
【図4】本発明に係る樹脂発泡体の製造方法の実施例3における貯蔵弾性率を示すグラフである。
【図5】本発明に係る樹脂発泡体の製造方法の比較例1における貯蔵弾性率を示すグラフである。
【図6】本発明に係る樹脂発泡体の製造方法の比較例1における樹脂発泡体の断面を示す写真である。
【図7】本発明に係る樹脂発泡体の製造方法の比較例2における貯蔵弾性率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミド化反応が未完了の部分を残したポリイミド系樹脂に不活性ガスを加圧下で含浸させ、ポリイミド系樹脂に作用する圧力を開放し、その後、加熱してポリイミド系樹脂を発泡させることにより樹脂発泡体を形成することを特徴とする樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】
ポリイミド系樹脂を溶液キャスト法により略シート状に製膜し、この製膜したポリイミド系樹脂に不活性ガスを加圧下で含浸させる請求項1記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項3】
樹脂発泡体を形成した後にイミド化反応を進行させる請求項1又は2記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれかに記載の樹脂発泡体の製造方法により製造されたことを特徴とする樹脂発泡体。
【請求項5】
請求項1ないし3いずれかに記載の樹脂発泡体の製造方法により製造した樹脂発泡体を用いたことを特徴とする断熱材料。
【請求項6】
請求項1ないし3いずれかに記載の樹脂発泡体の製造方法により製造した樹脂発泡体を用いたことを特徴とする回路板用材料。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−70377(P2007−70377A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255430(P2005−255430)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】