説明

樹脂発泡体シート及び樹脂発泡複合体

【課題】見掛け密度が低く、薄く柔軟で、巻き取り時の安定性(巻取安定性)に優れる樹脂発泡体シートを提供する。
【解決手段】見掛け密度が0.03〜0.30g/cm3、50%圧縮時の圧縮応力が5.0N/cm2以下、厚みが0.05mm以上0.40mm以下、長さが5m以上、幅が300mm以上であり、上記樹脂発泡体シートにおいて、式;(厚み公差)/(厚みの中心値)×100より求められる値は、25%以下であることを特徴とする樹脂発泡体シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂発泡体シート及び該樹脂発泡体シートを含む樹脂発泡複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡体は、搬送時の緩衝材、断熱材、包装材や建材をはじめ、電子機器のシール材や緩衝材として用いられている。近年、電子機器の小型化や画面の大型化に伴いシール材や緩衝材として使用される樹脂発泡体の面積は小さくなっており、樹脂発泡体には、小さな面積でも十分なシール性や緩衝性を発揮する柔軟性が求められている。また、電子機器では薄層化も進んでおり、上記樹脂発泡体には、薄層化も求められている。
【0003】
薄い樹脂発泡体として、発泡中または後工程において圧縮処理や延伸処理が施される方法や発泡後に塗工処理が施される方法により得られる発泡シートが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかし、上記発泡シートには、発泡倍率を低くすることが難しいという問題があり、25%圧縮した際の反発力(25%圧縮時の反発応力)が3N/cm2を超えるなど、圧縮した際の反発力が大きいという問題があった。
【0004】
近年、携帯機器の薄型化に伴い、樹脂発泡体が用いられる設計ギャップ(ギャップ、隙間)が非常に狭くなり(例えば、0.1mmのギャップ)、樹脂発泡体は設計公差なども考慮して50%以上に圧縮されて用いられることも珍しくない。しかし、このような表示機器の非常に狭い設計ギャップに上記の圧縮した際の反発力が大きい樹脂発泡体を用いると、高い反発力から、例えば表示部の液晶に表示ムラなどが発生し、表示不良を引き起こすことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−190195号公報
【特許文献2】特開2010−1407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂発泡体は、市場で流通する際には、連続的に巻き取られ、「連続性ロール」や「長尺ロール」などのロール状の形態をとることが多い。このため、樹脂発泡体は、巻き取りの際にシワなどが発生せず、安定して巻き取ることが可能であることが好ましい。
【0007】
従って、本発明の目的は、見掛け密度が低く、薄く柔軟で、巻き取り時の安定性(巻取安定性)に優れる樹脂発泡体シートを提供することにある。
【0008】
近年、タッチパネルを搭載しているスマートフォンのような機器では多数の部材が積層されているので、薄層化だけではなく、各部材の厚み公差が小さくなるよう求められている。このため、上記機器に使用される樹脂発泡体には、高い厚み精度が求められている。
【0009】
このため、本発明の他の目的は、見掛け密度が低く、薄く柔軟で、巻取安定性に優れ、さらに厚み精度に優れる樹脂発泡体シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、樹脂発泡体の厚み方向の一部を溶融させてバルク(非発泡状態)に戻すことにより、樹脂発泡体の強度を保ち、柔軟性といった物性の低下を抑えながら、薄い樹脂発泡体シートが得られることを見出した。さらに、樹脂発泡体の厚み方向の一部を溶融させてバルク(非発泡状態)に戻すことにより、上記に加えて、厚み精度に優れる樹脂発泡体シートが得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、見掛け密度が0.03〜0.30g/cm3、50%圧縮時の圧縮応力が5.0N/cm2以下、厚みが0.05mm以上0.40mm以下、長さが5m以上、幅が300mm以上であることを特徴とする樹脂発泡体シートを提供する。
【0012】
上記樹脂発泡体シートは、下記式(1)より求められる値が25%以下であることが好ましい。
(厚み公差)/(厚みの中心値)×100 (1)
厚み公差:長さ方向の1点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、さらに上記長さ方向の1点から長さ方向に1m移動した点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、得られた全ての測定値の最大値と最小値の差をいう。
厚みの中心値:長さ方向の1点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、さらに上記長さ方向の1点から長さ方向に1m移動した点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、得られた全ての測定値を小さい順に並べたとき中央に位置する値をいう。
【0013】
上記樹脂発泡体シートは、少なくとも一方の面の、下記式(2)で定義される表面被覆率が40%以上であることが好ましい。
表面被覆率(%)=[(表面の面積)−(表面に存在する孔の面積)]/(表面の面積)×100 (2)
【0014】
上記樹脂発泡体シートは、樹脂組成物を発泡させ、さらに表面を加熱溶融処理することにより形成されることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明は、上記樹脂発泡体シートの少なくとも一方の面側に粘着剤層を有する樹脂発泡複合体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂発泡体シートは、上記構成を有するため、見掛け密度が低く、薄く柔軟である。また、巻取安定性に優れる。さらに、高い厚み精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、連続スライス装置の概略図である。
【図2】図2は、加熱ロールを有する連続処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[樹脂発泡体シート]
本発明の樹脂発泡体シートは、樹脂発泡体のシート状物である。本発明の樹脂発泡体シートは、巻き取られ、ロール状(巻回体)であってもよい。なお、本明細書において、「見掛け密度が0.03〜0.30g/cm3、50%圧縮時の圧縮応力が5.0N/cm2以下、厚みが0.05mm以上0.40mm以下、長さが5m以上、幅が300mm以上である樹脂発泡体シート」を「本発明の長尺樹脂発泡体シート」と称する場合がある。
【0019】
本発明の長尺樹脂発泡体シートの厚みは、0.05mm以上0.40mm以下であり、好ましくは0.07mm以上0.30mm以下、より好ましくは0.10mm以上0.25mm以下である。上記厚みが0.05mm以上であるので必要な強度を確保でき、好ましい。また、上記厚みが0.40mm以下であるので適用されるギャップが小さくても樹脂発泡体の機能を発揮でき、好ましい。
【0020】
上記厚みは、樹脂発泡体シートの長さ方向の1点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、さらに上記長さ方向の1点から長さ方向に1m移動した点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、得られた全ての測定値の平均値である。
【0021】
本発明の長尺樹脂発泡体シートの幅は、300mm以上(例えば300〜1500mm)であり、好ましくは400mm以上(例えば400〜1200mm)、より好ましくは500mm以上(例えば500〜1000mm)である。上記幅が300mm以上であるので、自由度の高い設計や加工ができ、好ましい。
【0022】
本発明の長尺樹脂発泡体シートの長さは、5m以上(例えば5〜1000m)であり、好ましくは30m以上(例えば30〜500m)、より好ましくは50m以上(例えば50〜300m)である。
【0023】
本発明の長尺樹脂発泡体シートの見掛け密度(密度)は、0.03〜0.30g/cm3であり、より好ましくは0.04〜0.25g/cm3、さらに好ましくは0.05〜0.20g/cm3である。上記見掛け密度が0.03g/cm3以上であるので、強度を確保でき、好ましい。上記見掛け密度が0.30g/cm3以下であるので、良好な柔軟性を得ることができ、好ましい。
【0024】
本発明の長尺樹脂発泡体シートの50%圧縮時の圧縮応力は、5.0N/cm2以下であり、より好ましくは4.0N/cm2以下、さらに好ましくは3.0N/cm2以下である。上記50%圧縮時の圧縮応力が5.0N/cm2以下であると、良好な柔軟性が得られ、圧縮された際の反発力を低下することができ、好ましい。
【0025】
なお、上記50%圧縮時の圧縮応力は、JIS K 6767に基づいて、樹脂発泡体シートの厚み方向に初めの厚さの50%だけ圧縮したときの応力(N)を測定し、該応力を単位面積(cm2)当たりに換算することにより求められる。
【0026】
本発明の長尺樹脂発泡体シートの引張強度は、特に限定されないが、0.5MPa以上(例えば0.5〜15MPa)が好ましく、より好ましくは0.7MPa以上(例えば0.7〜10MPa)である。上記引張強度が0.5MPa以上であると、強度に優れ、また、樹脂発泡体シートの作製時や使用時に長さ方向に力がかかっても、破断や千切れが抑制され、好ましい。
【0027】
なお、上記引張強度は、樹脂発泡体シートの長さ方向の引張強度であり、JIS K 6767に基づいて、求められる。
【0028】
また、本発明の長尺樹脂発泡体シートは、下記式(1)より求められる値が、25%以下であることが好ましく、より好ましく15%以下、さらに好ましくは10%以下である。
(厚み公差)/(厚みの中心値)×100 (1)
厚み公差:長さ方向の1点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、さらに上記長さ方向の1点から長さ方向に1m移動した点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、得られた全ての測定値の最大値と最小値の差をいう。
厚みの中心値:長さ方向の1点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、さらに上記長さ方向の1点から長さ方向に1m移動した点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、得られた全ての測定値を小さい順に並べたとき中央に位置する値をいう。
【0029】
上記の「式(1)より求められる値」が25%以内であると、巻き取り時のシワの発生、特に高速での巻き取り時のシワの発生を抑制し、より良好な巻取安定性を得ることができ好ましい。また、高い厚み精度を得ることができ、好ましい。なお、本明細書において、巻き取り時の高速とは、例えば10〜40m/分の速度をいう。
【0030】
本発明の長尺樹脂発泡体シートは、巻き取り時のシワの発生、特に高速での巻き取り時のシワの発生を抑制し、良好な巻取安定性を得る点、及び、高い厚み精度を得る点より、少なくとも一方の面が、表面被覆率が40%以上である面であることが好ましい。つまり、本発明の長尺樹脂発泡体シートは、表面被覆率が40%以上である面を有することが好ましい。
【0031】
上記表面被覆率は、より良好な巻取安定性を得る点、及び、より高い厚み精度を得る点より、40%以上であることが好ましく、より好ましくは45%以上、さらに好ましくは50%以上である。
【0032】
上記表面被覆率は、表面に存在する非孔部(表面に存在する孔ではない部分、バルク、非発泡状態の部分)の割合を示す指標であり、下記式(2)で定義される。なお、表面被覆率が100%であれば、その面には孔部が存在しないこととなる。
表面被覆率(%)=[(表面の面積)−(表面に存在する孔の面積)]/(表面の面積)×100 (2)
【0033】
本発明の長尺樹脂発泡体シートは、特に限定されないが、樹脂を含有する樹脂組成物を発泡させることにより形成されることが好ましい。中でも、ポリオレフィン系樹脂を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させることにより形成されることが好ましい。つまり、本発明の長尺樹脂発泡体シートは、長尺ポリオレフィン系樹脂発泡体シートであることが好ましい。なお、上記樹脂組成物には、樹脂の他に、その他の成分や添加剤が含まれていてもよい。また、上記樹脂、上記その他の成分、上記添加剤等は、単独で又は2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0034】
なお、上記樹脂組成物中の、樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全量(100重量%)に対して、50重量%以上が好ましく、より好ましくは60重量%以上である。
【0035】
本発明の長尺樹脂発泡体シートの気泡構造(セル構造)は、特に限定されないが、独立気泡構造、半連続半独立気泡構造(独立気泡構造と連続気泡構造とが混在している気泡構造であり、その割合は特に限定されない)が好ましく、より好ましくは半連続半独立気泡構造である。本発明の長尺樹脂発泡体シートの独立気泡構造部の割合は、特に限定されないが、柔軟性の点から、本発明の長尺樹脂発泡体シートの全体積(100%)に対して、40%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以下である。気泡構造は、例えば、発泡成形の際に、樹脂組成物に含浸させる発泡剤の量や圧力により発泡倍率を調節することにより、制御することができる。
【0036】
本発明の長尺樹脂発泡体シートの気泡構造における平均セル径(平均気泡径)は、特に限定されないが、例えば、10〜150μmが好ましく、より好ましくは、30〜120μmである。発泡体の平均セル径が10μm以上であることにより、衝撃吸収性(クッション性)が向上する。発泡体の平均セル径が150μm以下であることにより、微細なセルを有する発泡体となる。さらに、微小なクリアランスに用いることが可能となり、さらに防塵性が向上する。
【0037】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物に含まれる上記ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、α−オレフィンを必須のモノマー成分として構成(形成)されたポリマー、すなわち、分子中(1分子中)に、少なくともα−オレフィンに由来する構成単位を有するポリマーであることが好ましい。上記ポリオレフィン系樹脂は、例えば、α−オレフィンのみから構成されたポリマーであってもよいし、α−オレフィンと、α−オレフィン以外のモノマー成分から構成されたポリマーであってもよい。
【0038】
上記ポリオレフィン系樹脂は、単独重合体(ホモポリマー)、又は2種以上のモノマーを含む共重合体(コポリマー)であってもよい。また、上記ポリオレフィン系樹脂が共重合体である場合、ランダムコポリマーやブロックコポリマーであってもよい。上記ポリオレフィン系樹脂は、1種の重合体であってもよいし、2種以上の重合体を組み合わせたものであってもよい。
【0039】
上記ポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、発泡倍率の高いポリオレフィン系樹脂発泡体が得られる点から、直鎖状のポリオレフィンであることが好ましい。
【0040】
上記α−オレフィンとしては、例えば、炭素数2〜8のα−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、へプテン−1、オクテン−1など)が挙げられる。なお、上記α−オレフィンは、単独で又は2種以上が組み合わされて用いられていてもよい。
【0041】
上記α−オレフィン以外のモノマー成分としては、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコールなどのエチレン性不飽和単量体が挙げられる。α−オレフィン以外のモノマー成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0042】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(プロピレンホモポリマー)、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとプロピレンとエチレン及びプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンとエチレン性不飽和単量体との共重合体などが挙げられる。
【0043】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、耐熱性の点から、プロピレンを必須のモノマー成分として構成されたポリマー(ポリプロピレン系重合体)、すなわち、少なくともプロピレンに由来する構成単位を有するポリマーが好ましい。すなわち、上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(プロピレンホモポリマー)、エチレンとプロピレンとの共重合体、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体などのポリプロピレン系重合体が挙げられる。上記プロピレン以外のα−オレフィンは、単独で又は2種以上が組み合わされて用いられていてもよい。
【0044】
上記α−オレフィンの含有量は、特に限定されないが、例えば、上記ポリオレフィン系樹脂を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。
【0045】
また、上記ポリオレフィン系樹脂組成物には、上記ポリオレフィン系樹脂の他に、その他の成分として、「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー」が含まれていてもよい。
【0046】
上記ゴムとしては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレン、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルブチルゴムなどの天然または合成ゴムが挙げられる。上記ゴムは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0047】
上記熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチレンなどの熱可塑性オレフィン系エラストマー;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体、それらの水素添加物ポリマーなどの熱可塑性スチレン系エラストマー;熱可塑性ポリエステル系エラストマー;熱可塑性ポリウレタン系エラストマー;熱可塑性アクリル系エラストマーなどが挙げられる。上記熱可塑性エラストマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0048】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物中の、上記「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー」の含有量は、特に限定されないが、上記ポリオレフィン系樹脂組成物全量(100重量%)に対して、0〜70重量%が好ましく、より好ましくは20〜60重量%、さらに好ましくは20〜50重量%である。
【0049】
さらに、上記ポリオレフィン系樹脂組成物には、上記ポリオレフィン系樹脂の他に、その他の成分として、「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー、並びに軟化剤を含む混合物(組成物)」が含まれていてもよい。なお、上記「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー、並びに軟化剤を含む混合物(組成物)」は、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。
【0050】
上記「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー、並びに軟化剤を含む混合物(組成物)」としては、例えば、ゴムと熱可塑性エラストマーと軟化剤とを少なくとも含む混合物、ゴムと軟化剤とを少なくとも含む混合物、熱可塑性エラストマーと軟化剤とを少なくとも含む混合物などが挙げられる。中でも、「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー、並びに軟化剤のみからなる混合物」が好ましい。
【0051】
上記「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー、並びに軟化剤を含む混合物」におけるゴムとしては、特に限定されないが、上記「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー」のゴムとして例示された上記ゴムが好ましく挙げられる。なお、該ゴムは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0052】
また、上記「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー、並びに軟化剤を含む混合物」におけるゴム及び/又は熱可塑性エラストマーとしては、発泡可能なものであれば特に限定されないが、例えば、周知慣用の「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー」が挙げられる。中でも、上記「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー」の熱可塑性エラストマーとして例示された上記熱可塑性エラストマーが好ましく挙げられる。なお、該熱可塑性エラストマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0053】
上記「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー、並びに軟化剤を含む混合物」における「ゴムおよび/または熱可塑性エラストマー」としては、オレフィン系エラストマーが好ましく、特に好ましくはポリオレフィン成分とオレフィン系ゴム成分とがミクロ相分離した構造を有したオレフィン系エラストマーである。該ポリオレフィン成分とオレフィン系ゴム成分とがミクロ相分離した構造を有したオレフィン系エラストマーとしては、ポリプロピレン樹脂(PP)とエチレン−プロピレンゴム(EPM)またはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)とからなるエラストマーが好ましく例示される。なお、上記、ポリオレフィン成分とオレフィン系ゴム成分の質量比は、相溶性の点から、ポリオレフィン成分/オレフィン系ゴム=90/10〜10/90であることが好ましく、より好ましくは80/20〜20/80である。
【0054】
上記軟化剤としては、特に限定されないが、ゴム製品に一般的に用いられる軟化剤が好ましく挙げられる。上記軟化剤を含有させることにより、加工性、柔軟性を向上させることができる。
【0055】
上記軟化剤の具体例としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系物質;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール類;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油;トール油、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル化合物;マイクロクリスタリンワックス、サブ(ファクチス)、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、液状ポリイソプレン、液状ポリブテン、液状エチレン・α−オレフィン系共重合体等が挙げられる。中でも、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系の鉱物油、液状ポリイソプレン、液状ポリブテン、液状エチレン・α−オレフィン系共重合体が好ましく、より好ましくは液状ポリイソプレン、液状ポリブテン、液状エチレン・α−オレフィン系共重合体である。
【0056】
上記「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー、並びに軟化剤を含む混合物」中の、軟化剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオレフィン成分100質量部に対して、1〜200質量部が好ましく、より好ましくは5〜100質量部、さらに好ましくは10〜50質量部である。なお、軟化剤の含有量が多すぎると、ゴムおよび/または熱可塑性エラストマーとの混練時に分散不良を起こす場合がある。
【0057】
上記「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー、並びに軟化剤を含む混合物」における添加剤としては、特に限定されないが、例えば、老化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、分散剤、可塑剤、カーボンブラック、帯電防止剤、界面活性剤、張力改質剤、流動性改質剤などが挙げられる。なお、このような添加剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0058】
上記「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー、並びに軟化剤を含む混合物」中の、上記添加剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン成分100質量部に対して、0.01〜100質量部が好ましく、より好ましくは0.05〜50質量部、さらに好ましくは0.1〜30質量部である。なお、上記含有量が0.01質量部以上であると、添加剤を添加することによる効果をより発現しやすくなるので、好ましい。
【0059】
上記「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー、並びに軟化剤を含む混合物」のメルトフローレート(MFR)(230℃)は、特に限定されないが、良好な成形性を得る点より、3〜10g/10分が好ましく、より好ましくは4〜9g/10分である。
【0060】
上記「ゴム及び/又は熱可塑性エラストマー、並びに軟化剤を含む混合物」における「JIS A硬度」は、特に限定されないが、30〜90°が好ましく、より好ましくは40〜85°である。上記「JIS A硬度」が30°以上であると、高発泡倍率の樹脂発泡体が得やすくなり、好ましい。また、上記「JIS A硬度」が90°以下であると、柔軟な樹脂発泡体が得やすくなり、好ましい。なお、本明細書における「JIS A硬度」は、ISO7619(JIS K6253)に基づき測定された硬度をいうものとする。
【0061】
さらに、上記ポリオレフィン系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤が含まれていてもよい。上記添加剤としては、例えば、気泡核剤、結晶核剤、可塑剤、滑剤、着色剤(顔料、染料等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、界面活性剤、張力改質剤、収縮防止剤、流動性改質剤、クレイ、加硫剤、表面処理剤、難燃剤などが挙げられる。なお、上記添加剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0062】
上記気泡核剤が樹脂組成物に含まれていると、均一で微細なセル構造を有する樹脂発泡体を容易に得ることができるので、上記ポリオレフィン系樹脂組成物には、気泡核剤が含まれていることが好ましい。
【0063】
上記気泡核剤としては、例えば、粒子が挙げられる。該粒子としては、例えば、タルク、シリカ、アルミナ、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マイカ、モンモリロナイト等のクレイ、カーボン粒子、グラスファイバー、カーボンチューブなどが挙げられる。なお、粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0064】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物中の、上記気泡核剤の含有量は、特に限定されないが、上記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.5〜125重量部が好ましく、より好ましくは1〜120重量部である。
【0065】
上記粒子の平均粒子径(粒径)は、特に限定されないが、0.1〜20μmであることが好ましい。上記平均粒子径が0.1μm未満であると発泡核剤として機能しない場合があり、一方、粒径が20μmを超えると発泡成形時にガス抜けの原因となる場合がある。
【0066】
上記難燃剤が樹脂組成物に含まれていると、樹脂発泡体が難燃性となり、電気又は電子機器用途などの難燃性が要求される用途に用いることができる。このため、上記ポリオレフィン系樹脂組成物には、難燃剤が含まれていてもよい。
【0067】
上記難燃剤は、パウダー状であってもよいし、パウダー状以外の形態をしていてもよい。パウダー状の難燃剤としては、無機難燃剤が好ましい。無機難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、ノンハロゲン−ノンアンチモン系無機難燃剤などが挙げられる。ここで、塩素系難燃剤や臭素系難燃剤は、燃焼時に人体に対して有害で機器類に対して腐食性を有するガス成分を発生し、また、リン系難燃剤やアンチモン系難燃剤は、有害性や爆発性などの問題がある。このため、無機難燃剤としては、ノンハロゲン−ノンアンチモン系無機難燃剤が好ましい。ノンハロゲン−ノンアンチモン系無機難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム・酸化ニッケルの水和物、酸化マグネシウム・酸化亜鉛の水和物等の水和金属化合物などが挙げられる。なお、水和金属酸化物は表面処理されていてもよい。なお、難燃剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0068】
上記難燃剤は、難燃性を有し、且つ発泡倍率の高いポリオレフィン系樹脂発泡体が得られる点から、気泡核剤としての機能も有することが好ましい。気泡核剤としての機能を有する難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
【0069】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物中の、上記難燃剤の含有量は、特に限定されないが、上記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、30〜150重量部が好ましく、より好ましくは60〜120重量部である。
【0070】
また、上記滑剤が樹脂組成物に含まれていると、樹脂組成物の流動性を向上でき、熱劣化を抑制できる。このため、上記ポリオレフィン系樹脂組成物には、滑剤が含まれていてもよい。
【0071】
上記滑剤としては、特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックスなどの炭化水素系滑剤;ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、硬化ヒマシ油、ステアリン酸ステアリルなどのエステル系滑剤などが挙げられる。なお、滑剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0072】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物中の、上記滑剤の含有量は、特に限定されないが、上記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0073】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物は、特に限定されないが、上記ポリオレフィン系樹脂、必要に応じてその他の成分、必要に応じて加えられる添加剤を、混練することにより作製されてもよい。また、一軸(単軸)混練押出機や二軸混練押出機など公知の溶融混練押出装置により混練し、押し出すことにより得てもよい。
【0074】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物の形としては、特に限定されないが、例えば、ストランド状;シート状;平板状;ストランドを水冷又は空冷し、適当な長さに裁断したペレット状などが挙げられる。中でも、生産性の点から、混練してペレット化しておくことが好ましい。
【0075】
本発明の長尺樹脂発泡体シートは、特に限定されないが、上記樹脂組成物(例えば、上記ポリオレフィン系樹脂組成物)を発泡させることにより形成されることが好ましい。特に、上記樹脂組成物(例えば、上記ポリオレフィン系樹脂組成物)を発泡させた後、さらに、表面を加熱溶融処理することにより形成されることが好ましい。
【0076】
上記樹脂組成物(例えば、上記ポリオレフィン系樹脂組成物)を発泡させる方法としては、特に限定されないが、例えば、物理的発泡方法や化学的発泡方法が挙げられる。上記物理的発泡方法は、低沸点液体(発泡剤)を樹脂組成物に含浸(分散)させ、次に発泡剤を揮発させることによりセル(気泡)を形成させる方法である。また、上記化学的発泡方法は、樹脂組成物に添加した化合物の熱分解により生じたガスによりセルを形成させる方法である。中でも、樹脂発泡体シートの汚染を回避する点、微細で均一な気泡構造の得やすさの点より、物理的発泡方法が好ましく、発泡剤として高圧のガスを用いる物理的発泡方法がより好ましい。ゆえに、本発明の長尺樹脂発泡体シートは、特に、上記ポリオレフィン系樹脂組成物に、高圧のガス(例えば、後述の不活性ガス)を含浸させた後、発泡させて形成されることが好ましい。
【0077】
物理的発泡方法において用いられる上記発泡剤としては、特に限定されないが、微細で且つセル密度の高い気泡構造の得やすさの点から、ガスが好ましく、特に、樹脂発泡体シートを構成する樹脂(上記樹脂組成物が含有する樹脂、例えば上記ポリオレフィン系樹脂)に対して不活性なガス(不活性ガス)が好ましい。
【0078】
上記不活性ガスは、特に限定されないが、例えば、二酸化炭素、窒素ガス、空気、ヘリウム、アルゴンなどが挙げられる。特に、上記不活性ガスは、樹脂組成物への含浸量が多く、含浸速度の速い点から、二酸化炭素が好ましい。なお、上記不活性ガスは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0079】
上記発泡剤の混合量(含有量、含浸量)は、特に限定されないが、上記樹脂組成物の総重量(100重量%)に対して、2〜10重量%が好ましい。
【0080】
上記不活性ガスは、樹脂組成物への含浸速度を速めるという点から、含浸時に超臨界状態であることが好ましい。つまり、本発明の長尺樹脂発泡体シートは、上記樹脂組成物(例えば、上記ポリオレフィン系樹脂組成物)を、超臨界流体を用いて発泡させることにより形成されることが好ましい。上記不活性ガスが超臨界流体(超臨界状態)であると、樹脂組成物への溶解度が増大し、高濃度の含浸(混入)が可能である。また、高濃度で含浸することが可能であるため、含浸後に圧力を急激に降下させた際には、気泡核の発生が多くなり、その気泡核が成長してできる気泡の密度が気孔率が同じであっても大きくなるため、微細な気泡を得ることができる。なお、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.4MPaである。
【0081】
発泡剤としてガスを用いる物理的発泡方法としては、樹脂組成物に高圧のガス(例えば、不活性ガスなど)を含浸させた後、減圧(例えば大気圧まで)する工程(圧力を解放する工程)を経て発泡させることにより形成する方法が好ましい。具体的には、樹脂組成物を成形することにより未発泡成形物を得て、該未発泡成形物に高圧のガスを含浸させた後、減圧(例えば大気圧まで)する工程を経て発泡させることにより形成する方法、または、溶融した樹脂組成物にガス(例えば、不活性ガスなど)を加圧状態下で含浸させた後、減圧(例えば大気圧まで)して発泡させるとともに成形に付して形成する方法などが挙げられる。
【0082】
すなわち、本発明の長尺樹脂発泡体シートを形成する場合には、上記樹脂組成物(例えば、上記ポリオレフィン系樹脂組成物)を、シート状などの適宜な形状に成形して未発泡樹脂成形体(未発泡成形物)とした後、この未発泡樹脂成形体に、高圧のガスを含浸させ、圧力を解放することにより発泡させるバッチ方式で行ってもよく、また、上記樹脂組成物を高圧条件下、高圧のガスと共に混練し、成形すると同時に圧力を解放し、成形と発泡を同時に行う連続方式で行ってもよい。
【0083】
上記バッチ方式において、未発泡樹脂成形体を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を用いて成形する方法;樹脂組成物を、ローラ、カム、ニーダ、バンバリ型等の羽根を設けた混練機を使用して均一に混練しておき、熱板のプレスなどを用いて所定の厚さにプレス成形する方法;樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形する方法などが挙げられる。また、未発泡樹脂成形体の形状は、特に限定されないが、例えば、シート状、ロール状、板状等が挙げられる。上記バッチ方式では、所望の形状や厚さの未発泡樹脂成形体が得られる適宜な方法により樹脂組成物が成形される。
【0084】
上記バッチ方式では、未発泡樹脂成形体を耐圧容器中に入れて、高圧のガスを注入(導入、混入)し、未発泡樹脂成形体中にガスを含浸させるガス含浸工程、十分にガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、樹脂組成物中に気泡核を発生させる減圧工程を経て、気泡構造が形成される。
【0085】
一方、上記連続方式では、樹脂組成物を押出機(例えば、単軸押出機、二軸押出機等)や射出成形機を使用して混練しながら、高圧のガスを注入(導入、混入)し、十分に高圧のガスを樹脂組成物に含浸させる混練含浸工程、押出機の先端に設けられたダイスなどを通して樹脂組成物を押し出すことにより圧力を解放し(通常、大気圧まで)、成形と発泡を同時に行う成形減圧工程により樹脂組成物が発泡成形される。
【0086】
上記バッチ方式や連続方式では、必要に応じて、加熱により気泡核を成長させる加熱工程が設けられてもよい。なお、加熱工程を設けずに、室温で気泡核を成長させてもよい。さらにまた、気泡を成長させた後、必要により冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化させてもよい。高圧のガスの導入は、連続的に行ってもよく不連続的に行ってもよい。なお、気泡核を成長させる際の加熱の方法は、特に限定されないが、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの公知乃至慣用の方法が挙げられる。
【0087】
上記バッチ方式のガス含浸工程や上記連続方式の混練含浸工程において、ガスを含浸させるときの圧力は、ガスの種類や操作性等を考慮して適宜選択されるが、例えば、5MPa以上(例えば、5〜100MPa)が好ましく、より好ましくは7MPa以上(例えば、7〜100MPa)である。すなわち、上記樹脂組成物に、圧力5MPa以上(例えば、圧力5〜100MPa)のガスを含浸させることが好ましく、圧力7MPa以上(例えば、圧力7〜100MPa)の不活性ガスを含浸させることがより好ましい。ガスの圧力が、5MPaより低い場合には、発泡時の気泡成長が著しく、セルが大きくなりすぎ、例えば、防塵効果が低下するなどの不都合が生じやすくなり、好ましくない。これは、圧力が低いと、ガスの含浸量が高圧時に比べて相対的に少なく、気泡核形成速度が低下して形成される気泡核数が少なくなるため、1気泡あたりのガス量が逆に増えて気泡径が極端に大きくなるからである。また、5MPaより低い圧力領域では、含浸圧力を少し変化させるだけでセル径、気泡密度が大きく変わるため、セル径及び気泡密度の制御が困難になりやすい。
【0088】
また、上記バッチ方式におけるガス含浸工程や上記連続方式における混練含浸工程で、ガスを含浸させるときの温度(含浸温度)は、用いるガスや樹脂の種類によって異なり、広い範囲で選択できるが、操作性等を考慮した場合、10〜350℃が好ましい。より具体的には、バッチ方式での含浸温度は、10〜250℃が好ましく、より好ましくは40〜240℃であり、さらに好ましくは60〜230℃である。また、連続方式では、含浸温度は、60〜350℃が好ましく、より好ましくは100〜320℃であり、さらに好ましくは150〜300℃である。なお、高圧のガスとして二酸化炭素を用いる場合には、超臨界状態を保持するため、含浸時の温度(含浸温度)は32℃以上(特に40℃以上)であることが好ましい。また、ガスを含浸させた後、発泡成形する前に、ガスを含浸させた樹脂組成物を、発泡成形に適した温度(例えば150〜190℃)まで冷却してもよい。
【0089】
さらに、上記バッチ方式や上記連続方式において、減圧工程(圧力を解放する工程)での減圧速度は、特に限定されないが、均一で微細なセルを有する気泡構造を得る点から、
好ましくは5〜300MPa/秒である。
【0090】
気泡核を成長させるために、加熱工程を設ける場合には、加熱温度は、例えば、40〜250℃が好ましく、より好ましくは60〜250℃である。
【0091】
なお、本発明の長尺樹脂発泡体シートの気泡構造、密度、相対密度は、構成する樹脂の種類に応じて、樹脂組成物を発泡成形する際の発泡方法や発泡条件(例えば、発泡剤の種類や量、発泡の際の温度や圧力や時間など)を選択することにより調整される。
【0092】
上述より、本発明の長尺樹脂発泡体シートは、特に、上記樹脂組成物を発泡させた後、さらに、表面を加熱溶融処理することにより形成されることが好ましい。より、具体的には、上記樹脂組成物を発泡させて発泡体(シート状の発泡体)を得た後、該発泡体の表面を加熱溶融処理することにより形成されることが好ましい。このように、厚み方向の表面を溶融させることで、柔軟性の低下を最小限に抑えつつ、長さ方向の引張強さを高くして、破断や千切れ等の発生を抑制し、長尺樹脂発泡体シートを容易に連続して得ることができ、また、発泡部分が非発泡状態(バルク)に戻ることで、元々あった表面の粗さ(厚みの誤差)が小さくなり、厚み精度が向上するので、高速であっても、シワ(巻き取る際の巻きジワ)の発生を抑制できる。なお、本明細書において、上記樹脂組成物を発泡させることにより得られる、シート状の発泡体であって、加熱溶融処理する前の発泡体を「発泡構造体」と称する場合がある。
【0093】
加熱溶融処理は、特に限定されないが、上記の「式(1)より求められる値」や上記表面被覆率を調整して、巻き取り時のシワの発生、特に高速での巻き取り時のシワの発生を抑制し、より良好な巻取安定性を得る点、及び、厚み精度を向上させる点より、上記発泡構造体の少なくとも一方の面について全体的に施されることが好ましい。すなわち、本発明の長尺樹脂発泡体シートを、上記樹脂組成物を発泡させた後、さらに、表面を加熱溶融処理することにより形成する場合、上記樹脂組成物を発泡させることにより発泡構造体を得た後、該発泡構造体の片面又は両面に加熱溶融処理を施すことにより形成することが好ましい。また、同じ面に加熱溶融処理を2回以上施してもよい。
【0094】
上記加熱溶融処理としては、特に限定されないが、例えば、熱ロールによるプレス処理、レーザー照射処理、加熱されたロール上での接触溶融処理、フレーム処理などが挙げられる。熱ロールによるプレス処理の場合、熱ラミネーターなどを用いて好適に処理を行うことができる。なお、ロールの材質としては、ゴム、金属、フッ素系樹脂(例えば、テフロン(登録商標))などが挙げられる。
【0095】
上記加熱溶融処理の際の温度は、特に限定されないが、樹脂発泡体シートに含まれる樹脂(例えば、上記ポリオレフィン系樹脂など)の軟化点又は融点より15℃低い温度(より好ましくは樹脂発泡体シートに含まれる樹脂の軟化点又は融点より12℃低い温度)以上であること好ましく、また、樹脂発泡体シートに含まれる樹脂の軟化点又は融点より20℃高い温度(より好ましくは樹脂発泡体シートに含まれる樹脂の軟化点又は融点より10℃高い温度)以下であることが好ましい。加熱溶融処理の際の温度が構成する樹脂の軟化点又は融点より15℃低い温度より高いと、加熱溶融処理を効率よく施せる点で好ましい。また、加熱溶融処理の際の温度が、構成する樹脂の軟化点又は融点より20℃高い温度より低いと、収縮してシワなどが発生することを抑制でき、好ましい。
【0096】
また、加熱溶融処理の処理時間としては、処理温度にもよるが、例えば、0.1秒〜10秒程度が好ましく、好ましくは0.5秒〜7秒程度である。時間が短すぎると溶融が進まないことがあり、また、時間が長すぎると収縮してシワなどが発生することがあるためである。
【0097】
特に、上記加熱溶融処理は、上記の「式(1)より求められる値」や上記表面被覆率を調整して、巻き取り時のシワの発生、特に高速での巻き取り時のシワの発生を抑制し、より良好な巻取安定性を得る点、及び、厚み精度をより向上させる点より、発泡構造体の通過するギャップ(隙間、間隔)を調整できる加熱溶融処理装置を用いることが好ましい。
【0098】
このような加熱溶融処理装置としては、例えば、図2のギャップを調整可能な加熱ロール(熱誘電ロール)を有する連続処理装置が挙げられる。
【0099】
本発明の長尺樹脂発泡体シートは、見掛け密度が低く、薄く柔軟で、巻き取り時の安定性(巻取安定性)に優れる。このため、幅広で、長い長尺ロールを得ることができる。また、本発明の長尺樹脂発泡体シートは、厚み精度を高くすることができる。
【0100】
本発明の長尺樹脂発泡体シートは、各種部材又は部品を、所定の部位に取り付ける(装着する)際に用いられる防塵材、シール材(発泡シール材)、防音材、緩衝材等の用途に好適に用いられる。なお、本発明の長尺樹脂発泡体シートは、用途に応じて種々の形状に加工されていてもよい。
【0101】
[樹脂発泡複合体]
本発明の樹脂発泡複合体は、本発明の長尺樹脂発泡体シートを少なくとも含む。本発明の樹脂発泡複合体は、本発明の長尺樹脂発泡体シートと他の層とが積層された構成であることが好ましい。なお、本発明の樹脂発泡複合体の形状は、特に限定されないが、シート状(フィルム状)、ロール状が好ましい。また、用途に応じて種々の形状に加工されていてもよい。
【0102】
上記他の層は、本発明の長尺樹脂発泡体シートの片面側にのみ設けられていてもよいし、両面側に設けられていてもよい。また、上記他の層は、少なくとも1層設けられる。さらに、上記他の層は、単層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。
【0103】
上記他の層としては、例えば、粘着剤層、中間層(例えば密着性を向上させる下塗り層)、基材層(例えばフィルム層、不織布層など)などが挙げられる。
【0104】
中でも、上記他の層としては、粘着剤層が好ましい。すなわち、本発明の樹脂発泡複合体は、本発明の長尺樹脂発泡体シートの少なくとも一方の面側に粘着剤層を有することが好ましい。粘着剤層を有していると、被着体への固定や仮止めに有利であり、組み付け性の点で有利である。また、樹脂発泡体シート上に粘着剤層を介して加工用台紙を設けることができる。
【0105】
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤など)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などが挙げられる。上記粘着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。なお、上記粘着剤は、エマルジョン系粘着剤、溶剤系粘着剤、ホットメルト型粘着剤、オリゴマー系粘着剤、固系粘着剤などのいずれの形態の粘着剤であってもよい。
【0106】
上記粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、2〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜100μmである。粘着剤層は、薄層であるほど、端部のゴミや埃の付着を防止する効果が高いため、薄い方が好ましい。なお、粘着剤層は、単層であってもよいし、積層体であってもよい。
【0107】
また、上記粘着剤層は、少なくとも1層の下層を介して、本発明の長尺樹脂発泡体シートの少なくとも一方の面側に形成されていてもよい。このような下層としては、例えば、上記粘着剤層以外の粘着剤層、中間層、下塗り層、基材層などが挙げられる。中でも、破断強度の向上の点から、基材層が好ましく、特にプラスチックフィルム層などのフィルム層や不織布層などが好ましい。
【0108】
本発明の長尺樹脂発泡体シート又は本発明の樹脂発泡複合体は、特に限定されないが、各種部材又は部品を、所定の部位に取り付ける(装着する)用途に好ましく用いられる。特に、電気又は電子機器において、電気又は電子機器を構成する部品を所定の部位に取り付ける(装着する)際に好適に用いられる。すなわち、本発明の樹脂発泡体シート及び本発明の樹脂発泡複合体は、電気又は電子機器用であることが好ましい。
【0109】
上記の各種部材又は部品としては、特に限定されないが、例えば、電気又は電子機器類における各種部材又は部品などが好ましく挙げられる。このような電気又は電子機器用の部材又は部品としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置に装着される画像表示部材(表示部)(特に、小型の画像表示部材)や、いわゆる「携帯電話」や「携帯情報端末」等の移動体通信の装置に装着されるカメラやレンズ(特に、小型のカメラやレンズ)等の光学部材又は光学部品などが挙げられる。
【0110】
より具体的には、本発明の長尺樹脂発泡体シート又は本発明の樹脂発泡複合体は、防塵、遮光、緩衝等を目的として、LCD(液晶ディスプレイ)等の表示部周りや、LCD(液晶ディスプレイ)等の表示部と筐体(窓部)との間に挟み込んで使用することができる。
【0111】
また、本発明の長尺樹脂発泡体シートは、薄く柔軟で、さらに厚み精度を高くできるので、本発明の長尺樹脂発泡体シート又は本発明の樹脂発泡複合体を、タッチパネルを搭載しているスマートフォンのような多数の部品や部材が積層している電気又は電子機器に用いても、高い反発力を生じることはなく、表示部の液晶表示ムラなどの表示不良を引き起こすことはない。
【実施例】
【0112】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0113】
[実施例]
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:45重
量部、ポリオレフィン系エラストマーと軟化剤(パラフィン系伸展油)の混合物(MFR(230℃):6g/10分、JIS A硬度:79°、軟化剤をポリオレフィン系エラストマー100質量部に対して30質量部配合):55重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「旭♯35」旭カーボン株式会社製):10重量部、ステアリン酸モノグリセリド:1重量部、及び脂肪酸アミド(ラウリン酸ビスアミド):1.5重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ペレット全量に対して5.6重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから円筒状に押出して、発泡体の内側表面を冷却するマンドレルと、押出機の環状ダイから押し出された円筒状の発泡体の外側表面を冷却する発泡体冷却用エアリングの間を通過させ、直径の一部を切断してシート状に展開して長尺発泡体原反を得た。この長尺発泡体原反において、平均セル径は55μm、見掛け密度は0.041g/cm3であった。
この長尺発泡体原反を所定の幅に切断し(スリット加工)、図1に示すような連続スライス装置(スライスライン)を用いて、1面ずつ表面の低発泡層を剥がしとり、樹脂発泡体A及び樹脂発泡体Bを得た。
樹脂発泡体A:厚み0.30mm、幅550mm
樹脂発泡体B:厚み0.40mm、幅550mm
【0114】
(実施例1)
上記樹脂発泡体Aを、誘導発熱ロールの温度を160℃、ギャップを0.20mmにセットした上記連続処理装置内を通過させることにより、片面を熱で溶融処理して、スリット加工し、その後巻き取って、片面が熱溶融処理された樹脂発泡体シートを得た。なお、引き取り速度は、20m/minとした。
【0115】
(実施例2)
上記樹脂発泡体Bを、誘導発熱ロールの温度を160℃、ギャップを0.30mmにセットした上記連続処理装置内を通過させることにより、片面を熱で溶融処理して、スリット加工し、その後巻き取って、片面が熱溶融処理された樹脂発泡体シートを得た。なお、引き取り速度は、20m/minとした。
【0116】
(実施例3)
上記樹脂発泡体Aを、誘導発熱ロールの温度を160℃、ギャップを0.20mmにセットした上記連続処理装置内を通過させることにより、片面を熱で溶融処理して、スリット加工し、その後巻き取って、巻回体を得た。なお、引き取り速度は、20m/minとした。
次に、上記巻回体を巻き戻して、誘導発熱ロールの温度を160℃、ギャップを0.10mmにセットした上記連続処理装置内を通過させることにより、溶融処理がされていない面(未処理面)を熱で溶融処理して、スリット加工し、その後巻き取って、両面が熱溶融処理された樹脂発泡体シートを得た。なお、引き取り速度は、20m/minとした。
【0117】
(実施例4)
上記樹脂発泡体Bを、巻き戻し、誘導発熱ロールの温度を160℃、ギャップを0.30mmにセットした上記連続処理装置内を通過させることにより、片面を熱で溶融処理して、スリット加工し、その後巻き取って、巻回体を得た。なお、引き取り速度は、20m/minとした。
次に、上記巻回体を巻き戻して、誘導発熱ロールの温度を160℃、ギャップを0.20mmにセットした上記連続処理装置内を通過させることにより、溶融処理がされていない面(未処理面)を熱で溶融処理して、スリット加工し、その後巻き取って、両面が熱溶融処理された樹脂発泡体シートを得た。なお、引き取り速度は、20m/minとした。
【0118】
(実施例5)
上記樹脂発泡体Aを、誘導発熱ロールの温度を160℃、ギャップを0.25mmにセットした上記連続処理装置内を通過させることにより、片面を熱で溶融処理し、巻き取って、巻回体を得た。なお、引き取り速度は、20m/minとした。
次に、上記巻回体を巻き戻して、誘導発熱ロールの温度を160℃、ギャップを0.20mmにセットした上記連続処理装置内を通過させることにより、先程、溶融処理した面を熱で溶融処理して、スリット加工し、その後巻き取って、同一面が2回熱溶融処理された樹脂発泡体シートを得た。なお、引き取り速度は、20m/minとした。
【0119】
(実施例6)
上記樹脂発泡体Aを、誘導発熱ロールの温度を160℃、ギャップを0.20mmにセットした上記連続処理装置内を通過させることにより、片面を熱で溶融処理し、巻き取って、巻回体を得た。なお、引き取り速度は、20m/minとした。
次に、上記巻回体を巻き戻して、誘導発熱ロールの温度を160℃、ギャップを0.13mmにセットした上記連続処理装置内を通過させることにより、先程、溶融処理した面を熱で溶融処理して、スリット加工し、その後巻き取って、同一面が2回熱溶融処理された樹脂発泡体シートを得た。なお、引き取り速度は、20m/minとした。
【0120】
(比較例1)
上記樹脂発泡体Aを、誘導発熱ロールの温度を30℃、ギャップを1.00mmにセットした上記連続処理装置内を通過させ、スリット加工し、その後巻き取って、樹脂発泡体シートを得た。なお、引き取り速度は、20m/minとした。
【0121】
[評価]
上記実施例及び上記比較例で得られた樹脂発泡体シートについて、下記の測定又は評価を行った。結果は表1に示した。
【0122】
(見掛け密度)
樹脂発泡体シートより、幅40mm×長さ40mmの打抜き刃型にて打抜き、測定用サンプルを得た。そして、上記測定用サンプルより、JIS K 6767に従って見かけ密度(g/cm3)を求めた。
具体的には、上記測定用サンプルの幅、長さを測定し、測定端子の直径(φ)20mmである1/100ダイヤルゲージにて測定用サンプルの厚さ(mm)を測定した。これらの測定値からポリオレフィン系樹脂発泡体の体積(cm3)を算出した。次に、測定用サンプルの重量(g)を、最小目盛り0.01g以上の上皿天秤にて測定した。上記の体積及び重量の測定値より、見かけ密度(g/cm3)を算出した。
【0123】
(50%圧縮時の反発応力)
JIS K 6767に基づいて、樹脂発泡体シートの厚み方向に初めの厚さの50%だけ圧縮したときの応力(N)を測定し、該応力を単位面積(cm2)当たりに換算して、50%圧縮時の反発応力(N/cm2)とした。
【0124】
(引張強度(引張強さ))
JIS K 6767の引張強さ及び伸びの項に基づいて、樹脂発泡体シートの長さ方向の引張強度(MPa)を測定した。
【0125】
(厚み、厚み公差(厚みレンジ)、厚みの中心値、「式(1)より求められる値」、厚みの標準偏差)
樹脂発泡体シートの長さ方向の1点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、さらに上記長さ方向の1点から長さ方向に1m移動した点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、得られた全ての測定値から、平均値、最大値、最小値を求めた。
厚みの測定の際には、測定端子の直径(φ)20mmである1/100ダイヤルゲージを用いた。
上記測定値の平均値を、樹脂発泡体シートの「厚み」(mm)とした。
上記最大値と上記最小値の差を、「厚み公差(厚みレンジ)」(mm)とした。
上記測定値を小さい順に並べたときに中央に位置する値を、「厚みの中心値」(mm)とした。
上記測定値から標準偏差を求め、「厚みの標準偏差」とした。
また、下記式(1)より、「式(1)より求められる値」(%)を算出した。
(厚み公差)/(厚みの中心値)×100 (1)
【0126】
(表面被覆率)
樹脂発泡体シートの熱で溶融処理された面の表面被覆率を測定し、その値を樹脂発泡体シートの表面被覆率とした。なお、両面が熱で溶融処理された面である場合には両面の表面被覆率を求めて、小さい方の値をその樹脂発泡体シートの表面被覆率とした。また、両面が熱で溶融処理されていない面である場合は任意の一方の面の表面被覆率を測定し、その値を樹脂発泡体シートの表面被覆率とした。
表面被覆率は、下記式(2)より、求めた。
表面被覆率(%)=[(表面の面積)−(表面に存在する孔の面積)]/(表面の面積)×100 (2)
表面の面積及び表面に存在する孔の面積は、マイクロスコープ(装置名「VHX600」、株式会社キーエンス製)用いて得られた測定面の画像より求めた。
マイクロスコープによる観察では、照明方法として側射照明を採用し、その照度は17000ルクスとした。また、倍率は500倍とした。
照明兼カメラとして照明内蔵レンズカメラ(装置名「0P72404」、株式会社キーエンス製)を使用し、またレンズとしてズームレンズ(商品名「VH−Z100」、株式会社キーエンス製)を使用した。
なお、照度は、照度計(商品名「VHX600」、カスタム社製)を用いて調節した。
【0127】
(厚み精度)
厚み精度は、下記式(3)より求めた。
なお、目的値は、狙いとする厚みの値(狙い厚みの値、目的とする厚みの値)である。例えば、実施例1の目的値はセットしたギャップの大きさである0.20mmであり、実施例3の目的値は最終的にセットしたギャップの大きさである0.10mmである。
厚み精度(%)=[(厚み公差)/2]/(目的値)×100 (3)
【0128】
(巻取安定性の評価)
樹脂発泡体シート作製時における巻き取りの際に千切れや破断が発生するか否か、巻き取られた巻回体にシワ(巻きジワ)が発生するか否かを確認し、下記基準で評価した。
評価基準
「問題なし」:千切れや破断が発生せず、且つ、シワが発生しない。
「シワ発生」:シワが発生
【0129】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の樹脂発泡体シート及び樹脂発泡複合体は、例えば、各種部材又は部品を、所定の部位に取り付ける際に用いられる防塵材、シール材、防音材、緩衝材等の用途に用いられる。
【符号の説明】
【0131】
1 連続スライス装置(スライスライン)
11 繰出ロール
12 ピンチロール
13 刃(スライス刃)
14 ガイドロール
15 巻取ロール
16 樹脂発泡体
2 加熱ロールを有する連続処理装置
21 繰出ロール
22 ガイドロール
23 加熱ロール(熱誘電ロール)
24 冷却ロール
25 巻取ロール
26 樹脂発泡体
a 流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
見掛け密度が0.03〜0.30g/cm3、50%圧縮時の圧縮応力が5.0N/cm2以下、厚みが0.05mm以上0.40mm以下、長さが5m以上、幅が300mm以上であることを特徴とする樹脂発泡体シート。
【請求項2】
下記式(1)より求められる値が、25%以下である請求項1記載の樹脂発泡体シート。
(厚み公差)/(厚みの中心値)×100 (1)
厚み公差:長さ方向の1点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、さらに前記長さ方向の1点から長さ方向に1m移動した点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、得られた全ての測定値の最大値と最小値の差をいう。
厚みの中心値:長さ方向の1点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、さらに前記長さ方向の1点から長さ方向に1m移動した点で一方の端部から他方の端部まで幅方向10mm毎に厚みを測定し、得られた全ての測定値を小さい順に並べたとき中央に位置する値をいう。
【請求項3】
少なくとも一方の面の、下記式(2)で定義される表面被覆率が40%以上である請求項1又は2記載の樹脂発泡体シート。
表面被覆率(%)=[(表面の面積)−(表面に存在する孔の面積)]/(表面の面積)×100 (2)
【請求項4】
樹脂組成物を発泡させ、さらに表面を加熱溶融処理することにより形成される請求項1〜3の何れか1項に記載の樹脂発泡体シート。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の樹脂発泡体シートの少なくとも一方の面側に粘着剤層を有する樹脂発泡複合体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−100459(P2013−100459A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−196779(P2012−196779)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】