説明

樹脂発泡体展開補助装置

【課題】 樹脂発泡体を確実にシート状に展開することができ、樹脂発泡体自体の揺れによる幅方向端辺の幅方向での変移を抑えることができる樹脂発泡体展開補助装置の提供。
【解決手段】 連続的に円筒状に形成される樹脂発泡体が送り方向に送られるのに伴い該樹脂発泡体を周方向の一箇所で連続的に切断する切断部と、該切断部で切断されシート状に展開された樹脂発泡体の幅方向各端部側に配置されて幅方向各端辺の幅方向位置を調節する挟持ローラとを備えたシート製造装置における、前記挟持ローラと切断部との間に配置され、該切断部から挟持ローラに至る途中で樹脂発泡体にテンションを付与可能に構成されるとともに、切断された樹脂発泡体の幅方向各端部側をそれぞれ載せて案内する案内部を備え、該各案内部は幅方向外側部が順次下傾斜している樹脂発泡体展開補助装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状に連続して形成される樹脂発泡体を周方向の一箇所で切断してシート状に展開するのに用いられる樹脂発泡体展開補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状に連続して形成される樹脂発泡体を順次下流側に送る途中で、樹脂発泡体の周方向の一箇所で切断してシート状に展開し、シート状の樹脂発泡体を順次巻き取るようにしたシート製造装置として、例えば下記特許文献1の技術が提案されている。
【0003】
従来のシート製造装置は、連続的に円筒状に形成される樹脂発泡体が送り方向に送られるのに伴い樹脂発泡体を周方向の一箇所で連続的に切断するカッターと、カッターで切断されてシート状に展開された樹脂発泡体の幅方向端部側を挟持可能な挟持ローラと、シート状の樹脂発泡体を巻き取る巻取ロールとを備えている。
【0004】
挟持ローラは、巻取ロールに巻き取られるシート状の樹脂発泡体の幅方向端辺(カッターで切断された箇所でもある)を揃えるためのものである。すなわち挟持ローラは、カッターと巻取ロールとの間に配置され、且つ樹脂発泡体の幅方向に一対で配置されて樹脂発泡体の幅方向一端部側、幅方向他端部側をそれぞれ挟持可能に構成されている。そして、必要に応じてシート状の樹脂発泡体の幅方向端部側を挟持することで、巻取ロールに巻き取られるシート状の樹脂発泡体の幅方向端辺が揃うように調節する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−246782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、巻取ロールに巻き取られる樹脂発泡体の幅方向端辺を精度よく揃えるためには、カッターで切断された後の樹脂発泡体を、折れや波うちのないシート状に確実に展開する必要がある。
【0007】
また、樹脂発泡体の幅方向端辺はカッターで切断された箇所でもある。したがって、カッターで切断された後に、展開された樹脂発泡体が揺れると、その分だけ樹脂発泡体の幅方向端辺の位置が定まりにくく、そうなると、巻取ロールに巻き取られる樹脂発泡体の幅方向端辺が不揃いになる要因になる。このため、樹脂発泡体が挟持ローラに送られてくるまでに、樹脂発泡体自体の揺れによる幅方向端辺の、幅方向での位置ずれ(変移)をできるだけ抑える必要がある。
【0008】
しかしながら、従来のシート製造装置では、巻取ロールに巻き取られるシート状の樹脂発泡体の幅方向端辺を揃えるために樹脂発泡体の幅方向一端部側、幅方向他端部側をそれぞれ挟持可能に構成された挟持ローラだけしか備えていない。
【0009】
したがって、樹脂発泡体が挟持ローラに送られてくるまでに樹脂発泡体自体が大きく揺れてしまうと、樹脂発泡体の幅方向端辺を精度よく揃えて巻取ロールに巻き取ることが難しく、このような問題を解消し得る装置の提案が望まれていた。
【0010】
そこで本発明は上記課題に鑑み、樹脂発泡体を確実にシート状に展開することができ、樹脂発泡体自体の揺れによる幅方向端辺の幅方向での位置ずれを抑えることができる樹脂発泡体展開補助装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の樹脂発泡体展開補助装置は、連続的に円筒状に形成される樹脂発泡体が送り方向に送られるのに伴い該樹脂発泡体を周方向の一箇所で連続的に切断する切断部と、該切断部で切断されシート状に展開された樹脂発泡体の幅方向各端部側に配置されて幅方向各端辺の幅方向位置を調節する挟持ローラとを備えたシート製造装置における、前記挟持ローラと切断部との間に配置され、該切断部から挟持ローラに至る途中で樹脂発泡体にテンションを付与可能に構成されるとともに、切断された樹脂発泡体の幅方向各端部側をそれぞれ載せて案内する案内部を備え、該各案内部は幅方向外側部が下傾斜していることを特徴としている。
【0012】
上記構成の樹脂発泡体展開補助装置は、切断部から挟持ローラに至る途中で、切断された樹脂発泡体の幅方向各端部側を、幅方向外側部が下傾斜した各案内部に載せて樹脂発泡体を平面状に展開するのを補助して樹脂発泡体を確実にシート状に展開し、樹脂発泡体に対してテンションを付与して、樹脂発泡体自体の揺れによる幅方向端辺の幅方向での変移を抑える。
【0013】
本発明の樹脂発泡体展開補助装置では、幅方向外側部は、外側ほど急峻な下傾斜となるように湾曲している構成を採用することができる。このように構成することで、各案内部は急激に下傾斜しないから、樹脂発泡体に急激に折れ曲がる部分が生じない。
【0014】
本発明の樹脂発泡体展開補助装置では、各案内部は、それぞれ縦軸回りに回動自在に支持されて樹脂発泡体の送り方向に対する回動角度を調節可能とした構成を採用することができる。この構成によれば、案内部のうち少なくとも一方を縦軸回りに回動させて角度調節することで、樹脂発泡体に働く送り方向の引張力が調節できる。
【0015】
本発明の樹脂発泡体展開補助装置では、各案内部の間に、切断された樹脂発泡体をその幅方向中心部分で案内する中心案内部をさらに有し、該中心案内部及び各案内部が縦軸回りに一体的に回動自在に支持されて、中心案内部及び各案内部の樹脂発泡体の送り方向に対する回動角度を調節可能とした構成を採用することができる。この構成によれば、中心案内部及び各案内部を縦軸回りに一体的に回動させることで、樹脂発泡体に働く送り方向の引張力が調節できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂発泡体展開補助装置は、切断部から挟持ローラに至る途中で、切断された樹脂発泡体の幅方向各端部側を、幅方向外側部が下傾斜した各案内部に載せて樹脂発泡体を平面状に展開するのを補助するから、樹脂発泡体を確実にシート状に展開することができ、樹脂発泡体に対してテンションを付与することで、シート状の樹脂発泡体自体の揺れによる幅方向端辺の幅方向での変移を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一の実施形態におけるシート製造装置の全体概略構成側面図である。
【図2】同樹脂発泡体展開補助装置を表す正面図である。
【図3】同樹脂発泡体展開補助装置を表す平面図である。
【図4】同樹脂発泡体展開補助装置を表す側面図である。
【図5】本発明の第二の実施形態における樹脂発泡体展開補助装置を表す正面図である。
【図6】同樹脂発泡体展開補助装置を表す平面図である。
【図7】同樹脂発泡体展開補助装置を表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の樹脂発泡体展開補助装置の第一の実施形態を、図面に基づいて説明する。この樹脂発泡体展開補助装置は、シート製造装置に用いられるものであるから、はじめにシート製造装置の概略構成を説明する。図1に示すように、シート製造装置1は、円筒状の樹脂発泡体2を連続的に形成するための形成部3と、形成部3で形成された円筒状の樹脂発泡体2を展開するために切断する切断部4と、切断部4で切断された樹脂発泡体2を平面状に展開する展開部5と、展開した樹脂発泡体(以下「展開シート」と称する)を巻き取る巻取部6とを備えている。
【0019】
展開部5以外の構成は従来構成と同様であるから、詳細は省略して概略を説明する。形成部3は、押出機内で溶融混合されたポリエステル系樹脂と発泡剤との溶融混合物を、該押出機の先端部に取り付けたダイのアウトリングとコアにより形成されて円環状の隙間を通して低圧領域に押し出して発泡させ該発泡により円筒状の樹脂発泡体を得て、円柱状の冷却マンドレル7の外周に沿わせて冷却する。
【0020】
切断部4は、冷却マンドレル7に不図示の装着手段を介して装着されたカッター8を備えている。このカッター8は、冷却マンドレル7の下部に装着されており、形成部3で形成された円筒状の樹脂発泡体2を、展開のために周方向の一箇所で連続的に切断する。
【0021】
巻取部6は、カッター8で切断され、展開部5(後に詳述する)でシート状に展開された樹脂発泡体2を順次巻き取る部分であり、巻取ロール9を備えている。
【0022】
次に、図2ないし図5に基づいて、展開部5の構成を説明する。展開部5は挟持ローラ(「クロスガイダー」とも称す)10,11と、樹脂発泡体展開補助装置(以下、単に「展開補助装置」と称す)12とから構成されている。挟持ローラ10,11と展開補助装置12の位置関係として、挟持ローラ10,11が巻取部6側である下流側に配置され、展開補助装置12が切断部4側である上流側に配置されている。
【0023】
挟持ローラ10,11は、展開シート2Aを巻取ロール9に幅方向の位置ずれなく巻き取られるように調節するものである。詳細には、挟持ローラ10,11は、切断部4で切断され平面状に展開された展開シート2Aを、その幅方向一端部2a側、幅方向他端部2b側で挟持するよう、樹脂発泡体2である展開シート2Aの幅方向に一対で配置されている。すなわち、挟持ローラ10,11は、それぞれ上下一対の移動ローラ13,14から構成され、移動ローラ13,14どうしは上下方向に相対的に接近離間可能に構成され、しかも各挟持ローラ10,11は、それぞれ独自に幅方向に移動可能に構成されている。このような挟持ローラ10,11は、展開シート2Aの幅方向の位置ずれを抑えるために、必要に応じて移動ローラ13,14どうしが相対的に接近離間して展開シート2Aを、幅方向一端部2a側あるいは幅方向他端部2b側で挟持し、幅方向に移動する。なお、移動ローラ13,14で展開シート2Aの幅方向一端部2a側、あるいは幅方向他端部2b側を挟持しない場合でも、展開シート2Aの幅方向一端部2a側、幅方向他端部2b側は移動ローラ13,14の間を通過する。
【0024】
展開補助装置12は、樹脂発泡体2の幅方向及び前後方向に移動可能であり、切断部4で切断された樹脂発泡体2を展開シート2Aとするための補助をし、しかも切断部4と挟持ローラ10,11との間で樹脂発泡体2に、その幅方向全体に亘ってテンションを付与するためのものである。
【0025】
展開補助装置12は、キャスタ15により幅方向及び搬送方向に移動自在な支持台16と、支持台16に支持された補助部17とから構成されている。支持台16は、キャスタ15が取付けられた板状のベース18と、ベース18の上面四隅部から立設された脚19と、脚19の上端に差し渡された板状の支持体20とから構成されている。なお、ベース18には、これを位置決めするための杆状の固定杆21が複数本貫通されている。
【0026】
補助部17は、樹脂発泡体2が接触してこれを下流側に案内する部分である第一案内領域部及び第二案内領域部を備えている。補助部17は、支持台16の支持体20に支持柱22A,22Bを介して取付けられている。この支持柱22A,22Bは、支持体20の幅方向各端部に立設されている。補助部17は、支持柱22A,22Bの上端部に幅方向に沿って差し渡された取付部材23を介して支持柱22A,22Bに取付けられている。取付部材23には、上方を開放した溝型鋼が用いられ、取付部材23は底壁(ウエブ)24と、前後の縦壁(フランジ)25,26から形成されている。
【0027】
補助部17は、切断部4で切断された樹脂発泡体2をその幅方向中心部分2cで案内する中心案内部27と、樹脂発泡体2をその幅方向一端部2a側、幅方向他端部2b側をそれぞれ下流側に案内する一端案内部28及び他端案内部29とを備えている。この場合、樹脂発泡体2の幅方向一端部2a側及び幅方向他端部2b側とは、樹脂発泡体2の幅方向中心部分2cから外れた領域である。展開補助装置12は、その一端案内部28及び他端案内部29が、搬送方向において挟持ローラ10,11で挟持される幅方向領域に対応する位置となるように配置される。
【0028】
中心案内部27は、取付部材23の前縦壁25の中心寄りに幅方向一対で立設された補助柱30,30と、補助柱30,30の上端部に、幅方向に貫通した前軸体31と、前軸体31の軸上に軸受(図示せず)を介して回転自在に取付けられた複数個(図では5個)の前ローラ32とから構成されている。前軸体31は、取付部材23に平行に配置されている。中心案内部27の前記第一案内領域部は、複数の前ローラ32であり、その配置範囲が第一案内領域として特定されている。そして前ローラ32は、前軸体31の軸上に、幅方向に離間して配置されている。
【0029】
一端案内部28及び他端案内部29は、幅方向中心を中心とした左右対称の構成であるので、一端案内部28の構成の説明をもって他端案内部29の説明に兼用する。ここでは、図2において右側の一端案内部28の構成を説明する。一端案内部28は中心案内部27に対して後方(下流側)に配置され、且つ中心案内部27に比べて取付部材23の一端部寄りに配置されている。
【0030】
一端案内部28は、取付部材23の後縦壁26に立設固定された補助板33と、補助板33の上辺部に並べた支持片34に両端を支持された後軸体35と、後軸体35に軸受(図示せず)を介して回転自在に取付けられた複数個(図では10個)の後ローラ36,37とから構成されている。各後軸体35は、補助板33の上辺部の接線方向に沿っている。
【0031】
補助板33は第一補助板部38と、第二補助板部39とから構成されている。第一補助板部38は正面視して略矩形に形成されて、取付部材23の後縦壁26に立設固定されている。第一補助板部38の上辺部は幅方向に沿って水平に形成されている。また、第二補助板部39は後縦壁26から側方に外れ、且つ第一補助板部38に隣り合うよう配置されている。
【0032】
第二補助板部39は第一補助板部38と等しい高さを有し、その上辺部は、第一補助板部38の上辺部に対して幅方向外側部が順次下傾斜するよう形成されている。具体的には、第二補助板部39の上辺部は上方に凸にゆるやかに湾曲した湾曲面40に形成されており、これによって第二補助板部39の上辺部は、幅方向外側ほど順次下位となるよう下傾斜している。
【0033】
後ローラ36は、第一補助板部38の上辺部及び第二補助板部39の上辺部に亘って所定間隔置きに配置されている。後ローラ37は、樹脂発泡体2の幅方向一端部2a側に接触可能であり、接触状態で樹脂発泡体2を下流側へ案内するから、一端案内部28の前記第二案内領域部は、複数の後ローラ36,37であり、その配置範囲が第二案内領域として特定されている。そして、前ローラ32と第一補助板部38の上辺部に配置した後ローラ36とは同一高さに設定されている。
【0034】
前ローラ32と第一補助板部38の上辺部に配置した後ローラ36の高さ位置H1は、各挟持ローラ10,11における移動ローラ13,14の合わせ部分(樹脂発泡体2を挟持する部分)の高さ位置H2に比べて高い位置に設定される。また、第二補助板部39の湾曲面40の高さ範囲HR内に、各挟持ローラ10,11における移動ローラ13,14の合わせ部分の高さ位置H2が設定される。このような位置関係によって、樹脂発泡体2にテンションを付与することが可能になっている。
【0035】
第二補助板部39は、第一補助板部38に第一回動角度調節機構を介して取付けられている。該第一回動角度調節機構は、ヒンジ機構である蝶番41と回動角度固定機構42とから構成されている。そして第二補助板部39は、第一補助板部38に縦軸43を介して回動自在に支持されている。この縦軸43は第一補助板部38の板面と第二補助板部39の板面に亘って固定される前記蝶番41のヒンジを構成する部分である。蝶番41は、補助板部の前側の板面に固定され、縦軸43も補助板部の前側にあるから、第二補助板部39は、第一補助板部38に対して、縦軸43回りに前側に回動可能な機構となっている。
【0036】
回動角度固定機構42は、第一補助板部38と第二補助板部39とに亘って設けられており、第一補助板部38側の位置決め体44と、第二補助板部39側の支持基体45と、位置決め体44と支持基体45に渡される雄ねじ部材である杆体46と、杆体46に螺合するナット部材47,48とから構成されている。位置決め体44としてアイボルトが用いられており、位置決め体44は雄ねじ部が第一補助板部38の板面に螺合され、環体49が板面から突出している。なお、位置決め体44はその環体49の孔に雄ねじ部材である杆体46が側方から挿通されるよう取付けられている。
【0037】
支持基体45は、第二補助板部39の板面に、位置決め体44と同高さに配設固定されている。杆体46は、水平になるよう基端部が支持基体45に支持されて、支持基体45は杆体46を縦軸50回りに回動自在に支持するよう構成されている。杆体46の先端部側は位置決め体44の環体49の孔に挿通され、孔に挿通した杆体46の一部分の両側に、環体49を介して前記ナット部材47,48が螺合している。
【0038】
すなわち、環体49の孔に挿通した杆体46の一部分の両側に、環体49を挟むようにナット部材47,48が螺合されることで、第二補助板部39は蝶番41の縦軸43回りに回動できないよう規制され、ナット部材47,48が環体49から離れるよう杆体46の一部分の両側に位置決めされることで、ナット部材47,48が環体49から離れた分だけ、第二補助板部39は蝶番41の縦軸43回りに回動可能となる。
【0039】
上記したとおり、一端案内部28及び他端案内部29は、幅方向中心を中心とした左右対称の構成であり、展開補助装置12は、上記した構成の一端案内部28と対称の構成の他端案内部29を備えている。したがって、一端案内部28及び他端案内部29は、それぞれの第二案内領域部が、中心案内部27の第一案内領域部と平行である単純案内姿勢Yと、第一回動角度調節機構によって、第一案内領域部に対して第二案内領域部の一部が上流側に所定角度だけ傾斜した第一調節案内姿勢Z1とに切り替えることができる。
【0040】
なお、一端案内部28及び他端案内部29のそれぞれの第二案内領域部は、中心案内部27の第一案内領域部に対して後方(下流側)に位置ずれしているが、各第二案内領域部を第一案内領域部に対して最大に傾斜させた状態の第一調節案内姿勢Z1において、補助部17の左右幅は、展開シート2Aの左右幅に比べて大きく設定されている。したがって、各第二案内領域部を単純案内姿勢Yとした状態では、補助部17の左右幅は、当然に展開シート2Aの左右幅に比べて大きい。
【0041】
さらに、補助部17全体は、第二回動角度調節機構によって縦軸回りに回動自在に構成されている。該第二回動角度調節機構は、前記支持柱22A,22Bと、支持体20に載置されて一方の支持柱22Aを支持体20の上面に沿って前後方向に移動させるシリンダ装置22Cと、他方の支持柱22Bとから構成されている。この他方の支持柱22Bは縦軸に相当し、軸心回りに回動自在に支持体20に取付けられている。
【0042】
すなわち、シリンダ装置22Cを駆動することで、一方の支持柱22Aが後方に移動するとともに、補助部17全体が縦軸である他方の支持柱22Bを中心に回動する。補助部17全体の、他方の支持柱22Bを中心とする回動角度の調節は、シリンダ装置22Cのピストン(図示せず)の移動量によって決定され、単純案内姿勢Yと、この単純案内姿勢Yに対して、第一案内領域部及び第二案内領域部が同じ角度だけ支持柱22B回りに回動した第二調節案内姿勢Z2とに切り替えることができる。なお、前ローラ32、後ローラ36,37は全て同一径に設定されている。
【0043】
上記構成のシート製造装置1において、形成部3において、押出機内で溶融混合されたポリエステル系樹脂と発泡剤との溶融混合物を、該押出機の先端部に取り付けたダイのアウトリングとコアにより形成されて円環状の隙間を通して低圧領域に押し出して発泡させることで、円筒状の樹脂発泡体2が得られ、円筒状の樹脂発泡体2は、冷却マンドレル7の外周に沿わせて冷却される。
【0044】
冷却された円筒状の樹脂発泡体2は、送り方向すなわち下流側に送られて、すぐに切断部4のカッター8により周方向の下部一箇所で切断され、連続して送り方向に送られつつ展開部5によってシート状に展開されて展開シート2Aとなり、さらに下流側へ搬送されて巻取ロール9に順次巻き取られる。
【0045】
カッター8により一箇所を切断された樹脂発泡体2は、展開補助装置12の補助部17によって展開を補助される。すなわち、切断部4で切断された樹脂発泡体2の幅方向中心部分2cが中心案内部27の前ローラ32に載り、樹脂発泡体2の幅方向一端部2a側が一端案内部28の後ローラ36,37に載り、幅方向他端部2b側が他端案内部29の後ローラ36,37に載って、切断された樹脂発泡体2は、前後方向にも幅方向にも波打つことなく、バランスよく広げられる。
【0046】
特に、第二補助板部39の上辺部は上方に凸にゆるやかに湾曲した湾曲面40に形成されており、これによって第二補助板部39の上辺部は、幅方向外側ほど順次下位となるよう下傾斜しているから、樹脂発泡体2の幅方向一端部2a側及び幅方向他端部2b側が該下傾斜に沿うことで、切断された樹脂発泡体2は急激に広げられることがない。
【0047】
また、各挟持ローラ10,11は、必要に応じて移動ローラ13,14どうしが相対的に接近して、移動ローラ13,14で展開シート2Aの幅方向一端部2a側、あるいは幅方向他端部2b側を挟持するが、挟持しない場合でも、展開シート2Aの幅方向一端部2a側、幅方向他端部2b側は移動ローラ13,14の間を通過する。そして、前ローラ32と第一補助板部38の上辺部に配置した後ローラ36の高さ位置H1は、各挟持ローラ10,11における移動ローラ13,14の合わせ部分の高さ位置H2に比べて高い位置に設定され、第二補助板部39の湾曲面40の高さ範囲HR内に、各挟持ローラ10,11における移動ローラ13,14の合わせ部分の高さ位置H2が設定されているから、展開補助装置12の前後で樹脂発泡体2の角度が変わるため、樹脂発泡体2にテンションが付与される。
【0048】
このように、展開補助装置12では樹脂発泡体2を支持して(載せて)テンションを付与しているから、カッター8と展開補助装置12との間において樹脂発泡体2の幅方向での位置ずれを抑えることができる。樹脂発泡体2の幅方向での位置ずれが抑えられることは、すなわちカッター8で切断された箇所の位置ずれが抑えられることである。このため、樹脂発泡体2は、幅方向での位置ずれを抑えられた状態で下流側へ送られて巻取ロール9に巻き取られることで、巻取ロール9に巻き取られる樹脂発泡体2の幅方向端辺(カッター8で切断された箇所)が揃い易くなり、展開シート2Aの幅方向端辺を精度よく揃えることができる。
【0049】
しかも、展開補助装置12において、樹脂発泡体2に接触する部分は前ローラ32及び後ローラ36,37であるから、樹脂発泡体2にテンションが付与されていたとしても、前ローラ32及び後ローラ36,37が回転して、樹脂発泡体2を円滑に下流側へ送ることができる。
【0050】
また、必要に応じて各挟持ローラ10,11の移動ローラ13,14どうしを相対的に接近させ、移動ローラ13,14で展開シート2Aの幅方向一端部2a側、あるいは幅方向他端部2b側を挟持して、展開シート2Aの幅方向端辺を揃えるようにすれば、いっそう精度よく展開シート2Aの幅方向端辺を揃えることができる。
【0051】
さらに、一端案内部28、あるいは他端案内部29を、前記第一回動角度調節機構によって、単純案内姿勢Yから、一方の第二補助板部39を第一補助板部38に対して縦軸43回りに前側に回動させて第一調節案内姿勢Z1とすることで、樹脂発泡体2に働く下流側への引張力を、樹脂発泡体2の幅方向の何れかの方向に向かせるよう調節することができる。したがって、下流側へ向かう樹脂発泡体2の、幅方向での位置調節が可能である。
【0052】
また、一端案内部28及び他端案内部29を、前記第一回動角度調節機構によって、単純案内姿勢Yから、一方の第二補助板部39を第一補助板部38に対して縦軸43回りに前側に回動させて第一調節案内姿勢Z1とすることで、樹脂発泡体2に働く下流側への引張力を幅方向外側へ向けるよう調節することができるから、樹脂発泡体2をいっそう確実に、波打つことのないシート状に展開することができる。
【0053】
あるいは第二回動角度調節機構によって、補助部17全体を、単純案内姿勢Yから、支持柱22B回りに回動させて第二調節案内姿勢Z2とすることで、展開補助装置12において、樹脂発泡体2に接触する部分である第一案内領域部及び第二案内領域部の、送り方向(下流側)に対する傾斜角度を一体的に変更することができる。このようにすることで、樹脂発泡体2に働く下流側への引張力を、樹脂発泡体2の幅方向で調節することができ、したがって、下流側へ向かう樹脂発泡体2の幅方向での位置調節が可能である。
【0054】
上記第一の実施形態では、前ローラ32と後ローラ36の高さ位置H1を、各挟持ローラ10,11における移動ローラ13,14の合わせ部分の高さ位置H2に比べて高い位置に設定することで、展開補助装置12の前後で樹脂発泡体2の角度を変えて樹脂発泡体2にテンションを付与する構成とした。
【0055】
しかしながら、展開補助装置12の前後で樹脂発泡体2の角度を変えて樹脂発泡体2にテンションを付与することができれば、上記した位置関係に限定される必要はなく、例えば、前ローラ32と後ローラ36の高さ位置H1と、移動ローラ13,14の合わせ部分の高さ位置H2とが逆転していてもよい。
【0056】
上記第一の実施形態では、第二補助板部39の上辺部は上方に凸にゆるやかに湾曲した湾曲面40に形成した。しかしながら、第二補助板部39の上辺部はこの形状に限定されず、直線的に下傾斜するよう形成してもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、中心案内部27の前軸体31に前ローラ32を幅方向に並べて配置し、一端案内部28及び他端案内部29の第一補助板部38と第二補助板部39には、後ローラ36,37を補助板33の上辺部の接線方向に沿って配置した。しかしながらこれら前ローラ32及び後ローラ36,37を省略して、樹脂発泡体2を前軸体31や第一補助板部38と第二補助板部39の上辺部に直接的に載せるようにして下流側に案内することも可能である。
【0058】
本発明は上記実施形態に限定されない。図5ないし図7は、本発明の第二の実施形態を表す。これらの図に示すように、第二の実施形態に係る展開補助装置60は、キャスタ61により幅方向及び搬送方向に移動自在な支持台62と、支持台62に支持された補助部63とから構成されている。支持台62は、キャスタ61が取付けられた板状のベース64と、ベース64の上面から立設された左右一対の脚65と、脚65の下部間に連結された連結部材66と、脚65の上端に差し渡された板状の支持体67とから構成されている。
【0059】
ベース64には、これを位置決めするための杆状の固定杆68が複数本貫通されている。固定杆68の上部にはハンドル69が取付けられ、固定杆68の長さ方向途中にはナット70が螺合されている。また、固定杆68の下部には着座部材71が取付けられている。ナット70を緩めてハンドル69を回転させることで着座部材71が上下動して、支持台62を所定の位置に固定することができる。
【0060】
補助部63は、樹脂発泡体2が接触してこれを下流側に案内する部分である第一案内領域部及び第二案内領域部を備えている。補助部63は、複数本の支持柱と、支持柱に支持された横通材と、横通材に回転自在に外嵌された複数個のローラ72とから構成されている。
【0061】
支持柱は、支持体67の幅方向に並べられている。また、各支持柱の基端部は支持体67の上面に固定されている。支持柱は、支持体67の幅方向途中に立設された複数本(図では4本)の縦支持柱と、支持体67の両側端部にそれぞれ配置された横支持柱73とから構成されている。
【0062】
縦支持柱は複数本(図では二本)の第一縦支持柱74と、複数本(図では二本)の第二縦支持柱75とから構成されている。第一縦支持柱74はともに等しい高さに設定され、支持体67の後部に並べて配置されている。第二縦支持柱75は第一縦支持柱74の両側に配置され、しかも第一縦支持柱74に比べて前に配置されている。第二縦支持柱75は第一縦支持柱74よりも低く設定され、ともに等しい高さに設定されている。横支持柱73は、第二縦支持柱75の外側で、支持体67の幅方向各端部の上面に横倒しされるようにして固定されている。具体的には、横支持柱73の基端部側が後方にあって、先端部側が前方にあるよう傾斜しており、先端部側は支持体67の前隅から外れた位置にある。
【0063】
横通材は、全ての支持柱に亘るように取付けられている。具体的に、横通材は、第一横通材部76と第二横通材部77と第三横通材部78とから構成されている。第一横通材部76は、第一縦支持柱74の間に支持されている。したがって、第一横通材部76は幅方向に沿うよう配置されている。第二横通材部77は、第一縦支持柱74と第二縦支持柱75の間に支持されている。したがって、第二横通材部77は、外側が前方へ傾斜するよう配置されるとともに、外側が下方に傾斜するよう配置されている。第三横通材部78は、第二縦支持柱75と横支持柱73の間に支持されている。したがって、第三横通材部78は、外側が前方へ傾斜するよう配置されるとともに、外側が下方に傾斜するよう配置されている。このように、横通材全体においてその幅方向外側部は、下傾斜しており、側ほど急峻な下傾斜となっている。
【0064】
ローラ72は、横通材に所定間隔を置いて、横通材の全域に亘って配置されている。なお、全てのローラ72の径は同一に設定され、全てのローラ72は、第一横通材部76、第二横通材部77、第三横通材部78の軸線方向に直交する方向が径方向となるよう各横通材部に取付けられている。
【0065】
前記第一案内領域部は、第一横通材部76に支持された領域のローラ72の配置範囲として特定される。前記第二案内領域部は、第二横通材部77と第三横通材部78に支持されたローラ72の配置範囲として特定されている。
【0066】
上記構成の展開補助装置60において、カッター8により一箇所を切断された樹脂発泡体2は、展開補助装置60の補助部63によって展開を補助される。すなわち、切断部4で切断された樹脂発泡体2の幅方向中心部分2c(図2参照)が第一案内領域部のローラ72に載り、樹脂発泡体2の幅方向一端部2a側、幅方向他端部2b側が第二案内領域部のローラ72に載って、切断された樹脂発泡体2は、前後方向にも幅方向にも波打つことなく、バランスよく広げられる。
【符号の説明】
【0067】
1…シート製造装置、2…樹脂発泡体、2A…展開シート、2a…幅方向一端部、2b…幅方向他端部、2c…幅方向中心部分、8…カッター、9…巻取ロール、10,11…挟持ローラ、12…展開補助装置、27…中心案内部、28…一端案内部、29…他端案内部、32…前ローラ、36,37…後ローラ、38…第一補助板部、39…第二補助板部、40…湾曲面、43…縦軸、Y…単純案内姿勢、Z1…第一調節案内姿勢、Z2…第二調節案内姿勢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に円筒状に形成される樹脂発泡体が送り方向に送られるのに伴い該樹脂発泡体を周方向の一箇所で連続的に切断する切断部と、該切断部で切断されシート状に展開された樹脂発泡体の幅方向各端部側に配置されて幅方向各端辺の幅方向位置を調節する挟持ローラとを備えたシート製造装置における、前記挟持ローラと切断部との間に配置され、該切断部から挟持ローラに至る途中で樹脂発泡体にテンションを付与可能に構成されるとともに、切断された樹脂発泡体の幅方向各端部側をそれぞれ載せて案内する案内部を備え、該各案内部は幅方向外側部が下傾斜していることを特徴とする樹脂発泡体展開補助装置。
【請求項2】
幅方向外側部は、外側ほど急峻な下傾斜となるように湾曲していることを特徴とする請求項1記載の樹脂発泡体展開補助装置。
【請求項3】
各案内部は、それぞれ縦軸回りに回動自在に支持されて樹脂発泡体の送り方向に対する回動角度を調節可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の樹脂発泡体展開補助装置。
【請求項4】
各案内部の間に、切断された樹脂発泡体をその幅方向中心部分で案内する中心案内部をさらに有し、該中心案内部及び各案内部が縦軸回りに一体的に回動自在に支持されて、中心案内部及び各案内部の樹脂発泡体の送り方向に対する回動角度を調節可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の樹脂発泡体展開補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−59885(P2013−59885A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198694(P2011−198694)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(510218870)株式会社積水化成品天理 (9)
【Fターム(参考)】