説明

樹脂発泡体

【課題】キャリアテープから剥離させる際のフォーム破壊を抑制又は防止することができ、キャリアテープに対する特性に優れる樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】 本発明の樹脂発泡体は、発泡体層と表面層とを有し、前記発泡体層と前記表面層とが同一組成であり、且つ前記表面層の表面被覆率(式(1)で定義)が40%以上であることを特徴とする。また、前記の発泡体層の密度は、0.20g/cm3以下であることが好ましい。さらに、前記の樹脂発泡体を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【数1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂発泡体、発泡部材積層体、樹脂発泡体が用いられた電気・電子機器類に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡体は、一般的に、使用される部材の形状に対応させて、必要な形状で打ち抜かれたり、また、部材への固定を容易にするために、樹脂発泡体の表面に粘着加工が施されたりするが、このような加工が施された樹脂発泡体は、取り扱いが容易ではないので、効率的に所定の箇所に搬送するために、キャリアテープが用いられる場合がある。すなわち、樹脂発泡体は、キャリアテープに貼着された状態で、各種加工(打ち抜き加工や粘着加工など)が施されたり、加工後、搬送されたりしている。一方、加工後、樹脂発泡体は、キャリアテープから剥離させることが必要であるが、樹脂発泡体の表面の強度が低い(弱い)場合、剥離時に、樹脂発泡体が破壊されてしまう場合があった。特に、高発泡倍率の樹脂発泡体の場合[例えば、熱可塑性樹脂に、高圧の不活性ガス(例えば、超臨界状態の二酸化炭素など)を含浸させた後、減圧する工程を経て形成された熱可塑性樹脂発泡体など]、気泡壁の厚みが薄いため、剥離時の破壊が顕著であった。
【0003】
なお、樹脂発泡体の接着性やシール性を向上させるために、樹脂発泡体の表面に樹脂層を設けることは公知である。例えば、シール性の向上を目的として(発泡層の補強やキャリアテープでの搬送については考慮されていない)、独立気泡と連続気泡の両気泡を有するゴム発泡体の上下面の一方に、ゴム発泡体よりも柔らかい軟質被膜が設けられた発泡体が提案されている(特許文献1参照)。また、ポリオレフィン系樹脂発泡体の表面にウレタン系の熱可塑性重合体組成物からなる層を形成し、その層上に極性重合体よりなる表面処理層を施すことで、強靱性、耐傷つき性、耐摩耗性などが優れている発泡体が提案されている(特許文献2参照)。さらに、発泡体表面をポリクロロプレン系接着剤組成物で処理された発泡体(特許文献3参照)や、発泡体表面に易水溶層(ポリビニルアルコール層など)が設けられた発泡体(特許文献4参照)なども提案されている。これらは、いずれも発泡体に異なる材料を積層するものであって、発泡体の物性を変えるおそれがあり、またその製造工程も煩雑なものとなる。
【0004】
また、剥離時の破壊を防止するためより粘着力の小さいキャリアテープを使用すると、樹脂発泡体表面に発泡による微小な気泡が存在するために密着面積を稼ぐことができず加工中にずれてしまい寸法安定性(形状安定性)が低下するという問題や、発泡体部材を組み付ける際に加工用の台紙から剥がす前にキャリアテープから剥がれて組み付けできないという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−131822号公報
【特許文献2】特開2003−136647号公報
【特許文献3】特開平5−24143号公報
【特許文献4】特開平10−37328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、高発泡倍率を有する樹脂発泡体であっても、キャリアテープから剥離させる際のフォーム破壊を抑制又は防止することができ、キャリアテープに保持しての加工性及び搬送性に優れている樹脂発泡体、該樹脂発泡体が用いられた発泡部材積層体、該樹脂発泡体が用いられた電気・電子機器類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、樹脂発泡体において、特定の表面層を設けて、表面被覆率を調整すると、キャリアテープから剥離させる際などにおいてフォーム破壊を抑制又は防止することができ、さらにキャリアテープに保持しての加工性及び搬送性にもすぐれることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、発泡体層と表面層とを有し、前記発泡体層と前記表面層とが同一組成であり、且つ前記表面層の表面被覆率(式(1)で定義)が40%以上であることを特徴とする樹脂発泡体を提供する。
【数1】

【0009】
さらに、本発明は、発泡体層の密度が、0.20g/cm3以下である前記の樹脂発泡体を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、樹脂発泡体を構成する樹脂が、熱可塑性樹脂である前記の樹脂発泡体を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂である前記の樹脂発泡体を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、前記表面層が、加熱溶融処理により形成されている前記の樹脂発泡体をていきょうする。
【0013】
さらに、本発明は、加熱溶融処理の温度が、[(樹脂発泡体を構成する樹脂の軟化点又は融点)−15℃]で規定される温度以上である前記の樹脂発泡体を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、樹脂に高圧のガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成されている前記の樹脂発泡体を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、前記ガスが、不活性ガスである前記の樹脂発泡体を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、前記不活性ガスが、二酸化炭素である前記の樹脂発泡体を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、前記高圧のガスが、超臨界状態である前記の樹脂発泡体を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、独立気泡構造または半連続半独立気泡構造を有している前記の樹脂発泡体を提供する。
【0019】
さらにまた、本発明は、前記の樹脂発泡体が用いられている発泡部材を提供する。
【0020】
さらに、本発明は、発泡体層の片側に前記表面層を有し、もう一方側に粘着剤層を有する前記の発泡部材を提供する。
【0021】
さらに、本発明は、粘着剤層が、アクリル系粘着剤層である前記の発泡部材を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、電気・電子機器用として用いられている前記の発泡部材を提供する。
【0023】
さらにまた、本発明は、樹脂発泡体が、基材の少なくとも片面に粘着剤層を有するキャリアテープにより保持された構成を有する発泡部材積層体であって、樹脂発泡体が前記の樹脂発泡体であり、さらに、前記の樹脂発泡体がキャリアテープにより保持された構成が、前記表面層とキャリアテープの粘着剤層とが接触する形態で、樹脂発泡体がキャリアテープに貼着された構成であることを特徴とする発泡部材積層体を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、発泡部材が用いられた電子・電気機器類であって、発泡部材が、前記の電気・電子機器用発泡部材であることを特徴とする電気・電子機器類を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の樹脂発泡体によれば、前記構成を有しているので、高発泡倍率を有していても、キャリアテープから剥離させる際のフォーム破壊を抑制又は防止することができ、キャリアテープに保持しての加工性及び搬送性などのキャリアテープに対する特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、実施例1のFT−IRチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(樹脂発泡体)
本発明の樹脂発泡体は、発泡体層と表面層とを少なくとも有し、発泡体層と表面層の組成が同一であり、且つ表面層の表面被覆率(式(1)で定義)が40%以上である。なお、式(1)で定義される表面被覆率を、単に「表面被覆率」と称する場合がある。
【数1】

本願では、表面被覆率(式(1)で定義)が40%以上である表面層を「特定の表面層」と称する場合がある。
【0028】
表面層とは、樹脂発泡体表面から20μmの高さの層状領域であり、発泡体層とは異なり、気泡がつぶれ、不均一な気泡構造を有し、緻密な構造を有する層状部分である。
【0029】
発泡体層とは、気泡が均一に分布した構造を有する部分であり、樹脂発泡体のほぼ全体を占める層状部分である。
【0030】
本発明では、発泡体層の見掛け密度は、使用目的などに応じて適宜設定することができるが、0.20g/cm3以下(好ましくは0.15g/cm3以下、さらに好ましくは0.13g/cm3以下)であることが好ましい。なお、樹脂発泡体の見掛け密度の下限としては、0.02g/cm3以上(好ましくは0.03g/cm3以上)であることが好ましい。発泡体層の見掛け密度が0.20g/cm3を超えると、発泡が不十分となり、柔軟性が損なわれるの点で不具合を生じることがある。一方、0.02g/cm3未満であると、樹脂発泡体の強度が著しく低下する場合があり、好ましくない。
【0031】
本発明の樹脂発泡体では、表面層と発泡層との組成は同一である。なお、「同一の組成」とは、「同一又はほぼ同一」の意味であり、「ほぼ同一」とは、樹脂発泡体を構成する樹脂の主ポリマーが同一であることを意味する。
【0032】
例えば、表面層と発泡層との組成がほぼ同一であることは、表面層の表面と発泡体層の任意の切断面のFT−IR分析を行った場合のチャートにおいて、主たる吸収を対比することにより、判断することができる。主たる吸収が同じである場合、表面層と発泡層との組成がほぼ同一であることを意味する(図1参照)。なお、上記の「発泡体層の任意の切断面」は、厚さ方向に直交する方向の切断面である。
【0033】
本発明の樹脂発泡体は、発泡体層の片面に特定の表面層を有する構成であってもよいし、発泡体層の両面に特定の表面層を有する構成であってもよい。本発明の樹脂発泡体が発泡体層の片面に特定の表面層を有する構成である場合、特定の表面層と反対側の面は、その他の表面層(特定の表面層ではない表面層)により提供される面であってもよいし、発泡体層により提供される面であってもよい。また、本発明の樹脂発泡体の形状は、特に制限されず、例えば、シート状、テープ状、フィルム状などの形状が挙げられる。
【0034】
本発明の樹脂発泡体の特定の表面層表面では、発泡体表面に存在する孔の面積(発泡体表面に占める孔部の面積)が少なく、キャリアテープとの接着面積が大きくすることができる。また、本発明の樹脂発泡体は、表面層を有するので、樹脂発泡体の特性(例えば、伸長性、柔軟性など)と共に、高い表面強度を有する。このため、本発明の樹脂発泡体は、加工や搬送の際にキャリアテープが使用されることがあるが、該キャリアテープに対し良好な特性を発揮する。具体的には、樹脂発泡体の特定の表面層側をキャリアテープに貼付して、キャリアテープに保持した状態で樹脂発泡体の加工や搬送を行った後に樹脂発泡体をキャリアテープから剥離させる際、樹脂発泡体とキャリアテープとの界面で容易に剥離でき、発泡体層中で破壊が生じるフォーム破壊を生じることはない。また、樹脂発泡体の特定の表面層では、キャリアテープが加工や搬送の際に剥離しない程度の十分な接着力を発揮するので、キャリアテープに保持した状態で樹脂発泡体を加工や搬送する際、キャリアテープの樹脂発泡体を保持する挙動が安定し、樹脂発泡体の加工不良や搬送不良を生じることはない。なお、キャリアテープとしては、一般的に用いられているキャリアテープを幅広く用いることができ、例えば、後述のキャリアテープが挙げられる。
【0035】
本発明の樹脂発泡体の特定の表面層では、表面被覆率の値が大きいほど、樹脂発泡体の特定の表面層側にキャリアテープを貼り合わせた際の接着面積を大きくすることができ、キャリアテープに対して高い剥離力を示すことができることから、表面被覆率が40%以上であり、好ましくは43%以上であり、さらに好ましくは45%以上である。本発明において、表面被覆率が40%未満であると、キャリアテープに対する剥離力が低下し、キャリアテープに保持した状態で樹脂発泡体を加工や搬送する際、キャリアテープの樹脂発泡体を保持する挙動が不安定になる場合がある。なお、表面被覆率が100%であれば、発泡体表面には孔部が存在しないことになる。
【0036】
また、本発明の樹脂発泡体の特定の表面層では、圧縮して用いた際の高い柔軟性を維持する点から、表面被覆率は97%以下であることが好ましく、より好ましくは95%以下であり、さらに好ましくは90%以下である。
【0037】
本発明の樹脂発泡体の特定の表面層表面のL*(明度)は、キャリアテープに対し十分な粘着力と表面強度を得る点から、33.0以下であることが好ましく、好ましくは32.0以下であり、より好ましくは31.0以下である。
【0038】
*(明度)は、色の属性の一つであり、その色の明暗の度合いのことである。明度の数値が高いほど色は明るみを増すこととなる。L*(明度)が100であれば白色となり、0であれば黒色となる。なお、樹脂発泡体表面に微細な孔が多数存在すると、表面で乱反射を生じ、明度は大きくなる傾向にある。
【0039】
上述のように、本発明の樹脂発泡体は、特定の表面層側をキャリアテープに貼付して、キャリアテープに保持した状態で樹脂発泡体の加工や搬送が行われることがあるが、このような搬送や加工時に、キャリアテープが樹脂発泡体を保持する挙動は、低速での剥離現象に関係しており、加工や搬送の際に剥離しない程度に十分な接着力[例えば、23℃、50RH%、引張速度:0.3m/min、剥離角度:180°の条件(低速剥離条件)で剥離させて測定した際の粘着力が0.30N/20mm以上(好ましくは0.35N/20mm以上)であることなど]を有していることが必要である。
【0040】
また、本発明の樹脂発泡体は、特定の表面層側をキャリアテープに貼付して、キャリアテープに保持した状態で樹脂発泡体の加工や搬送を行った後にキャリアテープから剥離されるが、樹脂発泡体がキャリアテープから剥離される際の挙動は、高速での剥離現象に関係しており、この高速での剥離(高速剥離;例えば、引張速度が10m/minである場合など)では、キャリアテープと樹脂発泡体の特定の表面層との界面で剥離する界面剥離の状態で剥離されなければならない。さらに、キャリアテープから樹脂発泡体を剥離する際には、フォーム破壊を生じることを抑制又は防止する必要がある。よって、樹脂発泡体の特定の表面層のキャリアテープに対する高速剥離力[高速剥離条件(例えば、23℃、50RH%、引張速度:10m/min、剥離角度:180°の条件)で剥離させて測定した際の粘着力]は、0.25N/20mm以下(好ましくは0.20N/20mm以下)であることが好ましい。
【0041】
さらに、樹脂発泡体は、特定の表面層を有しているので、優れたリワーク性を発揮することができる。具体的には、本発明の樹脂発泡体は、例えば、樹脂発泡体を50%に圧縮させた状態で被着体に貼り付け、50℃で7日間エージングした後であっても、樹脂発泡体を破損させることなく、被着体より容易に剥離させることが可能である。なお、リワーク性とは、樹脂発泡体(発泡部材)が防塵材又はシール材として電気・電子機器等に組み込まれた場合において、機器筐体の樹脂面や金属面、画像表示部のガラス面などに貼り付くことなく、容易に剥離できる特性を指す。樹脂発泡体(発泡部材)が、前述のような被着体の表面に貼り付いてしまうと、メンテナンス等で機器を分解する際に、発泡部材が破損してしまい、防塵材やシール材等としての機能を果たさなくなるおそれがある。また、樹脂発泡体(発泡部材)が容易に被着体より剥離できなければ、解体時に素材ごとの分別回収が困難となり、素材の再利用化を阻害するおそれがある。従って、樹脂発泡体は、優れたリワーク性を有していることが好ましい。
【0042】
本発明の樹脂発泡体は、上述のように、発泡体層と特定の表面層とを必須の構成として有している。本発明の樹脂発泡体は、特に制限されないが、例えば、樹脂発泡体の素材である樹脂を含む樹脂組成物を発泡・成形して発泡構造体を得てから、該発泡構造体に特定の表面層を形成することにより作製されることが好ましい。なお、この好ましい方法では、発泡体層は、発泡構造体に特定の表面層を形成する際に形成される。
【0043】
本発明において、樹脂発泡体の素材である熱可塑性樹脂(熱可塑性ポリマー)としては、熱可塑性を示すポリマーであって、高圧ガスを含浸可能なものであれば特に制限されない。このような熱可塑性樹脂として、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン又はプロピレンと他のα−オレフィン(例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1など)との共重合体、エチレンと他のエチレン性不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコールなど)との共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリアミドイミド;ポリウレタン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリフッ化ビニル;アルケニル芳香族樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ビスフェノールA系ポリカーボネートなどのポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンスルフィドなどが挙げられる。熱可塑性樹脂は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、熱可塑性樹脂が共重合体である場合、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれの形態の共重合体であってもよい。
【0044】
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、分子量分布が広く且つ高分子量側にショルダーを持つタイプの樹脂、微架橋タイプの樹脂(若干架橋されたタイプの樹脂)、長鎖分岐タイプの樹脂などを用いることが好ましい。
【0045】
本発明では、熱可塑性樹脂とともに、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分が用いられていることが好ましい。ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分の割合としては、特に制限されない。熱可塑性樹脂としてのポリオレフィン系樹脂と、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分との混合物の混合比率(重量%)は、例えば、前者/後者=1/99〜99/1(好ましくは10/90〜90/10、さらに好ましくは20/80〜80/20)であってもよい。熱可塑性樹脂と、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分との混合物において、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分の割合が、1重量%未満であると、樹脂発泡体のクッション性が低下しやすく、一方、99重量%を超えると、発泡時にガス抜けが生じやすくなり、高発泡性の発泡体を得ることが困難になる。
【0046】
ゴム成分あるいは熱可塑性エラストマー成分としては、ゴム弾性を有し、発泡可能なものであれば特に制限はなく、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、二トリルブチルゴムなどの天然又は合成ゴム;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、塩素化ポリエチレンなどのオレフィン系エラストマー;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、及びそれらの水素添加物などのスチレン系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリウレタン系エラストマーなどの各種熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらのゴム成分あるいは熱可塑性エラストマー成分は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのゴム成分や熱可塑性エラストマー成分は、例えば、ガラス転移温度が室温以下(例えば20℃以下)であるため、本発明の樹脂発泡体を発泡部材(例えば、防塵材、シール材など)としたときの柔軟性及び形状追随性に著しく優れる。
【0047】
熱可塑性樹脂とともに用いられるゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分としては、オレフィン系エラストマーを好適に用いることができる。なお、オレフィン系エラストマーは、通常、ポリエチレンやポリプロピレンのようなオレフィン系樹脂成分と、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴムのようなオレフィン系ゴム成分とがミクロ相分離した構造を有しており、各成分を物理的に分散させたタイプや架橋剤の存在下、動的に熱処理したタイプでもよく、熱可塑性樹脂として用いられるポリオレフィン系樹脂との相溶性が良好である。
【0048】
本発明の樹脂発泡体は、さらに、パウダー粒子を含んでいてもよい。パウダー粒子は、発泡成形時の発泡核剤としての機能を発揮することができる。そのため、パウダー粒子を配合することにより、良好な発泡状態の樹脂発泡体を得ることができる。パウダー粒子としては、例えば、パウダー状のタルク、シリカ、アルミナ、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マイカ、モンモリナイト等のクレイ、カーボン粒子、グラスファイバー、カーボンチューブなどを用いることができる。パウダー粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
本発明では、パウダー粒子としては、平均粒子径(粒径)が0.1〜20μm程度のパウダー状の粒子を好適に用いることができる。パウダー粒子の平均粒子径が0.1μm未満では核剤として十分機能しない場合があり、粒径が20μmを超えると発泡成形時にガス抜けの原因となる場合があり好ましくない。
【0050】
パウダー粒子の配合量としては、特に制限されないが、例えば、熱可塑性樹脂とゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分との総量100重量部に対して、0.1〜150重量部(好ましくは1〜130重量部、さらに好ましくは2〜50重量部)の範囲から適宜選択することができる。パウダー粒子の配合量が熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1重量部未満であると、均一な発泡体を得ることが困難になり、一方、150重量部を超えると、樹脂組成物としての粘度が著しく上昇するとともに、発泡形成時にガス抜けが生じてしまい、発泡特性を損なう恐れがある。
【0051】
また、樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂により構成されているため、燃えやすいという特性を有している。そのため、本発明の樹脂発泡体が用いられている発泡部材を、電気・電子機器用途などの難燃性の付与が不可欠な用途に利用する場合、パウダー粒子として、難燃性を有しているパウダー粒子(例えば、パウダー状の各種の難燃剤など)が配合されていることが好ましい。なお、難燃剤は、難燃剤以外のパウダー粒子とともに用いることができる。
【0052】
本発明では、パウダー状の難燃剤において、難燃剤としては無機難燃剤が好適である。無機難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤などであってもよいが、塩素系難燃剤や臭素系難燃剤は、燃焼時に人体に対して有害で機器類に対して腐食性を有するガス成分を発生し、また、リン系難燃剤やアンチモン系難燃剤は、有害性や爆発性などの問題があるため、ノンハロゲン−ノンアンチモン系無機難燃剤を好適に用いることができる。ノンハロゲン−ノンアンチモン系無機難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム・酸化ニッケルの水和物、酸化マグネシウム・酸化亜鉛の水和物等の水和金属化合物などが挙げられる。なお、水和金属酸化物は表面処理されていてもよい。難燃剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
難燃剤を用いる場合、難燃剤の使用量としては、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂とゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分との総量100重量部に対して、5〜130重量部(好ましくは10〜120重量部)の範囲から適宜選択することができる。難燃剤の使用量が少なすぎると、難燃化効果が小さくなり、逆に多すぎると、高発泡の発泡体を得ることが困難になる。
【0054】
樹脂組成物には、必要に応じて、各種添加剤が配合されていてもよい。添加剤の種類は、特に限定されず、樹脂の発泡成形に通常使用される各種添加剤を用いることができる。具体的には、添加剤として、例えば、気泡核剤、結晶核剤、可塑剤、滑剤、着色剤(顔料、染料等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、界面活性剤、張力改質剤、収縮防止剤、流動性改質剤、クレイ、加硫剤、表面処理剤、パウダー状以外の各種形態の難燃剤などが挙げられる。添加剤の添加量は、気泡の形成等を損なわない範囲で適宜選択することができ、通常の熱可塑性樹脂の成形の際に用いられる添加量を採用することができる。
【0055】
上述のように、本発明の樹脂発泡体は、通常、樹脂組成物を発泡・成形して発泡構造体を得てから、該発泡構造体に、特定の表面層を形成することにより作製される。樹脂組成物は、樹脂発泡体を構成する樹脂と、必要に応じて添加される添加剤等とを、混合することにより得ることができる。
【0056】
本発明の樹脂発泡体において、樹脂組成物を発泡・成形して発泡構造体を得る際に用いられる発泡方法としては、特に制限されず、例えば、物理的方法、化学的方法等の通常用いられる方法が挙げられる。一般的な物理的方法は、クロロフルオロカーボン類又は炭化水素類などの低沸点液体(発泡剤)を樹脂に分散させ、次に加熱し発泡剤を揮発することにより気泡を形成させる方法である。また、一般的な化学的方法は、樹脂に添加した化合物(発泡剤)の熱分解により生じたガスにより気泡を形成させる方法である。しかし、一般的な物理的方法は、発泡剤として用いられる物質の可燃性や毒性、及びオゾン層破壊などの環境への影響が懸念される。また、一般的な化学的方法では、発泡ガスの残渣が発泡体中に残存ずるため、特に低汚染性の要求が高い電子機器用途においては、腐食性ガスやガス中の不純物による汚染が問題となる。しかも、これらの物理的方法及び化学的方法では、いずれにおいても、微細な気泡構造を形成することは難しく、特に300μm以下の微細気泡を形成することは極めて困難であるといわれている。
【0057】
このため、本発明では、樹脂組成物を発泡・成形して発泡構造体を得る際に用いられる発泡方法としては、セル径が小さく且つセル密度の高い発泡体を容易に得ることができる点から、発泡剤として高圧のガスを用いる方法が好ましく、特に発泡剤として高圧の不活性ガスを用いる方法が好ましい。なお、不活性ガスとは、樹脂組成物中の樹脂に対して不活性なガスを意味する。すなわち、本発明の樹脂発泡体の気泡構造(発泡構造)は、発泡剤として高圧の不活性ガスを用いる方法により形成されることが特に好ましい。
【0058】
本発明の樹脂発泡体において、樹脂組成物を発泡剤として高圧のガスを用いる方法により発泡・成形して発泡構造体を得る方法としては、具体的には、樹脂組成物に高圧のガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成される方法、樹脂組成物からなる未発泡成形物に高圧のガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成される方法、または溶融した樹脂組成物にガス(例えば、不活性ガスなど)を加圧状態下で含浸させた後、減圧とともに成形に付して形成される方法などが好適な方法として挙げられる。すなわち、本発明の樹脂発泡体の気泡構造(発泡構造)は、高圧のガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成されることが好ましい。
【0059】
不活性ガスとしては、樹脂に対して不活性で且つ含浸可能なものであれば特に制限されず、例えば、二酸化炭素、窒素ガス、空気等が挙げられる。これらのガスは混合して用いてもよい。これらのうち、発泡体の素材として用いる樹脂への含浸量が多く、含浸速度の速い点から、二酸化炭素を好適に用いることができる。
【0060】
さらに、樹脂組成物への含浸速度を速めるという観点から、前記高圧のガス(特に不活性ガス、さらには二酸化炭素)は、超臨界状態であることが好ましい。超臨界状態では、樹脂へのガスの溶解度が増大し、高濃度の混入が可能である。また、含浸後の急激な圧力降下時には、前記のように高濃度で含浸することが可能であるため、気泡核の発生が多くなり、その気泡核が成長してできる気泡の密度が気孔率が同じであっても大きくなるため、微細な気泡を得ることができる。なお、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.4MPaである。
【0061】
樹脂組成物に、高圧のガスを含浸させることにより、発泡構造体を製造する際には、予め樹脂組成物を、例えば、シート状などの適宜な形状に成形して未発泡樹脂成形体(未発泡成形物)とした後、この未発泡樹脂成形体に、高圧のガスを含浸させ、圧力を解放することにより発泡させるバッチ方式で行ってもよく、樹脂組成物を加圧下、高圧のガスと共に混練し、成形すると同時に圧力を解放し、成形と発泡を同時に行う連続方式で行ってもよい。このように、予め成形した未発泡樹脂成形体を高圧のガスに含浸させてもよく、また、溶融した樹脂組成物に高圧のガスを加圧状態下で含浸させた後、減圧の際に成形に付してもよい。
【0062】
具体的には、バッチ方式で樹脂構造体を製造する際、未発泡樹脂成形体を製造する方法としては、例えば、樹脂と、必要に応じて用いられるゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分と、また、必要に応じて用いられるパウダー粒子やその他の添加剤とを含む樹脂組成物を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を用いて成形する方法、前記と同様の樹脂組成物を、ローラ、カム、ニーダ、バンバリ型等の羽根を設けた混錬機を使用して均一に混錬しておき、熱板のプレスなどを用いて所定の厚みにプレス成形する方法、射出成形機を用いて成形する方法などが挙げられる。所望の形状や厚さの成形体が得られる適宜な方法により成形すればよい。こうして得られた未発泡樹脂成形体(樹脂組成物による成形体)を耐圧容器(高圧容器)中に入れて、高圧のガス(特に不活性ガス、さらには二酸化炭素)を注入(導入)し、未発泡樹脂成形体中に高圧のガスを含浸させるガス含浸工程、十分に高圧のガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、樹脂中に気泡核を発生させる減圧工程、場合によっては(必要に応じて)、加熱することによって気泡核を成長させる加熱工程を経て、樹脂中に気泡を形成させる。なお、加熱工程を設けずに、室温で気泡核を成長させてもよい。このようにして気泡を成長させた後、必要により冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化することにより、発泡構造体を得ることができる。なお、未発泡樹脂成形体の形状は特に限定されず、ロール状、板状等の何れであってもよい。また、高圧のガスの導入は連続的に行ってもよく不連続的に行ってもよい。さらに、気泡核を成長させる際の加熱の方法としては、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの公知乃至慣用の方法を採用できる。さらにまた、発泡に供する未発泡樹脂成形体(未発泡成形物)は、シート状物に限らず、用途に応じて種々の形状(例えば、角柱状など)のものを使用することができる。また、発泡に供する未発泡樹脂成形体は、押出成形、プレス成形、射出成形以外に、他の成形方法により作製することもできる。
【0063】
一方、連続方式で発泡構造体を製造する場合は、例えば、樹脂と、必要に応じて用いられるゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分と、また、必要に応じて用いられるパウダー粒子やその他の添加剤とを含む樹脂組成物を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して混錬しながら、高圧のガス(特に不活性ガス、さらには二酸化炭素)を注入(導入)し、十分に高圧のガスを樹脂組成物に含浸させる混練含浸工程、押出機の先端に設けられたダイスなどを通して樹脂組成物を押し出すことにより圧力を解放し(通常、大気圧まで)、成形と発泡を同時に行う成形減圧工程により製造することができる。また、場合によっては(必要に応じて)、加熱することによって気泡を成長させる加熱工程を設けてもよい。このようにして気泡を成長させた後、必要により冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化することにより、発泡構造体を得ることができる。なお、上記混練含浸工程及び成形減圧工程では、押出機のほか、射出成形機などを用いて行うこともできる。また、シート状、角柱状、その他の任意の形状の発泡構造体を得られる方法を適宜選択すればよい。
【0064】
ガスの混合量は、特に制限されないが、例えば、樹脂組成物中の樹脂成分全量に対して2〜10重量%程度である。所望の密度や発泡倍率が得られるように、適宜調節して混合すればよい。
【0065】
バッチ方式におけるガス含浸工程や連続方式における混練含浸工程で、ガスを未発泡樹脂成形体や樹脂組成物に含浸させるときの圧力は、ガスの種類や操作性等を考慮して適宜選択できるが、例えば、ガスとして不活性ガスを、特に二酸化炭素を用いる場合には、6MPa以上(例えば、6〜100MPa程度)、好ましくは8MPa以上(例えば、8〜100MPa程度)とするのがよい。ガスの圧力が6MPaより低い場合には、発泡時の気泡成長が著しく、気泡径が大きくなりすぎ、例えば、防塵効果が低下するなどの不都合が生じやすくなり、好ましくない。これは、圧力が低いとガスの含浸量が高圧時に比べて相対的に少なく、気泡核形成速度が低下して形成される気泡核数が少なくなるため、1気泡あたりのガス量が逆に増えて気泡径が極端に大きくなるからである。また、6MPaより低い圧力領域では、含浸圧力を少し変化させるだけで気泡径、気泡密度が大きく変わるため、気泡径及び気泡密度の制御が困難になりやすい。
【0066】
バッチ方式におけるガス含浸工程や連続方式における混練含浸工程で、高圧のガスを未発泡樹脂成形体や樹脂組成物に含浸させるときの温度は、用いるガスや樹脂の種類等によって異なり、広い範囲で選択できるが、操作性等を考慮した場合、例えば、10〜350℃程度である。例えば、バッチ方式において、シート状の未発泡樹脂成形体に高圧のガスを含浸させる場合の含浸温度は、10〜200℃(好ましくは40〜200℃)程度である。また、連続方式において、樹脂組成物に高圧のガスを注入し混練する際の温度は、60〜350℃程度が一般的である。なお、高圧のガスとして二酸化炭素を用いる場合には、超臨界状態を保持するため、含浸時の温度(含浸温度)は32℃以上(特に40℃以上)であることが好ましい。
【0067】
なお、前記減圧工程において、減圧速度は、特に限定されないが、均一な微細気泡を得るため、好ましくは5〜300MPa/秒程度である。また、前記加熱工程における加熱温度は、例えば、40〜250℃(好ましくは60〜250℃)程度である。
【0068】
また、このような発泡構造体の製造方法によれば、高発泡倍率の発泡構造体を製造することができるので、厚い樹脂発泡体を製造することが出来るという利点を有する。例えば、連続方式で発泡構造体を製造する場合、混練含浸工程において押出し機内部での圧力を保持するためには、押出し機先端に取り付けるダイスのギャップを出来るだけ狭く(通常0.1〜1.0mm)する必要がある。従って、厚い発泡構造体を得るためには、狭いギャップを通して押出された樹脂組成物を高い倍率で発泡させなければならないが、従来は、高い発泡倍率が得られないことから、形成される発泡体の厚みは薄いもの(例えば0.5〜2.0mm程度)に限定されてしまっていた。これに対して、高圧のガスを用いて製造される発泡構造体は、最終的な厚みで0.50〜5.00mmの発泡体を連続して得ることが可能である。なお、このような厚い発泡構造体を得るためには、発泡構造体の相対密度(発泡後の密度/未発泡状態での密度)が0.02〜0.30(好ましくは0.05〜0.25)であることが望ましい。前記相対密度が0.30を超えると発泡が不十分であり、柔軟性の点で不具合を生じる場合があり、また0.02未満では発泡構造体の強度が著しく低下する場合があり好ましくない。
【0069】
本発明では、発泡体層(発泡構造体)の見掛け密度は、上述のように、0.20g/cm3以下(好ましくは0.15g/cm3以下、さらに好ましくは0.13g/cm3以下)であることが好ましい。なお、樹脂発泡体の見掛け密度の下限としては、0.02g/cm3以上(好ましくは0.03g/cm3以上)であることが好ましい。
【0070】
発泡体層の見掛け密度は、例えば、樹脂発泡体作製の際に、樹脂組成物に含浸させるガスの量や圧力により発泡倍率を調節することにより、制御することができる。
【0071】
発泡体層の見掛け密度は、以下のようにして求められる。40mm×40mmの打抜き刃型にて、樹脂発泡体を打抜き、打抜いた試料の寸法を測定する。また、測定端子の直径(φ)20mmである1/100ダイヤルゲージにて厚みを測定する。これらの値から熱可塑性樹脂発泡体の体積を算出する。次に、発泡体層の重量を最小目盛り0.01g以上の上皿天秤にて測定する。これらの値より発泡体層の見掛け密度(g/cm3)を算出する。
【0072】
樹脂発泡体の気泡構造は、特に制限されないが、独立気泡構造、半連続半独立気泡構造(独立気泡構造と連続気泡構造とが混在している気泡構造であり、その割合は特に制限されない)が好ましく、特に、樹脂発泡体の発泡層の気泡構造中に独立気泡構造部が柔軟性の点から40%以下、好ましくは30%以下となっている気泡構造が好適である。気泡構造は、例えば、後述の樹脂発泡体作製の際に、樹脂組成物に含浸させるガスの量や圧力により発泡倍率を調節することにより、制御することができる。
【0073】
なお、上記の発泡構造体の厚み、相対密度及び見掛け密度などは、用いるガス、熱可塑性樹脂やゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分などの種類に応じて、例えば、ガス含浸工程や混練含浸工程における温度、圧力、時間などの操作条件、減圧工程や成形減圧工程における減圧速度、温度、圧力などの操作条件、減圧後又は成形減圧後の加熱工程における加熱温度などを適宜選択、設定することにより調整することができる。
【0074】
本発明の樹脂発泡体は、上述のように、樹脂組成物を発泡・成形して発泡構造体を得てから、該発泡構造体に特定の表面層を形成することにより作製されることが好ましい。
【0075】
特定の表面層を形成する処理としては、発泡体層と特定の表面層との組成を同一とすることができる限り特に制限されないが、例えば、加熱溶融処理、樹脂の塗布、樹脂層の溶着、粘着剤層を介しての樹脂フィルム層の貼付などが挙げられる、中でも、他の材料との相性を考慮する必要がなく、厚みの変化が少ない点から、加熱溶融処理が好適に用いられる。
【0076】
加熱溶融処理としては、特に限定されないが、例えば、熱ロールによるプレス処理、レーザー照射処理、加熱されたロール上での接触溶融処理、フレーム処理等が挙げられる。
【0077】
熱ロールによるプレス処理の場合、熱ラミネーターなどを用いて好適に処理を行うことができる。なお、ロールの材質としては、ゴム、金属、フッ素系樹脂(例えば、テフロン(登録商標))などが挙げられる。
【0078】
加熱溶融処理の際の温度は、特に制限されないが、効率よく特定の表面層を形成する点から、樹脂発泡体を構成する樹脂の軟化点又は融点より15℃低い温度(より好ましくは樹脂発泡体を構成する樹脂の軟化点又は融点より12℃低い温度)以上であること好ましく、また、樹脂発泡体を構成する樹脂の軟化点又は融点より20℃高い温度(より好ましくは樹脂発泡体を構成する樹脂の軟化点又は融点より10℃高い温度)以下であることが好ましい。加熱溶融処理の際の温度が、樹脂発泡体を構成する樹脂の軟化点又は融点より15℃低い温度より低いと、発泡構造体表面の溶融が進まず、特定の表面層が得られない場合がある。一方、加熱溶融処理の際の温度が、樹脂発泡体を構成する樹脂の軟化点又は融点より20℃高い温度より高いと、発泡構造体の収縮を起こし、シワなどの問題が発生する場合がある。
【0079】
加熱溶融処理の処理時間としては、処理温度にもよるが、例えば、0.1秒〜10秒程度が好ましく、好ましくは0.5秒〜7秒程度である。時間が短すぎると、発泡構造体表面の溶融が進まず、特定の表面層が得られない場合がある。一方、時間が長すぎると、発泡構造体の収縮を起こし、シワなどの問題が発生する場合がある。
【0080】
また、樹脂の塗布、樹脂層の溶着、粘着剤層を介しての樹脂フィルム層の貼付の際には、同一組成の得やすさや作業性の点から、発泡構造体を得る際に用いられる前記の樹脂組成物が好適に用いられる。
【0081】
本発明の樹脂発泡体の厚みや形状としては、特に制限されず、用途などに応じて適宜選択することができる。例えば、樹脂発泡体の厚みとしては、0.2〜5mm(好ましくは0.3〜3mm)程度の範囲から選択することができる。
【0082】
また、樹脂発泡体は、通常、用いられる装置に合わせた種々の形状に加工されていてもよい。この際、樹脂発泡体をキャリアテープに貼着させた状態で(すなわち、樹脂発泡体をキャリアテープにより保持させて、発泡部材積層体として)、加工や搬送などを行うことができる。
【0083】
さらに、樹脂発泡体は、粘着剤層が設けられていてもよい。なお、樹脂発泡体に粘着剤層が設けられている場合、特に制限されず、特定の表面層上に粘着剤層が設けられていてもよいし、その他の表面層上に粘着剤層が設けられていてもよいし、発泡体層上に粘着剤層が設けられていてもよい。
【0084】
樹脂発泡体は、良好な発泡構造を保持していることから、所定の形状に加工させることにより、各種部材又は部品を、所定の部位に取り付ける(装着する)際に用いられる防塵材、シール材、衝撃吸収材、防音材、緩衝材等として好適に用いられる。
【0085】
(発泡部材)
発泡部材は、前記樹脂発泡体から構成されている部材であり、樹脂発泡体の特定の表面層でキャリアテープに保持できる構成を必須の構成とする。つまり、発泡部材は、前記樹脂発泡体から構成されており、樹脂発泡体の特定の表面層が最外層である構成を有する。このような構成を有するので、発泡部材は、キャリアテープを用いての加工性、キャリアテープによる搬送性、キャリアテープから剥離させる際のフォーム破壊抑止性、キャリアテープからの易剥離性などの良好なキャリアテープに対する特性(対キャリアテープ特性)を発揮する。
【0086】
具体的には、発泡部材は、前記樹脂発泡体のみからなる構成であってもよいし、樹脂発泡体の他面(発泡部材において一方の面のみが特定の表面層により提供される面である場合の他方の面、発泡部材において両方の面が特定の表面層により提供される面である場合のどちらか一方の面)に、他の層や基材(特に粘着層など)が積層されている構成であってもよい発泡部材において、粘着層が設けられている構成を有していると、例えば、加工用台紙を設けたり、被着体へ固定ないし仮止めすることができる。
【0087】
前記粘着層を形成する粘着剤としては、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤など)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知の粘着剤を適宜選択して用いることができる。また、粘着剤は、ホットメルト型粘着剤であってもよい。粘着剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、粘着剤は、エマルジョン系粘着剤、溶剤系粘着剤、オリゴマー系粘着剤、固系粘着剤などのいずれの形態の粘着剤であってもよい。中でも、粘着剤としては、被着体への汚染防止などの観点から、アクリル系粘着剤が好適である。
【0088】
粘着層は、公知乃至慣用の形成方法を利用して形成することができ、例えば、所定の部位又は面上に粘着剤を塗布する方法(塗布方法)、剥離ライナーなどの剥離フィルム上に、粘着剤を塗布して粘着層を形成した後、該粘着層を、所定の部位又は面上に転写する方法(転写方法)などが挙げられる。なお、粘着層の形成に際しては、公知乃至慣用の塗布方法(流延方法、ロールコーター方法、リバースコータ方法、ドクターブレード方法など)を適宜利用することができる。
【0089】
粘着層の厚みとしては、通常、2〜100μm(好ましくは10〜100μm)程度である。粘着層は、薄層であるほど、端部のゴミや埃の付着を防止する効果が高いため、厚みは薄い方が好ましい。なお、粘着層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。
【0090】
また、粘着層は、他の層(下層)を介して、発泡体上に形成されていてもよい。このような下層としては、例えば、基材層(特に、フィルム層)や、不織布層、他の粘着層の他、中間層、下塗り層などが挙げられる。
【0091】
さらにまた、粘着層が発泡部材の他方の面に形成されている場合、粘着層上には、他の層、より具体的には剥離フィルム(セパレーター)(例えば、剥離紙、剥離フィルムなど)、基材(例えば、紙系基材、繊維系基材、金属系基材、PETフィルムなどプラスチック系基材など)、他の粘着層等が形成されていてもよい。
【0092】
発泡部材は、所望の形状や厚みなどを有するように加工が施されていてもよく、また、用いられる装置や機器等に合わせて種々の形状に加工が施されていてもよい。また、発泡部材は、各種部材又は部品を、所定の部位に取り付ける(装着する)際に用いられる防塵材、シール材、衝撃吸収材、防音材、緩衝材等として好適に用いられる。
【0093】
(発泡部材積層体)
発泡部材積層体は、前記樹脂発泡体や前記発泡部材が、基材の少なくとも片面に粘着剤層を有するキャリアテープにより保持された構成を有しており、且つ、樹脂発泡体の特定の表面層とキャリアテープの粘着剤層とが接触する形態で、キャリアテープに貼着された構成を有している。なお、以下、「樹脂発泡体や発泡部材」を「樹脂発泡体(発泡部材)」と表記する場合がある。
【0094】
このように、発泡部材積層体は、樹脂発泡体(発泡部材)がキャリアテープの粘着面に貼着された構成を有しているので、樹樹脂発泡体(発泡部材)を、キャリアテープ上に粘着面に貼着させた状態で、加工や搬送等を行うことができ、しかも、樹脂発泡体の特定の表面層がキャリアテープの粘着面に貼着されているので、樹脂発泡体(発泡部材)を使用する際には、フォーム破壊を抑制又は防止して、樹脂発泡体(発泡部材)をキャリアテープより容易に剥離させることができる。
【0095】
本発明の発泡部材積層体を用いて、樹脂発泡体(発泡部材)に所定の形状となるように加工を施した後、キャリアテープより樹脂発泡体(発泡部材)を剥離させることにより、樹脂発泡体(発泡部材)を単離させることができる。このように単離された樹脂発泡体(発泡部材)は、樹脂発泡体(発泡部材)とキャリアテープとの界面で剥離が生じて剥離されており、発泡構造中で破壊が生じるフォーム破壊が全く生じておらず、良好な発泡構造を保持しており、しかも所定の形状に加工されている。そのため、発泡部材積層体を用いて加工されて単離された樹脂発泡体(発泡部材)は、各種部材又は部品を、所定の部位に取り付ける(装着する)際に用いられる防塵材、シール材、衝撃吸収材、防音材、緩衝材等として有用である。
【0096】
前記キャリアテープとしては、特に制限されないが、粘着面を有していることが重要である。なお、キャリアテープは、樹脂発泡体に対して、樹脂発泡体の加工や搬送時には、保持するのに十分な程度の粘着力(接着力)を発揮し、一方、樹脂発泡体の剥離時には、樹脂発泡体の表面を破壊することなく、容易に剥離できる程度の粘着力(接着力)を発揮できることが重要である。
【0097】
従って、キャリアテープとしては、各種粘着剤による粘着剤層を有している粘着テープ又はシートを用いることができ、特に、樹脂発泡体との接着性および剥離性を両立する観点から、(メタ)アクリル系アルキルエステルを粘着剤の主成分とするアクリル系粘着剤によるアクリル系粘着剤層を有しているアクリル系粘着テープ又はシートを好適に用いることができる。このような粘着テープ又はシートとしては、基材の少なくとも一方の面に粘着剤層が形成された構成の基材付きタイプの粘着テープ又はシート、粘着剤層のみにより形成された構成の基材レスタイプの粘着テープ又はシートのいずれの構成を有していてもよい。
【0098】
なお、粘着層を形成する粘着剤において、アクリル系粘着剤以外の粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤(天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤など)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などが挙げられる。また、粘着剤は、ホットメルト型粘着剤であってもよい。粘着剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。粘着剤は、エマルジョン系粘着剤、溶剤系粘着剤、オリゴマー系粘着剤、固系粘着剤などのいずれの形態の粘着剤であってもよい。
【0099】
また、粘着テープ又はシートにおける基材としては、特に制限されず、例えば、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;紙などの紙系基材;布、不織布、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体(特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など)等の適宜な薄葉体を用いることができる。
【0100】
なお、キャリアテープとしての粘着テープ又はシートにおける基材や粘着剤層の厚さ等は特に制限されない。
【0101】
(電気・電子機器用発泡部材)
本発明の樹脂発泡体や発泡部材は、良好な発泡構造を保持していることから、所定の形状に加工させることにより、各種部材又は部品を、所定の部位に取り付ける(装着する)際に用いられる防塵材、シール材、衝撃吸収材、防音材、緩衝材等として好適に用いることができる。特に、小型の部材又は部材を、薄型化の製品に装着する際であっても好適に用いることができる。
【0102】
前記の樹脂発泡体や発泡部材を利用して取付(装着)可能な各種部材又は部品としては、特に制限されないが、例えば、電気・電子機器類における各種部材又は部品などが挙げられる。このような電気・電子機器用の部材又は部品としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置に装着される画像表示部材(特に、小型の画像表示部材)や、いわゆる「携帯電話」や「携帯情報端末」等の移動体通信の装置に装着されるカメラやレンズ(特に、小型のカメラやレンズ)等の光学部材又は光学部品などが挙げられる。
【0103】
また、前記の樹脂発泡体や発泡部材は、トナーカートリッジからトナーが漏れることを防ぐ際の防塵材としても用いることができる。このように、発泡部材を利用して取付可能なトナーカートリッジとしては、複写機やプリンターなどの画像形成装置に使用されるトナーカートリッジなどが挙げられる。
【0104】
(電気・電子機器類)
本発明の電気・電子機器類は、前記の樹脂発泡体や発泡部材が用いられた構成を有している。電気・電子機器類において、前記の樹脂発泡体や発泡部材は、例えば、防塵材、シール材、衝撃吸収材、防音材、緩衝材等として用いられている。このような電気・電子機器類としては、通常、電気・電子機器用の部材又は部品が、前記の樹脂発泡体や発泡部材を介して所定の部位に取り付けられた(装着された)構成を有している。具体的には、電気・電子機器類としては、光学部材又は部品としての液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置(特に、小型の画像表示部材が光学部材として装着されている画像表示装置)や、カメラやレンズ(特に、小型のカメラ又はレンズ)が、前記の樹脂発泡体や発泡部材を介して装着された構成を有している電気・電子機器類(例えば、いわゆる「携帯電話」や「携帯情報端末」等の移動体通信の装置など)が挙げられる。このような電気・電子機器類は、従来より薄型化の製品であってもよく、その厚みや形状などは特に制限されない。
【実施例】
【0105】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0106】
(L*(明度)の測定)
簡易型分光色差計(装置名「NF333」日本電色工業社製)を用いて測定した。
【0107】
(表面被覆率の測定)
表面被覆率は、式(1)より算出した。
【数1】

発泡体表面の面積、及び発泡体表面に存在する孔の面積は、マイクロスコープ(装置名「VHX600」キーエンス社製)を用いて得られた測定サンプル表面の画像より求めた。
マイクロスコープによる観察では、照明方法として側射照明を採用し、その照度は17000ルクスとした。また、倍率は500倍とした。
照明兼カメラとして、照明内蔵レンズカメラ(装置名「0P72404」キーエンス社製」)を使用し、またレンズとして、ズームレンズ(商品名「VH−Z100」キーエンス社製)を使用した。
なお、照度は、照度計(商品名「VHX600」カスタム社製)を使用して調節した。
【0108】
(発泡構造体の製造例1)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:45重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:55重量部、カーボンブラック(商品名「旭♯35」旭カーボン株式会社製):6重量部、及び、パウダー状の難燃剤としての水酸化マグネシウム(平均粒子径:0.7μm):10重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。なお、ペレットの軟化点は160℃であった。
このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、22(注入後19)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、発泡体(発泡構造体)を得た。
この発泡体において、見掛け密度は0.05g/cm3であり、厚みは2.0mmであった。そして、この発泡体をスライスして、厚さが1.0mmの発泡体(「発泡構造体A」と称する)を得た。
【0109】
(実施例1)
前記発泡構造体Aを、ロールギャップ調整可能な熱ラミネーター(装置名「MRK−6504」(株)MCK製)を用いて、ギャップ:1mm、ロール温度:150℃、処理速度:8m/minの条件で、表面熱溶融処理を行なうことにより、表面被覆率が49.2%である樹脂発泡体を得た。
【0110】
(実施例2)
ギャップを0.9mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面熱溶融処理を行い、表面被覆率が62.1%である樹脂発泡体を得た。
【0111】
(実施例3)
ロール温度を160℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面熱溶融処理を行い、表面被覆率が64.6%である樹脂発泡体を得た。
【0112】
(実施例4)
ギャップを0.9mmに変更したこと以外は、実施例3と同様にして、表面熱溶融処理を行い、表面被覆率が75.4%である樹脂発泡体を得た。
【0113】
(実施例5)
ギャップを0.8mmに変更したこと以外は、実施例3と同様にして、表面熱溶融処理を行い、表面被覆率が83.7%である樹脂発泡体を得た。
【0114】
(実施例6)
ロール温度を170℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面熱溶融処理を行い、表面被覆率が88.9%である樹脂発泡体を得た。
【0115】
(比較例1)
前記の発泡構造体Aをそのまま用いた。発泡構造体Aの表面被覆率が24.3%であった。
【0116】
(比較例2)
ロール温度を140℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面熱溶融処理を行い、表面被覆率が35.3%である樹脂発泡体を得た。
【0117】
(評価1)
実施例及び比較例について、下記の測定方法又は評価方法により、粘着力、フォーム破壊の有無を測定又は評価した。その結果を表1に示した。
【0118】
(粘着力)
樹脂発泡体(幅:20mm×長さ:120mm)を、温度:23±2℃、湿度:50±5RH%の雰囲気下にて24時間以上保管した後(前処理条件はJIS Z 0237に準じる)、幅:30mm×長さ:120mmのキャリアテープ(商品名「SPV−AM−500」日東電工社製、基材付き片面粘着テープ、基材:PET基材)の粘着剤層表面に、表面熱溶融処理が施されている面とキャリアテープの粘着剤表面とが接する形態で、2kgローラ、1往復の条件で圧着し、24時間放置して、測定用サンプルとした。
測定用サンプルのキャリアテープ基材側の面を、測定時に支持板(例えば厚さ2mmのベークライト板など)から浮き、剥がれがないように、強粘着の両面粘着テープ(商品名「No.500」日東電工社製)を介して、支持板上に固定し、キャリアテープから樹脂発泡体を剥離する際に要する力を、温度:23±2℃、湿度:50±5RH%の雰囲気下、高速剥離条件(引張速度:10m/min)、及び低速剥離条件(引張速度:0.3m/min)の各条件で測定し、粘着力(N/20mm)を求めた。
なお、高速剥離条件での測定では高速剥離試験機(テスター産業社製)を使用し、低速剥離条件での測定では万能引張圧縮試験機(装置名「TCN−1kNB」ミネベア社製)を使用した。
【0119】
(フォーム破壊の有無)
上記測定において、高速剥離条件で測定する場合及び低速剥離条件で測定する場合の両方において、剥離の状態を目視で確認し、樹脂発泡体の表面破壊が生じているか否かにより判断した。
表1には、樹脂発泡体の表面破壊がない場合には「なし」と記載し、樹脂発泡体の表面破壊が生じる場合には「あり」と記載した。
【0120】
【表1】

【0121】
接着力測定時の測定用サンプルについて、作製し、温度:23±2℃、湿度:50±5RH%の雰囲気下にて24時間放置してから、樹脂発泡体とキャリアテープとの間に「浮き・剥離」がないか確認したところ、「浮き・剥離」は生じていなかった。
【0122】
実施例及び比較例から明らかのように、表面被覆率が大きくなるほど、キャリアテープとの剥離力が大きくなる傾向があった。また、温度を上げたり、ギャップを狭くする等の熱処理を促進させる条件で表面熱溶融処理を行うと、表面被覆率は上昇し併せて剥離力も上昇した。また、実施例では、低速剥離条件の粘着力が0.3N/20mmを越えているので、樹脂発泡体に粘着剤層を積層させることにより得られる発泡部材をキャリアテープに固定してから粘着剤層上に加工用の台紙を設けて、加工を行い、加工終了後の発泡部材を組み付ける際に、粘着剤層上に設けた加工用の台紙を剥がそうとすると、キャリアテープから発泡部材が剥がれて組み付けができないという問題を生じることはない。さらに、実施例では、表面被覆率が40%以上であるので、キャリアテープから剥離させる際のフォーム破壊抑止性と、キャリアテープとの接着性とを両立できる。
【0123】
実施例は、表面熱溶融処理という簡単な工程で、作製することができ、表面熱溶融処理の前後で物性に変化を生じることはなかった。また、剥離時にフォーム破壊を生じることはなく、一体性が良好であった。
【0124】
(評価2)
実施例1の表面熱溶融処理が施されている面のFT−IRチャート、及び厚さの半分で切断した切断面のFT−IRチャートを図1に示した。表面熱溶融処理が施されている面は表面層により提供される面であり、厚さの半分で切断した切断面は発泡体層により提供される面である。なお、上記の「厚さの半分で切断した切断面」は、厚さ方向に直交する方向の切断面である。
測定は、Perkin Elmer社製「FT−IRスペクトルメーター SPECTRUM2000」に、1回反射ATR測定用Specac社製シルバーゲート(Ge45°)を設置して行った。試料がGe結晶全面を十分に覆うようにし、試料と押さえ具の間に厚さ1mm以上のシリコンゴムを挟んで、試料がGe結晶に十分密着するようにした。分解能は4cm-1、積算回数は16回で実施した。
【0125】
図1のFT−IR分析を行った場合のチャートにおいて、主たる吸収は同じであった。このため、発泡体層部分と表面層部分の主たるポリマー成分は同一であり、表面層と発泡体層との組成は同一と評価できた。
【0126】
また、その他の実施例も、上記と同様に、表面熱溶融処理が施されている面と厚さの半分で切断した切断面について、FT−IR分析を行ったところ、図1と同様のFT−IRチャートを得ることができた。このため、その他の実施例も、発泡体層部分と表面層部分の主たるポリマー成分は同一であり、表面層と発泡体層との組成は同一と評価できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体層と表面層とを有し、前記発泡体層と前記表面層とが同一組成であり、且つ前記表面層の表面被覆率(式(1)で定義)が40%以上であることを特徴とする樹脂発泡体。
【数1】

【請求項2】
発泡体層の密度が、0.20g/cm3以下である請求項1記載の樹脂発泡体。
【請求項3】
樹脂発泡体を構成する樹脂が、熱可塑性樹脂である請求項1又は2記載の樹脂発泡体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂である請求項2記載の樹脂発泡体。
【請求項5】
前記表面層が、加熱溶融処理により形成されている請求項1〜4の何れかの項に記載の樹脂発泡体。
【請求項6】
加熱溶融処理の温度が、[(樹脂発泡体を構成する樹脂の軟化点又は融点)−15℃]で規定される温度以上である請求項5記載の樹脂発泡体。
【請求項7】
樹脂に高圧のガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成されている請求項1〜6の何れかの項に記載の樹脂発泡体。
【請求項8】
前記ガスが、不活性ガスである請求項7記載の樹脂発泡体
【請求項9】
前記不活性ガスが、二酸化炭素である請求項8記載の樹脂発泡体。
【請求項10】
前記高圧のガスが、超臨界状態である請求項7記載の樹脂発泡体。
【請求項11】
独立気泡構造または半連続半独立気泡構造を有している請求項1〜10の何れかの項に記載の樹脂発泡体。
【請求項12】
請求項1〜11の何れかの項の記載の樹脂発泡体が用いられている発泡部材。
【請求項13】
発泡体層の片側に前記表面層を有し、もう一方側に粘着剤層を有する請求項11記載の発泡部材。
【請求項14】
粘着剤層が、アクリル系粘着剤層である請求項12又は13記載の発泡部材。
【請求項15】
電気・電子機器用として用いられている請求項12〜14の何れかの項に記載の発泡部材。
【請求項16】
樹脂発泡体が、基材の少なくとも片面に粘着剤層を有するキャリアテープにより保持された構成を有する発泡部材積層体であって、樹脂発泡体が請求項1〜11の何れかの項に記載の樹脂発泡体であり、さらに、前記の樹脂発泡体がキャリアテープにより保持された構成が、前記表面層とキャリアテープの粘着剤層とが接触する形態で、樹脂発泡体がキャリアテープに貼着された構成であることを特徴とする発泡部材積層体。
【請求項17】
発泡部材が用いられた電子・電気機器類であって、発泡部材が、請求項15記載の電気・電子機器用発泡部材であることを特徴とする電気・電子機器類。

【図1】
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【公開番号】特開2011−12235(P2011−12235A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160242(P2009−160242)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】