説明

樹脂硬化収縮測定器

【課題】樹脂硬化に伴う樹脂の収縮は、接着部材のずれ、ゆがみ、片方の外れ、接着不良等の不具合が発生する場合がある。精密部品や光学部品の固定には小さな収縮率でも、光軸のずれなどが起りトラブルの原因となっている。
【解決手段】接着用樹脂を硬化させながら、その収縮を測定することにより樹脂の収縮率を把握する。収縮率が把握できると、あらかじめ樹脂収縮を加味して部品配置の設計が可能となる。また、原因を推察する上での基礎資料となり、トラブル解消が短縮される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、接着剤、コーテング剤など樹脂を塗布した後、紫外線照射や光線照射、加熱などを行い樹脂を硬化させる時、樹脂の体積が減少するため、この硬化収縮を測定するものである。硬化後の樹脂の体積が予測できると、その収縮を加味した製品設計が出来るので、収縮後目標位置に部材を配置させ正常な製品を作ることを可能とする硬化収縮測定装置を提供するものである。
【0002】
電子部品や光学部品を固定する時、比較的硬化収縮が小さい紫外線硬化樹脂を使う。しかし、精密な製品を製作する時は、この樹脂硬化時に起こる樹脂の収縮が問題となる場合がある。硬化前と硬化後の樹脂の収縮率が把握できると、製品設計時にそれを加味して設計する事が出来るので、収縮率を測定する装置の要請が多く、本発明の装置製作となった。樹脂の収縮率測定は、紫外線硬化樹脂に限らず光反応樹脂や熱反応樹脂でも同じように測定可能で、用途が広い。
【0003】
フイルムの貼り合わせやコーテングに樹脂を塗布して硬化させる。樹脂部分の収縮率によりフイルムのカールや歪みが発生する現象が異なる。あらかじめ樹脂の収縮率を測定する事が出来れば、コーテング材の選定時に比較検討する事が出来る。また、コーテングするフイルムの厚さや腰を検討する事が出来る。或いはコーテングする樹脂の厚さを設定する上でも樹脂の収縮率をあらかじめ把握しておくと樹脂選定枝が広がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−011471「ICカードの基板用補強枠及びカード基板の製造方法並びにICカードの製造方法」
【特許文献2】特開平08−314126「感光性樹脂板の製版方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接着やコーテングをする時、一液性硬化樹脂、二液性硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、光反応樹脂など殆どの樹脂は未硬化時に比べ硬化後は収縮をする。樹脂硬化に伴う樹脂の収縮は、接着部材のずれ、ゆがみ、外れ、接着不良等の不具合が発生する原因となる。
【0006】
比較的収縮が少ないとされる紫外線硬化樹脂においても、多少の収縮が見られる。精密部品や光学部品の固定には小さな収縮率でも、光軸のずれなどが起りトラブルの原因となっている。
【0007】
紫外線硬化樹脂においては、作業性の簡便さと、短時間硬化による作業性向上で、ますます採用が増え、新しい樹脂が参入されるものの、それらの硬化収縮はメーカーにより、或いは品番により、それぞれの特質をもっているため、その数値化が必要であるが、現在は測定方法が難しく未整備である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
接着用樹脂を硬化させながら、その収縮を測定することにより樹脂の収縮率を把握する。収縮率が把握できると、あらかじめ樹脂収縮を加味して部品配置の設計が可能となる。
また、原因を推察する上で参考となり、トラブル解消が短縮される。
【0009】
コーテングやラミネート時における樹脂の収縮は品質に大きな影響を与える。樹脂の収縮でカールや歪みが発生する、樹脂の持つ収縮率をあらかじめ把握しておくと、その対策を立てる事が容易となる。
【0010】
紫外線硬化樹脂には図−3に示す通り、底部から紫外線を照射して樹脂の硬化を促す、表面からはレーザーセンサーで距離を測定する。硬化前と硬化後の表面距離により樹脂全体の厚さが測定できる。
【0011】
硬化樹脂を入れる外枠はフッ素樹脂等接着し難い樹脂を使う、硬化樹脂は硬化時に収縮するので、外枠に接着すると周囲に引っ張られて正確な厚さや表面積を測定できない、フッ素樹脂外枠により、接着することなくフリーの状態で収縮するので、直径が測定でき、厚さと併せて表面積が測定できるため体積を算出する事が出来る。これにより硬化収縮の前後が数値化できる。
【0012】
硬化樹脂の収縮が把握できる事で、部材の収まる位置が予測できる、この事であらかじめ設計時に樹脂硬化を計算して配置する事が出来る。樹脂により収縮率が変わるので,充分検証して仕様書を決める事が出来る。
【発明の効果】
【0013】
本発明の樹脂硬化収縮測定装置は光学機器や精密電子機器の部材固定用に使用する事で用途が広がる。従来樹脂の硬化収縮が解らないまま使用していて、原因不明の不具合が発生した時その対策は正確に数値化できなかったが、本発明の装置であらかじめ樹脂の変化を予測して設計をする事が出来るようになった。
【0014】
フイルムのラミネートやコーテング時に起こるカールや歪みは、樹脂の硬化収縮による場合が多い、あらかじめ樹脂の硬化収縮率が判明していると、加工前にシュミレーションして問題を事前に把握する事が出来る。問題を予測して事前に対策を立てる事でトラブルを未然に防ぐ事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、光学部品の固定位置で樹脂硬化前の断面図
【図2】図2は、光学部品の固定位置で樹脂硬化後の断面図
【図3】図3は、樹脂硬化収縮測定装置の断面図
【図4】図4は、樹脂硬化前の(A)断面図と(B)平面図
【図5】図5は、樹脂硬化後の(A)断面図と(B)平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
ガラス板上に設けられた外枠に内に樹脂(11)を投入する、硬化前の樹脂の厚さと表面積を測定しておく、ガラス板下部から紫外線(10)を照射して樹脂を硬化させる、樹脂の硬化後の厚さと表面積を測定すると硬化後の樹脂体積が判明する、この硬化前・後の体積比較で樹脂の収縮率を数値化して把握する事が出来る。
【0017】
ガラス表面に設ける外枠(12)はフッ素樹脂で製作する、樹脂が硬化する時周囲に接着して引っ張られ歪みや変形しないようにしておく、フッ素樹脂は接着しないため硬化樹脂の外周はフリーの状態になり均一な収縮樹脂を実現する事が出来る。
【0018】
ガラス板の下部から照射する紫外線照射部(9)はUV−LEDを使用する。UV−LEDはコンパクトで狭いスペースに設置出来る。また、発熱も少なく予備点灯も必要ないので、使用する瞬間に点灯する事が出来るため測定装置の取り扱いが簡単である。
【0019】
紫外線照射のUV−LEDは365nmや385nmの単波長であり、オゾン発生の危険性も無く取り扱いが簡単である。このため、排気装置や遮光装置などの周辺装置が必要でなく、設置場所を選ばない。
【実施例1】
【0020】
図1は、光学部品の固定用に樹脂を塗布した状態で、樹脂は未硬化である。
【0021】
図2は、光学部品を固定する時、樹脂を硬化させた状態である、樹脂の硬化収縮で一方に引っ張られ、光軸がずれている。
【0022】
図3は、樹脂硬化収縮測定装置の全体図である。外枠内に樹脂を流し込み、下部のUV−LED(9)から紫外線を照射して樹脂を硬化させる。表面からレーザーセンサー(7)で距離と面積を測り樹脂の変化を測定し数値化する。
【0023】
図4、図5は、紫外線硬化樹脂の硬化前(11)と硬化後(18)の体積変化の状態である。それぞれの表面積と厚さを測定すると体積が算出される。
【0024】
表1、表2、表3、は(株)ケミテック製紫外線硬化樹脂の硬化収縮状態を測定したものである。硬化樹脂の構成により品番別に 硬化状態が変わる。遅いスピードで硬化するものや速く硬化するものもある。また、硬化終了時での収縮率もそれぞれ違って いる。この内容を把握することで、精密機器の部品固定を設計する事が出来る。
【0025】
【表1】

【表2】

【表3】

【産業上の利用可能性】
【0026】
樹脂の硬化後の収縮が測定できる事は、紫外線硬化樹脂に限らず1液性硬化樹脂、2液性硬化樹脂、光反応性樹脂、熱反 応性樹脂など、あらゆる樹脂の硬化収縮が測定できる。この事は従来樹脂の収縮でトラブルがあった場合、経験値で対処して いたものが、数値化して対処出来るため、樹脂を硬化させるあらゆる用途で、より正確な対策が可能となる。
【符号の説明】
【0027】
1 レンズ
2 硬化前の樹脂
3 固定部
4 設計時の光軸
5 移動した光軸
6 硬化後の樹脂
7 レーザーセンサー
8 レーザー光で距離測定
9 UV−LED
10 紫外線照射
11 硬化前樹脂
12 フッ素樹脂外枠
13 紫外線透過ガラス板
14 硬化前の樹脂厚
15 硬化前の樹脂直径
16 硬化後の樹脂厚
17 硬化後の樹脂直径
16 硬化後の樹脂表面
19 測定器躯体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤の硬化収縮を測定する装置であり、紫外線を透過させるガラス板上に紫外線硬化樹脂を置き、その上部に非接触で距離を測るレーザーセンサーを設け、ガラス板下部より紫外線を照射して樹脂を硬化させ、その表面と底部の距離を及び表面積を測定する事で、収縮状態が数値化できるようにした、樹脂硬化収縮測定装置。
【請求項2】
ガラス板上に設ける硬化樹脂用外枠にはフッ素樹脂等接着し難い樹脂を使用して、樹脂が硬化する時外枠に接着して収縮と逆の力が発生し変形する事を防ぎながらフリーの状態で硬化樹脂の体積が測定可能な前記請求項1記載の樹脂硬化収縮測定装置。
【請求項3】
上部から測定するレーザーセンサーはガラス板表面と外枠内側を測定して、樹脂を投入した後未硬化の状態で樹脂の表面を測定体積を算出する、樹脂硬化後は樹脂の表面積と厚さを測る事で硬化後の樹脂体積を算出し硬化前後の体積を数値化できるようにした前記請求項1記載の樹脂硬化収縮測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104869(P2013−104869A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262919(P2011−262919)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(599113822)株式会社センテック (7)
【Fターム(参考)】