説明

樹脂管継手

【課題】本発明は、樹脂管継手に内蔵する各部材をそのままとし、樹脂管継手その物を外側より漏水防止機能を付与する樹脂管継手を提供するものである。
【解決手段】継手基体にO−リング及び管体保持リング等の各部材を装着した樹脂管継手の管体差込口の外側に高吸水膨潤性部材をリング状に配置し、その上を覆うカバーを設けたことを特徴とする樹脂管継手。11‥継手基体、15‥キャップ、16‥差し込み口、20‥管体、30‥カバ−体、31‥カバ−体の胴部、32‥カバ−体の筒部、33‥高吸水性をもつ環状のシール材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は漏水対策を施した樹脂管継手に係るものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂管の配管システムは軽量、施工が簡単、シ−ルの確実性等の特徴により、従来行われていた金属配管(ライニング鋼管やSUS配管、銅管等)に替わって需要が拡大している。特に、集合住宅や高層建築の水回りシステムや、戸建て住宅のにいたるまで、給水・給湯配管システムに、更には水回り器具からの排水システムに、ポリブテン管や架橋ポリエチレン管が広く採用されるようになってきた。
【0003】
従って、樹脂管相互或いは樹脂管と器具との間の接続に樹脂管継手が各種開発されている。いずれの樹脂管継手にあっても接続部からの漏水があってはならず、夫々に工夫がこらされている。かかるシ−ル対策として通常はO−リングを用いるのが一般的であり、例えば、樹脂管継手内に差し込まれた管体の外表面をO−リングにてシ−ルする方式やその内表面をO−リングにてシ−ルする方式がある。
【0004】
このため、用いられる樹脂管のシ−ルに供される面に傷があってはならず、わずかな傷であってもO−リングにてシ−ルする部位を跨ぐ傷があった場合にはこれが原因で漏水が発生することは避けられない。しかるに、前記した樹脂管は金属製の管に比べて極めて柔軟であり、表面に傷がつきやすい。即ち、樹脂管は50〜100m以上を巻き管として出荷され、これを作業現場で横持ちや配管作業中に表面に傷をつけることが多かった。
【0005】
図1は樹脂管の外表面をO−リングにてシ−ルする構造の樹脂管継手の一例であり、継手基体1の流路2内に段部3、4を形成し、段部4内にO−リング5及び管体保持リング(爪つきのコレット)6が内蔵され、これら及び差し込まれた管体の抜け出しを防止するキャップ7にて構成されている。しかるに、差し込まれる管体20の外表面にO−リング5にてシ−ルされる部位を跨いだ傷21があった場合にはO−リング5の存在如何にかかわらず、この傷21を伝わって漏水が発生することとなってしまう。
【0006】
かかる管体の外表面をシールする方法では、樹脂管継手に差し込む前に外表面に傷がないことを目視や触感で確認することで対策を行ってきたが、これでは十分な対策でないことは明らかである。
【0007】
そのため、運搬中や作業中に傷がつきにくい管体の内表面をO−リングにてシ−ルする樹脂管継手が案出されている。図2はその一例を示すものであり、継手基体11に内筒12を形成したものであり、この内筒12にO−リング13を装着し、内筒12に対向して管体保持リング14を配置し、キャップ15にてこの抜けを防止した構造である。そして、管体20を内筒12に差し込むものであり、管体20の内表面をO−リング13にてシ−ルすることとなる。
【0008】
しかし、この方法は管体の内表面側をシールするために継手の構成上有効内径が小さくなり、有効な水量を得るには管体及び樹脂管継手のサイズを1クラス上のものにする必要があり、更に、製造管理上、管体の内表面側の寸法検査を連続又は間欠的に行うには特殊な測定機械を必要とするなど別の問題も含んでいる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、樹脂管継手に内蔵する各部材をそのままとし、樹脂管継手その物を外側より漏水防止機能を付与する樹脂管継手を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は、継手基体にO−リング及び管体保持リング等の各部材を装着した樹脂管継手の管体差込口の外側に高吸水膨潤性部材をリング状に配置し、その上を覆うカバーを設けたことを特徴とする樹脂管継手に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂管継手にあっては、樹脂管継手の外側より漏水対策を講じたものであり、樹脂管継手の内部構造に相違があっても、全ての樹脂管継手に適用可能であり、その効果は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
樹脂管継手の管体差込口外側に高吸水膨潤部材をリング状に配置し、その上を覆うカバーを設けることで樹脂管継手の漏水対策を施したものである。かかる吸水膨潤性部材は樹脂管継手に差し込まれる管体の周囲、即ち漏水が最も早く生じる部位にこれを適用し、漏水があった場合にはこれを吸収し、部材が膨潤し漏水の道を塞ぐものである。
【0013】
本発明にて使用される吸水膨潤性部材には、NBRやEPDMのような非膨潤性のゴムや、EVAや塩化ビニルのような合成樹脂に、ポリアクリル酸系、ポパール系、ポリオキシエチレン系、セルロース系、デンプン系等の高吸水性樹脂を混練したものがあり、これを不織布に付けたり、不織布の間にサンドイッチ状に保持したり、更に別の材質に練り込んだりして使われている。
【0014】
更に言えば、吸水膨潤性部材のうち、アクリル繊維からなる高吸水性繊維が好ましく、かかる繊維状の吸水体は、吸水によって繊維物性の低下を引き起こさない部材であるという点である。このことは、均一断面でなくても更に形状に合わせうる吸水膨張を有し、水が蒸発後もある程度の形状を維持し続ける高吸水性繊維となり得るものであり、特に好ましいものとなる。
【0015】
尚、吸水膨潤性部材を用いた管継手としては、特許文献1があるが、係る技術内容は継手内に内蔵するO−リングに適用したものであり、本発明におけるような樹脂管継手の外側にこれを採用するものではない。
【0016】
【特許文献1】特開平05−296379号公報
【0017】
用いられるカバ−体はキャップを覆う部位と継手に差し込まれる樹脂管の周囲を覆う部位とからなり、カバ−体と継手との間に吸水膨潤性部材を挟み込むものである。尚、使用されるカバ−体としては、PE、PP、PET、PVC等の樹脂製のフィルムが挙げられる。
【実施例】
【0018】
以下、図面をもって本発明を更に説明する。適用する樹脂管継手を図3にて示すが、図2に示すと同様の構造を有するものであり、図示はしないが樹脂管の内表面をO−リング(図示せず)にてシ−ルする構造の樹脂管継手である。そして、この例では左右に樹脂管を差し込む差し込み口16、16を備え、内蔵したO−リングや管体保持リング(図示せず)の抜けを防止するためにキャップ15が螺着されている樹脂管継手である。
【0019】
さて、PE製のカバ−体30はキャップ15を覆う胴部31とこれに連なり差し込み口16をの周囲を囲繞する筒部32とからなっており、カバ−体30の内側に差し込み口16を囲んで高吸水性をもつ環状のシール材33を配置してなるものである。
【0020】
管体20はカバ−体30の筒部32から差し込まれるが、何らかの理由で漏水が発生した場合には管体20の差し込み口16から漏れることとなる。しかるに、本発明にあっては、かかる差し込み口16の周囲にこれを囲んで高吸水性をもつ環状のシール材33が配置されているため、漏水はこれによって吸収され、かつこれが膨潤することによって管体20と差し込み口16との隙間が埋められ、これによって漏水の発生が阻止できることとなったものである。
【0021】
高吸水性をもつ環状のシール材33を図4に示すと、全体としてド−ナッツ型をなし、内径33aは差し込み口16の大きさとほぼ同じ穴径とされている。そして、一方面に粘着材34が備えられており、キャップ15との貼り合わせに供されるものである。尚、この例では切込部33bが一か所設けられ、この切込部33bを広げることによってキャップ15との貼り合わせに利便性を持たせた例である。
【0022】
図5は本発明の別例を示す図であって、樹脂管20にはスチレンフォ−ム等の保温材35やさや管(図示せず)にて覆われている場合がある。この場合には、筒部32は保温材35を囲む大きさとしてもよい。
【0023】
樹脂管継手にカバ−体30を嵌め込むには、予めカバ−体30及び高吸水性をもつ環状のシール材33を管体20に嵌め込んでおくのがよく、管体20を樹脂管継手に差し込み、その後にシール材33をキャップに貼り合わせ、次いでカバ−30をキャップ15に嵌めることとなる。ただし、図5に示すような保温材35や図示しないさや管等が適用される場合には、シール材33は後付けの方が施工しやすく、前記したシ−ル材33における切込部33bを利用し、これを広げて嵌め込むのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の樹脂管継手にあっては、樹脂管継手の外側より漏水対策を講じたものであり、樹脂管継手の内部構造に相違があっても適用可能であり、場合によっては樹脂管継手のみならず金属管等を含めて全ての継手に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は樹脂管の外表面をO−リングにてシ−ルする構造の樹脂管継手の例を示す半裁図である。
【図2】図2は樹脂管の内表面をO−リングにてシ−ルする構造の樹脂管継手の例を示す半裁図である。
【図3】図3は本発明の樹脂管継手に用いられるシ−ル材を示す図である。
【図4】図4は本発明の樹脂管継手の例を示す一部切断側面図である。
【図5】図5は本発明の樹脂管継手の他の例を示す一部切断側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1‥継手基体、
2‥流路、
3、4‥段部、
5‥O−リング、
6‥管体保持リング、
7‥キャップ、
11‥継手基体、
12‥内筒、
13‥O−リング、
14‥管体保持リング、
15‥キャップ、
16‥差し込み口、
20‥管体、
21‥傷、
30‥カバ−体、
31‥カバ−体の胴部、
32‥カバ−体の筒部、
33‥高吸水性をもつ環状のシール材、
33a‥高吸水性をもつ環状のシール材の内径、
33b‥切込部、
34‥粘着材、
35‥保温材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手基体にO−リング及び管体保持リング等の各部材を装着した樹脂管継手の管体差込口の外側に高吸水膨潤性部材をリング状に配置し、その上を覆うカバーを設けたことを特徴とする樹脂管継手。
【請求項2】
カバ−体がキャップを覆う部位と継手に差し込まれる樹脂管の周囲を覆う部位とからなる請求項1記載の樹脂管継手。
【請求項3】
高吸水膨潤性部材が高吸水繊維である請求項1又は2記載の樹脂管継手。
【請求項4】
高吸水性繊維がアクリル繊維である請求項3記載の樹脂管継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate