説明

樹脂粒子、その製造方法、およびその用途

【課題】光拡散性能に優れた樹脂粒子、その製造方法およびその用途を提供することを課題とする。
【解決手段】樹脂粒子は、架橋(メタ)アクリル系樹脂である第1ポリマーと、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する多官能ビニルモノマー、界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマー、および単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー(但し、前記界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーを除く)の3種のモノマーに由来する第2ポリマーとを含む。この樹脂粒子は、前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとが相分離し、前記第1ポリマーの相が長径1〜200nmの粒子状に分散した状態で存在するミクロ相分離構造が形成された分散層を中心部に有し、前記分散層の外側に、前記第1ポリマー又は前記第2ポリマーからなる均質層を少なくとも1つ有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散性能を有する樹脂粒子、該樹脂粒子の製造方法、並びに、該樹脂粒子の用途(前記樹脂粒子を含む塗料、外用剤、樹脂組成物、光拡散部材、および光拡散フィルム)に関する。
【0002】
粒子径が1〜100μmの範囲にあり、その大きさの揃った樹脂粒子は、スペーサー、滑り性付与剤、複写機用のトナー、塗料の艶消し剤、機能性担体などに使用され、近年では、液晶分野において光拡散フィルム、防眩フィルムなどの原料としても使用されている。
【0003】
例えば、光拡散フィルムは、樹脂粒子をバインダーおよび溶媒に混合した混合物を、フィルムに塗布することで製造され、フィルム表面に存在する粒子の異形性により光拡散性能能が発現するものと考えられている。
【0004】
このような光拡散性能を発現させるために、様々な樹脂粒子が提案されている。
【0005】
例えば、特許第4067694号公報(特許文献1)には、多相構造を有するポリマー粒子を含有する軟質フィルム用艶消し剤、およびこの軟質フィルム用艶消し剤を含む艶消し軟質フィルムが記載されている。この特許文献1に開示の軟質フィルム用艶消し剤において、前記ポリマー粒子は、ゴム状ポリマーを形成する重合性モノマーの懸濁重合によりゴム状ポリマーを形成する一段目反応と、次いでガラス状ポリマーを形成する重合性モノマーを添加して懸濁重合によりガラス状ポリマーを形成する二段目反応とにより製造される。
【0006】
この特許文献1に開示の軟質フィルム用艶消し剤に含まれるポリマー粒子は、一段目反応で形成されるポリマーと二段目反応で形成されるポリマーが、1つの粒子内で各々異なる相として存在する多相構造を有している。このような多相構造を有するポリマー粒子において、粒子内の各相を構成するポリマーの光屈折率はそれぞれ異なることから、これにより、多相構造を有するポリマー粒子は、光拡散性能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4067694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示の軟質フィルム用艶消し剤に含まれるポリマー粒子は、内部に多相構造を有するが、その内部に共存する2つのポリマーの分散が十分でない、具体的には、多相構造を構成する各相の大きさが大きいことから、十分な光拡散性能を有していなかった。
【0009】
このため、内部に多相構造を有する樹脂粒子において、光拡散性能の向上が望まれていた。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、光拡散性能に優れた樹脂粒子、その製造方法およびその用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者は、特定の種粒子(架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子)が分散した水性エマルジョン中に、特定の3種のモノマーを添加して、種粒子に3種のモノマーを吸収させながら重合させることにより、光拡散性能に優れた樹脂粒子が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
本発明に係る樹脂粒子は、多相構造を有する樹脂粒子であって、架橋(メタ)アクリル系樹脂である第1ポリマーと、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する多官能ビニルモノマー、次式:
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R1はHまたはCH3、mは0〜50、nは0〜50を意味する。但し、m+n>1とする。)で表される界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマー、および単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー(但し、前記式の界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーを除く)の3種のモノマーに由来する第2ポリマーとを含み、
前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとが相分離し、前記第1ポリマーの相が長径1〜200nmの粒子状に分散した状態で存在するミクロ相分離構造が形成された分散層を中心部に有し、前記分散層の外側に、前記第1ポリマー又は前記第2ポリマーからなる均質層を少なくとも1つ有することを特徴とする。なお、本明細書中において、「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」又は「アクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」は、「メタクリレート」又は「アクリレート」を意味する。
【0015】
この本発明の樹脂粒子は、架橋(メタ)アクリル系樹脂である第1ポリマーと3種のモノマーに由来する第2ポリマーとが共存する特殊な内部構造(微細な相分離構造=ミクロ相分離構造)が形成された分散層を中心部に有し、この分散層の外側に、前記第1ポリマー又は前記第2ポリマーからなる均質層を少なくとも1つ有している。このように本発明の樹脂粒子は、光屈折率の異なる材質(即ち、第1ポリマー及び第2ポリマー)が混在する状態にあるために、従来の樹脂粒子では得られなかった、優れた光拡散性能を発現するものと考えられる。また、本発明の樹脂粒子は、分散層の外側に、架橋(メタ)アクリル系樹脂である第1ポリマー又は3種のモノマーに由来する第2ポリマーからなる均質層を少なくとも1つ有しており、このような均質層により樹脂粒子の表面が構成されているために、製造時の脱水や乾燥において粒子間の融着がなく、軟質フィルムの光拡散剤(艶消し剤)として使用した場合において、混練時の分散が容易であり、柔軟性、強靱性、風合いを維持しながら、折り曲げや延伸時の白化や強度の低下がなく、透明感のある艶消し性を有するフィルムを得ることができる。フィルムの軟質の風合いは、樹脂粒子の中心部にミクロ相分離構造が形成されており、樹脂粒子の芯部が軟質であることによるものと考えられる。
【0016】
本発明の樹脂粒子の製造方法は、重合開始剤の存在下、(前記重合開始剤の10時間半減期温度T−10℃)以上の温度条件下で、種粒子としての架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子が分散した水性エマルジョン中に、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する多官能ビニルモノマー、次式:
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R1はHまたはCH3、mは0〜50、nは0〜50を意味する。但し、m+n>1とする。)で表される界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーおよび単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー(但し、前記式の界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーを除く)の3種のモノマーを添加し、前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に前記3種のモノマーを吸収させながら重合させて、樹脂粒子を得ることを特徴とする。
【0019】
この本発明の樹脂粒子の製造方法によれば、上記の通り、優れた光拡散性能を有する本発明の樹脂粒子を製造することができる。
【0020】
本発明の塗料は、本発明の樹脂粒子を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の塗料によれば、本発明の樹脂粒子を含むので、光拡散性能に優れた塗膜を得ることができる。
【0022】
本発明の外用剤は、本発明の樹脂粒子を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の外用剤によれば、本発明の樹脂粒子を含むので、当該樹脂粒子の光拡散効果により、シミ、そばかす等の肌の欠点を補正することができる。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、本発明の樹脂粒子を含むことを特徴とする。
【0025】
本発明の樹脂組成物によれば、本発明の樹脂粒子を含むので、光拡散性能を有する成形体(即ち、光拡散部材)を得ることができる。
【0026】
本発明の光拡散部材は、本発明の樹脂粒子を含むことを特徴とする。
【0027】
この本発明の光拡散部材は、本発明の樹脂粒子を含むので、光拡散性能に優れる。
【0028】
本発明の光拡散フィルムは、本発明の樹脂粒子10〜500重量部とバインダー樹脂100重量部とを含む表面層用樹脂組成物から形成された表面層を備えることを特徴とする。
【0029】
この本発明の光拡散フィルムは、本発明の樹脂粒子を含むので、光拡散性能に優れる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、光拡散性能に優れた樹脂粒子及びその製造方法を提供することができる。さらに、光拡散性能に優れた樹脂粒子を含む、塗料、外用剤、樹脂組成物、光拡散部材、及び光拡散フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の樹脂粒子の内部構造の一例を示す概略図である。
【図2】製造例1の樹脂粒子の(a)走査型電子顕微鏡(SEM)写真および(b)透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図3】比較製造例1の樹脂粒子の(a)走査型電子顕微鏡(SEM)写真および(b)透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図4】比較製造例3の樹脂粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔本発明の樹脂粒子〕
本発明の樹脂粒子は、多相構造を有する樹脂粒子であって、架橋(メタ)アクリル系樹脂である第1ポリマーと、多官能ビニルモノマー、特定の界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーおよび単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー(但し、前記界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーを除く)の3種のモノマーに由来する第2ポリマーとを含んでいる。なお、上記架橋(メタ)アクリル系樹脂及び上記3種のモノマーについては、後述の本発明の樹脂粒子の製造方法の項で詳述する。
【0033】
この本発明の樹脂粒子は、前記架橋(メタ)アクリル系樹脂である第1ポリマーと、前記3種のモノマーに由来する第2ポリマーとが相分離し、前記第1ポリマーの相が長径1〜200nmの粒子状に分散した状態で存在するミクロ相分離構造が形成された分散層(内層)を中心部に有し、前記分散層の外側に、前記第1ポリマー又は前記第2ポリマーからなる均質層(表層)を少なくとも1つ有する。
【0034】
本明細書において、「ミクロ相分離構造」とは、2種類以上のポリマーを含む混合体において2種以上のポリマーが相分離し、これらポリマーのうちの少なくとも1種のポリマーの相が長径200nm以下の粒子状に分散(微細分散)した状態で存在する構造をいう。すなわち、「ミクロ相分離構造」とは、相の長径が200nmを超える大きな分散相及び/又は複数の相が凝集した凝集相を含む状態(粗分散)や相分離が見られない均質構造ではない。
【0035】
本発明の樹脂粒子は、例えば、図1に示す内部構造を有していてよい。この図1に示す内部構造を有する樹脂粒子は、内層としての分散層1と、表層としての2つの均質層2,3とを有している。
【0036】
分散層1は、樹脂粒子の中心部に存在し、前記架橋(メタ)アクリル系樹脂である第1ポリマーの相11と、前記3種のモノマーに由来する第2ポリマーの相12とを含んでいる。この分散層1において、第1ポリマー11の相は粒子状に分散した状態で存在する。この分散層1における第1ポリマーの相11の長径T3は1nm〜200nmの範囲内であり、分散層1は、ミクロ相分離構造を有している。
【0037】
また、図1に示す樹脂粒子は、分散層1の外側に、分散層1の側から順に、前記3種のモノマー由来の第2ポリマーからなる均質層2と、前記架橋(メタ)アクリル系樹脂である第1ポリマーからなる均質層3とを有しており、これら2つの均質層2,3により、表層が構成されている。ここで、均質層2の厚みT2は、0.25〜0.40μmであり、均質層3の厚みT1は0.03〜0.05μmである。なお、本明細書中において、「均質層」とは、相分離が見られない均質構造の層を意味する。
【0038】
さらに、図1に示す樹脂粒子は、表面に凸部を有している。このような表面に凸部を有する樹脂粒子において、凸部の厚みT4の最大値は、樹脂粒子の長径Rの1/100〜1/10倍であることが好ましい。このような表面の凸部により、樹脂粒子の光拡散性能がさらに向上する。
【0039】
上記したような樹脂粒子の内部構造は、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型式:H−7600のような透過型電子顕微鏡(TEM)による粒子断面の観察により確認できる。観察の前処理法としては、例えば、樹脂粒子をエポキシ樹脂に包埋後、薄膜切片に切り出し、四酸化ルテニウム(RuO4)による染色を施す方法が挙げられる。
【0040】
また、分散層1における架橋(メタ)アクリル系樹脂である第1ポリマーの相11の長径T3が1〜200nmの範囲内であるか否かは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により樹脂粒子の中心を含む粒子断面写真を撮影し、前記分散層1内に存在する最も大きい前記第1ポリマーの相11の長径T3を計測することにより判別することができる。
【0041】
また、均質層2,3(表層)の厚みT1,T2は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により樹脂粒子の中心を含む粒子断面写真を撮影し、樹脂粒子外周の任意の8か所で測定した厚みの平均値として求めることができる。
【0042】
本発明の樹脂粒子は、2〜100μmの範囲の体積平均粒子径を有するのが好ましい。より好ましい体積平均粒子径は、4〜90μmの範囲である。樹脂粒子の体積平均粒子径が2μm未満では、光透過性が低下することがある。一方、100μmを超えると、光拡散性能が不十分となることがある。
【0043】
〔本発明の樹脂粒子の製造方法〕
本発明の樹脂粒子の製造方法は、重合開始剤の存在下、(前記重合開始剤の10時間半減期温度T−10℃)以上の温度条件下で、種粒子としての架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子が分散した水性エマルジョン中に、多官能ビニルモノマー、特定の界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーおよび単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー(但し、前記界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーを除く)の3種のモノマーを添加して、前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に前記3種のモノマーを吸収させながら重合させて、樹脂粒子を得ることを特徴とする。
【0044】
すなわち、本発明の樹脂粒子は、重合開始剤の存在下で、種粒子(コア粒子)として特定の架橋ポリマー粒子(架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子)を含む水性エマルジョン(エマルジョン)に、特定の前記3種のモノマーを添加し、前記種粒子に前記3種のモノマーを吸収させながら、重合させることにより製造することができる。
【0045】
以下に、本発明の樹脂粒子の製造方法について、種粒子としての架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子の製造工程(第一工程)、前記3種のモノマーの混合物が分散した水性エマルジョンの調製工程(第二工程)、並びに、前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に前記3種のモノマーを吸収させながら重合させる重合工程(第三工程)に分けてより具体的に説明するが、これにより本発明が限定されるものではない。
【0046】
なお、本明細書中において、「水性エマルジョン」とは、水などの水性媒体中に種粒子またはモノマー成分などが懸濁されたものを意味し、その濃度は、重合反応が阻害されない程度であればよく、例えば、種粒子またはモノマー成分などが水性媒体中に0.5〜500g/l程度である。
【0047】
(1)第一工程
本第一工程で製造する種粒子は、架橋(メタ)アクリル系樹脂からなる粒子(架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子)であり、コア粒子ともいう。
【0048】
種粒子は、1.5〜90μmの体積平均粒子径を有するのが好ましい。種粒子の体積平均粒子径が1.5μm未満の場合には、後述する第三工程で種粒子に3種のモノマーを吸収させながら重合させる時に種粒子が凝集してしまうおそれがあり、得られる樹脂粒子の内部に、ミクロ相分離構造が形成されない可能性がある。一方、90μmを超えると、種粒子に前記3種のモノマーが十分に吸収されないことがある。より好ましい体積平均粒子径は、3〜80μmである。粒子の体積平均粒子径の測定方法については、実施例で詳述する。
【0049】
前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子としては、特に限定されないが、本発明においては、種粒子の耐溶剤性、分散性、凝集性の点で、後述する第二工程で用いる単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマーが多官能ビニルモノマーで架橋された構造を有する樹脂粒子が好ましい。
【0050】
前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子を形成する単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー(但し、後述する式の界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーを除く)としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらのうち、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸ターシャリーブチルが好ましい。これらは、1種を単独で使用してもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子を形成する多官能ビニルモノマーとしては、重合性の炭素−炭素二重結合を2個以上有するものを使用することができ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンおよびそれらの誘導体などの芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルメタクリレートなどのジエチレン性カルボン酸エステル、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルファイトなどのジビニル化合物ならびにビニル基を3個以上有する化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0052】
前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子が、単官能(メタ)アクリレートモノマーが多官能ビニルモノマーで架橋された構造を有する樹脂粒子である場合において、前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子における単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する構造単位と多官能ビニルモノマーに由来する構造単位との重量比は、1:0.01〜0.5が好ましく、1:0.02〜0.4がより好ましい。単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する構造単位に対する多官能ビニルモノマーに由来する構造単位の重量比率が0.01未満の場合には、前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子同士が合着してしまう恐れがある。一方、単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する構造単位に対する多官能ビニルモノマーに由来する構造単位の重量比率が0.5を超える場合には、第三工程にて特定の3種のモノマーが前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に十分に吸収されないおそれがあり、前記第三工程にて本発明の特殊な構造(具体的には、ミクロ相分離構造が形成された分散層を有する構造)の樹脂粒子が得られないおそれがある。
【0053】
前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子は、公知の方法により製造することができるが、本発明の樹脂粒子の製造においては、粒子径の調整の安易さなどの点で、懸濁重合法により架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子を製造することが特に好ましい。具体的には、水に懸濁安定剤を加えた分散相に、界面活性剤および重合禁止剤をさらに加えた後、上記の架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子を形成するモノマーおよび重合開始剤を加えて高速攪拌し、水性エマルジョンの状態で上記のモノマーを重合させることにより、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子を製造することが好ましい。
【0054】
重合温度および時間は、用いる材料や重合条件などにより適宜設定すればよく、例えば、50〜100℃程度、1〜5時間程度である。
【0055】
本第一工程で使用する懸濁安定剤(分散安定剤)としては、一般にポリマーの懸濁重合に用いられる分散安定剤、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子;第三リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカなどの難水溶性無機塩が挙げられる。その使用量は、用いる材料や重合条件などにより適宜設定すればよく、例えば、上記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子を形成するモノマー100重量部に対して10〜60重量部程度である。
【0056】
本第一工程で使用する界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ソーダなどが挙げられる。懸濁安定剤として無機系分散剤を用いる場合には、分散安定性および粒子径調整の点で、懸濁安定剤(無機系分散剤)と界面活性剤とを併用することが好ましい。界面活性剤の使用量は、用いる材料や重合条件などにより適宜設定すればよく、例えば、上記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子を形成するモノマー100重量部に対して0.1〜20.0重量部程度である。
【0057】
本第一工程で使用する重合禁止剤としては、例えば、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性のものが挙げられる。なお、これら重合禁止剤は、1種を単独で使用してもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0058】
本第一工程で使用する重合開始剤としては、例えば、アクリル系樹脂モノマーの重合に汎用されている従来周知の重合開始剤を使用できる。例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、これらの重合開始剤は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、用いる材料や重合条件などにより適宜設定すればよく、例えば、上記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子を形成するモノマー100重量部に対して0.01〜5重量部程度である。
【0059】
本第一工程での架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子の製造において、前記懸濁重合は、メルカプタン系連鎖移動剤の存在下で行うことが好ましい。メルカプタン系連鎖移動剤の存在下で懸濁重合を行うことにより、後述する第三工程で本発明の特殊な構造(具体的には、ミクロ相分離構造が形成された分散層を有する構造)を有する樹脂粒子を効率よく得ることができる。
【0060】
メルカプタン系連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、2−ヒドロキシエチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ステアリルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、α−メチルスチレンダイマー(CH2=CPhCH2C(CH32Ph[ただしPhはフェニル基である])のような芳香族系化合物等が挙げられる。なお、これらメルカプタン系連鎖移動剤は、1種を単独で使用してもよいし、または2種以上を併用してもよい。メルカプタン系連鎖移動剤の使用量は、上記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子を形成するモノマー(即ち、単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマーおよび多官能ビニルモノマー)100重量部に対して0.05〜15重量部、好ましくは0.1〜10重量部であることが好ましい。メルカプタン系連鎖移動剤の使用量が、上記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子を形成するモノマー100重量部に対して0.05重量部未満である場合には、重合によって得られる架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子の分子鎖が長くなりすぎて、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に特定の3種のモノマーが吸収され難くなるおそれがあり、これにより、前記第三工程にて本発明の特殊な構造(具体的には、ミクロ相分離構造が形成された分散層を有する構造)の樹脂粒子が得られ難くなるおそれがある。一方、メルカプタン系連鎖移動剤の使用量が、上記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子を形成するモノマー100重量部に対して15重量部を超える場合には、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子の生成(モノマーの重合完了)に時間を要し、生産性が低下するおそれがある。
【0061】
(2)第二工程
本第二工程で3種のモノマーの水性エマルジョンを調製する。具体的には、水に界面活性剤、3種のモノマー、及び重合開始剤を加え、高速攪拌し、水性エマルジョンを得る。
【0062】
本第二工程で使用する3種のモノマーとは、単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー、多官能ビニルモノマー、および界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーである。ここで、重合開始剤は、上記3種のモノマーに溶解させてから、水に懸濁させることが好ましい。
【0063】
本第二工程で使用する単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー(但し、後述する式の界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーを除く)としては、上記第一工程の説明において、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子を形成するモノマーとして例示したアルキル(メタ)アクリレートモノマー、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0064】
多官能ビニルモノマーの「多官能」とは、重合性の炭素−炭素二重結合を2個以上有する、すなわち一分子中に2つ以上のビニル基を含有することを意味する。
【0065】
本第二工程で使用する多官能ビニルモノマーとしては、上記第一工程の説明において、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子を形成するモノマーとして例示した多官能ビニルモノマー、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンおよびそれらの誘導体などの芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのジエチレン性カルボン酸エステル、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルファイトなどのジビニル化合物ならびにビニル基を3個以上有する化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0066】
本第二工程で使用する界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーは、次式:
【0067】
【化3】

【0068】
(式中、R1はHまたはCH3、mは0〜50、nは0〜50を意味する。ただし、m+n>1とする。)で表される。「界面活性能を有する」とは、上記式の(メタ)アクリレートモノマーが界面活性剤の機能を有することを意味する。
【0069】
上記式で表される界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、市販品を利用できる。上記式で表される界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーの市販品としては、例えば、日油株式会社製の「ブレンマー(登録商標)」シリーズが挙げられる。さらに、前記「ブレンマー(登録商標)」シリーズの中で、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレートの1種である「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」(上記式で表される複数種類の化合物からなる混合物であって、RがCH3であり、mが平均して約3.5であり、nが平均して約2.5であるもの)、及び、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレートの1種である「ブレンマー(登録商標)70PEP−350B」(上記式で表される複数種類の化合物からなる混合物であって、RがCH3であり、mが平均して約5であり、nが平均して約2であるもの)等が本発明に好適である。これらは、1種を単独で使用してもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0070】
本第二工程で使用する単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー[A]と多官能ビニルモノマー[B]と界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマー[C]との重量比A:B:Cは、1:0.03〜1.5:0.001〜0.5であるのが好ましい。
【0071】
多官能ビニルモノマー[B]の使用量が、単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー[A]の使用量1重量部に対して、0.03重量部未満であると、得られる樹脂粒子を溶剤と混合して塗料を製造した場合に、樹脂粒子が溶剤に溶解してしまい、当該塗料において樹脂粒子が塗料添加物(塗料用艶消し剤(塗料用光拡散剤))としての役割を果たさないことがある。一方、多官能ビニルモノマー[B]の使用量が、単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー[A]の使用量1重量部に対して、1.5重量部を超えると、得られた樹脂粒子の表面に凸部が存在しない場合や、得られた樹脂粒子の硬度が高くなり、当該樹脂粒子を塗物に含有させた場合にその他の部材に傷をつけてしまうことがある。より好ましい多官能ビニルモノマー[B]の使用量の範囲は、単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー[A]の使用量1重量部に対して、0.1〜1.2重量部である。
【0072】
また、界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマー[C]の使用量が、単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー[A]の使用量1重量部に対して、0.001重量部未満では、得られた樹脂粒子の内部が微細な相分離構造(ミクロ相分離構造)とならないことや、また、好ましい樹脂粒子の表面形状である凸部を有する形状が得られないことがある。一方、界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマー[C]の使用量が、単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー[A]の使用量1重量部に対して、0.3重量部を超えると、重合安定性が悪くなり、凝集体が多く発生することがある。より好ましい界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマー[C]の使用量の範囲は、単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー[A]の使用量1重量部に対して、0.01〜0.2である。
【0073】
本第二工程で使用する界面活性剤としては、第一工程で例示のものが挙げられる。また、界面活性剤の使用量は、用いる材料や重合条件などにより適宜設定すればよく、例えば、3種のモノマー(即ち、単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー、多官能ビニルモノマー、および界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマー)100重量部に対して0.1〜20重量部程度および0.01〜5.0重量部程度である。
【0074】
本第二工程で使用する重合開始剤としては、第一工程で例示のものが挙げられる。また重合開始剤の使用量は、用いる材料や重合条件などにより適宜設定すればよく、例えば、3種のモノマー(即ち、単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー、多官能ビニルモノマー、および界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマー)100重量部に対して0.1〜20重量部程度および0.01〜5.0重量部程度である。
【0075】
(3)第三工程
本第三工程では、第一工程で得られた架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に、特定割合の前記3種のモノマーを吸収させながら重合させて、上記した本発明の樹脂粒子を得る。具体的には、第一工程で得られた架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子の水性エマルジョンに、重合開始剤を含有する第二工程で得られた特定割合の3種のモノマーの水性エマルジョンを滴下して、前記3種のモノマーを架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に吸収させながら、前記3種のモノマーを重合させる。つまり、重合開始剤の存在下で、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子の水性エマルジョン中に、前記3種のモノマーを添加し、続いて、前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に前記3種のモノマーを吸収させながら重合させる。
【0076】
重合後、得られた樹脂粒子を、公知の方法により、後処理を経て分離回収する。
【0077】
前記3種のモノマーの水性エマルジョンを滴下(添加)する際の温度は、(前記重合開始剤(前記3種のモノマーの水性エマルジョン中に含まれる重合開始剤)の10時間半減期温度T−10℃)以上であり、(前記重合開始剤の10時間半減期温度T−10℃)〜(前記重合開始剤の10時間半減期温度T℃)であることが好ましく、(前記重合開始剤の10時間半減期温度T−10℃)〜(10時間半減期温度T−4℃)であることがより好ましい。
【0078】
また、前記3種のモノマーの水性エマルジョンの滴下(添加)後、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に前記3種のモノマーを吸収させながら重合させる際の温度は、(前記重合開始剤(前記3種のモノマーの水性エマルジョン中に含まれる重合開始剤)の10時間半減期温度T−10℃)以上であり、(前記重合開始剤の10時間半減期温度T−10℃)〜(前記重合開始剤の10時間半減期温度T℃)であることが好ましく、(前記重合開始剤の10時間半減期温度T−10℃)〜(10時間半減期温度T−3℃)であることがより好ましい。
【0079】
例えば、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いる場合、その10時間半減期温度は64℃であり、54℃以上(より好ましくは、55〜60℃)の架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子(種粒子)の水性エマルジョンに3種のモノマーのエマルジョンを滴下し、続いて、54℃以上(より好ましくは、55〜61℃)の温度条件下で、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に前記3種のモノマーを吸収させながら重合させる。
【0080】
重合時間は、用いる材料や重合条件などにより適宜設定すればよく、例えば、2〜5時間程度である。
【0081】
本第三工程では、前記3種のモノマーを、第一工程で得られた架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子100gに対して3〜50g/分の範囲の添加速度で架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子の水性エマルジョン中に添加することが好ましい。前記3種のモノマーの添加速度が、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子100gに対して3g/分未満では、添加速度が遅すぎて、所定量の前記3種のモノマーが架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に吸収される前に、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子の状態に変化を生じ、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子が所定量の前記3種のモノマーを吸収できなくなるおそれがあり、これにより、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に吸収されなかった前記3種のモノマー単独での重合を生じて、得られる樹脂粒子の内部にミクロ相分離構造が形成されなくなることがある。一方、前記3種のモノマーの添加速度が、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子100gに対して50g/分を超えると、添加速度が速すぎて、添加した前記3種のモノマーが架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に吸収される前に、前記3種モノマーが単独で重合してしまい、得られる樹脂粒子の内部にミクロ相分離構造が形成されないことがある。
【0082】
本第三工程で使用する架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子と前記3種のモノマーとの重量比は、1:0.4〜1.0であるのが好ましい。前記3種のモノマーの使用量が、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子1重量部に対して0.4重量部未満では、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子の量が多すぎて、本発明の特殊な粒子構造(具体的には、ミクロ相分離構造が形成された分散層を有する構造)を有する樹脂粒子が得られないおそれがある。一方、前記3種のモノマーの使用量が、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子1重量部に対して1.0重量部を超えると、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に対する前記3種のモノマーの量が多すぎるために、全ての量の前記モノマーが前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に吸収されないおそれがあり、この吸収しきれなかったモノマーが単独で重合してしまうことがある。架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子と前記3種のモノマーとの重量比は、より好ましくは、1:0.5〜1.0である。
【0083】
架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子と前記3種のモノマーとの相溶性、すなわち種粒子である架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子への前記3種のモノマーの吸収を調整することにより、相分離反応および体積収縮が起こり、樹脂粒子内部に微細な相分離構造(ミクロ相分離構造)を有する分散層(内層)が形成され、この分散層の外側に、前記3種のモノマー由来のポリマー又は架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子からなる少なくとも1つの均質層で構成された表層が形成される。本発明の製造方法で得られる樹脂粒子の表層厚み(分散層の外側の全ての層の厚みの合計)は、当該樹脂粒子の粒子径(体積平均粒子径)のおよそ1/200〜1/10である。
【0084】
〔塗料〕
本発明の塗料は、本発明の樹脂粒子を含んでいる。
【0085】
本発明の塗料は、樹脂バインダーを含むことが好ましい。上記樹脂バインダーとしては、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂(アクリル系樹脂)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、他のビニル系樹脂(塩化ビニル系樹脂等)等のような、皮膜を形成し得る種々の重合体、それらの変性物、それら重合体の前駆体(単量体、オリゴマー、又はそれらの混合物)等が使用できる。これら樹脂バインダーは、溶剤に溶解するものであっても、溶剤中にエマルジョンとして存在するものであっても良く、使用目的に応じて適宜選択される。
【0086】
本発明の塗料の形態としては、溶剤に固体状の樹脂バインダーを溶解させると共に溶剤中に樹脂粒子を分散させた液状塗料;溶剤中に固体状の樹脂バインダー及び樹脂粒子を分散させた液状塗料;固体状の樹脂バインダー及び樹脂粒子を含み、溶剤を含まない粉体塗料;液体状の樹脂バインダーを含み、溶剤を含まない液状塗料;液体状の樹脂バインダーを溶剤で希釈した液体塗料等が挙げられる。
【0087】
上記液体状の樹脂バインダーとしては、例えば、紫外線硬化・電子線硬化が可能な重合体の前駆体(モノマー、オリゴマー、又はそれらの混合物)を用いることができ、この場合には、塗料中に、光重合開始剤を含有させることが好ましい。塗料中に含有させる前記光重合開始剤としては、具体例には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等)、アシルホスフィンオキシド類、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
【0088】
本発明の塗料に必要に応じて用いられる上記溶剤は、樹脂粒子及び樹脂バインダーによって形成される皮膜の特性によって適宜選択することができるが、通常は、水、アルコール類(エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン[MEK]、メチルイソブチルケトン)、エーテル類(セロソルブ、ブチルセロソルブ)、テルぺン類(ターぺンチン、ジぺンテン)等である。
【0089】
本発明の塗料には、塗装性や塗膜の性能を高めるための補助剤として、有機系又は無機系の紫外線吸収剤、分散剤、界面活性剤、沈降防止剤、湿潤剤、たれ止め剤、消泡剤、酸化防止剤等を必要に応じて適量配合することができる。また、体質顔料、着色顔料、染料などを本発明の塗料に添加することもできる。
【0090】
前記有機系の紫外線吸収剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[2H−
ベンゾトリアゾール−2−イル]フェノール]](株式会社ADEKA製の「アデカスタブ(登録商標)LA−31」)、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−5−ジt−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤;p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤等を用いることができる。前記有機系の紫外線吸収剤を、塗料中に、樹脂バインダー100重量部に対し、好ましくは0.01〜2.0重量部、より好ましくは0.03〜2.0重量部、さらに好ましくは0.05〜1.0重量部の割合で含めると、塗料に十分な紫外線吸収性を付与することができる。
【0091】
前記無機系の紫外線吸収剤としては、酸化亜鉛微粒子、酸化チタン微粒子、酸化セリウム微粒子、酸化ジルコニウム微粒子等の無機微粒子(粒子径が0.003〜0.1μm、好ましくは0.003〜0.05μmである粒子)を用いることができる。前記無機系の紫外線吸収剤を、塗料中に0.001〜24重量%の割合で含めると、塗料に十分な紫外線吸収性を付与することができる。前記無機系の紫外線吸収剤は、前記樹脂粒子中に1〜80重量%の割合で内包させてもよい。これら紫外線吸収剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0092】
上記塗料は、均一化できるほどの流動性を持ち、固形分は樹脂バインダーが硬化して一体化することが必要であるので、上記塗料における塗膜を形成する成分(溶剤を除いた成分、すなわち、樹脂バインダーが固体状である場合には固形分)中における樹脂粒子の含有量は、95重量%以下であることが好ましい。上記塗料における塗膜を形成する成分中における樹脂粒子の含有量が95重量%を超えると、塗膜は著しく脆くなる。また、上記塗料における塗膜を形成する成分中における樹脂粒子の含有量は、0.5重量%以上であることが好ましい。これにより、樹脂粒子による艶消し効果を十分に得ることができる。
【0093】
〔外用剤〕
本発明の樹脂粒子は、外用剤の原料として使用できる。本発明の外用剤は、本発明の樹脂粒子を含んでいる。外用剤における樹脂粒子の含有量は、外用剤の種類に応じて適宜設定できるが、1〜80重量%の範囲内が好ましく、5〜70重量%の範囲内であることがより好ましい。外用剤全量に対する樹脂粒子の含有量が1重量%未満の場合、樹脂粒子の含有による明確な効果が認められないことがある。また、樹脂粒子の含有量が80重量%を上回ると、含有量の増加に見合った顕著な効果が認められないことがあるため、生産コスト上好ましくない。
【0094】
外用剤としては、例えば化粧料(化粧品)、外用医薬品等が挙げられる。
【0095】
前記化粧料としては、上記樹脂粒子の含有により効果を奏するものであれば特に限定されず、例えば、プレシェーブローション、ボディローション、化粧水、クリーム、乳液、ボディシャンプー、制汗剤等の液系の化粧料;石鹸、スクラブ洗顔料等の洗浄用化粧品;パック類;ひげ剃り用クリーム;おしろい類;ファンデーション;口紅;リップクリーム;頬紅;眉目化粧品;マニキュア化粧品;洗髪用化粧品;染毛料;整髪料;芳香性化粧品;歯磨き;浴用剤;日焼け止め製品;サンタン製品;ボディーパウダー、ベビーパウダー等のボディー用の化粧料等が挙げられる。
【0096】
前記外用医薬品としては、皮膚に適用するものであれば特に制限されず、例えば、医薬用クリーム、軟膏、医薬用乳剤、医薬用ローション等が挙げられる。
【0097】
また、これらの外用剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に用いられている主剤または添加物を目的に応じて配合できる。そのような主剤または添加物としては、例えば、水、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール)、油脂及びロウ類、炭化水素(ワセリン、流動パラフィン等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等の炭素数12以上の脂肪酸)、高級アルコール(セチルアルコール等の炭素数6以上のアルコール)、ステロール、脂肪酸エステル(ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸エステル等)、金属石鹸、保湿剤、界面活性剤(ポリエチレングリコール等)、高分子化合物、粘土鉱物類(体質顔料および吸着剤などの数種の機能を兼ね備えた成分;タルク、マイカ等)、色材原料(赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄等)、香料、防腐・殺菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、アクリル樹脂粒子(ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子)、シリコーン系粒子、ポリスチレン粒子等の樹脂粒子、有機無機複合粒子、pH調整剤(トリエタノールアミン等)、特殊配合添加物、医薬品活性成分等が挙げられる。
【0098】
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、本発明の樹脂粒子を含んでいる。
【0099】
本発明の樹脂組成物は、基材樹脂をさらに含むことが好ましい。基材樹脂をさらに含む本発明の樹脂組成物は、光拡散性能を有するので、光拡散板等の光拡散部材を成形するための光拡散性樹脂組成物として用いることができる。
【0100】
前記基材樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂;テレフタル酸とエチレングリコールとの縮合体、アジピン酸とエチレングリコールとの縮合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、カルボキシル変性ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン系樹脂;ウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;シリコーン系樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。これら基材樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
前記ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンまたは炭酸ジエステルとを溶融法または溶液法で反応させて得られる芳香族ポリカーボネート系樹脂を使用することができる。
【0102】
前記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラブロモフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ビドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4’−ジビドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;4,4’−ジヒロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類等が挙げられる。
【0103】
これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、芳香族ジヒドロキシ化合物は、所望の物性に影響を与えない限り、任意の置換基等を含んでいてもよく、架橋剤等により架橋されていてもよい。芳香族ジヒドロキシ化合物としては、耐衝撃性に優れた樹脂組成物を得ることができるため、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]が好ましい。本発明の樹脂組成物においては、2種以上のポリカーボネート系樹脂を使用してもよい。
【0104】
樹脂粒子は、一般的に、樹脂組成物に対して0.1〜30重量%添加するのが好ましい。樹脂粒子の添加量が0.1重量%未満では、樹脂粒子による所望の効果(例えば光拡散効果)を得ることが難しくなり、また、樹脂粒子の添加量が30重量%を超えると、樹脂粒子が樹脂組成物中で均一に分散せず、この場合も樹脂粒子による所望の効果(例えば光拡散効果)を得ることが難しくなる。
【0105】
本発明の樹脂組成物は、蛍光増白剤、熱安定剤、有機系又は無機系の紫外線吸収剤等の各種成分を含むこともできる。これらの各種成分は、樹脂組成物に、所望の蛍光増白性、熱安定性、紫外線吸収性等の物性を与えることができる。上記紫外線吸収剤として使用可能な化合物の例及び上記紫外線吸収剤の配合量の好ましい範囲は、塗料の項で説明した塗料に必要に応じて使用される紫外線吸収剤の場合と同様である。
【0106】
前記蛍光増白剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、オキサゾール系蛍光増白剤(例えば、日本化薬株式会社製の「カヤライト(登録商標)OS」)、イミダゾール系蛍光増白剤、ローダミン系蛍光増白剤等を用いることができる。このような蛍光増白剤を、樹脂組成物中に、基材樹脂100重量部に対し、好ましくは0.0005〜0.1重量部、より好ましくは0.001〜0.1重量部、さらに好ましくは0.001〜0.05重量部の割合で含めると、樹脂組成物に十分な蛍光増白性を付与することができる。
【0107】
前記熱安定剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸エステル等の有機リン系熱安定剤;ヒンダードフェノール系熱安定剤;ラクトン系熱安定剤;熱酸化を抑制する機能を有するフォスファイト系酸化防止剤(例えば、株式会社ADEKA製の「アデカスタブ(登録商標)PEP−36」)等を用いることができる。このような熱安定剤を、樹脂組成物中に、基材樹脂100重量部に対し、好ましくは0.005〜0,5重量部、より好ましくは0.01〜0.5重量部、さらに好ましくは0.001〜0.3重量部の割合で含めると、樹脂組成物に十分な熱安定性を付与することができる。
【0108】
〔光拡散部材〕
本発明の光拡散部材は、本発明の樹脂粒子を含んでいる。本発明の光拡散部材は、例えば、本発明の樹脂組成物を成形することにより得られる。樹脂組成物の成形方法としては、生産性の点から、ペレット状の樹脂組成物を射出成形、射出圧縮成形、又は、押出成形等の成形法により成形して、成形体(光拡散部材)を得る方法を採用することができる。また、樹脂組成物を押出成形してシート状成形体を得て、このシート状成形体を真空成形、圧空成形等の成形法により成形して成形体(光拡散部材)を得る方法を採用することができる。
【0109】
本発明の光拡散部材は、照明用カバー等の電気・電子部品、自動車用内装パネル等の自動車部品、機械部品、雑貨、食品及び薬品等を包装するための包装用フィルム、食品及び薬品等の容器、繊維、板、屋根等の建築物などとしても使用することができる。
【0110】
また、本発明の光拡散部材には、必要に応じて、耐候性や加工性能を高めるための、補助剤として、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、高分子改質剤等を必要に応じて適量配合することができる。また、体質顔料や着色顔料、染料等を光拡散部材に添加することもできる。
【0111】
〔光拡散フィルム〕
本発明の樹脂粒子は、光拡散剤として、光拡散フィルムに含有させることが可能である。本発明の光拡散フィルムは、本発明の樹脂粒子10〜500重量部とバインダー樹脂100重量部とを含む表面層用樹脂組成物から形成された表面層を備えることを特徴とする。
【0112】
前記表面層用樹脂組成物に含有させるバインダー樹脂は、表面層用樹脂組成物を調製し得る樹脂であれば特に限定されず、具体例としては、上記塗料の説明において例示したバインダー樹脂を挙げることができる。例えば、後述する実施例では、アクリルバインダー(アクリル樹脂)を用いている。
【0113】
そして、本発明の光拡散フィルムは、例えば、本発明の樹脂粒子、バインダー樹脂、溶剤などを公知の方法により混合して分散液を調製し、これを公知の方法により基材となるフィルム上に塗布・乾燥することにより製造することができる。なお、本発明の光拡散フィルムの製造に使用する溶剤は、特に限定されず、具体例としては、上記塗料の説明において例示した溶剤を挙げることができる。
【実施例】
【0114】
以下、製造例、比較製造例、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの製造例および実施例により限定されるものではない。
【0115】
まず、樹脂粒子の体積平均粒子径および変動係数ならびに光拡散フィルムのヘイズの測定方法について説明する。
【0116】
〔樹脂粒子の体積平均粒子径および粒子径の変動係数の測定方法〕
樹脂粒子の体積平均粒子径(体積基準の粒度分布における算術平均径)及び粒子径の変動係数(CV値)は、コールターマルチサイザーIII(ベックマンコールター社製測定装置)を用いて、測定する。なお、本測定に際しては、Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULT ERMULTISIZER(1987)に従って、測定する粒子の粒子径に適合したサイズのアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定する。
【0117】
具体的には、樹脂粒子0.1gを0.1%ノニオン系界面活性剤10ml中にタッチミキサーおよび超音波を用いて予備分散させ、分散液を得る。次いで、コールターマルチサイザーIII本体に備え付けのISOTON(登録商標)II(ベックマンコールター社製:測定用電解液)を満たしたビーカー中に、前記分散液を緩く撹拌しながらスポイドで滴下して、コールターマルチサイザーIII本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせる。次にコールターマルチサイザーIII本体に、アパチャーサイズ(径)、Current(アパチャー電流)、Gain(ゲイン)、Polarity(内側電極の極性)をCoulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULT ERMULTISIZER(1987)に従って入力し、アパチャーサイズに合わせた所定の条件で、体積基準の粒度分布を測定する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く撹拌しておき、粒子10万個の粒度分布を測定した時点で測定を終了する。測定した10万個の粒子の体積加重の平均径(体積%モードの算術平均径:体積メジアン径)を樹脂粒子の体積平均粒子径(X)として算出する。
【0118】
なお、本測定で使用するアパチャーのサイズは、体積平均粒子径が1μm未満の樹脂粒子に対しては20μmであり、1〜10μm未満の樹脂粒子に対しては50μmであり、体積平均粒子径が10〜30μm未満の樹脂粒子に対しては細孔径100μmであり、体積平均粒子径が30〜90μm未満を超える樹脂粒子に対しては細孔径280μmであり、体積平均粒子径が90μmを超える樹脂粒子に対しては細孔径400μmである。
【0119】
また、樹脂粒子の粒子径の変動係数(CV値)を、樹脂粒子の体積基準の粒度分布の標準偏差(σ)および上記樹脂粒子の体積平均粒子径(X)を用いて、以下の数式により算出する。
【0120】
CV値(%)=(σ/X)×100
〔ヘイズの測定方法〕
光拡散フィルムのヘイズは、JIS K7136に従って測定し、具体的には、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、型式:NDH−2000)を用いて測定する。
【0121】
〔製造例1:樹脂粒子の製造〕
[第一工程]
内容積5Lのオートクレーブに、水2400gおよび懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウム164gを仕込み、分散相とした。この分散相に、さらに界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.84gおよび重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.24gを加えた。
【0122】
次いで、前記分散相に、メタクリル酸イソブチル732g、アリルメタクリレート12g、エチレングリコールジメタクリレート12g、重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド12gおよびメルカプタン系連鎖移動剤としてのオクチルメルカプタン15gを混合した。
【0123】
得られた混合物を、高速攪拌機(プライミクス株式会社(旧特殊機化工業株式会社)製、型式:TKホモミキサー)を用いて、回転数7500rpmで10分間攪拌してエマルジョンを得た。
【0124】
得られたエマルジョンを70℃で3時間反応させて、体積平均粒子径7.4μmの第一反応ポリマー(種粒子となる架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子)のエマルジョンを得た。以下、「水性エマルジョン」を単に「エマルジョン」とも記載する。
【0125】
[第二工程]
内容積2Lのステンレス製ビーカーに、水432g、界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.05gを加え、さらに単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー[A]としてのメタクリル酸メチル398.4g、多官能ビニルモノマー[B]としてのエチレングリコールジメタクリレート14g(メタクリル酸メチル1重量部に対して0.04重量部)、界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマー[C]としてのポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(日油株式会社製、製品名:ブレンマー(登録商標)50PEP−300、上記式で表される複数種類の化合物からなる混合物であって、RがCH3であり、mが平均して約3.5であり、nが平均して約2.5であるもの)21.7g(メタクリル酸メチル1重量部に対して0.05重量部)および重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(10時間半減期温度64℃)4.8gを加えて、これらを混合した。
【0126】
得られた混合物を、上記の高速攪拌機を用いて、回転数7500rpmで10分間攪拌してエマルジョンを得た。なお、本第二工程で使用したモノマー(即ち、メタクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリレート、及び、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート)の使用量の合計は、434.1gであり、この量は、上記第一工程で架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子(種粒子)の製造に使用したモノマー(即ち、メタクリル酸イソブチル、アリルメタクリレート、及びエチレングリコールジメタクリレート)の使用量の合計(756g)の0.57倍の重量に相当する。
【0127】
[第三工程]
上記のオートクレーブ中の、第一工程で得られた第一反応ポリマー(種粒子としての架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子)のエマルジョンを60℃に冷却し、この第一反応ポリマー(架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子)のエマルジョン中に、第二工程で得られたエマルジョンを10分間掛けて連続滴下した。滴下終了後、60℃で4時間かけて重合反応させた。その後、スルファミン酸0.3gおよび直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ6.3gを加え、100℃に昇温し、この温度で1時間保持して反応を継続させた。次いで、30℃に冷却し、塩酸を加えて、ピロリン酸マグネシウムを分解させた後、洗浄、脱水を行い、真空乾燥機にて60℃で乾燥させ、体積平均粒子径8.6μmの樹脂粒子を得た。
【0128】
また、得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像し、図2(a)のSEM画像を得た。更に、得られた樹脂粒子をエポキシ樹脂に包埋後、薄膜切片(厚み90nm)に切り出し、四酸化ルテニウムによる染色を施してから、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮像して、図2(b)のTEM画像を得た。図2(a)に示すSEM画像及び図2(b)に示すTEM画像より、本製造例1で得られた樹脂粒子は、上記した図1に示す分散層1と、均質層2,3とを備え、当該樹脂粒子の表面に凸部を有するものであることが確認された。
【0129】
具体的には、図2(b)に示すTEM画像より、製造例1で得られた樹脂粒子の中心部には、架橋(メタ)アクリル系樹脂である(第一工程で製造した架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に由来する)第1ポリマー(染色剤で染色されたことを示す図2(b)の黒色部分)と、3種のモノマー(単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー[A]、多官能ビニルモノマー[B]、および界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマー[C])に由来する第2ポリマー(染色剤で染色されていないことを示す図2(b)の灰色部分)とが相分離し、架橋(メタ)アクリル系樹脂である第1ポリマー(染色剤で染色されたことを示す図2(b)の黒色部分)の相が、粒子状に分散して存在するミクロ相分離構造が形成された分散層(図1の分散層1に対応する層)が備えられていることが認められた。本製造例1で得られた樹脂粒子の分散層における架橋(メタ)アクリル系樹脂である第1ポリマー(染色剤で染色されたことを示す図2(b)の黒色部分)の相の長径(図1のT3に相当する長さ)の最大値を、図2(b)のTEM画像に基づいて測定したところ、116nmであった。
【0130】
また、図2(b)に示すTEM画像より、上記ミクロ相分離構造が形成された分散層の外側には、前記3種のモノマーに由来する第2ポリマー(染色剤で染色されていないことを示す図2(b)の灰色部分)からなる均質層(図1の分散層2に対応する層)が形成されており、この3種のモノマーに由来する第2ポリマーからなる均質層の外側には、さらに、架橋(メタ)アクリル系樹脂である第1ポリマー(染色剤で染色されたことを示す図2(b)の黒色部分)からなる均質層(図1の分散層3に対応する層)が形成されていることが認められた。また、前記3種のモノマーに由来する第2ポリマーからなる均質層の厚み(図1のT2に相当する厚み)を、図2(b)のTEM画像に基づいて測定したところ、0.25μmであった。さらに、架橋(メタ)アクリル系樹脂である第1ポリマーからなる均質層の厚み(図1のT1に相当する厚み)を、図2(b)のTEM画像に基づいて測定したところ、0.05μmであった。このため、製造例1で得られた樹脂粒子の表層(分散層の外側の層)の厚み(即ち、図1のT1に相当する厚みとT2に相当する厚みの合計)は、0.3μmとなる。
【0131】
また、図2(a)に示すSEM画像及び図2(b)に示すTEM画像より、製造例1で得られた樹脂粒子の表面には、凸部を有することが認められた。そして、凸部の厚み(図1のT4に相当する厚み)の最大値は、図2(b)のTEM画像に基づいて測定したところ、0.5μmであった。
【0132】
〔製造例2:樹脂粒子の製造〕
[第一工程]
内容積5Lのオートクレーブに、水2400gおよび懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウム164gを仕込み、分散相とした。この分散相に、さらに界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.84gおよび重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.24gを加えた。
【0133】
次いで、前記分散相に、メタクリル酸イソブチル732g、アリルメタクリレート12g、エチレングリコールジメタクリレート12g、重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド12gおよびメルカプタン系連鎖移動剤としてのオクチルメルカプタン15gを混合した。
【0134】
得られた混合物を、上記の高速攪拌機を用いて、回転数7500rpmで10分間攪拌してエマルジョンを得た。
【0135】
得られたエマルジョンを70℃で3時間反応させて、体積平均粒子径7.4μmの第一反応ポリマー(種粒子となる架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子)のエマルジョンを得た。
【0136】
[第二工程]
内容積2Lのステンレス製ビーカーに、水432g、界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.05gを加え、さらに単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー[A]としてのメタクリル酸メチル194.4g、多官能ビニルモノマー[B]としてのエチレングリコールジメタクリレート217g(メタクリル酸メチル1重量部に対して1.12重量部)、界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマー[C]としてのポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(日油株式会社製、製品名:ブレンマー50(登録商標)PEP−300、上記式で表される複数種類の化合物からなる混合物であって、RがCH3であり、mが平均して約3.5であり、nが平均して約2.5であるもの)21.7g(メタクリル酸メチル1重量部に対して0.11重量部)および重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル4.8gを加えて、これらを混合した。
【0137】
得られた混合物を、上記の高速攪拌機を用いて、回転数7500rpmで10分間攪拌してエマルジョンを得た。なお、本第二工程で使用したモノマー(即ち、メタクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリレート、及び、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート)の使用量の合計は、433.1gであり、この量は、上記第一工程で架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子(種粒子)の製造に使用したモノマー(即ち、メタクリル酸イソブチル、アリルメタクリレート、及びエチレングリコールジメタクリレート)の使用量の合計(756g)の0.57倍の重量に相当する。
【0138】
[第三工程]
上記のオートクレーブ中の、第一工程で得られた第一反応ポリマー(種粒子としての架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子)のエマルジョンを60℃に冷却し、この第一反応ポリマー(架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子)のエマルジョン中に、第二工程で得られたエマルジョンを10分間掛けて連続滴下した。滴下終了後、60℃で4時間かけて重合反応させた。その後、スルファミン酸0.3gおよび直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ6.3gを加え、100℃に昇温し、この温度で1時間保持して反応を継続させた。次いで、30℃に冷却し、塩酸を加えて、ピロリン酸マグネシウムを分解させた後、洗浄、脱水を行い、真空乾燥機にて60℃で乾燥させ、体積平均粒子径8.6μmの樹脂粒子を得た。
【0139】
また、得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像した。また、得られた樹脂粒子をエポキシ樹脂に包埋後、薄膜切片に切り出し、四酸化ルテニウムによる染色を施してから、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮像した。これらSEM画像及びTEM画像より、本製造例2で得られた樹脂粒子は、上記製造例1と同様の内部構造を有することが確認された。また、製造例2で得られた樹脂粒子の分散層における架橋(メタ)アクリル系樹脂である(第一工程で製造した架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に由来する)第1ポリマーの相の長径(図1のT4に相当する長さ)の最大値は、TEM画像に基づいて測定したところ、100nmであった。また、3種のモノマー(単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー[A]、多官能ビニルモノマー[B]、および界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマー[C])に由来する第2ポリマーからなる均質層の厚み(図1のT2に相当する厚み)を、TEM画像に基づいて測定したところ、0.30μmであった。さらに、架橋(メタ)アクリル系樹脂である第1ポリマーからなる均質層の厚み(図1のT1に相当する厚み)を、TEM画像に基づいて測定したところ、0.10μmであった。このため、製造例2で得られた樹脂粒子の表層(分散層の外側の層)の厚み(即ち、図1のT1に相当する厚みとT2に相当する厚みの合計)は、0.4μmとなる。
【0140】
また、製造例2で得られた樹脂粒子は、製造例1で得られた樹脂粒子と同様に、表面に、凸部を有することが認められ、この凸部の厚み(図1のT4に相当する厚み)の最大値は、TEM画像に基づいて測定したところ、0.15μmであった。
【0141】
〔比較製造例1:樹脂粒子の製造〕
内容積5Lのオートクレーブに、水2400gおよび懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム164gを仕込み、分散相とした。この分散相に、さらに界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.84gおよび重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.24gを加えた。
【0142】
次いで、前記分散相に、メタクリル酸イソブチル732g、メタクリル酸メチル420g、アリルメタクリレート12g、エチレングリコールジメタクリレート15g、重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド12gおよびアゾビスイソブチロニトリル4.8gを混合した。
【0143】
得られた混合物を、上記の高速攪拌を用いて、回転数7100rpmで10分間攪拌してエマルジョンを得た。
【0144】
得られたエマルジョンを60℃で4時間保持し重合反応させた。その後、スルファミン酸0.3gおよび直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ6.3gを加え、100℃に昇温し、この温度で1時間保持して反応を継続させた。次いで、30℃に冷却し、塩酸を加えて、ピロリン酸マグネシウムを分解させた後、洗浄、脱水を行い、真空乾燥機にて60℃で乾燥させ、体積平均粒子径8.3μmの樹脂粒子を得た。
【0145】
得られた樹脂粒子について、上記製造例1で得られた樹脂粒子と同様にして、走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)による撮像を行い、図3(a)に示すSEM画像及び図3(b)に示すTEM画像を得た。
【0146】
〔比較製造例2:樹脂粒子の製造〕
[第一工程]
内容積5Lのオートクレーブに、水2400gおよび懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウム164gを仕込み、分散相とした。この分散相に、さらに界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.84gおよび重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.24gを加えた。
【0147】
次いで、前記分散相に、メタクリル酸イソブチル732g、アリルメタクリレート12g、エチレングリコールジメタクリレート12g、重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド12gおよび連鎖移動剤としてオクチルメルカプタン15gを混合した。
【0148】
得られた混合物を、上記の高速攪拌機を用いて、回転数7500rpmで10分間攪拌してエマルジョンを得た。
【0149】
得られたエマルジョンを70℃で3時間反応させて、体積平均粒子径7.4μmの第一反応ポリマー(種粒子)のエマルジョンを得た。
【0150】
[第二工程]
内容積2Lのステンレス製ビーカーに、水432g、界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.05gを加え、さらに単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー[A]としてのメタクリル酸メチル420g、多官能ビニルモノマー[B]としてのエチレングリコールジメタクリレート13g(メタクリル酸メチル1重量部に対して、0.03重量部)および重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル4.8gを混合した。
【0151】
得られた混合物を、上記の高速攪拌機を用いて、回転数7500rpmで10分間攪拌してエマルジョンを得た。なお、本第二工程で使用したモノマー(即ち、メタクリル酸メチル、及び、エチレングリコールジメタクリレート)の使用量の合計は、433gであり、この量は、上記第一工程で第一反応ポリマー(種粒子)の製造に使用したモノマー(即ち、メタクリル酸イソブチル、アリルメタクリレート、及びエチレングリコールジメタクリレート)の使用量の合計(756g)の0.57倍の重量に相当する。
【0152】
[第三工程]
上記のオートクレーブ中の、第一工程で得られた第一反応ポリマーのエマルジョンを60℃に冷却し、この第一反応ポリマーのエマルジョン中に、第二工程で得られたエマルジョンを10分間掛けて連続滴下した。滴下終了後、60℃で4時間かけて重合反応を行った。その後、スルファミン酸0.3gおよび直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ6.3gを加え、100℃に昇温し、この温度で1時間保持して反応を継続させた。次いで、30℃に冷却し、塩酸を加えて、ピロリン酸マグネシウムを分解させた後、洗浄、脱水を行い、真空乾燥機にて60℃で乾燥させ、体積平均粒子径8.6μmの樹脂粒子を得た。
【0153】
〔比較製造例3:樹脂粒子の製造〕
[第一工程]
内容積5Lのオートクレーブに、水2400gおよび懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウム164gを仕込み、分散相とした。この分散相に、さらに界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.84gおよび重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.24gを加えた。
【0154】
次いで、前記分散相に、メタクリル酸イソブチル732g、アリルメタクリレート12g、エチレングリコールジメタクリレート12gおよび重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド12gを混合した。
【0155】
得られた混合物を、上記の高速攪拌機を用いて、回転数7500rpmで10分間攪拌してエマルジョンを得た。
【0156】
得られたエマルジョンを70℃で3.5時間反応させて、体積平均粒子径7.7μmの第一反応ポリマー(種粒子)のエマルジョンを得た。
【0157】
[第二工程]
内容積2Lのステンレス製ビーカーに、水432g、界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.05gを加え、さらに単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー[A]としてのメタクリル酸メチル420g、多官能ビニルモノマー[B]としてのエチレングリコールジメタクリレート10g(メタクリル酸メチル1重量部に対して0.02重量部)および重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル4.8gを混合した。
【0158】
得られた混合物を、上記の高速攪拌機を用いて、回転数7500rpmで10分間攪拌してエマルジョンを得た。なお、本第二工程で使用したモノマー(即ち、メタクリル酸メチル、及び、エチレングリコールジメタクリレート)の使用量の合計は、430gであり、この量は、上記第一工程で第一反応ポリマー(種粒子)の製造に使用したモノマー(即ち、メタクリル酸イソブチル、アリルメタクリレート、及びエチレングリコールジメタクリレート)の使用量の合計(756g)の0.57倍の重量に相当する。
【0159】
[第三工程]
上記のオートクレーブ中の、第一工程で得られた第一反応ポリマーのエマルジョンを60℃に冷却し、この第一反応ポリマーのエマルジョン中に、第二工程で得られたエマルジョンを10分間掛けて連続滴下した。滴下終了後、60℃で4時間かけて重合反応を行った。その後、スルファミン酸0.3gおよび直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ6.3gを加え、100℃に昇温し、この温度で1時間保持して反応を継続させた。次いで、30℃に冷却し、塩酸を加えて、ピロリン酸マグネシウムを分解させた後、洗浄、脱水を行い、真空乾燥機にて60℃で乾燥させ、体積平均粒子径8.9μmの樹脂粒子を得た。
【0160】
また、得られた樹脂粒子について、上記製造例1で得られた樹脂粒子と同様にして、走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)による撮像を行い、図4(a)に示すSEM画像及び図4(b)に示すTEM画像を得た。
【0161】
〔実施例1:光拡散フィルムの製造〕
製造例1で得られた樹脂粒子100重量部とアクリルバインダー(三菱レイヨン株式会社製、製品名:ダイヤナール(登録商標)LR−102)140重量部とを混合した。得られた混合物に、重量比1:1のトルエンとメチルエチルケトンとの混合溶剤260重量部を添加・混合して分散液2.5gを得た。
【0162】
得られた分散液を、遠心攪拌機(株式会社シンキー製、型式:AR−100)を用いて3分間攪拌し、その後、3時間放置した。
【0163】
次いで、放置後の分散液に、硬化剤(旭化成ケミカルズ株式会社製、製品名:デュラネート(登録商標)TKA−100)30重量部を添加して、再び上記の遠心攪拌機を用いて3分間攪拌し、塗料としての分散液(表面層用樹脂組成物)を得た。
【0164】
次いで、攪拌後の分散液を、75μmのコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、70℃に保った乾燥機にて1時間乾燥して、光拡散層(表面層)を備えた光拡散フィルムを得た。
【0165】
得られた光拡散フィルムのヘイズを測定した。
【0166】
〔実施例2:光拡散フィルムの製造〕
製造例1で得られた樹脂粒子の代わりに製造例2で得られた樹脂粒子を用いること以外は実施例1と同様にして、光拡散層を備えた光拡散フィルムを得、そのヘイズを測定した。
【0167】
〔比較例1:光拡散フィルムの製造〕
製造例1で得られた樹脂粒子の代わりに比較製造例1で得られた樹脂粒子を用いること以外は実施例1と同様にして、光拡散層を備えた光拡散フィルムを得、そのヘイズを測定した。
【0168】
〔比較例2:光拡散フィルムの製造〕
製造例1で得られた樹脂粒子の代わりに比較製造例2で得られた樹脂粒子を用いること以外は実施例1と同様にして、光拡散層を備えた光拡散フィルムを得、そのヘイズを測定した。
【0169】
〔比較例3:光拡散フィルムの製造〕
製造例1で得られた樹脂粒子の代わりに比較製造例3で得られた樹脂粒子を用いること以外は実施例1と同様にして、光拡散層を備えた光拡散フィルムを得、そのヘイズを測定した。
【0170】
製造例1〜2および比較製造例1〜3ならびにそれらに対応する実施例1〜2および比較例1〜3において得られた結果を、それらに用いた材料や条件と共に表1および2に示す。
【0171】
また、製造例1および比較製造例1の樹脂粒子の(a)走査型電子顕微鏡(SEM)写真)ならびに(b)透過型電子顕微鏡(TEM)写真をそれぞれ図2〜3に示す。さらに、比較製造例3の樹脂粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図4に示す。
【0172】
【表1】

【0173】
【表2】

【0174】
表1の結果から、本発明の樹脂粒子およびそれを含む表面層を備えた光拡散フィルム(製造例1〜2および実施例1〜2)が光拡散性能に優れていることがわかる。また、図2によれば、製造例1及び2で得られた本発明の樹脂粒子の表層は、架橋(メタ)アクリル系樹脂である(架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子(種粒子)に由来する)第1ポリマーからなる均質層と、3種のモノマーに由来の第2ポリマーからなる均質層とで構成されており、製造例1及び2で得られた本発明の樹脂粒子の内部(中心部)には、架橋(メタ)アクリル系樹脂である(架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子(種粒子)に由来する)第1ポリマーと3種のモノマーに由来の第2ポリマーとが共存して特殊な内部構造(ミクロ相分離構造)を形成されていることがわかる。一方、このような樹脂粒子の状態は、図3および4の従来の樹脂粒子では確認できない。
【0175】
〔実施例3:光拡散部材の製造例〕
(コンパウンドの製造)
基材樹脂としての、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとカーボネート前駆体との反応によって得られた芳香族ポリカーボネート樹脂(出光興産株式会社製、製品名「タフロン(登録商標)A2500」)100重量部と、光拡散剤としての製造例1で得られた樹脂粒子5重量部とを、ヘンシェルミキサーで15分間混合した。得られた混合物を単軸押し出し機(株式会社星プラスチック製、製品名「R50」)を用いて、温度250〜280℃、吐出量10〜25kg/hrの条件で押し出し、押し出した混合物を水冷して、樹脂組成物としてのコンパウンドを得た。コンパウンドをペレタイザーにてカットして、ペレット状の光拡散性樹脂組成物を得た。
【0176】
(光拡散部材の製造)
得られたペレット状の光拡散性樹脂組成物を120℃で5時間かけて予備乾燥し、水分を十分に除去した。その後、射出成形機(川口鉄工株式会社製、製品名「K−80」)を用いて、シリンダー温度255〜280℃の条件で光拡散性樹脂組成物を射出成形することにより、光拡散部材としての、厚さ2mm、幅50mm、長さ100mmの光拡散板を製造した。
【0177】
〔実施例4:外用剤の製造例〕
製造例1で得られた樹脂粒子10重量部、タルク40重量部、マイカ23重量部、赤色酸化鉄1重量部、黄色酸化鉄1重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、ワセリン5重量部、ミリスチン酸オクチルドデシル2重量部、防腐剤および香料適量をミキサーに供給して、均一に混合した。混合物を粉砕して篩に通した後、これを圧縮成型することにより、パウダーファンデーションを得た。
【0178】
〔実施例5:外用剤の製造例〕
ステアリン酸3重量部、セチルアルコール2重量部、ワセリン5重量部、流動パラフィン5重量部、モノオレイン酸エステル2重量部を加熱溶解して、ここへ製造例1で得られた樹脂粒子10重量部を添加・混合し、70℃に保温する(油相)。また、精製水65重量部にポリエチレングリコール3g、トリエタノールアミン1重量部を加え、加熱溶解し、70℃に保温する(水相)。水相に油相を加え、予備乳化を行った。その後ホモミキサーで均一に乳化し、乳化後かき混ぜながら30℃まで冷却させることで乳液を得た。
【符号の説明】
【0179】
1 分散層
11 第1ポリマーからなる相
12 第2ポリマーからなる相
2 均質層
3 均質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相構造を有する樹脂粒子であって、
架橋(メタ)アクリル系樹脂である第1ポリマーと、
重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する多官能ビニルモノマー、次式:
【化1】

(式中、R1はHまたはCH3、mは0〜50、nは0〜50を意味する。但し、m+n>1とする。)で表される界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマー、および単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー(但し、前記式の界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーを除く)の3種のモノマーに由来する第2ポリマーとを含み、
前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとが相分離し、前記第1ポリマーの相が長径1〜200nmの粒子状に分散した状態で存在するミクロ相分離構造が形成された分散層を中心部に有し、
前記分散層の外側に、前記第1ポリマー又は前記第2ポリマーからなる均質層を少なくとも1つ有することを特徴とする樹脂粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂粒子であって、
当該樹脂粒子の表面に凸部を有することを特徴とする樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂粒子であって、
前記分散層の外側に前記均質層を2つ有しており、
前記分散層の側の一方の前記均質層が前記第2ポリマーからなり、他方の前記均質層が、前記第1ポリマーからなることを特徴とする樹脂粒子。
【請求項4】
重合開始剤の存在下、(前記重合開始剤の10時間半減期温度T−10℃)以上の温度条件下で、種粒子としての架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子が分散した水性エマルジョン中に、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する多官能ビニルモノマー、次式:
【化2】

(式中、R1はHまたはCH3、mは0〜50、nは0〜50を意味する。但し、m+n>1とする。)で表される界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーおよび単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー(但し、前記式の界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーを除く)の3種のモノマーを添加し、前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子に前記3種のモノマーを吸収させながら重合させて、樹脂粒子を得ることを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂粒子の製造方法であって、
前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子と前記3種のモノマーとの重量比が1:0.4〜1.0であることを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の樹脂粒子の製造方法であって、
前記単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマーと前記多官能ビニルモノマーと前記界面活性能を有する(メタ)アクリレートモノマーとの重量比が、1:0.03〜1.5:0.001〜0.3であることを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1つに記載の樹脂粒子の製造方法であって、
前記3種のモノマーを、前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子100gに対して3〜50g/分の範囲の添加速度で前記水性エマルジョン中に添加することを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂粒子を含むことを特徴とする塗料。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂粒子を含むことを特徴とする外用剤。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂粒子を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂粒子を含むことを特徴とする光拡散部材。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂粒子10〜500重量部とバインダー樹脂100重量部とを含む表面層用樹脂組成物から形成された表面層を備えることを特徴とする光拡散フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−207215(P2012−207215A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−56030(P2012−56030)
【出願日】平成24年3月13日(2012.3.13)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】