説明

樹脂粒子、その製造方法およびそのシリコーンオイル分散体

【課題】画像表示素子、電気粘性流体、光学素子、化粧料、インク、塗料、潤滑剤などに有用なシリコーンオイルへの分散安定性に優れる微粒子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体との共重合体である分散剤の存在下、非極性溶剤中で、シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体とを、超音波照射しつつ分散重合させることを特徴とする樹脂粒子の製造方法により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子、その製造方法およびそのシリコーンオイル分散体に関する。更に詳しくは、本発明は、特定の分散剤の存在下で得られる樹脂粒子の製造方法に関する。本発明の樹脂粒子は、シリコーンオイルへの分散安定性に優れ、画像表示素子、電気粘性流体、光学素子、化粧料、インク、塗料または潤滑剤などの原料として有用である。
【背景技術】
【0002】
近年、サブミクロンあるいはそれ以下の粒径を有する樹脂粒子は、電子、光学、化粧品、塗料、機械分野などの種々の分野で利用されている。
一般に、サブミクロンあるいはそれ以下の粒径を有する樹脂粒子の製造方法としては、水中での乳化重合法、ソープフリー重合法、有機溶媒中での分散重合法などが挙げられる(例えば、非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、これらの重合法で製造した樹脂粒子は、媒体(例えば、シリコーンオイル)に分散させて画像表示素子用の電気泳動粒子や粘性流体用粒子などとして用いる場合、媒体との相溶性が乏しい。そのため、媒体中で粒子同士の凝集が起こり、粒子が均一に分散されず、粒子の良好な流動性が得られないという問題がある。
そのため、シリコーンマクロモノマーを分散剤として樹脂粒子を製造することで、樹脂粒子の媒体への分散安定性を向上させる試みが種々報告されている。
【0004】
例えば、電気粘性流体の媒体として用いられるシリコーンオイルにシリコーンマクロモノマーを共重合させた分散剤を添加し、分散剤を含むシリコーンオイルに粒子を分散させることで粒子の凝集を防ぐ方法がある(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、非極性溶剤中で、2-ビニルナフタレンとシリコーンマクロモノマーとを共重合させることからなる、媒体への分散安定性に優れた樹脂粒子の製造法が知られている(例えば、特許文献2および非特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開平6−172772号公報
【特許文献2】特開2006−96985号公報
【非特許文献1】高分子、第44巻、291頁、5月号、1995年、社団法人高分子学会
【非特許文献2】ナノテクノロジープログラム(ナノ加工・計測技術)機能性カプセル活用フルカラーリライタブルペーパープロジェクト、平成15年度〜17年度 成果報告書、506〜524頁、2006年、財団法人 化学技術戦略推進機構
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に記載の方法は、粒径が比較的大きい場合、言い換えると、粒子が沈降しても媒体の流動により比較的簡単に分散する場合には有用である。しかし、分散剤が粒子表面に固定化されていないので、粒径がサブミクロンあるいはそれ以下の樹脂粒子を用いる場合には、分散剤を多量に使用する必要がある。そのため、樹脂粒子と媒体との分散体の粘度が上昇するという不具合を生じる。
【0008】
また、上記の特許文献2または非特許文献2の記載の方法では、2−ビニルナフタレンというビニル系単量体を使用することを前提としている。
発明者らは、2−ビニルナフタレンをメタクリル酸メチルやスチレンなどの一般的なビニル系単量体に変更し追試を行った結果、重合中に粒子が凝集し、媒体に安定して分散するサブミクロンの樹脂粒子を得ることができなかったという知見を得ている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、発明者らは、鋭意努力研究を重ねた結果、特定の分散剤を使用し、かつ超音波照射下で樹脂粒子を製造すれば、メタクリル酸メチルやスチレンという一般的なビニル系単量体を用いても、媒体への分散安定性に優れたサブミクロンあるいはそれ以下の粒径を有する樹脂粒子が得られることを、意外にも見出し本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明によれば、シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体との共重合体である分散剤の存在下、非極性溶剤中で、シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体とを、超音波照射しつつ分散重合させることを特徴とする樹脂粒子、とりわけ正帯電の樹脂粒子の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記の製造方法により得られる樹脂粒子、とりわけ正帯電の樹脂粒子およびそれらのシリコーンオイル分散体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、媒体への分散安定性に優れたサブミクロンあるいはそれ以下の粒径を有する樹脂粒子、とりわけ正帯電の樹脂粒子を得ることができる。また、更に顔料を含む樹脂粒子でも同様の効果が得られる。
【0012】
本発明の樹脂粒子、とりわけ正帯電の樹脂粒子は、媒体への分散安定性に優れているため、画像表示素子、電気粘性流体、光学素子、化粧料、インク、塗料、潤滑剤などの原料として好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法は、特定の分散剤の存在下、非極性溶剤中で、シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体とを、超音波照射しつつ分散重合させることを特徴の1つとしている。
なお、上記の特定の分散剤とは、シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体からなる共重合体である。
【0014】
本発明の発明者らは、図1に示すように、非極性溶剤中でシリコーンマクロモノマーとビニル系単量体とを共重合させる分散重合において、シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体との共重合体である分散剤2が、分散重合によって非極性溶剤中に析出してくる樹脂粒子1の表面に存在し、分散安定性を図る分散剤として機能すると共に、共重合体である分散剤2が、樹脂粒子1および樹脂粒子1のシリコーン鎖の部位4と、親和性などにより物理的に固定していると推測している。なお、図1において3は分散剤を構成するシリコーンマクロモノマー由来のシリコーン鎖の部位を意味し、5は分散剤を構成するシリコーンマクロモノマーとビニル系単量体由来の共重合鎖の部位を意味する。
【0015】
なお、この推測は、シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体との共重合体が可溶なイソプロピルアルコールなどの有機溶媒を用いて、エチレングリコールジメタクリレートのような架橋成分を含み上記有機溶媒に不溶な樹脂粒子を洗浄した後では、洗浄前にくらべ、上記樹脂粒子がシリコーンオイルへの分散安定性が低下することを発明者らが確認したことに基づいている。
【0016】
本発明の分散重合に用いられる分散剤の共重合成分であるシリコーンマクロモノマーとしては、片末端に重合性不飽和基を有し、且つシリコーン単位(ジメチルポリシロキサン単位などのオルガノシロキサン単位)を有する種々の化合物を適時使用できる。
そのようなシリコーンマクロモノマーとしては、例えば次式:
【0017】
【化1】

【0018】
(R1は水素原子またはメチル基であり、R2はC2〜4のアルキレン基であり、R3はC1〜4のアルキル基またはフェニル基であり、nは整数である)
で示される構造を有するものが挙げられる。
上記の式において、R2が意味するC2〜C4のアルキレン基としては、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン基およびそれらの位置異性体などが挙げられる。
また、R3が意味するC1〜C4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル基およびそれらの位置異性体などが挙げられる。
また、nは3〜500の間、好ましくは10〜250の間の整数を意味する。
【0019】
シリコーンマクロモノマーの分子量は、数平均分子量500〜40000の範囲が好ましく、より好ましくは1000〜20000である。上記シリコーンマクロマーを二種以上混合して使用してもよい。
【0020】
より具体的なシリコーンマクロモノマーの例としては、α−ブチル−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0021】
本発明による分散剤は、例えば、シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体とを非極性溶剤に添加し、常法に従って、撹拌下に加熱することで、シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体とを非極性溶剤中で共重合させることにより得ることができる。共重合には、重合開始剤を使用してもよい。
【0022】
具体的な重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤であれば特に限定されない。
ラジカル重合開始剤として、例えばアゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)および2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)のようなアゾ系開始剤;および、ベンゾイルパーオキサイド、ハラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドおよびt-ブチルパーベンゾエートのような過酸化物系開始剤などが挙げられる。
重合開始剤は、モノマー組成物(シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体との混合物)中に0.1〜5重量%程度の量で予め溶解することが好ましい。
【0023】
本発明で用いることのできるビニル系単量体としては、特に限定されず、一般的に用いられている各種のビニル系単量体を使用できる。例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、n−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレンなどのスチレン類およびその誘導体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、弗化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸などの分子内に二重結合を有する脂肪酸類を使用できる。
【0024】
また、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物、ビニルナフタリン塩などを本発明の効果を妨げない範囲で1種もしくは2種以上組合せて使用できる。
【0025】
更に、ビニル系単量体として重合性の二重結合を2個以上有する化合物を加えてもよい。このような化合物は、架橋剤としての役割も果たす。
架橋剤としては、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンおよびそれらの誘導体のような芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのジエチレン性カルボン酸エステル、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルファイトなどのジビニル化合物および3以上のビニル基を含有する化合物などを挙げることができ、これらを単独でもしくは2種以上組合せて使用できる。
【0026】
分散剤製造用のビニル系単量体は、分散剤製造用のシリコーンマクロモノマー100重量部に対して、2〜50重量部使用することが好ましい。
2重量部未満の場合、樹脂粒子との親和性が悪くなるため物理的に固定することが難しく、その結果、樹脂粒子の分散安定性が悪くなるので好ましくない。
また、50重量部より多い場合、非極性溶剤との親和性が悪くなり樹脂粒子の分散安定性が悪くなるので好ましくない。より好ましい使用量は5〜25重量部である。
また、分散剤製造に用いるビニル単量体として電子供与性基を有しないビニル単量体、例えばメタクリル酸メチルを用いることにより、シリコーンオイル中における樹脂粒子の極性を明確に正にすることができる。
【0027】
本発明による分散剤の製造に用いられ得る非極性溶剤としてはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカンなどのパラフィン系炭化水素、イソヘキサン、イソオクタン、イソドデカンなどのイソパラフィン系炭化水素、流動パラフィンなどのアルキルナフテン系炭化水素、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジアルキルシリコーンオイル、アルキルフェニルシリコーンオイル、環状ポリジアルキルシロキサンまたは環状ポリアルキルフェニルシロキサンなどのシリコーンオイルが挙げられる。
【0028】
そのうち作業環境のような環境への影響を考慮して、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジアルキルシリコーンオイル、アルキルフェニルシリコーンオイル、環状ポリジアルキルシロキサンまたは環状ポリアルキルフェニルシロキサンなどのシリコーンオイルが好ましい。
【0029】
また、分散剤の製造において、超音波による分散を効率よく行うためには、使用するシリコーンオイルは、JIS K 2283で測定した動粘度が100センチストークス以下のオイルであることが更に好ましい。
【0030】
分散剤としての共重合体の調製に用いられる非極性溶剤の量は、モノマー組成物100重量部に対し、20〜400重量部が好ましく、より好ましくは50〜200重量部である。
【0031】
上記の共重合における反応温度および時間については特に限定されるものではなく、例えば用いる重合開始剤の種類や使用量および使用するシリコーンマクロモノマーとビニル系単量体との反応性などにより適時調整して用いることが可能である。好ましくは反応温度40〜120℃、反応時間0.5〜50時間の範囲で行うことができる。より好ましくは、反応温度は40〜80℃、反応時間は2〜25時間である。
【0032】
また、重合雰囲気は、大気雰囲気でも、不活性ガス雰囲気でもよい。この内、雰囲気中の酸素による重合速度の遅延および重合阻害を防止するために、不活性ガス雰囲気で行なうことが好ましい。このような不活性ガスとしては、窒素ガスおよびアルゴンガスが挙げられる。特に、経済性の面から窒素ガス雰囲気が好ましい。
【0033】
ここで、得られる分散剤は、分散剤の製造後に使用した非極性溶剤から分離しても、分離しなくてもよい。分離しない場合は、非極性溶剤に分散または溶解した分散剤を、樹脂粒子の製造にそのまま使用できる。
【0034】
本発明による樹脂粒子の製造に用いられるシリコーンマクロモノマーとしては、前記の分散剤の製造において例示したシリコーンマクロモノマーから選択して用いることができる。
また、本発明による樹脂粒子の製造に用いられるビニル系単量体としては、前記の分散剤の製造において例示したビニル系単量体から選択して用いることができる。
【0035】
本発明による樹脂粒子の製造において、ビニル系単量体の使用量としては、シリコーンマクロモノマー100重量部に対して、50〜500重量部使用することが好ましい。
ビニル系単量体の使用量が50重量部未満の場合、得られるシリコーンマクロモノマーとビニル系単量体との共重合体が繊維状となり、所望する樹脂粒子が得がたくなるので好ましくない。また、500重量部より多い場合、樹脂粒子製造時に樹脂粒子同士の凝集が起こりやすくなるので好ましくない。
より好ましい使用量は100〜400重量部である。
【0036】
本発明の樹脂粒子の製造において、分散重合の際に用いられる重合開始剤としては、前記の分散剤の製造において例示した重合開始剤から選択して、同様の使用量を用いることができる。その際、重合開始剤は、通常ビニル系単量体に溶解させて使用される。
【0037】
また、樹脂粒子を製造するための超音波照射下における分散重合に用いられる非極性溶剤としては、前記の分散剤の製造において例示した非極性溶剤から選択して用いることができる。この非極性溶媒の使用量としては、例えば、モノマー組成物100重量部に対し、400〜1900重量部が好ましく、より好ましくは400〜900重量部である。
【0038】
本発明による樹脂粒子の製造は、シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体との共重合体である分散剤の存在下、非極性溶剤中で、シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体とを、超音波照射下において分散重合させることにより行われる。
上記分散剤とビニル系単量体との割合は、分散剤がビニル系単量体100重量部に対して20重量部〜400重量部であることが好ましい。20重量部未満では樹脂粒子製造時に樹脂粒子同士の凝集が起こりやすくなるので好ましくない。また、400重量部より多い場合では得られる樹脂粒子が繊維状となりやすく、所望する樹脂粒子が得がたくなるので好ましくない。より好ましくは40〜200重量部である。
上記シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体との割合は、シリコーンマクロモノマーがビニル系単量体100重量部に対して20〜200重量部が好ましい。シリコーンマクロモノマーの割合が20重量部未満では分散剤を粒子表面に固定化することが難しく、時間と共に粒子の分散安定性が低下するので好ましくない。また、200重量部より多い場合では得られる樹脂粒子が繊維状となりやすく、所望する樹脂粒子が得がたくなるので好ましくない。より好ましくは25〜100重量部である。
【0039】
超音波照射下における分散重合反応は、前記の分散剤の製法と同じ理由から、不活性雰囲気下で行なうのが好ましい。より好ましい不活性雰囲気は、窒素ガス雰囲気である。
【0040】
上記の分散重合における反応温度および時間については特に限定されるものではなく、用いる重合開始剤の種類や使用量および反応に使用するビニル系単量体の量などにより適時調整して用いることが可能である。好ましくは反応温度40〜120℃、反応時間0.5〜50時間の範囲で行うことができる。より好ましくは、反応温度は40〜80℃、反応時間は2〜12時間である。
【0041】
超音波の照射は、一般に用いられる超音波洗浄装置に温水などの媒体を適量満たし、これに反応に供する混合液を入れた容器を浸して超音波を照射する方法、または内部照射型超音波発生装置などを用い、反応に供する混合液を入れた容器に超音波振動子を挿入して超音波を照射する方法などにより行うことができる。
【0042】
超音波の発信周波数は16kHz以上であることが好ましく、20〜500kHzの範囲であることがより好ましい。また、出力は、超音波を照射する媒体1Lあたり、10〜1000Wが好適である。
【0043】
また、超音波照射下における分散重合には、マグネチックスターラーなどの機械的撹拌装置の併用も可能である。
【0044】
また、外部温調装置により温度をコントロールした媒体を超音波洗浄装置内に循環させることによって重合温度(反応温度)を調整してもよい。
【0045】
樹脂粒子は、用いる分散剤の量および用いるビニル系単量体の選択により粒子径を制御することが可能である。
例えば、用いるビニル系単量体に対して、用いる分散剤の割合を増やすことにより、樹脂粒子の粒子径を小さくすることができる。また、非極性溶剤に対する親和性が高いビニル系単量体を選択して用いることによっても、樹脂粒子の粒子径を小さくすることができる。
【0046】
樹脂粒子の平均粒子径は0.02〜1.0μmが好ましく、更に0.05〜0.8μmが好ましい。これは、平均粒子径が0.02μmより小さくなると重合時に非極性溶剤の粘度が上昇し、その結果安定した平均粒子を有する樹脂粒子の製造が困難になり、また、1.0μmより大きくなるとシリコーンオイル中での分散安定性が低下するので好ましくない。
【0047】
樹脂粒子には、顔料が更に含まれていてもよい。顔料としては、当業者に周知の有機顔料または無機顔料を好適に用いることができる。
【0048】
例えば、黒色顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅酸化物、鉄酸化物(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタンなどの金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)などの有機顔料が挙げられる。
【0049】
更に、顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、153、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、なども使用できる。
【0050】
顔料は、非極性溶剤に、常法により分散した後、重合処理することで、分散剤や樹脂粒子中に混合できる。
なお、顔料を分散させる装置としては、特に限定されないが、例えばボールミル、アトライター、サンドミルなどのメディア型分散装置、ホモミキサー、ホモジナイザー、バイオミキサーなどの剪断型分散装置、超音波分散装置などが挙げられる。
【0051】
得られた樹脂粒子は、非極性溶媒から取り出してもよく、用途によっては取り出さずに使用できる。取り出された樹脂粒子は、必要に応じて、非極性溶媒で洗浄できる。更に、洗浄後の樹脂粒子を非極性溶媒中に分散させて、流通に供してもよい。
【0052】
本発明の樹脂粒子は、非極性溶媒(例えば、シリコーンオイル)への分散安定性に優れている。本発明の樹脂粒子は、この性質を利用して、画像表示素子、電気粘性流体、光学素子、化粧料、インク、塗料、潤滑剤などの原料として好適に使用できる。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の各種値の測定方法を下記する。
(数平均分子量)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、数平均分子量を測定した。なお、数平均分子量はポリスチレン(PS)換算数平均分子量を意味する。その測定方法は次の通りである。
測定装置:東ソー社製 GPC HLC−8020
ガードカラム:TOSOH TSKguardcolumn HHR(S)×1(7.5mmID×7.5cm)
カラム:TOSOH TSK−GEL GMHHR−H(S)×3(7.8mmID×30cm)
測定条件:カラム温度(40℃)、移動相(一級THF/45℃)、
S.PUMP/R.PUMP流量(0.8/0.5mL/min)、
RI温度(35℃)、INLET温度(35℃)、
測定時間(55min)、検出器(UV254nm、RI)
測定方法:試料50mgを10mL一級THF(移動相)で一晩放置して溶解し、0.45μm又は0.20μmのフィルターで濾過した。
検量線用標準ポリスチレン:昭和電工社製、商品名「shodex」重量平均分子量:1030000と、東ソー社製、重量平均分子量:5480000、3840000、355000、102000、37900、9100、2630、495
【0054】
(平均粒子径)
ここでいう平均粒子径は、動的光散乱法と呼ばれる方法を利用して測定したZ平均粒子径を意味する。つまり、樹脂粒子のシリコーンオイル分散液にレーザー光を照射し、樹脂粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定した。検出された樹脂粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法により求めたZ平均粒子径である。この種の平均粒子径は、市販の測定装置で簡便に測定可能であり、本実施例ではマルバーン社から市販されている「ゼータサイザーナノZS」を測定に使用した。
上述の市販の測定装置にはデータ解析ソフトが搭載されており、測定データを自動的に解析することで、Z平均粒子径が算出した。
【0055】
(動粘度)
動粘度はJIS K 2283(原油および石油製品の動粘度試験方法)により測定した。
【0056】
(粒子の帯電性の測定)
20mlのガラス瓶に、実施例に記載のシリコーンオイル分散体を量り取り、そこへ樹脂粒子固形分が1wt%となる様にシリコーンオイル(動粘度:1センチストークス、KF-96L-1CS、信越化学製)を加えて10gとし、これを測定用試料とした。
次に、片面にインジウムスズオキサイド(ITO)をコートしたガラス板2枚を、コート面を内側にし、銅テープを貼り付けたスペーサーをガラス板間に挟んでガラス板の間隔を1mmとした平行平板(冶具)を用意した。
【0057】
冶具を測定用試料に浸漬し、冶具の左側に+100Vの電圧を印加して10秒静置した。10秒経過後、測定用試料から冶具を引き上げ、左側のガラス板に粒子が付着していればその粒子の帯電性は負、右側のガラス板に粒子が付着していればその粒子の帯電性は正として評価した。
【0058】
実施例1
(分散剤の作製)
300mlセパラブルフラスコにシリコーンオイル(動粘度:1センチストークス、KF-96L-1CS、信越化学製)97.2gに、予め開始剤として2,2'-アゾ-ビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.97gを溶解したメタクリル酸メチル7.2gおよびシリコーンマクロモノマー(サイラプレーンFM-0721、チッソ製、数平均分子量5900)90.0gを添加した。得られた混合物を窒素雰囲気下50℃にて撹拌を行いながら20時間溶液重合に付した。得られた反応物は無色透明な液体であった。以下この反応物をそのまま分散剤(固形分濃度50%)として実施例、比較例に使用した。
【0059】
実施例2
300mlセパラブルフラスコにシリコーンオイル(KF-96L-1CS、信越化学製)176.0gに、ラウロイルパーオキサイド0.72gを溶解したメタクリル酸メチル11.2g、シリコーンマクロモノマー(サイラプレーンFM-0721、チッソ製、数平均分子量5900) 4.8gおよび実施例1で得られた分散剤8.0gを添加した。得られた混合物を窒素雰囲気下60℃にて超音波照射下8時間分散重合に付した。
【0060】
なお、超音波照射は300mlセパラブルフラスコを出力150Wの超音波洗浄機(VS-150、VELVO-CLEAR製)の洗浄槽(内寸;L230mm×W180mm×H110mm)に浸漬し、槽内水を60℃恒温に保った状態で行った。
【0061】
分散重合終了後、樹脂粒子を遠心分離により沈降分離し、シリコーンオイル(KF-96L-1CS、信越化学製)に再度分散させた。この操作を3回繰り返し、樹脂粒子を洗浄することで重合開始剤などの反応残渣を除去した。この後、樹脂粒子を更にシリコーンオイルに分散させることで、固形分8%の樹脂粒子のシリコーンオイル分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーンオイル溶媒中での平均粒子径は301nmであり、シリコーンオイル分散後1週間経過した後も粒子の沈殿が見られなかった。
上記の得られた樹脂粒子の帯電性を測定したところ、この粒子は正に帯電していることが判った。
【0062】
実施例3〜7および比較例1
実施例1の分散剤、ビニル系単量体その他を表1の記載のように変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行った。
また、得られたそれぞれの樹脂粒子の帯電性も合わせて、表1に示すが、比較例1で得られた樹脂粒子は凝集固化したため、この粒子の帯電性は測定できなかった。
【0063】
実施例8
ジルコニアビーズ(直径5mm)500gを入れた300mlガラス製ビーズポットにシリコーンオイル(KF-96L-1CS、信越化学製)60.0gおよび実施例1で得られた分散剤10.0g、並びに顔料としてマゼンタ顔料(CROMOFUTAL Pink PT、チバスペシャリティケミカルズ製)2.0gを添加し、室温にて24時間ビーズミルによる顔料分散を行った。
次に上記溶液61.6g(シリコーンオイル52.0g、実施例1で得られた分散剤8.0g、マゼンタ顔料1.6g)を300mlセパラブルフラスコに移した。このフラスコに、シリコーンオイル(KF-96L-1CS、信越化学製)128.0g、予め開始剤としてラウロイルパーオキサイド0.72gを溶解したメタクリル酸メチル8.0g、シリコーンマクロモノマー(FM-0721、チッソ製、数平均分子量5900)4.8gおよびエチレングリコールジメタクリレート1.6gを添加した。この後、実施例2と同様の操作を行い、固形分8%の樹脂粒子のシリコーンオイル分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーンオイル溶媒中での平均粒子径は403nmであり、シリコーンオイル分散後1週間経過した後も粒子の沈殿が見られなかった。
上記の得られた樹脂粒子の帯電性を測定したところ、この粒子は正に帯電していることが判った。
【0064】
実施例9
顔料としてマゼンタ顔料の代わりにシアン顔料(IRGALITE Blue GLO、チバスペシャリティケミカルズ製)2.0gを用いたこと以外は実施例8と同様に操作を行い、固形分8%の樹脂粒子のシリコーンオイル分散体を得た。得られた樹脂粒子のシリコーンオイル溶媒中での平均粒子径は424nmであり、シリコーンオイル分散後1週間経過した後も粒子の沈殿が見られなかった。
上記の得られた樹脂粒子の帯電性を測定したところ、この粒子は正に帯電していることが判った。
【0065】
比較例2
シリコーンマクロモノマーを添加しなかったこと以外は、実施例8と同様の操作を行った結果、凝集により系全体が固化した。また顔料が粒子内に取り込まれておらず白色の層が見られた。
また、樹脂粒子の帯電性の測定も、樹脂粒子が凝集したため測定できなかった。
【0066】
比較例3
超音波照射を行わず、代わりに機械的撹拌を行ったこと以外は実施例2と同様の操作を行った結果、分散重合の際粒子同士の合着が起こり、反応溶液の粘度が上昇し最終的には系全体が固化したため操作を終了した。
また、樹脂粒子の帯電性の測定も、樹脂粒子が凝集したため測定できなかった。
【0067】
上記の実施例2〜9および比較例1〜3における樹脂粒子の製造に用いた各組成物の量、得られた各樹脂粒子の粒子径、各樹脂粒子のシリコーンオイル分散体の1週間経過後における樹脂粒子の状態および各樹脂粒子の帯電性について調べた結果を以下の表に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
表1から、実施例の樹脂粒子は、シリコーンオイルへの分散性が良好であり、粒子の凝集も少なかったことがわかる。一方、樹脂粒子用のシリコーンマクロモノマーを使用しない比較例1、分散剤を使用しない比較例2、超音波照射しない比較例3は、いずれも樹脂粒子が凝集するため、シリコーンオイルへの分散性が極めて不良であったことが判る。
また、実施例2〜9の樹脂粒子の帯電性を調べたところ、これらの樹脂粒子はいずれも正帯電の樹脂粒子であったことが判明した。
また、比較例1〜3の樹脂粒子は、いずれも凝集したためこれらの樹脂粒子の帯電性を測定することはできなかった。
【0070】
実施例10
実施例7〜9で得られたエチレングリコールジメタクリレートによって架橋された樹脂粒子を、それぞれイソプロピルアルコールで洗浄した。次に粒子を風乾燥し、更に減圧乾燥にてイソプロピルアルコールを除いた後シリコーンオイルに添加し超音波照射による分散を行い固形分8%のシリコーンオイル分散体を得た。得られたシリコーンオイル分散体は、実施例7〜9の結果とは異なり、時間の経過と共に粒子の沈殿が見られた。この結果により、本発明の樹脂粒子は図1に示す構造を有していると推測するに至った。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明による樹脂粒子は、シリコーンオイル中における分散安定性に優れ、非凝集性粒子であることから経時による粒子形状変化の懸念もなく、更には分散剤などの電荷制御剤を含有せずとも正帯電性を示すことから、画像表示素子、電気粘性流体、光学素子、化粧料、インク、塗料、潤滑剤などに有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の樹脂粒子の概略説明図である。
【符号の説明】
【0073】
1 樹脂粒子
2 共重合体である分散剤
3 分散剤を構成するシリコーンマクロモノマー由来のシリコーン鎖の部位
4 樹脂粒子を構成するシリコーンマクロモノマー由来のシリコーン鎖の部位
5 分散剤を構成するシリコーンマクロモノマーとビニル系単量体由来の共重合鎖の部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体との共重合体である分散剤の存在下、非極性溶剤中で、シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体とを、超音波照射しつつ分散重合させることを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂粒子が、正帯電の樹脂粒子である請求項1に記載の樹種粒子の製造方法。
【請求項3】
前記非極性溶剤が、動粘度100センチストークス以下のシリコーンオイルである請求項1または2に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記非極性溶剤が、更に顔料を含有する請求項1〜3のいずれか一つに記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の樹脂粒子の製造方法によって得られることを特徴とする樹脂粒子。
【請求項6】
前記樹脂粒子が正帯電の樹脂粒子である請求項5に記載の樹脂粒子。
【請求項7】
前記樹脂粒子が0.02μm〜1.0μmの範囲の平均粒子径を有する請求項5または6に記載の正帯電の樹脂粒子。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一つに記載の正帯電の樹脂粒子のシリコーンオイル分散体。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−274249(P2008−274249A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86794(P2008−86794)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】