説明

樹脂粒子およびこれを用いた絶縁化導電性粒子並びに異方性導電材料

【課題】絶縁化導電性粒子をバインダー樹脂に分散させてなる異方性導電材料により電気的接続を行うにあたり、絶縁化導電性粒子のバインダー樹脂中での凝集を抑制して充分な分散性を発現させ、異方性導電材料として電気的接続に供したときに対向する電極間の導通は良好に保ちつつ横導通を確実に抑制することを目的とし、当該目的を達成できる絶縁化導電性粒子を得るために導電性粒子の絶縁に用いられる樹脂粒子を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂粒子は、導電性粒子の表面に存在して該導電性粒子を絶縁するための樹脂粒子であって、(メタ)アクリル酸メチルとジビニルベンゼンとを含む単量体組成物を重合させた(メタ)アクリル系架橋粒子重合体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば異方性導電フィルム(ACF)や異方性導電ペースト(ACP)などの異方性導電材料として電気的接続に用いた際に良好な接続信頼性(横導通の抑制など)を発揮する絶縁化導電性粒子を与えうる絶縁用の樹脂粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのガラス基板やプリント配線基板に実装部品を電気的に接続する場合などに、異方性導電フィルム(ACF)や異方性導電ペースト(ACP)などの異方性導電材料が使用されている。かかる異方性導電材料は、一般に導電性粒子をバインダー樹脂中で分散させてフィルム状やペースト状にすることにより得られ、その際用いられる導電性粒子としては、基材粒子の表面を導電性金属層で被覆した粒子や金属粒子などが汎用されていた。ところが近年、電子機器や電子部品の小型化などに伴い、接続対象となる接続端子のパターンが微細化して隣接するパターン間が狭ピッチになり、本来は絶縁されるべきパターン間に導通(いわゆる横導通)が生じてしまうという問題が起こるようになった。
【0003】
そこで、この問題を回避するべく、異方性導電材料に使用する導電性粒子の導電性金属層表面に絶縁層を設けることが提案されている。例えば、特許文献1には、導電性粒子の表面を、特定のゲル分率を有する絶縁性ゲル状樹脂からなる絶縁性樹脂層で被覆した絶縁被覆導電性粒子(絶縁化導電性粒子)が記載されている。また特許文献2には、表面が金属からなる粒子を絶縁粒子で被覆した絶縁被覆導電性粒子(絶縁化導電性粒子)であって、前記金属と前記絶縁粒子とが結合性を有する官能基を介して化学結合してなる粒子が記載されている。さらに特許文献3では、平均粒子径、アスペクト比、CV値が特定範囲である導電性微粒子の表面に、特定の厚さの絶縁性樹脂からなる被覆層が形成された絶縁被覆導電性粒子(絶縁化導電性粒子)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−195921号公報
【特許文献2】国際公開第2003/025955号
【特許文献3】特開2000−100249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3で開示された絶縁被覆導電性粒子では、異方性導電材料を作製するべくバインダー樹脂に分散させる際に、粒子同士が凝集しやすくなることがあった。このようにバインダー樹脂中での分散性が悪いと、結果として得られた異方性導電材料を用いて電気的接続を行った際に、やはり横導通が生じることがあった。
【0006】
そこで、本発明は、絶縁化導電性粒子をバインダー樹脂に分散させてなる異方性導電材料により電気的接続を行うにあたり、絶縁化導電性粒子のバインダー樹脂中での凝集を抑制して充分な分散性を発現させ、異方性導電材料として電気的接続に供したときに対向する電極間の導通は良好に保ちつつ横導通を確実に抑制することを目的とし、当該目的を達成できる絶縁化導電性粒子を与えうる絶縁用の樹脂粒子を提供することを課題とする。また本発明は、かかる樹脂粒子を用いて上記目的を達成しうる絶縁化導電性粒子および異方性導電材料を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、導電性粒子を絶縁するための樹脂粒子を構成する単量体組成物として(メタ)アクリル酸メチルとジビニルベンゼンとの組み合わせを採用することにより、当該樹脂粒子で絶縁された絶縁化導電性粒子がバインダー樹脂中で凝集することなく良好な分散性を発現するものとなることを見出し、かかる絶縁化導電性粒子を用いた異方性導電材料にて電気的接続を行うと、対向する電極間の導通を良好に保ちつつ横導通は確実に抑制できることを確認し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明に係る樹脂粒子は、導電性粒子の表面に存在して該導電性粒子を絶縁化するための樹脂粒子であって、(メタ)アクリル酸メチルとジビニルベンゼンとを含む単量体組成物を重合させた(メタ)アクリル系架橋粒子重合体からなることを特徴とする。
本発明の樹脂粒子においては、前記単量体組成中に占めるジビニルベンゼンの含有割合が4質量%以上であることが好ましく、その平均粒子径は500nm以下であることが好ましい。また、本発明の樹脂粒子である(メタ)アクリル系架橋粒子重合体を得る際の重合には、乳化重合法を採用することが好ましく、さらにその乳化重合には、レドックス系重合開始剤を用いることが好ましく、アニオン系乳化剤を用いることが好ましい。
【0009】
本発明に係る絶縁化導電性粒子は、導電性粒子の表面の少なくとも一部に前記本発明の樹脂粒子が存在してなることを特徴とする。
本発明に係る異方性導電材料は、前記本発明にかかる絶縁化導電性粒子がバインダー樹脂に分散してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定の単量体から得られる樹脂粒子を用いて導電性粒子を絶縁するため、絶縁化導電性粒子のバインダー樹脂中での凝集を抑制して充分な分散性を発現させ、異方性導電材料として電気的接続に供したときに対向する電極間の導通は良好に保ちつつ横導通を確実に抑制することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(樹脂粒子)
本発明の樹脂粒子は、導電性粒子を絶縁するために用いられるものであり、(メタ)アクリル酸メチルとジビニルベンゼンとを必須とする単量体組成物を重合させた(メタ)アクリル系架橋粒子重合体からなる。なお、本発明において「(メタ)アクリル酸メチル」とはアクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸メチルを意味する。(メタ)アクリル酸メチルとしてはメタクリル酸メチルが好ましい。
【0012】
(メタ)アクリル系架橋粒子重合体を構成する単量体組成物において(メタ)アクリル酸メチルとジビニルベンゼンとの比率(質量比)は、(メタ)アクリル酸メチル/ジビニルベンゼンの値が49以下であるのが好ましく、より好ましくは12以下、さらに好ましくは6以下であり、1.0以上であるのが好ましく、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上である。(メタ)アクリル酸メチル/ジビニルベンゼンの値が前記範囲よりも大きいと、絶縁化導電性粒子の凝集抑制効果が不充分になる傾向がある。(メタ)アクリル酸メチル/ジビニルベンゼンの値が前記範囲よりも小さいと、導電性粒子に対する樹脂粒子の付着性が低下する虞がある。
【0013】
前記単量体組成物における必須単量体である(メタ)アクリル酸メチルおよびジビニルベンゼンの合計量は、全単量体組成物中70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。(メタ)アクリル酸メチルおよびジビニルベンゼンの合計量が前記範囲よりも少ないと、絶縁化導電性粒子の凝集抑制効果が不充分になる傾向がある。
【0014】
(メタ)アクリル系架橋粒子重合体を構成する単量体組成物は、(メタ)アクリル酸メチルとジビニルベンゼンのほかに、重合性二重結合を1個もしくは2個以上有するその他の重合性単量体を含んでいてもよい。その他の重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。
【0015】
すなわち、重合性二重結合を1個有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3−フェニルプロピルなどのアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル;などの(メタ)アクリル系単量体が挙げられる。また重合性二重結合を1個有する重合性単量体として、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、イソプロペニルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸またはそれらの半エステル化合物;ビニルトルエン;アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有単量体;なども挙げられる。
【0016】
重合性二重結合を2個以上有する重合性単量体としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ヘキサンジオール、トリアクリル酸ペンタエリスリトール、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、テトラアクリル酸テトラメチロールメタン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、フタル酸ジアリル、シアン酸トリアリルなどが挙げられる。その他の重合性単量体は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
なお、(メタ)アクリル系架橋粒子重合体を構成する単量体組成物が上述したその他の重合性単量体をも含有する場合、それらの合計含有量は、必須単量体である(メタ)アクリル酸メチルおよびジビニルベンゼンの合計量が前記範囲になるようにするのがよい。
【0017】
前記単量体組成物中に占めるジビニルベンゼンの含有割合は4質量%以上であることが好ましい。より好ましくは前記単量体成分中に占めるジビニルベンゼンの含有割合は8質量%以上であり、さらに好ましくは14質量%以上である。単量体組成中に占めるジビニルベンゼンの割合が多いほど、絶縁化導電性粒子の凝集を抑制し易くなる。ただし単量体組成中に占めるジビニルベンゼンの含有割合があまりに多すぎると、導電性粒子に対する樹脂粒子の付着性が低下する懸念が生じるので、ジビニルベンゼンの含有割合は、50質量%以下であるのが好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。
【0018】
本発明の樹脂粒子の平均粒子径は、500nm以下であることが好ましい。より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは250nm以下、特に好ましくは180nm以下である。導電性粒子の粒子径が小さいほど、そのままでは凝集し易くなるため、本発明の樹脂粒子を用いて凝集を抑制する必要性が高くなる。粒子径の小さい導電性粒子の表面に存在させるには、樹脂粒子の粒子径も前記範囲のように小さいことが好ましい。一方、樹脂粒子の平均粒子径があまりに小さすぎると、絶縁化導電性粒子として用いた場合に隣接する電極間の横導通の抑制が不十分となる虞があるので、樹脂粒子の平均粒子径は10nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、50nm以上がさらに好ましい。
【0019】
なお、本発明における樹脂粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定される体積平均粒子径を意味するものである。
【0020】
本発明の樹脂粒子の体積平均粒子径は、絶縁対象とする導電性粒子の個数平均粒子径の0.005倍以上であるのが好ましく、より好ましくは0.01倍以上、さらに好ましくは0.03倍以上であり、絶縁対象とする導電性粒子の個数平均粒子径の0.3倍以下であるのが好ましく、より好ましくは0.1倍以下、さらに好ましくは0.08倍以下である。導電性粒子に対する樹脂粒子の大きさ(平均粒子径)が前記範囲であれば、効率よく凝集抑制効果を発揮できる。
【0021】
本発明の樹脂粒子の粒子径における変動係数(CV値)は、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、最も好ましくは20%以下である。なお、粒子径の変動係数とは、動的光散乱法により測定される体積平均粒子径と、粒子径の標準偏差とを下記式に当てはめて求められる値である。
粒子径の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/体積平均粒子径)
【0022】
(メタ)アクリル系架橋粒子重合体を得る際の重合には乳化重合法を採用することが、粒子径の小さい(具体的には 1μm以下)粒子が得られやすい点で好ましい。以下、(メタ)アクリル系架橋粒子重合体を得る際の重合方法として特に好ましい乳化重合の態様を説明する。
【0023】
好ましい乳化重合の態様は、前記単量体組成物を重合開始剤と界面活性剤(乳化剤)の存在下で乳化重合する重合工程と、該重合工程の後さらに界面活性剤を添加して熟成する熟成工程とを含む。乳化重合は、通常水性分散媒中で行う。
【0024】
前記乳化重合に用いる重合開始剤としては、過酸化水素水と、アスコルビン酸、酒石酸およびソルビン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種類の還元剤とを組合せてなるレドックス系重合開始剤を用いることが好ましい。これにより、粒子径が小さく、かつ粒度分布の狭い粒子重合体を得ることができる。重合開始剤の添加方法としては、過酸化水素水と還元剤とをそれぞれ水溶液とした後、該水溶液を連続的もしくは断続的に反応容器内に添加してもよく、また、過酸化水素水の全量を反応容器内に前もって添加しておき還元剤を連続的に添加してもよい。
【0025】
前記重合工程で使用される界面活性剤としては、アニオン系乳化剤が好ましい。これにより、粒子径が小さく、かつ粒度分布の狭い粒子重合体を得ることができる。アニオン系乳化剤としては、例えば、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられ、これらの中でも特に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。重合工程において用いる界面活性剤の量としては、単量体組成物100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜7質量部がさらに好ましい。
【0026】
前記重合工程における乳化重合は、公知の乳化重合法で行えばよく、例えばモノマー滴下法、プレエマルジョン法、一括仕込み重合法などを採用することができるが、粒度分布の狭い架橋粒子重合体を得るうえでは、モノマー滴下法を採用するのが好ましい。単量体組成物、重合開始剤、界面活性剤の仕込み方法などは、特に制限はなく、適宜設定すればよいが、好ましくは、予め単量体組成物全量の5質量%以上と重合開始剤の一部と界面活性剤とからなる重合用混合液を用いて乳化重合を開始した後、残りの単量体組成物および重合開始剤を別々にあるいは混合して滴下するのがよい。前記重合工程における重合温度としては、30〜90℃が好ましい。重合時間は、単量体組成物の仕込み量と反応液中の残存量とから求められる反応率に応じて適宜設定すればよいが、通常1〜12時間、好ましくは2〜8時間程度である。
【0027】
前記熟成工程は、重合工程の後で、未反応の単量体組成物を減少させたり、または、乳化重合で得られた粒子重合体を含む分散液を安定化させたりする目的で行われる。このとき界面活性剤を添加することにより、熟成時の架橋粒子重合体の凝集を防止することができる。熟成工程で使用される界面活性剤としては、前記重合工程で例示した界面活性剤(好ましくはアニオン系乳化剤)を用いることができ、特に好ましくは、重合工程で使用したものと同じ界面活性剤を使うことがよいが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン性界面活性剤を用いることも可能である。熟成工程で用いる界面活性剤の量としては、乳化重合で使用した単量体組成物100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜7質量部がより好ましい。
【0028】
前記熟成工程における熟成温度としては、50〜90℃が好ましく、70〜85℃がより好ましい。熟成温度を前記範囲内とすることにより、粒子の凝集を抑えながら、未反応の単量体組成物の量を減少させることができる。熟成時間は、単量体組成物の仕込み量と反応液中の残存量とから求められる反応率に応じて適宜設定すればよいが、通常1〜12時間、好ましくは2〜8時間程度である。
【0029】
(絶縁化導電性粒子)
本発明の絶縁化導電性粒子は、導電性粒子の表面の少なくとも一部に前記本発明の樹脂粒子が存在してなるものである。これにより、バインダー樹脂中での凝集が抑制されて充分な分散性を発現し得るものとなり、その結果、異方性導電材料として電気的接続に供したときに対向する電極間の導通は良好に保ちつつ横導通を確実に抑制することができる。
まず、導電性粒子について説明する。
前記導電性粒子は、金属粒子であってもよく、基材粒子と該基材粒子表面の少なくとも一部を被覆する導電性金属層とから構成される複合粒子であってもよい。好ましくは後者の複合粒子であるのがよい。
【0030】
前記金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウム、ニッケル−リン、ニッケル−ホウ素などの金属や金属化合物、および、これらの合金などからなる粒子が挙げられる。これらの中でも、導電性に優れ、工業的に安価である点で、金、銀、銅、ニッケルから選ばれる金属の粒子が好ましい。
前記金属粒子の形状は特に限定されるものではなく、例えば、球状、回転楕円体状、金平糖状、薄板状、針状、まゆ状などのいずれでも良いが、球状が好ましく、特に真球状が好ましい。
【0031】
前記複合粒子に用いる基材粒子としては、特に制限はなく、汎用されているものを用いることができる。基材粒子の材料としては、例えば、シリカなどの無機材料;シリコーン樹脂(ポリメチルシルセスキオキサン、ポリフェニルシルセスキオキサン)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリブタジエンなど)、ビニル重合体樹脂((メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル−スチレン樹脂など)、ポリスルホン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂(メラミン樹脂、メラミン−ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂など)、尿素樹脂などの有機材料;無機質成分であるポリシロキサン(好ましくは、(メタ)アクリロキシ基含有シリコーン化合物を含む無機化合物原料を加水分解・縮合して得られるポリシロキサン)と有機質成分であるビニル系重合体とが任意の適切な形態(例えば、一方が他方に分散している形態、一方をコア粒子とし他方がシェル層であるコア・シェル形態、両者が分子レベルで複合または混合されている形態など)で複合したものである有機無機複合材料;などが挙げられる。これらの中でも、適度な弾性率や回復特性を有する点で、ビニル重合体樹脂((メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル−スチレン樹脂など)、アミノ樹脂(メラミン樹脂、メラミン−ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂など)、有機無機複合材料が好ましい。特に、有機無機複合材料としては、特開2003−183337号公報や特開平8−81561号公報などに記載されているものが好ましく用いられる。
【0032】
前記複合粒子に用いる基材粒子の粒子径は、個数平均粒子径で0.5μm以上、10.0μm以下であることが好ましい。平均粒子径が小さすぎると、無電解めっきなどで導電性金属層を被覆する際に、粒子が凝集し易くなり、均一な導電性金属層を形成できない虞がある。一方、平均粒子径が大きすぎると、隣接する電極間の間隔が狭い場合には適用しにくいなど適用用途が限られて、工業上の利用分野が少なくなる傾向がある。基材粒子の平均粒子径は、より好ましくは1.0μm以上、5.0μm以下であり、さらに好ましくは1.2μm以上、3.0μm以下であり、最も好ましくは1.5μm以上、2.7μm以下である。
なお、個数平均粒子径は、具体的には、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置(例えば、ベックマンコールター(株)製「コールターマルチサイザーIII型」)により測定される個数基準の値とする。
【0033】
前記複合粒子に用いる基材粒子の粒子径における変動係数(CV値)は、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下、最も好ましくは4%以下である。なお、粒子径の変動係数とは、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置により測定される粒子の平均粒子径と、粒子の粒子径の標準偏差とを下記式に当てはめて求められる値である。
粒子径の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/個数平均粒子径)
【0034】
前記複合粒子に用いる基材粒子の形状は特に限定されるものではなく、例えば、球状、回転楕円体状、金平糖状、薄板状、針状、まゆ状などのいずれでも良いが、球状が好ましく、特に真球状が好ましい。
【0035】
前記導電性金属層を構成する金属は、導電性を持つ化合物であればよく特に限定されない。例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウム、ニッケル−リン、ニッケル−ホウ素などの金属や金属化合物、および、これらの合金などが挙げられる。これらの中でも、導電性に優れ、工業的に安価である点で、金、銀、銅、ニッケルが好ましい。また、導電性金属層は、単層でもよいし複層であってもよく、複層の場合には、例えば、ニッケル−金、ニッケル−パラジウム、ニッケル−パラジウム−金、ニッケル−銀などが好ましく挙げられる。
【0036】
前記導電性金属層の厚みは、特に制限されないが、好ましくは10〜500nm、より好ましくは20〜400nm、さらに好ましくは50〜300nmである。導電性金属層の厚みが10nm未満であると、絶縁化導電性粒子としたときに安定した電気的接続を発現し難くなるおそれがある。導電性金属層の厚みが500nmを超えると、導電性粒子としたときの表面の硬度が高くなりすぎ、回復率などの機械的特性が低下するおそれがある。
【0037】
前記複合粒子における導電性金属層は、基材粒子表面の少なくとも一部を被覆していればよいが、導電性金属層の表面には、実質的な割れや、導電性金属層が形成されていない面が存在しないことが好ましい。ここで、「実質的な割れや、導電性金属層が形成されていない面」とは、電子顕微鏡(倍率2000倍)を用いて任意の10000個の導電性粒子の表面を観察したときに、導電性金属層の割れまたは基材粒子表面の露出が認められる割合が全体の5%以下であることを意味する。
【0038】
前記基材粒子の表面に導電性金属層を被覆する方法は、特に限定されず、従来公知の方法、例えば、無電解めっき法、電解めっき法などのめっきを施す方法;金属微粉を単独でもしくはバインダーに混ぜ合わせたペースト状で基材粒子にコーティングする方法;真空蒸着、イオンプレーティング、イオンスパッタリングなどの物理的蒸着方法;などを採用すればよい。これらの中でも特に無電解めっき法が、大掛かりな装置を必要とせず容易に導電性金属層を形成できる点で好ましい。
【0039】
前記無電解めっき法では、まず基材粒子の表面に、次に行う無電解めっき処理の基点となる触媒層を形成する。触媒層を形成する方法としては、例えば、二塩化パラジウムと二塩化スズとを含む溶液を触媒化試薬とし、これに基材粒子を浸漬することにより基材粒子表面に触媒金属を吸着させ、その後、硫酸や塩酸などの酸や水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液で前記パラジウムイオンを還元することにより、基材粒子表面にパラジウムを析出させる方法(キャタリスト−アクセレレーション法)や、基材粒子を二塩化スズと接触させることによりスズイオンを基材粒子表面に吸着させた後、二塩化パラジウム溶液に浸漬させることにより、基材粒子表面にパラジウムを析出させる方法(センシタイジング−アクチベーション法)などが挙げられる。
【0040】
前記無電解めっき法では、続いて、触媒層を形成した基材粒子表面に、無電解めっき処理を施して導電性金属層を形成する。無電解めっき処理は、還元剤と所望の導電性金属塩を溶解しためっき液中に触媒層を形成した基材粒子を浸漬することにより、触媒を起点として、めっき液中の金属イオンを還元剤で還元し、基材粒子表面に所望の金属を析出させて、導電性金属層を形成するものである。無電解めっき液に含有させる導電性金属塩としては、導電性金属層を構成する金属として先に例示した金属の塩化物、硫酸塩、酢酸塩などが挙げられる。
前記無電解めっき処理は、必要に応じて繰返し行ってもよい。例えば金属種の異なる無電解めっき液を用いて無電解めっき処理を繰返すことにより、基材粒子の表面に異種金属を幾層にも被覆できる。具体的には、基材粒子にニッケルめっきを施してニッケル被覆粒子を得た後、該ニッケル被覆粒子をさらに無電解金めっき液に投入して金置換めっきを行うことにより、最外層が金層で覆われ、その内側にニッケル層を有する導電性粒子が得られる。
【0041】
以上のようにして得られた導電性粒子の平均粒子径は、11μm以下であることが好ましく、より好ましくは6.0μm以下であり、さらに好ましくは4.0μm以下であり、特に好ましくは2.8μm以下である。上述したように導電性粒子の粒子径が前記範囲の如く小さいほど、そのままでは凝集し易くなるため、本発明の樹脂粒子を用いて凝集を抑制する必要性が高まる。導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは1.1μm以上、より好ましくは1.3μm以上、さらに好ましくは1.6μm以上である。
なお、本発明における導電性粒子の平均粒子径は、フロー式粒子像解析装置(例えば、シスメックス社製「FPIA−3000」)により測定される個数平均粒子径を意味するものである。
【0042】
導電性粒子の表面に上述した本発明の樹脂粒子を固定する方法としては、従来公知の被覆方法を採用することができる。例えば、無電解めっき処理後の導電性粒子と本発明の樹脂粒子とを有機溶媒あるいは水性媒体などの液体中に分散させた後、スプレードライを行う方法;有機溶媒あるいは水性媒体などの液体中で導電性粒子の表面に樹脂粒子を付着させた後、導電性粒子と樹脂粒子を化学結合させる方法;導電性粒子の粉体と樹脂粒子の粉体の共存下で高速撹拌機による撹拌やハイブリダイゼーション処理を行う方法;などが挙げられる。
【0043】
樹脂粒子は導電性粒子の表面の少なくとも一部に存在していればよく、導電性粒子の全表面に占める樹脂粒子の存在比率(換言すれば、樹脂粒子による導電性粒子の被覆率)は、好ましくは1%以上70%以下、より好ましくは5%以上60%以下、さらに好ましくは10%以上50%以下である。樹脂粒子による導電性粒子の被覆率が前記範囲であることにより、充分な導通性を確保しつつ、隣接する絶縁化導電性粒子間を確実に絶縁することができる。なお、上記被覆率は、例えば電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて任意の100個の絶縁化導電性粒子の表面を観察したときに、絶縁化導電性粒子の正投影面における樹脂粒子の被覆されている部分と樹脂粒子の被覆されていない部分の面積比率を測定することにより評価できる。
【0044】
(異方性導電材料)
本発明の異方性導電材料は、前記本発明の絶縁化導電性粒子がバインダー樹脂に分散してなるものである。異方性導電材料の形態としては、特に制限されないが、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インクなど、相対向する基材間や電極端子間に設けることで電気的な接続を可能にするものが挙げられる。また、本発明の異方性導電材料には、導通スペーサーおよびその組成物などの液晶表示素子用導通材料も包含される。
【0045】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、従来公知のバインダー樹脂を用いることができる。例えば、(メタ)アクリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などの熱可塑性樹脂;グリシジル基を有するモノマーやオリゴマー及びイソシアネートなどの硬化剤との反応により得られる硬化性樹脂組成物などの光や熱による硬化性樹脂組成物;などが挙げられる。
【0046】
異方性導電フィルムは、例えば、本発明の絶縁化導電性粒子とバインダー樹脂などを含むフィルム形成用組成物に溶媒を加えて液状にし、この液をポリエチレンテレフタレート製などのフィルム上に塗布した後、溶媒を蒸発させることにより得ることができる。得られた異方性導電フィルムは、例えば、電極上に配置され、この異方性導電フィルム上に対向電極を重ね合わせ、加熱圧縮することにより電極間の接続に使用される。
【0047】
異方性導電ペーストは、例えば、本発明の絶縁化導電性粒子とバインダー樹脂などを含む樹脂組成物をペースト状にすることにより得られる。得られた異方性導電ペーストは、例えば、適当なディスペンサーに入れられ、接続すべき電極上に所望の厚さで塗工され、塗工された異方性導電ペースト上に対向電極を重ね合わせ、加熱しながら加圧して樹脂を硬化させることにより、電極間の接続に使用される。
【0048】
異方性導電接着剤は、例えば、本発明の絶縁化導電性粒子とバインダー樹脂などを含む樹脂組成物を所望の粘度に調整することにより得られる。得られた異方性導電接着剤は、異方性導電ペーストと同様、電極上に所望の厚さで塗工した後、対向電極を重ね合わせ、両者を接着することにより電極間の接続に使用される。
【0049】
異方性導電インクは、例えば、本発明の絶縁化導電性粒子とバインダー樹脂などを含む樹脂組成物に溶媒を加えて印刷に適した粘度に調整することにより得られる。得られた異方性導電インクは、例えば、接着すべき電極上にスクリーン印刷し、溶媒を蒸発させた後、異方性導電インクによる印刷面に対向電極を重ね合わせ、加熱圧縮することにより電極間の接続に使用される。
【0050】
本発明の異方性導電材料において、本発明の絶縁化導電性粒子の含有量は、用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、異方導電性材料の全量に対して2〜70体積%が好ましい。より好ましくは5体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上であり、より好ましくは50体積%以下、さらに好ましくは40体積%以下である。絶縁化導電性粒子の含有量が少なすぎると、充分な電気的導通が得られ難い場合があり、一方、絶縁化導電性粒子の含有量が多すぎると、粒子同士が接触してしまい、異方性導電材料としての機能が発揮され難い場合がある。
【0051】
本発明の異方性導電材料におけるフィルム膜厚、ペーストや接着剤の塗工膜厚、印刷膜厚などについては、使用する本発明の絶縁化導電性粒子の粒子径と、接続すべき電極の仕様とを考慮し、接続すべき電極間に絶縁化導電性粒子が狭持され、且つ接続すべき電極が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるように、適宜設定することが好ましい。
【0052】
本発明の異方性導電材料を用いて接続部位間を電気的に接続する際の接続方法は、特に制限されない。例えば、接続時の温度は、好ましくは190℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは150℃以下であり、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。接続時の圧力は、通常1〜100MPaである。接続時間(熱および圧を付加する時間)は、温度や圧力に応じて適宜設定すればよいが、通常10秒〜3600秒である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を意味する。
【0054】
(実施例1)
[樹脂粒子の作製]
攪拌機、温度計および冷却機を備えたステンレス製の反応釜に、脱イオン水820部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8部(有効成分60質量%;以下「DBSNa」と称する)を加え、内温を75℃まで昇温し、同温度に保った。
他方、上記反応釜とは異なる容器で、メタクリル酸メチル(以下「MMA」と称する)140部とジビニルベンゼン(有効成分81質量%;以下「DVB」と称する)60部とを混合して、単量体組成物200部を調製した。
【0055】
上記反応釜内を窒素ガスで置換した後、上記単量体組成物20部(単量体組成物全量の10質量%)、0.4質量%過酸化水素水50部、および0.4質量%L−アスコルビン酸水溶液50部を上記反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。
次いで、上記単量体組成物の残部(単量体組成物全量の90質量%)180部、0.4質量%過酸化水素水450部、および0.4質量%L−アスコルビン酸水溶液450部を、各々異なる投入口より反応釜へ6時間かけて均一に滴下した。その後、内温を90℃まで昇温し、同温度で6時間保持して熟成した後、反応溶液を冷却して、樹脂粒子(1)が分散した樹脂粒子分散液(1)を得た。この分散液中の樹脂粒子(1)の粒子径について、動的光散乱粒度分布測定装置(ピーエスエスジャパン社製「NICOMP380」)で測定したところ、体積平均粒子径は158nm、変動係数は11%であった。
【0056】
[導電性粒子の作製]
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、界面活性剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製「ハイテノール(登録商標)NF−08」)2部を脱イオン水に溶解した水溶液150部を仕込んだ。次いで、予め調整しておいたDVB45部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート50部およびメタクリル酸5部からなる混合物と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−65」)2部とを添加し、乳化分散させて、懸濁液を調製した。得られた懸濁液に、さらに脱イオン水250部を加え、窒素雰囲気下で65℃まで昇温させて、同温度で2時間保持して、ラジカル重合を行った。
【0057】
次に、ラジカル重合で得られた乳濁液を固液分離し、得られたケーキを脱イオン水で洗浄し、続いてメタノールで洗浄し、さらに分級操作を行った後、窒素雰囲気下120℃で2時間真空乾燥して、ビニル重合体粒子を得た。この重合体粒子の粒子径を粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「コールターマルチサイザーIII型」)により測定したところ、個数平均粒子径は2.5μm、変動係数は3.9%であった。
【0058】
上記重合体粒子を基材粒子として、該基材粒子に二塩化スズ(SnCl)溶液によるセンシタイジングを施し、続いて二塩化パラジウム(PdCl)溶液によるアクチベーションを行い、基材粒子表面にPd核を形成した。このようにしてPd核を形成した粒子を無電解ニッケルめっき浴に浸漬することにより粒子表面にNiめっきを施し、次いで、得られた粒子のニッケル層表面にさらに置換めっきにより金めっきを施して、金属層の膜厚が0.1μmであり、個数平均粒子径が2.7μmである導電性粒子(1)を得た。
【0059】
なお、本明細書の実施例において、導電性粒子の個数平均粒子径、金属層の膜厚は、以下のようにして測定し算出した。
導電性粒子の個数平均粒子径:フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製「FPIA−3000」)により測定し、個数基準の平均粒子径を導電性粒子の個数平均粒子径とした。
金属層の膜厚:基材粒子に用いる重合体粒子の個数平均粒子径を上述のフロー式粒子像解析装置により測定し、得られた個数平均粒子径と上述の測定により得られた導電性粒子の個数平均粒子径との差分の1/2を金属層の膜厚とした。
【0060】
[絶縁化導電性粒子の作製]
樹脂粒子分散液(1)を、粒子濃度が5.0質量%になるように脱イオン水で希釈した。得られた樹脂粒子分散液100部に導電性粒子(1)50部を加え、均一に分散させた後、エバポレーターで水を留去して、導電性粒子の表面を樹脂粒子で被覆した絶縁化導電性粒子(1)を得た。
【0061】
[異方性導電材料の作製]
絶縁被覆導電性微粒子(1)20部、バインダー樹脂としてエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「YL980」)65部、エポキシ硬化剤(旭化成社製「ノバキュア(登録商標)HX3941HP」)35部、および1mmφのジルコニアビーズ200部を混合し、30分間ビーズミル分散を行い、異方性導電材料として異方性導電接着剤(1)を得た。
【0062】
得られた異方性導電接着剤を用いて導電接続構造体を作製し、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
導電接続構造体の作製は、まず、離型フィルム(シリコーン樹脂またはフッ素樹脂により片面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム)の離型処理面に、乾燥厚みが25μmとなるように異方性導電接着剤を塗布することにより接着層を形成して、離型フィルムの片面に接着剤層を備えた異方性導電シートを作製した。
次に、得られた異方性導電シートから離型フィルムを剥がし、接着剤層のみを、150μm幅のパターンを有するITO透明電極膜が内面に形成された2枚のITO付きガラス基板の間に挟み、1MPa、185℃で15秒間加熱加圧して、導電接続構造体を得た。
【0063】
<絶縁化導電性粒子の分散状態>
導電接続構造体を片面側から顕微鏡により観察し、隣接する電極間に挟まれた絶縁化導電性粒子の分散状態を顕微鏡により観察し、下記の基準に従い判定した。
◎:個々の絶縁化導電性粒子が均一に分散しており、2個以上の絶縁化導電性粒子が連結した凝集体が認められない。
○:2〜3個の絶縁化導電性粒子が連結した凝集体が認められる。
△:4〜9個の絶縁化導電性粒子が連結した凝集体が認められる。
×:10個以上の絶縁化導電性粒子が連結した凝集体が認められる。
【0064】
<導通性>
導電接続構造体を測定試料として、対向する電極間の導通抵抗を四端子法により測定した。n=50で測定を行い、抵抗値が20Ω以下となった割合(%)を求めた。
【0065】
<絶縁性>
導電接続構造体を測定試料として、隣接する電極間の絶縁抵抗を四端子法により測定した。n=50で測定を行い、抵抗値が100MΩ以上となった割合(%)を求めた。
【0066】
(実施例2)
実施例1の[樹脂粒子の作製]において、単量体組成物を調製するにあたり、MMA160部とDVB40部とを混合したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子(2)が分散した樹脂粒子分散液(2)を得た。この分散液中の樹脂粒子(2)の粒子径について、実施例1と同様に測定したところ、体積平均粒子径は140nm、変動係数は9%であった。
次いで、実施例1の[絶縁化導電性粒子の作製]において、樹脂粒子分散液(1)に代えて樹脂粒子分散液(2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして絶縁化導電性粒子(2)を得、さらに実施例1の[異方性導電材料の作製]において、絶縁化導電性粒子(1)に代えて絶縁化導電性粒子(2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして異方性導電接着剤(2)を得た。
得られた異方性導電接着剤について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(実施例3)
実施例1の[樹脂粒子の作製]において、単量体組成物を調製するにあたり、MMA180部とDVB20部とを混合したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子(3)が分散した樹脂粒子分散液(3)を得た。この分散液中の樹脂粒子(3)の粒子径について、実施例1と同様に測定したところ、体積平均粒子径は130nm、変動係数は3%であった。
次いで、実施例1の[絶縁化導電性粒子の作製]において、樹脂粒子分散液(1)に代えて樹脂粒子分散液(3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして絶縁化導電性粒子(3)を得、さらに実施例1の[異方性導電材料の作製]において、絶縁化導電性粒子(1)に代えて絶縁化導電性粒子(3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして異方性導電接着剤(3)を得た。
得られた異方性導電接着剤について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
(実施例4)
実施例1の[樹脂粒子の作製]において、単量体組成物を調製するにあたり、MMA190部とDVB10部とを混合したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子(4)が分散した樹脂粒子分散液(4)を得た。この分散液中の樹脂粒子(4)の粒子径について、実施例1と同様に測定したところ、体積平均粒子径は123nm、変動係数は9%であった。
次いで、実施例1の[絶縁化導電性粒子の作製]において、樹脂粒子分散液(1)に代えて樹脂粒子分散液(4)を用いたこと以外は実施例1と同様にして絶縁化導電性粒子(4)を得、さらに実施例1の[異方性導電材料の作製]において、絶縁化導電性粒子(1)に代えて絶縁化導電性粒子(4)を用いたこと以外は実施例1と同様にして異方性導電接着剤(4)を得た。
得られた異方性導電接着剤について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(実施例5)
実施例1の[導電性粒子の作製]において、界面活性剤として用いたポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の使用量を2部から5部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、重合体粒子を得た。この重合体粒子の粒子径を粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「コールターマルチサイザーIII型」)により測定したところ、個数平均粒子径は1.8μm、変動係数は4.2%であった。この重合体粒子を基材粒子として用いたこと以外は実施例1と同様にして、金属層の膜厚が0.1μmであり、個数平均粒子径が2.0μmである導電性粒子(2)を得た。
次いで、実施例1の[絶縁化導電性粒子の作製]において、導電性粒子(1)に代えて導電性粒子(2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして絶縁化導電性粒子(5)を得、さらに実施例1の[異方性導電材料の作製]において、絶縁化導電性粒子(1)に代えて絶縁化導電性粒子(5)を用いたこと以外は実施例1と同様にして異方性導電接着剤(5)を得た。
得られた異方性導電接着剤について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
(比較例1)
実施例1の[樹脂粒子の作製]において、単量体組成物を調製するにあたり、MMA180部とエチレングリコールジメタクリレート20部とを混合したこと以外は実施例1と同様にして、比較用の樹脂粒子(C1)が分散した樹脂粒子分散液(C1)を得た。この分散液中の樹脂粒子(C1)の粒子径について、実施例1と同様に測定したところ、体積平均粒子径は150nm、変動係数は8%であった。
次いで、実施例1の[絶縁化導電性粒子の作製]において、樹脂粒子分散液(1)に代えて樹脂粒子分散液(C1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして絶縁化導電性粒子(C1)を得、さらに実施例1の[異方性導電材料の作製]において、絶縁化導電性粒子(1)に代えて絶縁化導電性粒子(C1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして異方性導電接着剤(C1)を得た。
得られた異方性導電接着剤について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
(比較例2)
実施例1の[樹脂粒子の作製]において、単量体組成物を調製するにあたり、スチレン180部とDVB20部とを混合したこと以外は実施例1と同様にして、比較用の樹脂粒子(C2)が分散した樹脂粒子分散液(C2)を得た。この分散液中の樹脂粒子(C2)の粒子径について、実施例1と同様に測定したところ、体積平均粒子径は145nm、変動係数は10%であった。
次いで、実施例1の[絶縁化導電性粒子の作製]において、樹脂粒子分散液(1)に代えて樹脂粒子分散液(C2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして絶縁化導電性粒子(C2)を得、さらに実施例1の[異方性導電材料の作製]において、絶縁化導電性粒子(1)に代えて絶縁化導電性粒子(C2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして異方性導電接着剤(C2)を得た。
得られた異方性導電接着剤について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表1から、実施例1〜5のようにMMA−DVB系共重合体からなる本発明の樹脂粒子であれば、導電性粒子の表面を被覆して絶縁化導電性粒子としたときに、該絶縁化導電性粒子は導電接続構造体中で凝集することなく均一に分散した状態となり、その結果、導電接続構造体において、対向する電極間の導通は良好に保ちつつ、横導通は抑制できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子の表面に存在して該導電性粒子を絶縁するための樹脂粒子であって、(メタ)アクリル酸メチルとジビニルベンゼンとを含む単量体組成物を重合させた(メタ)アクリル系架橋粒子重合体からなることを特徴とする樹脂粒子。
【請求項2】
前記単量体組成物中に占めるジビニルベンゼンの含有割合が4質量%以上である、請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項3】
平均粒子径が500nm以下である、請求項1または2に記載の樹脂粒子。
【請求項4】
前記重合には乳化重合法を採用する、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項5】
前記乳化重合にはレドックス系重合開始剤を用いる、請求項4に記載の樹脂粒子。
【請求項6】
前記乳化重合にはアニオン系乳化剤を用いる、請求項4または5に記載の樹脂粒子。
【請求項7】
導電性粒子の表面の少なくとも一部に請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂粒子が存在してなることを特徴とする絶縁化導電性粒子。
【請求項8】
前記導電性粒子の平均粒子径が11μm以下である、請求項7に記載の絶縁化導電性粒子。
【請求項9】
請求項7または8に記載の絶縁化導電性粒子がバインダー樹脂に分散してなることを特徴とする異方性導電材料。

【公開番号】特開2012−62435(P2012−62435A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209312(P2010−209312)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】