説明

樹脂粒子の製造方法

【課題】 樹脂の溶剤溶液と高圧二酸化炭素を用い、容易な脱溶剤方法且つ高い生産性で安定的に粒度分布がシャープな樹脂粒子を得る。
【解決手段】 樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)、微粒子(A)又は(A)が(S)中に分散された微粒子分散液(P)、及び圧力が1.5MPa以上の二酸化炭素(X)を混合して、(b)と(S)を含有する樹脂粒子(B1)の表面に(A)が付着された樹脂粒子(C1)が(X)及び(S)を含有する分散媒体(X0)中に分散された分散体(Y)を製造し、ついで(C1)と(X0)から(X)及び(S)を除去する工程を含む、(b)を含有する樹脂粒子(B)の表面に(A)が付着され、又は皮膜化された樹脂粒子(C)の製造方法において、(X)及び(S)の除去時、(Y)の温度をTa〔(L)のDSC測定降温時における発熱ピーク温度〕[℃]以下に冷却後、(Y)に(S)と異なる溶剤(S3)を加える(C)の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高圧の二酸化炭素を利用した、粒径が均一である樹脂粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超臨界流体を利用した樹脂粒子の製造方法として、樹脂の溶剤溶液を超臨界状態または液体状態の二酸化炭素中に分散させて、溶剤を含有する樹脂粒子の分散体を作製した後、この分散体に二酸化炭素を混合して樹脂粒子中から溶剤を二酸化炭素の相に抽出させて粒子を得る方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながらこの方法では、粒子として安定に得るために樹脂粒子中の溶剤を脱溶剤する必要があり、このためには分散体に液状又は超臨界状態の二酸化炭素を混合して樹脂粒子から溶剤を二酸化炭素の相に抽出し、その後減圧する一連の操作を行なう必要があり、特に安定的に粒度分布がシャープな樹脂粒子を得ようとする場合、樹脂の組成や製造条件によっては、得られる粒子に対して使用する二酸化炭素量が多くなり、かつ工程時間が長くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−52005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、樹脂の溶剤溶液と超臨界状態または液体状態の二酸化炭素等の高圧二酸化炭素を用いて、容易な脱溶剤方法で、且つ、高い生産性で粒度分布がシャープな樹脂粒子を安定的に得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)、微粒子(A)または微粒子(A)が溶剤(S)中に分散された微粒子分散液(P)、および圧力が1.5MPa以上の二酸化炭素(X)を混合して、樹脂(b)と溶剤(S)を含有する樹脂粒子(B1)の表面に微粒子(A)が付着された樹脂粒子(C1)が二酸化炭素(X)および溶剤(S)を含有する分散媒体(X0)中に分散された分散体(Y)を製造し、ついで樹脂粒子(C1)と分散媒体(X0)から二酸化炭素(X)および溶剤(S)を除去する工程を含む、樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)の表面に微粒子(A)が付着され、または皮膜化されてなる樹脂粒子(C)の製造方法において、(C1)と(X0)から(X)および(S)を除去する際、分散体(Y)の温度を下記Ta[℃]以下に冷却した後、分散体(Y)に溶剤(S3)を加える工程を含む樹脂粒子(C)の製造方法である。
Ta:樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)のDSC測定降温時における発熱ピーク温度[℃]
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法によれば、超臨界状態または液体状態の二酸化炭素等の高圧二酸化炭素を用いて、容易な脱溶剤方法で、且つ、高い生産性で粒度分布がシャープな樹脂粒子を安定的に得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】樹脂粒子の作成に用いた実験装置のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を詳述する。
本発明の製造方法に用いる微粒子(A)としては、結晶性樹脂(a1)、非結晶性樹脂(a2)、及び無機化合物(a3)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる微粒子が挙げられる。非結晶性樹脂(a2)としては、架橋性の非結晶性樹脂が好ましい。
これらの中では、結晶性樹脂(a1)および非結晶性樹脂(a2)が好ましく、結晶性樹脂(a1)がさらに好ましい。
【0009】
結晶性樹脂(a1)の融点は、40〜110℃が好ましく、さらに好ましくは45〜100℃、とくに好ましくは50〜90℃である。結晶性樹脂(a1)の融点が40℃以上であれば本発明の製造方法により得られる樹脂粒子(C)が長期間の保管でもブロッキングしにくい。110℃以下であれば低温定着性が良好である。
本発明における融点は、JIS K7122(1987)「プラスチックの転移熱測定方法」に準拠して、示差走査熱量測定装置(DSC)で測定した、初回昇温時の溶融による吸熱ピークの温度(℃)を意味する。
【0010】
結晶性樹脂(a1)の結晶化度は、二酸化炭素(X)による膨潤抑制、及び樹脂粒子(B)への吸着性の観点より、好ましくは20〜95%であり、より好ましくは30〜80%である。結晶化度は、DSCを用いて吸熱ピークの面積から融解熱量〔ΔHm(J/g)〕を求め、測定されたΔHmに基づき以下の式により結晶化度(%)を算出する。
結晶化度=(ΔHm/a)×100
上式中、aは結晶化度が100%となるように外挿した場合の融解熱量である。
【0011】
結晶性樹脂(a1)の数平均分子量〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定、以下Mnと略記する場合がある。〕は、電子写真用トナーとして用いた場合のキャリア汚染性の観点より、好ましくは1000以上であり、更に好ましくは1500以上、特に好ましくは2000以上である。また、溶融粘度の観点より、好ましくは1000000以下であり、更に好ましくは500000以下、特に好ましくは300000以下、最も好ましくは100000以下である。
【0012】
結晶性樹脂(a1)の組成は特に限定されないが、好ましい具体例としては、例えば、脂肪族もしくは芳香族ポリエステル、脂肪族ポリウレタン及び/又はポリウレア、アルキル(メタ)アクリレートを必須構成単位とする結晶性ビニル樹脂、(メタ)アクリロニトリルと結晶性ビニルモノマーを必須構成単位とする結晶性ビニル樹脂(a14)、結晶性ポリオレフィン(a15)等が挙げられる。
【0013】
脂肪族もしくは芳香族ポリエステルとしては、後述のジオール(11)、ジカルボン酸(13)を使用することができ、特に炭素数2〜50のアルキレン鎖を有する直鎖脂肪族ジオールと炭素数2〜50のアルキレン鎖を有する直鎖脂肪族ジカルボン酸を必須構成単位とし、かつ、該ジオールのアルキレン鎖の炭素数と該ジカルボン酸のアルキレン鎖の炭素数の合計数が10〜52であり、必要により炭素数6〜30の芳香族ジカルボン酸を構成単位とする結晶性ポリエステル(a11)が好ましい。
保存安定性の観点から、上記ジオールのアルキレン鎖の炭素数と上記ジカルボン酸のアルキレン鎖の炭素数の合計数が、10以上が好ましく、更に好ましくは12以上であり、特に好ましくは14以上である。また、定着性の観点から、52以下が好ましく、更に好ましくは45以下であり、特に好ましくは40以下、最も好ましくは30以下である。
【0014】
上記炭素数2〜50のアルキレン鎖を有する直鎖脂肪族ジオールのアルキレン鎖の炭素数は、結晶性の観点から、2以上が好ましく、更に好ましくは3以上であり、特に好ましくは4以上である。また、定着性の観点から50以下が好ましく、更に好ましくは45以下であり、特に好ましくは40以下、最も好ましくは30以下である。直鎖脂肪族ジオールとして好ましいものは、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及び1,10−デカンジオールである。
炭素数2〜50のアルキレン鎖を有する直鎖脂肪族ジカルボン酸のアルキレン鎖の炭素数は、結晶性の観点から、2以上が好ましく、更に好ましくは3以上であり、特に好ましくは4以上である。また、定着性の観点から50以下が好ましく、更に好ましくは45以下であり、特に好ましくは40以下、最も好ましくは30以下である。直鎖脂肪族ジカルボン酸として好ましいものは、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、及びオクタデカンジカルボン酸である。
また、芳香族ポリエステルの保存安定性の観点から、芳香族ジカルボン酸の炭素数は6〜30が好ましく、更に好ましくは8〜24あり、特に好ましくは8〜20である。炭素数6〜30の芳香族ジカルボン酸として好ましいものは、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸である。
【0015】
また、芳香族ポリエステルの場合は、樹脂強度の観点から、ジカルボン酸は直鎖脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の併用が好ましく、直鎖脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の合計に対する芳香族ジカルボン酸の比率は、好ましくは90重量以下、更に好ましくは1〜85重量%、特に好ましくは3〜80重量%である。
【0016】
脂肪族ポリウレタン及び/又はポリウレアとしては、後述のジオール(11)、ジアミン〔後述のポリアミン(16)のうち2価のもの〕、及びジイソシアネート〔後述のポリイソシアネート(15)のうち2価のもの〕を使用することができ、特に炭素数2〜50のアルキレン鎖を有する直鎖脂肪族ジオール及び/又は炭素数2〜50のアルキレン鎖を有する直鎖脂肪族ジアミンと、炭素数2〜50のアルキレン鎖を有する直鎖脂肪族ジイソシアネートを必須構成単位とし、かつ、該ジオール及び/又はジアミンのアルキレン鎖の平均炭素数と該ジイソシアネートのアルキレン鎖の炭素数の合計数が10〜52である結晶性ポリウレタン及び/又はポリウレア(a12)が好ましい。
なお、炭素数2〜50のアルキレン鎖を有する直鎖脂肪族ジオールと後述のジカルボン酸(13)とを反応させて得られるポリエステルジオールと炭素数2〜50のアルキレン鎖を有する直鎖脂肪族ジイソシアネートから得られるポリウレタンも(a12)に含まれる。
脂肪族ポリウレタン及び/又はポリウレアは、保存安定性の観点から、ジオール及び/又はジアミンのアルキレン鎖の炭素数(ジオールとジアミンの混合物を使用する場合は、その重量比で平均されたアルキレン鎖の炭素数)とジイソシアネートのアルキレン鎖の炭素数の合計数が、10以上が好ましく、更に好ましくは12以上であり、特に好ましくは14以上である。また、定着性の観点から、52以下が好ましく、更に好ましくは45以下であり、特に好ましくは40以下、最も好ましくは30以下である。
【0017】
上記炭素数2〜50のアルキレン鎖を有する直鎖脂肪族ジオールの、アルキレン鎖の好ましい炭素数、及び好ましい具体例は、結晶性ポリエステル(a11)における場合と同様である。
上記炭素数2〜50のアルキレン鎖を有する直鎖脂肪族ジアミンのアルキレン鎖の炭素数は、結晶性の観点から、2以上が好ましく、更に好ましくは3以上であり、特に好ましくは4以上である。また、定着性の観点から50以下が好ましく、更に好ましくは45以下であり、特に好ましくは40以下、最も好ましくは30以下である。直鎖脂肪族ジアミンとして好ましいものは、テトラメチレンジアミン、及びヘキサメチレンジアミンである。
また、上記炭素数2〜50のアルキレン鎖を有する直鎖脂肪族ジイソシアネートのアルキレン鎖の炭素数は、結晶性の観点から、2以上が好ましく、更に好ましくは3以上であり、特に好ましくは4以上である。また、定着性の観点から50以下が好ましく、更に好ましくは45以下であり、特に好ましくは40以下、最も好ましくは30以下である。直鎖脂肪族ジイソシアネートとして好ましいものは、テトラメチレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0018】
アルキル(メタ)アクリレートを必須構成単位とする結晶性ビニル樹脂としては、アルキル基の炭素数が12〜50であるアルキル(メタ)アクリレートを必須構成単位とする結晶性ビニル樹脂(a13)が好ましい。保存安定性の観点から、そのアルキル基の炭素数は、12以上であることが好ましく、更に好ましくは14以上であり、特に好ましくは18以上である。また、定着性の観点から、50以下が好ましく、更に好ましくは40以下であり、特に好ましくは30以下である。保存安定性の観点からアルキル基は直鎖が好ましい。アルキル基の炭素数が12〜50であるアルキル(メタ)アクリレートとして好ましいものは、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、及びベヘニルアクリレートである。
アルキル(メタ)アクリレートを必須構成単位とする結晶性ビニル樹脂は、アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体でも、他の単量体との共重合体でもよい。他の単量体としては、後述のビニルモノマーを適宜選択することができる。
結晶性ビニル樹脂(a13)中のアルキル基の炭素数が12〜50であるアルキル(メタ)アクリレートの構成単位の含有量は、好ましくは40重量%以上、更に好ましくは45重量%以上、とくに好ましくは60重量%以上である。
なお、本発明において、アルキル(メタ)アクリレートとは、アルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタアクリレートを意味し、以下同様の記載法を用いる。
【0019】
(メタ)アクリロニトリルと結晶性ビニルモノマーを必須構成単位とする結晶性ビニル樹脂(a14)としては、樹脂粒子への付着性の観点から、(メタ)アクリロニトリルの構成単位の含有量が0.01〜40重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.05〜35重量%であり、特に好ましくは0.1〜30重量%である。
併用する結晶性ビニルモノマーとしては、結晶性のビニル樹脂が形成され得るものであれば特に限定されないが、上記のアルキル基の炭素数が12〜50であるアルキル(メタ)アクリレート、及びエチレン等が挙げられる。
【0020】
結晶性ポリオレフィン(a15)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0021】
脂肪族もしくは芳香族ポリエステルの製造方法としては、低分子ポリオールおよび/またはMn1000以下のポリアルキレンエーテルジオールとポリカルボン酸とを反応させる方法、ラクトンの開環重合による方法、低分子ジオールと低級アルコール(メタノールなど)の炭酸ジエステルとを反応させる方法などの公知の製造方法が挙げられる。
【0022】
脂肪族ポリウレタン及び/又はポリウレアの製造方法としては、低分子ポリオール(上記の方法で得られるポリエステルポリオールを含む)及び/又は低分子量ジアミンとジイソシアネートを反応させる方法などの公知の製造方法が挙げられる。
【0023】
アルキル(メタ)アクリレートを必須構成単位とする結晶性ビニル樹脂、および(メタ)アクリロニトリルと結晶性ビニルモノマーを必須構成単位とする結晶性ビニル樹脂の製造方法としては、溶液重合、塊状重合、懸濁重合などの公知のビニルモノマーの重合法が挙げられる。
【0024】
ポリオレフィンの製造方法としては、付加重合等の公知の重合法が挙げられる。
【0025】
結晶性樹脂(a1)の中で、特に好ましいものは、(a11)、(a12)、(a13)、および(a14)であり、最も好ましくは(a13)である。
【0026】
非結晶性樹脂(a2)としては、例えばビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート、セルロース及びこれらの混合物等が挙げられる。非結晶性樹脂(a2)としては、架橋性の非結晶性樹脂が好ましい。
(a2)の組成は特に限定されず、通常用いられている樹脂でよい。
例えば、架橋性ビニル樹脂としては、2個以上のビニル重合性官能基を有するビニルモノマー(ジビニルベンゼン等)を含むビニルモノマーの共重合体等が挙げられる。
架橋性ポリエステル樹脂としては、ポリオールとポリカルボン酸の重縮合物であって、ポリオール及び/又はポリカルボン酸の少なくとも一部として、後述の3価以上のポリオール(12)及び/又は3価以上のポリカルボン酸(14)を用いて得られるポリエステル樹脂等が挙げられる。
同様に、他の樹脂の場合も架橋性のモノマーを少なくとも一部用いて得られる樹脂がより好ましい。
【0027】
微粒子(A)として、結晶性樹脂(a1)と非結晶性樹脂(a2)を併用してもよい。(a1)と(a2)の混合物の融点は、50〜150℃であることが好ましい。(a2)の含有量は、(a1)と(a2)の合計重量に対して、0〜50重量%であることが好ましい。また非結晶性樹脂(a2)を結晶性樹脂(a1)で被覆した微粒子であってもよい。
【0028】
結晶性樹脂(a1)および/または非結晶性樹脂(a2)を含有する微粒子(A)の製法はいかなる製法であってもよいが、具体例としては、乾式で製造する方法〔微粒子(A)を構成する材料(a)をジェットミル等の公知の乾式粉砕機により乾式粉砕する方法〕、湿式で製造する方法〔(a)の粉末を有機溶剤中に分散し、ビーズミルやロールミル等の公知の湿式分散機により湿式粉砕する方法、(a)の溶剤溶液をスプレードライヤー等により噴霧乾燥する方法、(a)の溶剤溶液を貧溶媒添加や冷却によって過飽和させ析出させる方法、(a)の溶剤溶液を水あるいは有機溶剤中に分散する方法、(a)の前駆体を水中で乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、シード重合法、懸濁重合法等により重合させる方法、(a)の前駆体を有機溶剤中で分散重合等により重合させる方法〕が挙げられる。また上記方法により非結晶性樹脂(a2)の微粒子(A’)を合成した後、公知のコーティング法、シード重合法、メカノケミカル法等により、結晶性樹脂(a1)を(A’)表面に形成してもよい。これらのうち、微粒子(A)の製造しやすさの観点から、湿式で製造する方法が好ましく、さらに好ましくは、析出させる方法、乳化重合法、分散重合である。
【0029】
微粒子(A)はそのまま用いてもよく、また樹脂粒子(B)への吸着性を持たせたり、本発明の製造方法により得られる樹脂粒子(C)の粉体特性や電気特性を改質するために、例えばシラン系、チタネート系、アルミネート系等のカップリング剤による表面処理、各種界面活性剤による表面処理、ポリマーによるコーティング処理等により表面改質されていてもよい。微粒子(A)及び樹脂粒子(B)のいずれか一方が、少なくともその表面に酸性官能基を有し、他の一方が少なくともその表面に塩基性官能基を有することが好ましい。
【0030】
微粒子(A)及び樹脂粒子(B)はその内部に酸性官能基又は塩基性官能基を有していてもよい。酸性官能基としてはカルボン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。塩基性官能基としては第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基等が挙げられる。
【0031】
微粒子(A)及び樹脂粒子(B)は少なくともその表面に酸性官能基又は塩基性官能基を付与するために、結晶性樹脂(a1)、樹脂(b)として酸性官能基又は塩基性官能基を有する樹脂を使用してもよいし、微粒子(A)及び樹脂粒子(B)にこれら官能基を付与するために表面処理してもよい。
【0032】
酸性官能基を有する結晶性樹脂(a1)としては、酸価を有する脂肪族ポリエステル、酸性官能基を有する単量体(例えば、後述のカルボキシル基含有ビニルモノマー、スルホン基含有ビニルモノマーなど)を共重合したビニル樹脂等が挙げられる。
【0033】
塩基性官能基を有する結晶性樹脂(a1)としては、塩基性官能基を有する単量体(例えば、後述のアミノ基含有ビニルモノマーなど)を共重合したビニル樹脂等が挙げられる。
【0034】
無機化合物(a3)としては、例えば、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化銅、酸化スズ、酸化クロム、酸化アンチモン、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化ランタン、酸化タンタル、酸化テルビウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジウム、フェライト類等の金属酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム等の金属水酸化物、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルイサイト等の金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維等の金属硫酸塩、シリカ、珪酸カルシウム(ウォラストナイト、ゾノトライト)、カオリン、クレー、タルク、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク等の金属珪酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素等の金属窒化物、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛アルミニウムボレート等の金属チタン酸塩、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム等の金属ホウ酸塩、リン酸三カルシウム等の金属燐酸塩、硫化モリブデン等の金属硫化物、炭化珪素等の金属炭化物、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維等の炭素類、金、銀その他の無機粒子が挙げられる。これらの中で好ましくは、シリカおよび金属炭酸塩である。
【0035】
本発明において、微粒子(A)と二酸化炭素(X)とを混合する方法はいかなる方法でもよく、例えば、容器内に(A)及び(X)を仕込み、攪拌や超音波照射等により、(A)を直接(X)中に分散する方法や、微粒子(A)が溶剤(S)中に分散された微粒子分散液(P)を(X)中に導入する方法等が挙げられる。
【0036】
二酸化炭素(X)の重量に対する微粒子(A)の重量比率(重量%)としては、50以下が好ましく、更に好ましくは30以下であり、特に好ましくは0.1〜20である。この範囲であれば、効率よく樹脂粒子(C1)を製造できる。
【0037】
溶剤(S)としては、例えば、ケトン溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル溶剤(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、環状エーテル等)、エステル溶剤(酢酸エステル、ピルビン酸エステル、2−ヒドロキシイソ酪酸エステル、乳酸エステル等)、アミド溶剤(ジメチルホルムアミド等)、アルコール溶剤(メタノール、エタノール、イソプロパノール、フッ素含有アルコール等)、芳香族炭化水素溶剤(トルエン、キシレン等)、および脂肪族炭化水素溶剤(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等)などが挙げられる。これらの溶剤の2種以上の混合溶剤、または、これらの有機溶剤と水との混合溶剤を用いることもできる。
微粒子分散液(P)に用いる溶剤(S)としては、標準状態(23℃、0.1MPa)における樹脂(a1)または(a2)の溶剤(S)不溶分が、50重量%以上である溶剤が好ましい。溶剤(S)不溶分が50重量%以上であると、樹脂粒子(C)の粒度分布が狭くなる。この点と微粒子(A)の分散性から、溶剤(S)の好ましい具体例としては、脂肪族炭化水素溶剤(デカン、ヘキサン、ヘプタンなど)、エステル溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)及びケトン溶剤(アセトン、メチルエチルケトンなど)である。樹脂(a1)または(a2)の溶剤(S)不溶分の測定方法は、後述する樹脂(b)の場合と同様である。
【0038】
微粒子分散液(P)中の微粒子(A)と溶剤(S)の重量比率(重量%)は、特に制限はないが、溶剤(S)に対して、微粒子(A)が60以下が好ましく、更に好ましくは0.1〜50である。この範囲であれば、効率よく微粒子(A)を(X)中に導入することができる。
【0039】
微粒子(A)が溶剤(S)中に分散された微粒子分散液(P)を作製する方法としては特に制限はないが、具体例としては、溶剤(S)中の湿式で製造する方法〔微粒子(A)を構成する材料(a)の粉末を溶剤(S)中に分散し、ビーズミルやロールミル等の公知の湿式分散機により湿式粉砕する方法、(a)の溶剤溶液をスプレードライヤー等により噴霧乾燥したのち溶剤(S)中に分散させる方法、(a)の溶剤溶液に溶剤(S)のうち貧溶剤を添加し過飽和させ析出させる方法、(a)の溶剤溶液を溶剤(S)のうち貧溶剤中に分散する方法、(a)の前駆体を溶剤(S)中で、乳化重合、分散重合等により重合させる方法〕が挙げられる。また上記方法により非結晶性樹脂(a2)の微粒子(A’)の分散液(P)を合成した後、公知のコーティング法、シード重合法、メカノケミカル法等により、結晶性樹脂(a1)を(A’)表面に形成してもよい。これらのうち、微粒子分散液(P)の製造しやすさの観点から、(a)の溶剤溶液を溶剤(S)に分散する方法、析出させる方法、乳化重合法、分散重合法が好ましく、さらに好ましくは、(a)の溶剤溶液を溶剤(S)に分散する方法、乳化重合法、分散重合法である。
【0040】
本発明の製造方法に用いる微粒子(A)の粒径は、形成される樹脂粒子(B)および樹脂粒子(C)の粒径よりも小さい。粒径比[微粒子(A)の体積平均粒径]/[本発明の製造方法により得られる樹脂粒子(C)の体積平均粒径]の値は、好ましくは0.001〜0.2、さらに好ましくは0.002〜0.1、とくに好ましくは0.01〜0.08である。上記範囲内であると(A)が(B)の表面に効率よく吸着するため、得られる(C)の粒度分布が狭くなる。
【0041】
微粒子(A)の体積平均粒径は、所望の粒径の樹脂粒子(C)を得るのに適した粒径になるように、上記粒径比の範囲で適宜調整することができる。(A)の体積平均粒径は、一般的には、0.0005〜30μmが好ましい。さらに好ましくは0.01〜20μm、特に好ましくは0.04〜10μmである。ただし、例えば、体積平均粒径1μmの樹脂粒子(C)を得たい場合には、好ましくは0.0005〜0.3μm、特に好ましくは0.001〜0.2μmの範囲、10μmの樹脂粒子(C)を得たい場合には、好ましくは0.005〜3μm、特に好ましくは0.05〜2μm、100μmの樹脂粒子(C)を得たい場合には、好ましくは0.05〜30μm、特に好ましくは0.1〜20μmである。なお、体積平均粒径は、動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば LB−550:堀場製作所製)、レーザー式粒度分布測定装置(例えば LA−920:堀場製作所製)、マルチサイザーIII(ベックマン・コールター社製)等で測定できる。
【0042】
本発明の製造方法において、樹脂粒子(B)は樹脂(b)より構成される。樹脂(b)としては、熱可塑性樹脂(b1)、又は該熱可塑性樹脂を微架橋した樹脂(b2)、又は熱可塑性樹脂を海成分、硬化樹脂を島成分とするポリマーブレンド(b3)が挙げられ、2種以上を併用してもよい。熱可塑性樹脂(b1)としては、例えばビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の分散体が得られやすいという観点からビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂およびそれらの併用である。また、(b1)は非結晶性樹脂(b11)であっても結晶性樹脂(b12)であってもよい。
【0043】
熱可塑性樹脂(b1)が非結晶性樹脂(b11)の場合、ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合または共重合したポリマーである。ビニルモノマーとしては、下記(1)〜(10)が挙げられる。
(1)ビニル炭化水素:
(1−1)脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類、例えばエチレン、プロピレン、これら以外のα−オレフィン等;アルカジエン類、例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン。
(1−2)脂環式ビニル炭化水素:モノ−もしくはジ−シクロアルケンおよびアルカジエン類、例えば(ジ)シクロペンタジエン等;テルペン類、例えばピネン等。
(1−3)芳香族ビニル炭化水素:スチレンおよびそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキルおよび/またはアルケニル)置換体、例えばα−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン等;およびビニルナフタレン。
(2)カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその塩:炭素数3〜30の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物およびそのモノアルキル(炭素数1〜24)エステル、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマー。
(3)スルホン基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物及びこれらの塩:炭素数2〜14のアルケンスルホン酸、例えばビニルスルホン酸;およびその炭素数2〜24のアルキル誘導体、例えばα−メチルスチレンスルホン酸等;スルホ(ヒドロキシ)アルキル−(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アクリルアミド、例えば、スルホプロピル(メタ)アクリレート、および硫酸エステルもしくはスルホン酸基含有ビニルモノマー;ならびそれらの塩等。
【0044】
(4)燐酸基含有ビニルモノマー及びその塩:(メタ)アクリロイルオキシアルキル(C1〜C24)燐酸モノエステル、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜24)ホスホン酸類、例えば2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸。なお、上記(2)〜(4)の塩としては、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩もしくは4級アンモニウム塩が挙げられる。
(5)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー:ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、庶糖アリルエーテル等。
【0045】
(6)含窒素ビニルモノマー:
(6−1)アミノ基含有ビニルモノマー:アミノエチル(メタ)アクリレート等、
(6−2)アミド基含有ビニルモノマー:(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド等、
(6−3)ニトリル基含有ビニルモノマー:(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレート等、
(6−4)4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマー:ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジアリルアミン等の3級アミン基含有ビニルモノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等、
(6−5)ニトロ基含有ビニルモノマー:ニトロスチレン等。
(7)エポキシ基含有ビニルモノマー:グルシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、p−ビニルフェニルフェニルオキサイド等。
(8)ハロゲン元素含有ビニルモノマー:塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン、クロロプレン等。
【0046】
(9)ビニルエステル、ビニル(チオ)エーテル、ビニルケトン、ビニルスルホン類:
(9−1)ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα−エトキシアクリレート、炭素数1〜50のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等]、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン類[ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等]等、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニルモノマー[ポリエチレングリコール(Mn300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(以下、エチレンオキサイドをEOと記載する。)10モル付加物(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物(メタ)アクリレート等]、ポリ(メタ)アクリレート類[多価アルコール類のポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等、
(9−2)ビニル(チオ)エーテル、例えばビニルメチルエーテル等、
(9−3)ビニルケトン、例えばビニルメチルケトン等。
(10)その他のビニルモノマー:イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等。
プロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等。
【0047】
ビニルモノマーの共重合体としては、上記(1)〜(10)の任意のモノマー同士を任意の割合で共重合したポリマーが挙げられるが、例えばスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸、ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0048】
ポリエステル樹脂としては、ポリオールと、ポリカルボン酸(その酸無水物、その低級アルキルエステルを含む)との重縮合物などが挙げられる。ポリオールとしてはジオール(11)および3価以上のポリオール(12)が挙げられ、ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸(13)および3価以上のポリカルボン酸(14)が挙げられる。
ポリオールとポリカルボン酸の反応比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/1、さらに好ましくは1.5/1〜1/1、とくに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0049】
ジオール(11)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(以下、AOと記載する。)〔エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド(以下、POと記載する。)、ブチレンオキサイド(以下、BOと記載する。)など〕付加物;上記ビスフェノール類のAO(EO、PO、BOなど)付加物;その他、ポリラクトンジオール(ポリε−カプロラクトンジオールなど)、ポリブタジエンジオールなどが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のAO付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のAO付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
【0050】
3価以上のポリオール(12)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど)のAO付加物;ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど)のAO付加物、アクリルポリオール[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他のビニルモノマーの共重合物など]などが挙げられる。
【0051】
ジカルボン酸(13)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);炭素数8以上の分岐アルキレンジカルボン酸[ダイマー酸、アルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸など)、アルキルコハク酸(デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。
【0052】
3価以上(3〜6価又はそれ以上)のポリカルボン酸(14)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。
【0053】
なお、ジカルボン酸(13)または3価以上のポリカルボン酸(14)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてもよい。
【0054】
ポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネート(15)と活性水素基含有化合物(D){水、ポリオール[前記ジオール(11)および3価以上のポリオール(12)]、ジカルボン酸(13)、3価以上のポリカルボン酸(14)、ポリアミン(16)、ポリチオール(17)等}との重付加物などが挙げられる。
【0055】
ポリイソシアネート(15)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネートおよびこれらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物など)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
上記芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などが挙げられる。
上記脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。
上記脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)などが挙げられる。
上記芳香脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、m−および/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などが挙げられる。
また、上記ポリイソシアネートの変性物には、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物などが挙げられる。具体的には、変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDIなど)、ウレタン変性TDIなどのポリイソシアネートの変性物およびこれらの2種以上の混合物[たとえば変性MDIとウレタン変性TDI(イソシアネート含有プレポリマー)との併用]が含まれる。
これらのうちで好ましいものは6〜15の芳香族ポリイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ポリイソシアネート、および炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネートであり、とくに好ましいものはTDI、MDI、HDI、水添MDI、およびIPDIである。
【0056】
ポリアミン(16)の例としては、下記のものが挙げられる。
・脂肪族ポリアミン類(C2〜C18):
〔1〕脂肪族ポリアミン{C2〜C6アルキレンジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、及びヘキサメチレンジアミンなど)、ポリアルキレン(C2〜C6)ポリアミン〔ジエチレントリアミンなど〕}
〔2〕これらのアルキル(C1〜C4)またはヒドロキシアルキル(C2〜C4)置換体〔ジアルキル(C1〜C3)アミノプロピルアミンなど〕
〔3〕脂環または複素環含有脂肪族ポリアミン〔3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなど〕
〔4〕芳香環含有脂肪族アミン類(C8〜C15)(キシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミンなど)、
・脂環式ポリアミン(C4〜C15):1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4´−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)など、
【0057】
・芳香族ポリアミン類(C6〜C20):
〔1〕非置換芳香族ポリアミン〔1,2−、1,3−および1,4−フェニレンジアミンなど;核置換アルキル基〔メチル、エチル、n−およびi−プロピル、ブチルなどのC1〜C4アルキル基)を有する芳香族ポリアミン、たとえば2,4−および2,6−トリレンジアミンなど〕、およびこれらの異性体の種々の割合の混合物
〔2〕核置換電子吸引基(Cl、Br、I、Fなどのハロゲン;メトキシ、エトキシなどのアルコキシ基;ニトロ基など)を有する芳香族ポリアミン〔メチレンビス−o−クロロアニリンなど〕
〔3〕2級アミノ基を有する芳香族ポリアミン〔上記(4)〜(6)の芳香族ポリアミンの−NH2の一部または全部が−NH−R´(R´はメチル、エチルなどの低級アルキル基で置換したもの〕〔4,4´−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼンなど〕、
・複素環式ポリアミン(C4〜C15):ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン、1,4ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなど、
・ポリアミドポリアミン:ジカルボン酸(ダイマー酸など)と過剰の(酸1モル当り2モル以上の)ポリアミン類(上記アルキレンジアミン,ポリアルキレンポリアミンなど)との縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミンなど、
・ポリエーテルポリアミン:ポリエーテルポリオール(ポリアルキレングリコールなど)のシアノエチル化物の水素化物など。
【0058】
ポリチオール(17)としては、エチレンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオールなどが挙げられる。
【0059】
エポキシ樹脂としては、ポリエポキシド(18)の開環重合物、ポリエポキシド(18)と活性水素基含有化合物(D){水、ポリオール[前記ジオール(11)および3価以上のポリオール(12)]、ジカルボン酸(13)、3価以上のポリカルボン酸(14)、ポリアミン(16)、ポリチオール(17)等}との重付加物、またはポリエポキシド(18)とジカルボン酸(13)または3価以上のポリカルボン酸(14)の酸無水物との硬化物などが挙げられる。
【0060】
ポリエポキシド(18)としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有していれば、特に限定されない。ポリエポキシド(18)として好ましいものは、硬化物の機械的性質の観点から分子中にエポキシ基を2〜6個有するものである。ポリエポキシド(18)のエポキシ当量(エポキシ基1個当たりの分子量)は、好ましくは65〜1000であり、さらに好ましくは90〜500である。エポキシ当量が1000以下であると、架橋構造が密になり硬化物の耐水性、耐薬品性、機械的強度等の物性が向上し、一方、エポキシ当量が65以上のものは、合成するのが容易である。
【0061】
ポリエポキシド(18)の例としては、芳香族系ポリエポキシ化合物、複素環系ポリエポキシ化合物、脂環族系ポリエポキシ化合物あるいは脂肪族系ポリエポキシ化合物が挙げられる。芳香族系ポリエポキシ化合物としては、多価フェノール類のグリシジルエーテル体およびグリシジルエステル体、グリシジル芳香族ポリアミン、並びに、アミノフェノールのグリシジル化物等が挙げられる。多価フェノールのグリシジルエーテル体としては、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。多価フェノールのグリシジルエステル体としては、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。グリシジル芳香族ポリアミンとしては、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジフェニルメタンジアミン等が挙げられる。さらに、前記芳香族系ポリエポキシ化合物として、P−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、トリレンジイソシアネートまたはジフェニルメタンジイソシアネートとグリシドールとの付加反応によって得られるジグリシジルウレタン化合物、前記反応物にポリオールも反応させて得られるグリシジル基含有ポリウレタン(プレ)ポリマー、およびビスフェノールAのAO(EOまたはPO)付加物のジグリシジルエーテル体も含む。複素環系ポリエポキシ化合物としては、トリスグリシジルメラミンが挙げられる。脂環族系ポリエポキシ化合物としては、ビニルシクロヘキセンジオキシド等が挙げられる。また、脂環族系ポリエポキシ化合物としては、前記芳香族系ポリエポキシド化合物の核水添化物も含む。脂肪族系ポリエポキシ化合物としては、多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル体、多価脂肪酸のポリグリシジルエステル体、およびグリシジル脂肪族アミンが挙げられる。多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル体としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。多価脂肪酸のポリグリシジルエステル体としては、ジグリシジルオキサレート、ジグリシジルマレート、ジグリシジルスクシネート、ジグリシジルグルタレート、ジグリシジルアジペート、ジグリシジルピメレート等が挙げられる。グリシジル脂肪族アミンとしては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。また、脂肪族系ポリエポキシ化合物としては、ジグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体も含む。これらのうち、好ましいのは、脂肪族系ポリエポキシ化合物および芳香族系ポリエポキシ化合物である。ポリエポキシドは、2種以上併用しても差し支えない。
【0062】
熱可塑性樹脂(b1)としては、上記の非結晶樹脂(b11)以外に、結晶性樹脂(b12)であってもよく、低温定着性の点から(b12)が好ましい。
結晶性樹脂(b12)の場合、耐熱保存性の観点から、融点が20〜100℃の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは40〜80℃、特に好ましくは50〜70℃である。
【0063】
結晶性樹脂(b12)としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニル樹脂およびそれらの複合樹脂が好ましく、特に直鎖ポリエステル樹脂およびそれを含む複合樹脂が好ましい。
【0064】
(b12)として用いる結晶性ポリエステル樹脂は、アルコール(ジオール)成分と酸(ジカルボン酸)成分とから合成される重縮合ポリエステル樹脂であることが、結晶性の点から好ましい。ただし、必要に応じて3官能以上のアルコール成分や酸成分を用いてもよい。
なお、結晶性ポリエステル樹脂としては、重縮合ポリエステル樹脂以外に、ラクトン開環重合物およびポリヒドロキシカルボン酸も同様に好ましい。
また、結晶性ポリウレタン樹脂としては、アルコール(ジオール)成分とイソシアネート(ジイソシアネート)成分とから合成されるポリウレタン樹脂等が挙げられる。ただし、必要に応じて3官能以上のアルコール成分やイソシアネート成分を用いてもよい。
結晶性ポリアミド樹脂としては、アミン(ジアミン)成分と酸(ジカルボン酸)成分とから合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。ただし、必要に応じて3官能以上のアミン成分や酸成分を用いてもよい。
結晶性ポリウレア樹脂としては、アミン(ジアミン)成分とイソシアネート(ジイソシアネート)成分とから合成されるポリウレア樹脂等が挙げられる。ただし、必要に応じて3官能以上のアミン成分やイソシアネート成分を用いてもよい。
以降の説明において、まず、これら結晶性重縮合ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリウレア樹脂に用いられるジオール成分、ジカルボン酸成分、ジイソシアネート成分、およびジアミン成分(それぞれ3官能以上のものを含む)についてそれぞれ示す。
【0065】
上記アルコール(ジオール)成分としては、脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2〜36の範囲であることが好ましい。また直鎖型脂肪族ジオールがより好ましい。
脂肪族ジオールが分岐型では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下するため、保存安定性及び低温定着性が悪化してしまう場合がある。また、炭素数が36を超えると、実用上の材料の入手が困難な場合がある。
【0066】
ジオール成分は、直鎖型脂肪族ジオールの含有量が使用ジオール成分の80モル%以上であることが好ましく、より好ましくは90モル%以上である。80モル%以上では、ポリエステル樹脂の結晶性が向上し、融点が上昇するため、保存安定性及び低温定着性がより良好となる。
【0067】
直鎖型脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、入手容易性を考慮するとエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
【0068】
その他必要に応じて使用されるジオールとしては、前記ジオール(11)として例示したもののうち、上記以外のものが挙げられる。
さらに、他の官能基を有するジオールを用いてもよい。官能基を有するジオールとしては、カルボキシル基を有するジオール、スルホン酸基もしくはスルファミン酸基を有するジオール、およびこれらの塩等が挙げられる。
カルボキシル基を有するジオールとしては、ジアルキロールアルカン酸[C6〜24のもの、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸など]が挙げられる。
スルホン酸基もしくはスルファミン酸基を有するジオールとしては、スルファミン酸ジオール[N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)スルファミン酸(アルキル基のC1〜6)またはそのAO付加物(AOとしてはEOまたはPOなど、AOの付加モル数1〜6):例えばN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)スルファミン酸およびN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)スルファミン酸PO2モル付加物など];ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフェートなどが挙げられる。
これらの中和塩基を有するジオールの中和塩基としては、例えば炭素数3〜30の3級アミン(トリエチルアミンなど)および/またはアルカリ金属(ナトリウム塩など)が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール、カルボキシル基を有するジオール、ビスフェノール類のAO付加物、およびこれらの併用である。
【0069】
必要により用いられる3価以上のポリオールとしては、前記の3価以上のポリオール(12)と同様のものが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコールおよびノボラック樹脂のAO付加物であり、さらに好ましいものはノボラック樹脂のAO付加物である。
【0070】
酸(ジカルボン酸)成分としては、種々のジカルボン酸が挙げられるが、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸が好ましく、脂肪族ジカルボン酸は直鎖型のカルボン酸がより好ましい。
【0071】
ジカルボン酸としては、前記のジカルボン酸(13)と同様のものが挙げられる。
必要により用いられる3価以上のポリカルボン酸としては、前記の3価以上のポリカルボン酸(14)と同様のものが挙げられる。
これらジカルボン酸の中では、脂肪族ジカルボン酸(特に直鎖型のカルボン酸)を単独で用いるのが特に好ましいが、脂肪族ジカルボン酸と共に芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、および、これらの低級アルキルエステル類が好ましい。)を共重合したものも同様に好ましい。芳香族ジカルボン酸の共重合量としては20モル%以下が好ましい。
ジカルボン酸成分としては、主には上記のカルボン酸が挙げられるが、この限りではない。これらのうち、結晶性や入手容易性を考慮すると、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸が好ましい。
【0072】
イソシアネート(ジイソシアネート)成分としては、前記のポリイソシアネート(15)と同様のものが挙げられる。
これらのうちで好ましいものは6〜15の芳香族ジイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ジイソシアネート、および炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネートであり、とくに好ましいものはTDI、MDI、HDI、水添MDI、およびIPDIである。
【0073】
アミン(ジアミン)成分としては、前記のポリアミン(16)と同様のものが挙げられる。
【0074】
結晶性樹脂(b12)として用いるポリエステル樹脂のうち、ラクトン開環重合物は、例えば、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどの炭素数3〜12のモノラクトン(環中のエステル基数1個)等のラクトン類を金属酸化物、有機金属化合物などの触媒を用いて、開環重合させることにより得ることができる。これらのうち、好ましいラクトンは、結晶性の観点からε−カプロラクトンである。
開始剤として、グリコールを用いると、末端にヒドロキシル基を有するラクトン開環重合物が得られる。例えば、上記ラクトン類とエチレングリコール、ジエチレングリコール等の前記ジオール成分を触媒の存在下で反応させることにより得ることができる。触媒としては、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ハロゲン化スズ化合物等が一般的であり、0.1〜5000ppm程度の割合で添加して、100〜230℃で、好ましくは不活性雰囲気下に重合させることによって、ラクトン開環重合物を得ることができる。ラクトン開環重合物は、その末端を例えばカルボキシル基になるように変性したものであってもよい。ラクトン開環重合物は、結晶性の高い熱可塑性脂肪族ポリエステル樹脂である。ラクトン開環重合物は、市販品を用いてもよく、例えば、ダイセル株式会社製のPLACCELシリーズのH1P、H4、H5、H7など(いずれも、融点=約60℃、ガラス転移温度(Tg)=約−60℃の高結晶性ポリカプロラクトン)が挙げられる。
【0075】
結晶性ポリエステル樹脂のうち、ポリヒドロキシカルボン酸は、グリコール酸、乳酸(L体、D体、ラセミ体)等のヒドロキシカルボン酸を直接脱水縮合することで得られるが、グリコリド、ラクチド(L体、D体、ラセミ体)などのヒドロキシカルボン酸の2分子間もしくは3分子間脱水縮合物に相当する炭素数4〜12の環状エステル(環中のエステル基数2〜3個)を金属酸化物、有機金属化合物などの触媒を用いて、開環重合する方が分子量の調整の観点から好ましい。これらのうち、好ましい環状エステルは、結晶性の観点からL−ラクチド、およびD−ラクチドである。
開始剤として、グリコールを用いると、末端にヒドロキシル基を有するポリヒドロキシカルボン酸骨格が得られる。例えば、上記環状エステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール等の前記ジオール成分を触媒の存在下で反応させることにより得ることができる。触媒としては、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ハロゲン化スズ化合物等が一般的であり、0.1〜5000ppm程度の割合で添加して、100〜230℃で、好ましくは不活性雰囲気下に重合させることによって、ポリヒドロキシカルボン酸を得ることができる。ポリヒドロキシカルボン酸は、その末端を例えばカルボキシル基になるように変性したものであってもよい。
【0076】
結晶性樹脂(b12)のうち、ポリエーテル樹脂としては、結晶性ポリオキシアルキレンポリオール等が挙げられる。
結晶性ポリオキシアルキレンポリオールの製造方法としては特に限定されず、従来より公知のいずれの方法でもよい。
例えば、キラル体のAOを、通常AOの重合で使用される触媒で開環重合させる方法(例えば、Journal of the American Chemical Society、1956年、第78巻、第18号、p.4787−4792 に記載)や、安価なラセミ体のAOを立体的に嵩高い特殊な化学構造の錯体を触媒として用いて、開環重合させる方法が知られている。
特殊な錯体を用いる方法としては、ランタノイド錯体と有機アルミニウムを接触させた化合物を触媒として用いる方法(例えば、特開平11−12353号公報に記載)やバイメタルμ−オキソアルコキサイドとヒドロキシル化合物をあらかじめ反応させる方法(例えば、特表2001−521957号公報に記載)等が知られている。
また、非常にアイソタクティシティーの高いポリオキシアルキレンポリオールを得る方法として、サレン錯体を触媒として用いる方法(例えば、Journal of the American Chemical Society、2005年、第127巻、第33号、p.11566−11567 に記載)が知られている。
【0077】
例えば、キラル体のAOを用い、その開環重合時に、開始剤として、グリコールまたは水を用いると、末端にヒドロキシル基を有するアイソタクティシティが50%以上であるポリオキシアルキレングリコールが得られる。アイソタクティシティが50%以上であるポリオキシアルキレングリコールは、その末端を例えば、カルボキシル基になるように変性したものであってもよい。なお、アイソタクティシティが50%以上であると、通常結晶性となる。
上記グリコールとしては、前記ジオール成分等が挙げられ、カルボキシ変性するのに用いるカルボン酸としては、前記ジカルボン酸成分等が挙げられる
【0078】
結晶性ポリオキシアルキレンポリオールの製造に用いるAOとしては、炭素数3〜9のものが挙げられ、例えば以下の化合物が挙げられる。
炭素数3のAO[PO、1−クロロオキセタン、2−クロロオキセタン、1,2−ジクロロオキセタン、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン];炭素数4のAO[1,2−BO、メチルグリシジルエーテル];炭素数5のAO[1,2−ペンチレンオキサイド、2,3−ペンチレンオキサイド、3−メチル−1,2−ブチレンオキサイド];炭素数6のAO[シクロヘキセンオキサイド、1,2−へキシレンオキサイド、3−メチル−1,2−ペンチレンオキサイド、2,3−ヘキシレンオキサイド、4−メチル−2,3−ペンチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル];炭素数7のAO[1,2−へプチレンオキサイド];炭素数8のAO[スチレンオキサイド];炭素数9のAO[フェニルグリシジルエーテル]等である。
【0079】
これらのAOのうち、PO、1,2−BO、スチレンオキサイドおよびシクロへキセンオキサイドが好ましい。さらに好ましくはPO、1,2−BOおよびシクロへキセンオキサイドである。重合速度の観点から、最も好ましくはPOである。
これらのAOは、単独で、または、2種類以上を使用することができる。
【0080】
結晶性ポリオキシアルキレンポリオールのアイソタクティシティは、得られる結晶性ポリエーテル樹脂の高シャープメルト性と耐ブロッキング性の観点から70%以上が好ましく、さらに好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0081】
アイソタクティシティーは、Macromolecules、vol.35、No.6、2389−2392頁(2002年)に記載の方法で算出することができ、以下のようにして求める。
測定試料約30mgを直径5mmの13C−NMR用試料管に秤量し、約0.5mlの重水素化溶剤を加えて溶解させ、分析用試料とする。ここで重水素化溶剤は、重水素化クロロホルム、重水素化トルエン、重水素化ジメチルスルホキシド、重水素化ジメチルホルムアミド等であり、試料を溶解させることのできる溶剤を適宜選択する。
【0082】
13C−NMRの3種類のメチン基由来の信号は、例えばPOの場合、それぞれシンジオタクチック値(S)75.1ppm付近とヘテロタクチック値(H)75.3ppm付近とアイソタクチック値(I)75.5ppm付近に観測される。アイソタクティシティーを次の計算式(1)により算出する。
アイソタクティシティー(%)=[I/(I+S+H)]×100 (1)
但し、式中、Iはアイソタクチック信号の積分値;Sはシンジオタクチック信号の積分値;Hはヘテロタクチック信号の積分値である。
【0083】
結晶性樹脂(b12)のうち、ビニル樹脂としては、結晶性基を有するビニルモノマー(m)と、必要により結晶性基を有しないビニルモノマー(n)を構成単位として有するものが好ましい。
【0084】
ビニルモノマー(m)としては、アルキル基の炭素数が12〜50の直鎖アルキル(メタ)アクリレート(m1)(炭素数12〜50の直鎖アルキル基が結晶性基である)、およびビニル樹脂以外の上記結晶性樹脂(b12)の単位を有するビニルモノマー(m2)等が挙げられる。
結晶性ビニル樹脂としては、ビニルモノマー(m)として、アルキル基の炭素数が12〜50(好ましくは16〜30)の直鎖アルキル(メタ)アクリレート(m1)を含有するものがさらに好ましい。
(m1)としては、各アルキル基がいずれも直鎖状の、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、およびベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0085】
結晶性樹脂(b12)の単位を有するビニルモノマー(m2)において、結晶性樹脂(b12)の単位をビニルモノマーに導入する方法は、それぞれの末端官能基の反応性を考慮して、結合剤(カップリング剤)を使用するかしないかを選択し、また使用する場合は、末端官能基にあった結合剤を選択し、結晶性樹脂(b12)とビニルモノマーを結合させ、(b12)の単位を有するビニルモノマー(m2)とすることができる。
【0086】
結晶性樹脂(b12)の単位を有するビニルモノマー(m2)の作成時に結合剤を使わない場合、必要により加熱減圧しつつ、結晶性樹脂(b12)の末端官能基とビニルモノマーの末端官能基の反応を進める。特に末端の官能基がカルボキシル基と水酸基との反応や、カルボキシル基とアミノ基との反応の場合、片方の樹脂の酸価が高く、もう一方の樹脂の水酸基価やアミン価が高い場合、反応がスムーズに進行する。反応温度は180℃〜230℃で行うのが好ましい。
【0087】
結合剤を使う場合は、末端の官能基の種類に合わせて、種々の結合剤が使用できる。
結合剤の具体例、および結合剤を用いたビニルモノマー(m2)の作製法としては、後述のブロック樹脂の製法と同様の方法が挙げられる。
【0088】
結晶性基を有しないビニルモノマー(n)としては、特に限定されず、結晶性基を有するビニルモノマー(m)以外の、ビニル樹脂の製造に通常用いられる分子量が1000以下のビニルモノマー(n1)、および前記非結晶性樹脂(b11)の単位を有するビニルモノマー(n2)等が挙げられる。
【0089】
上記ビニルモノマー(n1)としては、スチレン類、(メタ)アクリルモノマー、カルボキシル基含有ビニルモノマー、他のビニルエステルモノマー、および脂肪族炭化水素系ビニルモノマー等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0090】
スチレン類としては、スチレン、アルキル基の炭素数が1〜3のアルキルスチレン〔例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン〕などが挙げられ、好ましくはスチレンである。
【0091】
(メタ)アクリルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜11のアルキル(メタ)アクリレートおよびアルキル基の炭素数が12〜18の分岐アルキル(メタ)アクリレート〔例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート〕、アルキル基の炭素数1〜11のヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート〔例えば、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート〕、アルキル基の炭素数が1〜11のアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート〔例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート〕、およびニトリル基含有ビニルモノマー〔例えば、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル〕などが挙げられる。
カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、モノカルボン酸〔炭素数3〜15、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸〕、ジカルボン酸〔炭素数4〜15、例えば、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸〕、ジカルボン酸モノエステル〔上記ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜18)エステル、例えば、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル〕などが挙げられる。
【0092】
他のビニルエステルモノマーとしては、脂肪族ビニルエステル〔炭素数4〜15、たとえば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソプロペニルアセテート〕、不飽和カルボン酸多価(2〜3価またはそれ以上)アルコールエステル〔炭素数8〜50、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート〕、芳香族ビニルエステル〔炭素数9〜15、例えば、メチル−4−ビニルベンゾエート〕などが挙げられる。
脂肪族炭化水素系ビニルモノマーとしてはオレフィン〔炭素数2〜10、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、オクテン〕、ジエン(炭素数4〜10、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,6−ヘキサジエン〕などが挙げられる。
これら(n1)の中で好ましくは、(メタ)アクリルモノマー、およびカルボキシル基含有ビニルモノマーである。
【0093】
非結晶性樹脂(b11)の単位を有するビニルモノマー(n2)において、非結晶性樹脂(b11)の単位をビニルモノマーに導入する方法は、前記の結晶性樹脂(b12)の単位を有するビニルモノマー(m2)において、(b12)の単位をビニルモノマーに導入する方法と同様の方法が挙げられる。
【0094】
結晶性基を有するビニルモノマー(m)の構成単位が結晶性ビニル樹脂中に占める割合は、30重量%以上が好ましく、さらに好ましくは35〜95重量%であり、特に好ましくは40〜90重量%である。この範囲であるとビニル樹脂の結晶性が損なわれず、耐熱保存安定性が良好である。また(m)中のアルキル基の炭素数が12〜50の直鎖アルキル(メタ)アクリレート(m1)の含有量は、好ましくは30〜100重量%、さらに好ましくは40〜80重量%である。
これらのビニルモノマーを公知の方法で重合させることにより、結晶性ビニル樹脂が得られる。
【0095】
さらに結晶性樹脂(b12)は、上記結晶性樹脂(b12)からなる1個以上の結晶性部(p)と前記非結晶性樹脂(b11)からなる1個以上の非結晶性部(q)とをもつブロック樹脂であってもよい。
【0096】
結晶性部(p)と非結晶性部(q)とで構成されるブロック樹脂は、それぞれの末端官能基の反応性を考慮して結合剤の使用、非使用を選択し、また使用の際は末端官能基にあった結合剤種を選択し、(p)と(q)を結合させ、ブロック樹脂とすることが出来る。
結合剤を使わない場合、必要により加熱減圧しつつ、(p)を形成する樹脂の末端官能基と(q)を形成する樹脂の末端官能基の反応を進める。特に酸とアルコールとの反応や酸とアミンとの反応の場合、片方の樹脂の酸価が高く、もう一方の樹脂の水酸基価やアミン価が高い場合、反応がスムーズに進行する。反応温度は180℃〜230℃で行うのが好ましい。
結合剤を使う場合は、種々の結合剤が使用できる。多価カルボン酸、多価アルコール、多価イソシアネート、多官能エポキシ、酸無水物等を用いて、脱水反応や、付加反応を行うことで得られる。
多価カルボン酸および酸無水物としては、前記ジカルボン酸成分と同様のものが挙げられる。多価アルコールとしては、前記ジオール成分と同様のものが挙げられる。多価イソシアネートとしては、前記ジイソシアネート成分と同様のものが挙げられる。多官能エポキシとしては、ビスフェノールA型および−F型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールAまたは−FのAO付加体のジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのAO付加体のジグリシジルエーテル、ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等)の各ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジおよび/またはトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリおよび/またはテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘプタおよび/またはヘキサグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン・フェノール付加型グリシジルエーテル、メチレンビス(2,7−ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0097】
(p)と(q)を結合させる方法のうち、脱水反応の例としては、結晶性部(p)、非結晶性部(q)とも両末端アルコール樹脂で、これらを結合剤(例えば多価カルボン酸)で結合する反応が挙げられる。この場合、例えば、無溶剤下、反応温度180℃〜230℃で反応し、ブロック樹脂が得られる。
付加反応の例としては、結晶性部(p)、非結晶性部(q)とも末端に水酸基を有する樹脂であり、これらを結合剤(例えば多価イソシアネート)で結合する反応や、また結晶性部(p)、非結晶性部(q)の片方が末端に水酸基を有する樹脂で、もう一方が末端にイソシアネート基を有する樹脂の場合、結合剤を用いずにこれらを結合する反応が挙げられる。この場合、例えば、結晶性部(p)、非結晶性部(q)ともに溶解可能な溶剤に溶解させ、これに必要であるなら結合剤を投入し、反応温度80℃〜150℃で反応し、ブロック樹脂が得られる。
【0098】
結晶性樹脂(b12)が、結晶性部(p)と非結晶性部(q)とで構成されるブロック樹脂である場合、結晶性部(p)が(b12)中に占める割合は、50重量%以上が好ましく、より好ましくは55〜96重量%、さらに好ましくは60〜90重量%である。(p)の割合が50重量%以上であると、(b12)の結晶性が損なわれず、低温定着性がより良好である。
【0099】
熱可塑性樹脂を微架橋した樹脂(b2)とは、架橋構造を導入させ樹脂(b)のTgが20〜200℃である樹脂を言うものとする。かかる架橋構造は、共有結合性、配位結合性、イオン結合性、水素結合性等、いずれの架橋形態であってもよい。具体例としては、例えば樹脂(b2)としてポリエステルを選択する場合、重合時にポリオールとポリカルボン酸のいずれか、あるいは両方に3官能以上の官能基数を有するものを使用することにより架橋構造を導入することができる。また樹脂(b2)としてビニル樹脂を選択する場合、重合時に二重結合を2つ以上有するモノマーを添加することにより、架橋構造を導入することができる。
【0100】
熱可塑性樹脂を海成分、硬化樹脂を島成分とするポリマーブレンド(b3)としては、Tgが20〜200℃、且つ軟化開始温度が40〜220℃であるもの、具体的にはビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びこれらの混合物が挙げられる。
【0101】
樹脂(b)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1000〜500万、より好ましくは2,000〜500,000、溶解性パラメーター〔SP値、(cal/cm31/2〕は、好ましくは7〜18、より好ましくは8〜14である。また、本発明の製造方法により得られる樹脂粒子(C)の熱特性を改質したい場合には、樹脂(b2)又は樹脂(b3)を使用するとよい。
上記SP値とは、下記に示した様に、凝集エネルギー密度と分子容の比の平方根で表されるものである。
SP=(△E/V)1/2
ここで△Eは凝集エネルギー密度を表す。Vは分子容を表し、その値は、ロバート エフ.フェドールス(Robert F.Fedors)らの計算によるもので、例えばポリマー エンジニアリング アンド サイエンス(Polymer engineering and science)第14巻、147〜154頁に記載されている。
【0102】
樹脂(b)が結晶性樹脂(b12)以外である場合のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは20℃〜200℃、より好ましくは40℃〜150℃である。20℃以上では粒子の保存安定性が良好である。なお、本発明におけるTgは、DSC測定から求められる値である。
【0103】
樹脂(b)の軟化開始温度は好ましくは40℃〜220℃、より好ましくは50℃〜200℃である。40℃以上では長期の保存性が良好である。220℃以下では定着温度が上昇せず問題がない。なお、本発明における軟化開始温度は、フローテスター測定から求められる値である。
【0104】
本発明において、樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)として、樹脂(b)の溶剤溶液を単独で使用する方法以外に、樹脂(b)の前駆体(b0)の溶剤溶液を単独で使用する方法、あるいは上記2つを混合して使用する方法を用いることができる。樹脂(b)の前駆体(b0)の溶剤溶液は、特に樹脂粒子(C)中に架橋成分や高凝集力成分を導入したい場合、好適に使用することができる。
本発明において、樹脂(b)は、樹脂(b)の前駆体(b0)も包含する意味で用いる。
【0105】
前駆体(b0)としては、化学反応により樹脂(b)になりうるものであれば特に限定されず、例えば、樹脂(b)がビニル系樹脂である場合は、(b0)は、先述のビニル系モノマー(単独で用いても、混合して用いてもよい)、樹脂(b)が縮合系樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂)である場合は、(b0)は、反応性基を有するプレポリマー(α)と硬化剤(β)の組み合わせが例示される。
【0106】
前駆体(b0)としては、反応性基を有するプレポリマー(α)と硬化剤(β)の組み合わせを用いることもできる。ここで「反応性基」とは硬化剤(β)と反応可能な基のことをいう。反応性基含有プレポリマー(α)が有する反応性基と、硬化剤(β)の組み合わせとしては、下記(1)、(2)などが挙げられる。
(1):反応性基含有プレポリマー(α)が有する反応性基が、活性水素化合物と反応可能な官能基(α1)であり、硬化剤(β)が活性水素基含有化合物(β1)であるという組み合わせ。
(2):反応性基含有プレポリマー(α)が有する反応性基が活性水素含有基(α2)であり、硬化剤(β)が活性水素含有基と反応可能な化合物(β2)であるという組み合わせ。
上記組合せ(1)において、活性水素化合物と反応可能な官能基(α1)としては、イソシアネート基(α1a)、ブロック化イソシアネート基(α1b)、エポキシ基(α1c)、酸無水物基(α1d)および酸ハライド基(α1e)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、(α1a)、(α1b)および(α1c)であり、特に好ましいものは、(α1a)および(α1b)である。ブロック化イソシアネート基(α1b)は、ブロック化剤によりブロックされたイソシアネート基のことをいう。上記ブロック化剤としては、オキシム類[アセトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、ジエチルケトオキシム、シクロペンタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、メチルエチルケトオキシム等];ラクタム類[γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、γ−バレロラクタム等];炭素数1〜20の脂肪族アルコール類[エタノール、メタノール、オクタノール等];フェノール類[フェノール、m−クレゾール、キシレノール、ノニルフェノール等];活性メチレン化合物[アセチルアセトン、マロン酸エチル、アセト酢酸エチル等];塩基性窒素含有化合物[N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、2−ヒドロキシピリジン、ピリジンN−オキサイド、2−メルカプトピリジン等];およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち好ましいのはオキシム類であり、特に好ましいものはメチルエチルケトオキシムである。
【0107】
反応性基含有プレポリマー(α)の骨格としては、ポリエーテル(αw)、ポリエステル(αx)、エポキシ樹脂(αy)およびポリウレタン(αz)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、(αx)、(αy)および(αz)であり、特に好ましいものは(αx)および(αz)である。ポリエーテル(αw)としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイドなどが挙げられる。ポリエステル(αx)としては、ジオール(11)とジカルボン酸(13)の重縮合物、ポリラクトン(ε−カプロラクトンの開環重合物)などが挙げらる。エポキシ樹脂(αy)としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)とエピクロルヒドリンとの付加縮合物などが挙げられる。ポリウレタン(αz)としては、ジオール(11)とポリイソシアネート(15)の重付加物、ポリエステル(αx)とポリイソシアネート(15)の重付加物などが挙げられる。
【0108】
ポリエステル(αx)、エポキシ樹脂(αy)、ポリウレタン(αz)などに反応性基を含有させる方法としては、(1):二以上の構成成分のうちの一つを過剰に用いることで構成成分の官能基を末端に残存させる方法、(2):二以上の構成成分のうちの一つを過剰に用いることで構成成分の官能基を末端に残存させ、さらに残存した該官能基と反応可能な官能基及び反応性基を含有する化合物を反応させる方法などが挙げられる。上記方法(1)では、水酸基含有ポリエステルプレポリマー、カルボキシル基含有ポリエステルプレポリマー、酸ハライド基含有ポリエステルプレポリマー、水酸基含有エポキシ樹脂プレポリマー、エポキシ基含有エポキシ樹脂プレポリマー、水酸基含有ポリウレタンプレポリマー、イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーなどが得られる。構成成分の比率は、例えば、水酸基含有ポリエステルプレポリマーの場合、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率が、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]のモル比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/1、さらに好ましくは1.5/1〜1/1、とくに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。他の骨格、末端基のプレポリマーの場合も、構成成分が変わるだけで比率は同様である。上記方法(2)では、上記方法(1)で得られたプレプリマーに、ポリイソシアネートを反応させることでイソシアネート基含有プレポリマーが得られ、ブロック化ポリイソシアネートを反応させることでブロック化イソシアネート基含有プレポリマーが得られ、ポリエポキサイドを反応させることでエポキシ基含有プレポリマーが得られ、ポリ酸無水物を反応させることで酸無水物基含有プレポリマーが得られる。官能基および反応性基を含有する化合物の使用量は、例えば、水酸基含有ポリエステルにポリイソシアネートを反応させてイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーを得る場合、ポリイソシアネートの比率が、イソシアネート基[NCO]と、水酸基含有ポリエステルの水酸基[OH]のモル比[NCO]/[OH]として、好ましくは5/1〜1/1、さらに好ましくは4/1〜1.2/1、とくに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。他の骨格、末端基を有するプレポリマーの場合も、構成成分が変わるだけで比率は同様である。
【0109】
反応性基含有プレポリマー(α)中の1分子当たりに含有する反応性基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。上記範囲にすることで、硬化剤(β)と反応させて得られる硬化物の分子量が高くなる。反応性基含有プレポリマー(α)のMnは、好ましくは500〜30,000、さらに好ましくは1,000〜20,000、とくに好ましくは2,000〜10,000である。反応性基含有プレポリマー(α)の重量平均分子量(GPCにて測定、以下Mwと略記)は、1,000〜50,000、好ましくは2,000〜40,000、さらに好ましくは4,000〜20,000である。反応性基含有プレポリマー(α)の粘度は、100℃において、好ましくは2,000ポイズ以下、さらに好ましくは1,000ポイズ以下である。2,000ポイズ以下にすることで、粒度分布のシャープな樹脂粒子(C)が得られる点で好ましい。
【0110】
活性水素基含有化合物(β1)としては、脱離可能な化合物でブロック化されていてもよいポリアミン(β1a)、ポリオール(β1b)、ポリメルカプタン(β1c)および水(β1d)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、(β1a)、(β1b)および(β1d)であり、さらに好ましいもは、(β1a)および(β1d)であり、特に好ましいもは、ブロック化されたポリアミン類および(β1d)である。(β1a)としては、ポリアミン(16)と同様のものが例示される。(β1a)として好ましいものは、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンおよびそれらの混合物である。
【0111】
(β1a)が脱離可能な化合物でブロック化されたポリアミンである場合の例としては、前記ポリアミン(16)と炭素数3〜8のケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、炭素数2〜8のアルデヒド化合物(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド)から得られるアルジミン化合物、エナミン化合物、およびオキサゾリジン化合物などが挙げられる。
【0112】
ポリオール(β1b)としては、前記のジオール(11)およびポリオール(12)と同様のものが例示される。ジオール(11)単独、またはジオール(11)と少量のポリオール(12)の混合物が好ましい。ポリメルカプタン(β1c)としては、エチレンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオールなどが挙げられる。
【0113】
必要により活性水素基含有化合物(β1)と共に反応停止剤(βs)を用いることができる。反応停止剤を(β1)と一定の比率で併用することにより、(b)を所定の分子量に調整することが可能である。反応停止剤(βs)としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなど);モノアミンをブロックしたもの(ケチミン化合物など);モノオール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、フェノール;モノメルカプタン(ブチルメルカプタン、ラウリルメルカプタンなど);モノイソシアネート(ラウリルイソシアネート、フェニルイソシアネートなど);モノエポキサイド(ブチルグリシジルエーテルなど)などが挙げられる。
【0114】
上記組合せ(2)における反応性基含有プレポリマー(α)が有する活性水素含有基(α2)としては、アミノ基(α2a)、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)(α2b)、メルカプト基(α2c)、カルボキシル基(α2d)およびそれらが脱離可能な化合物でブロック化された有機基(α2e)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、(α2a)、(α2b)およびアミノ基が脱離可能な化合物でブロック化された有機基(α2e)であり、特に好ましいものは、(α2b)である。アミノ基が脱離可能な化合物でブロック化された有機基としては、前記(β1a)の場合と同様のものが例示できる。
【0115】
活性水素含有基と反応可能な化合物(β2)としては、ポリイソシアネート(β2a)、ポリエポキシド(β2b)、ポリカルボン酸(β2c)、ポリ酸無水物(β2d)およびポリ酸ハライド(β2e)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、(β2a)および(β2b)であり、さらに好ましいものは、(β2a)である。
【0116】
ポリイソシアネート(β2a)としては、ポリイソシアネート(15)と同様のものが例示され、好ましいものも同様である。ポリエポキシド(β2b)としては、ポリエポキシド(18)と同様のものが例示され、好ましいものも同様である。
【0117】
ポリカルボン酸(β2c)としては、ジカルボン酸(β2c−1)および3価以上のポリカルボン酸(β2c−2)が挙げられ、(β2c−1)単独、および(β2c−1)と少量の(β2c−2)の混合物が好ましい。ジカルボン酸(β2c−1)としては、前記ジカルボン酸(13)と、ポリカルボン酸としては、前記ポリカルボン酸(14)と同様のものが例示され、好ましいものも同様である。
【0118】
ポリカルボン酸無水物(β2d)としては、ピロメリット酸無水物などが挙げられる。ポリ酸ハライド類(β2e)としては、前記(β2c)の酸ハライド(酸クロライド、酸ブロマイド、酸アイオダイド)などが挙げられる。さらに、必要により(β2)と共に反応停止剤(βs)を用いることができる。
【0119】
硬化剤(β)の比率は、反応性基含有プレポリマー(α)中の反応性基の当量[α]と、硬化剤(β)中の活性水素含有基[β]の当量の比[α]/[β]として、好ましくは1/2〜2/1、さらに好ましくは1.5/1〜1/1.5、とくに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。なお、硬化剤(β)が水(β1d)である場合は水は2価の活性水素化合物として取り扱う。
【0120】
前駆体(b0)として反応性基を有するプレポリマー(α)と硬化剤(β)の組み合わせを用いる場合、樹脂粒子(C1)の分散体(Y)の製造時において(b0)を反応させて樹脂(b)とする方法は特に限定されないが、二酸化炭素(X)中に(b0)の溶剤(S)溶液(L)を分散する直前に(α)と(β)を混合し、分散すると同時に反応させる方法が好ましい。反応時間は、プレポリマー(α)の有する反応性基の構造と硬化剤(β)の組み合わせによる反応性により選択されるが、好ましくは5分〜24時間である。反応は減圧前に(Y)中で完結させてもよく、また(Y)中である程度反応させ、減圧し(C)を取り出した後、恒温槽などで熟成させ完結させてもよい。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的には、例えばイソシアネートと活性水素化合物の反応の場合には、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。反応温度は好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは40〜80℃である。
【0121】
反応性基含有プレポリマー(α)と硬化剤(β)で構成される前駆体(b0)を反応させた樹脂(b)が樹脂粒子(B)および樹脂粒子(C)の構成成分となる。反応性基含有プレポリマー(α)と硬化剤(β)を反応させた樹脂(b)のMwは、好ましくは3,000以上、さらに好ましくは3,000〜1000万、とくに好ましくは,5000〜100万である。
【0122】
また、反応性基含有プレポリマー(α)と硬化剤(β)との反応時に、反応性基含有プレポリマー(α)および硬化剤(β)と反応しないポリマー[いわゆるデッドポリマー]を系内に含有させることもできる。この場合(b)は、反応性基含有プレポリマー(α)と硬化剤(β)を反応させて得られた樹脂と、反応させていない樹脂(デッドポリマー)の混合物となる。
【0123】
樹脂(b)は上記の樹脂を何種類併用してもよいが、生産性、および低温定着性の観点から、(b)中の少なくとも1種として結晶性樹脂(b11)が含まれることが好ましい。結晶性樹脂を使用することで樹脂粒子(C1)から溶剤(S)を除去する際、より効率的に溶剤(S)を除去しやすい。また樹脂(b)中に結晶性樹脂(b11)が含まれると、シャープメルトするため低温定着性が向上し、電子写真用トナーに用いたときの定着後、結晶性樹脂(b12)の融点以下の温度で画像安定性が向上する。
【0124】
樹脂(b)を溶解させた溶液(L)に用いる溶剤(S)としては、前記のものが挙げられる。
それらのうち、粒子形成のし易さの観点から、単一溶剤として、環状エーテル、ピルビン酸エステル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、2−ヒドロキシイソ酪酸エステル、乳酸エステル、およびフッ素含有アルコール、並びに混合溶剤が好ましい。
さらに好ましくは、溶剤除去の観点から、混合溶剤(特に、アセトンとメタノールと水の混合溶剤、アセトンとメタノールの混合溶剤、アセトンとエタノールの混合溶剤、およびアセトンと水の混合溶剤)である。
【0125】
本発明においては、樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)を用いるが、この溶剤(S)中に、標準状態(23℃、0.1MPa)における樹脂(b)の溶剤(S1)不溶分が20重量%以下である溶剤(S1)を用いるのが好ましい。溶剤(S1)は樹脂(b)の良溶剤である。(b)の(S1)不溶分が20重量%以下であると、樹脂粒子(C)の粒度分布がシャープになる。溶剤(S1)不溶分は、好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、とくに好ましくは0重量%である。
なお、樹脂(b)の溶剤(S)全体に対する不溶分の好ましい範囲も、上記(S1)不溶分と同様である。
【0126】
標準状態(23℃、0.1MPa)における樹脂(b)の溶剤(S)不溶分は、以下の方法で測定される、樹脂(b)の溶剤(S)に対する不溶分の重量を該樹脂(b)の試料重量で除した重量%で定義される。
200mlの共栓付きマイヤーフラスコに、樹脂(b)の試料約0.5gを精秤し、溶剤(S)50mlを加え、3時間攪拌還流させて冷却後、標準状態で、目開き1μmのフィルターにて不溶分をろ別する。溶剤(S)に対する不溶分の重量は、フィルター上の樹脂分を80℃で3時間減圧乾燥した後の重量とする。
樹脂(b)の前駆体(b0)が液体である場合については、溶剤(S)に対する不溶分の重量は下記の方法により算出する。
フラスコに50mlの溶剤(S)を入れ、マグネティックスターラーで攪拌する。そこに樹脂(b)の前駆体(b0)を滴下し、透過率が50%以下になった時点の添加量をWとすると、溶剤(S)に対する不溶分の重量は(0.5−W)の計算値とする。
【0127】
溶剤(S1)は具体的には、樹脂(b)の組成によって適宜選択されるが、例えば以下のようなものが挙げられる。
樹脂(b)がポリエステル樹脂、あるいは変性ポリエステル樹脂の場合、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、芳香族炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン等)が挙げられる。
樹脂(b)がウレタン樹脂、あるいは変性ウレタン樹脂の場合、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)が挙げられる。
樹脂(b)がエポキシ樹脂、あるいは変性エポキシ樹脂の場合、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)が挙げられる。
樹脂(b)がビニル樹脂、あるいは変性ビニル樹脂の場合、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、芳香族炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン等)が挙げられる。
【0128】
樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)に用いる溶剤(S)として、溶剤(S1)と共に、樹脂(b)を析出させない範囲で、樹脂(b)の貧溶剤となる溶剤(S2)を用いると、より粒度分布がシャープな樹脂粒子を得ることができるので、好ましい。
溶剤(S2)の含有量は、溶剤(S1)の重量に対する(S2)の重量が1〜50重量%であることが好ましく、3〜40重量%であることがさらに好ましい。
【0129】
溶剤(S2)は、標準状態(23℃、0.1MPa)における樹脂(b)の溶剤(S2)不溶分が80重量%以上である。溶剤(S2)は溶剤(S1)よりもSP値が大きく、かつSP値が10〜25の溶剤であることが好ましい。
溶剤(S2)は、具体的には、水、アルコール(メタノール、エタノール)、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。樹脂粒子製造後、除去の容易さの観点から、水、メタノール及びエタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶剤が好ましい。
【0130】
溶剤(S)のSP値は、樹脂粒子(C)の粒度分布の観点から、9〜20であることが好ましく、9.5〜18がさらに好ましく、9.9〜15がより好ましい。混合溶剤の溶解度パラメータは、各成分の溶解度パラメータの混合重量比率の平均値として算出する。
また、樹脂(b)と溶剤(S)の溶解度パラメータの差は7以下が好ましく、さらに好ましくは6以下、とくに好ましくは5以下である。
【0131】
樹脂(b)の貧溶剤(S2)のみを樹脂(b)の溶剤(S)として用いる場合、二酸化炭素(X)と必要により溶剤(S)中に微粒子(A)が分散している後述の分散体(Y0)と連続的に混合、分散することが困難であり、回分操作を選択せざるを得ないが、樹脂(b)の良溶剤(S1)を用いれば、連続的に樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)と(Y0)を混合することが容易であり、連続操作が可能である。
溶剤(S)が良溶剤(S1)と貧溶剤(S2)から構成される場合、良溶剤(S1)は一般的に貧溶剤(S2)に比べて二酸化炭素(X)とのSP値差が小さいため、(S2)と比べて(S1)が樹脂粒子(C1)から抽出されやすい。したがって(C1)中に残存する溶剤(S)中の(S2)濃度が高くなるため、樹脂粒子(C)同士が合一し難くなる。また樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)を二酸化炭素(X)中に分散する際、溶剤(S1)の二酸化炭素(X)中への抽出が遅延されるため、分散されやすくなり、粒度分布がシャープな樹脂粒子(C)を得やすくなる。
【0132】
(S1)と(S2)の組み合わせの具体例としては、例えば樹脂(b)としてポリエステル樹脂やポリエステル樹脂と他の樹脂(特にポリウレタン樹脂)との複合樹脂を選択する場合、下記(1)、(2)が挙げられる。
(1) (S1)はケトン(アセトン、又はメチルエチルケトン)、(S2)は水、又はメタノール、重量比(S1):(S2)は、95:5〜70:30。
(2) (S1)はケトン(アセトン、又はメチルエチルケトン)、(S2)は水:メタノール(重量比 1:2〜1:10)、重量比(S1):(S2)は、95:5〜50:50。
【0133】
樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)における、溶液(L)の重量に対する樹脂(b)の重量の比率(濃度)は、溶液(L)を、二酸化炭素(X)中に分散するのに適度な粘度とするために適宜設定することが好ましく、好ましい範囲としては、10〜90重量%であり、さらに好ましくは20〜80重量%である。
【0134】
樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)は、(X)中に分散するため、適度な粘度であることが好ましく、粒度分布の観点から、使用温度において、好ましくは100Pa・s以下、さらに好ましくは10Pa・s以下である。
溶液(L)の粘度が上記範囲より高い場合は、樹脂(b)が変性しない範囲、又は樹脂(b)の前駆体(b0)が反応しない範囲内で加熱することが好ましい。
【0135】
また、樹脂(b)の二酸化炭素(X)への溶解度は、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0136】
本発明で用いる樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)中には、他の添加剤(着色剤、離型剤、荷電制御剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、流動化剤など)を含有することができる。
【0137】
着色剤としては公知の染料、顔料及び磁性粉を用いることができる。具体的には、カーボンブラック、スーダンブラックSM、ファーストイエロ−G、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、プリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB、オイルピンクOP、マグネタイト、鉄黒などが挙げられる。
着色剤の使用量は、染料又は顔料を使用する場合は、樹脂(b)の重量に基づいて、好ましくは0.5〜15重量%であり、磁性粉を使用する場合は、好ましくは20〜150重量%である。
【0138】
離型剤としては、軟化点50〜170℃のワックス類が用いられる。ワックス類としては、ポリオレフィン樹脂類[ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−αオレフィン(炭素数3〜8)共重合体、フィッシャートロプシュワックス、ポリメチレンなど]、パラフィン類(n−パラフィン、イソパラフィンなど)、エステルワックス類(カルナウバワックス、モンタンワックス、ライスワックス等)、炭素数30以上の脂肪族アルコール、炭素数30以上の脂肪酸及びこれらの混合物等が挙げられる。離型剤の量は、樹脂(b)の重量に基づいて、好ましくは0〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%である。
【0139】
荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カ一リット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホ基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物等が挙げられる。荷電制御剤の使用量は樹脂(b)の重量に基づいて、好ましくは0〜5重量%である。
【0140】
樹脂(b)と他の添加剤を混合する方法としては、あらかじめ樹脂(b)の溶剤溶液、樹脂(b)の前駆体(b0)の溶剤溶液、及びこれらの混合物から選ばれる樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)と添加剤を混合した後、二酸化炭素(X)中にその混合物を加えて分散させるのが好ましい。予め、樹脂(b)の溶剤溶液、樹脂(b)の前駆体(b0)の溶剤溶液、及びこれら混合物へ上記添加剤を混合する方法は公知の方法を適用することができ、例えば、分散機、粉砕機、混練機等を用いて混合する方法が挙げられる。
【0141】
本発明の製造方法においては、その圧力が1.5MPa以上の二酸化炭素(X)用いる。(X)の圧力は、好ましくは1.5〜15MPa、さらに好ましくは2〜10MPaである。
上記の圧力下では、多くの場合、二酸化炭素(X)は、液体状態または超臨界状態となる。
本発明において、液体の二酸化炭素とは、二酸化炭素の温度軸と圧力軸とで表す相図上において、二酸化炭素の三重点(温度=−57℃、圧力=0.5MPa)と二酸化炭素の臨界点(温度=31℃、圧力=7.4MPa)を通る気液境界線、臨界温度の等温線、及び固液境界線に囲まれた部分の温度・圧力条件である二酸化炭素を表し、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度以上の温度・圧力条件である二酸化炭素を表す(本発明の圧力とは、2成分以上の混合ガスの場合、全圧を示す)。
【0142】
本発明において、樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)、微粒子(A)または微粒子(A)が溶剤(S)に分散された微粒子分散液(P)、および二酸化炭素(X)を混合する際、混合順序と混合方法はいかなる順序、方法であってもかまわない。
例えば、容器内に溶液(L)と、微粒子(A)または微粒子分散液(P)を仕込み、攪拌のもと、さらに容器内に二酸化炭素(X)を導入する方法;並びに、あらかじめ微粒子(A)または微粒子分散液(P)と二酸化炭素(X)とを混合して得られる、二酸化炭素(X)および必要により溶剤(S)中に微粒子(A)が分散している分散体(Y0)中に、溶液(L)を分散させる方法;等が挙げられる。これらの中では、後者の方法が好ましい。
【0143】
例えば、微粒子(A)または微粒子(A)が溶剤(S)中に分散された微粒子分散液(P)を圧力が1.5MPa以上の二酸化炭素(X)中に分散させる場合、いかなる方法でもよく、例えば、容器内に(A)及び(X)を仕込み、攪拌や超音波照射等により、(A)を直接(X)中に分散する方法や、(P)を(X)中に導入する方法等が挙げられる。このようにして(X)および必要により溶剤(S)中に(A)が分散している分散体(Y0)が得られる。微粒子(A)としては、(X)に溶解せず、(X)中に安定分散するものが好ましい。
【0144】
このようにして、樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)、微粒子(A)または微粒子(A)が溶剤(S)に分散された微粒子分散液(P)、および二酸化炭素(X)を混合し、二酸化炭素(X)および溶剤(S)を含有する分散媒体(X0)中に樹脂(b)を分散し、微粒子(A)を表面に吸着させながら、分散された樹脂(b)を粒子成長させることにより、樹脂(b)と溶剤(S)を含有する樹脂粒子(B1)の表面に微粒子(A)が付着された樹脂粒子(C1)を形成する。(C1)が(X0)中に分散したものを分散体(Y)とする。
分散体(Y)は単一相であることが好ましい。すなわち(C1)が分散している二酸化炭素(X)を含む分散媒体(X0)の相の他に、溶剤相が分離する状態は好ましくない。したがって、溶剤相が分離しないように、二酸化炭素(X)に対する(b)の溶剤(S)溶液(L)の量を設定することが好ましい。例えば(X)に対して(L)が90重量%以下が好ましく、さらに好ましくは5〜80重量%、特に好ましくは10〜70重量%である。
また、樹脂(b)と二酸化炭素(X)の重量比は、好ましくは(b):(X)が、1:(0.1〜100)、さらに好ましくは1:(0.5〜50)、特に好ましくは1:(1〜20)である。
【0145】
分散体(Y0)および分散体(Y)を形成させる際の温度は、樹脂粒子(C1)の分散性の点から、20℃以上が好ましく、また、微粒子(A)、樹脂粒子(B)、樹脂粒子(C)の熱劣化を防止するために、200℃以下が好ましい。さらに25〜150℃が好ましく、特に好ましくは28〜100℃、最も好ましくは30〜80℃である。
【0146】
分散体(Y0)および分散体(Y)を形成する容器内の圧力は、(C)を二酸化炭素(X)に良好に分散させるために、好ましくは7MPa以上であり、設備コスト、運転コストの観点から、好ましくは40MPa以下である。さらに好ましくは7.5〜35MPa、より好ましくは8〜30MPa、特に好ましくは8.5〜25MPa、最も好ましくは9〜20MPaである。
(Y0)、および(Y)の温度及び圧力は、樹脂(b)が(X0)中に溶解せず、且つ(b)が凝集・合一可能な範囲内で設定することが好ましい。通常、低温・低圧ほど目的分散物が(X)中に溶解しない傾向となり、高温・高圧ほど(b)が凝集・合一し易い傾向となる。
【0147】
本発明に用いる二酸化炭素(X)中には、分散媒としての物性値(粘度、拡散係数、誘電率、溶解度、界面張力等)を調整するために、他の物質(e)を適宜含んでよく、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気等の不活性気体等が挙げられる。
本発明における二酸化炭素(X)と他の物質(e)の合計中の(X)の量は、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは重量80%以上、とくに好ましくは90重量%以上である。
【0148】
本発明において、分散体(Y)を製造する工程に、分散安定剤(D)を使用することができる。
分散安定剤(D)としては、ジメチルシロキサン基やフッ素を含有する官能基を有する化合物が挙げられる。分散安定剤(D)は、二酸化炭素に親和性を有するジメチルシロキサン基、含フッ素基と共に、樹脂(b)に親和性を有する化学構造を有することが好ましい。
より具体的には、後述のジメチルシロキサン基を有するモノマー(あるいは反応性オリゴマー)(M1−1)、及び/又はフッ素を含有するモノマー(M1−2)と、前述の樹脂(b)を構成するモノマー(M2)との共重合体が好ましい。共重合の形態はランダム、ブロック、グラフトのいずれでもよいが、ブロックあるいはグラフトが好ましい。
【0149】
例えば樹脂(b)がビニル系樹脂である場合、分散安定剤(D)は、ジメチルシロキサン基及びフッ素を含有する官能基の少なくとも一方の基を有するモノマーを構成単位とするビニル樹脂であることが好ましい。
ジメチルシロキサン基を有するモノマー(あるいは反応性オリゴマー)(M1−1)としては、メタクリル変性シリコーンが好ましく、次式に示す構造を持つ。
(CH3)3SiO((CH3)2SiO)aSi(CH3)2
但しaは、平均値で15〜45であり、Rはメタクリル基を含む有機変性基である。Rの例としては、−C36OCOC(CH3)=CH2が挙げられる。
【0150】
また、フッ素を含有するモノマー(M1−2)の具体例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)等のパーフルオロオレフィン;パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFAVE)、パーフルオロ(1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)(PFDD)、パーフルオロ−(2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン)(MMD)、パーフルオロブテニルビニルエーテル(PFBVE)等のパーフルオロビニルエーテル;ビニリデンフルオライド(VdF)、トリフルオロエチレン、1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニル、トリフルオロプロピレン、3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、パーフルオロ(ブチル)エチレン(PFBE)等の水素原子含有フルオロオレフィン;1,1−ジヒドロパーフルオロオクチルアクリレート(DPFOA)、1,1−ジヒドロパーフルオロオクチルメタクリレート(DPFOMA)、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート(PFOEA)、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート(PFOEMA)、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(PFHEMA)、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート(PFBEMA)等のポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート;α−フルオロスチレン、β−フルオロスチレン、α,β−ジフルオロスチレン、β,β−ジフルオロスチレン、α,β,β−トリフルオロスチレン、α−トリフルオロメチルスチレン、2,4,6−トリ(トリフルオロメチル)スチレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−α−メチルスチレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−β−メチルスチレン等のフルオロスチレン等が挙げられる。
樹脂(b)を構成するモノマー(M2)としては、前述のビニル系モノマー(1)〜(10)を使用することが好ましい。
【0151】
また樹脂(b)がウレタン樹脂である場合、分散安定剤(D)は、ジメチルシロキサン基及びフッ素を含有する官能基の少なくとも一方の基を有するモノマーを構成単位とするウレタン樹脂であることが好ましい。
(M1−1)としてはアミノ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン等の活性水素を含む官能基を有するポリシロキサンが好ましい。(M1−2)としては、2,2ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3,4,4−テトラフルオロ−1,6−ヘキサンジオール等の含フッ素基ポリオール、含フッ素基(ポリ)アミン、含フッ素基(ポリ)チオール等の活性水素を含む官能基を有するフッ素化合物、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロプロパン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロブタン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロペンタン及びビス(イソシアナトメチル)パーフルオロヘキサン等の含フッ素基(ポリ)イソシアネートが好ましい。
(M2)としては、上述のポリイソシアネート(15)、水、ジオール(11)、3価以上のポリオール(12)ジカルボン酸(13)、3価以上のポリカルボン酸(14)、ポリアミン(16)、ポリチオール(17)等が好ましい。
【0152】
また樹脂(b)が酸価を有する場合、分散性の観点より分散安定剤(D)はアミノ基を有することが好ましい。樹脂(b)の酸価は1〜50が好ましく、さらに好ましくは3〜40、最も好ましくは5〜30である。アミノ基は1級、2級、3級のいずれでもよく、また含フッ素基、ジメチルシロキサン基を含む化合物の側鎖、片末端、両末端、側鎖両末端いずれの位置に導入されたものを使用してもよい。
【0153】
また樹脂(b)が酸価を有する場合、分散安定性の観点より微粒子(A)は粒子表面にアミノ基を有することが好ましい。アミノ基は1級、2級、3級のいずれでもよく、またアミノ基を含有させる形態は特に限定されず、例えばアミノ基を有する化合物を微粒子(A)中に分散、含浸等の方法により含有させる方法、微粒子(A)を構成する成分にアミノ基を有する化合物を使用する方法、微粒子(A)表面にアミノ基含有カップリング剤等を反応させる方法、微粒子(A)表面にアミノ基含有化合物を吸着させる方法等が挙げられる。
【0154】
分散安定剤(D)は、分散体(Y)を製造する温度・圧力条件における二酸化炭素(X)中へ溶解することが好ましい。
分散安定剤(D)の添加量は、分散安定性の観点から、樹脂(b)の重量に対し50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.01〜40重量%、特に好ましくは0.03〜30重量%である。
分散安定剤(D)の好ましいMwの範囲は100〜10万であり、さらに好ましくは200〜5万、特に好ましくは500〜3万である。この範囲内にすると、(D)の分散安定効果が向上する。
【0155】
樹脂(b)と溶剤(S)を含有する樹脂粒子(B1)の表面に微粒子(A)が付着された樹脂粒子(C1)が二酸化炭素(X)および溶剤(S)を含有する分散媒体(X0)中に分散された分散体(Y)から、通常、減圧により二酸化炭素(X)および溶剤(S)を除去して、樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)の表面に微粒子(A)が付着され、または皮膜化されてなる樹脂粒子(C)を得る。その際、そのまま容器を減圧し大気圧に戻すと、樹脂粒子(C1)中に溶剤(S)が残存しているため、樹脂粒子(C1)同士の合一が起きる。したがって、溶剤(S)の含有量が合一の生じない程度となるまで脱溶剤する必要がある。合一防止の観点から、脱溶剤後の樹脂粒子(C)中の溶剤(S)の含有量は、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、とくに好ましくは2重量%以下である。
本発明における樹脂粒子(C1)または(C)中の、溶剤(S)含有量の測定方法は、下記のとおりである。
〔樹脂粒子中の溶剤含有量の測定方法〕
測定対象の樹脂粒子1重量部にN,N−ジメチルホルムアミド5重量部を加え、超音波で30分、分散、溶解させた後、樹脂粒子中の溶剤を抽出した。上澄み液をガスクロマトグラフィで分析し、樹脂粒子中の溶剤および残留モノマーを定量することにより、溶剤濃度を測定した。分析時の測定条件は、以下の通りである。
装置:島津GC−14A
カラム:CBP20−M 50−0.25
検出器:FID
注入量:2μml
キャリアガス:He 2.5kg/cm2
水素流量:0.6kg/cm2
空気流量:0.5kg/cm2
チャートスピード:10mm/min
感度:Range101×Atten6
カラム温度:70℃
試料注入温度:150℃
【0156】
樹脂粒子(C1)中の溶剤(S)の脱溶剤方法としては、脱溶剤効率の観点から樹脂粒子(C1)の分散した分散体(Y)を冷却し、その後溶剤(S3)を加える工程を含む必要がある。分散体(Y)を冷却することによって樹脂(b)の溶剤(S)への溶解度が低下し、樹脂粒子(C1)中の溶剤(S)が粒子内部から二酸化炭素(X)と溶剤(S)を含む分散媒体(X0)相へ吐き出されることによって、樹脂粒子(C1)中の溶剤(S)含有量を、効率よく低下させることが出来る。その後、分散体(Y)に対し、溶剤(S)と異なる組成(混合溶剤の場合は、一部が同じ組成であってもよい。)の溶剤(S3)を加えることによって樹脂粒子(C1)の溶剤(S)含有量を、効率よくさらに低下させることができる。分散体(Y)を冷却し、溶剤(S3)を加える工程を含む方法であれば、他の脱溶剤方法と併用しても構わない。また、冷却する工程と溶剤(S3)を加える工程の間に、固液分離をする工程を入れても構わない。
【0157】
上記の分散体(Y)を冷却する温度は、使用したものと同一組成の、(b)の溶剤(S)溶液(L)のDSC測定降温時における発熱ピーク温度Ta[℃]で決められ、Ta[℃]以下〔好ましくは(Ta−3)[℃]以下〕に冷却する必要がある。冷却温度がTa[℃]より高い場合、樹脂(b)の析出が起こらず、樹脂粒子(C1)中の溶剤(S)含有量が10重量%以下まで低下しない。
好ましいTa[℃]の範囲は、−30〜60℃であり、さらに好ましくは−25〜55℃、特に好ましくは−20〜50℃である。
【0158】
冷却方法は、Ta[℃]以下にすることができればどのような方法であっても構わないが、予め(Ta−10)[℃]以下〔好ましくは(Ta−20)〜(Ta−60)[℃]〕に冷却された、液状の二酸化炭素(X1)を分散体(Y)中に加える方法が好ましい。(Ta−10)[℃]以下に冷却された液状の二酸化炭素(X1)を加えることで、工程時間が大幅に短縮できる。
冷却のために加える液状の二酸化炭素(X1)の量は、分散体(Y)の重量に対して、好ましくは1倍以上、さらに好ましくは1〜10倍である。(X1)の重量が1倍以上であると、(Y)の温度が容易にTa〔℃〕以下になる。
【0159】
本発明に用いる溶剤(S3)は、脱溶剤効率の観点から、(Ta+10)℃における樹脂(b)の溶剤(S3)不溶分が80重量%以上である溶剤が好ましい。溶剤(S3)は樹脂(b)の貧溶剤である。(b)の(S3)不溶分は、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。なお、樹脂(b)の溶剤(S3)不溶分の測定は、前記の標準状態における樹脂(b)の溶剤(S)不溶分の測定法に準じて、(Ta+10)℃で行う。
溶剤(S3)は具体的には、水、アルコール(メタノール、エタノール、イソプルピルアルコール)、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサン及びデカン等が挙げられる。樹脂粒子製造後、除去の容易さの観点から、水、メタノール、エタノール、イソプルピルアルコール、ヘキサン及びデカンからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶剤又は混合溶剤が好ましい。
【0160】
分散媒体(X0)中の溶剤(S)の、溶剤(S3)への標準状態における溶解度は、脱溶剤効率の観点から、30重量%以上が好ましく、さらに好ましくは60重量%以上、とくに好ましくは80重量%以上である。
【0161】
加える溶剤(S3)の温度は、好ましくは10〜40℃、さらに好ましくは20〜30℃である。また、溶剤(S3)の投入量は、脱溶剤効率の観点から、分散体(Y)の重量に対して、0.01〜2倍が好ましく、さらに好ましくは0.05〜1.5倍、とくに好ましくは0.1〜1倍である。
【0162】
本発明で用いる溶剤(S)と溶剤(S3)の組み合わせは、溶解度を上記の好ましい範囲とする観点から、具体的には、例えば下記(1)、(2)が挙げられる。
(1) (S)はケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトンなど)、またはケトン系溶剤と水の混合溶剤、(S3)は水、メタノール、またはこれらの混合溶剤。
(2) (S)はケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトンなど)と脂肪族炭化水素溶剤(デカン、ヘキサン、ヘプタンなど)の混合溶剤、またはこれらに水を加えた混合溶剤、(S3)は水、メタノール、またはこれらの混合溶剤。
【0163】
分散体(Y)の温度をTa[℃]以下に冷却し、溶剤(S3)を加えて樹脂粒子(C1)から溶剤(S)を脱溶剤した後、液状の二酸化炭素(X1)、溶剤(S3)および溶剤(S)を含有する分散媒体(X3)と樹脂粒子(C)とを固液分離して、樹脂粒子(C)を捕集するのが好ましい。
樹脂粒子(C)の捕集方法は特に限定されず、Ta〔℃〕以下に冷却した後の分散体(Y)をフィルターでろ別する方法や、サイクロン等により遠心分離する方法が例として挙げられる。樹脂粒子(C)は減圧後に捕集してもよく、また減圧前に一旦高圧中で捕集した後、減圧してもよい。高圧下で捕集した後に減圧する場合の、高圧下からの樹脂粒子(C)の取り出し方としては、バッチ操作で捕集容器を減圧してもよく、またロータリーバルブを使用して連続的取り出し操作を行ってもよい。
上記方法中、好ましい捕集方法は、Ta〔℃〕以下に冷却された分散体(Y)をフィルターでろ別した後、減圧して捕集する方法である。減圧後、さらに樹脂粒子(C)の固形分重量〔(S)および(X)を除いた重量〕に対して、液状の二酸化炭素(X1)を、好ましくは2.5〜5倍の重量投入して、樹脂粒子(C)中からさらに溶剤(S)を抽出する操作を、1回または複数回繰り返すことによって、樹脂粒子(C)の合着をより抑えることができる。
【0164】
本発明の製造方法により得られる樹脂粒子(C)は、樹脂粒子(B1)の表面に一旦微粒子(A)が付着されるが、例えば(A)として結晶性樹脂(a1)を用いた場合等、微粒子(A)を構成する材料(a)と樹脂(b)の組成、溶剤(S)の種類によっては、製造工程中に、微粒子(A)が皮膜化されて、(B)の表面に(A)が皮膜化された皮膜が形成される場合がある。
樹脂粒子(C)は、樹脂粒子(B)の表面に、微粒子(A)が付着されたもの、(A)由来の皮膜が形成されたもの、(A)の一部が皮膜化されたもののいずれであってもよい。
なお、樹脂粒子(C)の表面状態及び形状は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)を用い、樹脂粒子の表面を1万倍または3万倍拡大した写真にて観察できる。
【0165】
本発明の製造方法により得られる樹脂粒子(C)の体積平均粒径は、0.01〜300μmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜100μm、とくに好ましくは0.5〜50μmである。0.01μm以上であると粉体としてのハンドリング性が良好である。300μm以下であると粒度分布がより良好である。
(C)の体積平均粒径DVcと(C)の個数平均粒径DNcの比DVc/DNcは、好ましくは1.0〜1.5、さらに好ましくは1.0〜1.4、とくに好ましくは1.0〜1.3である。1.5以下であると粉体特性(流動性、帯電均一性等)が著しく向上する。
【0166】
樹脂粒子(C)は、その粒径均一性、粉体流動性、保存安定性等の観点から、樹脂粒子(B)の表面の5%以上が微粒子(A)もしくは(A)由来の皮膜で覆われているのが好ましく、更に好ましくは30%以上である。なお、表面被覆率は、走査電子顕微鏡(SEM)で得られる像の画像解析から下式に基づいて求めることができる。
表面被覆率(%)=100×[(A)もしくは(A)由来の皮膜に覆われている部分の(B)の表面積]/[(A)もしくは(A)由来の皮膜に覆われている部分の(B)の表面積+(B)の表面が露出している部分の面積]
【0167】
本発明の製造方法により得られる樹脂粒子(C)は、微粒子(A)を構成する材料(a)と樹脂粒子(B)を構成する樹脂(b)の重量比率が、好ましくは(0.1:99.9)〜(30:70)であり、さらに好ましくは(0.2:99.8)〜(20:80)である。材料(a)と樹脂(b)の重量比率がこの範囲内であると、低温定着性と長期の保存安定性が両立し好ましい。
樹脂粒子(C)中の(a)が結晶性樹脂(a1)である場合、公知の方法、例えばDSCにより(a1)に固有な吸熱ピークの吸熱量から結晶性樹脂(a1)の重量比率を算出する方法により測定することがでる。
【0168】
本発明の製造方法により得られる樹脂粒子(C)は、微粒子(A)と樹脂粒子(B)の粒径、及び、微粒子(A)による樹脂粒子(B)表面の被覆率を変えることで粒子表面に所望の凹凸を付与することができる。さらに減圧時の温度・圧力をコントロールすることにより内部に気泡を有する多孔質体が得られ、比表面積を大きくすることができる。
粉体流動性を向上させたい場合には、(C)のBET値比表面積が0.5〜5.0m2/gであるのが好ましい。本発明におけるBET比表面積は、比表面積計、例えばQUANTASORB(ユアサアイオニクス製)を用いて測定(測定ガス:He/Kr=99.9/0.1vol%、検量ガス:窒素)したものである。同様に粉体流動性の観点から、(C)の表面平均中心線粗さRaが0.01〜0.8μmであるのが好ましい。Raは、粗さ曲線とその中心線との偏差の絶対値を算術平均した値のことであり、例えば、走査型プローブ顕微鏡システム(東陽テクニカ製)で測定することができる。
【0169】
樹脂粒子(C)の形状は、粉体流動性、溶融レベリング性等の観点から球状であるのが好ましい。その場合、微粒子(A)および樹脂粒子(B)も球状であるのが好ましい。(C)はWadellの実用球形度が0.85〜1.00であるのが好ましい。なお、Wadell実用球形度は、粒子の投影面積に等しい面積を持つ円の直径と粒子の投影像に外接する最小面積の円との直径の比から求められる。粒子の投影像は、例えば走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影することができる。
【実施例】
【0170】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の記載において「部」は重量部、「%」は特に記載のない場合、重量%を示す。
【0171】
下記の結晶化度、融点、ガラス転移温度(Tg)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、体積平均粒径、およびTaは、以下の方法で測定した。
<結晶化度の測定方法>
試料(5mg)を採取してアルミパンに入れ、DSC(示差走査熱量測定)(測定装置:RDC220、エスアイアイナノテクノロジー(株)製)を用いて室温から昇温速度20℃/minにて温度を変化させながら、吸熱ピークの面積より求めた融解熱量(ΔHm(J/g))を求めた。測定されたΔHmに基づき以下の式により結晶化度(%)を算出した。
結晶化度=(融解熱量/a)×100
上式中、aは以下のようにして測定する。
測定しようとする樹脂と同組成の標品となる樹脂の融解熱量をDSCで測定し、JISK0131(1996年)(X線回折分析通則 13結晶化度測定 (2)絶対法)に準じた測定方法で結晶化度を測定した。縦軸に融解熱量、横軸に結晶化度を座標にとり、標品のデータをプロットし、その点と原点の2点から直線を引き、結晶化度が100%となるように外挿した場合の融解熱量を求めた値がaである。
【0172】
<融点の測定方法>
試料(5mg)を採取してアルミパンに入れ、DSC(示差走査熱量測定)(測定装置:RDC220、エスアイアイナノテクノロジー(株)製)により、昇温速度毎分10℃で、結晶溶融による吸熱ピークの温度(℃)を求めた。
<ガラス転移温度(Tg)の測定方法>
試料をそれぞれ5mg秤り取り、DSC(示差走査熱量測定)(測定装置:RDC220、エスアイアイナノテクノロジー(株)製)により、昇温速度毎分10℃でガラス転移温度を測定した。
<数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)の測定方法>
試料をそれぞれ濃度2.5g/Lでテトラヒドロフランに溶解させ、GPCにより測定した。
GPC機種:HLC−8120GPC、東ソー(株)製
カラム :TSKgel GMHXL)2本+TSKgel Multipore
HXL−M(東ソー(株)製)
測定温度 :40℃
溶液注入量:100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
<体積平均粒径の測定方法>
試料5mgをイオン交換水10gに分散させた後、マルチサイザーIII(コールター社製)により測定した。
<(Ta)の測定方法>
固形分量40%に調整した樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)をそれぞれ5mg秤り取り、DSC(示差走査熱量測定)(測定装置:RDC220、エスアイアイナノテクノロジー(株)製)により、30℃から開始し−50℃まで降温速度毎分1℃で降温させて、発熱ピーク温度を測定した。
【0173】
製造例1<樹脂(b−1)の調製>
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、1.2−プロピレングリコール(以下、プロピレングリコールと記載)831部、テレフタル酸703部、アジピン酸47部、および縮合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで230℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成するプロピレングリコール、水を留去しながら4時間反応させ、さらに5〜20mmHgの減圧下に反応させ、軟化点が87℃になった時点で180℃まで冷却し、さらに無水トリメリット酸24部、テトラブトキシチタネート0.5部を投入し90分反応させた後、取り出した。回収されたプロピレングリコールは442部であった。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、非結晶性ポリエステル樹脂(b−1)を得た。この樹脂のMnは1900、Tgは45℃であった。
【0174】
製造例2<樹脂(b−2)の調製>
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、プロピレングリコール729部、テレフタル酸683部、アジピン酸67部、無水トリメリット酸38部および縮合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで230℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成するプロピレングリコール、水を留去しながら4時間反応させ、さらに5〜20mmHgの減圧下に反応させた。回収されたプロピレングリコールは172部であった。軟化点が160℃になった時点で取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、非結晶性ポリエステル樹脂(b−2)を得た。この樹脂のMnは5700、Tgは63℃であった。
【0175】
製造例3<樹脂(b−3)の調製>
撹拌棒および温度計をセットしたオートクレーブに、キシレン24部を投入し、アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル/スチレン/アクリル酸2−エチルヘキシル(25%/33%/40%/2%)の混合モノマー2,000部と重合触媒アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル1部を、170℃で3時間かけて滴下重合をおこなった。180℃まで昇温しながら常圧で脱揮し、180℃になったところで減圧に切り替え、2時間かけて減圧で脱揮をおこない、非結晶性ビニル樹脂(b−3)を得た。この樹脂のMnは10500、Tgは62℃であった。
【0176】
製造例4<結晶性部(p−1)の調整>
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、セバシン酸159部、アジピン酸11部と1,4−ブタンジオール108部および縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を入れ、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで225℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水および1,4−ブタンジオールを留去しながら4時間反応させ、さらに5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwがおよそ10000になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、結晶性重縮合ポリエステル樹脂[結晶性部(p−1)]を得た。[結晶性部(p−1)]の融点は57℃、Mnは5000、Mwは11000、水酸基価は30であった。
【0177】
製造例5<結晶性部(p−2)の調整>
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、セバシン酸121部、ジメチルテレフタル酸118部と1,6−ヘキサンジオール124部および縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)1部を入れ、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで220℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水および1,6−ヘキサンジオールを留去しながら4時間反応させ、さらに5〜20mmHgの減圧下に反応させ、Mwが8000になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、結晶性重縮合ポリエステル樹脂[結晶性部(p−2)]を得た。[結晶性部(p−2)]の融点は53℃、Mwは8000、水酸基価は46であった。
【0178】
製造例6<結晶性部(p−3)の調整>
攪拌装置および脱水装置のついた反応容器に、1,4−ブタンジオール2部、ε−カプロラクトン650部、ジブチルチンオキサイド2部を投入し、常圧、窒素雰囲気下、150℃で10時間反応を行った。さらに得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し、ラクトン開環重合物である結晶性ポリエステル樹脂[結晶性部(p−3)]を得た。[結晶性部(p−3)]の融点は60℃、Mwは9800、水酸基価は14であった。
【0179】
製造例7<樹脂(b−4)の調製>
攪拌棒および温度計をセットした反応容器に、トリレンジイソシアネート44部およびMEK100部を仕込んだ。この溶液にシクロヘキサンジメタノール32部を仕込み80℃で2時間反応させた。次にこの非結晶性ポリウレタン樹脂(q−1)の溶液を[結晶性部(p−1)]140部をMEK140部に溶解させた溶液へ投入し、80℃で4時間反応して結晶性ブロック樹脂(b−4)のMEK溶液を得た。溶剤を除いた後の結晶性ブロック樹脂(b−4)の融点は56℃、Mnは14000、Mwは28000であった。
【0180】
製造例8<樹脂(b−5)の調製>
攪拌棒および温度計をセットした反応容器に、トリレンジイソシアネート42部およびMEK100部を仕込んだ。この溶液にシクロヘキサンジメタノール31部を仕込み80℃で2時間反応させた。次にこの非結晶性ポリウレタン樹脂(q−2)の溶液を[結晶性部(p−2)]126部をMEK140部に溶解させた溶液へ投入し、80℃で4時間反応して結晶性ブロック樹脂(b−5)のMEK溶液を得た。溶剤を除いた後の結晶性ブロック樹脂(b−5)の融点は53℃、Mnは10000、Mwは22000であった。
【0181】
製造例9<樹脂(b−6)の調製>
攪拌棒および温度計をセットした反応容器に、トリレンジイソシアネート44部およびMEK100部を仕込んだ。この溶液にシクロヘキサンジメタノール32部を仕込み80℃で2時間反応させた。次にこの非結晶性ポリウレタン樹脂(q−1)の溶液を[結晶性部(p−3)]250部をMEK250部に溶解させた溶液へ投入し、80℃で4時間反応して結晶性ブロック樹脂(b−6)のMEK溶液を得た。溶剤を除いた後の結晶性ブロック樹脂(b−6)の融点は60℃、Mnは10000、Mwは22000であった。
【0182】
製造例10<樹脂溶液(L−1)の調製>
攪拌装置のついた容器に、アセトン450部、イオン交換水50部からなる混合溶剤である溶剤(S−1)に、製造例1で得られた樹脂(b−1)228部、製造例2で得られた樹脂(b−2)57部及びカーボンブラック15部を仕込み、樹脂(b−1)、(b−2)が完全に溶解するまで攪拌し、樹脂溶液(L−1)を得た。標準状態における樹脂(b−1)および樹脂(b−2)の溶剤(S−1)不溶分は0.1%以下、溶剤(S−1)のSP値は10.5であった。また樹脂溶液(L−1)のDSC測定降温時における発熱ピーク温度(Ta)は−10℃であった。
【0183】
製造例11<樹脂溶液(L−2)の調製>
攪拌装置のついた容器に、アセトン490部、メタノール210部からなる混合溶剤である溶剤(S−2)に、製造例3で得られた樹脂(b−3)280部、及びカーボンブラック15部を仕込み、樹脂(b−3)が完全に溶解するまで攪拌し、樹脂溶液(L−2)を得た。標準状態における樹脂(b−3)の溶剤(S−2)不溶分は0.1%以下、溶剤(S−2)のSP値は10.9であった。また樹脂溶液(L−2)のTaは−12℃であった。
【0184】
製造例12<樹脂溶液(L−3)の調製>
攪拌装置のついた容器に、アセトン450部、イオン交換水50部からなる混合溶剤である溶剤(S−1)に、製造例7で得られた樹脂(b−4)285部、及びカーボンブラック15部を仕込み、樹脂(b−4)が完全に溶解するまで攪拌し、樹脂溶液(L−3)を得た。標準状態における樹脂(b−4)の溶剤(S−1)不溶分は0.1%以下であった。また樹脂溶液(L−3)のTaは10℃であった。
【0185】
製造例13<樹脂溶液(L−4)の調製>
攪拌装置のついた容器に、アセトン450部、イオン交換水50部からなる混合溶剤である溶剤(S−1)に、製造例8で得られた樹脂(b−5)285部、及びカーボンブラック15部を仕込み、樹脂(b−5)が完全に溶解するまで攪拌し、樹脂溶液(L−4)を得た。標準状態における樹脂(b−5)の溶剤(S−1)不溶分は0.1%以下であった。また樹脂溶液(L−4)のTaは11℃であった。
【0186】
製造例14<樹脂溶液(L−5)の調製>
攪拌装置のついた容器に、アセトン450部、イオン交換水50部からなる混合溶剤である溶剤(S−1)に、製造例9で得られた樹脂(b−6)285部、及びカーボンブラック15部を仕込み、樹脂(b−6)が完全に溶解するまで攪拌し、樹脂溶液(L−5)を得た。標準状態における樹脂(b−6)の溶剤(S−1)不溶分は0.1%以下であった。また樹脂溶液(L−5)のTaは6℃であった。
【0187】
製造例15<結晶性樹脂(a1−1)の調製>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、および窒素吹き込み管を備えた反応容器に、トルエン500部を仕込み、別のガラス製ビーカーに、トルエン350部、ベヘニルアクリレート(炭素数22個の直鎖アルキル基を有するアルコールのアクリレート;ブレンマーVA〔日油(株)製〕)150部、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)7.5部を仕込み、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに仕込んだ。反応容器の気相部の窒素置換を行った後に、密閉下80℃で2時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から2時間、85℃で熟成した後、トルエンを130℃で3時間減圧除去して、結晶性ビニル樹脂(a1−1)を得た。この樹脂の結晶化度は42%、融点は65℃、Mnは50000であった。
【0188】
製造例16<微粒子(A−1)分散液の調製>
ノルマルヘキサン700部、結晶性ビニル樹脂(a1−1)300部を混合した後、ビーズミル(ダイノーミルマルチラボ:シンマルエンタープライゼス製)で粒径0.3mmのジルコニアビーズを用いて粉砕を行い、乳白色の微粒子(A−1)分散液を得た。この分散液中の微粒子(A−1)の体積平均粒径は0.3μmであった。
【0189】
製造例17<結晶性樹脂(a1−2)の調製>
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ドデカン2酸230部、1,6−ヘキサンジオール195部、縮合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、230℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させ、さらに5〜20mmHgの減圧下に反応させ、融点が60℃となった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化し結晶性ポリエステル樹脂(a1−2)を得た。この樹脂の結晶化度は60%、融点は60℃、Mnは8000であった。
【0190】
製造例18<微粒子(A−2)分散液の調製
製造例16において、結晶性ビニル樹脂(a1−1)の代わりに、結晶性ポリエステル樹脂(a1−2)を用いた以外は製造例16と同様にして、乳白色の微粒子(A−2)分散液を得た。この分散液中の微粒子(A−2)の体積平均粒径は0.4μmであった。
【0191】
製造例19<微粒子(A−3)分散液の調整>
攪拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸EO付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、スチレン137部、メタクリル酸137部、ジビニルベンゼン3部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間攪拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−ジビニルベンゼン−メタクリル酸EO付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)(a2−1)の水性分散液を得た。さらに凍結粉砕機を用い、水性分散液より水分を除去した後、シリコーンオイル2部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合した。さらにノルマルへキサン1108部と混合し、ホモミキサーを用いて分散し、架橋性非結晶性樹脂微粒子(A−3)分散液を得た。この分散液の体積平均粒径は0.5μmであった。
【0192】
製造例20<微粒子(A−4)分散液の調整>
攪拌棒および温度計をセットした反応容器に、シリカ(a3−1)の酢酸エチル分散液(EAC−ST、日産化学工業製)900部、およびヘキサメチルジシラザン100部を添加し、60℃で1時間反応させ、シリカ微粒子(A−4)分散液を得た。この分散液の体積平均粒径は0.05μmであった。
【0193】
実施例1
図1の実験装置において、まずバルブV1、V2、V3を閉じ、V4を開けボンベB1、ポンプP3より粒子回収槽T4に二酸化炭素(0℃、純度99.99%)を導入し、13.5MPa、40℃に調整した。(調整後、V4は閉)。また樹脂溶液タンクT1に樹脂溶液(L−1)、微粒子分散液タンクT2に微粒子(A−1)分散液を仕込んだ。次にV3を開けボンベB1、ポンプP3より二酸化炭素を分散槽T3に導入し、9MPa、40℃に調整し、さらにタンクT2、ポンプP2より微粒子(A−1)分散液を導入した。次に分散槽T3の内部を2000rpmで攪拌しながら、タンクT1、ポンプP1より樹脂溶液(L−1)を分散槽T3内に導入した。導入後T3の内部の圧力は14MPaとなった。
【0194】
なお分散槽T3への仕込み組成の重量比は次の通りである。
樹脂溶液(L−1) 270部
微粒子(A−1)分散液 45部
二酸化炭素 550部
なお導入した二酸化炭素の重量は、二酸化炭素の温度(40℃)、及び圧力(15MPa)から二酸化炭素の密度を下記文献2に記載の状態式より算出し、これに分散槽T3の体積を乗じることにより算出した。
文献2:Journal of Physical and Chemical Reference data、vol.25、P.1509〜1596
【0195】
樹脂溶液(L−1)を導入後、1分間攪拌し分散体(Y−1)を得た。バルブV1を開き、分散体(Y−1)をT4内に導入し、この間圧力が一定に保たれるように、V2の開度を調節した。この操作を60秒間行い、V1を閉めた。T4内に導入後の(Y−1)の温度は30℃であった。次に圧力ボンベB2、ポンプP4より粒子回収槽T4に(Y−1)の重量の5倍の二酸化炭素(−40℃、純度99.99%)を導入し、分散体(Y−1)温度を−15℃まで冷却した後、タンクT6、ポンプP5より(Y−1)の重量の0.5倍量の水(25℃)を導入した。圧力調整バルブV2を開いて圧力を4MPaまで減圧した。その後またV4を開いて圧力ボンベB1、ポンプP3より樹脂粒子(C−1)の固形重量分に対し3倍の二酸化炭素(0℃、純度99.99%)を導入して圧力を14MPaにした後、ただちに圧力調整バルブV2を開いて圧力を大気圧まで減圧した。樹脂粒子(C−1)中の溶剤含有量が200ppm以下になるまでこの脱溶剤操作を5回繰り返し、樹脂粒子(C−1)の固形重量分に対し15倍の二酸化炭素(0℃、純度99.99%)を使用した。この間、抽出された溶剤を含む二酸化炭素を溶剤トラップ槽T5に排出すると共に、樹脂粒子(B)の表面に微粒子(A)由来の皮膜が形成された樹脂粒子(C−1)をフィルターF1に捕捉した。
【0196】
実施例2
実施例1において、樹脂溶液(L−1)の代わりに樹脂溶液(L−2)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子(B)の表面に微粒子(A)由来の皮膜が形成された樹脂粒子(C−2)を得た。この際脱溶剤に用いた二酸化炭素(0℃、純度99.99%)は、樹脂粒子(C−2)の固形重量分に対し12倍であった。実施例2における分散槽T3への仕込み組成の重量比および脱溶剤時の冷却温度は次の通りである。
樹脂溶液(L−2) 270部
微粒子(A−1)分散液 45部
二酸化炭素 550部
冷却温度 −15℃
【0197】
実施例3
実施例1において、樹脂溶液(L−1)の代わりに樹脂溶液(L−3)を使用したこと、および冷却のために導入する二酸化炭素量を分散体(Y−1)の重量の1倍とした以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子(B)の表面に微粒子(A)由来の皮膜が形成された樹脂粒子(C−3)を得た。この際脱溶剤に用いた二酸化炭素(0℃、純度99.99%)は、樹脂粒子(C−3)の固形重量分に対し12倍であった。実施例3における分散槽T3への仕込み組成の重量比および脱溶剤時の冷却温度は次の通りである。
樹脂溶液(L−3) 270部
微粒子(A−1)分散液 45部
二酸化炭素 550部
冷却温度 5℃
【0198】
実施例4
実施例3において、樹脂溶液(L−3)の代わりに樹脂溶液(L−4)を使用したこと以外は実施例3と同様にして、樹脂粒子(B)の表面に微粒子(A)由来の皮膜が形成された樹脂粒子(C−4)を得た。この際脱溶剤に用いた二酸化炭素(0℃、純度99.99%)は、樹脂粒子(C−4)の固形重量分に対し12倍であった。実施例4における分散槽T3への仕込み組成の重量比および脱溶剤時の冷却温度は次の通りである。
樹脂溶液(L−4) 270部
微粒子(A−1)分散液 45部
二酸化炭素 550部
冷却温度 5℃
【0199】
実施例5
実施例3において、樹脂溶液(L−3)の代わりに樹脂溶液(L−5)を使用したこと、冷却のために導入する二酸化炭素量を分散体(Y−1)の重量の2倍としたこと、および水の導入量を(Y−1)の重量の0.1倍量としたこと以外は実施例3と同様にして、樹脂粒子(B)の表面に微粒子(A)由来の皮膜が形成された樹脂粒子(C−5)を得た。この際脱溶剤に用いた二酸化炭素(0℃、純度99.99%)は、樹脂粒子(C−5)の固形重量分に対し12倍であった。実施例5における分散槽T3への仕込み組成の重量比および脱溶剤時の冷却温度は次の通りである。
樹脂溶液(L−5) 270部
微粒子(A−1)分散液 45部
二酸化炭素 550部
冷却温度 0℃
【0200】
実施例6
実施例3において、微粒子(A−1)分散液の代わりに、微粒子(A−2)分散液を使用したこと、水の導入量を(Y−1)の重量の1倍量としたこと以外は実施例3と同様にして、樹脂粒子(B)の表面に微粒子(A)由来の皮膜が形成された樹脂粒子(C−6)を得た。この際脱溶剤に用いた二酸化炭素(0℃、純度99.99%)は、樹脂粒子(C−6)の固形重量分に対し12倍であった。実施例6における分散槽T3への仕込み組成の重量比は次の通りである。
樹脂溶液(L−3) 270部
微粒子(A−2)分散液 45部
二酸化炭素 550部
冷却温度 5℃
【0201】
実施例7
実施例3において、水の代わりにエタノールを用いたこと以外は実施例3と同様にして、樹脂粒子(B)の表面に微粒子(A)由来の皮膜が形成された樹脂粒子(C−7)を得た。この際脱溶剤に用いた二酸化炭素(0℃、純度99.99%)は、樹脂粒子(C−7)の固形重量分に対し12倍であった。実施例7における分散槽T3への仕込み組成の重量比は次の通りである。
樹脂溶液(L−3) 270部
微粒子(A−1)分散液 45部
二酸化炭素 550部
冷却温度 5℃
【0202】
実施例8
実施例3において、水の代わりにデカンを用いたこと以外は実施例3と同様にして、樹脂粒子(B)の表面に微粒子(A)由来の皮膜が形成された樹脂粒子(C−8)を得た。この際脱溶剤に用いた二酸化炭素(0℃、純度99.99%)は、樹脂粒子(C−8)の固形重量分に対し12倍であった。実施例8における分散槽T3への仕込み組成の重量比は次の通りである。
樹脂溶液(L−3) 270部
微粒子(A−1)分散液 45部
二酸化炭素 550部
冷却温度 5℃
【0203】
実施例9
実施例3において、微粒子(A−1)分散液の代わりに、微粒子(A−3)分散液を使用したこと以外は実施例3と同様にして、樹脂粒子(B)の表面に微粒子(A)由来の皮膜が形成された樹脂粒子(C−9)を得た。実施例9における分散槽T3への仕込み組成の重量比は次の通りである。
樹脂溶液(L−3) 270部
微粒子(A−3)分散液 68部
二酸化炭素 550部
冷却温度 5℃
【0204】
実施例10
実施例3において、微粒子(A−1)分散液の代わりに、微粒子(A−4)分散液を使用したこと以外は実施例3と同様にして、樹脂粒子(B)の表面に微粒子(A)が付着した樹脂粒子(C−10)を得た。実施例10における分散槽T3への仕込み組成の重量比は次の通りである。
樹脂溶液(L−3) 270部
微粒子(A−4)分散液 25部
二酸化炭素 550部
冷却温度 5℃
【0205】
比較例1
実施例1において脱溶剤時冷却せず、水を導入しない以外は実施例1と同様にして、比較樹脂粒子(C’−1)を得た。この際脱溶剤に用いた二酸化炭素(0℃、純度99.99%)は、樹脂粒子(C’−1)の固形重量分に対し210倍であり、脱溶剤時の分散体(Y’−1)温度は15℃であった。
樹脂溶液(L−1) 270部
微粒子(A−1)分散液 45部
二酸化炭素 550部
【0206】
比較例2
実施例3において脱溶剤時冷却せず、水を導入しない以外は実施例3と同様にして、比較樹脂粒子(C’−2)を得た。この際脱溶剤に用いた二酸化炭素(0℃、純度99.99%)は、樹脂粒子(C’−2)の固形重量分に対し210倍であり、脱溶剤時の分散体(Y’−2)温度は15℃であった。
樹脂溶液(L−1) 270部
微粒子(A−1)分散液 45部
二酸化炭素 550部
【0207】
評価結果
実施例1〜10、比較例1〜2で得られた樹脂粒子について、前記の方法で、形状、溶剤(S)含有量を測定し、以下に記載した評価方法で体積平均粒径、粒度分布、耐熱保存性、低温定着性(定着温度)を評価し、結果を表1に記載した。
<体積平均粒径、粒度分布の評価>
樹脂粒子をドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(濃度0.1%)に分散して樹脂粒子〔表中では(C)と表記〕の体積平均粒径および体積平均粒径/個数平均粒径をコールターカウンター[マルチサイザーIII(ベックマン・コールター社製)]で測定した。体積平均粒径/個数平均粒径が小さいほど、粒度分布がシャープであることを示す。
【0208】
<耐熱保存性の評価>
樹脂粒子の耐熱保存性を下記の方法で評価した。即ち、50℃に温調された乾燥機に樹脂粒子を15時間静置し、ブロッキングの程度により下記の基準で評価した。
○:ブロッキングが発生しない。
△:ブロッキングが発生するが、簡単に指などで力を加えると容易に分散する。
×:ブロッキングが発生し、簡単に指などで力を加えても分散しない。
【0209】
<低温定着性(定着温度)の評価>
実施例1〜10、比較例1〜2で得られた樹脂粒子を用い、各々の樹脂粒子にアエロジルR972(日本アエロジル社製)を1.0%添加し、ミキサーを用いてよく混ぜて、アエロジルR972が樹脂粒子表面に均一に付着した低温定着性評価用樹脂粒子を作成した。
得られた樹脂粒子を紙面上に0.6mg/cm2となるよう均一に載せた。このとき樹脂粒子を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いた(上記の重量密度で粉体を均一に載せることができるのであれば他の方法を用いてもよい)。この紙を加圧ローラーに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cm2の条件で通した時のコールドオフセットの発生温度を測定し、定着温度とした。なお、60℃〜200℃の測定温度領域で全てオフセットする場合、評価不可とした。
【0210】
【表1】

【0211】
実施例1〜10で得られた樹脂粒子は、体積平均粒径/個数平均粒径が小さく、粒度分布がシャープになり、耐熱保存性に優れ、かつ低温定着性に優れていた(定着温度が低い)のに対し、比較例1〜2で得られた樹脂粒子は粒子が凝集し、粒度分布が広くなり、低温定着性が著しく劣っていた。なお、比較例1および2においては、実施例と同等近くまで脱溶剤するのに、実施例よりも多量の二酸化炭素を必要とした。
【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明の製造方法により、超臨界状態または液体状態の二酸化炭素等の高圧二酸化炭素を用いて、二酸化炭素使用量が少ない容易な脱溶剤方法で、且つ、工程時間が短く高い生産性で粒度分布がシャープな樹脂粒子を安定的に得ることができ、得られる樹脂粒子は、粒度分布がシャープで、耐熱保存性と低温定着性に優れているため、電子写真トナーの母体粒子、塗料用添加剤、化粧品用添加剤、紙塗工用添加剤、スラッシュ成型用樹脂、粉体塗料、電子部品製造用スペーサー、電子測定機器の標準粒子、電子ペーパー用粒子、医療診断用担体、電気粘性用粒子、その他成型用樹脂粒子として有用である。
【符号の説明】
【0213】
T1:樹脂溶液タンク
T2:微粒子分散液タンク
T3:分散槽(最高使用圧力20MPa、最高使用温度100℃、攪拌機つき)
T4:粒子回収槽(最高使用圧力20MPa、最高使用温度100℃)
F1:セラミックフィルター(メッシュ:0.5μm)
T5:溶剤トラップ
T6:溶剤(S3)タンク
B1、B2:二酸化炭素ボンベ
P1、P2:溶液ポンプ
P3、P4:二酸化炭素ポンプ
P5:溶剤(S3)ポンプ
V1、V3、V4:バルブ
V2:圧力調整バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)、微粒子(A)または微粒子(A)が溶剤(S)中に分散された微粒子分散液(P)、および圧力が1.5MPa以上の二酸化炭素(X)を混合して、樹脂(b)と溶剤(S)を含有する樹脂粒子(B1)の表面に微粒子(A)が付着された樹脂粒子(C1)が二酸化炭素(X)および溶剤(S)を含有する分散媒体(X0)中に分散された分散体(Y)を製造し、ついで樹脂粒子(C1)と分散媒体(X0)から二酸化炭素(X)および溶剤(S)を除去する工程を含む、樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)の表面に微粒子(A)が付着され、または皮膜化されてなる樹脂粒子(C)の製造方法において、(C1)と(X0)から(X)および(S)を除去する際、分散体(Y)の温度を下記Ta[℃]以下に冷却した後、分散体(Y)に(S)と異なる溶剤(S3)を加える工程を含む樹脂粒子(C)の製造方法。
Ta:樹脂(b)の溶剤(S)溶液(L)のDSC測定降温時における発熱ピーク温度[℃]
【請求項2】
分散体(Y)の温度をTa[℃]以下に冷却する際、(Ta−10)℃以下の液状の二酸化炭素(X1)を分散体(Y)に加えて冷却する工程を含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
(Ta+10)℃における樹脂(b)の溶剤(S3)への不溶分が80重量%以上であり、分散媒体(X0)中の溶剤(S)の溶剤(S3)への標準状態おける溶解度が30%以上である請求項1または2に記載の製造法。
【請求項4】
溶剤(S3)が、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、およびデカンからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
樹脂(b)が、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
樹脂(b)が、20〜100℃の範囲に融点を有する結晶性樹脂である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−246691(P2011−246691A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69639(P2011−69639)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】