説明

樹脂粒子分散体

【課題】本発明の課題は、塗膜におけるバインダー樹脂と樹脂粒子が高い密着性を有し、摩擦時の樹脂粒子剥離が低減された塗膜が作成できる粒子分散体を提供することである。
【解決手段】樹脂(a)からなる樹脂粒子(A)、樹脂前駆体(B1)又は熱可塑性樹脂(B2)、及び分散媒体(U)を必須成分としてなり、樹脂(a)の溶解性パラメーターと、樹脂前駆体(B1)が重合又は硬化してなる樹脂(D)又は熱可塑性樹脂(B2)の溶解性パラメーターとの差が2以下であることを特徴とする樹脂粒子分散液。好ましくは、樹脂前駆体(B1)又は熱可塑性樹脂(B2)が分散媒体(U)に溶解してなり、樹脂粒子(A)が樹脂前駆体(B1)又は熱可塑性樹脂(B2)の分散媒体(U)の溶液中に分散してなる樹脂粒子分散液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂前駆体が溶解した分散媒体中に樹脂粒子が分散した粒子分散体、及び該粒子分散体を塗工して得られる塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
懸濁重合法や乳化重合、および溶液樹脂懸濁法により製造される樹脂粒子は、バインダー成分として例えば熱硬化性樹脂とともに分散媒体中に分散させることで塗料化でき、塗工後に乾燥、硬化させることで、表面に樹脂粒子によって形成された凹凸を有する塗膜とすることができる。凹凸を有する塗膜は、例えば艶消し塗料、特定の触感を有するコーティング物(例えば自動車内装部材)等として使用されている。
これらの製造法で得られた塗膜の物性は、一般的には樹脂粒子およびバインダーの物性に大きく影響され、摩擦時の樹脂粒子の剥離が発生する等の問題点がある。
【0003】
これら問題点の解決策として、表面摩擦係数を1.0以下とすることで、耐摩擦性を確保する方法(特許文献1参照)が提案されているが、この方法では、摩擦時の樹脂粒子剥離は低減できるものの、樹脂組成や硬さの設計範囲に制約を受ける等の問題がある。
【特許文献1】特開2001−342434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、塗膜におけるバインダー樹脂と樹脂粒子が高い密着性を有し、摩擦時の樹脂粒子剥離が低減された塗膜が作成できる粒子分散体を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、樹脂(a)からなる樹脂粒子(A)、樹脂前駆体(B1)又は熱可塑性樹脂(B2)、及び分散媒体(U)を必須成分としてなり、樹脂(a)の溶解性パラメーターと、樹脂前駆体(B1)が重合又は硬化してなる樹脂(D)又は熱可塑性樹脂(B2)の溶解性パラメーターとの差が2以下であることを特徴とする樹脂粒子分散液である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂粒子分散液を塗工して得られる塗膜は、塗膜におけるバインダー樹脂と樹脂粒子が高い密着性を有し、摩擦時の樹脂粒子剥離が低減される効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
樹脂(a)としては、樹脂(a)の溶解性パラメーター[以下、SP値(a)という]と、樹脂前駆体(B1)が重合又は硬化してなる樹脂(D)又は熱可塑性樹脂(B2)の溶解性パラメーター[以下、SP値(DB2)という]との差が2以下である樹脂である。樹脂(a)の溶解性パラメーターと樹脂前駆体(B)が重合又は硬化してなる樹脂(D)の溶解性パラメーターとの差[以下、SP値(Δ)という]は、2を超えると塗膜におけるバインダー樹脂と樹脂粒子の密着性が低下し、摩擦時に樹脂粒子の剥離が起こる。
【0008】
SP値(Δ)は好ましくは1.5以下、さらに好ましくは0.8以下である。
SP値(a)は、好ましくは7〜13さらに好ましくは8〜12.5である。
SP値(DB2)は、好ましくは6〜14さらに好ましくは7〜13である。
樹脂(a)を構成する単位(原子、官能基、残基)と、樹脂前駆体(B1)又は熱可塑性樹脂(B2)を構成する単位(原子、官能基、残基)を類似させることで、SP値(Δ)を2以下とするように選定できる。
【0009】
SP値は、Fedors法によって計算される。
SP値は、次式で表せる。
SP値(δ)=(ΔH/V)1/2
但しただし、式中、ΔHはモル蒸発熱(cal)を、Vはモル体積(cm3)を表す。
また、ΔH及びVは、「POLYMER ENGINEERING AND FEBRUARY,1974,Vol.14,No.2,ROBERT F.FEDORS.(151〜153頁)」に記載の原子団のモル蒸発熱の合計(ΔH)とモル体積の合計(V)を用いることができる。
この数値が近いもの同士はお互いに混ざりやすく(相溶性が高い)、この数値が離れているものは混ざりにくいことを表す指標である。
【0010】
樹脂(a)は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂であってもよいが、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びシリコン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である樹脂が好ましい。また、樹脂(a)は架橋樹脂であることが好ましい。
【0011】
本発明の樹脂粒子分散液に使用する樹脂粒子(A)を得る方法としては、以下の〔1〕〜〔4〕が挙げられる。
〔1〕ビニル樹脂の場合において、モノマーを出発原料として、重合触媒、及び必要により後述の溶剤(s)の存在下で懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法又は分散重合法等の重合反応により、樹脂粒子(A)の水性分散体を製造する方法。
【0012】
〔2〕エステル樹脂、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂等の重付加樹脂あるいは縮合樹脂の場合において、樹脂(a)の前駆体(a0)又は(a0)の溶剤溶液とを適当な分散剤存在下で水性媒体中に分散させ、その後に加熱したり、硬化剤(前駆体と反応し得る官能基を分子中に少なくとも2個有する化合物)を加えたりして硬化させて樹脂粒子(A)の水性分散体を製造する方法。
【0013】
樹脂(a)のデッドポリマーを製造して水性媒体に分散させる方法としては、以下の〔3〕及び〔4〕が挙げられる。
〔3〕予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合及び縮合重合等のいずれの重合反応様式であってもよい)により作成した樹脂(a)、及び必要により後述の溶剤(s)からなる分散液を、適当な分散剤存在下で水性媒体中に分散させ、これを加熱又は減圧等によって溶剤を除去する方法。
【0014】
〔4〕予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合及び縮合重合等のいずれの重合反応様式であってもよい)により作成した樹脂(a)、及び必要により後述の溶剤(s)からなる分散液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化し、これを加熱又は減圧等によって溶剤を除去する方法。
【0015】
上記〔1〕〜〔4〕のうち、〔1〕、〔2〕、〔3〕及びこれらの併用が好ましく、更に好ましくは〔1〕、〔2〕及びこれらの併用である。
【0016】
樹脂粒子(A)の体積平均粒径は、好ましくは1〜300μmであり、さらに好ましくは
1〜100μmである。
【0017】
本発明で使用する樹脂前駆体(B1)又は熱可塑性樹脂(B2)は、分散媒体(U)に溶解又は分散してなるが、溶解していることが好ましい。樹脂粒子(A)は樹脂前駆体(B1)又は熱可塑性樹脂(B2)の分散媒体(U)の分散液又は溶液中に分散してなる。
【0018】
本発明で使用する分散媒体(U)は、特に限定されず、たとえば、芳香族炭化水素溶剤(例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びテトラリン等);脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤(例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット及びシクロヘキサン等);ハロゲン溶剤(例えば、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン及びパークロロエチレンなど);エステル又はエステルエーテル溶剤(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルジグリコールアセテート及びエチルセロソルブアセテートなど);エーテル溶剤(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテルなど);ケトン溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン及びシクロヘキサノンなど);アルコール溶剤(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール及びベンジルアルコールなど);アミド溶剤(例えば、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドなど);スルホキシド溶剤(例えば、ジメチルスルホキシドなど);複素環式化合物溶剤(例えば、N−メチルピロリドンなど);カーボネート溶剤(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど);及びこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。これらのなかで、好ましいものはトルエン、キシレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、プロピレンカーボネートである。
【0019】
上記分散媒体(U)の中から、基板との親和性や樹脂粒子濃度、塗装、乾燥、硬化条件により適当な分散媒体が選択されるが、粒子沈降防止の観点から、樹脂粒子(A)との比重差が0〜0.04であることが好ましい。
【0020】
本発明の樹脂粒子分散液中の樹脂粒子(A)の濃度は、樹脂粒子分散液の重量に対して好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。また、樹脂粒子分散液中の樹脂前駆体(B1)及び熱可塑性樹脂(B2)の濃度は、樹脂粒子分散液の重量に対して好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。
また、樹脂粒子分散液中の分散媒体(U)の濃度は、樹脂粒子分散液の重量に対して好ましくは60〜99.8重量%、さらに好ましくは80〜99重量%である。
【0021】
本発明で使用する樹脂前駆体(B1)は、モノマー(B1)、オリゴマー(B2)からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる。
【0022】
モノマー(B1)は特に限定されないが、ビニル系モノマー、エポキシ系モノマー、ウレタン系モノマーが好ましい。
ビニル系モノマーとしては、たとえば下記(1)〜(13)が挙げられる。
(1)ビニル系炭化水素
(2)カルボキシル基含有ビニル系モノマー及びその塩
(3)スルホン基含有ビニル系モノマー、ビニル系硫酸モノエステル化物及びこれらの塩
(4)燐酸基含有ビニル系モノマー
(5)ヒドロキシル基含有ビニル系モノマー
(6)含窒素ビニル系モノマー
(7)エポキシ基含有ビニル系モノマー
(8)ハロゲン元素含有ビニル系モノマー
(9)ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類
(10)アルキル(メタ)アクリレート
(11)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー
(12)ポリ(メタ)アクリレート類
(13)その他のビニル系モノマー
【0023】
エポキシ系モノマーとしては、ポリエポキシド化合物と硬化剤とを組合せて使用され、応用目的に応じて硬化促進剤を加えることができる。
【0024】
ポリエポキシド化合物としては、脂肪族系、脂環族系、複素環系あるいは芳香族系のいずれであってよい。
【0025】
ウレタン系モノマーとしては、ブロック化されていても良い有機ポリイソシアネート化合物とポリオールとを組合せて使用され、応用目的に応じて硬化促進剤を加えることができる。
【0026】
オリゴマー(B2)は反応性基を有していても、有していなくてもよい。
反応性基を有していないオリゴマー(B2)としては、例えば、上記樹脂(a)のデッドポリマーのうち重量平均分子量が1000〜50000のものが挙げられる。
【0027】
反応性基を有するオリゴマー(B2)は、ビニル基、エポキシ基、ブロック化されていてもよいイソシアネート基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する。これらのうち好ましいものは、ビニル基、エポキシ基、ブロック化されていてもよいイソシアネート基、カルボキシル基、およびこれらの組合せである。
【0028】
熱可塑性樹脂(B2)としては、付加重合系、重縮合系、重付加系および開環重合系の樹脂などが挙げられる。
【0029】
付加重合系の樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリーp-キシリレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリブタジエンなどのジエン系ポリマーなどが挙げられる。
重縮合系樹脂としてはポリアミド、熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホンなどが、重付加系樹脂としては熱可塑性ポリウレタンなどが挙げられる。
【0030】
開環重合系樹脂としてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキシド重合体、ポリアセタールなどが挙げられる。
【0031】
樹脂(a)、樹脂前駆体(B1)、及び分散媒体(U)の好ましい組み合わせの例として、
〔アクリル樹脂・ビニル系モノマーまたはエポキシ系モノマー・芳香族炭化水素溶剤またはエステルエーテル溶剤〕、〔ポリウレタン樹脂・ウレタン系モノマーまたはビニル系モノマーまたはエポキシ系モノマー・芳香族炭化水素溶剤またはエステルエーテル溶剤〕などが挙げられる。
樹脂(a)、熱可塑性樹脂(B2)、及び分散媒体(U)の好ましい組み合わせの例として、〔アクリル樹脂・付加重合系樹脂・芳香族炭化水素溶剤またはエステルエーテル溶剤〕、〔ポリウレタン樹脂・重縮合系樹脂または付加重合系樹脂・芳香族炭化水素溶剤またはエステルエーテル溶剤〕などが挙げられる。
【0032】
本発明の樹脂粒子分散液には、目的とする用途に応じて必要により公知の添加剤(たとえば可塑剤、粘度調整剤、反応促進剤、重合開始剤、充填剤、増粘剤、耐熱もしくは耐候安定剤、レベリング剤、消泡剤、防腐剤、着色料など)を任意に含有させることができる。
【0033】
粘度調整剤としては、たとえば、ポリエーテル系等の高分子型粘度調整剤、ウレタン変性ポリエーテル系等の会合型粘度調整剤、セルロース系粘度調整剤、各種ワックス、およびシリコーン系粘度調整剤が挙げられる。
配合量は樹脂粒子分散液に対して0.05重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%である。
【0034】
反応促進剤としては、反応性基がたとえばイソシアネート基やエポキシ基である場合、アミン化合物や金属含有化合物が挙げられ、反応性基がたとえばビニル基である場合、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
配合量は樹脂粒子分散液に対して0.05重量%〜5重量%、好ましくは0.1重量%〜3重量%である。
【0035】
耐候安定剤としては、たとえばフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、オクチル化ジフェニルアミン、イソオクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート等のヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
配合量は樹脂粒子分散液に対して0.05重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜3重量%である。
【0036】
レベリング剤としては特に限定されないが、たとえば低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、エチレン−アクリル共重合体、エチレン−メタクリル共重合体などのオレフィン共重合体、(メタ)アクリル共重合体、シリコーン系重合体、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
配合量は樹脂粒子分散液に対して0.2重量%〜6重量%、好ましくは0.5重量%〜3重量%である。
【0037】
必要により用いる着色料としては特に限定されないが、たとえば無機顔料、有機顔料、染料などが挙げられる。無機顔料としてはたとえば、酸化チタン、カーボンブラック、酸化クロム、フェライト等が挙げられる。有機顔料としてはアゾレーキ系、モノアゾ系、ジスアゾ系、キレートアゾ系等のアゾ顔料、ベンジイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、チオインジゴ系、ペリレン系、キノフタロン系、アンスラキノン系等の多環式顔料が挙げられる。染料としてはニグロシン系、アニリン系が挙げられる。
配合量は樹脂粒子分散液に対して0.5重量%〜30重量%、好ましくは1.0重量%〜10重量%である。
【0038】
本発明の樹脂粒子分散液の塗装方法は特に制限はないが、一般的な塗料の塗装方法、たとえば刷毛塗り、アプリケーターやバーコーターによる塗布、スプレー、静電スプレー法、静電スプレー法の他、特定の微小領域に塗布する場合はインクジェット法でもかまわない。
【0039】
樹脂粒子分散液を塗工した後、樹脂前駆体(B1)を反応させるための硬化条件は硬化塗膜の外観と塗膜強度の観点から50〜250℃で行うのが好ましく、さらに好ましくは80〜240℃である。
【0040】
本発明における塗膜の膜厚には特に制限はないが、外観と密着性の観点から好ましくは0.1〜100μm、さらに好ましくは0.5〜50μmである。
【0041】
本発明における樹脂粒子分散液を塗装する際の膜厚には特に制限はないが、立体的な意匠性の観点から好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは5〜200μmである。
【0042】
本発明の塗装が行われる被塗工物としては、アクリル樹脂やフッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂基板、およびアルミ等の金属基板などが挙げられる。
【0043】
本発明の樹脂粒子分散液を塗工して得られる塗膜は、樹脂粒子により塗膜表面が凹凸形状となっていることが特徴である。本特徴を生かして本弾性塗膜は艶消し塗料、特定の触感を有するコーティング物(例えば自動車内装部材)等として使用することが出来る。
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、特に記載のないかぎり、「部」は「重量部」、%は重量%を意味する。
【0045】
<製造例1>ウレタンプレポリマー、樹脂前駆体(B−1)の製造
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、ジメチルシリコーンの両末端を水酸基で変性したシリコーンジオール(Mn2,000、ヒドロキシル価56)171.4部を投入し3mmHgの減圧下で120℃に加熱して2時間脱水を行った。続いてイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと記載)28.6部を投入し、110℃で10時間反応を行いイソシアネート含量(以下、NCO%と記載)1.8%のウレタンプレポリマー、樹脂前駆体(B−1)200部を合成した。
【0046】
<製造例2>樹脂前駆体(B−2)の製造
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと記載)5.3部を投入し3mmHgの減圧下で120℃に加熱して2時間脱水を行った。続いてウレタンプレポリマー、樹脂前駆体(B−1)94.7部を投入し、70℃で20時間反応を行い、炭素−炭素2重結合含量2.0モル%の樹脂前駆体(B−2)を合成した。
【0047】
<製造例3>樹脂粒子の製造
ビーカー内に樹脂前駆体(B−2)465部、エチレングリコールジメタクリレート116部、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル12部、キシレン140部とを混合しておき、ポリビニルアルコール[「PVA−235」、(株)クラレ製]3部を溶解した水1616部を添加し、25℃でウルトラディスパーサー(ヤマト科学製)を使用し、回転数9,000rpmで1分間混合した。
混合液をフィルムエバポレータで減圧度−0.05MPa(ゲージ圧)、温度40℃、回転数100rpmの条件で30分間脱溶剤した後、70℃で12時間反応を行い水性分散液を得た。次いで分級後乾燥し、樹脂粒子(A−1)を得た。
【0048】
<製造例4>
ビーカー内にジビニルベンゼン290部、アクリロニトリル290部、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル12部、キシレン140部とを混合しておき、ポリビニルアルコール[「PVA−235」、(株)クラレ製]3部を溶解した水1616部を添加し、25℃でウルトラディスパーサー(ヤマト科学製)を使用し、回転数9,000rpmで1分間混合した。
混合液をフィルムエバポレータで減圧度−0.05MPa(ゲージ圧)、温度40℃、回転数100rpmの条件で30分間脱溶剤した後、70℃で12時間反応を行い水性分散液を得た。次いで分級後乾燥し、樹脂粒子(A−2)を得た。
【0049】
<製造例5>
ビーカー内にエチレングリコールジメタクリレート290部、アクリロニトリル290部、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル12部、キシレン140部とを混合しておき、ポリビニルアルコール[「PVA−235」、(株)クラレ製]3部を溶解した水1616部を添加し、25℃でウルトラディスパーサー(ヤマト科学製)を使用し、回転数9,000rpmで1分間混合した。
混合液をフィルムエバポレータで減圧度−0.05MPa(ゲージ圧)、温度40℃、回転数100rpmの条件で30分間脱溶剤した後、70℃で12時間反応を行い水性分散液を得た。次いで分級後乾燥し、樹脂粒子(A−3)を得た。
【0050】
<製造例6>
ビーカー内にジビニルベンゼン580部、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル12部、キシレン140部とを混合しておき、ポリビニルアルコール[「PVA−235」、(株)クラレ製]3部を溶解した水1616部を添加し、25℃でウルトラディスパーサー(ヤマト科学製)を使用し、回転数9,000rpmで1分間混合した。
混合液をフィルムエバポレータで減圧度−0.05MPa(ゲージ圧)、温度40℃、回転数100rpmの条件で30分間脱溶剤した後、70℃で12時間反応を行い水性分散液を得た。次いで分級後乾燥し、樹脂粒子(A−4)を得た。
【0051】
<製造例7>
ビーカー内にエチレングリコールジメタクリレート580部、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル12部、キシレン140部とを混合しておき、ポリビニルアルコール[「PVA−235」、(株)クラレ製]3部を溶解した水1616部を添加し、25℃でウルトラディスパーサー(ヤマト科学製)を使用し、回転数9,000rpmで1分間混合した。
混合液をフィルムエバポレータで減圧度−0.05MPa(ゲージ圧)、温度40℃、回転数100rpmの条件で30分間脱溶剤した後、70℃で12時間反応を行い水性分散液を得た。次いで分級後乾燥し、樹脂粒子(A−5)を得た。
【0052】
<実施例1〜6、比較例1〜3>樹脂粒子分散液の製造
ビーカー内に表1に示した量の樹脂粒子(A−1)〜(A−5)、樹脂前駆体(B1)として樹脂前駆体(B−2)、エポキシ樹脂前駆体(ビスフェノールAジグリシジルエーテル/ジアミノジフェニルメタン:63.2/36.8混合物)(B−3)、熱可塑性樹脂(B2)としてポリスチレン(重量平均分子量:37,000、重量平均分子量/数平均分子量:1.01)(B−4)、および分散媒体(U)としてのキシレンとを混合し、温度25℃で30分間超音波を照射し、表1に記載の樹脂粒子分散液(F−1)〜(F−6)、および比較粒子分散液(F−1’)〜(F−3’)を得た。(B−2)〜(B−4)はキシレンに溶解していた。
【0053】
【表1】

【0054】
樹脂粒子分散液(F−1)〜(F−6)、比較粒子分散液(F−1’)〜(F−3’)をガラス板上にキャスト厚100μmで塗布した後、200℃で3時間加熱させ、表2に記載の実施例1〜6、比較例1〜3の塗膜を得た。
【0055】
本発明の樹脂粒子分散液(F−1)〜(F−6)、比較例の樹脂粒子分散液(F−1’)〜(F−3’)から得られた塗膜の特性値、及び評価結果を表1に示した。特性値の測定方法、及び評価方法は以下の通りである。
実施例1〜6は、比較例1〜3に比べて、樹脂粒子の塗膜からの剥れが無く、密着性が高いことがわかる。
【0056】
【表2】

【0057】
<体積平均粒子径、粒度分布>
体積平均粒子径および粒度分布の測定は、エレクトロゾーン法で行い、以下の条件で測定した。
粒度分布 :CV(標準偏差を中心粒子径で除した値を百分率にて表した数値)で表記した。
装置 :ベックマン・コールター社製 マルチタイザーIII
測定範囲 :0.4μm〜1200μm
【0058】
<密着性>
樹脂粒子分散液(F−1)〜(F−6)、比較粒子分散液(F−1’)〜(F−3’)をガラス板上にキャスト厚100μmで塗布した後、200℃で3時間加熱させ、表2に記載の実施例1〜6、比較例1〜3の塗膜を得た。これらの塗膜について表面磨耗試験機を用い、密着性試験を実施した。
装置 :スガ試験機械社製
荷重:4.9N
ストローク回数:20〜80回
判定基準:
○ ほとんど剥れ無し
△ 一部が剥れ
× 剥れ
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の樹脂粒子分散液は、艶消し塗料、特定の触感を有するコーティング物(例えば自動車内装部材)、その他基板上硬化物等に有用である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(a)からなる樹脂粒子(A)、樹脂前駆体(B1)又は熱可塑性樹脂(B2)、及び分散媒体(U)を必須成分としてなり、樹脂(a)の溶解性パラメーターと、樹脂前駆体(B1)が重合又は硬化してなる樹脂(D)又は熱可塑性樹脂(B2)の溶解性パラメーターとの差が2以下であることを特徴とする樹脂粒子分散液。
【請求項2】
樹脂粒子(A)の体積平均粒径が1〜300μmである請求項1に記載の樹脂粒子分散液。
【請求項3】
樹脂(a)が、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、及びシリコン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の樹脂粒子分散液。
【請求項4】
樹脂前駆体(B1)又は熱可塑性樹脂(B2)が分散媒体(U)に溶解してなり、樹脂粒子(A)が樹脂前駆体(B1)又は熱可塑性樹脂(B2)の分散媒体(U)の溶液中に分散してなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂粒子分散液。




【公開番号】特開2008−303282(P2008−303282A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151111(P2007−151111)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】