説明

樹脂粒子分散液、静電荷像現像トナー、液体現像剤、及び、塗料

【課題】粒度分布が改善された樹脂粒子分散液、並びに、前記樹脂粒子分散液を用いた静電荷像現像トナー、液体現像剤及び塗料を提供すること。
【解決手段】ポリエステル樹脂を含む樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液であって、前記樹脂粒子分散液が、硫黄酸と、窒素原子を含む化合物とを含み、(1)樹脂粒子分散液における硫黄原子濃度Sと窒素原子濃度Nとが、1.0≦N/S≦400を満たし、(2)樹脂粒子分散液風乾物中の金属濃度が200ppm以下であり、(3)前記窒素原子を含む化合物が下記式(I)で表される化合物であることを特徴とする樹脂粒子分散液、並びに、前記樹脂粒子分散液を用いた静電荷像現像トナー、液体現像剤及び塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子分散液、静電荷像現像トナー、液体現像剤、及び、塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂、特に非晶質ポリエステル(以下、「非結晶性ポリエステル」ともいう。)の樹脂を得る一般的な重縮合法としては、その単量体の反応性の低さゆえに200℃を越す高温下で大動力による撹拌下、かつ高減圧下で10時間を遥かに越える時間が必要であり、高エネルギーを必要とする製法により製造されている。
このように反応性が低いポリエステル樹脂を得る場合においては、高温領域でより活性の強い金属触媒が一般的に用いられてきていた。
しかし、硫黄酸をポリエステルの重縮合触媒として用いる技術は、150℃以下での低温重合を達成できる技術であるため、トータルとしてのトナーの製造エネルギーを低減するためには地球環境保護上極めて重要である。
【0003】
ポリエステル樹脂水分散液を作製する手段としては、溶剤法、転相乳化法、高温乳化法等の従来技術があるが、溶剤法は回収設備に多大な投資が必要で環境安全上好ましくなく、さらには溶剤を完全に取り除くのは困難で品質上の課題もある。
また自己乳化性ポリエステルを作製するために特定の構造を有する親水性重合体、及びその塩(スルホニルフタル酸、例えばSDSP(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を例としたスルホン酸・そのアルカリ中和塩)があるが、トナー用樹脂に用いた場合、体積抵抗値の低下、特に高温・高湿下での帯電性が悪化してしまい実用化上の問題を有していた。
【0004】
一方で、溶剤を使用しないポリエステルの乳化技術としては例えば以下の例が挙げられるが、いずれも下記記載の品質上の課題がある。
特許文献1においては、ポリエステル含有するトナー用原料を190℃以上の高温での加熱溶融後に水中乳化を行っているが、樹脂乳化時のエネルギーが莫大で、実用に供し得ず、さらには、高エネルギー条件下における乳化分散は、樹脂の分解などを招きやすく、組成の偏在の発生や、分散液中の樹脂粒子における粒径分布の均一性を実現することが難しいなどの問題が生じ、これらの材料を用いたトナーにおいては、非画像部のカブリ発生や画質安定性などに問題を生じてしまう。
このような状況下で、非溶剤系において、高温乳化法や、上記方法とは異なり、ポリエステル樹脂に加熱したアルカリ溶液を加えて樹脂末端を中和させて水への溶解性を持たせることによる中和乳化法(以下、「アルカリ中和法」と略す場合がある)の技術も存在する。
【0005】
このような中和乳化法を用いてポリエステルの樹脂粒子分散液を得る方法としては、下記の例などが挙げられている。
特許文献2には、ポリエステルを含む樹脂に対して1.1〜1.3倍当量のアミン系中和剤を用いて、樹脂の中和を行い、樹脂分散液を作製しているが、本方法については、得られた樹脂粒子分散液の粒度分布が大きくなったり、メジアン径が1μm以上と粗大になりやすく、本方法については、トナー用の樹脂粒子分散液としては適さないことは明らかである。
【0006】
また別の中和乳化の例として、特許文献3では、酸価が2〜70KOHmg/gのポリエステル樹脂と該ポリエステル樹脂のカルボキシル基をイオン化することができる中和剤と水性媒体を含むポリエステル系水分散体を得ているが、ポリエステル単量体と反応し乳化性を付与する目的で1個の官能基を有する化合物としてアルキルグリシジルエステルの例示があるが、特許文献3に記載のアプローチではポリエステルの溶解性や微粒子化が充分では無いため、トナー用樹脂として好適なアモルファス用ポリエステル樹脂をトナー用樹脂粒子分散液として好適な粒径まで乳化するには困難である。
【0007】
またさらには、特許文献4では、溶融状態の生分解性ポリエステルと、乳化剤(PVA等)を含む水溶液とを溶融混合し、S.C≧40%、かつ、20℃での粘度が1000mPasである生分解性ポリエステル樹脂分散液の製造方法であるが、結晶性樹脂であり、粉体特性・機械的強度・帯電安定性の問題によりトナー用樹脂としての使用には耐えられない。
また同様に特許文献5では、結晶性ポリエステルを溶融状態でアミン類を用いて中和し、溶融転相により、0.1〜2.0μmの樹脂分散液を得た後、トナーを得る製造方法を提示しているが、本樹脂は前記同様結晶性樹脂であり、粉体特性・機械的強度・帯電安定性の問題によりトナー用樹脂としての使用には耐えられず、またさらには、樹脂粒子末端カルボキシル基の中和率も一定にはならず、その中和率のばらつきの結果、樹脂粒子が親水性のばらつき規定による粒度分布を狭くする事が困難である。
【0008】
また、特許文献6には、ポリエステルを含む樹脂に対し、1.1〜1.3倍当量のアミン系中和剤を用いて、樹脂中和を行い、樹脂粒子分散液を作製した後に該分散液をジェット粉砕処理を施すことによって、粒度分布を改善したポリエステル水分散液を作製しているが、樹脂末端のCOOH基のアルカリ化量が一定とならず、一部樹脂に溶け残りが発生したり得られるポリエステル水分散液の粒径や粒度分布が不均一である問題点がある。
【0009】
このように従来技術においては、ポリエステル末端のカルボキシル基の中和法を含む何れの乳化法を用いてポリエステル水分散液を作製した場合であっても、アルカリ添加量の制御によって樹脂粒子分散液の特性をある程度変化させられる程度であって、静電荷現像トナー用樹脂粒子分散液としては粒度分布を制御できる例は未だ存在していない。
また、溶融粘度が低い結晶性ポリエステル樹脂では、窒素元素を含むアミン類等の乳化実績があるものの、非結晶性ポリエステルにおいては、樹脂着色性・2次色Glossムラの改善効果がある窒素元素を含む、乳化法をないのが現状である。
【0010】
このように、これまでの静電荷像現像トナー用樹脂粒子分散液においては、非結晶性ポリエステルについて非溶剤乳化法において、樹脂粒子分散液が得られなかっただけでなく、これまでの樹脂粒子分散液においては、粒度分布にムラがあったり、広かったために、前記樹脂粒子分散液をトナーを作製する場合、顔料やワックスなどのトナー用原料と樹脂粒子を凝集・加熱融合を行うと、凝集時に粒度分布が広いゆえに、トナー中のワックス量が偏在し、その結果、該トナーを用いて画像を得るとノンビジュアルオフセット(NVO)(なお、ノンビジュアルオフセットとは、数万枚の枚数の画像形成を経ると徐々に定着ローラにトナーが蓄積し、オフセットを発生させる画像故障トラブルのことである。)が発生し易くなる課題があるが、これらを改善できる方法が見出されていないのが現状である。
【0011】
【特許文献1】特開2002−351140号公報
【特許文献2】特開平9−296100号公報
【特許文献3】特開2000−191892号公報
【特許文献4】特開2002−3607号公報
【特許文献5】特開2006−18227号公報
【特許文献6】特開2000−26709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、粒度分布が改善された樹脂粒子分散液、並びに、前記樹脂粒子分散液を用いた静電荷像現像トナー、液体現像剤及び塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、以下に示す<1>及び<3>乃至<6>の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>と共に以下に示す。
<1> ポリエステル樹脂を含む樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液であって、前記樹脂粒子分散液が、硫黄酸と、窒素原子を含む化合物とを含み、(1)樹脂粒子分散液における硫黄原子濃度Sと窒素原子濃度Nとが、1.0≦N/S≦400を満たし、(2)樹脂粒子分散液風乾物中の金属濃度が200ppm以下であり、(3)前記窒素原子を含む化合物が下記式(I)で表される化合物であることを特徴とする樹脂粒子分散液、
【0014】
【化1】

(式(I)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、−(CH2n−OH(nは2以上6以下の整数)、又は、−(CH2m−O−(CH2n−OH(mは2以上6以下の整数、nは2以上6以下の整数)を表す。ただし、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つはOH基を含む。)
<2> 前記ポリエステル樹脂は末端カルボキシル基の一部が中和され、カルボキシアニオンとなっており、樹脂粒子を赤外分光光度計により測定した吸光度スペクトルにおいて、1780cm-1から1680cm-1付近における前記末端カルボキシル基のC=O伸縮振動のピーク強度をdcとし、1670cm-1から1550cm-1付近における前記末端カルボキシル基が中和されたカルボキシルアニオンのCO2-ピーク強度をdaとした場合、(da/da+dc)の値が0.30以上0.90以下である上記<1>に記載の樹脂粒子分散液、
<3> 触媒として硫黄酸を用い、重縮合性単量体を重縮合して末端カルボキシル基を有するポリエステル樹脂を得る工程、及び、前記ポリエステル樹脂を前記式(I)で表される化合物を用いて水系媒体中に乳化分散する工程を含む上記<1>又は<2>に記載の樹脂粒子分散液の製造方法、
<4> 上記<1>又は<2>に記載の樹脂粒子分散液を用いて作製した静電荷像現像トナー、
<5> 上記<1>又は<2>に記載の樹脂粒子分散液を用いて作製した液体現像剤、
<6> 上記<1>又は<2>に記載の樹脂粒子分散液を用いて作製した塗料。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、粒度分布が改善された樹脂粒子分散液、並びに、前記樹脂粒子分散液を用いた静電荷像現像トナー、液体現像剤及び塗料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の樹脂粒子分散液は、ポリエステル樹脂を含む樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液であって、前記樹脂粒子分散液が、硫黄酸と、窒素原子を含む化合物とを含み、(1)樹脂粒子分散液における硫黄原子濃度Sと窒素原子濃度Nとが、1.0≦N/S≦400を満たし、(2)樹脂粒子分散液風乾物中の金属濃度が200ppm以下であり、(3)前記窒素原子を含む化合物が下記式(I)で表される化合物であることを特徴とする。
【0017】
【化2】

(式(I)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、−(CH2n−OH(nは2以上6以下の整数)、又は、−(CH2m−O−(CH2n−OH(mは2以上6以下の整数、nは2以上6以下の整数)を表す。ただし、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つはOH基を含む。)
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明の樹脂粒子分散液は、ポリエステル樹脂を含む樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液であって、前記樹脂粒子分散液が、硫黄酸と、窒素元素を含む化合物として前記式(I)で表される化合物とを含む。
【0019】
硫黄酸とは、硫黄の酸素酸であり、無機硫黄酸又は有機硫黄酸等が挙げられる。
無機硫黄酸としては、硫酸、亜硫酸、及び、これらの塩等が挙げられ、有機硫黄酸としては、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、及び、これらの塩等のスルホン酸類や、アルキル硫酸、アリール硫酸及びその塩等の有機硫酸類が挙げられる。
硫黄酸としては、有機硫黄酸であることが好ましく、界面活性効果を有する有機硫黄酸であることがより好ましい。なお、界面活性効果を有する酸とは、疎水基と親水基とからなる化学構造を有し、少なくとも親水基の一部がプロトンからなる酸の構造を有し、乳化機能と触媒機能とを併せ持つ化合物である。
【0020】
有機硫黄酸としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルジスルホン酸、アルキルフェノールスルホン酸、アルキルナフタリンスルホン酸、アルキルテトラリンスルホン酸、アルキルアリルスルホン酸、石油スルホン酸、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸、高級アルコールエーテルスルホン酸、アルキルジフェニルスルホン酸、長鎖アルキル硫酸エステル、高級アルコール硫酸エステル、高級アルコールエーテル硫酸エステル、高級脂肪酸アミドアルキロール硫酸エステル、高級脂肪酸アミドアルキル化硫酸エステル、硫酸化脂肪、スルホ琥珀酸エステル、樹脂酸アルコール硫酸、及びこれらすべての塩化合物などが挙げられ、必要に応じて複数を組み合わせてもよい。具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸、しょうのうスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、モノブチルフェニルフェノール硫酸、ジブチルフェニルフェノール硫酸、ドデシル硫酸、ナフテニルアルコール硫酸等が挙げられる。またこれらの硫黄酸はその構造中になんらかの官能基を有していてもよい。
界面活性効果を有する有機硫黄酸としては、上記に有機硫黄酸として記載されたもののうち、炭素数7以上20以下のアルキル基又は炭素数13以上26以下のアラルキル基を有する有機硫黄酸が挙げられ、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ドデシル硫酸等が好ましく例示できる。
【0021】
本発明の樹脂粒子分散液中における硫黄酸の含有量としては、0.001at%以上0.1at%以下であることが好ましく、0.002at%以上0.08at%以下であることがより好ましい。
本発明の樹脂粒子分散液中における硫黄酸は、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
【0022】
本発明の樹脂粒子分散液は、窒素元素を含む化合物として、下記式(I)で表される化合物を含む。
式(I)で表される化合物が樹脂粒子分散液に含まれる場合、まず、樹脂中の残留酸触媒と中和反応を起こし中和塩を形成する為に酸触媒を失活させ、その結果、樹脂粒子分散液を作製した場合、或いはトナー用原料と加熱混合・融合させてトナーを得る場合に、触媒効果を発現させないために、樹脂の加水分解の防止や樹脂粒子の着色等を防げる。
また、式(1)で表される化合物が樹脂粒子分散液に含まれることによって、樹脂粒子の末端カルボキシル基は中和され、水分散液としての安定性が増し、その結果、粒度分布がシャープになりやすく、また保管安定性に優れる効果を発現する。
特に、アルカリ金属・アルカリ土類金属の水溶液よりも式(1)で示される化合物の方が優れる理由としては、金属塩基物の水溶液の場合には、樹脂を加水分解させたり、自己乳化性が高まる為に、粒度分布がブロードになりやすい。
一方、式(I)で示される化合物は弱塩基性であるために、樹脂を加水分解させる事はなく、また、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つはOH基を含むために、水中に分散した樹脂粒子が安定になりやすい。
【0023】
【化3】

(式(I)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、−(CH2n−OH(nは2以上6以下の整数)、又は、−(CH2m−O−(CH2n−OH(mは2以上6以下の整数、nは2以上6以下の整数)を表す。ただし、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つはOH基を含む。)
【0024】
式(I)におけるR1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、−(CH2n−OH(nは2以上6以下の整数)、又は、−(CH2m−O−(CH2n−OH(mは2以上6以下の整数、nは2以上6以下の整数)を表し、水素原子、炭化水素基、−(CH2n−OH(nは2以上6以下の整数)であることが好ましい。
前記式(I)で表される化合物として具体的には、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、ジブタノールアミン、トリブタノールアミン、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノヘキサノールアミン、ジヘキサノールアミン、トリヘキサノールアミン、2−(ジブチルアミノ)エタノール、等が好ましく例示できる。
本発明の樹脂粒子分散液中における式(I)で表される化合物の含有量としては、ポリエステルモノマーに対し0.1mol%以上5mol%以下であることが好ましく、0.1mol%以上4mol%以下であることがより好ましい。
本発明の樹脂粒子分散液中における式(I)で表される化合物は、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。また、本発明の樹脂粒子分散液は、式(I)で表される化合物以外の窒素原子を含む化合物を含有していてもよい。
【0025】
本発明の樹脂粒子分散液における硫黄元素濃度Sと、窒素元素濃度Nは、1.0≦N/S≦400であり、1.05≦N/S≦350であることが好ましく、1.1≦N/S≦300であることがより好ましい。
上記硫黄元素濃度Sと窒素元素濃度Nとの比N/Sは、樹脂粒子分散液中における窒素元素量の適正値を示す指標となる。
上記範囲よりも窒素元素の量が少ないと酸触媒の十分な失活効果が得られずに、樹脂の経時色相安定性が得られず、高温高湿環境保管下における、低エリアカバレッジ画像サンプルの明度が低下する現象を十分抑制しきれなくなったり、又は、乳化時に十分な固形分が得られなくなり、トナー用樹脂粒子分散液としての使用は困難となる。またさらには、末端カルボキシル基の中和される率が低いために、樹脂粒子の中和率がばらつきやすく親水度にばらつきが生じるために、樹脂粒子の粒度分布にばらつきが生じやすくなる。
また、上記範囲を越えて窒素元素の量が多く存在する場合には、酸触媒は十分に失活される一方で、樹脂末端カルボキシル基も過剰に中和されてしまうために、トナーに用いるための好適な樹脂粒子分散液が得られなくなる。
このような硫黄元素濃度S・窒素元素濃度NはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法や、場合によっては蛍光X線分析法によって測定することができる。
【0026】
本発明における硫黄元素濃度S及び窒素元素濃度Nの単位は、原子個数%(at%)を用いることが好ましく、また、硫黄元素濃度S(at%)及び窒素元素濃度N(at%)はICP発光分析により測定することが好ましい。
また、硫黄元素濃度Sと窒素元素濃度Nとの比N/Sは、試料中のN(mol)/S(mol)比として求めることもできる。
なお、「at%」とは、原子個数%のことであり、試料中の全原子の個数に対する当該原子の個数の割合を表す。
前記窒素元素濃度及び硫黄元素濃度をat%(原子個数%)として測定する場合は、樹脂粒子分散液を乾燥させて樹脂成分を取り出し、テトラヒドロフラン等の溶媒に溶解して分析液を得た後、ICP発光分析法により測定することがより好ましい。なお、測定の際には、全元素を測定する必要はなく、試料中に、明らかに含有していない又は数値の算出に影響がない程度の極微量しか含有していない元素は測定しなくともよい。また、ICP発光分析法で測定する場合、測定を行わなかった又は行えなかった軽元素(少なくとも炭素より軽い元素)の量を、水素原子の量として算出してもよい。
また、単位としてat%を使用して求めた値をwt%(重量%)に換算する場合は、以下の式により求めることができる。
【0027】
【数1】

Axi:元素Xiのat%
Mxi:元素Xiの分子量
Wxi:元素Xiのwt%
Xi:i番目の元素
n:at%を測定又は算出した全元素数
なお、上記式において、測定により検出されなかった元素、明らかに含有していない元素、及び、数値の算出に影響がない程度の極微量しか含有していない元素は考慮しなくともよい。
【0028】
本発明の樹脂粒子分散液は、その風乾物中の金属濃度が200ppm以下であり、150ppm以下であることが好ましく、120ppm以下であることがより好ましい。
樹脂粒子分散液の風乾物を作製する方法としては、公知の方法により作製すればよく、真空乾燥機等の乾燥機を用いて減圧雰囲気の中においての方法で風乾物を作製することが不純物吸着防止の観点からも好ましいが、大気中で風乾物を得ることも可能である。
樹脂粒子分散液風乾物中の金属濃度の測定は、蛍光X線測定法により測定することが好ましい。具体的には、試料前処理は、トナー6gを加圧成型器で10t、1分間の加圧条件下で圧縮成型を実施し、(株)島津製作所の蛍光X線(XRF−1500)を使用し、測定条件は管電圧40KV、管電流90mAで、全元素分析により測定することがより好ましい。
なお、本発明における金属は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く金属元素とする。
【0029】
一般に、重縮合により得られた樹脂中には、様々な分子量や酸価を持つ分子鎖が存在するため、分子量分布や酸価分布、親水度の差を有し、さらには分散液中の樹脂間においても分子量、分子量分布、酸価、親水度等の各特性値のばらつきも存在する。
上記のような樹脂において、微視的には、分子量が小さく親水性が高い分子鎖については、容易に中和され分散し易いため、所望の粒径に粒子化しやすく、また、親水性成分を発生させ易い。一方、分子量が大きい分子鎖については、中和され難く分散を起こし難い。
前記のような分子鎖のばらつきが、組成分布偏在や粒度分布ムラ、親水性成分発生の一要因となる。
樹脂粒子中における樹脂末端の中和率を0.30以上0.90以下に制御することが好ましい。上記範囲であると、ポリエステルの分散の際に必要なアルカリ中和剤の量を最低限に抑えることが可能になったことにより、樹脂粒子分散液における組成分布偏在や粒径分布ムラ、さらにはアルカリ過剰による樹脂粒子の凝集沈降を防止することが可能になり、その結果該分散液を原料に用いたトナーで、ノンビジュアルオフセット(NVO)発生する問題点を回避できる。
上記の樹脂末端の中和率は、IR分析装置(赤外分光法)において赤外吸収スペクトルを測定する方法によって求めることができる。
【0030】
赤外吸収スペクトルにおいて、R−COOH基(Rは炭化水素基)は1780cm-1から1680cm-1付近において赤外吸収ピークを有し、また、プロトンが脱離したR−COO-基は1670cm-1から1550cm-1付近において赤外吸収ピークを有する。具体的には例えば、飽和脂肪族カルボキシル基である場合、カルボキシル基のピークは1770cm-1付近に見られ、また、そのアニオンのピークは1660cm-1付近に見られる。なお、特殊なカルボキシル基やカルボキシルアニオンを用いる場合等、上記範囲から外れる場合もある。
よって、中和率を求める場合には、下記式(1)のようにして求まる。
中和率I=(da/(da+dc)) (1)
なお、樹脂粒子を赤外分光光度計により測定した吸光度スペクトルにおいて、前記末端カルボキシル基のC=O伸縮振動のピーク強度(吸光度)をdcとし、前記末端カルボキシル基が中和されたカルボキシルアニオンのCO2-逆対称伸縮振動のピーク強度(吸光度)をdaとする。
また、前記赤外吸収ピークについては、「有機化合物のスペクトルによる同定法(第6版)」(Silverstein, Robert M.;Webster, Francis X著、東京化学同人発行)等の公知の文献を参考にすることができるが、カルボニル基等については水素結合により2量体形成の有無を考慮する必要がある。
【0031】
また、dcやdaのピークに他の官能基由来のピークが重なっている場合、以下のようにピーク強度を求める。
cやdaのピークの両端とも、すなわち、dcやdaのピーク全体に1つの他のピークが重なっている場合は、前記両端部を直線にてつなげ分割し、その上部をdcやdaのピーク、その下部を他のピーク由来とする。なお、両端部をつなぐ直線は、他のピーク曲線の接線を考慮するものとする。
cやdaのピークの一端のみが他のピークが重なっている場合は、重なっている端部付近における他のピーク曲線の接線をベースラインとの交点まで延長し、その上部をdcやdaのピーク、その下部を他のピーク由来とする。
【0032】
本発明に用いることができる赤外分光光度計は、特に制限はなく、公知のフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)であればよい。また、測定方法については特に制限はなく、また、試料調製法についても特に制限はないが、KBrディスク法により測定することが好ましい。
式(1)で表される中和率算出に用いる赤外分光測定は、例えば、FT/IR−410(日本分光社製)等を用いて測定することができる。前記装置を用いて測定した場合の測定方法は、KBr粉末約40mgに測定試料を約0.2mg(0.5%濃度)を乳鉢で十分に粉砕混合した後に、加圧成型を行った後に分析を行うことができる。
また、吸光度スペクトルとは、赤外分光光度計により測定した透過率スペクトルの自然対数をとったスペクトルである。また、測定した透過率スペクトルにおいて、透過率が0.10以下のピークがないことが好ましく、0.15以下のピークがないことが好ましい。また、透過率スペクトル及び吸光度スペクトルは、ピークの定量に問題のない範囲で公知のベースライン補正等のデータ処理を施してもよい。
【0033】
本発明の樹脂粒子分散液は、中和率を意味する式(1)の値が0.30以上0.90以下であることが好ましく、0.4以上0.8以下であることがより好ましく、0.45以上0.75以下であることがさらに好ましい。
式(1)の値が、0.30以上であると、樹脂末端カルボキシル基に対し、アルカリ当量が十分であり、その結果、樹脂の分散媒への分散を容易に行うことができ、樹脂の溶け残りが発生せず、十分な固形分濃度(S.C)が得られなる。また、さらには好適なメジアン径(0.1μm以上2.0μm以下)であり、組成分布偏在がない分散液を容易に得ることができる。
式(1)の値が、0.90以下であると、樹脂末端カルボキシル基に対しアルカリが適量であるため、過度に中和が進行することがなく、親水性成分の発生がなく、水系媒体中への樹脂の溶解やポリエステル粒子同士が凝集体を形成することにより沈降して水とポリエステルとの分離が起こらず、エマルジョン形成が容易である。
また、中和率が上記範囲であると、過剰に中和され親水特性が強くなるような粒子、即ち微粒化し易い粒子が発生しない、一方で中和率過少粒子も存在しないために水分散し難く、粗大化する粒子も発生しない、これら二つの理由のために均一な粒度分布を示す樹脂粒子分散液が得られる。
本発明の樹脂粒子分散液における樹脂粒子の体積平均粒度分布指標GSDvは1.30以下であることが好ましく、1.24以下であることがより好ましく、1.20以下であることがさらに好ましい。
【0034】
なお、前記式(1)の値が0.30以上0.90以下の樹脂粒子分散液を得る場合においては、乳化補助剤として、ノニオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の各種界面活性剤等を添加してもよい。
【0035】
本発明の樹脂粒子分散液における樹脂粒子のメジアン径(中心径)は0.1μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1.0μm以下であることがより好ましく、0.15μm以上0.8μm以下であることがさらに好ましい。このメジアン径が上記範囲となることで、上述のように水系媒体中における樹脂粒子の分散状態が安定する。従って、トナー作製の際には、このメジアン径が0.1μm以上であると、粒子化の際の凝集性が良好であり、遊離の樹脂粒子が生じにくく、また系の粘度も上昇しにくいため粒径の制御が容易であり好ましい。一方、メジアン径が2.0μm以下であると、粗粉が発生しにくく粒度分布が良好であるとともにワックスなどの離型剤が遊離しにくいために、定着時の剥離性やオフセット性に優れるので好ましい。
なお、樹脂粒子のメジアン径は、例えば、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)で測定することができる。
【0036】
本発明の樹脂粒子分散液は、0.1μm以下の樹脂粒子の比率が、全体の10個数%未満であることが好ましく、1個数%以下であることがより好ましく、0.01個数%以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、トナー作製時において、顔料・離型剤と樹脂粒子分散液とを混合・加熱融合させる際に、原料との凝集・融合性が損なわれずトナーの粒度分布を狭くすることが出来るため好ましい。
また、本発明の樹脂粒子分散液は、2.0μm以上の樹脂粒子の比率が、全体の1体積%以下であることが好ましく、0.5体積%以下であることがより好ましく、0.01体積%以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、トナー作製時において、顔料・離型剤と樹脂粒子分散液とを混合・加熱融合させる際に離型剤が均一に分散する為に、定着画像を得る際にNVOや光沢度ムラを防止できるために好ましい。
なお、この比率は、例えば、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)における測定結果において粒子径と頻度積算の関係をプロットし、0.1μm以下、又は、2.0μm以上の頻度積算量から求めることから得ることができる。
【0037】
本発明の樹脂粒子分散液の分散媒は、水系媒体である。
本発明に用いることのできる水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水や、エタノール、メタノール等のアルコール類などが挙げられる。これらの中でも、エタノールや水であることが好ましく、蒸留水及びイオン交換水等の水が特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、水系媒体には、水混和性の有機溶媒を含んでいてもよい。水混和性の有機溶媒としては、例えば、アセトンや酢酸等が挙げられる。
【0038】
本発明の樹脂粒子分散液における水系媒体中の固形分は5重量%以上50重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以上40重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以上30重量%以下、最も好ましくは15重量%以上25重量%以下である。固形分が50重量%以下であると、ラテックスの流動性が良好で、保管条件によりクリームムース状に変質せず好ましい。5重量%以上であると、本分散液を用いトナーを作製する際、全組成に占める本分散液の割合が大きくならず、組成の調整が容易で、輸送の際のコストを抑制でき好ましい。
【0039】
また、本発明の樹脂粒子分散液のpHは、6以上10以下であることが好ましく、6.5以上9.8以下であることがより好ましく、6.8以上9.5以下であることがさらに好ましい。
上記範囲であると、十分な固形分濃度が得られ、トナーに用いるための好適な粒度分布が得られる。
【0040】
<ポリエステル樹脂>
本発明に用いることができるポリエステル樹脂(以下、単に「ポリエステル」ともいう。)は、重縮合性単量体、及び/又は、そのオリゴマー若しくはプレポリマーを重縮合することにより得られるが、多価カルボン酸とポリオールとを重縮合したポリエステル樹脂であることが好ましい。
本発明に用いることのできる重縮合性単量体としては、例えば、多価カルボン酸、ポリオール、ヒドロキシカルボン酸、又は、それらの混合物が挙げられ、少なくとも多価カルボン酸とポリオールとを用いることが好ましい。特に、重縮合性単量体としては、多価カルボン酸とポリオールとさらにはこれらのエステル化合物(オリゴマー及び/又はプレポリマー)であることが好ましく、直接エステル反応、又は、エステル交換反応を経て、ポリエステルを得るものがよい。この場合、重合されるポリエステル樹脂としてはアモルファス(無定形)ポリエステル樹脂(非結晶性ポリエステル樹脂)、結晶性ポリエステル樹脂などのいずれかの形態、またはそれらの混合形態をとることができる。
また、本発明に用いることができるポリエステル樹脂は、末端カルボキシル基を有するポリエステル樹脂であり、非結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0041】
多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシル基を2個含有する化合物であり、シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、リンゴ酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、アゼライン酸、ピメリン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シトラコン酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−カルボン酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロルフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレンジプロピオニック酸、m−フェニレンジプロピオニック酸、m−フェニレン二酢酸、p−フェニレン二酢酸、o−フェニレン二酢酸、ジフェニル二酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、1,1−シクロペンテンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸、1,3−アダマンタンジ酢酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等を挙げることができる。
また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等を挙げることができる。
上記のカルボン酸は、カルボキシル基以外の官能基を有していてもよく、酸無水物、酸エステル等のカルボン酸誘導体を用いることもできる。
【0042】
これら多価カルボン酸のうち好ましく用いられる単量体は、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレン二酢酸、p−フェニレンジプロピオニック酸、m−フェニレンジプロピオニック酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸である。
また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等が例示でき、さらにまた、これら多価カルボン酸の低級エステルなどが例示できる。また酸塩化物もこの限りではない。
これらは一種単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
なお、低級エステルとは、エステルのアルコキシ部分の炭素数が1以上8以下であることを示す。具体的には、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル及びイソブチルエステル等が例示できる。
【0043】
ポリオールとは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。ポリオールとしては、特に限定はされないが、次の単量体を挙げることができる。
ジオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、オクタデカンジオール等を例示できる。
また、ジオール以外のポリオールとしては、グリコール、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等を例示できる。
また、環状構造を有するポリオールとしては次の単量体を挙げることができる。例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノール、ビフェノール、ナフタレンジオール、1,3−アダマンタンジオール、1,3−アダマンタンジメタノール、1,3−アダマンタンジエタノール等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
本発明では、上記ビスフェノール類が少なくとも一つのアルキレンオキサイド基を有することが好ましい。アルキレンオキサイド基としては、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド等を挙げることができるが、これらに限定されない。好適には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドであり、その付加モル数は1以上3以下であることが好ましい。この範囲である場合、作製するポリエステルの粘弾性やガラス転移温度がトナーとして使用するために適切に制御することができる。
上述の単量体のうち、好適に使用される単量体としては、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、及び、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールS、ビスフェノールZの各アルキレンオキサイド付加物である。
【0044】
重縮合性単量体は、任意の割合で2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの重縮合性単量体の組み合わせにより非結晶性樹脂や結晶性樹脂を容易に得ることができる。
【0045】
例えば、結晶性ポリエステルを得るために使用される多価カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコ酸、イタコン酸、グルタコ酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、これらの酸無水物あるいはこれらの低級エステルなどが例示できる。さらにまた酸塩化物もこの限りではない。
【0046】
さらにまた、結晶性ポリエステルを得るために用いることができるポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールA等も例示できる。
【0047】
さらにまた、非結晶性のポリエステルを得るために用いることができる多価カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸などや、これらの低級エステルもが例示できる。また三価以上のカルボン酸としては例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、及びこれらの無水物、2−スルホテレフタル酸ナトリウム、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、スルホコハク酸ナトリウム塩やこれらの低級エステルなどが例示できるが、この限りではない。
【0048】
このような結晶性のポリエステルとしては、1,9−ノナンジオールと1,10−デカンジカルボン酸、又はシクロヘキサンジオールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステル、1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとコハク酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを反応して得られるポリエステルを挙げることができる。これらの中でも特に1,9−ノナンジオールと1,10−デカンジカルボン酸及び1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応させて得られるポリエステルなどがさらに好ましいが、この限りではない。
【0049】
ここで、結晶性樹脂の場合の結晶融点Tmは50℃以上120℃以下であることが好ましく、より好ましくは55℃以上90℃以下の範囲である。Tmが50℃以上であると、高温度域での結着樹脂自体の凝集力が良好であるため、定着の際に剥離性やホットオフセット性に優れ好ましい。Tmが120℃以下であると、十分な溶融が得られず、最低定着温度が上昇しにくく好ましい。
【0050】
一方、重縮合性樹脂粒子が非結晶性の場合、ガラス転移点Tgは50℃以上80℃以下であることが好ましく、より好ましくは50℃以上65℃以下の範囲である。Tgが50℃以上であると、高温度域での結着樹脂自体の凝集力が良好であるため、定着の際にホットオフセット性に優れ好ましい。Tgが80℃以下であると、十分な溶融が得られ、最低定着温度が上昇しにくく好ましい。
【0051】
ここで、結晶性樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121:87に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。なお、結晶性の樹脂には、複数の融解ピークを示す場合があるが、本発明においては、最大のピークをもって融点とみなす。
ここで、非結晶性樹脂のガラス転移点は、ASTM D3418−82に規定された方法(DSC法)で測定した値をいう。
なお、前記の「結晶性ポリエステル樹脂」に示すような「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを示し、具体的には、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が6℃以内であることを意味する。
一方、吸熱ピークの半値幅が6℃を越える樹脂や、明確な吸熱ピークが認められない樹脂は、非結晶性(非晶質)であることを意味する。
【0052】
非結晶性のポリエステルを得るために用いることができる多価アルコールとしては、脂肪族、脂環式、芳香環式の多価アルコールが例示でき、具体的には、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールA等を好ましく例示できるが、この限りではない。
【0053】
また、一分子中にカルボン酸と水酸基を含有するヒドロキシカルボン酸化合物を用い、重縮合を実施することもできる。例えば、ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシノナン酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロキシドデカン酸、ヒドロキシテトラデカン酸、ヒドロキシトリデカン酸、ヒドロキシヘキサデカン酸、ヒドロキシペンタデカン酸、ヒドロキシステアリン酸等を挙げることができるが、これに限定されることを意味しない。
【0054】
本発明において、前記多価カルボンの50mol%以上100mol%以下が式(1)で表される化合物及び/又は式(2)で表される化合物よりなり、前記ポリオールの50mol%以上100mol%以下が式(3)で表される化合物よりなるポリエステル樹脂を用いることが好ましい。下記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物とをポリエステル樹脂の主成分とすることにより、従来、脂肪族ポリエステルのみで可能であった高反応性に起因した無溶媒かつ低温でのエステル化反応が、非結晶性樹脂においても可能となった。また、脂肪族ポリエステルは生分解性が優れるなど易分解性を有するが、前記ポリエステル樹脂は、耐水、耐熱性が高く、硬化後の被膜強度も高く、かつ低温での高い反応性を有するため、熱硬化時に必要とするエネルギーを抑制できる。
1OOCA1m1n1lCOOR1' (1)
(A1:メチレン基、B1:芳香族炭化水素基、R1、R1':水素原子又は1価の炭化水素基、1≦m+l≦12、1≦n≦3)
2OOCA2p2q2rCOOR2' (2)
(A2:メチレン基、B2:脂環式炭化水素基、R2、R2':水素原子又は1価の炭化水素基、0≦p≦6、0≦r≦6、1≦q≦3)
HOXhjkOH (3)
(X:アルキレンオキサイド基、Y:ビスフェノール骨格基、1≦h+k≦10、1≦j≦3)
【0055】
式(1)及び式(2)で表されるジカルボン酸並びに式(3)で表されるジオールについて以下に説明する。なお、本発明において、「カルボン酸」とはそのエステル化物及び酸無水物をも含む意である。
1OOCA1m1n1lCOOR1' (1)
(A1:メチレン基、B1:芳香族炭化水素基、R1、R1':水素原子又は1価の炭化水素基、1≦m+l≦12、1≦n≦3)
2OOCA2p2q2rCOOR2' (2)
(A2:メチレン基、B2:脂環式炭化水素基、R2、R2':水素原子又は1価の炭化水素基、0≦p≦6、0≦r≦6、1≦q≦3)
ここで、1価の炭化水素基とは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、炭化水素基、又は窒素元素及び硫黄元素を含まない複素環基を表し、これらの基は任意の置換基を有していてもよい。R1、R1'、R2及びR2'としては、水素原子又は低級アルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基がより好ましく、水素原子が最も好ましい。
また、式(1)中の芳香族炭化水素基及び式(2)中の脂環式炭化水素基は、さらに置換されていてもよい。
【0056】
<式(1)で表されるジカルボン酸>
式(1)で表されるジカルボン酸は、少なくとも一つの芳香族炭化水素基B1を有するが、その構造は特に限定されない。芳香族炭化水素基B1としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アセナフチレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、フルオランセン、ピレン、ベンゾフルオレン、ベンゾフェナントレン、クリセン、トリフェニレン、ベンゾピレン、ペリレン、アントラスレン、ベンゾナフタセン、ベンゾクリセン、ペンタセン、ペンタフェン、コロネン骨格等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの構造にはさらに置換基が付加していてもよい。
【0057】
式(1)で表されるジカルボン酸中に含まれる芳香族炭化水素基B1の数は、1個以上、3個以下であることが好ましい。上記の数値の範囲内であると、製造されるポリエステルが非結晶性であり、ジカルボン酸の入手が容易であるために費用、製造効率が良く、式(1)で表されるジカルボン酸の融点及び粘度が適切であり、大きさ、嵩高さに起因する反応性の低下がないため好ましい。
【0058】
式(1)で表されるジカルボン酸が、複数の芳香族炭化水素基を含む場合、その芳香族炭化水素基同士は直接結合していてもよく、芳香族炭化水素間に他の飽和脂肪族炭化水素基等の骨格を有する構造をとることもできる。前者の例としてはビフェニル骨格等、後者の例としてはビスフェノールA骨格、ベンゾフェノン、ジフェニルエテン骨格などを挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0059】
芳香族炭化水素基B1として好適な基は、その主骨格の炭素数が6以上18以下の構造である。この主骨格の炭素数には、主骨格に結合する官能基に含まれる炭素数を含まない。例えば、ベンゼン、ナフタレン、アセナフチレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、フルオランセン、ピレン、ベンゾフルオレン、ベンゾフェナントレン、クリセン、トリフェニレン、ビスフェノールA骨格等を挙げることができる。これらの中で特に好適な骨格としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンが例示できる。最も好適には、ベンゼン、ナフタレン構造が用いられる。
主骨格の炭素数が6以上であると、モノマーの製造が容易である。また、主骨格の炭素数が18以下であると、モノマー分子の大きさが適当で、分子運動の制限による反応性に優れる。さらに、モノマー分子中における反応性官能基の割合が適切であり、反応性が良好である。
【0060】
式(1)で表されるジカルボン酸は、少なくとも1個以上のメチレン基A1を含む。メチレン基は、直鎖、分岐のどちらでもよく、例えば、メチレン鎖、分岐メチレン鎖、置換メチレン鎖等を用いることができる。分岐メチレン鎖の場合、分岐部の構造は問わず、不飽和結合やさらなる分岐、環状構造等を有していてもよい。
メチレン基A1の数は、分子内の合計m+lとして、1個以上12個以下であることが好ましく、2個以上6個以下であることがより好ましく、また、mとlは同数であることがさらに好ましい。
上記の数値の範囲内であると、芳香族炭化水素と両末端のカルボキシル基が直接結合する構造とならないため、触媒と式(1)で表されるジカルボン酸とが形成する反応中間体が共鳴安定化することがなく、反応性に優れる。また、式(1)で表されるジカルボン酸に対し直鎖部分が大きくなりすぎることがないため、製造されるポリマーが非結晶性の特性を有し、ガラス転移温度Tgが適切である。
【0061】
メチレン基A1又はカルボキシル基と、芳香族炭化水素基B1の結合箇所は特に限定されず、o−位、m−位、p−位のいずれでもよい。
式(1)で表されるジカルボン酸としては、1,4−フェニレンジ酢酸、1,4−フェニレンジプロピオン酸、1,3−フェニレンジ酢酸、1,3−フェニレンジプロピオン酸,1,2−フェニレンジ酢酸、1,2−フェニレンジプロピオン酸等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。好適には、1,4−フェニレンジプロピオン酸、1,3−フェニレンジプロピオン酸、1,4−フェニレンジ酢酸、1,3−フェニレンジ酢酸を挙げることができる。
【0062】
式(1)で表されるジカルボン酸には、その構造のいずれかに各種官能基が付加していてもよい。また、重縮合反応性官能基であるカルボン酸基は、酸無水物、酸エステル化物、酸塩化物であってもよい。しかし、酸エステル化物とプロトンとの中間体が安定化しやすく、反応性を抑制する傾向があるため、好適にはカルボン酸、又はカルボン酸無水物、カルボン酸塩化物が使用される。
【0063】
<式(2)で表されるジカルボン酸>
式(2)で表されるジカルボン酸は脂環式炭化水素基B2を含む。脂環式炭化水素構造には特に限定はなく、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ノルボルネン、アダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、アイセアン、及び、ツイスタン骨格等を挙げることができるが、これに限定されない。またこれらの構造には置換基が付加していてもよい。その構造の安定性、分子の大きさや嵩高さなどを考慮すると、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルネン、アダマンタン骨格などが好ましい。
このモノマー中に含まれる脂環式炭化水素基の数は、1個以上3個以下であることが好ましい。上記の数値の範囲内であると、製造されるポリエステルの非結晶性を有しており、融点の上昇や分子の大きさや嵩高さにより反応性に優れる。
複数の脂環式炭化水素基を含む場合は、脂環式炭化水素基同士が直接結合する構造、間に他の飽和脂肪族炭化水素等の骨格を有する構造のどちらもとることができる。前者の例としては、ジシクロヘキシル骨格等であり、後者の例としては、水素添加ビスフェノールA骨格などを挙げることができるがこれに限定されない。
【0064】
脂環式炭化水素基で好適なものは、炭素数3以上12以下である。この主骨格の炭素数には、主骨格に結合する官能基に含まれる炭素数を含まない。例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルネン、アダマンタン骨格等を有する物質を挙げることができる。これらの中で特に好適な骨格としては、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルネン、アダマンタン骨格が例示できる。
【0065】
式(2)で表されるジカルボン酸は、メチレン基A2をその構造の中に有してもよい。メチレン基は、直鎖、分岐のどちらでもよく、例えば、メチレン鎖、分岐メチレン鎖、置換メチレン鎖等を用いることができる。分岐メチレン鎖の場合、分岐部の構造は問わず、不飽和結合やさらなる分岐、環状構造等を有していてもよい。
メチレン基A2数は、p、rがそれぞれ6以下である。p、rが6以下であると、式(2)で表されるジカルボン酸に対し直鎖部分が適度な大きさであり、製造されるポリマーが非結晶性であり、ガラス転移温度Tgが適度である。
【0066】
メチレン基A2又はカルボキシル基と、脂環式炭化水素基B2の結合箇所は特に限定されず、o−位、m−位、p−位のいずれでもよい。
式(2)で表されるジカルボン酸としては、1,1−シクロプロパンジカルボン酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,1−シクロペンテンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。この中で好ましく用いられるのは、シクロブタン、シクロヘキサン、シクロヘキサン骨格を有する物質であり、特に好ましくは、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。
また、式(2)で表されるジカルボン酸は、その構造のいずれかに各種官能基が付加していてもよい。また、重縮合反応性官能基であるカルボン酸基は、酸無水物、酸エステル化物、酸塩化物であってもよい。しかし、酸エステル化物とプロトンとの中間体が安定化しやすく、反応性を抑制する傾向があるため、好適には、カルボン酸、又はカルボン酸無水物、カルボン酸塩化物が使用される。
【0067】
本発明において、ポリカルボン酸成分の全体に対して、上記の式(1)及び/又は式(2)で表される化合物(ジカルボン酸)を50mol%以上100mol%以下含むことが好ましい。上記式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物は単独で使用することもでき、組み合わせて使用することもできる。
式(1)及び/又は式(2)で表される化合物の割合が50mol%未以上であると、低温重縮合での反応性が十分に発揮でき、重合度が高く、分子量が良好なポリエステルが得られ、また、残留重縮合成分が少ないため、硬化物が常温でべたつく等の性能悪化が生じず、さらに粘弾性やガラス転移温度が適度である。
本発明に用いることができるポリエステル樹脂は、前記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物を60mol%以上100mol%以下の量で用いて得られた樹脂であることがより好ましく、上記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物を80mol%以上100mol%以下の量で用いて得られた樹脂であることがさらに好ましい。
【0068】
<式(3)で表されるジオール>
本発明に用いることができるポリエステル樹脂は、ポリカルボン酸とポリオールの重縮合反応により得られる樹脂であって、該ポリオールの50mol%以上100mol%以下が式(3)で表される化合物(ジオール)よりなることが好ましい。
HOXhjkOH (3)
(X:アルキレンオキサイド基、Y:ビスフェノール骨格基、1≦h+k≦10、1≦j≦3)
上記式(3)で表されるジオールは、少なくとも1つのビスフェノール骨格Yを含む。ビスフェノール骨格とは、2つのフェノール基より構成される骨格であれば特に限定はなく、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。好適に使用される骨格としては、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZが例示でき、より好適には、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールFである。
ビスフェノール骨格の数jは、1個以上3個以下である。jが上記範囲であると、非結晶性の樹脂が得られ、また、粘度や融点が適度であり、反応性に優れる。
【0069】
前記式(3)で表されるジオールは少なくとも1つのアルキレンオキサイド基を有する。アルキレンオキサイド基はエチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好適には、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基であり、特に好適にはエチレンオキサイド基である。
アルキレンオキサイド基の総数h+kは1分子中に1個以上10個以下である。上記範囲であると、非結晶性の樹脂が得られ、また、反応性に優れ、重合が良好に進行し分子量の高い樹脂を得ることが可能である。
また、hとkとが同数であることが、均等な反応を促進する上で好ましい。また、アルキレンオキサイド基の総数h+kが6以下であることが好ましく、アルキレンオキサイド基数h、kが各2、又は、各1であることがより好ましい。また、2個以上のアルキレンオキサイド基を有する場合は、2種以上のアルキレンオキサイド基を1分子中に有することもできる。
【0070】
式(3)で表されるジオールとしては、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物において(h+kが1乃至10)、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物(h+kが2乃至10)、さらに、ビスフェノールZエチレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)、ビスフェノールZプロピレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)、ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)、ビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)、ビフェノールプロピレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)、ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)、ビスフェノールEエチレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)、ビスフェノールEプロピレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)、ビスフェノールCエチレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)、ビスフェノールCプロピレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)、ビスフェノールMエチレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)、ビスフェノールMプロピレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)、ビスフェノールPエチレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)、ビスフェノールPプロピレンオキサイド付加物(h+kが1乃至10)等を挙げることができるが、これらに限定されない。特に好適には、ビスフェノールAエチレンオキサイド1モル付加物(h、k各1)、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(h、k各2)、ビスフェノールAプロピレンオキサイド1モル付加物(h、k各1)、ビスフェノールAエチレンキサイド1モルプロピレンオキサイド2モル付加物、ビスフェノールEエチレンオキサイド1モル付加物(h、k各1)、ビスフェノールEプロピレンオキサイド1モル付加物(h、k各1)、ビスフェノールFエチレンオキサイド1モル付加物(h、k各1)、ビスフェノールFプロピレンオキサイド1モル付加物(h、k各1)が挙げられる。
【0071】
本発明において、式(3)で表されるジオールは、ポリオール中に50mol%以上100mol%以下含まれる。含有量が上記範囲であると、低温重縮合での反応性が十分に発揮でき、重合度が高く、分子量が良好なポリエステルが得られ、また、残留重縮合成分が少ないため、硬化物が常温でべたつく等の性能悪化が生じず、さらに粘弾性やガラス転移温度が適度である。
本発明に用いることができるポリエステル樹脂は、前記式(3)で表されるジオールを60mol%以上100mol%以下の量で用いて得られた樹脂であることがより好ましく、記式(3)で表されるジオールを80mol%以上100mol%以下の量で用いて得られた樹脂であることがさらに好ましい。
【0072】
本発明において、式(1)及び/又は式(2)で表されるジカルボン酸及び式(3)で表されるジオールは、それぞれ単量体の状態でも、オリゴマー、ポリマーの状態でも樹脂形成組成物として使用することができる。オリゴマー、ポリマーの場合、好ましい分子量はMw300以上30,000以下であり、より好ましくは300以上25,000以下である。この分子量の範囲である場合、公知の方法により被膜形成が可能であり、被膜形成後にさらに硬化させることが可能となる。
【0073】
また、重縮合性単量体を重縮合して得られる前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、1,500以上55,000以下であることが好ましく、3,000以上45,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量が1,500以上であると、バインダー樹脂の凝集力が良好であり、ホットオフセット性に優れ、55,000以下であると、ホットオフセット性に優れ、かつ、最低定着温度が優れた値を示し好ましい。また、単量体のカルボン酸価数、アルコール価数の選択などによって一部枝分かれや架橋などを有していてもよい。
【0074】
これら水系媒体中での重合に際し重合前の単量体成分に加え、後述の着色剤、ワックス等を予め混合しておくことも可能である。このような方法により着色剤やワックスを取り込んだ形で樹脂粒子を得ることができる。
【0075】
前記ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散する際には、上記各材料を水系媒体に例えば機械的シェアや超音波などを使用し分散するが、この分散の際に必要に応じて界面活性剤や高分子分散剤、無機分散剤などを水系媒体中に添加することも可能である。また、ポリエステルを含む混合物(油相)中に水系媒体を添加し、最終的に水系媒体中にポリエステルを乳化分散させてもよい。
【0076】
本発明の樹脂粒子分散液には、分散効率の上昇や樹脂粒子分散液の安定性向上のため、後述の界面活性剤を添加することもできる。
本発明に用いることができる界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤が好ましい。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面活性剤又はカチオン系界面活性剤と併用することが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アニオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等などが挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等を挙げることができる。
【0077】
また、本発明の樹脂粒子分散液には、高分子分散剤や安定助剤を添加してもよい。
高分子分散剤としては、ポリカルボン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、無機分散剤としては、炭酸カルシウムなどを例示することが出来るが、これらはなんら本発明を制限するものではない。
さらに通常水系媒体中での単量体エマルジョン粒子のOstwald Ripning現象を防ぐためにしばしば、ヘプタノールやオクタノールに代表される高級アルコール類、ヘキサデカンに代表される高級脂肪族炭化水素類を安定助剤として配合することも可能である。
【0078】
また、本発明においては、重縮合性単量体に加え、さらに付加重合性単量体、好ましくはラジカル重合性単量体を必要に応じて添加することもでき、重縮合と付加重合を同時あるいは別々に行い複合化してもよい。付加重合性単量体としては、例えば、カチオン重合性単量体及びラジカル重合性単量体が挙げられるが、ラジカル重合性単量体であることが好ましい。
この場合に用いられるラジカル重合性単量体としては、具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン等のα−置換スチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン等の核置換スチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、ジブロモスチレン等の核置換ハロゲン化スチレン等のビニル芳香族類、(メタ)アクリル酸(なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味するものとし、以下も同様とする。)、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステル類、(メタ)アクリルアルデヒド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等の不飽和カルボン酸誘導体類、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物類、N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N−メチロールマレインアミド酸、N−メチロールマレインアミド酸エステル、N−メチロールマレイミド、N−エチロールマレイミド等のN−置換不飽和アミド類、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルシクロヘキサン等の多官能ビニル化合物類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート類等が挙げられる。なお、これらの中で、N−置換不飽和アミド類、共役ジエン類、多官能ビニル化合物類、及び、多官能アクリレート類等は、生成された重合体に架橋反応を生起させることもできる。これらを、単独で、あるいは組み合わせて使用できる。
【0079】
前記付加重合性単量体、特にラジカル重合性単量体は、その重合法としてラジカル重合開始剤を用いる方法、熱による自己重合、紫外線照射を用いる方法、既知の重合方法を用いることができる。この場合、ラジカル開始剤を用いる方法としてラジカル開始剤は、油溶性、水溶性のものがあるがどちらの開始剤を使用しても構わない。
具体的には、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ヒドロクロリド等のアゾビスニトリル類、アセチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチル−α−クミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、α−クミルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート等のパーオキシエステル、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド等のヒドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシカーボネート等の有機過酸化物類、過酸化水素等の無機過酸化物類、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類等のラジカル重合開始剤が挙げられる。なお、レドックス重合開始剤を併用することもできる。
また、付加重合時に連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、特に制限はなく、具体的には炭素原子と硫黄原子との共有結合を持つものが好ましく、例えば、チオール類が好ましく挙げられる。
【0080】
本発明においては、前記付加重合性単量体を含有するポリエステル含有物(油相)の平均粒子径を特定の範囲に保つために、共界面活性剤を併用することができる。その共界面活性剤としては、水不溶性若しくは難溶性で且つ単量体可溶性であり、詳細後述する、従来公知の“ミニエマルジョン重合”において用いられているものを用いることができる。
好適な共界面活性剤の例としては、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカン等の炭素数8以上30以下のアルカン類、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数8以上30以下のアルキルアルコール類、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数8以上30以下のアルキル(メタ)アクリレート類、ラウリルメルカプタン、セチルメルカプタン、ステアリルメルカプタン等の炭素数8以上30以下のアルキルメルカプタン類、及び、その他、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリマー又はポリアダクト類、カルボン酸類、ケトン類、アミン類等が挙げられる。
【0081】
(樹脂粒子分散液の製造方法)
本発明の樹脂粒子分散液は、以下に示す製造方法により製造されることが好ましい。
本発明の樹脂粒子分散液の製造方法は、触媒として硫黄酸を用い、重縮合性単量体を重縮合して末端カルボキシル基を有するポリエステル樹脂を得る工程(以下、「重縮合工程」ともいう。)、前記ポリエステル樹脂を式(I)で表される化合物を用いて水系媒体中に乳化分散する工程(以下、「分散工程」ともいう。)を含む製造方法であることが好ましい。
【0082】
【化4】

【0083】
また、本発明の樹脂粒子分散液の製造方法は、必要に応じ、後述する他の工程や、公知である任意の工程を含んでいてもよい。
【0084】
[重縮合工程]
本発明の樹脂粒子分散液の製造方法は、触媒として硫黄酸を用い、重縮合性単量体を重縮合して末端カルボキシル基を有するポリエステル樹脂を得る工程を含む。
【0085】
前記重縮合工程における重縮合反応の反応温度は、従来の反応温度よりも低温で反応させることが好ましい。反応温度は、好適には70℃以上150℃以下、より好適には70℃以上140℃以下であり、さらに好適には80℃以上140℃未満である。反応温度が70℃以上であると、モノマーの溶解性、触媒活性度の低下せず、反応性が十分高く、分子量の伸長抑制等が起こらないため好ましい。また、反応温度が150℃以下であると、低エネルギー製法という目的を達成することができるため好ましい。さらに高温に起因する樹脂の着色や、生成したポリエステルの分解等が起こりにくいため好ましい。
また、重縮合時の反応時間は、反応温度にも依存するが、0.5時間以上72時間以下が好ましく、1時間以上48時間以下がより好ましい。
【0086】
前記重縮合工程における重縮合反応は、バルク重合、乳化重合、懸濁重合等の水中重合、溶液重合、界面重合等一般の重縮合法で実施することが可能であるが、好適にはバルク重合又は水中重合が用いられる。また、大気圧下で反応が可能であるが、ポリエステル分子量の高分子量化等を目的とした場合、減圧、窒素気流下等の一般的な条件を広く用いることができる。
【0087】
<重縮合触媒>
本発明における重縮合工程では、重縮合反応の反応速度を上げることができ、低温で重縮合を行うことができるため、重縮合触媒として硫黄酸を使用する。
硫黄酸は、前述したものを好適に使用することができ、また、1種単独でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0088】
前記重縮合工程における硫黄酸の使用量は、重縮合成分の総重量に対し、0.05重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。
硫黄酸の使用量が上記範囲内であると、十分な触媒活性を発揮することができるので好ましい。
【0089】
<水系媒体>
前記重縮合工程における重縮合反応は、水系媒体で行ってもよい。
重縮合反応に用いることができる水系媒体は、前述の水系媒体と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0090】
<有機溶剤>
前記重縮合工程における重縮合反応では、有機溶剤を用いて行ってもよい。
本発明に用いることができる有機溶剤の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、ジクロロベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、p−クロロトルエン等のハロゲン系溶媒、3−ヘキサノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン系溶媒、ジブチルエーテル、アニソール、フェネトール、o−ジメトキシベンゼン、p−ジメトキシベンゼン、3−メトキシトルエン、ジベンジルエーテル、ベンジルフェニルエーテル、メトキシナフタレン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、フェニルスルフィド、チオアニソール等のチオエーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、安息香酸メチル、フタル酸メチル、フタル酸エチル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶媒、ジフェニルエーテル、又は、4−メチルフェニルエーテル、3−メチルフェニルエーテル、3−フェノキシトルエン等のアルキル置換ジフェニルエーテル、又は、4−ブロモフェニルエーテル、4−クロロフェニルエーテル、4−ブロモジフェニルエーテル、4−メチル−4’−ブロモジフェニルエーテル等のハロゲン置換ジフェニルエーテル、又は、4−メトキシジフェニルエーテル、4−メトキシフェニルエーテル、3−メトキシフェニルエーテル、4−メチル−4’−メトキシジフェニルエーテル等のアルコキシ置換ジフェニルエーテル、又は、ジベンゾフラン、キサンテン等の環状ジフェニルエーテル等のジフェニルエーテル系溶媒が挙げられ、これらは、混合して用いてもよい。そして、溶媒として容易に水と分液分離できるものが好ましく、特に平均分子量の高いポリエステルを得るためにはエステル系溶媒、エーテル系溶媒及びジフェニルエーテル系溶媒がより好ましく、アルキル−アリールエーテル系溶媒及びエステル系溶媒が特に好ましい。
【0091】
さらにまた、本発明において、平均分子量の高い結着樹脂を得るため、有機溶剤に脱水、脱モノマー剤を加えてもよい。脱水、脱モノマー剤の具体例としては、例えば、モレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ13X等のモレキュラーシーブ類、アルミナ、シリカゲル、塩化カルシム、硫酸カルシウム、五酸化二リン、濃硫酸、過塩素酸マグネシウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、あるいは水素化カルシウム、水素化ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム等の金属水素化物、又は、ナトリウム等のアルカリ金属等が挙げられる。中でも、取扱い及び再生の容易さからモレキュラーシーブ類が好ましい。
【0092】
[分散工程]
本発明の樹脂粒子分散液の製造方法は、前記ポリエステル樹脂を式(I)で表される化合物を用いて水系媒体中に乳化分散する工程を含む。
前記分散工程における式(I)で表される化合物は、前記重縮合工程において使用した硫黄酸の量に対し、最終的な樹脂粒子分散液中の硫黄原子濃度Sと窒素原子濃度Nとが1.0≦N/S≦400を満たすように使用することが慣用である。
前記分散工程において、式(I)で表される化合物を使用することにより、水系媒体中へのポリエステル樹脂の乳化分散性に優れ、適度な粒径の樹脂粒子が得られ、また、乳化分散されずに残るポリエステル樹脂残渣がほとんど生じない。
前記分散工程では、分散効率の上昇や樹脂粒子分散液の安定性向上のため、界面活性剤等を添加し、分散を行うことが好ましい。
【0093】
前記ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散、粒子化する方法としては、例えば、強制乳化法、自己乳化法、転相乳化法など、既知の方法からも選択することができる。これらのうち、乳化に要するエネルギー、得られる乳化物の粒径制御性、安定性等を考慮すると、自己乳化法、転相乳化法が好ましく適用される。
自己乳化法、転相乳化法に関しては、「超微粒子ポリマーの応用技術(シーエムシー出版)」に記載されている。また、前記ポリエステルは、末端カルボキシル基を有し、さらにその一部を中和するため、自己乳化法がより好ましく用いられる。
【0094】
前記分散工程において有機溶剤を用いた場合、本発明の樹脂粒子分散液の製造方法として、少なくとも有機溶剤の一部を除去する工程、及び、樹脂粒子を形成する工程を含んでいてもよい。
例えば、末端カルボキシル基を有するポリエステルの含有物を乳化後、有機溶剤の一部を除去することにより粒子として固形化するのが好ましい。固形化の具体的方法としては、前記ポリエステルの含有物を水系媒体中に乳化分散した後、溶液を撹拌しながら空気、あるいは窒素等の不活性ガスを送り込みながら、気液界面での有機溶剤の乾燥を行う方法(廃風乾燥法)、又は、減圧下に保持し必要に応じて不活性ガスをバブリングしながら乾燥を行う方法(減圧トッピング法)、さらには、ポリエステル含有物を水系媒体中に乳化分散した乳化分散液若しくはポリエステル含有物の乳化液を細孔からシャワー状に放出し、例えば、皿状の受けに落としこれを繰り返しながら乾燥させる方法(シャワー式脱溶剤法)などがある。使用する有機溶剤の蒸発速度、水への溶解度などからこれら方式を適時選択、あるいは組み合わせて脱溶剤を行うのが好ましい。
【0095】
また、前記ポリエステルを水系媒体中に分散、粒子化する方法としては、例えば、前記ポリエステルの製造を行う際に、水系媒体中で懸抱重合法、溶解懸濁法、ミニエマルジョン法、マイクロエマルジョン法、多段膨潤法やシード重合を含む乳化重合法などの方法も挙げられる。
【0096】
一般に、樹脂の経時による色相変化は、酸触媒から放出されるプロトンがカルボキシル基の酸素原子と水素結合を形成し、カルボキシル基の二重結合性を弱めることがあるために、可視光吸光度が変化するためである。
本発明の樹脂粒子分散液の製造方法においては、式(I)で表される化合物を用いることにより、前記経時色相安定性を改善することができ、また、乳化剤、さらには中和剤としても兼用することができる。
【0097】
[中和工程]
本発明の樹脂粒子分散液の製造方法は、前記ポリエステルにおける末端カルボキシル基の一部を中和する工程をさらに含むことが好ましい。
末端カルボキシル基の中和には、水への溶解度が高い式(I)で表される化合物を好ましく用いることができるが、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニウム化合物、及び、式(I)で表される化合物以外の有機アミン等を用いてもよい。
式(I)で表される化合物以外の有機アミンとしては、トリエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、イソプロピルアミン、モルフォリン、メトキシプロピルアミン、ピリジン、ビニルピリジン等が例示できる。
本発明における中和工程は、前記分散工程と同時に行ってもよいし、前記分散工程の前、若しくは、後に行ってもよい。
前記中和工程における中和方法としては、前記中和率を達成できる方法であれば特に限定はないが、前記ポリエステルを、中和剤を含む水系媒体中に分散し、かつ中和する方法、前記ポリエステルを中和剤により無溶媒又は溶媒中で中和する方法、また、前記ポリエステルの分散液に対し中和剤を添加し中和する方法等が例示できる。
【0098】
(静電荷像現像トナー及びその製造方法)
本発明の静電荷像現像トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)の製造方法は、少なくとも樹脂粒子分散液を含む分散液中で該樹脂粒子を凝集して凝集粒子を得る工程、及び、該凝集粒子を加熱して融合させる工程を含む静電荷像現像トナーの製造方法であって、前記樹脂粒子分散液が上述の樹脂粒子分散液であることを特徴とする。
本発明の静電荷像現像トナーの製造方法は、例えば、本発明において調整した樹脂粒子分散液を、着色剤粒子分散液及び離型剤粒子分散液と混合し、さらに凝集剤を添加しヘテロ凝集を生じさせることによりトナー径の凝集粒子を形成し、その後、樹脂粒子のガラス転移点以上又は融点以上の温度に加熱して前記凝集粒子を融合・合一し洗浄、乾燥することにより、本発明の静電荷像現像トナーが得られる。なお、トナー形状は不定形から球形までのものが好ましく用いられる。また、凝集剤としては界面活性剤の他、無機塩、2価以上の金属塩を好適に用いることができる。特に金属塩を用いる場合、凝集性制御及びトナー帯電性の特性において好ましい。
また前述の凝集工程において本発明の樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液を予め凝集し、第一の凝集粒子形成後、さらに本発明の樹脂粒子分散液又は別の樹脂粒子分散液を添加して第一の粒子表面に第二のシェル層を形成することも可能である。この例示においては着色剤分散液を別に調整しているが、当然、本発明の樹脂粒子分散液中の樹脂粒子に予め着色剤が配合されてもよい。
【0099】
本発明において、凝集粒子の形成方法としては、特に限定されるものではなく、従来静電荷像現像トナーの乳化重合凝集法において用いられている公知の凝集法、例えば、昇温、pH変化、塩添加等によってエマルジョンの安定性を低減化させてディスパーザー等で撹拌する方法等が用いられる。
さらに、凝集処理後、粒子表面からの着色剤の滲出を抑える等の目的で、熱処理を施す等により粒子表面を架橋せしめてもよい。なお、用いた界面活性剤等は、必要に応じて、水洗浄、酸洗浄、或いはアルカリ洗浄等によって除去してもよい。
【0100】
なお、本発明の静電荷像現像トナーの製造方法には、必要に応じて、この種のトナーに用いられる帯電制御剤を用いてもよく、その場合、帯電制御剤は、前記単量体粒子エマルジョンの製造開始時、あるいは重合開始時、又は、前記樹脂粒子の凝集開始時等に、水性分散液等としてもよい。
帯電制御剤の添加量は、単量体又は重合体100重量部に対して、好ましくは1重量部以上25重量部以下、さらに好ましくは5重量部以上15重量部以下である。
その帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン系樹脂等の正荷電性帯電制御剤、又は、クロム、コバルト、アルミニウム、鉄等の金属含有アゾ系染料、サリチル酸若しくはアキルサリチル酸やベンジル酸等のヒドロキシカルボン酸のクロム、亜鉛、アルミニウム等の金属塩や金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物等の負荷電性帯電制御剤等、公知のものを用いることができる。
【0101】
また、本発明の静電荷像現像トナーの製造方法には、必要に応じて、この種のトナーに用いられる離型剤としてのワックス類を用いてもよく、その場合、離型剤は、前記単量体エマルジョンの製造開始時、あるいは重合開始時、又は、前記重合体粒子の凝集開始時等に、水性分散液等として添加してもよい。離型剤の使用量としては、単量体又は重合体100重量部に対して、好ましくは1重量部以上25重量部以下、さらに好ましくは5重量部以上15重量部以下である。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ワックス、パラフィン系ワックス、水添ヒマシ油、カルナバワックス、ライスワックス等の植物系ワックス、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、モンタン酸エステル等の高級脂肪酸エステル系ワックス、アルキル変性シリコーン、ステアリン酸等の高級脂肪酸ステアリルアルコール等の高級アルコール、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン等、公知のものを用いることができる。
さらに、本発明の静電荷像現像トナーの製造方法には、必要に応じてこの種のトナーに用いられる酸化防止剤、紫外線吸収剤等の公知の各種内添剤を用いてもよい。
本発明の静電荷像現像トナーの製造方法により得られるトナーは、1μm以上10μm以下の平均粒子径を有することが好ましく、また、その粒子中に、前記ポリエステル100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上50重量部以下、さらに好ましくは0.5重量部以上40重量部以下、特に好ましくは1重量部以上25重量部以下の着色剤を含有する。
【0102】
<付加重合系樹脂粒子分散液>
また、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液及び非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液以外にも、従来から知られる乳化重合などを用いて作製された付加重合系樹脂粒子分散液を合わせて用いることができる。本発明で用いることのできる付加重合系樹脂粒子分散液中の樹脂粒子のメジアン径は、本発明の樹脂粒子分散液と同様に0.1μm以上2.0μm以下であることが好ましい。
【0103】
これらの付加重合系樹脂粒子分散液を作製するための付加重合性単量体の例としては、前述した付加重合性単量体が好ましく例示できる。
付加重合系単量体の場合は、イオン性界面活性剤などを用いて乳化重合を実施して樹脂粒子分散液を作製することができ、その他の樹脂の場合は油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば、樹脂をそれらの溶剤に溶かし、イオン性の界面活性剤や高分子電解質とともにホモジナイザーなどの分散機により水系媒体中に粒子状に分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂粒子分散液を得ることができる。
また、付加重合系単量体の重合時に前述の重合開始剤や連鎖移動剤を用いることもできる。
【0104】
<着色剤>
本発明のトナーに用いることのできる着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デイポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドCローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレート、チタンブラックなどの種々の顔料や、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、チアゾール系、キサンテン系などの各種染料などが挙げられる。前記着色剤として、具体的には、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、アニリンブルー(C.I.No.50405)、カルコオイルブルー(C.I.No.azoic Blue3)、クロムイエロー(C.I.No.14090)、ウルトラマリンブルー(C.I.No.77103)、デュポンオイルレッド(C.I.No.26105)、キノリンイエロー(C.I.No.47005)、メチレンブルークロライド(C.I.No.52015)、フタロシアニンブルー(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.42000)、ランプブラック(C.I.No.77266)、ローズベンガル(C.I.No.45435)、これらの混合物などを好ましく用いることができる。
着色剤の使用量は、トナー100重量部に対して、0.1重量部以上20重量部以下であることが好ましく、0.5重量部以上10重量部以下が特に好ましい。また、着色剤として、これらの顔料や染料等を1種単独で使用する、又は、2種以上を併せて使用することができる。
これらの分散方法としては、任意の方法、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用することができ、なんら制限されるものではない。また、これらの着色剤粒子は、その他の粒子成分と共に混合溶媒中に一度に添加してもよいし、分割して多段階で添加してもよい。
【0105】
本発明の静電荷像現像トナーは、必要に応じ磁性体や、特性改良剤を含有してもよい。
前記磁性体としては、フェライト、マグネタイトを始めとする鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性を示す金属若しくは合金、又は、これらの元素を含む化合物、あるいは強磁性元素を含まないが適当な熱処理を施すことによって強磁性を示すようになる合金、例えばマンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−錫などのマンガンと銅とを含むホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、または二酸化クロム、その他を挙げることができる。例えば黒色のトナーを得る場合においては、それ自身黒色であり着色剤としての機能をも発揮するマグネタイトを特に好ましく用いることができる。また、カラートナーを得る場合においては、金属鉄などのように黒みの少ないものが好ましい。またこれらの磁性体のなかには着色剤としての機能をも果たすものがあり、その場合には着色剤として兼用してもよい。これら磁性体の含有量は、磁性トナーとする場合にはトナー100重量部当り20重量部以上70重量部以下であることが好ましく、40重量部以上70重量部以下であることがより好ましい。
【0106】
前記特性改良剤としては、定着性向上剤、及び、荷電制御剤などがある。
定着性向上剤としては、例えば、ポリオレフィン、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル及び脂肪酸エステル系ワックス、部分ケン化脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、流動または固形のパラフィンワックス、ポリアミド系ワックス、多価アルコールエステル、シリコンワニス、脂肪族フルオロカーボンなどを用いることができる。特に軟化点(環球法:JIS K2531)が60℃以上150℃以下のワックスが好ましい。
荷電制御剤としては、従来から知られているものを用いることができ、例えば、ニグロシン系染料、含金属染料等が挙げられる。
【0107】
さらに本発明のトナーは、流動性向上剤等の無機粒子を混合して用いることが好ましい。
本発明に用いることができる前記無機粒子としては、一次粒子径が5nm以上2μm以下であることが好ましく、5nm以上500nm以下であることがより好ましい。またBET法による比表面積は20m2/g以上500m2/g以下であることが好ましい。トナーに混合される割合は0.01重量%以上5重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以上2.0重量%以下であることがより好ましい。このような無機粒子としては例えば、シリカ粉末、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化硅素、窒化硅素などが挙げられるが、シリカ粉末が特に好ましい。
ここでいうシリカ粉末はSi−O−Si結合を有する粉末であり、乾式法及び湿式法で製造されたもののいずれも含まれる。また、無水二酸化ケイ素の他、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸亜鉛などいずれでもよいが、SiO2を85重量%以上含むものが好ましい。
これらシリカ粉末の具体例としては種々の市販のシリカがあるが、表面に疎水性基を有するものが好ましく、例えばAEROSIL R−972、R−974、R−805、R−812(以上アエロジル社製)、タラックス500(タルコ社製)等を挙げることができる。その他シランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコンオイル、側鎖にアミンを有するシリコンオイル等で処理されたシリカ粉末などが使用可能である。
【0108】
本発明の静電荷像現像トナーの製造方法により得られたトナーの累積体積平均粒径D50は3.0μm以上9.0μm以下の範囲であることが好ましく、3.0μm以上5.0μm以下の範囲であることがより好ましい。D50が3.0μm以上であると、付着力が適度であり、現像性が良好で好ましい。また、9.0μm以下であると、画像の解像性に優れ好ましい。
【0109】
また、得られるトナーの体積平均粒度分布指標GSDvは1.30以下であることが好ましく、1.24以下であることがより好ましく、1.20以下であることがさらに好ましい。GSDvが1.30以下であると、解像性に優れ、また、トナー飛散やカブリ等の画像欠陥が起こらず好ましい。
【0110】
ここで、累積体積平均粒径D50や平均粒度分布指標は、例えばコールターカウンターTAII(ベックマンーコールター社製)、マルチサイザーII(ベックマンーコールター社製)等の測定器で測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積D16v、数D16P、累積50%となる粒径を体積D50v、数D50P、累積84%となる粒径を体積D84v、数D84Pと定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16V1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84P/D16P1/2として算出される。
【0111】
得られたトナーの形状係数SF1は、画像形成性の点より、100以上140以下であることが好ましく、110以上135以下であることがより好ましい。
形状係数SF1は、主に顕微鏡画像または走査電子顕微鏡画像を画像解析装置によって解析することによって数値化され、例えば、次のようにして求められる。形状係数SF1の測定は、まず、スライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像を、ビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のトナーについて下記式のSF1を計算し、平均値を求めることにより得られる。
【0112】
【数2】

ここでMLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積である。
【0113】
得られたトナーには、流動性付与やクリーニング性向上の目的で通常のトナーと同様に乾燥した後、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機粒子やビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂粒子を乾燥状態でせん断をかけながらトナー粒子表面に添加して使用することができる。
【0114】
また、水系媒体中にてトナー表面に付着せしめる場合、無機粒子の例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなど通常トナー表面の外添剤として使うすべてのものをイオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基で分散することにより使用することができる。
【0115】
(静電荷像現像剤)
以上説明した本発明の静電荷像現像トナーの製造方法により得られるトナーは、静電荷像現像剤として使用することができる。この現像剤は、この静電荷像現像トナーを含有することのほかは特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成をとることができる。静電荷像現像トナーを、単独で用いると一成分系の静電荷像現像剤として調製され、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷像現像剤として調製される。
本発明に用いることができるキャリアとしては、特に限定されないが、通常、鉄粉、フェライト、酸化鉄粉、ニッケル等の磁性体粒子;磁性体粒子を芯材としてその表面をスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、エチレン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂などの樹脂やステアリン酸等のワックスで被覆し、樹脂被覆層を形成させてなる樹脂被覆キャリア;結着樹脂中に磁性体粒子を分散させてなる磁性体分散型キャリア等が挙げられる。中でも、樹脂被覆キャリアは、トナーの帯電性やキャリア全体の抵抗を樹脂被覆層の構成により制御可能となるため特に好ましい。
二成分系の静電荷像現像剤における本発明のトナーとキャリアとの混合割合は、キャリア100重量部に対して、トナー2重量部以上10重量部以下であることが好ましい。また、現像剤の調製方法は、特に限定されないが、例えば、Vブレンダー等で混合する方法等が挙げられる。
【0116】
(画像形成方法)
本発明の画像形成方法は、潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を熱定着する定着工程とを含む画像形成方法であって、前記トナーとして本発明の静電荷像現像トナー、又は、前記現像剤として本発明の静電荷像現像剤を用いることを特徴とする。
本発明の画像形成方法としては、上記のような特定のトナーを用いて現像剤を調製し、それを用いて常用の電子写真複写機により静電荷像の形成及び現像を行い、得られたトナー像を転写紙上に静電転写した上加熱ローラの温度を一定温度に設定した加熱ローラ定着器により定着して複写画像を形成する。
本発明の画像形成方法は、転写紙上のトナーと加熱ローラとの接触時間が、好ましくは1秒間以内、より好ましくは0.5秒間以内であるような高速定着を行う際に特に好ましく用いられる。
【0117】
また、本発明の静電荷像現像剤(静電荷像現像トナー)は、通常の静電荷像現像方式(電子写真方式)の画像形成方法に使用することができる。本発明の画像形成方法は、具体的には、例えば、静電潜像形成工程、トナー画像形成工程、転写工程、及びクリーニング工程を含む。前記各工程は、それ自体一般的な工程であり、例えば、特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている。なお、本発明の画像形成方法は、それ自体公知のコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施することができる。
前記静電潜像形成工程は、静電潜像担体上に静電潜像を形成する工程である。前記トナー画像形成工程は、現像剤担体上の現像剤層により前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する工程である。前記現像剤層としては、前記本発明の静電荷像現像トナーを含有する本発明の静電荷像現像剤を含んでいれば特に制限はない。前記転写工程は、前記トナー画像を転写体上に転写する工程である。前記クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留する静電荷像現像剤を除去する工程である。
本発明の画像形成方法においては、さらにリサイクル工程をも含む態様が好ましい。前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程において回収した静電荷像現像トナーを現像剤層に移す工程である。このリサイクル工程を含む態様の画像形成方法は、トナーリサイクルシステムタイプのコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施することができる。また、クリーニング工程を省略し、現像と同時にトナーを回収する態様のリサイクルシステムにも適用することができる。
【0118】
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、静電潜像保持体と、該静電潜像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、該帯電手段により帯電させられた該保持体の表面に、画像情報に応じて露光することにより静電潜像を形成する露光手段と、該静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成させる現像手段と、該トナー像を該保持体から被記録材に転写する転写手段とを有し、必要に応じて定着基材上のトナー像を定着する定着手段とを有する。上記転写手段では、中間転写体を用いて2回以上の転写を行ってもよい。
【0119】
上記静電潜像保持体、及び、上記の各手段は、前記の画像形成方法の各工程で述べた構成を好ましく用いることができる。
上記の各手段は、いずれも画像形成装置において公知の手段が利用できる。また、本発明で用いる画像形成装置は、上記した構成以外の手段や装置等を含むものであってもよい。また、本発明で用いる画像形成装置は上記した手段のうちの複数を同時に行ってもよい。
【0120】
(液体現像剤)
本発明の液体現像剤は、本発明の樹脂粒子分散液を用いて作製した液体現像剤であり、本発明の静電荷像現像トナー、及び、キャリア媒体を用いて作製した液体現像剤であることが好ましい。
また、本発明の液体現像剤は、帯電制御剤を含有していることが好ましい。
【0121】
前記キャリア媒体としては、パラフィン類、ロウ類、ワックス類、低分子量の結晶性高分子樹脂及びこれらの混合物が挙げられる。分岐若しくは直鎖状のパラフィン類又はワックス類が特に好ましい。
パラフィン類としては、テトラデカン(C1438、融点5.9℃)からヘキサコンタン(C4082、融点81.5℃)に至る炭素数14以上40以下程度の各種のノルマルあるいはイソパラフィンが挙げられる。
ロウ類、ワックス類としては、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス及びパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス等が挙げられる。また、これら天然ワックスの他に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素系ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックスも使用することができる。
さらにポリ(n−ステアリルメタクリレート)、ポリ(n−ラウリルメタクリレート)等のポリアクリレートのホモ重合体または共重合体(例えばn−ステアリルアクリレートエチルメタクリレートの共重合体等)等の、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子も使用可能である。さらにまた、上記分岐あるいは直鎖脂肪族炭化水素類のハロゲン化物、例えばフルオロカーボン類等のハロゲン化炭化水素等も使用できる。
【0122】
次に、上記キャリアに含有させる帯電制御剤について説明する。
キャリア液中に存在し、ミセル形成能を有するイオン性、又は、非イオン性の帯電制御剤としては、リン脂質、油溶性石油スルフォネート、イオン性、非イオン性の界面活性剤、親油性部と親水性部からなるブロック若しくはグラフト共重合体類、さらにまた環状、星状、樹状高分子(デンドリマー)等の高分子鎖骨格をもつ化合物を用いることができるが、中でも特に好ましいものは、液体現像剤の加熱条件や各種の熱履歴に対して化合物自体が熱的に安定であり、塩構造の帯電制御剤を用いた場合には、カチオンの安定化機能を有し、安定した分散性が得られるリン脂質、及び、油溶性石油スルフォネートや、不純物の排除が比較的容易な合成高分子化合物、例えば親油性部と親水性部からなるブロック若しくはグラフト共重合体類が好都合に用いられる。
【0123】
より具体的には、レシチン、セハリン等のリン脂質、ウイトコケミカル社(Witoco Chemical Corp.)製のベーシックバリウムペトロネート、ベーシックナトリウムペトロネート、ベーシックカルシウムペトロネート等の油溶性石油スルフォネート、シェブロン社より販売されているOLOA−1200等のポリブチレン/サクイシンイミド等が好ましく用いられる。
親油性部と親水性部からなるブロック若しくはグラフト共重合体類としては、親油性部として、ブタジエン、イソプレン、及びアクリル酸、メタクリル酸を代表例とするα,β−エチレン不飽和酸のアルキルエステル等を単量体とするポリマーが好ましく用いられる。親水性部としては、四級化されたトリアルキルアミノポリマー、四級化されたピリジニウムポリマー等が好都合に用いられる。さらにまたポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体も好ましく使用できる。これら親油性部と親水性部からなるブロックもしくはグラフト共重合体は、全体で1,000以上50,000以下の数平均分子量を持ち、ブロック共重合体の場合は、その構造がAB型、ABA型、BAB型のいずれでもよく、また、グラフト共重合体の場合は、櫛形のグラフト構造であってもよい。さらにまた、クラウンエーテル、大環状アミン、ポリノルボルネン等の環状高分子、スチレン星状高分子、ポリアルキルアミド−アルポロール等の樹状高分子(デンドリマー)等の高分子鎖骨格をもった化合物であってもよい。
【0124】
イオン性及び非イオン性の界面活性剤類としては、より具体的には以下が挙げられる。
ノニオン活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸等がある。
カチオン界面活性剤としては、第一級ないし第三級のアミン塩、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
これら帯電制御剤は、トナー固形分に対して、0.01重量%以上20重量%以下が好ましく、0.05重量%以上10重量%以下が特に好ましい。上記範囲であると、帯電制御効果が充分得られ、また、現像液の電導度が適度である。また、キャリアにおける含有量としては、キャリアの重量あたり、0.01重量%以上10重量%以下であることが好ましく、0.05重量%以上1重量%以下であることがより好ましい。上記範囲であると、帯電制御効果が充分得られ、また、現像液の電導度が適度である。
また、少量の添加で十分な帯電制御効果を発揮するため、これら帯電制御剤が前述したトナー粒子中の帯電制御剤と組み合せて用いることも好ましい。
【0125】
これら帯電制御剤の他にも、現像剤の物性制御のために、ポリマー粒子、無機粒子等をさらに分散させたり、さらにまたキャリアや帯電制御剤の熱劣化や光、湿度等による酸化あるいはラジカル連鎖による増粘防止の目的で、各種添加剤を現像液中に分散あるいは溶解させてもよい。
酸化防止剤としてはより具体的に、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ジラウリルチオジプロピオネート、トリフェニルフォスファイト等を挙げることができる。
ラジカル重合禁止剤としてはより具体的に、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ナフトキノン、ジフェニルピクリルヒドラジル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド等を挙げることができる。
【0126】
(塗料)
本発明の塗料は、本発明の樹脂粒子分散液を用いて作製した塗料であり、本発明の樹脂粒子分散液由来の樹脂成分を含むが、他の樹脂成分をさらに含んでいてもよい。
また、本発明の塗料は、必要に応じ、顔料を含むことが好ましく、顔料以外にも、例えば、溶剤、骨材、充填剤、湿潤剤、防黴剤、防腐剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、防藻剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤など、塗料として公知の添加剤を使用することができる。
また、本発明の塗料は、カチオン電着塗装用塗料として好適に用いることができる。カチオン電着塗装用途に使用する場合は、所望に応じ、硬化剤や顔料を含むことが好ましく、これら以外にも、前述した塗料における添加剤や、硬化触媒、導電性フィラー等の公知の添加剤を使用することができる。
【0127】
顔料は、有機顔料、無機顔料等が適用でき、一種又は複数種混合して用いることもできる。また、前記トナー用として記載した顔料も好ましく使用できる。
有機顔料としては、アゾ系顔料、ナフトール系顔料、インドリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、アントラキノン系顔料、インジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、ジケトピロロ系顔料、ペリレン系顔料、ピラゾロン系顔料、ジスアゾ系顔料、ベンゾイミダゾール系顔料等が好ましい。
無機顔料としては、カーボンブラック系、酸化亜鉛系、酸化チタン系、酸化鉄系、群青、金属粉末、コバルトグリーン等が好ましい。
顔料粒子の数平均粒子系(一次粒子径)は2nmから200nmの範囲であることが好ましく、5nmから100nmの範囲にあることがより好ましい。上記の範囲であると、顔料分散性が向上し、塗布膜の透明性も向上して色再現域が広がり、高色調・高彩度の塗布膜が得られる。
充填剤としては、例えば、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム等を挙げることができる。
骨材としては、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、螢石、寒水石、長石等の粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ等やそれらの表面を着色コーティングしたもの等を使用することができる。
湿潤剤は、水に可溶の液体で、沸点80℃以上で、蒸気圧が100mmHg以下である液体が用いられ、塗料の総重量に対して、0.5重量%以上10重量%以下の範囲で使用することが好ましい。湿潤剤としては、多価アルコール、グリコールエーテル類が用いられ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコ−ルモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、2−(2−n−ブトキシエトキシ)エタノール等であり、1種又は2種以上が用いられる。
硬化剤としては、公知の硬化剤を用いることができるが、例えば、ブロックポリイソシアネートやメラミン類が好ましく挙げられる。
【0128】
本発明の塗料は、塗布膜を形成可能な基材であれば特に制限なく使用することができ、木材、壁紙、プラスチック、金属、ガラス、コンクリート、モルタル、磁器タイル等が例示できる。また、本発明の塗料を、カチオン電着塗料として使用する場合は、電着塗装が可能な材料であれば特に制限はなく、ステンレス、鉄、鋼、銅、亜鉛、スズ、アルミニウム、アルマイトなどの金属類、これらの金属の合金、これらをメッキや表面処理を行ったものを好適に用いることができる。
【実施例】
【0129】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するがこれらの実施例に本発明が限定されるものではない。実施例中「部」とあるのは、特にことわりがない限り重量部を表す。
なお、本実施例のトナーは、下記の樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液をそれぞれ調製し、これを所定の割合で混合し撹拌しながら、金属塩の重合体を添加し、イオン的に中和させて凝集粒子を形成した。次いで、無機水酸化物を添加して系内のpHを弱酸性から中性に調整した後、前記樹脂粒子のガラス転移点以上又は融点以上の温度に加熱して融合・合一を行った。反応終了後、十分な洗浄、固液分離、乾燥の工程を経て所望のトナーを得た。以下、それぞれの調製方法、及び、各特性値の測定方法を説明する。
【0130】
<実施例1:樹脂P1、樹脂粒子分散液L1の作製>
(樹脂P1の作製)
・ビスフェノールA エチレンオキサイド2モル付加物 24.66部
・ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF) 8.55部
・1,4−シクロヘキサンジカルボン酸 16.80部
・ドデシルベンゼンスルホン酸 0.128部
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターにを投入し開放系にて樹脂温度120℃になるように16時間で重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂P1を得た。
その後、樹脂少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
・GPCによる重量平均分子量 16,100
・ガラス転移温度(オンセット) 63℃
上記分子量の測定には、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィ(GPC)によって以下に記す条件で重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを測定した。温度40℃において、溶媒(テトラヒドロフラン)を毎分1.2mlの流速で流し、濃度0.2g/20mlのテトラヒドロフラン試料溶液を試料重量として3mg注入し測定を行う。試料の分子量測定にあたっては、当該試料の有する分子量が数種の単分散ポリスチレン標準試料により、作製された検量線の分子量の対数とカウント数が直線となる範囲内に包含される測定条件を選択する。
なお、測定結果の信頼性は、上述の測定条件で行ったNBS706ポリスチレン標準試料が、
重量平均分子量Mw=28.8×104
数平均分子量Mn=13.7×104
となることにより確認することができる。
また、GPCのカラムとしては、前記条件を満足するTSK−GEL、GMH(東洋曹達社製)等を用いた。
ポリエステルのガラス転移温度Tgの測定には、示差走査熱量計(島津製作所、DSC50)を用いた。
【0131】
(樹脂粒子分散液L1の作製)
上記のようにして得られた樹脂P1を30部計りとって同じく撹拌機を備えたリアクターにを投入し、その後トリエタノールアミンを0.35部加え、100℃で10分撹拌を行った。
その後90℃に加温したイオン交換水45部を樹脂に加え、2時間撹拌を続けポリエステル水分散液を得た。
その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で3分間攪拌を行った後の樹脂粒子分散液中の樹脂分散残の有無の確認を行ったが、樹脂は全て水中に分散し、樹脂分散残は全く、固形分40%の樹脂粒子分散液が得られた。
上記の方法によって、樹脂粒子の中心径210nm、pH=6.95の非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液L1を得た。なお得られた樹脂粒子分散液の粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)で測定した。
粒度分布の測定条件は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)を使用し、溶媒にはイオン交換水を用い、溶媒の循環速度を2に設定し、測定の前に超音波を2分印加させた後に粒度測定を行った。
また、得られた液についてICPにてS含有量とN含有量の測定を行った結果は、表1記載の通りで、N/S比は8.14であった。
N,Sそれぞれの元素濃度の測定は島津製作所社製のICPS−7000を用い、それぞれS元素・N元素の検量線溶液を作製し、定量分析を行うことによって測定を行った。
またさらに、IR法を用いて中和率da/(da+dc)値を求めた結果は、0.59であった。
また、IR測定用に試料の風乾物を得るが、試料の乾燥は、ヤマト科学社製角型真空定温乾燥機(Vaccum Drying Oven DP33)を用い、−0.1MPa,30℃の減圧雰囲気にて18時間乾燥させることにより行った。
試料中の金属濃度分析は、トナー6gを加圧成型器で10t、1分間の加圧条件下で圧縮成型する前処理を行った後、(株)島津製作所の蛍光X線(XRF−1500)を使用し、測定条件は管電圧40KV、管電流90mAで、全元素分析法にて行った。
上記試料の各測定方法については、下記の例でも特に記載のない限り、それぞれ同様に行った。
【0132】
<実施例2:樹脂P2、樹脂粒子分散液L2の作製>
(樹脂P2の作製)
・ビスフェノールA エチレンオキサイド2モル付加物 25.143部
・ビスフェノキシエタノールフルオレン 8.536部
・1,4−フェニレンジ酢酸 16.271部
・オクタデシルベンゼンスルホン酸 0.0792部
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターにを投入し開放系にて樹脂温度120℃になるように16時間で重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂P2を得た。
樹脂少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
・GPCによる重量平均分子量 17,860
・ガラス転移温度(オンセット) 64℃
【0133】
(樹脂粒子分散液L2の作製)
上記のようにして得られた樹脂P2を30部計りとって同じく撹拌機を備えたリアクターにを投入し、その後、ジエタノールアミン4.9部加えて100℃で10分撹拌を行った。
その後90℃に加温したイオン交換水45部を樹脂に加え、2時間撹拌を続けポリエステル樹脂粒子分散液を得た。
その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で3分間撹拌を行った後の樹脂粒子分散液中の樹脂分散残の有無の確認を行ったが、樹脂は全て水中に分散し、樹脂分散残は全く、固形分40%の樹脂粒子分散液が得られた。
上記の方法によって、樹脂粒子の中心径190nm、pH=9.50の非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液L2を得た。なお得られた樹脂粒子分散液の粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)で測定した。
また、得られた液についてICPにてS含有量とN含有量の測定を行った結果は、表1記載の通りで、N/S比は324であった。
またさらにIR法を用いて中和率da/(da+dc)値を求めた結果は、0.88であった。
【0134】
<実施例3:樹脂P3、樹脂粒子分散液L3の作製>
(樹脂P3の作製)
・ビスフェノールZ エチレンオキサイド2モル付加物 34.10部
・フェニレンジ酢酸 15.90部
・ドデシルベンゼンスルホン酸 0.313部
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターにを投入し開放系にて樹脂温度120℃になるように16時間で重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂P3を得た。樹脂少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
・GPCによる重量平均分子量 13950
・ガラス転移温度(オンセット) 63℃
【0135】
(樹脂粒子分散液L3の作製)
上記のようにして得られた樹脂P3を30部計りとって同じく撹拌機を備えたリアクターにを投入し、その後モノエタノールアミンを0.41部加え、100℃で10分撹拌を行った。
その後90℃に加温したイオン交換水45部を樹脂に加え、2時間撹拌を続けポリエステル樹脂粒子分散液を得た。
その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で3分間撹拌を行った後の樹脂粒子分散液中の樹脂分散残の有無の確認を行ったが、樹脂は全て水中に分散し、樹脂分散残は全く、固形分40%の樹脂粒子分散液が得られた。
上記の方法によって、樹脂粒子の中心径220nm、pH=6.20の非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液L3を得た。なお得られた樹脂粒子分散液の粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)で測定した。
また、得られた液についてICPにてS含有量とN含有量の測定を行った結果は、表1記載の通りで、N/S比は1.21であった。
またさらにIR法を用いて中和率da/(da+dc)値を求めた結果は、0.39であった。
【0136】
<実施例4:樹脂P4、樹脂粒子分散液L4の作製>
(樹脂P4の作製)
・ビスフェノールA プロピレンオキサイド2モル付加物 26.2部
・ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF) 8.20部
・フェニレンジ酢酸 15.78部
・ペンタデシルベンゼンスルホン酸 0.139部
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターにを投入し開放系にて樹脂温度120℃になるように16時間で重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂P4を得た。樹脂少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
・GPCによる重量平均分子量 18,890
・ガラス転移温度(オンセット) 65℃
【0137】
(樹脂粒子分散液L4の作製)
上記のようにして得られた樹脂P4を30部計りとって同じく撹拌機を備えたリアクターにを投入し、その後トリブタノールアミンを0.53部加え、120℃で0.5時間撹拌を行った。
その後90℃に加温したイオン交換水45部と1N−NaOH水溶液2部を樹脂に加え、2時間撹拌を続けポリエステル樹脂粒子分散液を得た。
その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で3分間撹拌を行った後の樹脂粒子分散液中の樹脂分散残の有無の確認を行ったが、樹脂は全て水中に分散し、樹脂分散残は全く、固形分40%の樹脂粒子分散液が得られた。
上記の方法によって、樹脂粒子の中心径170nm、pH=7.05の非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液L4を得た。なお得られた樹脂粒子分散液の粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)で測定した。
また、得られた液についてICPにてS含有量とN含有量の測定を行った結果は、表1記載の通りで、N/S比は9.47であった。
またさらにIR法を用いて中和率da/(da+dc)値を求めた結果は、0.60であった。
【0138】
<比較例1>
(樹脂粒子分散液L5の作製)
樹脂P1を30部計りとって同じく撹拌機を備えたリアクターにを投入し、その後トリエタノールアミン0.049部加え、100℃で0.5時間撹拌を行った。
その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で3分間撹拌を行った後、その後樹脂粒子分散液中の樹脂分散残の有無の確認を行ったが、樹脂は全て水中に分散されず、分散残樹脂が存在することが確認された。得られた樹脂の固形分濃度を測定した結果は、固形分11.0%の樹脂粒子分散液が得られた。
上記の方法によって、樹脂粒子の中心径840nm、pH=5.89の非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液L5を得た。
また、得られた液についてICPにてS含有量とN含有量の測定を行った結果は、表1記載の通りで、N/S比は0.87であった。
またさらにIR法を用いて中和率da/(da+dc)値を求めた結果は、0.27であった。
【0139】
<比較例2>
(樹脂粒子分散液L6の作製)
上記のようにして得られた樹脂P2を30部計りとって同じく撹拌機を備えたリアクターにを投入し、その後ジエタノールアミンを6.2部加え、100℃で10分撹拌を行った。
その後90℃に加温したイオン交換水45部を樹脂に加え、2時間撹拌を続けポリエステル樹脂粒子分散液を得た。
その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で3分間撹拌を行った後の樹脂粒子分散液中の樹脂分散残の有無の確認を行ったが、樹脂は全て水中に分散し、樹脂分散残は全く、固形分8.4%の樹脂粒子分散液が得られた。
上記の方法によって、樹脂粒子の中心径4,050nm、pH=9.9の非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液L6を得た。なお得られた樹脂粒子分散液の粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)で測定した。
また、得られた液についてICPにてS含有量とN含有量の測定を行った結果は、表1記載の通りで、N/S比は414.17であった。
またさらにIR法を用いて中和率da/(da+dc)値を求めた結果は、0.93であった。
【0140】
<比較例3>
(樹脂粒子分散液L7の作製)
上記のようにして得られた樹脂P3を30部計りとって同じく撹拌機を備えたリアクターにを投入し、その後90℃に加温した1N(1mol/L)NaOH水溶液18部を加え、90℃で10分撹拌を行った。その後90℃に加温したイオン交換水45部を樹脂に加え、2時間撹拌を続けポリエステル樹脂粒子分散液を得た。
その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で3分間撹拌を行った後の樹脂粒子分散液中の樹脂分散残の有無の確認を行ったが、樹脂は一部しか分散せず、樹脂分散残が残っていた。その結果、固形分3.5%の樹脂粒子分散液が得られた。
上記の方法によって、樹脂粒子の中心径6,600nm、pH=9.9の非晶系ポリエステル樹脂粒子分散液L7を得た。
また、得られた液についてICPにてS含有量とN含有量の測定を行った結果は、表1記載の通りで、N量は検出限界以下であったため、N/S比=0とした。
またさらにIR法を用いて中和率da/(da+dc)値を求めた結果は、0.93であった。
【0141】
<比較例4>
(樹脂粒子分散液L8の作製)
上記のようにして得られた樹脂P4を30部計りとって同じく撹拌機を備えた200mlのリアクターにを投入し、さらに界面活性剤としてソフト型ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部を加え、さらに酢酸エチル300部に溶解させ均一な油相を作製した。この油相に1N−NaOH水溶液と水を徐々に加え、転相乳化を実施した。転相乳化は、60℃に加熱しながら上記リアクター中でホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散しながら水を加えていった。
ホモジナイザーによる撹拌を継続しながら継続するとポリエステル樹脂粒子分散液を得た。この分散液をロータリーエバポレータに入れ、減圧に引きながら10時間脱溶剤を継続した。
上記の方法によって、樹脂粒子の中心径170nm、pH=7.9、固形分濃度40%の非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液L8を得た。
また、得られた液についてICPにてS含有量とN含有量の測定を行った結果は、表1記載の通りで、N量は検出限界以下であったため、N/S比=0とした。
またさらにIR法を用いて中和率da/(da+dc)値を求めた結果は、0.75であった。
【0142】
<比較例5:樹脂P5、樹脂粒子分散液L9の作製>
(樹脂P5の作製)
・ビスフェノールA プロピレンオキサイド2モル付加物 26.2部
・ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF) 8.20部
・フェニレンジ酢酸 15.78部
・酸化ジブチルスズ 0.25部
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターにを投入し開放系にて樹脂温度190℃になるように16時間で重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂P5を得た。樹脂少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
・GPCによる重量平均分子量 17,700
・ガラス転移温度(オンセット) 65℃
【0143】
(樹脂粒子分散液L9の作製)
上記のようにして得られた樹脂P5を30部計りとって同じく撹拌機を備えたリアクターにを投入し、さらに界面活性剤としてソフト型ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部を加え、さらに酢酸エチル300部に溶解させ均一な油相を作製した。この油相に1N−NaOH水溶液と水を徐々に加え、転相乳化を実施した。転相乳化は、60℃に加熱しながら上記リアクター中でホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散しながら水を加えていった。
ホモジナイザーによる撹拌を継続しながら継続するとポリエステル樹脂粒子分散液を得た。この分散液をロータリーエバポレータに入れ、減圧に引きながら10時間脱溶剤を継続した。
上記の方法によって、樹脂粒子の中心径160nm、pH=7.8、固形分濃度40%の非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液L9を得た。
また、得られた液についてICPにてS含有量とN含有量の測定を行った結果は、表1記載の通りで、N量は検出限界以下であったため、N/S比=0とした。
またさらにIR法を用いて中和率da/(da+dc)値を求めた結果は、0.75であった。
【0144】
<比較例6>
(樹脂粒子分散液L10の作製)
上記のようにして得られた樹脂P3を30部計りとって同じく撹拌機を備えたリアクターにを投入し、その後トリエチルアミンを0.24部加え、100℃で10分撹拌を行った。
その後90℃に加温したイオン交換水45部を樹脂に加え、2時間撹拌を続けポリエステル樹脂粒子分散液を得た。
その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で3分間撹拌を行った後の樹脂粒子分散液中の樹脂分散残の有無の確認を行ったが、樹脂は殆ど水中に分散せず、樹脂分散残が容器の底に大量に残った。本方法により得られた樹脂粒子分散液の固形分濃度は1.2%であった。
上記の方法によって、樹脂粒子の中心径9,955nm、pH=8.5の非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液L10を得た。なお得られた樹脂粒子分散液の粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)で測定した。
また、得られた液についてICPにてS含有量とN含有量の測定を行った結果は、表1記載の通りで、N/S比は11.75であった。
またさらにIR法を用いて中和率da/(da+dc)値を求めた結果は、0.66であった。
【0145】
<比較例7>
(樹脂粒子分散液L11の作製)
上記のようにして得られた樹脂P3を30部計りとって同じく撹拌機を備えたリアクターにを投入し、その後トリブチルアミンを0.44部加え、100℃で10分撹拌を行った。
その後90℃に加温したイオン交換水45部を樹脂に加え、2時間撹拌を続けポリエステル樹脂粒子分散液を得た。
その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で3分間撹拌を行った後の樹脂粒子分散液中の樹脂分散残の有無の確認を行ったが、樹脂は殆ど水中に分散せず、樹脂分散残が容器の底に大量に残った。本方法により得られた樹脂粒子分散液の固形分濃度は1.2%であった。
上記の方法によって、樹脂粒子の中心径10,515nm、pH=8.4の非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液L10を得た。なお得られた樹脂粒子分散液の粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)で測定した。
また、得られた液についてICPにてS含有量とN含有量の測定を行った結果は、表1記載の通りで、N/S比は9.65であった。
またさらにIR法を用いて中和率da/(da+dc)値を求めた結果は、0.64であった。
【0146】
【表1】

【0147】
なお、表1における略記は、以下の通りである。
BPA−2EO:ビスフェノールA エチレンオキサイド2モル付加物
BPA−2PO:ビスフェノールA プロピレンオキサイド2モル付加物
BPZ−2EO:ビスフェノールZ エチレンオキサイド2モル付加物
BPEF:ビスフェノキシエタノールフルオレン
CHDA:1,4−シクロヘキサンジカルボン酸
PDAA:1,4−フェニレンジ酢酸
DBSA:ドデシルベンゼンスルホン酸
ODBSA:オクタデシルベンゼンスルホン酸
PDBSA:ペンタデシルベンゼンスルホン酸
【0148】
上記のように作製した樹脂粒子分散液を原材料に用いてトナーを作製するに当たって、下記の離型剤粒子分散液W1、着色剤分散液C1を作製した。
【0149】
(離型剤粒子分散液W1の調製)
・ポリエチレンワックス 30部
(東洋ペトロライト社製、Polywax725、融点103℃)
・カチオン性界面活性剤(花王社製、サニゾールB50) 3部
・イオン交換水 67部
上記成分をホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で95℃に加熱しながら十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザー)で分散処理し、離型剤粒子分散液W1を調整した。得られた分散液中の離型剤粒子の個数平均粒子径D50nは460nmであった。その後イオン交換水を加えて、分散液の固形分濃度を30%に調整した。
【0150】
(シアン顔料分散液C1の調製)
・シアン顔料(大日精化工業社製、C.I.Pigment Blue 15:3)
20部
・アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR) 2部
・イオン交換水 78部
上記成分を混合溶解し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)5分と超音波バスにより10分間分散し、シアン顔料分散液C1を得た。分散液中の顔料の数平均粒子径D50nは121nmであった。その後イオン交換水を加えて分散液の固形分濃度を15%に調整した。
【0151】
(2次色Glossムラ測定用のイエロー着色剤粒子分散液Y1の調製)
・イエロー顔料(クラリアントジャパン社製、C.I.Pigment Yellow 74) 20重量部
・アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR) 2重量部
・イオン交換水 78重量部
上記成分を、着色剤粒子分散液C1と同様にして調製し、着色剤粒子分散液Y1を得た。分散液中の顔料の数平均粒子径D50nは118nmであった。その後イオン交換水を加えて分散液の固形分濃度を15%に調整した。
【0152】
<トナー実施例>
(トナー粒子の調製)
(トナー実施例1:樹脂粒子分散液L1を使用したトナーの作製)
・樹脂粒子分散液L1 160部
・離型剤粒子分散液W1 33部
・シアン顔料分散液C1 60部
・ポリ塩化アルミニウム10重量%水溶液 15部
(浅田化学社製、PAC100W)
・1%硝酸水溶液 3部
上記成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中で、ホモジナイザー(LKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて5000rpmで3分間分散した後、前記フラスコに磁力シールを有した撹拌装置、温度計とpH計を具備した蓋をしてから、加熱用マントルヒーターをセットし、フラスコ中の分散液全体が撹拌される最低の回転数に適宜調節して撹拌しながら62℃まで1℃/1minで加熱し、62℃で30分間保持し、凝集粒子の粒径をコールターカウンター(日科機社製、TA II)で確認した。昇温停止後ただちに樹脂粒子分散液L1を50部追加し、30分間保持したのち、系内のpHが6.5になるまで水酸化ナトリウム水溶液を加えてから、1℃/1minで97℃まで加熱した。昇温後、硝酸水溶液を加えて系内のpHを5.0にして、10時間保持して凝集粒子を加熱融合した。
この後系内を50℃まで降温、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを12.0に調節して10分間保持した。その後フラスコから取り出し、イオン交換水を用いて充分にろ過、通水洗浄した後、さらに固形分量が10重量%となるようにイオン交換水中に分散し、硝酸を加えてpH3.0で10分間撹拌した後、再びイオン交換水を用いて充分にろ過、通水洗浄して得られたスラリーを凍結乾燥してシアントナー(トナーC1)を得た。
前記シアン着色粒子に、ヘキサメチルジシラザン(以下、「HMDS」と略す場合がある)で表面疎水化処理した一次粒子平均粒径40nmのシリカ(SiO2)粒子と、メタチタン酸とイソブチルトリメトキシシランの反応生成物である一次粒子平均粒径20nmのメタチタン酸化合物粒子とを、それぞれ1重量%づつ添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、シアン外添トナーを作製した。
このようにしてトナー粒子の粒径をコールターカウンターで測定したところ、累積体積平均粒径D50が4.46μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.20であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めたトナー粒子の形状係数SF1は134のポテト形状であった。
【0153】
(トナー実施例2:樹脂粒子分散液L2を使用したトナーの作製)
トナー実施例1において、樹脂粒子分散液をL2に代えた以外は同様の方法でシアン着色粒子を得、累積体積平均粒径D50と体積平均粒度分布指標GSDv、形状係数を測定した。本トナーにトナー実施例1と同様に外添剤を外添しシアン外添トナーを得た。
この結果、実施例2では、D50が4.61μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.20であった。形状係数SF1は131のポテト形状であった。
【0154】
(トナー実施例3及び4:樹脂粒子分散液L3又はL4を使用したトナーの作製)
以下、使用する樹脂粒子分散液を代えた以外は実施例1と同様にして、下記記載のシアン外添トナーを得た。
・樹脂粒子分散液L3を用いたトナー実施例3では、D50が4.97μm、GSDvが1.20、形状係数SF1が124のトナーが得られた。
・樹脂粒子分散液L4を用いたトナー実施例4では、D50が4.57μm、GSDvが1.20、形状係数SF1が133のトナーが得られた。
【0155】
(トナー比較例1乃至7:樹脂粒子分散液L5乃至L11を使用したトナーの作製)
トナー実施例1において、それぞれ樹脂分散液をL5乃至L9に代えた以外は同様の方法でシアン着色粒子を得、累積体積平均粒径D50と体積平均粒度分布指標GSDv、形状係数を測定した。本トナーにトナー実施例1と同様に外添剤を外添しシアン外添トナーを得た。
その結果、
・樹脂粒子分散液L5を用いたトナー比較例1では、D50が4.55μm、GSDvが1.20、形状係数SF1が127のトナーT5が得られた。
・樹脂粒子分散液L6を用いたトナー比較例2では、D50が4.75μm、GSDvが1.20、形状係数SF1が133のトナーT6が得られた。
・樹脂粒子分散液L7を用いた比較例3では、樹脂粒子分散液の固形分濃度が低すぎてトナーを作製できなかった。
・樹脂粒子分散液L8を用いた比較例4では、D50が5.17μm、GSDvが1.31、形状係数SF1が130のトナーT8が得られた。
・樹脂粒子分散液L9を用いた比較例5では、D50が5.01μm、GSDvが1.31、形状係数SF1が133のトナーT9が得られた。
・樹脂粒子分散液L10、L11を用いた比較例6、7では、樹脂粒子分散液の固形分濃度が低すぎてトナーを作製できなかった。
【0156】
<キャリアの作製>
体積平均粒子径35μmのCu−Znフェライト粒子100重量部にγ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.1重量部を含有するメタノール溶液を添加し、ニーダーで被覆した後、メタノールを留去し、さらに120℃で2時間加熱して上記シラン化合物を完全に硬化させた。この粒子に、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート−メチルメタクレート共重合体(共重合比40:60)をトルエンに溶解させたものを添加し、真空減圧型ニーダーを使用してパーフルオロオクチルエチルメタクリレート−メチルメタクレート共重合体のコーティング量が0.5重量%となるように樹脂被覆型キャリアを製造した。
【0157】
<現像剤の作製>
上述のように作製した各トナー8重量部を、得られた樹脂被覆型キャリア100重量部に投入しVブレンダーにて混合して、静電荷像現像剤を作製した。
これを以下に示す評価において現像剤として使用した。
上記のようにして作製した各現像剤を用いて、下記のトナー評価・画質評価を行った。
【0158】
<トナー粒子、及び・画質の評価>
(定着評価)
前記記載の方法にて得られた現像剤での定着、画質の評価は富士ゼロックス社製Docu Centre Color500CP改造機を用いて、定着温度140℃、プロセススピード=240mm/secにて下記の定着評価を行った。なお高湿度環境保管による評価は、蒸気改造機を35℃65%RHの環境に保管した後に評価を行った。
【0159】
(1):NVO評価
実施例1乃至4、並びに比較例1、2、4、5で作製したシアントナーと同様の方法で、樹脂粒子分散液L1乃至L6、L8、L9を用いて着色剤粒子分散液をC1からY1に変更して2次色定着用にイエロートナーを作製した。
得られたシアントナーとイエロートナーの2次色で形成されるGreen色の5×5cmの未定着ベタ画像形成を行い、定着方法にて定着を行った。
NVOの評価は、画像を定着する際、定着部材の画像通過部にウエスを当てがい、定着部材表面をクリーニングし、そのウエスの汚れの程度で評価した。
汚れグレードはグレード見本によりランク付けを行った。
G1・・・目視では全く汚れが確認されず
G2・・・注意してみると目視で若干汚れが観察される。
G3・・・目視で汚れが観察される。
G4・・・汚れが多い。
G5・・・汚れが非常に多い。
を表す。
NVOの評価の結果は表1に記載した。
実施例1乃至4のトナーのについては全てG1であったが、比較例のトナーは全てウエスに汚れが確認されG3以上であった。
【0160】
(2):高湿環境保管前後でのシアン低エリアカバレッジ画像のΔL*(AC5%画像濃度差)画質評価
実施例、及び、比較例で作製したトナーは、室温環境で、上記Docu Centre Color500CP改造機を用いてシアン(Cyan)画像をエリアカバレッジ5%(A4サイズ)にて一枚プリントを行い、L*の値を測定した。その後、高温高湿環境に60日保管後、上記同様にエリアカバレッジ5%(A4サイズ)をプリントしたサンプルのL*の値を測定した。評価基準を以下に示す。
ΔL=L*(保管前)−L*(60日保管後)の結果に基づき、以下の基準で3段階評価した。
○:ΔL*<0.6
△:0.6≦ΔL*≦0.7
×:ΔL*>0.7
得られた各トナーについて上記評価を行った結果、実施例1乃至4、比較例2のトナーはいずれもL*の変化は0.6より小さく、目視でも画像の明度の差は確認されなかったが、比較例1、4、5のトナーは、明度が0.6以上変化しており、目視でも保管前後で明度に違いが見られた。
【0161】
(3):高温高湿度下での非画像部のカブリの評価
上記記載の改造機を用い、細線画像を定着した画質の細線間の非画像部分について、反射濃度計(X−Rite404、米国X−Rite社製)にて測定して、反射濃度が地カブリのところで0.01以上の濃度増加があれば×、0.01以下であれば○とした。
得られた各トナーについて上記評価を行った結果、実施例1乃至4、比較例1、4のトナーを用いた時では、全くカブリが見られず、X−Rite404による非画像部の濃度測定でも0.01以下であった。
一方、比較例2、5のトナーを用いた時では、X−Rite404による非画像部の濃度測定では0.01以上の濃度が確認され、目視でもわずかにカブリが発生していることが認められた。
【0162】
<液体現像剤実施例>
(液体現像剤実施例1)
トナー実施例1と同量の材料と組成にて、着色剤混合溶液を得た後に加熱融合させ、シアン着色粒子を得た。
加熱時の印加熱量を調整することにより、得られるトナー粒子の粒径を調節できるが、この結果、D50が2.81μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.20であった。形状係数SF1は131のポテト形状の粒子を得た。
トナー実施例1と同様に粉体トナーを得た後、該トナーを固形分濃度が2重量%になるようにエチレングリコールヘキシルエーテルに分散させ、さらにこの現像液に帯電制御剤としてベーシックカルシウムペトロネートを現像液の固形分1重量部当たり0.1重量部添加し、十分に撹拌を行い、液体現像剤を製造した。
【0163】
(液体現像剤実施例2)
トナー実施例2と同量の材料と組成にて、着色剤混合溶液を得た後に加熱融合させ、シアン着色粒子を得た。
加熱時の印加熱量を調整することにより、得られるトナー粒子の粒径を調節できるが、この結果、D50が2.67μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.20であった。形状係数SF1は131のポテト形状の粒子を得た。
トナー実施例2と同様に粉体トナーを得た後、該トナーを固形分濃度が2重量%になるようにエチレングリコールヘキシルエーテルに分散させ、さらにこの現像液に帯電制御剤としてベーシックカルシウムペトロネートを現像液の固形分1重量部当たり0.1重量部添加し、十分に撹拌を行い、液体現像剤を製造した。
【0164】
(液体現像剤実施例3)
トナー実施例3と同量の材料と組成にて、着色剤混合溶液を得た後に加熱融合させ、シアン着色粒子を得た。
加熱時の印加熱量を調整することにより、得られるトナー粒子の粒径を調節できるが、この結果、D50が2.69μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.20であった。形状係数SF1は130のポテト形状の粒子を得た。
トナー実施例3と同様に粉体トナーを得た後、該トナーを固形分濃度が2重量%になるようにエチレングリコールヘキシルエーテルに分散させ、さらにこの現像液に帯電制御剤としてベーシックカルシウムペトロネートを現像液の固形分1重量部当たり0.1重量部添加し、十分に撹拌を行い、液体現像剤を製造した。
【0165】
(液体現像剤実施例4)
トナー実施例4と同量の材料と組成にて、着色剤混合溶液を得た後に加熱融合させ、シアン着色粒子を得た。
加熱時の印加熱量を調整することにより、得られるトナー粒子の粒径を調節できるが、この結果、D50が2.69μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.20であった。形状係数SF1は130のポテト形状の粒子を得た。
トナー実施例4と同様に粉体トナーを得た後、該トナーを固形分濃度が2重量%になるようにエチレングリコールヘキシルエーテルに分散させ、さらにこの現像液に帯電制御剤としてベーシックカルシウムペトロネートを現像液の固形分1重量部当たり0.1重量部添加し、十分に撹拌を行い、液体現像剤を製造した。
【0166】
(液体現像剤比較例1)
トナー比較例1と同量の材料と組成にて、着色剤混合溶液を得た後に加熱融合させ、シアン着色粒子を得た。
加熱時の印加熱量を調整することにより、得られるトナー粒子の粒径を調節できるが、この結果、D50が2.86μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.20であった。形状係数SF1は131のポテト形状の粒子を得た。
トナー比較例1と同様に粉体トナーを得た後、該トナーを固形分濃度が2重量%になるようにエチレングリコールヘキシルエーテルに分散させ、さらにこの現像液に帯電制御剤としてベーシックカルシウムペトロネートを現像液の固形分1重量部当たり0.1重量部添加し、十分に撹拌を行い、液体現像剤を製造した。
【0167】
(液体現像剤比較例2)
トナー比較例2と同量の材料と組成にて、着色剤混合溶液を得た後に加熱融合させ、シアン着色粒子を得た。
加熱時の印加熱量を調整することにより、得られるトナー粒子の粒径を調節できるが、この結果、D50が2.88μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.20であった。形状係数SF1は127のポテト形状の粒子を得た。
トナー比較例2と同様に粉体トナーを得た後、該トナーを固形分濃度が2重量%になるようにエチレングリコールヘキシルエーテルに分散させ、さらにこの現像液に帯電制御剤としてベーシックカルシウムペトロネートを現像液の固形分1重量部当たり0.1重量部添加し、十分に撹拌を行い、液体現像剤を製造した。
【0168】
(液体現像剤比較例3)
樹脂粒子分散液L7を用いた比較例3では、樹脂粒子分散液の固形分濃度が低すぎてトナーを作製できず、液体現像剤を作製できなかった。
【0169】
(液体現像剤比較例4)
トナー比較例4と同量の材料と組成にて、着色剤混合溶液を得た後に加熱融合させ、シアン着色粒子を得た。
加熱時の印加熱量を調整することにより、得られるトナー粒子の粒径を調節できるが、この結果、D50が2.89μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.20であった。形状係数SF1は134のポテト形状の粒子を得た。
トナー比較例4と同様に粉体トナーを得た後、該トナーを固形分濃度が2重量%になるようにエチレングリコールヘキシルエーテルに分散させ、さらにこの現像液に帯電制御剤としてベーシックカルシウムペトロネートを現像液の固形分1重量部当たり0.1重量部添加し、十分に撹拌を行い、液体現像剤を製造した。
【0170】
(液体現像剤比較例5)
トナー比較例5と同量の材料と組成にて、着色剤混合溶液を得た後に加熱融合させ、シアン着色粒子を得た。
加熱時の印加熱量を調整することにより、得られるトナー粒子の粒径を調節できるが、この結果、D50が2.91μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.20であった。形状係数SF1は130のポテト形状の粒子を得た。
トナー比較例5と同様に粉体トナーを得た後、該トナーを固形分濃度が2重量%になるようにエチレングリコールヘキシルエーテルに分散させ、さらにこの現像液に帯電制御剤としてベーシックカルシウムペトロネートを現像液の固形分1重量部当たり0.1重量部添加し、十分に撹拌を行い、液体現像剤を製造した。
【0171】
(液体現像剤比較例6、7)
樹脂粒子分散液L10、L11を用いた比較例6、7では、樹脂粒子分散液の固形分濃度が低すぎてトナーを作製できず、液体現像剤を作製できなかった。
【0172】
<液体現像剤のGloss評価、及び、カブリ評価>
液体現像剤実施例1乃至4により得られた液体現像剤を用いて、Versatec社製静電プロッターCE-3436により出図を行った結果、粉体トナー同様の画像濃度とGlossを得ることができ、また、高温高湿度下での非画像部のカブリも発生しないことが確認された。
作製した液体現像剤実施例1乃至4について、Versatec社製静電プロッターCE-3436の改造機を用いて5×5cmの未定着ベタ画像形成を行った後に、前記定着機を用いて定着ベタ画像を形成し、ベタ画像形成部の中央部と、その周辺を含めた5点についてGloss測定を行い、5点の測定値のうち、Gloss最大値と最小値の差の値(ΔGloss)により、以下のように判定した。
○:ΔGloss=(Gloss最大値)−(Gloss最小値)≦4
△:4<ΔGloss<5
×:5≦ΔGloss
また、実施例1乃至4で作製した液体現像剤を使用して得られた画像について、トナー実施例と同様に非画像部のカブリ評価を行った結果は、いずれも非画像部のカブリは認められなかった。
一方、比較例1、2、4、5で作製した液体現像剤を使用して得られた画像についての評価結果は、以下の通りであった。
・T5の液体現像剤では、Glossムラが確認されたが、非画像部のカブリは認められなかった。
・T6の液体現像剤では、Glossムラ・非画像部のカブリが発生していた。
・T8の液体現像剤では、Glossムラが確認されたが、非画像部のカブリは認められなかった。
・T9の液体現像剤では、Glossムラは確認されなかったが非画像部のカブリが発生していた。
【0173】
<塗料実施例>
(塗料実施例1)
・樹脂粒子分散液L1 100重量部
・シアン顔料分散液C1 60重量部
・1%硝酸水溶液 3重量部
・塩化ナトリウム 5重量部
・硬化剤 2重量部
(サイメル−303 ヘキサメトキシメチルメラミン (三井サイアナミッド社製))
・アルミペースト 2重量部
(アルミペースト0539X、加熱残量69重量%(東洋アルミニウム社製))
・消泡剤 0.2重量部
(アディトールVXW4932、ノンシリコーン系消泡剤(ヘキスト社製))
・ジメチルエタノールアミン 0.14重量部
を加え撹拌を行った後に塗料1を得た。
【0174】
(塗料実施例2)
塗料実施例1で樹脂粒子分散液L1をL2に代えた以外は、塗料実施例1と同様の方法にて塗料2を作製した。
【0175】
(塗料実施例3)
塗料実施例1で樹脂粒子分散液L1をL3に代えた以外は、塗料実施例1と同様の方法にて塗料3を作製した。
【0176】
(塗料実施例4)
塗料実施例1で樹脂粒子分散液L1をL4に代えた以外は、塗料実施例1と同様の方法にて塗料4を作製した。
【0177】
(塗料比較例1)
塗料実施例1で樹脂粒子分散液L1をL5に代えた以外は、塗料実施例1と同様の方法にて塗料5を作製した。
【0178】
(塗料比較例2)
塗料実施例1で樹脂粒子分散液L1をL6に代えた以外は、塗料実施例1と同様の方法にて塗料6を作製した。
【0179】
(塗料比較例3)
塗料実施例1で樹脂粒子分散液L1をL8に代えた以外は、塗料実施例1と同様の方法にて塗料7を作製した。
【0180】
(塗料比較例4)
塗料実施例1で樹脂粒子分散液L1をL9に代えた以外は、塗料実施例1と同様の方法にて塗料8を作製した。
【0181】
上記のようにして得た塗料1乃至8を塗装するにあたり、なお被塗物の試験版としては、リン酸亜鉛処理版(商品名:アクアNo.4200、日本油脂(株)製)を使用し、前記試験版にカチオン電着塗装を乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、185℃で20分焼付けて行った。
【0182】
得られた上記塗膜について下記の評価を行った。
【0183】
(1)塗膜外観60°Gloss評価
JIS K−5400(1990)7.6鏡面光沢度に従い評価を行った。
【0184】
(2)塗膜性能耐水性評価
90℃の熱水に4時間浸漬後の塗面状態を目視で確認し、下記の判断基準に従って評価を行った。
○・・・フクレがない
△・・・フクレが少しある
×・・・フクレが著しい
【0185】
(3)耐溶剤性評価
40℃でレギュラーガソリンに1時間浸漬後の塗面状態を目視で確認し、下記の判断基準に従って評価を行った。
○・・・チヂミがない
△・・・チヂミが少しある
×・・・チヂミが著しい
【0186】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂を含む樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液であって、
前記樹脂粒子分散液が、硫黄酸と、窒素原子を含む化合物とを含み、
(1)樹脂粒子分散液における硫黄原子濃度Sと窒素原子濃度Nとが、1.0≦N/S≦400を満たし、
(2)樹脂粒子分散液風乾物中の金属濃度が200ppm以下であり、
(3)前記窒素原子を含む化合物が下記式(I)で表される化合物であることを特徴とする
樹脂粒子分散液。
【化1】

(式(I)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、−(CH2n−OH(nは2以上6以下の整数)、又は、−(CH2m−O−(CH2n−OH(mは2以上6以下の整数、nは2以上6以下の整数)を表す。ただし、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つはOH基を含む。)
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂は末端カルボキシル基の一部が中和され、カルボキシアニオンとなっており、
樹脂粒子を赤外分光光度計により測定した吸光度スペクトルにおいて、1780cm-1から1680cm-1付近における前記末端カルボキシル基のC=O伸縮振動のピーク強度をdcとし、1670cm-1から1550cm-1付近における前記末端カルボキシル基が中和されたカルボキシルアニオンのCO2-ピーク強度をdaとした場合、(da/da+dc)の値が0.30以上0.90以下である請求項1に記載の樹脂粒子分散液。
【請求項3】
触媒として硫黄酸を用い、重縮合性単量体を重縮合して末端カルボキシル基を有するポリエステル樹脂を得る工程、及び、
前記ポリエステル樹脂を前記式(I)で表される化合物を用いて水系媒体中に乳化分散する工程を含む請求項1又は2に記載の樹脂粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の樹脂粒子分散液を用いて作製した静電荷像現像トナー。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の樹脂粒子分散液を用いて作製した液体現像剤。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の樹脂粒子分散液を用いて作製した塗料。

【公開番号】特開2008−201959(P2008−201959A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41380(P2007−41380)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】