説明

樹脂粒子分散液

【課題】樹脂粒子の粒子径及び形状が均一であり、電子写真用液体現像剤としての定着性及び耐熱保存安定性に優れる樹脂粒子分散液を提供する。
【解決手段】樹脂(a)を含有する被膜状の1層以上のシェル層(P)とポリオレフィン樹脂(b)を含有する1層のコア層(Q)とで構成され、(P)と(Q)の重量比率が(1:99)〜(70:30)であるコア・シェル型の樹脂粒子(C)が、20℃における比誘電率が1〜4の非親水性有機溶剤(L)中に分散されてなる樹脂粒子分散液(X)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子分散液に関する。更に詳しくは、電子写真用液体現像剤、静電記録用液体現像剤、インクジェットプリンタ用油性インク及び電子ペーパー用インク等の各種用途に有用な樹脂粒子分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂粒子分散液中に分散されている樹脂粒子としては、粒度分布が狭く分散安定性の高いものが望まれる。とりわけ、電子写真用液体現像剤、静電記録用液体現像剤、インクジェットプリンタ用油性インク及び電子ペーパー用インク等の分野においては、粒子径が小さく、かつ粒度分布が狭いものが要求されている。
また、電子写真用途においては、トナーをより低温で定着させることにより、プリンタ等の印刷機の消費電力を低減させる要望が高い。
【0003】
そこで、このような課題を解決するために、非水系分散媒体中に脂肪酸モノエステルを添加させると共に樹脂粒子の構成主成分をポリエステル樹脂とする方法が提案されている(特許文献1)。この方法は、脂肪酸モノエステルがポリエステル樹脂を可塑化することにより樹脂粒子の低温定着性を向上させようとしたものであるが、得られた樹脂粒子の分散安定性が悪く、粒度分布、低温定着性のいずれにおいても充分満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−225442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、樹脂粒子の粒子径及び形状が均一であり、電子写真用液体現像剤としての定着性及び耐熱保存安定性に優れる樹脂粒子分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の問題点を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、下記2発明である。
(1)樹脂(a)を含有する被膜状の1層以上のシェル層(P)とポリオレフィン樹脂(b)を含有する1層のコア層(Q)とで構成され、(P)と(Q)の重量比率が(1:99)〜(70:30)であるコア・シェル型の樹脂粒子(C)が、20℃における比誘電率が1〜4の非親水性有機溶剤(L)中に分散されてなる樹脂粒子分散液(X)。
(2)20℃における比誘電率が1〜4の非親水性有機溶剤(L)中に、樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)が分散されてなる非水系樹脂分散液(W)と、溶解度パラメータ(以下、SP値と略記する。計算方法はPolymer Engineering and Science,Feburuary,1974,Vol.14、No.2 P.147〜154による。)が8.5〜20(cal/cm1/2である有機溶剤(M)中にポリオレフィン樹脂(b)が溶解された溶剤溶液(O1)又は(M)中に(b)の前駆体(b0)が溶解された溶剤溶液(O2)とを混合し、(W)中に(O1)又は(O2)を分散し、(O2)を用いる場合には、更に(b0)を反応させて、(W)中で(b)を含有する樹脂粒子(B)を形成させることにより、樹脂粒子(B)の表面に樹脂粒子(A)が付着した構造の樹脂粒子(D)の非水系樹脂分散液(X1)を得て、更に(X1)から(M)を留去し、(A)を被膜化して、(B)で構成されるコア層(Q)の表面に(A)が被膜化されたシェル層(P)が形成されて得られた樹脂粒子(C)が分散してなる樹脂粒子分散液(X)の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂粒子分散液は、樹脂粒子の粒子径及び形状が均一であり、電子写真用液体現像剤としての帯電性及び低温定着性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
樹脂(a)は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよく、樹脂(a)としては、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂及びポリカーボネート樹脂等が挙げられ、これらの2種以上を併用してもよい。
樹脂(a)のうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の非水系樹脂分散液が得られやすいという観点から、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びこれらの併用であり、分子鎖(k)を側鎖に導入しやすいという観点から、更に好ましいのは、分子鎖(k)を有するビニルモノマー(m)と必要により他のビニルモノマーとの(共)重合体であるビニル樹脂及び上記ビニル(共)重合体骨格を有する他の樹脂(複合樹脂)である。他の樹脂の場合は、例えば水酸基、カルボキシル基及びアミノ基等の官能基を持つビニルモノマーと分子鎖(k)を持つビニルモノマー(m)とのビニル(共)重合体を合成した後、エステル化、アミド化又はウレタン化等の反応を行うことで得ることができる。
なお、本発明において、(共)重合体とは、モノマーの単独重合体又は共重合体を意味する。
【0009】
以下、樹脂(a)として好ましい樹脂であるビニル樹脂について詳細に説明する。
ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合した重合体であり、上記のように、非親水性有機溶剤(L)とのSP値差が2(cal/cm1/2以下である分子鎖(k)を有するビニルモノマー(m)と、必要により他のビニルモノマーとの(共)重合体が好ましい。
【0010】
分子鎖(k)を側鎖に有するビニルモノマー(m)としては、特に限定されないが、下記のモノマー(m1)〜(m4)等が挙げられ、これらの2種以上を併用してもよい。
【0011】
(m1)炭素数12〜27(好ましくは16〜25)の直鎖状炭化水素鎖を側鎖に有するビニルモノマー:
不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸のモノ直鎖状アルキル(アルキルの炭素数12〜27)エステル等が挙げられ、上記不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸及びシトラコン酸等の炭素数3〜24のカルボキシル基含有ビニルモノマーが挙げられる。なお、上記(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタアクリル酸を意味し、以下同様の記載を用いる。
具体例としては、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル及び(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられる。
【0012】
(m2)炭素数12〜27(好ましくは16〜25)の分岐状炭化水素鎖を側鎖に有するビニルモノマー:
不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸のモノ分岐状アルキル(アルキルの炭素数12〜27)エステル等が挙げられ、上記不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸としては、(m1)と同様のものが挙げられる。
具体例としては、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシル等が挙げられる。
【0013】
(m3)ポリジメチルシロキサン鎖を側鎖に有するビニルモノマー:
下記一般式で表される(メタ)アクリル変性シリコーン等が挙げられる。
CH=CHR−COO−Si(CH)−((CH)SiO)m−O−Si(CH)
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは平均値で15〜45である。)
具体例としては、「X−22−174DX」、「X−22−2426」及び「X−22−2475」[いずれも信越シリコーン(株)製]等が挙げられる。
【0014】
(m4)炭素数4〜20のフルオロアルキル鎖を側鎖に有するビニルモノマー:
下記一般式で表されるパーフルオロアルキル(アルキル)(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
CH=CR−COO−(CH)p−(CF)q−Z
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、pは0〜3の整数であり、qは2、4、6、8、10、12のいずれかであり、Zは水素原子又はフッ素原子を表す。)
具体例としては、[(2−パーフルオロエチル)エチル](メタ)アクリル酸エステル、[(2−パーフルオロブチル)エチル](メタ)アクリル酸エステル、[(2−パーフルオロヘキシル)エチル](メタ)アクリル酸エステル、[(2−パーフルオロオクチル)エチル](メタ)アクリル酸エステル、[(2−パーフルオロデシル)エチル](メタ)アクリル酸エステル、及び[(2−パーフルオロドデシル)エチル](メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
(m1)〜(m4)のうち好ましいのは、(m1)、(m2)及び(m3)であり、更に好ましいのは(m1)と(m2)の併用である。
【0015】
分子鎖(k)を側鎖に有するビニルモノマー(m)以外の他のビニルモノマーとしては、下記(1)〜(10)が挙げられ、これらの2種以上を併用してもよい。
【0016】
(1)ビニル炭化水素:
(1−1)脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類(例えばエチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン及び前記以外のα−オレフィン等);アルカジエン類(例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン及び1,7−オクタジエン等)。
(1−2)脂環式ビニル炭化水素:モノ−又はジ−シクロアルケン及びアルカジエン類(例えばシクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等);テルペン類(例えばピネン、リモネン及びインデン等)。
(1−3)芳香族ビニル炭化水素:スチレン又はそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体(例えばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等);及びビニルナフタレン等。
【0017】
(2)カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその金属塩:
炭素数3〜30の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸又はその無水物及びそのモノアルキル(アルキル基の炭素数1〜11)エステル[例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、マレイン酸モノメチルエステル、フマル酸モノエチルエステル及びイタコン酸モノブチルエステル等のカルボキシル基含有ビニルモノマー]。
【0018】
(3)スルホン基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物及びこれらの塩:炭素数2〜14のアルケンスルホン酸[例えばビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸及びスチレンスルホン酸等];及びその炭素数2〜24のアルキル誘導体(例えばα−メチルスチレンスルホン酸等);スルホ(ヒドロキシ)アルキル−(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミド{例えばスルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、アルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸、ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン等:単独、ランダム、ブロックでもよい)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル[ポリ(n=5〜15)オキシプロピレンモノメタクリレート硫酸エステル等]、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル、及び下記一般式(1−1)〜(1−3)で表される硫酸エステル又はスルホン酸基含有モノマー等};及びそれらの塩等。
【0019】
O−(AO)SO3

CH2=CHCH2OCH2CHCH2O−Ar−R (1−1)

CH=CH−CH3

R’−Ar−O−(AO)SO3H (1−2)

CH2COOR”

HO3SCHCOOCH2CH(OH)CH2OCH2CH=CH2 (1−3)
式中、R及びR’は、それぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基;AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、AOは単独でも2種以上を併用したものでもよく、2種以上を併用した場合は、結合形式はランダムでもブロックでもよい;m及びnは、それぞれ独立に1〜50の数;Arはベンゼン環;R”はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキル基を表す。
【0020】
(4)リン酸基含有ビニルモノマー及びその塩:
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜24)リン酸モノエステル[例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート及びフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等];(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜24)ホスホン酸類(例えば2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸等)。
【0021】
なお、上記(2)〜(4)の塩としては、金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩(4級アンモニウム塩を含む)等が挙げられる。金属塩を形成する金属としては、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Zn、Ba、Zr、Ca、Mg、Na及びK等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、アルカリ金属塩及びアミン塩であり、更に好ましいのはナトリウム塩及び炭素数3〜20の3級モノアミンの塩である。
【0022】
(5)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー:
ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル及びショ糖アリルエーテル等
【0023】
(6)含窒素ビニルモノマー:
(6−1)アミノ基含有ビニルモノマー:アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、クロチルアミン、N,N−ジメチルアミノスチレン、メチル−α−アセトアミノアクリレート、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルチオピロリドン、N−アリールフェニレンジアミン、アミノカルバゾール、アミノチアゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノイミダゾール、アミノメルカプトチアゾール及びこれらの塩等
(6−2)アミド基含有ビニルモノマー:(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジベンジルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド及びN−ビニルピロリドン等
(6−3)ニトリル基含有ビニルモノマー:(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン及びシアノアクリレート等
(6−4)4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマー:3級アミン基含有ビニルモノマー[例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及びジアリルアミン等]の4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド及びジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等
(6−5)ニトロ基含有ビニルモノマー:ニトロスチレン等
(6−6)ウレタン基含有ビニルモノマー:ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと1官能イソシアネート化合物(フェニルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート及びシクロヘキシルイソシアネート等)の等モル反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びポリアルキレングリコール鎖(アルキレン基の炭素数2〜4)と2官能イソシアネート化合物(イソホロンジイソシアネート、ヘキシルジイソシアネート及びトリレンジイシアネート等)の等モル反応物等
【0024】
(7)エポキシ基含有ビニルモノマー:
グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート及びp−ビニルフェニルフェニルオキサイド等
【0025】
(8)フッ素以外のハロゲン元素含有ビニルモノマー:
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジクロロスチレン、クロロメチルスチレン及びクロロプレン等
【0026】
(9)ビニルエステル、ビニル(チオ)エーテル、ビニルケトン、ビニルスルホン類:
(9−1)ビニルエステル〔例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル−4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチル−α−エトキシアクリレート、炭素数1〜11のアルキル基(直鎖又は分岐鎖)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等]、ジアルキルフマレート(フマル酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の直鎖、分枝鎖又は脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(マレイン酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の直鎖、分枝鎖又は脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン類(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン及びテトラメタアリロキシエタン等)等、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニルモノマー{ポリエチレングリコール[数平均分子量(以下、Mnと略記する)300]モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn=500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(以下、エチレンオキサイドをEOと略記する)10モル付加物(メタ)アクリレート及びラウリルアルコールEO30モル付加物(メタ)アクリレート等、ポリ(メタ)アクリレート類[多価アルコール類のポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]}等〕
(9−2)ビニル(チオ)エーテル(例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル−2−メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、ビニル2−ブトキシエチルエーテル、3,4−ジヒドロ−1,2−ピラン、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル、ビニル−2−エチルメルカプトエチルエーテル、アセトキシスチレン及びフェノキシスチレン等)
(9−3)ビニルケトン(例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン及びビニルフェニルケトン等);ビニルスルホン(例えばジビニルサルファイド、p−ビニルジフェニルサルファイド、ビニルエチルサルファイド、ビニルエチルスルフォン、ジビニルスルフォン及びジビニルスルフォキサイド等)
【0027】
(10)その他のビニルモノマー:
イソシアナトエチル(メタ)アクリレート及びm−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等
【0028】
これらのビニルモノマー(m)以外の他のビニルモノマーのうち好ましいのは、炭素数1〜11のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びポリアルキレングリコール鎖を有するビニルモノマー等のビニルエステル、カルボキシル基含有ビニルモノマー、スルホン基含有ビニルモノマー、アミノ基含有ビニルモノマー及びウレタン基含有ビニルモノマーであり、更に好ましいのは、炭素数1〜11のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中では、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルであり、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニルモノマーの中では、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル{「ブレンマーPE−350」[日油(株)製]等}であり、カルボキシル基含有ビニルモノマーの中では、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸及びマレイン酸であり、スルホン基含有ビニルモノマーの中では、アルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸{「エレミノールJS−2」[三洋化成工業(株)製]等}及びポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン等:単独、ランダム、ブロックでもよい)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル{「エレミノールRS−30」[三洋化成工業(株)製]等}であり、アミノ基含有ビニルモノマーの中では、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートであり、ウレタン基含有ビニルモノマーの中では、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとフェニルイソシアネートの等モル反応物である。
【0029】
ビニル樹脂の具体例としては、構成するモノマーの組合せとして、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステル、(メタ)アクリル変性シリコーン−(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキル(直鎖及び/又は分岐鎖)エステル−(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アルキル(直鎖及び/又は分岐鎖)エステル−(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルキル(直鎖及び/又は分岐鎖)エステル−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルキル(直鎖及び/又は分岐鎖)エステル−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルキル(直鎖及び/又は分岐鎖)エステル−(メタ)アクリル酸−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルキル(直鎖及び/又は分岐鎖)エステル−(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとフェニルイソシアネートの等モル反応物、(メタ)アクリル酸アルキル(直鎖及び/又は分岐鎖)エステル−(メタ)アクリル酸−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとフェニルイソシアネートの等モル反応物、(メタ)アクリル酸アルキル(直鎖及び/又は分岐鎖)エステル−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとフェニルイソシアネートの等モル反応物及びこれらのモノマーの共重合体の塩等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、(メタ)アクリル酸アルキル(直鎖及び/又は分岐鎖)エステル−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルキル(直鎖及び/又は分岐鎖)エステル−(メタ)アクリル酸−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルキル(直鎖及び/又は分岐鎖)エステル−(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルキル(直鎖及び/又は分岐鎖)エステル−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルキル(直鎖及び/又は分岐鎖)エステル−(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとフェニルイソシアネートの等モル反応物、及び(メタ)アクリル酸アルキル(直鎖及び/又は分岐鎖)エステル−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとフェニルイソシアネートの等モル反応物である。
なお、ビニル(共)重合体骨格を有する他の樹脂におけるビニル(共)重合体骨格の組成についても同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0030】
ビニル樹脂又はビニル重合体骨格を有するビニル樹脂以外の樹脂中の、ビニル重合体骨格を構成するビニルモノマー中の、非親水性有機溶剤(L)とのSP値差が2(cal/cm1/2以下である分子鎖(k)を有するビニルモノマー(m)の含有率は、好ましくは10重量%以上であり、更に好ましくは10〜90重量%、特に好ましくは15〜80重量%、最も好ましくは20〜60重量%である。
このような含有率であれば、樹脂(a)が、非水系樹脂分散液で樹脂粒子(A)を形成する場合、少なくとも非水系樹脂分散液(W)を形成する条件下で有機溶剤(L)に対する(a)の溶解度を1重量%以下にでき、樹脂粒子(C)同士が合一しにくくなる。
【0031】
樹脂(a)が、非親水性有機溶剤(L)とのSP値差が2(cal/cm1/2以下である分子鎖(k)を有するビニルモノマー(m)と必要により他のビニルモノマーとの(共)重合体骨格を有し、(m)として、炭素数12〜27の直鎖状炭化水素鎖を有するビニルモノマー(m1)と炭素数12〜27の分岐状炭化水素鎖を有するビニルモノマー(m2)を用いる場合、(m1)と(m2)の重量比は、樹脂粒子の粒径と定着性の観点から、(m1):(m2)が、好ましくは90:10〜10:90であり、更に好ましくは80:20〜20:80、特に好ましくは70:30〜30:70である。
【0032】
樹脂(a)がビニルモノマー(m)と必要により他のビニルモノマーとの(共)重合体骨格を有し、(m)として、ポリジメチルシロキサン鎖を有するビニルモノマー(m3)及び/又は炭素数4〜20のフルオロアルキル鎖を有するビニルモノマー(m4)を含有する場合、樹脂粒子(C)の分散安定性の観点から、(C)の下記の表面組成比が好ましくは0.75〜0.98であり、更に好ましくは0.80〜0.95、特に好ましくは0.83〜0.92である。この範囲であると、(L)に対する(C)の親和性が向上し、分散安定性が良好となる。表面組成比は、例えば(m3)及び/又は(m4)の含有率を調整することで調整できる。
表面組成比は、X線光電子分析を用いて以下の条件で測定される炭素原子、ケイ素原子、フッ素原子及び酸素原子に由来する元素強度に基づき、(C+Si+F)/(C+Si+F+O)で算出される。
装置(一例):「ESCA5400」(アルバック・ファイ製)
X線源:Mg(モノクロメーターなし)
出力:15KV、400W
測定領域:1.1mmφ
【0033】
樹脂(a)は、非親水性有機溶剤(L)への溶解度が1重量%以下であるのが好ましく、0.5重量%以下であるのが更に好ましい。(a)の溶解度が1重量%以下であれば、樹脂粒子(C)同士が合一しにくくなる。
なお、本発明において、(a)の(L)への溶解度は、(L)中に(a)を飽和に達するまで溶解し、不溶解分を遠心分離により沈降させて得られた上澄みの重量で、更に減圧乾燥機で(L)の沸点で乾燥を行った後の残渣の重量を除した値とする。
具体的には以下の手順により算出する。
樹脂(a)の不溶解分を含む飽和液(25℃)を、10,000rpmの条件で30分間遠心分離し、上澄み約2g(yg)をアルミ容器に採取する。更にこの上澄み液を減圧乾燥機で、20mmHgの減圧下、(L)の沸点の温度条件で1時間乾燥を行い、残渣の重量を秤量する。このときの残渣重量をYgとすると、(a)の(L)への溶解度は、Y/y×100(重量%)で算出できる。
【0034】
樹脂(a)は、微細な球状樹脂粒子(A)の非水系樹脂分散液(W)を得るために、非親水性有機溶剤(L)と親和性の高い分子鎖(k)を側鎖に有する樹脂であることが好ましい。
(L)と(k)のSP値差が2(cal/cm1/2以下[好ましくは1(cal/cm1/2以下]であると、(k)は(L)との親和性が高いと考えられる。
分子鎖(k)の具体例としては、炭素数12〜27(好ましくは16〜25)の直鎖状炭化水素鎖、炭素数12〜27(好ましくは16〜25)の分岐状炭化水素鎖、ポリジメチルシロキサン鎖及び炭素数4〜20のフルオロアルキル鎖が挙げられ、合成の容易さの観点から好ましいのは、炭素数12〜27の直鎖状炭化水素鎖、炭素数12〜27の分岐状炭化水素鎖及びポリジメチルシロキサン鎖であり、更に好ましいのは、炭素数12〜27の直鎖状炭化水素鎖と炭素数12〜27の分岐状炭化水素鎖の併用である。また、炭素数12〜27の直鎖状炭化水素鎖は、結晶性を有するものが好ましい。
樹脂(a)中の分子鎖(k)の含有率は、好ましくは10〜90重量%であり、更に好ましくは15〜80重量%、特に好ましくは20〜60重量%である。
【0035】
樹脂粒子(A)が、分散時に用いる溶剤に対して溶解したり、膨潤したりするのを低減する観点から、樹脂(a)の分子量、SP値、結晶性及び架橋点間分子量等を適宜調整するのが好ましい。
【0036】
樹脂(a)のMn(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定)は、好ましくは100〜500万であり、更に好ましくは200〜500万、特に好ましくは500〜500,000である。SP値は、好ましくは7〜18(cal/cm1/2であり、更に好ましくは8〜14(cal/cm1/2である。樹脂(a)の融点(DSCで測定、以下融点はDSCでの測定値)は、好ましくは0℃以上であり、更に好ましくは30〜200℃である。
【0037】
本発明において、ビニル樹脂等のポリウレタン樹脂以外の樹脂の、Mn及び重量平均分子量(以下Mwと略記する)は、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記する)可溶分について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて以下の条件で測定される。
装置(一例):「HLC−8120」[東ソー(株)製]
カラム(一例):TSKgelGMHXL(2本)、TSKgelMultipore HXL−M(1本)[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量:100μl
流量:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
また、ポリウレタン樹脂のMn及びMwは、GPCを用いて以下の条件で測定される。
装置(一例):「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム(一例):Guardcolumn α(1本)、TSKgel α−M(1本)
[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.125重量%のジメチルホルムアミド溶液
溶液注入量:100μl
流量:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0038】
樹脂(a)のガラス転移温度(Tg)は、樹脂粒子(C)の粒径均一性、粉体流動性、保存時の耐熱性及び耐ストレス性の観点から、好ましくは10〜250℃であり、更に好ましくは20〜230℃、特に好ましくは30〜200℃、最も好ましくは40〜100℃ある。非水系樹脂分散液(X1)を作製する温度よりTgが低いと、合一を防止したり、分裂を防止したりする効果が小さくなり、粒径の均一性を高める効果が小さくなる。
また、樹脂(a)を含有するシェル層(P)のTgは、同様の理由から、好ましくは10〜200℃であり、更に好ましくは20〜100℃、特に好ましくは30〜85℃である。
なお、本発明におけるTgは、DSC測定又はフローテスター測定(DSCで測定できない場合)から求められる値である。
【0039】
DSC測定の場合は、「DSC20、SSC/580」[セイコー電子工業(株)製]を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定される。
フローテスター測定には、高化式フローテスターCFT500型[(株)島津製作所製]を用いる。フローテスター測定の条件は下記の通りであり、以下測定はすべてこの条件で行われる。
<フローテスター測定条件>
荷重:30kg/cm、昇温速度:3.0℃/min、
ダイ口径:0.50mm、ダイ長さ:10.0mm
【0040】
ポリオレフィン樹脂(b)としては、1種以上のオレフィンの(共)重合体、及び1種以上のオレフィンと1種以上の他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。
オレフィンとしては、炭素数2〜30のアルケン[例えばエチレン、プロピレン及び炭素数4〜30のα−オレフィン(1−ブテン、1−ペンテン、1−デセン、1−オクタデセン、1−テトラコセン及び1−トリアコセン等)]及び炭素数4〜30の単環〜4環又はそれ以上の(ポリ)シクロアルケン{例えばシクロペンテン、テトラシクロドデセン及びこれらの誘導体[アルキル(炭素数1〜10)置換体等]}等が挙げられる。共重合体には、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びグラフト共重合体が含まれる。
他のビニルモノマーとしては、上記のビニル樹脂を構成する他のビニルモノマーとして例示した(2)〜(10)の単量体が挙げられる。
【0041】
ポリオレフィン樹脂(b)の具体例としては、オレフィンの(共)重合体[例えばポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンとエチレンの共重合体、並びにプロピレン及び/又はエチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンの1種以上との共重合体(ランダム又はブロック共重合体、重量比9:1〜1:9)等]、オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体[エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)及びエチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等]及び(ポリ)シクロアルケン[テトラシクロドデセン等及びその誘導体(ジメチルテトラシクロドデセン等)等]が挙げられる。
【0042】
ポリオレフィン樹脂(b)のMn、融点、Tg及びSP値は、用途によって好ましい範囲に適宜調整すればよい。
ポリオレフィン樹脂(b)のMnは、好ましくは1,000〜500万であり、更に好ましくは2,000〜50万である。
ポリオレフィン樹脂(b)の融点は、好ましくは20〜300℃であり、更に好ましくは、80〜250℃である。
ポリオレフィン樹脂(b)のTgは、好ましくは20〜200℃であり、更に好ましくは40〜150℃である。
ポリオレフィン樹脂(b)のSP値は、好ましくは8〜16(cal/cm1/2であり、更に好ましくは9〜14(cal/cm1/2である。
【0043】
本第1発明の樹脂粒子分散液(X)の、樹脂(a)を含有する被膜状の1層以上のシェル層(P)とポリオレフィン樹脂(b)を含有する1層のコア層(Q)とで構成されるコア・シェル型の樹脂粒子(C)において、(P)と(Q)の重量比率[(P):(Q)]は(1:99)〜(70:30)であり、(C)の粒径均一性及び樹脂粒子分散液(X)の保存安定性の観点から、好ましくは(5:95)〜(50:50)であり、更に好ましくは(10:90〜35:65)である。シェル層(P)の重量が少なすぎると耐ブロッキング性が低下することがある。また、シェル層(P)の重量が多すぎると粒径均一性が低下することがある。シェル層(P)は2層以上(例えば2〜5層)から形成されていてもよいが、1層が好ましい。
【0044】
樹脂粒子(C)が分散されている非親水性有機溶剤(L)は、(C)の分散安定性の観点から、20℃における比誘電率が1〜4の溶剤である。
非親水性有機溶剤(L)の具体例としては、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、シリコーンオイル及び流動パラフィン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を併用することができる。
これらのうち、臭気の観点から好ましいのは、沸点が100℃以上の溶剤であり、更に好ましいのは、炭素数10以上の炭化水素系溶剤(ドデカン、イソドデカン及び流動パラフィン等)及びシリコーンオイルであり、特に好ましいのは流動パラフィンである。
非親水性有機溶剤(L)の誘電率は、ブリッジ法を用いて測定する(JIS C2101−1999)。試料充填前の空の静電容量C(pF)と、試料充填時の等価並列静電容量Cx(pF)を測定し、下記数式(1)により誘電率εを算出する。比誘電率は、このεと空気の比誘電率1.000585との比で与えられる。
ε = Cx/C (1)
なお、本第1発明の樹脂粒子分散液(X)中に含有される溶剤としては、実質的に非親水性有機溶剤(L)のみであることが好ましいが、樹脂粒子分散液(X)中、好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下の範囲で、他の有機溶剤を含有していてもよい。
【0045】
本第1発明の樹脂粒子分散液(X)を構成するコア・シェル型樹脂粒子(C)はどのような方法及び過程で製造された樹脂粒子であってもよいが、コア・シェル型樹脂粒子を製造する方法として、以下のような製造方法(1)〜(3)等が挙げられる。
(1):コア粒子を作製すると同時にコア・シェル構造にする方法。
樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)の非水系樹脂分散液(W)と、ポリオレフィン樹脂(b)[その前駆体(b0)を含む]の有機溶剤(M)の溶剤溶液(O1)又は(O2)とを混合し、(W)中に(O1)又は(O2)を分散し、(W)中で(b)を含有する樹脂粒子(B)を形成する方法。この場合、樹脂粒子(B)の造粒と同時に(B)表面に樹脂粒子(A)が付着してコア・シェル型樹脂粒子(D)の非水系樹脂分散液(X1)ができ、これからポリオレフィン樹脂(b)[その前駆体(b0)を含む]を溶解した有機溶剤(M)を除去することによって造られる。この際、樹脂粒子の表面が膜化してない場合、被膜化処理を施す、この工程は(X1)を得た後であればどの段階で処理してもよい。
【0046】
(2):あらかじめ作製したポリオレフィン樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)を、樹脂(a)を含有するコーティング剤(W’)でコーティングし、更にシェル層を被膜化することでコア・シェル型樹脂粒子(C)を造る方法。
この場合、コーティング剤(W’)は液体、固体、どのような形態であってもかまわず、更に(a)の前駆体(a’)でコーティングした後に(a’)を反応させて(a)にしてもよい。また、用いる(B)は、乳化重合凝集法等で作製された樹脂粒子であっても、粉砕法で作製された樹脂粒子であっても、どのような製造法で作製されたものでもよい。またコーティング方法には限定はなく、例えば、樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)の非水系樹脂分散液(W)中に、あらかじめ作製した樹脂粒子(B)又は(B)の非水系樹脂分散液を分散させる方法や、(B)に(a)の溶解液をコーティング剤としてふりかける方法等が挙げられる。
【0047】
(3):コア粒子を作製し、そのコア粒子の表面近傍を物理的及び/又は化学的に操作して別のシェル樹脂に変える方法。
ポリオレフィン樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)をあらかじめ作製し、(B)の表面を熱処理及び/又は化学的処理(酸及びアミン中和等)することで単一粒子(B)をコア・シェル型樹脂粒子(C)に変化させる方法等がある。
上記(1)〜(3)の方法のうち好ましいのは、(1)の方法である。
【0048】
本第1発明の樹脂粒子分散液(X)は、以下に述べる本第2発明の製造方法により得られたものであることが、粒径が均一な樹脂粒子となることから好ましい。
本第2発明の製造方法においては、樹脂粒子(A)の非水系樹脂分散液(W)と、ポリオレフィン樹脂(b)の有機溶剤(M)の溶剤溶液(O1)又は樹脂(b)の前駆体(b0)の有機溶剤(M)の溶剤溶液(O2)とを混合し、(W)中に(O1)又は(O2)を分散させて、(b)を含有する樹脂粒子(B)が形成される際に、樹脂粒子(B)の表面に樹脂粒子(A)を吸着させることで樹脂粒子(D)同士が合一するのを防ぎ、また、高剪断条件下で(D)が分裂されにくくする。これにより、樹脂粒子(D)及びそれから得られる樹脂粒子(C)の粒径を一定の値に収斂させ、粒径の均一性を高める効果を発揮する。そのため、樹脂粒子(A)は、分散する際の温度において、剪断により破壊されない程度の強度を有すること、分散媒である非親水性有機溶剤(L)に溶解したり、膨潤したりしにくいこと、(O1)又は(O2)に溶解しにくいことが好ましい特性として挙げられる。
【0049】
本第2発明の製造方法においては、非親水性有機溶剤(L)中に、樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)が分散されてなる非水系樹脂分散液(W)と、有機溶剤(M)にポリオレフィン樹脂(b)が溶解された溶剤溶液(O1)を混合し、(W)中に(O1)を分散させて、(A)の非水系樹脂分散液(W)中で、(b)を含有する樹脂粒子(B)を形成させることにより、樹脂粒子(B)の表面に樹脂粒子(A)が付着した構造の樹脂粒子(D)の非水系樹脂分散液(X1)を得る。
又は、非親水性有機溶剤(L)中に、樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)が分散されてなる非水系樹脂分散液(W)と、有機溶剤(M)にポリオレフィン樹脂(b)の前駆体(b0)が溶解された溶剤溶液(O2)を混合し、(W)中に(O2)を分散させて、更に(b0)を反応させて、(A)の非水系樹脂分散液(W)中で、(b)を含有する樹脂粒子(B)を形成させることにより、樹脂粒子(B)の表面に樹脂粒子(A)が付着した構造の樹脂粒子(D)の非水系樹脂分散液(X1)を得る。
なお、(b)と(b0)を併用して混合溶液として用いてもよい。
【0050】
樹脂(a)を、樹脂粒子(A)が非水系有機溶剤(L)中に分散された非水系樹脂分散液(W)にする方法は、特に限定されないが、以下の(1)〜(6)が挙げられる。
(1)ビニル樹脂の場合において、モノマーを出発原料として、非親水性有機溶剤(L)を含む溶剤中で分散重合法等の重合反応により、直接、樹脂粒子(A)の非水系樹脂分散液を製造し、必要により(L)以外の溶剤を留去する[(L)以外の溶剤を留去する際に、(L)の一部(低沸点成分)を留去してもよい。以下の溶剤留去の工程においても同様。]方法。
(2)ポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂等の重付加又は縮合系樹脂の場合において、前駆体(モノマー及びオリゴマー等)又はその溶剤溶液を必要であれば適当な分散剤存在下で非親水性有機溶剤(L)中に分散させ、その後に加熱したり、硬化剤を加えたりして前躯体を硬化させ、必要により(L)以外の溶剤を留去して、樹脂粒子(A)の非水系樹脂分散液を製造する方法。
(3)ポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂等の重付加又は縮合系樹脂の場合において、前駆体(モノマー及びオリゴマー等)又はその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、貧溶媒となる非親水性有機溶剤(L)を加えて再沈殿し、硬化剤を加えたりして前躯体を硬化させ、必要により(L)以外の溶剤を留去して、樹脂粒子(A)の非水系樹脂分散液を製造する方法。
(4)あらかじめ重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合及び縮合重合等のいずれの重合反応様式であってもよい。以下同様。)により作製した樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで分級することによって樹脂粒子を得た後、適当な分散剤存在下で非親水性有機溶剤(L)に分散させる方法。
(5)あらかじめ重合反応により作製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液(溶剤中で重合したものでもよい)を霧状に噴霧することにより樹脂粒子を得た後、前記樹脂粒子を適当な分散剤存在下で非親水性有機溶剤(L)に分散させる方法。
(6)あらかじめ重合反応により作製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液(溶剤中で重合したものでもよい)に貧溶媒[非親水性有機溶剤(L)であることが好ましい]を添加するか、又はあらかじめ溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより、適当な分散剤存在下で樹脂粒子を析出させ、必要により(L)以外の溶剤を留去する方法。
【0051】
これらの方法のうち好ましいのは、(1)及び(6)の方法であり、更に好ましいのは(6)の方法である。
上記(1)〜(6)の方法において使用する分散剤としては、公知の界面活性剤(s)、油溶性ポリマー(t)等が挙げられる。また、分散の助剤として有機溶剤(u)、可塑剤(v)等を併用することができる。
【0052】
界面活性剤(s)としては、アニオン性界面活性剤(s−1)、カチオン性界面活性剤(s−2)、両性界面活性剤(s−3)及び非イオン性界面活性剤(s−4)等が挙げられる。なお、界面活性剤は2種以上を併用してもよい。
【0053】
アニオン性界面活性剤(s−1)としては、炭素数8〜24のアルキル基を有するエーテルカルボン酸(塩)[(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム等]、炭素数8〜24のアルキル基を有するエーテル硫酸エステル塩[(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数1〜100)ラウリル硫酸ナトリウム等]、炭素数8〜24のアルキル基を有するスルホコハク酸エステル塩[モノ又はジアルキルスルホコハク酸エステルジ又はモノナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数1〜100)モノ又はジアルキルスルホコハク酸エステルジ又はモノナトリウム等]、(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数1〜100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、炭素数8〜24のアルキル基を有するスルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、炭素数8〜24のアルキル基を有するリン酸エステル塩[ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(繰り返し単位数1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等]、脂肪酸塩(ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等)、アシル化アミノ酸塩(ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等)等が挙げられる。
【0054】
カチオン性界面活性剤(s−2)としては、4級アンモニウム塩型及びアミン塩型のカチオン界面活性剤等が挙げられる。
4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、3級アミン類と4級化剤(メチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド及びベンジルクロライド等のハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、ジメチルカーボネート並びにEO等)との反応で得られる化合物等が使用でき、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)、セチルピリジニウムクロライド、ポリオキシエチレントリメチルアンモニウムクロライド及びステアラミドエチルジエチルメチルアンモニウムメトサルフェート等が挙げられる。
アミン塩型カチオン界面活性剤としては、1〜3級アミン類を無機酸(塩酸、硝酸、硫酸及びヨウ化水素酸等)又は有機酸(酢酸、ギ酸、シュウ酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸及びアルキル燐酸等)で中和することにより得られる化合物が使用でき、1級アミン塩型のものとしては、脂肪族高級アミン(ラウリルアミン、ステアリルアミン、セチルアミン、硬化牛脂アミン及びロジンアミン等の高級アミン)の無機酸塩又は有機酸塩、低級アミン類の高級脂肪酸(ステアリン酸及びオレイン酸等)塩等が挙げられる。2級アミン塩型のものとしては、脂肪族アミンのEO付加物等の無機酸塩又は有機酸塩が挙げられる。
【0055】
両性界面活性剤(s−3)としては、カルボキシベタイン型両性界面活性剤[炭素数10〜18の脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等)、アルキル(炭素数10〜18)ジメチルアミノ酢酸ベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等)、イミダゾリニウム型カルボキシベタイン(2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等)]、スルホベタイン型両性界面活性剤[炭素数10〜18の脂肪酸アミドプロピルヒドロキシエチルスルホベタイン(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルヒドロキシエチルスルホベタイン等)、ジメチルアルキル(炭素数10〜18)ジメチルヒドロキシエチルスルホベタイン(ラウリルヒドロキシスルホベタイン等)]、アミノ酸型両性界面活性剤(β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等)が挙げられる。
【0056】
非イオン性界面活性剤(s−4)としては、アルキレンオキサイド付加型非イオン性界面活性剤及び多価アルコール型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
アルキレンオキサイド付加型非イオン性界面活性剤としては、高級アルコール(炭素数8〜18)アルキレン(炭素数2〜4、好ましいのは2)オキサイド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)、アルキル(炭素数1〜12)フェノールEO付加物(付加モル数1〜30)、高級アミン(炭素数8〜22)アルキレン(炭素数2〜4、好ましいのは2)オキサイド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜40)、脂肪酸(炭素数8〜18)EO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜60)、ポリプロピレングリコール(Mn=200〜4,000)EO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜50)、ポリオキシエチレン(繰り返し単位数3〜30)アルキル(炭素数6〜20)アリルエーテル並びにソルビタンモノラウレートEO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)及びソルビタンモノオレートEO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)等の多価(2〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステルエチレンオキシド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)等が挙げられる。
多価アルコール型非イオン性界面活性剤としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、ソルビタンモノラウレート及びソルビタンモノオレート等の多価(2〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステル並びにラウリン酸モノエタノールアミド及びラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸(炭素数10〜18)アルカノールアミド等が挙げられる。
【0057】
油溶性ポリマー(t)としては、例えば炭素数4以上のアルキル基、ジメチルシロキサン基又はフッ素原子を有する官能基の少なくと一つの基を有する重合体が挙げられる。更には、非親水性有機溶剤(L)に親和性を有するアルキル基、ジメチルシロキサン基又はフッ素原子を有する官能基を有すると共に、樹脂(b)に親和性を有する化学構造を有することが好ましい。
具体的には、前記のビニルモノマーの中で炭素数4以上のアルキル基を有するモノマー、ジメチルシロキサン基を有するモノマー(又は反応性オリゴマー)、及び/又はフッ素原子を有するモノマーと、前述の樹脂(b)を構成するビニルモノマーとの共重合体が好ましい。共重合の形態はランダム、ブロック、グラフトのいずれでもよいが、ブロック又はグラフトが好ましい。
【0058】
樹脂粒子(A)の非水系樹脂分散液(W)を得るのに用いる有機溶剤(u)としては、前記の非親水性有機溶剤(L)及び(L)以外の有機溶剤[具体例としては、後述の有機溶剤(M)で(L)に該当しないもの等]が挙げられる。(L)以外の溶剤は、非水系樹脂分散液(W)とする際に留去する必要があることから、(W)の分散媒に用いられる(L)よりも沸点が低く、留去が容易であるものが好ましい。
【0059】
可塑剤(v)は、分散の際に必要に応じて非親水性有機溶剤(L)中に加えても、被分散体中[ポリオレフィン樹脂(b)又は(b0)を含む有機溶剤(M)の溶剤溶液(O1)又は(O2)中]に加えてもよい。
可塑剤(v)としては特に限定はなく、以下のものが挙げられる。
(v1)フタル酸エステル(フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル及びフタル酸ジイソデシル等);
(v2)脂肪族2塩基酸エステル(アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル及びセバシン酸−2−エチルヘキシル等);
(v3)トリメリット酸エステル(トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル及びトリメリット酸トリオクチル等);
(v4)リン酸エステル(リン酸トリエチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル及びリン酸トリクレジール等);
(v5)脂肪酸エステル(オレイン酸ブチル等);
(v6)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0060】
本発明における樹脂粒子(A)の粒径は、通常、形成される樹脂粒子(B)の粒径よりも小さく、粒径均一性の観点から、粒径比[樹脂粒子(A)の体積平均粒径]/[樹脂粒子(B)の体積平均粒径]の値が0.001〜0.3の範囲であることが好ましい。粒径比の下限は、更に好ましくは0.003であり、上限は、更に好ましくは0.25である。粒径比が、0.3より大きいと(A)が(B)の表面に効率よく吸着しないため、得られる樹脂粒子(D)及び(C)の粒度分布が広くなる傾向がある。
【0061】
樹脂粒子(A)の体積平均粒径は、所望の粒径の樹脂粒子(C)を得るのに適した粒径になるように、上記粒径比の範囲で適宜調整することができる。
(A)の体積平均粒径は、好ましくは0.0005〜30μmである。上限は、更に好ましくは20μm、特に好ましくは10μmであり、下限は、更に好ましくは0.01μm、特に好ましくは0.02μm、最も好ましくは0.04μmである。ただし、例えば、体積平均粒径1μmの樹脂粒子(C)を得たい場合には、好ましくは0.0005〜0.3μm、更に好ましくは0.001〜0.2μmの範囲、10μmの樹脂粒子(C)を得たい場合には、好ましくは0.005〜3μm、更に好ましくは0.05〜2μm、100μmの粒子(C)を得たい場合には、好ましくは0.05〜30μm、更に好ましくは0.1〜20μmである。
体積平均粒径は、レーザー式粒度分布測定装置「LA−920」[(株)堀場製作所製]や「マルチサイザーIII」(コールター社製)、光学系としてレーザードップラー法を用いる「ELS−800」[大塚電子(株)製]等で測定できる。仮に、各測定装置間で粒径の測定値に差を生じた場合は、「ELS−800」での測定値を採用する。
なお、上記粒径比が得やすいことから、後述する樹脂粒子(B)の体積平均粒径は、好ましくは0.1〜300μmであり、更に好ましくは0.5〜250μm、特に好ましくは1〜200μmである。
【0062】
樹脂粒子(D)及び(C)を得るための樹脂粒子(A)の樹脂粒子(B)に対する吸着力は、以下のような方法で制御することができる。
(1)非水系樹脂分散液(X1)を製造する際に、樹脂粒子(A)と樹脂粒子(B)が正負逆の電荷を持つようにすると吸着力が発生し、この場合、樹脂粒子(A)、樹脂粒子(B)各々の電荷を大きくするほど、吸着力が強くなり樹脂粒子(A)の樹脂粒子(B)に対する被覆率が大きくなる。
(2)非水系樹脂分散液(X1)を製造する際に、樹脂粒子(A)と樹脂粒子(B)が同極性(いずれも正又はいずれも負)の電荷を持つようにすると、被覆率は下がる傾向にある。この場合、一般に前記界面活性剤(s)及び/又は油性ポリマー(t)[特に樹脂粒子(A)及び樹脂粒子(B)と逆電荷を有するもの]を使用すると吸着力が強くなり、被覆率が上がる。
(3)樹脂(a)とポリオレフィン樹脂(b)のSP値差を小さくすると吸着力が強くなり、被覆率が大きくなる。
【0063】
ポリオレフィン樹脂(b)の溶剤溶液(O1)又はポリオレフィン樹脂(b)の前駆体(b0)の溶剤溶液(O2)を分散させる場合には、分散装置を用いることができる。分散装置は、一般に乳化機、分散機として市販されているものであれば特に限定されず、例えば、ホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー[特殊機化工業(株)製]等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー[(株)荏原製作所製]、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー[特殊機化工業(株)製]、コロイドミル[神鋼パンテック(株)製]、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機[三井三池化工機(株)製]、キャピトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル[太平洋機工(株)製]等の連続式乳化機、マイクロフルイダイザー[みずほ工業(株)製]、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、APVガウリン(ガウリン社製)等の高圧乳化機、膜乳化機[冷化工業(株)製]等の膜乳化機、バイブロミキサー[冷化工業(株)製]等の振動式乳化機、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等の超音波乳化機等が挙げられる。これらのうち粒径の均一化の観点から好ましいのは、APVガウリン、ホモジナイザー、TKオートホモミキサー、エバラマイルダー、TKフィルミックス及びTKパイプラインホモミキサーである。
【0064】
ポリオレフィン樹脂(b)の溶剤溶液(O1)又は前駆体(b0)の溶剤溶液(O2)の粘度は、粒径均一性の観点から、好ましくは10〜5万mPa・s(B型粘度計で測定)であり、更に好ましくは100〜1万mPa・sである。
分散時の温度としては、好ましくは0〜150℃(加圧下)であり、更に好ましくは5〜98℃である。非水系樹脂分散液(X1)の粘度が高い場合は、温度を上げて粘度を上記好ましい範囲まで低下させて、分散を行うのが好ましい。
ポリオレフィン樹脂(b)又は前駆体(b0)の溶剤溶液に用いる有機溶剤(M)は、ポリオレフィン樹脂(b)を常温又は加熱下で溶解し得る溶剤であればよいが、そのSP値は好ましくは8.5〜20(cal/cm1/2であり、更に好ましくは10〜19(cal/cm1/2である。(M)として、混合溶剤を使用する場合、SP値は加成性が成立すると仮定し、各々の溶剤のSP値から計算した加重平均値が上記範囲内であればよい。SP値が上記範囲外であると、(b)又は(b0)の溶解性が不足することがある。
【0065】
有機溶剤(M)としては、上記SP値の範囲内でポリオレフィン樹脂(b)又はポリオレフィン樹脂(b)の前駆体(b0)との組み合わせに適したものを適宜選択することができ、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びテトラリン等の芳香族炭化水素系溶剤;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット及びシクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶剤;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン及びパークロロエチレン等のハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート及びエチルセロソルブアセテート等のエステル系又はエステルエーテル系溶剤;ジエチルエーテル、THF、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール及びベンジルアルコール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、N−メチルピロリドン等の複素環式化合物系溶剤及びこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
(M)の沸点は、臭気及び非水系樹脂分散液(X1)から留去しやすいという観点から、好ましくは100℃以下であり、更に好ましくは90℃以下である。
有機溶剤(M)中にポリオレフィン樹脂(b)又はポリオレフィン樹脂(b)の前駆体(b0)を溶解させる方法は、いかなる方法でもよく、公知の方法を用いることができ、例えば有機溶剤(M)中にポリオレフィン樹脂(b)又は前駆体(b0)を投入し、撹拌する方法及び加熱する方法等が挙げられる。
【0066】
ポリオレフィン樹脂(b)の前駆体(b0)としては、上記のポリオレフィン樹脂(b)を構成するオレフィン及び他のビニルモノマー並びにそれらの溶剤溶液が挙げられる。
【0067】
前駆体(b0)を反応させてポリオレフィン樹脂(b)にする方法としては、例えば、油溶性開始剤、モノマー類及び有機溶剤(M)を含有する油相を油溶性ポリマー(t)存在下、非親水性有機溶剤(L)中に分散懸濁させ、加熱によりラジカル重合反応を行わせる方法(いわゆる懸濁重合法)、モノマー類及び有機溶剤(M)を含有する油相を分散剤[界面活性剤(s)と同様のものが挙げられる]、油溶性開始剤を含む樹脂粒子(A)の非水系樹脂分散液(W)中に乳化させ、加熱によりラジカル重合反応を行わせる方法(いわゆる分散重合法)等が挙げられる。
【0068】
上記油溶性開始剤としては、油溶性パーオキサイド系重合開始剤(I)、油溶性アゾ系重合開始剤(II)等が挙げられる。また、油溶性パーオキサイド系重合開始剤(I)と還元剤とを併用してレドックス系重合開始剤(III)を形成してもよい。更には、(I)〜(III)のうちから2種以上を併用してもよい。
【0069】
(I)油溶性パーオキサイド系重合開始剤:
アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシビバレート、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、プロピオニトリルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジイソブチルジパーオキシフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、パラメンタンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド及びクメンパーオキサイド等。
【0070】
(II)油溶性アゾ系重合開始剤:
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン1−カーボニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)及び2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等。
【0071】
(III)非水系レドックス系重合開始剤:
ヒドロペルオキシド、過酸化ジアルキル及び過酸化ジアシル等の油溶性過酸化物と、3級アミン、ナフテン酸塩、メルカプタン類、有機金属化合物(トリエチルアルミニウム、トリエチルホウ素及びジエチル亜鉛等)等の油溶性還元剤とを併用したもの。
【0072】
樹脂(b)又は前駆体(b0)100重量部に対する非水系樹脂分散液(W)の使用量は、好ましくは50〜2,000重量部であり、更に好ましくは100〜1,000重量部である。50重量部以上であれば樹脂(b)の分散状態が良好になり、2,000重量部以下であれば経済的である。
【0073】
本第2発明の製造方法においては、樹脂粒子(B)の表面に樹脂粒子(A)が付着した構造の樹脂粒子(D)の非水系樹脂分散液(X1)から、有機溶剤(M)を、非親水性有機溶媒(L)が分散液中に残存する条件で、好ましくは得られる非水系樹脂分散液(X1)中1重量%以下(更に好ましくは0.5重量%以下)となるまで留去する。ただし、(M)と共に(L)の一部(低沸点成分)を留去してもよい。
留去する方法としては、20〜500mmHgの減圧下、20℃以上、(M)の沸点以下の温度で留去する方法が挙げられる。
【0074】
本第2発明の製造方法においては、前記有機溶剤(L)と親和性の高い分子鎖(k)を側鎖に有する樹脂(a)を用いることにより、特に下記の好ましい溶剤を用いる場合、有機溶剤(M)を非水系樹脂分散液(X1)中に好ましくは10〜50重量%(更に好ましくは20〜40重量%)用い、40℃以下で好ましくは1重量%以下(更に好ましくは0.5重量%以下)となるまで(M)を脱溶剤することで、樹脂粒子(A)が溶剤に溶解されて被膜化し、(B)で構成されるコア層(Q)の表面に樹脂(a)を含有する被膜状のシェル層(P)が形成された樹脂粒子(C)の非水系樹脂分散液(X2)が得られる場合が多い。
(M)のうち、被膜化の観点から好ましいのは、THF、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン及び酢酸エチルであり、更に好ましいのは、アセトン及び酢酸エチルである。
【0075】
(B)で構成されるコア層(Q)の表面に(A)の被膜が形成されていない場合、又はコア層(Q)の表面の一部に(A)により被膜が形成されている場合でも、更に樹脂粒子(C)表面の被膜の平滑性をより良好にするため、以下の操作を行うと、(B)で構成されるコア層(Q)の表面の少なくとも一部、好ましくは全面に、(A)により形成された表面が平滑な被膜状のシェル層(P)を有する樹脂粒子(C)の非水系樹脂分散液(X)が得られ、(X)における樹脂粒子(C)の分散安定性が優れる点から好ましい。
上記の方法としては、(B)に付着された(A)を溶剤に溶解させる方法及び非水系樹脂分散液(X1)を加熱して(A)を溶融し被膜化させる方法が挙げられ、これらの方法を併用してもよい。
【0076】
樹脂粒子(A)を溶剤に溶解させて被膜化させる場合に用いる溶剤は、被膜化する際に(X1)中に添加してもよいが、(X1)を得る際の原料としてポリオレフィン樹脂(b)又は前駆体(b0)の溶剤溶液に用いる有機溶剤(M)を、樹脂粒子(B)の形成後も直ちに除去せずにそれを用いる方が、(B)中に溶剤が含有されるため(A)の溶解が容易であり、樹脂の凝集が起こりにくく好ましい。
(A)を溶剤に溶解させる際の、非水系樹脂分散液(X1)中の有機溶剤(M)の濃度は、好ましくは3〜50重量%であり、更に好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは15〜30重量%である。また、溶解は、非水系樹脂分散液(X1)を、例えば1〜10時間撹拌することにより行い、溶解時の温度は、好ましくは15〜45℃であり、更に好ましくは15〜30℃である。
【0077】
(B)で構成されるコア層(Q)の表面に(A)を溶融して被膜化させる場合、非水系樹脂分散液(X1)中の固形分含有率(溶剤以外の成分の含有率)は、好ましくは1〜50重量%であり、更に好ましくは5〜30重量%である。また、このときの有機溶剤(M)の含有率は、好ましくは2重量%以下であり、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。(X1)中の固形分含有率が多かったり、有機溶剤(M)の含有率が2重量%を越える場合、(X1)を60℃以上にすると凝集物が発生することがある。溶融時の加熱の条件は、(A)が溶融される条件であれば特に限定されないが、例えば、撹拌下、好ましくは40〜100℃、更に好ましくは60〜90℃、特に好ましくは60〜80℃で、好ましくは1〜300分間加熱する方法が挙げられる。
なお、被膜化処理の方法として、有機溶剤(M)の含有率が2重量%以下の樹脂粒子(D)の非水系樹脂分散液(X1)を加熱処理し、(A)を(B)で構成されるコア層(Q)上で溶融させる際の好ましい加熱処理温度は、樹脂(a)のTg以上であり、80℃以下の温度範囲であることが好ましい。加熱処理温度が(a)のTg未満であると得られる樹脂粒子(C)の表面平滑性はほとんど変化がない。また80℃を越える温度で加熱処理すると、シェル層(P)がコア層(Q)から剥がれる場合がある。
これらの(A)の被膜化方法のうち好ましいのは、(A)を溶融させる方法、及び(A)を溶解させる方法と(A)を溶融させる方法の併用である。
【0078】
本第2発明の製造方法で得られる非水系樹脂分散液(X2)を構成する樹脂粒子(C)の形状の制御は、樹脂(a)とポリオレフィン樹脂(b)のSP値差又は樹脂(a)のMwを制御することで粒子形状や粒子表面性を制御することができる。SP値差が小さいと、いびつな形で表面平滑な粒子が得られやすく、SP値差が大きいと球形で表面はザラつきのある粒子が得られやすい。また、(a)のMwが大きいと表面にザラつきのある粒子が得られやすく、Mwが小さいと表面が平滑な粒子が得られやすい。ただし、(a)と(b)のSP値差は小さすぎても大きすぎても造粒困難になる。また樹脂(a)のMwが小さすぎると造粒困難になる。
このことから、(a)と(b)のSP値差は、好ましくは0.01〜5.0(cal/cm1/2であり、更に好ましくは0.1〜3.0(cal/cm1/2、特に好ましくは0.2〜2.0(cal/cm1/2である。樹脂(a)のMwは、好ましくは100〜100万であり、更に好ましくは1,000〜50万、特に好ましくは2,000〜20万、最も好ましくは3,000〜10万である。
【0079】
本第2発明の製造方法において、樹脂粒子(C)の粒径均一性、樹脂粒子分散液(X)の保存安定性等の観点から、樹脂粒子(C)は、前述のように、1〜70重量%の樹脂(a)を含有する被膜状のシェル層(P)と30〜99重量%のポリオレフィン樹脂(b)を含有するコア層(Q)で構成される。好ましくは5〜50重量%の(P)と50〜95重量%の(Q)、更に好ましくは10〜35重量%の(P)と65〜90重量%の(Q)で構成されるものである。
【0080】
樹脂粒子(C)の粒径均一性、非水系樹脂分散液(X2)の流動性、保存安定性等の観点から、樹脂粒子(C)において、好ましくは樹脂粒子(B)の表面の5重量%以上、更に好ましくは30重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、最も好ましくは80重量%以上が樹脂(a)の被膜(P)で覆われているのがよい。(C)の表面被覆率は、走査電子顕微鏡(SEM)で得られる像の画像解析から下式に基づいて求めることができる。
表面被覆率(%)=[シェル層(P)に覆われている部分の面積/シェル層(P)に覆われている部分の面積+コア層(Q)が露出している部分の面積]×100
【0081】
樹脂粒子(C)の体積分布の変動係数は、粒径均一性の観点から、好ましくは30重量%以下であり、更に好ましくは1〜26重量%である。
体積分布の変動係数は、レーザー式粒度分布測定装置「LA−920」[(株)堀場製作所製]等の粒度分布測定装置により測定される。
樹脂粒子(C)の[体積平均粒径/個数平均粒径]の値は、粒径均一性の観点から、好ましくは1.0〜1.4であり、更に好ましくは1.0〜1.2である。
(C)の体積平均粒径は、好ましくは0.1〜300μmである。上限は、更に好ましくは250μmであり、特に好ましくは200μm、最も好ましくは100μmである。下限は、更に好ましくは0.5μmであり、特に好ましくは1μmである。
なお、体積平均粒径及び個数平均粒径は、「マルチサイザーIII」(コールター社製)で同時に測定することができる。
【0082】
本発明の樹脂粒子分散液(X)を構成する樹脂粒子(C)は、樹脂粒子(A)と樹脂粒子(B)の粒径及び樹脂(a)を含有する被膜状のシェル層(P)による樹脂粒子(B)表面の被覆率を変えることで、粒子表面に所望の凹凸を付与したものにすることができる。(C)の表面平均中心線粗さ(Ra)は、流動性の観点から、好ましくは0.01〜0.8μmである。(Ra)は、粗さ曲線とその中心線との偏差の絶対値を算術平均した値のことであり、例えば、走査型プローブ顕微鏡システム[東陽テクニカ(株)製]で測定することができる。
【0083】
樹脂粒子(C)の形状は、流動性、溶融レベリング性等の観点から、好ましくは球状である。その場合、樹脂粒子(B)が球状であるのが好ましい。(C)の平均円形度は、好ましくは0.96〜1.0であり、更に好ましくは0.97〜1.0、特に好ましくは0.98〜1.0である。なお、平均円形度は、光学的に粒子を検知して、投影面積の等しい相当円の周囲長で除した値である。具体的には、フロー式粒子像分析装置「FPIA−2000」[シスメックス(株)製]を用いて測定する。具体的には、所定の容器にあらかじめ不純固形物を除去した水100〜150mlを入れ、分散剤として界面活性剤「ドライウエル」[富士写真フイルム(株)製]0.1〜0.5mlを加え、更に測定試料0.1〜9.5g程度を加え、試料を分散した懸濁液を超音波分散器「ウルトラソニッククリーナ モデル VS−150」(ウエルボクリア社製)で約1〜3分間分散処理を行ない、分散濃度を3,000〜10,000個/μLにして樹脂粒子の形状及び分布を測定する。
【0084】
本第2発明の製造方法により得られる非水系樹脂分散液(X2)を構成する樹脂粒子(C)は、非水系樹脂分散液(X1)製造時の、樹脂粒子(A)による樹脂粒子(B)表面の被覆率及び非親水性媒体界面上で樹脂粒子(A)が樹脂粒子(B)側に埋め込まれている深さを変えることで粒子表面を平滑にしたり、粒子表面に所望の凹凸を付与したりすることができる。
樹脂粒子(A)による樹脂粒子(B)表面の被覆率や樹脂粒子(A)が樹脂粒子(B)側に埋め込まれている深さは、以下のような方法で制御することができる。
(1)樹脂粒子(D)の非水系樹脂分散液(X1)を製造する際に、樹脂粒子(A)と樹脂粒子(B)が正負逆の電荷を持つようにすると、樹脂粒子(A)による樹脂粒子(B)表面の被覆率が高くなり、樹脂粒子(A)が樹脂粒子(B)側に埋め込まれている深さが大きくなる。この場合、樹脂粒子(A)、樹脂粒子(B)それぞれの電荷を大きくするほど、更に被覆率が高くなり深さが大きくなる。
(2)樹脂粒子(D)の非水系樹脂分散液(X1)を製造する際に、樹脂粒子(A)と樹脂粒子(B)が同極性(いずれも正又はいずれも負)の電荷を持つようにすると、被覆率は下がり、深さが小さくなる傾向にある。この場合、一般に界面活性剤(s)及び/又は油溶性ポリマー(t)[好ましくは樹脂粒子(A)及び樹脂粒子(B)と逆電荷を有するもの]を使用すると被覆率が高くなる。また、油溶性ポリマー(t)を使用する場合には、油溶性ポリマー(t)のMwが大きいほど深さが小さくなる。
(3)樹脂(a)とポリオレフィン樹脂(b)のSP値差を小さくするほど被覆率が高くなり、深さが大きくなる。
【0085】
樹脂粒子(C)を構成するシェル層(P)及び/又はコア層(Q)中に、添加剤(顔料、充填剤、帯電防止剤、着色剤、離型剤、荷電制御剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤及び難燃剤等)を混合してもよい。シェル層(P)又はコア層(Q)中に添加剤を添加する方法としては、樹脂粒子(D)の非水系樹脂分散液(X1)を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめ樹脂(a)又はポリオレフィン樹脂(b)と添加剤を混合した後、非水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうが更に好ましい。
また、本発明においては、添加剤は、必ずしも(X1)中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後添加してもよい。例えば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加したり、前記有機溶剤(u)及び/又は可塑剤(v)と共に上記添加剤を含浸させることもできる。
【0086】
添加剤として、コア層(Q)中に、ポリオレフィン樹脂(b)と共にワックス(c)及び/又はビニルポリマー鎖がグラフトした変性ワックス(d)を含有すると、耐熱保存安定性が更に向上するため好ましい。
(Q)中の(c)の含有率は、好ましくは20重量%以下であり、更に好ましくは1〜15重量%である。(Q)中の(d)の含有率は、好ましくは10重量%以下であり、更に好ましくは0.5〜8重量%である。(Q)中の(c)と(d)の合計含有率は、好ましくは25重量%以下であり、更に好ましくは1〜20重量%である。
【0087】
ワックス(c)としては、合成ワックス(ポリオレフィンワックス)及び天然ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、カルボニル基含有ワックス及びこれらの混合物等)が挙げられる。これらのうち好ましいのは、パラフィンワックス(c1)及びカルナウバワックス(c2)である。(c1)としては、融点50〜90℃で炭素数20〜36の直鎖飽和炭化水素を主成分とする石油系ワックスが挙げられ、(c2)としては、融点50〜90℃で炭素数16〜36の動植物ワックスが挙げられる。
(c)のMnは、離型性の観点から、好ましくは400〜5,000であり、更に好ましくは1,000〜3,000、特に好ましくは1,500〜2,000である。なお、上記及び以下において、ワックス(c)のMnは、GPCを用いて測定される(溶媒:o−ジクロロベンゼン、基準物質:ポリスチレン)。
【0088】
ワックス(c)は、ビニルポリマー鎖がグラフトした変性ワックス(d)と共に、無溶剤下溶融混練処理及び/又は前記の有機溶剤(u)存在下で加熱溶解混合処理した後に、ポリオレフィン樹脂(b)中に分散されるのが好ましい。この方法により、ワックス分散処理時に変性ワックス(d)を共存させることにより、(d)のワックス基部分が効率よく(c)表面に吸着又はワックス(c)のマトリクス構造内に一部絡みあうことにより、ワックス(c)表面とポリオレフィン樹脂(b)との親和性が良好になり、(c)をより均一に樹脂粒子(B)中に内包することができ、分散状態の制御が容易になる。
【0089】
変性ワックス(d)は、ワックスにビニルポリマー鎖がグラフトしたものである。
(d)に用いられるワックスとしては、上記ワックス(c)と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。(d)のビニルポリマー鎖を構成するビニルモノマーとしては、前記ビニル樹脂を構成するモノマー(1)〜(10)と同様のものが挙げられるが、これらのうち好ましいのは、(1)、(2)及び(6)である。ビニルポリマー鎖はビニルモノマーの単独重合体でもよいし、共重合体でもよい。
【0090】
変性ワックス(d)におけるワックス成分の量(未反応ワックスを含む)は、好ましくは0.5〜99.5重量%であり、更に好ましくは1〜80重量%、特に好ましくは5〜50重量%、最も好ましくは10〜30重量%である。
(d)のTgは、非水系樹脂分散液(X2)の耐熱保存安定性の観点から、好ましくは40〜90℃であり、更に好ましくは50〜80℃である。
(d)のMnは、好ましくは1,500〜10,000であり、更に好ましくは1,800〜9,000である。Mnが1,500〜10,000の範囲であれば、樹脂粒子(C)の機械強度が良好となる。
【0091】
変性ワックス(d)は、例えばワックス(c)を溶剤(トルエン及びキシレン等)に溶解又は分散させ、100〜200℃に加熱した後、ビニルモノマーをパーオキサイド系重合開始剤と共に滴下して重合後、溶剤を留去することにより得られる。
変性ワックス(d)の合成におけるパーオキサイド系重合開始剤の量は、(d)の原料の合計重量に基づいて、好ましくは0.2〜10重量%であり、更に好ましくは0.5〜5重量%である。
【0092】
パーオキサイド系重合開始剤としては、前記の油溶性パーオキサイド系重合開始剤及び水溶性パーオキサイド系重合開始剤等が挙げられる。
これらの開始剤の具体例としては、前記のものが挙げられる。
【0093】
ワックス(c)と変性ワックス(d)を混合する方法としては、(1)それぞれの融点以上の温度で溶融混練する方法、(2)(c)と(d)を前記有機溶剤(u)中に溶解又は懸濁させた後、冷却晶析、溶剤晶析等により液中に析出、又はスプレードライ等により気体中に析出させる方法、(3)(c)と(d)を有機溶剤(u)中に溶解又は懸濁させた後、分散機により機械的に湿式粉砕させる方法、等が挙げられる。これらのうち、(2)の方法が好ましい。
ワックス(c)及び変性ワックス(d)を(b)中に分散させる方法としては、(c)及び(d)と、(b)を、それぞれ溶剤溶液又は分散液とした後、それら同士を混合する方法等が挙げられる。
【0094】
本第1発明の樹脂粒子分散液(X)は、分散液中の樹脂粒子の粒径及び形状が均一である。従って、本発明の樹脂粒子分散液(X)は、塗料、インクジェットプリンタ用油性インク、電子ペーパー用インク、化粧品、電子部品製造用スペーサー及び電気粘性流体用としても有用である。これらの用途に用いる際には、着色剤として、公知の染料、顔料及び磁性粉を樹脂粒子(C)に添加することができる。着色剤の具体例としては、カーボンブラック、スーダンブラックSM、ファーストイエロ−G、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、プリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB、オイルピンクOP、マグネタイト及び鉄黒等が挙げられる。
着色剤の使用率は、染料又は顔料を使用する場合は、ポリオレフィン樹脂(b)の重量に基づいて、好ましくは0.5〜15重量%であり、磁性粉を使用する場合は、好ましくは20〜150重量%である。
樹脂粒子(C)の帯電性を制御するための荷電制御剤としては、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、リンの単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸金属塩及びサリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。具体的には、ニグロシン系染料の「ボントロン03」、4級アンモニウム塩の「ボントロンP−51」、含金属アゾ染料の「ボントロンS−34」、オキシナフトエ酸系金属錯体の「E−82」、サリチル酸系金属錯体の「E−84」、フェノール系縮合物の「E−89」[以上、オリエント化学工業(株)製]、4級アンモニウム塩モリブデン錯体の「TP−302」、「TP−415」[以上、保土谷化学工業(株)製]、4級アンモニウム塩の「コピーチャージPSY VP2038」、トリフェニルメタン誘導体の「コピーブルーPR」、4級アンモニウム塩の「コピーチャージ NEG VP2036」、「コピーチャージ NX VP434」(以上、ヘキスト社製)、「LRA−901」、ホウ素錯体である「LR−147」[日本カ一リット(株)製]、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基又は4級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物等が挙げられる。
荷電制御剤の使用率は、ポリオレフィン樹脂(b)の重量に基づいて、好ましくは0〜5重量%である。
【実施例】
【0095】
以下実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の記載において「部」は重量部を示す。
【0096】
<製造例1>[樹脂粒子(A)の非水系樹脂分散液(W)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、THF200部を投入し、別のガラス製ビーカーに、メタクリル酸メチル120部、メタクリル変性シリコーン「X−22−2426」[信越化学工業(株)製]80部及びアゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.5部を投入し、20℃で20分間撹拌して単量体溶液を調製し、滴下ロートに投入した。反応容器の気相部の窒素置換を行った後に密閉下40℃で1時間かけて単量体溶液を滴下した。滴下終了から3時間後、反応容器にアゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.5部とTHF20部を混合したものを添加し、40℃で3時間熟成した後、室温まで冷却した。この重合溶液50部を更に撹拌下の流動パラフィン[比誘電率:2.0、SP値:8.6(cal/cm1/2]80部に滴下して、40℃、300mmHgの減圧下でTHFを留去して、非水系樹脂分散液(W)を得た。非水系樹脂分散液(W)の「LA−920」で測定した体積平均粒径は0.040μmであった[分子鎖(k)すなわちシリコーン鎖のSP値:8.5(cal/cm1/2]。流動パラフィンに対する樹脂の溶解度[非水系樹脂分散液(W)を遠心分離して取り出した上澄み液中に含まれる樹脂濃度]は0.5重量%だった。
【0097】
<製造例2>(着色剤分散液の製造)
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、プロピレングリコール557部(17.5モル部)、テレフタル酸ジメチルエステル569部(7.0モル部)、アジピン酸184部(3.0モル部)及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート3部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成するメタノールを留去しながら8時間反応させた。次いで230℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成するプロピレングリコール及び水を留去しながら4時間反応させ、更に5〜20mmHgの減圧下に1時間反応させた。回収されたプロピレングリコールは175部(5.5モル部)であった。次いで180℃まで冷却し、無水トリメリット酸121部(1.5モル部)を加え、常圧密閉下で2時間反応後、220℃、常圧で軟化点が180℃になるまで反応させ、ポリエステル樹脂(Mn=8,500)を得た。
ビーカーに、銅フタロシアニン20部と着色剤分散剤「ソルスパーズ28000」[アビシア(株)製]4部、得られたポリエステル樹脂(b2)20部及びアセトン56部を投入し、撹拌して均一分散させた後、ビーズミルによって銅フタロシアニンを微分散して、着色剤分散液を得た。着色剤分散液の「LA−920」で測定した体積平均粒径は0.2μmであった。
【0098】
<製造例3>(変性ワックスの製造)
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、キシレン454部、低分子量ポリエチレン 「サンワックス LEL−400」[軟化点:128℃、三洋化成工業(株)製]150部を投入し、窒素置換後撹拌下170℃に昇温し、同温度でスチレン595部、メタクリル酸メチル255部、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート34部及びキシレン119部の混合溶液を3時間かけて滴下し、更に同温度で30分間保持した。次いで300mmHgの減圧下でキシレンを留去し、変性ワックスを得た。変性ワックスのグラフト鎖のSP値は10.35(cal/cm1/2、Mnは1,900、Mwは5,200、Tgは56.9℃であった。
【0099】
<製造例4>(ワックス分散液の製造)
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び冷却管を備えた反応容器に、パラフィンワックス(融点73℃)10部、変性ワックス1部及びアセトン33部を投入し、撹拌下78℃に昇温し、同温度で30分間撹拌後、1時間かけて30℃まで冷却してパラフィンワックスを微粒子状に晶析させ、更にウルトラビスコミル(アイメックス製)で湿式粉砕し、ワックス分散液を得た。
【0100】
<製造例5>[樹脂溶液(1)の製造]
撹拌装置を備えた反応容器に、ポリオレフィン樹脂(b){エチレン/アクリル酸エチル共重合体「NUC−6220」[エチレン:アクリル酸エチル=93:7(重量比)、融点:97℃][日本ユニカー(株)製]}10部及びヘキサン10部を投入し、撹拌して均一分散させ、樹脂溶液(1)を得た。
【0101】
<実施例1>
ビーカーに、樹脂溶液(1)60部、ワックス分散液27部及び着色剤分散液10部を投入し、25℃でTKオートホモミキサーを用いて8,000rpmで撹拌し、樹脂溶液(1A)を得た。
別のビーカーに、流動パラフィン50部及び非水系樹脂分散液(W)25部を投入し、均一に分散した。次いで25℃でTKオートホモミキサーを用いて10,000rpmで撹拌しながら、樹脂溶液(1A)75部を投入し2分間撹拌した。次いでこの混合液を、撹拌装置、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に移し、35℃に昇温して300mmHgの減圧下、ヘキサン濃度が0.5重量%以下となるまでヘキサンを留去し、表面に付着した微粒子分散液(W)由来の樹脂粒子が被膜化した樹脂粒子(C)が分散された樹脂粒子分散液(X)を得た。なお、ヘキサンの濃度はガスクロマトグラフィー「GC2010」[FID方式、(株)島津製作所製]で定量した(以下同様)。
【0102】
<比較例1>
ビーカーに樹脂溶液(1)60部、ワックス分散液27部及び着色剤分散液10部を投入し、25℃でTKオートホモミキサーを用いて8,000rpmで撹拌し、樹脂溶液(1B)を得た。
別のビーカーに流動パラフィン75部を投入し、25℃でTKオートホモミキサーを用いて10,000rpmで撹拌しながら、樹脂溶液(1B)75部を投入し2分間撹拌した。次いでこの混合液を、撹拌装置、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に移し、35℃に昇温して300mmHgの減圧下、ヘキサン濃度が0.5重量%以下となるまでヘキサンを留去し、シェルを持たない樹脂粒子(C’)が分散された樹脂粒子分散液(X’)を得た。
【0103】
実施例1、比較例1で得た樹脂粒子分散液(X)、(X’)に含まれる樹脂粒子(C)、(C’)の体積平均粒径、体積分布の変動係数、表面被覆率、平均円形度、樹脂(a)の(L)への溶解度、樹脂粒子(A)の体積平均粒径は、前記の方法で測定した。
樹脂粒子(C)、(C’)の粒子表面平滑性、樹脂粒子分散液(X)、(X’)の定着性及び耐熱保存安定性は以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0104】
[粒子表面平滑性]
走査電子顕微鏡(SEM)を用い、樹脂粒子分散液(X)、(X’)から遠心分離により分離した樹脂粒子(C)、(C’)の表面を1万倍及び3万倍拡大した写真で観察し、以下の基準で評価した。
◎:表面に全く凹凸がなく、非常に平滑である。
○:表面に一部いびつな部位が見られるが、全体的には凹凸がほとんどなく、平滑であ る。
△:表面全体に凹凸があるが、樹脂(a)由来の粒子状物体は確認できない。
×:表面が全体的にひどく凹凸である、又は樹脂(a)を含有する粒子が確認できる。
【0105】
[定着性1]
樹脂粒子分散液(X)、(X’)を紙面上に垂らし、バーコーター(♯10、間隙22.9μm)で均一に塗布する(均一に塗布できるのであれば他の方法を用いてもよい)。この紙を加圧ローラーに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cmの条件で通した時のコールドオフセットの発生温度を測定した。
【0106】
[定着性2]
[定着性1]で定着した画像に剥離テープ「スコッチメンディングテープ」[住友3M(株)製]を粘着させた後にテープを剥離し、画像の欠損が発生する温度を測定した。
【0107】
[耐熱保存安定性]
50℃に温調された乾燥機に樹脂粒子分散液(X)、(X’)を24時間静置した後、粒度分布を測定し、加熱前後の粒度分布の変化により下記の基準で評価した。
○:粒度分布が変わらず、ブロッキングが発生しない。
△:粒度分布が変わるが、超音波分散(20kHz、200W、1分間)により元の粒 度分布に戻る。
×:粒度分布が変わっており、超音波分散しても元の粒度分布に戻らない。
【0108】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の樹脂粒子分散液(X)は、塗料、インクジェットプリンタ用油性インク、電子ペーパー用インク、化粧品、電子部品製造用スペーサー及び電気粘性流体等としても好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(a)を含有する被膜状の1層以上のシェル層(P)とポリオレフィン樹脂(b)を含有する1層のコア層(Q)とで構成され、(P)と(Q)の重量比率が(1:99)〜(70:30)であるコア・シェル型の樹脂粒子(C)が、20℃における比誘電率が1〜4の非親水性有機溶剤(L)中に分散されてなる樹脂粒子分散液(X)。
【請求項2】
(a)の(L)への溶解度が1重量%以下である請求項1記載の樹脂粒子分散液(X)。
【請求項3】
(a)が、(L)との溶解度パラメータの差が2(cal/cm1/2以下である分子鎖(k)を側鎖に有する樹脂である請求項1又は2記載の樹脂粒子分散液(X)。
【請求項4】
(a)が、分子鎖(k)を有するビニルモノマー(m)と必要により他のビニルモノマーとの(共)重合体骨格を有する樹脂である請求項3記載の樹脂粒子分散液(X)。
【請求項5】
(m)が、炭素数12〜27の直鎖状炭化水素鎖を有するビニルモノマー(m1)、炭素数12〜27の分岐状炭化水素鎖を有するビニルモノマー(m2)、ポリジメチルシロキサン鎖を有するビニルモノマー(m3)及び炭素数4〜20のフルオロアルキル鎖を有するビニルモノマー(m4)から選ばれる少なくとも1種である請求項4記載の樹脂粒子分散液(X)。
【請求項6】
(m)が(m1)及び(m2)を含有し、(m1)と(m2)の重量比が、(m1):(m2)=90:10〜10:90である請求項5記載の樹脂粒子分散液(X)。
【請求項7】
(m)が(m3)及び/又は(m4)を含有し、(C)の下記表面組成比が0.75〜0.98である請求項5又は6記載の樹脂粒子分散液(X)。
表面組成比:X線光電子分析で測定される元素強度に基づく、(C+Si+F)/(C+Si+F+O)の値
【請求項8】
(C)の円形度Rの平均値(平均円形度)が0.96〜1.0である請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂粒子分散液(X)。
【請求項9】
(Q)が、ワックス(c)及び/又はビニルポリマー鎖がグラフトした変性ワックス(d)を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂粒子分散液(X)。
【請求項10】
樹脂粒子(C)が、20℃における比誘電率が1〜4の非親水性有機溶剤(L)中に、樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)が分散されてなる非水系樹脂分散液(W)と、溶解度パラメータが8.5〜20(cal/cm1/2である有機溶剤(M)中にポリオレフィン樹脂(b)が溶解された溶剤溶液(O1)又は(M)中に(b)の前駆体(b0)が溶解された溶剤溶液(O2)とが混合され、(W)中に(O1)又は(O2)が分散され、(O2)を用いる場合には、更に(b0)が反応されて、(W)中で(b)を含有する樹脂粒子(B)が形成されることにより、樹脂粒子(B)の表面に樹脂粒子(A)が付着した構造の樹脂粒子(D)の樹脂粒子分散液(X1)が得られ、更に(X1)から(M)が留去され、(A)が被膜化されて、(B)で構成されるコア層(Q)の表面に(A)が被膜化されたシェル層(P)が形成されて得られたものである請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂粒子分散液(X)。
【請求項11】
塗料、電子写真用液体現像剤、静電記録用液体現像剤、インクジェットプリンタ用油性インク又は電子ペーパー用インク用である請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂粒子分散液(X)。
【請求項12】
20℃における比誘電率が1〜4の非親水性有機溶剤(L)中に、樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)が分散されてなる非水系樹脂分散液(W)と、溶解度パラメータが8.5〜20(cal/cm1/2である有機溶剤(M)中にポリオレフィン樹脂(b)が溶解された溶剤溶液(O1)又は(M)中に(b)の前駆体(b0)が溶解された溶剤溶液(O2)とを混合し、(W)中に(O1)又は(O2)を分散し、(O2)を用いる場合には、更に(b0)を反応させて、(W)中で(b)を含有する樹脂粒子(B)を形成させることにより、樹脂粒子(B)の表面に樹脂粒子(A)が付着した構造の樹脂粒子(D)の樹脂粒子分散液(X1)を得て、更に(X1)から(M)を留去し、(A)を被膜化して、(B)で構成されるコア層(Q)の表面に(A)が被膜化されたシェル層(P)が形成されて得られた樹脂粒子(C)が分散してなる樹脂粒子分散液(X)の製造方法。


【公開番号】特開2012−140567(P2012−140567A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1153(P2011−1153)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】