説明

樹脂粒子及びその製造方法

【課題】樹脂粒子が、本体の表面に、体積平均粒径が100nm以上500nm以下、粒度分布指標が1.40以上1.80以下、かつ、平均円形度が0.5以上0.85以下である一次粒子が、円形度と体積平均粒径(nm)とについて、式(1)で表される回帰直線を有するシリカ粒子を付着していない場合に比べ、流動性を維持する樹脂粒子を提供する。
【解決手段】樹脂粒子本体と、前記樹脂粒子本体の表面に付着したシリカ粒子であって、体積平均粒径が100nm以上500nm以下、粒度分布指標が1.40以上1.80以下、かつ、平均円形度が0.5以上0.85以下である一次粒子が、円形度と体積平均粒径(nm)とについて、下記式(1)で表される回帰直線を有するシリカ粒子と、を含む樹脂粒子。
円形度=α×体積平均粒径/1000+β (1)
(−2.5≦α≦−0.9、0.8≦β≦1.2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂粒子は、トナー、粉体塗料、スラッシュ成形材料等の結着剤等として用いられる。ここで、例えば、樹脂の強度や、粉体の流動性を向上させたり、パッキングを抑制するために、樹脂粒子にシリカ粒子を付着させて、樹脂粒子の機能化を図ることがある。かかる機能は、樹脂粒子の外添剤となるシリカ粒子の形状や付着状態に依存し易いと考えられ、種々の形状のシリカ粒子や付着態様が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、レベリング性を向上し、塗膜の薄膜化を達成するために、結着樹脂および硬化剤を含有し、体積平均粒径が5〜20μmである粉体粒子表面に、単位表面積当りの平衡吸着水分量が2×10−5g/m以下である疎水性シリカ微粉末を該粉体粒子100重量部に対して0.01〜5重量部付着させた構成の粉体塗料を提案している。
特許文献2では、塗膜からシリカ微粉末が脱離するのを防止するために、加熱(焼付)によって、シリカ表面の1.5個/nm以上の多量のシラノール基を、硬化剤であるポリイソシアネートと反応結着させて、シリカ微粉末を粉体粒子の表面に強固に付着することが提案されている。
【0004】
特許文献3では、粉末どうしのブロッキングを抑制するために、熱可塑性樹脂粉末組成物を、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(1)と、活性水素含有ポリブタジエン誘導体などを含む原料から誘導されたウレタン樹脂系分散剤(2)と、低分子ポリアミン(3)とから誘導される懸濁重合体(A)に、粒径20μm以下の無機系ブロッキング防止剤(B)を添加して構成することが示されている。
特許文献4では、粉末状ポリウレタン樹脂に特定量のシリカのエーロゾルを配合添加することにより流動性および耐ブロッキング性を改善することが示されている。
さらに、特許文献5では、スラッシュ成形用途に用いる樹脂粉末について、脂粉末の溶融性不良、成形物の金型からの離型性不良を減少させるために、熱可塑性樹脂粉末(B)を主体とし、体積平均粒径が10μm以下でありかつ細孔容積が1.5ml/g以下であるシリカ微粉末(A)を含有する組成物を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−283617号公報
【特許文献2】特開平9−143401号公報
【特許文献3】特開平4−255755号公報
【特許文献4】特開平6−41419号公報
【特許文献5】特開2006−28319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、樹脂粒子が、樹脂粒子本体の表面に、体積平均粒径が100nm以上500nm以下、粒度分布指標が1.40以上1.80以下、かつ、平均円形度が0.5以上0.85以下である一次粒子が、円形度と体積平均粒径(nm)とについて、式(1)で表される回帰直線を有するシリカ粒子を付着していない場合に比べ、流動性を維持する樹脂粒子を提供することを課題とし、これを解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
樹脂粒子本体と、
前記樹脂粒子本体の表面に付着したシリカ粒子であって、体積平均粒径が100nm以上500nm以下、粒度分布指標が1.40以上1.80以下、かつ、平均円形度が0.5以上0.85以下である一次粒子が、円形度と体積平均粒径(nm)とについて、下記式(1)で表される回帰直線を有するシリカ粒子と、
を含む樹脂粒子である。
【0008】
円形度=α×体積平均粒径/1000+β (1)
(−2.5≦α≦−0.9、0.8≦β≦1.2)
【0009】
請求項2に係る発明は、
アルコールを含む溶媒中に、0.6mol/L以上0.85mol/L以下の濃度でアルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備する工程と、
前記アルカリ触媒溶液中に、前記アルコールに対して、0.006mol/(mol・min)以上0.009mol/(mol・min)以下の供給量でテトラアルコキシシランを供給すると共に、前記テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対して、0.1mol以上0.4mol以下でアルカリ触媒を供給してシリカ粒子を得る工程と、
得られたシリカ粒子を樹脂粒子本体の表面に付着する工程と、
を有する樹脂粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、樹脂粒子が、樹脂粒子本体の表面に、体積平均粒径が100nm以上500nm以下、粒度分布指標が1.40以上1.80以下、かつ、平均円形度が0.5以上0.85以下である一次粒子が、円形度と体積平均粒径(nm)とについて、式(1)で表される回帰直線を有するシリカ粒子を付着していない場合に比べ、流動性を維持する樹脂粒子が提供される。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、上記工程で得られるシリカ粒子を、樹脂粒子本体の表面に付着しない場合に比べ、流動性を維持する樹脂粒子が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<樹脂粒子>
本実施形態に係る樹脂粒子は、樹脂粒子本体と、前記樹脂粒子本体の表面に付着したシリカ粒子であって、体積平均粒径が100nm以上500nm以下、粒度分布指標が1.40以上1.80以下、かつ、平均円形度が0.5以上0.85以下である一次粒子が、円形度と体積平均粒径(nm)とについて、下記式(1)で表される回帰直線を有するシリカ粒子と、を含む。
円形度=α×体積平均粒径/1000+β (1)
(−2.5≦α≦−0.9、0.8≦β≦1.2)
【0013】
樹脂粒子本体の表面に付着する上記構成のシリカ粒子を「特定シリカ粒子」とも称する。また、以下、単に「一次粒子」と称するときは、特定シリカ粒子の一次粒子を指すものとする。
「円形度」は、特定シリカ粒子の球の度合いを示し、円形度が1であるときに粒子が真球であることを示す。特定シリカ粒子は、一次粒子の形状が、平均円形度が0.85以下であり、真球に比べ凹凸の多い形状である。以下、円形度が0.85以下である形状を「異型状」と称し、円形度が0.85を超える形状を「球状」と称することがある。すなわち、特定シリカ粒子の形状は、異型状である。
【0014】
本実施形態に係る樹脂粒子を、樹脂粒子本体の表面に特定シリカ粒子が付着している樹脂粒子とすることで、樹脂粒子は流動性を維持する。なお、「樹脂粒子本体」とは、樹脂粒子のうち、特定シリカ粒子が付着していない樹脂粒子を指す。
本実施形態に係る樹脂粒子が流動性を維持する理由は定かではないが、次の理由によるものと考えられる。
【0015】
樹脂粒子本体の表面に付着する特定シリカ粒子は、既述の体積平均粒径の異型状の一次粒子が、分布幅の広い粒度分布で、なおかつ体積平均粒径が大きくなるにつれて、円形度が小さくなる(式(1))といった特性も持つシリカ粒子である。
つまり、特定シリカ粒子は、粒径が小さめで且つ円形度が大きめの一次粒子から、粒径が大きめで且つ円形度が小さめの一次粒子までを含む広い分布幅を有するシリカ粒子である。
ここで、シリカ粒子は、一般に、粒径が大きくなるにつれて、その流動性が良好になり、小さくなるにつれて、その流動性が悪化する傾向にある。一方で、シリカ粒子は、円形度が大きくなるにつれて、その流動性が良好になり、小さくなるにつれて、その流動性が悪化する傾向にある。
【0016】
特定シリカ粒子は、上記広い分布幅を有することで、粒子の群全体として異型状を保ったまま流動性が確保されるものと考えられ、樹脂粒子本体の表面に付着した場合において、外部から機械的負荷がかかっても、その流動性により特定シリカ粒子の樹脂粒子に対する負荷が分散されると考えられる。
また、本実施形態に係るシリカ粒子は、粒径が大きい程、円形度が小さくなることから、外部から機械的負荷を受けても、大きくて円形度の高いシリカ粒子に比べて、樹脂粒子表面の凹部への転がりによる移動や、脱離が起り難い為、樹脂粒子の流動性が確保されるものと考えられる。
【0017】
以上から、本実施形態に係る樹脂粒子に負荷を与えても、特定シリカ粒子が樹脂粒子本体に埋まり込みにくく、異型の形状を維持して樹脂粒子本体の表面に付着し、特定シリカ粒子が、樹脂粒子本体の表面の凹部への転がりによる移動や離脱が生じにくいため、流動性を維持するものと考えられる。
以下、本実施形態の樹脂粒子について詳細に説明する。
まず、樹脂粒子本体の表面に付着するシリカ粒子(特定シリカ粒子)について説明する。
【0018】
〔シリカ粒子(特定シリカ粒子)〕
樹脂粒子本体の表面に付着したシリカ粒子(特定シリカ粒子)は、体積平均粒径が100nm以上500nm以下、粒度分布指標が1.40以上1.80以下、かつ、平均円形度が0.5以上0.85以下である一次粒子が、円形度と体積平均粒径(nm)とについて、下記式(1)で表される回帰直線を有する。
円形度=α×体積平均粒径/1000+β (1)
(−2.5≦α≦−0.9、0.8≦β≦1.2)
【0019】
−体積平均粒径−
特定シリカ粒子は、一次粒子の体積平均粒径が100nm以上500nm以下である。
一次粒子の体積平均粒径が100nm未満では、粒子の形状が球形となり易く、円形度が0.5以上0.85以下の形状とし得ない。また、シリカ粒子を樹脂粒子に被覆する場合に、樹脂粒子本体の表面に分散しにくい。一次粒子の体積平均粒径が500nmを超えると、シリカ粒子に機械的負荷が加わった場合に、欠損し易い。また、シリカ粒子を樹脂粒子本体に付着した場合に、樹脂粒子の強度を向上しにくく、樹脂粒子の流動性を上げ難い。
【0020】
一次粒子の体積平均粒径は、100nm以上350nm以下であることが望ましく、100nm以上250nm以下であることがより望ましい。
【0021】
特定シリカ粒子の一次粒子の体積平均粒径は、体積平均粒径100μmの樹脂粒子本体(例えば、ポリエステル樹脂、重量平均分子量Mw=50000)に特定シリカ粒子を分散させた後の一次粒子100個をSEM(Scanning Electron Microscope)装置により観察し、一次粒子の画像解析によって得られた円相当径の累積頻度における50%径(D50v)を意味する。
【0022】
−粒度分布指標−
特定シリカ粒子は、一次粒子の粒度分布指標が1.4以上1.8以下である。
一次粒子の粒度分布指標が1.40未満であると、比較的単分散であるため、流動性もしくは樹脂粒子への埋まりこみ抑制の何れかの特性に偏り、両特性を満足することは難しい。一次粒子の粒度分布指標が1.80を超えると、粗大粒子が発生したり、体積平均粒径のばらつきにより樹脂粒子への分散性が悪化する為、望ましくない。
一次粒子の粒度分布指標は、1.45以上1.75以下であることが望ましい。
【0023】
特定シリカ粒子の一次粒子の粒度分布指標とは、体積平均粒径100μmの樹脂粒子本体(例えば、ポリエステル樹脂、重量平均分子量Mw=50000)に特定シリカ粒子を分散させた後の一次粒子100個をSEM装置により観察し、一次粒子の画像解析によって得られた円相当径の累積頻度において、84%径を16%径で除した値の平方根を意味する。
【0024】
−平均円形度−
特定シリカ粒子は、一次粒子の平均円形度が0.5以上0.85以下である。
一次粒子の平均円形度が0.85を超えると、一次粒子が球形に近くなる為、シリカ粒子を樹脂粒子本体の表面付着した際に、混合性や、樹脂粒子への密着性が悪く、機械的負荷に弱くなり、流動性を損なう。そのため、例えば、シリカ粒子と樹脂粒子とを混合し攪拌した場合や、経時保存後に、シリカ粒子が偏って樹脂粒子本体の表面に付着したり、樹脂粒子から脱離し得る。一次粒子の平均円形度が0.5未満であると、粒子の縦/横比が大きな形状となり、シリカ粒子に機械的負荷が加わった場合に応力集中が生じ、欠損し易くなる。なお、シリカ粒子をゾルゲル法により製造する場合は、一次粒子の平均円形度が0.5未満であるシリカ粒子は製造が困難である。
一次粒子の平均円形度は、0.6以上0.8以下であることが望ましい。
【0025】
なお、一次粒子の円形度は、体積平均粒径100μmの樹脂粒子本体(例えば、ポリエステル樹脂、重量平均分子量Mw=50000)に特定シリカ粒子を分散させた後の一次粒子を、SEM装置により観察し、得られた一次粒子の画像解析から、下記式(2)により算出される「100/SF2」として得られる。
円形度(100/SF2)=4π×(A/I) 式(2)
〔式(2)中、Iは画像上における一次粒子の周囲長を示し、Aは一次粒子の投影面積を表す。
一次粒子の平均円形度は、上記画像解析によって得られた一次粒子100個の円形度の累積頻度における50%円形度として得られる。
【0026】
−式(1)〔一次粒子の円形度と体積平均粒径との関係〕−
特定シリカ粒子は、既述の体積平均粒径、平均円形度、及び粒度分布指標を有する一次粒子が、一次粒子の円形度と体積平均粒径とについて、次の式(1)で表される回帰直線を有する。
円径度と体積平均粒径の式:円形度=α×体積平均粒径/1000+β 式(1)
(−2.5≦α≦−0.9、0.8≦β≦1.2)
【0027】
式(1)において、円形度及び体積平均粒径は、体積平均粒径100μmの樹脂粒子本体に特定シリカ粒子を分散させた後の一次粒子をSEM装置により観察し、画像解析によって測定された値であり、円形度は前記式(2)から算出する。
一次粒子の円形度が、体積平均粒径に対して、式(1)で算出される範囲より大きいと、流動性は良好であるが、樹脂粒子へ埋まり込み易くなり、一次粒子の円形度が、体積平均粒径に対して、式(1)で算出される範囲より小さいと、樹脂粒子へ埋まり込みにくくなるが、流動性を損なう。
【0028】
式(1)におけるα及びβは、特定シリカ粒子の一次粒子100個について、円形度に対する体積平均粒径を座標軸にプロットした際の回帰直線の傾き(α)及び切片(β)の値である。αが−2.5を下回ると体積平均粒径に対する円形度が低くなりすぎ、機械的負荷に対する粒子形状安定性が低下し、−0.9を上回ると体積平均粒径に対する円径度が大きくなりすぎ、樹脂粒子本体へ埋まり込み易くなる。また、βが0.8を下回ると体積平均粒径に対する円形度が低くなりすぎ、機械的負荷に対する粒子形状安定性が低下し、1.2を上回ると体積平均粒径に対する円径度が大きくなりすぎ、樹脂粒子本体へ埋まり込み易くなる。
αは−2以上−1以下(−2≦α≦−1)であることが望ましく、βは0.9以上1.1以下(0.9≦β≦1.1)であることが望ましい。
【0029】
(成分、表面処理)
特定シリカ粒子は、シリカ、すなわちSiOを主成分とする粒子であればよく、結晶性でも非晶性でもよい。また、水ガラスやアルコキシシラン等のケイ素化合物を原料に製造された粒子であってもよいし、石英を粉砕して得られる粒子であってもよい。
また、特定シリカ粒子の分散性の観点から、特定シリカ粒子表面は疎水化処理されていることが望ましい。例えば、特定シリカ粒子表面にアルキル基を結合することにより、特定シリカ粒子は疎水化される。そのためには、例えば、特定シリカ粒子にアルキル基を有する公知の有機珪素化合物を作用させればよい。疎水化処理の方法の詳細は後述する。
【0030】
〔樹脂粒子本体〕
特定シリカ粒子の付着対象となる樹脂粒子本体の成分および形状は、特に制限されないが、体積平均粒径が、2μm以上20μm以下であることが好ましい。
樹脂粒子本体の体積平均粒径が2μm以上であることで流動性の低下を抑制し得る。また、樹脂粒子本体の体積平均粒径が20μm以下であることで、本実施形態に係る樹脂粒子を粉体塗料やスラッシュ成形、記録材料の用途に用いた場合に、本実施形態に係る樹脂粒子を含有して形成される塗膜または画像の均一性が低下しにくい。
樹脂粒子本体の体積平均粒径は、3μm以上15μm以下であることがより好ましい。
【0031】
ここで、樹脂粒子本体の体積平均粒径は、コールターマルチサイザーII(コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(コールター社製)を使用して測定される。
【0032】
測定に際しては、分散剤として界面活性剤、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下の範囲で加える。これを電解液100mlないし150mlの中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーII型により、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2μm以上50μm以下の範囲にある粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
【0033】
このようにして測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を累積体積粒径D16v、累積数平均粒径D16p、累積50%となる粒径を累積体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を累積体積粒径D84v、累積数平均粒径D84pと定義する。
ここで、体積平均粒径は累積体積平均粒径D50vとして求められる。
【0034】
樹脂粒子本体は、樹脂を含有していればよい。以下、樹脂粒子本体が含有する樹脂を、「本体樹脂」とも称する。
本体樹脂は、各種の天然または合成高分子物質よりなる熱可塑性樹脂を用い得る。
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)等のポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のゴム状(共)重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ビニル芳香族樹脂、ポリビニル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、共役ジエン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂などが、単独または混合して用いられる。
【0035】
代表的には、重量平均分子量5,000以上10万以下のエポキシ樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂などが単独または混合して用いられる。
【0036】
本実施形態に係る樹脂粒子を、粉体塗料用途に適用する場合には、本体樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂が好適である。
【0037】
本実施形態に係る樹脂粒子を、スラッシュ成形用途に適用する場合には、本体樹脂としては、熱可塑性ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリレート系樹脂粉末、ビニル芳香族樹脂、及び共役ジエン樹脂が好適である。
【0038】
本実施形態に係る樹脂粒子を、記録材料(例えば、トナー)用途に適用する場合には、本体樹脂としては、ポリエステル樹脂、及びアクリル樹脂が好適である。
【0039】
樹脂粒子本体は、目的の用途に応じて、特定シリカ粒子以外の無機粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤をさらに含有(内添)していてもよい。
【0040】
樹脂粒子本体の表面に付着した特定シリカ粒子の付着量は、樹脂粒子本体の表面積に対する特定シリカ粒子の計算上の被覆率(「計算被覆率」とも称する)が5%以上80%以下となる範囲であることが好ましい。
計算被覆率(%)は、樹脂粒子本体の添加量をA(g)、樹脂粒子本体の比重をB(g/cm)、樹脂粒子本体の体積平均粒径をC(μm)、特定シリカ粒子の添加量をD(g)、特定シリカ粒子の比重をE(g/cm)、特定シリカ粒子の体積平均粒径をF(nm)とした場合、〔(√3×B×C×D/(2×π×F×E×0.001×A))×100〕として算出される。
【0041】
計算被覆率が、5%以上であることで、本実施形態に係る樹脂粒子の流動性の低下を抑制し、80%以下であることで特定シリカの離脱による汚染等各種障害の回避が可能である。
特定シリカ粒子の付着量は、計算被覆率が30%以上70%以下となる範囲であることがより好ましい。
【0042】
(用途)
本実施形態に係る樹脂粒子は、攪拌等の機械的負荷に対しても異型形状を維持し易く、樹脂粒子本体に埋まり込みにくい異型状の特定シリカ粒子を、樹脂粒子本体の表面に付着しており、当該特定シリカ粒子が樹脂粒子本体の表面から遊離しにくい。そのため、樹脂粒子の流動性に優れ、流動性が維持されることから、粉体塗料、トナーに代表される記録材料等の種々の用途に適用し得る。また、加熱された成形金型に樹脂粒子を流し込んで溶融成形する、いわゆるスラッシュ成形(パウダースラッシュ成形ともいう)用途にも適用し得る。
【0043】
<樹脂粒子の製造方法>
本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法は、既述の物性を有する特定シリカ粒子を、樹脂粒子本体の表面に付着することにより製造し得る。
また、特定シリカ粒子の製造方法は、得られるシリカ粒子が、既述の物性、すなわち、体積平均粒径が100nm以上500nm以下、粒度分布指標が1.40以上1.80以下、かつ、平均円形度が0.5以上0.85以下である一次粒子が、円形度と体積平均粒径(nm)とについて、前記式(1)で表される回帰直線を有するものであれば、特に制限されない。
例えば、体積平均粒径が500nmを超えるシリカ粒子を粉砕し、分級する乾式方法によって得てもよいし、アルコキシシランに代表されるケイ素化合物を原料とし、ゾルゲル法によって粒子を生成する、いわゆる湿式方法によって特定シリカ粒子を製造してもよい。湿式方法としては、ゾルゲル法のほかに、水ガラスを原料としてシリカゾルを得る方法もある。
【0044】
本実施形態に係る樹脂粒子は、樹脂粒子本体表面に、体積平均粒径が100nm以上500nm以下、粒度分布指標が1.40以上1.80以下、かつ、平均円形度が0.5以上0.85以下である一次粒子が、円形度と体積平均粒径(nm)とについて、式(1)で表される回帰直線を有する特定シリカ粒子を付着しているものであるため、かかる諸物性を有する特定シリカ粒子を付着する樹脂粒子を製造するには、次の工程を有する本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法によることが望ましい。
【0045】
本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法は、アルコールを含む溶媒中に、0.6mol/L以上0.85mol/L以下の濃度でアルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備する工程(「アルカリ触媒溶液準備工程」ともいう)と、前記アルカリ触媒溶液中に、前記アルコールに対して、0.006mol/(mol・min)以上0.009mol/(mol・min)以下の供給量でテトラアルコキシシランを供給すると共に、前記テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対して、0.1mol以上0.4mol以下でアルカリ触媒を供給してシリカ粒子(特定シリカ粒子)を得る工程(「シリカ粒子生成工程」ともいう)と、得られたシリカ粒子(特定シリカ粒子)を樹脂粒子本体の表面に付着する工程(「シリカ粒子付着工程」ともいう)と、
を有する。
【0046】
つまり、本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法では、上記濃度のアルカリ触媒が含まれるアルコールの存在下に、原料であるテトラアルコキシシランと、別途、触媒であるアルカリ触媒と、をそれぞれ上記関係で供給しつつ、テトラアルコキシシランを反応させて、特定シリカ粒子を生成すると共に、生成した特定シリカ粒子を、樹脂粒子の樹脂粒子本体表面に付着する方法である。
本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法では、上記手法により、粗大凝集物の発生が少なく、異型状の特定シリカ粒子が得られる。この理由は、定かではないが以下の理由によるものと考えられる。
【0047】
まず、アルコールを含む溶媒中に、アルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備し、この溶液中にテトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給すると、アルカリ触媒溶液中に供給されたテトラアルコキシシランが反応して、核粒子が生成される。このとき、アルカリ触媒溶液中のアルカリ触媒濃度が上記範囲にあると、2次凝集物等の粗大凝集物の生成を抑制しつつ、異型状の核粒子が生成すると考えられる。これは、アルカリ触媒は、触媒作用の他に、生成される核粒子の表面に配位し、核粒子の形状、分散安定性に寄与するが、その量が上記範囲内であると、アルカリ触媒が核粒子の表面を均一に覆わないため(つまりアルカリ触媒が核粒子の表面に偏在して付着するため)、核粒子の分散安定性は保持するものの、核粒子の表面張力及び化学的親和性に部分的な偏りが生じ、異型状の核粒子が生成されると考えられるためである。
そして、テトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給をそれぞれ続けていくと、テトラアルコキシシランの反応により、生成した核粒子が成長し、シリカ粒子が得られる。ここで、このテトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給を、その供給量を上記関係で維持しつつ行うことで、2次凝集物等の粗大凝集物の生成を抑制しつつ、異型状の核粒子がその異型状を保ったまま粒子成長し、結果、異型状のシリカ粒子が生成されると考えられる。これは、このテトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給量を上記関係とすることで、核粒子の分散を保持しつつも、核粒子表面における張力と化学的親和性の部分的な偏りが保持されることから、異型状を保ちながらの核粒子の粒子成長が生じると考えられるためである。
【0048】
ここで、テトラアルコキシシランの供給量は、シリカ粒子の粒度分布や円形度に関係すると考えられる。テトラアルコキシシランの供給量を、0.006mol/(mol・min)以上0.009mol/(mol・min)以下とすることで、粒子成長段階におけるテトラアルコキシシランと核粒子との接触確率を上げ、テトラアルコキシシランが核粒子に偏りなく供給される前に、テトラアルコキシシランと核粒子との反応を生じさせ得ると考えられる。つまり、テトラアルコキシシランと核粒子との反応が偏ると考えられる。そのため、核粒子へのテトラアルコキシシランの供給の偏在化を助長し、粒子成長のバラツキをもたらすと考えられる。そのため、シリカ粒子の体積平均粒径、形状分布が拡大するものと推察される。
従って、テトラアルコキシシランの供給量を上記範囲とすることで、式(1)で表される回帰直線を有し、粒度分布指標が1.40以上1.80以下、平均円形度が0.5以上0.85以下の異型状の一次粒子が生成され易くなると考えられる。
なお、シリカ粒子の体積平均粒径は、テトラアルコキシシランの総供給量に依存すると考えられる。
【0049】
以上から、本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法では、粗大凝集物の発生が少なく、一次粒子が式(1)で表される回帰直線を有し、粒度分布指標が1.40以上1.80以下、平均円形度が0.5以上0.85以下の異型状のシリカ粒子(特定シリカ粒子)が得られると考えられる。
上記方法で得た特定シリカ粒子を、樹脂粒子本体の表面に付着することで、流動性が維持された樹脂粒子を製造し得る。
【0050】
また、本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法におけるアルカリ触媒溶液準備工程及びシリカ粒子生成工程(両工程を総じて「特定シリカ粒子製造工程」とも称する)では、異型状の核粒子を生成させ、この異型状を保ったまま核粒子を成長させてシリカ粒子が生成されると考えられることから、機械的負荷に対する形状安定性が高い異型状のシリカ粒子が得られると考えられる。
また、特定シリカ粒子製造工程では、生成した異型状の核粒子が異型状を保ったまま粒子成長され、シリカ粒子が得られると考えられることから、機械的負荷に強く、壊れ難いシリカ粒子が得られると考えられる。
また、特定シリカ粒子製造工程では、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給し、テトラアルコキシシランの反応を生じさせることで、粒子生成を行っていることから、従来のゾルゲル法により異型状のシリカ粒子を製造する場合に比べ、総使用アルカリ触媒量が少なくなり、その結果、アルカリ触媒の除去工程の省略も実現される。これは、特に、高純度が求められる製品にシリカ粒子を適用する場合に有利である。
【0051】
−アルカリ触媒溶液準備工程−
まず、アルカリ触媒溶液準備工程について説明する。
アルカリ触媒溶液準備工程は、アルコールを含む溶媒を準備し、これにアルカリ触媒を添加して、アルカリ触媒溶液を準備する。
【0052】
アルコールを含む溶媒は、アルコール単独の溶媒であってもよいし、必要に応じて水;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の他の溶媒との混合溶媒であってもよい。混合溶媒の場合、アルコールの他の溶媒に対する量は80質量%以上(望ましくは90質量%以上)であることがよい。
なお、アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられる。
【0053】
一方、アルカリ触媒としては、テトラアルコキシシランの反応(加水分解反応、縮合反応)を促進させるための触媒であり、例えば、アンモニア、尿素、モノアミン、四級アンモニウム塩等の塩基性触媒が挙げられ、特にアンモニアが望ましい。
【0054】
アルカリ触媒の濃度(含有量)は、0.6mol/L以上0.85mol/Lであり、望ましくは0.63mol/L以上0.78mol/Lであり、より望ましくは0.66mol/L以上0.75mol/Lである。
アルカリ触媒の濃度が、0.6mol/Lより少ないと、生成した核粒子の成長過程の核粒子の分散性が不安定となり、2次凝集物等の粗大凝集物が生成されたり、ゲル化状となったりして、粒度分布が悪化することがある。
一方、アルカリ触媒の濃度が、0.85mol/Lより多いと、生成した核粒子の安定性が過大となり、真球状の核粒子が生成され、平均円形度が0.85以下の異型状の核粒子が得られず、その結果、異型状の特定シリカ粒子が得られない。
なお、アルカリ触媒の濃度は、アルコール触媒溶液(アルカリ触媒+アルコールを含む溶媒)に対する濃度である。
【0055】
−シリカ粒子生成工程−
次に、シリカ粒子生成工程について説明する。
シリカ粒子生成工程は、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランと、アルカリ触媒と、をそれぞれ供給し、当該アルカリ触媒溶液中で、テトラアルコキシシランを反応(加水分解反応、縮合反応)させて、シリカ粒子を生成する工程である。
このシリカ粒子生成工程では、テトラアルコキシシランの供給初期に、テトラアルコキシシランの反応により、核粒子が生成した後(核粒子生成段階)、この核粒子の成長を経て(核粒子成長段階)、シリカ粒子が生成する。
【0056】
アルカリ触媒溶液中に供給するテトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられるが、反応速度の制御性や得られるシリカ粒子の形状、体積平均粒径、粒度分布等の点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランがよい。
【0057】
テトラアルコキシシランの供給量は、アルカリ触媒溶液中のアルコールに対して、0.006mol/(mol・min)以上0.009mol/(mol・min)以下とする。
これは、アルカリ触媒溶液を準備する工程で用いたアルコール1molに対して、1分間当たり0.006mol以上0.009mol以下の供給量でテトラアルコキシシランを供給することを意味する。
テトラアルコキシシランの供給量を上記範囲とすることで、式(1)で表される回帰直線を有し、一次粒子の粒度分布指標を1.40以上1.80以下とし、平均円形度が0.5以上0.85以下の異型状のシリカ粒子が、高い割合(例えば95個数%以上)で生成され易くなる。
なお、シリカ粒子の体積平均粒径については、テトラアルコキシシランの種類や、反応条件にもよるが、粒子生成の反応に用いるテトラアルコキシシランの総供給量を、例えばシリカ粒子分散液1Lに対し1.08mol以上とすることで、体積平均粒径が100nm以上の一次粒子が得られ、シリカ粒子分散液1Lに対し5.49mol以下とすることで、体積平均粒径が500nm以下の一次粒子が得られる。
【0058】
テトラアルコキシシランの供給量が、0.006mol/(mol・min)より少ないと、核粒子とテトラアルコキシシランとの反応前に、核粒子にテトラアルコキシシランが偏りなく供給され得るため、体積平均粒径と形状共に偏りがなく、類似の形状のシリカ粒子が生成するため、分布がシャープな粒子が形成されると考えられる。
テトラアルコキシシランの供給量が0.009mol/(mol・min)より多いと、核粒子形成段階におけるテトラアルコキシシラン同士の反応や、粒子成長におけるテトラアルコキシシランと核粒子との反応に対する供給量が過大となり、反応系がゲル化し易く、核粒子形成及び粒子成長を阻害するためである。
【0059】
テトラアルコキシシランの供給量は、0.0065mol/(mol・min)以上0.0085mol/(mol・min)以下が望ましく、より望ましくは、0.007mol/(mol・min)以上0.008mol/(mol・min)以下である。
【0060】
一方、アルカリ触媒溶液中に供給するアルカリ触媒は、上記例示したものが挙げられる。この供給するアルカリ触媒は、アルカリ触媒溶液中に予め含まれるアルカリ触媒と同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよいが、同じ種類のものであることがよい。
【0061】
アルカリ触媒の供給量は、テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対して、0.1mol以上0.4mol以下とし、望ましくは0.14mol以上0.35mol以下であり、より望ましくは0.18mol以上0.30mol以上である。
アルカリ触媒の供給量が、0.1molより少ないと、生成した核粒子の成長過程の核粒子の分散性が不安定となり、2次凝集物等の粗大凝集物が生成さたり、ゲル化状となったりして、粒度分布が悪化することがある。
一方、アルカリ触媒の供給量が、0.4molより多いと、生成した核粒子の安定性が過大となり、核粒子生成段階で異型状の核粒子が生成されても、その核粒子成長段階で核粒子が球状に成長し、異型状のシリカ粒子が得られない。
【0062】
ここで、シリカ粒子生成工程において、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランと、アルカリ触媒と、をそれぞれ供給するが、この供給方法は、連続的に供給する方式であってもよいし、間欠的に供給する方式であってもよい。
【0063】
また、シリカ粒子生成工程において、アルカリ触媒溶液中の温度(供給時の温度)は、例えば、5℃以上50℃以下であることがよく、望ましくは15℃以上40℃以下の範囲である。
【0064】
以上の工程を経て、特定シリカ粒子が得られる。この状態で、得られる特定シリカ粒子は、分散液の状態で得られるが、そのままシリカ粒子分散液として用いてもよいし、溶媒を除去してシリカ粒子の粉体として取り出して用いてもよい。
【0065】
シリカ粒子分散液として用いる場合は、必要に応じて水やアルコールで希釈したり濃縮することによりシリカ粒子固形分濃度の調整を行ってもよい。また、シリカ粒子分散液は、その他のアルコール類、エステル類、ケトン類などの水溶性有機溶媒などに溶媒置換して用いてもよい。
【0066】
一方、シリカ粒子の粉体として用いる場合、シリカ粒子分散液からの溶媒を除去する必要があるが、この溶媒除去方法としては、1)濾過、遠心分離、蒸留などにより溶媒を除去した後、真空乾燥機、棚段乾燥機などにより乾燥する方法、2)流動層乾燥機、スプレードライヤーなどによりスラリーを直接乾燥する方法など、公知の方法が挙げられる。乾燥温度は、特に限定されないが、望ましくは200℃以下である。200℃より高いとシリカ粒子表面に残存するシラノール基の縮合による一次粒子同士の結合や粗大粒子の発生が起こり易くなる。
乾燥されたシリカ粒子は、必要に応じて解砕、篩分により、粗大粒子や凝集物の除去を行うことがよい。解砕方法は、特に限定されないが、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、ピンミルなどの乾式粉砕装置により行う。篩分方法は、例えば、振動篩、風力篩分機など公知のものにより行う。
【0067】
特定シリカ粒子製造工程により得られる特定シリカ粒子は、疎水化処理剤により特定シリカ粒子の表面を疎水化処理して用いていてもよい。
疎水化処理剤としては、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を有する公知の有機珪素化合物が挙げられ、具体例には、例えば、シラザン化合物(例えば、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等)、シラン化合物(メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン等)等が挙げられる。疎水化処理剤は、1種で用いてもよいし、複数種用いてもよい。
これら疎水化処理剤の中も、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのトリメチル構造を有する有機珪素化合物が好適である。
【0068】
疎水化処理剤の使用量は、特に限定はされないが、疎水化の効果を得るためには、例えば、特定シリカ粒子に対し、1質量%以上100質量%以下、望ましくは5質量%以上80質量%以下である。
【0069】
疎水化処理剤による疎水化処理が施された疎水性シリカ粒子分散液を得る方法としては、例えば、特定シリカが分散したシリカ粒子分散液に疎水化処理剤を必要量添加し、攪拌下において30℃以上80℃以下の温度範囲で反応させることで、特定シリカ粒子に疎水化処理を施し、疎水性シリカ粒子分散液を得る方法が挙げられる。この反応温度が30℃より低温では疎水化反応が進行し難く、80℃を越えた温度では疎水化処理剤の自己縮合による分散液のゲル化やシリカ粒子同士の凝集などが起り易くなることがある。
【0070】
一方、粉体の疎水性シリカ粒子を得る方法としては、上記方法で疎水性シリカ粒子分散液を得た後、上記方法で乾燥して疎水性シリカ粒子の粉体を得る方法、シリカ粒子分散液を乾燥して親水性シリカ粒子の粉体を得た後、疎水化処理剤を添加して疎水化処理を施し、疎水性シリカ粒子の粉体を得る方法、疎水性シリカ粒子分散液を得た後、乾燥して疎水性シリカ粒子の粉体を得た後、更に疎水化処理剤を添加して疎水化処理を施し、疎水性シリカ粒子の粉体を得る方法等が挙げられる。
ここで、粉体の特定シリカ粒子を疎水化処理する方法としては、ヘンシェルミキサーや流動床などの処理槽内で粉体の親水性シリカ粒子を攪拌し、そこに疎水化処理剤を加え、処理槽内を加熱することで疎水化処理剤をガス化して粉体の特定シリカ粒子の表面のシラノール基と反応させる方法が挙げられる。処理温度は、特に限定されないが、例えば、80℃以上300℃以下がよく、望ましくは120℃以上200℃以下である。
【0071】
−シリカ粒子付着工程−
シリカ粒子付着工程では、シリカ粒子生成工程で得られたシリカ粒子(特定シリカ粒子)を、樹脂粒子本体の表面に付着する。
特定シリカ粒子を樹脂粒子本体表面に付着させる方法としては、例えば、特定シリカ粒子と、樹脂粒子と、必要に応じて付着する成分とをV型ブレンダーやヘンシェルミキサー、レディゲミキサー等に添加して攪拌する方法が挙げられ、段階を分けて特定シリカ粒子を樹脂粒子本体表面に付着させてもよい。
【0072】
本実施形態に係る樹脂粒子は、既述のとおり、樹脂粒子本体表面に計算被覆率が5%以上80%以下となる範囲で特定シリカ粒子を付着していることが好ましい。
特定シリカ粒子の付着量を上記範囲とするには、V型ブレンダーやヘンシェルミキサー、レディゲミキサー等には、樹脂粒子本体の全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下の特定シリカ粒子を添加すればよい。
【0073】
(樹脂粒子本体の製造)
樹脂粒子本体は、例えば、本体樹脂を、熱溶融混練した後、粉砕、分級する方法(混練粉砕法)、本体樹脂を水溶性有機溶剤に溶解した油相を、分散剤を含む水相中にて懸濁分散した後、溶剤を除去する方法(溶解懸濁法)、本体樹脂モノマーから乳化重合等にて得られた本体樹脂を、凝集させて粒子化する方法(乳化重合凝集法)で樹脂粒子本体を製造してもよい。
樹脂粒子本体に、無機粒子等の前記各成分を含有させる場合は、予め、本体樹脂と前記各成分とを混合しておけばよい。乳化重合凝集法による場合は、本体樹脂モノマーと前記各成分とを混合して乳化重合しておけばよい。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。また、「部」、「%」は、特に断りがない限り、質量基準である。
【0075】
〔実施例1〕
(シリカ粒子の製造)
−アルカリ触媒溶液準備工程〔アルカリ触媒溶液(1)の調製〕−
攪拌翼、滴下ノズル、温度計を有した容積2Lのガラス製反応容器にメタノール300g、10%アンモニア水50gを入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液(1)を得た。こときのアルカリ触媒溶液(1)のアンモニア触媒量:NH量(NH〔mol〕/(NH+メタノール+水)〔L〕)は、0.68mol/Lであった。
【0076】
−シリカ粒子生成工程〔シリカ粒子懸濁液(1)の調製〕−
次に、アルカリ触媒溶液(1)の温度を25℃に調整し、アルカリ触媒溶液(1)を窒素置換した。その後、アルカリ触媒溶液(1)を120rpmで撹拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)450gと、触媒(NH)濃度が4.44質量%のアンモニア水270gとを、下記供給量で、同時に滴下を開始し、50分かけて滴下を行い、シリカ粒子の懸濁液(シリカ粒子懸濁液(1))を得た。
【0077】
ここで、テトラメトキシシラン(TMOS)の供給量は、アルカリ触媒溶液(1)中のメタノール総mol数に対して、9g/min、すなわち、0.0063mol/(mol・min)とした。また、4.44%アンモニア水の供給量は、テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量(0.0592mol/min)に対して、5.4g/minとした。これは、テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1molに対して0.24mol/minに相当する。
【0078】
その後、得られたシリカ粒子懸濁液(1)の溶媒を加熱蒸留により250g留去し、純水を250g加えた後、凍結乾燥機により乾燥を行い、異型状の親水性シリカ粒子(1)を得た。
【0079】
−シリカ粒子の疎水化処理−
さらに、親水性シリカ粒子(1)100gにトリメチルシラン20gを添加し、150℃で2時間反応させ、シリカ表面が疎水化処理された異型状の疎水性シリカ粒子(1)を得た。
【0080】
<シリカ粒子の物性>
得られた疎水性シリカ粒子(1)を、体積平均粒径100μmの樹脂粒子に添加し、疎水性シリカ粒子(1)の一次粒子100個についてSEM写真撮影を行った。次に、得られたSEM写真に対して、画像解析を行った結果、疎水性シリカ粒子(1)の一次粒子は、体積平均粒径(D50v)が180nm、粒度分布指標が1.52、平均円形度[100/SF2]は0.58である異型粒子であり、かつ、SEM写真撮影を行った疎水性シリカ粒子(1)の一次粒子100個のうち、99個が式(1)を満たしていた。
SEM写真撮影を行った疎水性シリカ粒子(1)の一次粒子100個について、縦軸に円形度、横軸に体積平均粒径をとってプロットした点から得られた回帰直線は、αが−2.1であり、βが1.1であった。
【0081】
−シリカ粒子付着工程−
(本体樹脂の製造)
撹拌機、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管を備えた反応容器中に、下記成分を投入した。
・テレフタル酸ジメチル ・・・・23mol%
・イソフタル酸 ・・・・10mol%
・ドデセニルコハク酸無水物 ・・・・15mol%
・トリメリット酸無水物 ・・・・・3mol%
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物・・・・・5mol%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物・・・45mol%
【0082】
次いで、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、触媒としてジブチルスズオキシド0.06mol%の割合で加え、窒素ガス気流下、各成分を190℃で7時間撹拌反応させた。
さらに、反応容器中の温度を約250℃に上げて、5.0時間撹拌反応させた後、反応容器内を10.0mmHgまで減圧した。減圧下で0.5時間攪拌反応させて、分子内に極性基を有する非晶性ポリエステル樹脂(本体樹脂(1))を得た。
【0083】
(樹脂粒子本体の製造)
得られた非晶性ポリエステル樹脂(本体樹脂(1))100質量部を、バンバリーミキサー型混練機で溶融混練した。混練物を、圧延ロールで厚さ1cmの板状に成形し、フィッツミル型粉砕機で数ミリ程度まで粗粉砕し、IDS型粉砕機で、より小さく粉砕し、さらにエルボー型分級機で分級をして、体積平均粒径7μmの不定形の樹脂粒子本体(1)を得た。
【0084】
(シリカ粒子の付着)
得られた体積平均粒径7μmの樹脂粒子本体(1)20gに、疎水性シリカ粒子(1)を、表1の「粒子付着工程」「シリカ粒子」「被覆率[%]」に示す量(50%)となるように添加し、0.4Lサンプルミルにて15000rpmで30秒間混合し、疎水性シリカ粒子(1)が付着した樹脂粒子(1)を得た。
この際、樹脂粒子本体(1)と疎水性シリカ粒子(1)とを、樹脂粒子本体(1):疎水性シリカ粒子(1)=20:1.33(質量基準)で、サンプルミルに添加した。
【0085】
<樹脂粒子の評価>
得られた樹脂粒子(1)について、諸特性を評価したところ、疎水性シリカ粒子(1)を付着している樹脂粒子(1)は、流動性に優れ、撹拌などの機械的負荷を受けた後も疎水性シリカ粒子(1)が樹脂粒子本体表面に埋没せずに、流動性を維持した。
なお、樹脂粒子(1)の諸特性の評価方法の詳細は次のとおりである。
【0086】
(シリカ粒子の分散性評価)
樹脂粒子(1)について、SEM装置により樹脂粒子(1)の表面を観察した。更に画像解析により疎水性シリカ粒子(1)の付着面積を測定し、疎水性シリカ粒子(1)の被覆率を算出して、下記評価基準に基づいて評価した。
−評価基準(分散性)−
○:シリカ粒子が、被覆率45%以上で、偏在せずに樹脂粒子本体表面に付着し、凝集体も殆ど見られない。
△:わずかにシリカ粒子の凝集体が見られるものの、シリカ粒子が、被覆率40%以上45%未満で、偏在せずに樹脂粒子本体表面に付着している。
×:シリカ粒子の凝集体が散見され、かつ、樹脂粒子本体表面のシリカ粒子の被覆率が40%未満で、分散不良である。
【0087】
(機械的負荷を与えた後のシリカ埋没性評価)
樹脂粒子に機械的負荷をかけた後のシリカ粒子の埋没性(耐埋没性の維持性)について評価した。具体的には、次のようにして評価した。
樹脂粒子(1)5gと、100μmの鉄粉200gとをガラス瓶に入れ、ターブラ振とう機で60分間混合した。その後、SEM装置により樹脂粒子(1)表面の観察を行い、更に画像解析により疎水性シリカ粒子(1)の埋没状態を観察して、下記基準に基づいて評価した。
−評価基準(埋没性)−
○:埋没していないシリカ粒子が30個数%以上残存している。
△:埋没していないシリカ粒子が5個数%以上30個数%未満残存している。
×:埋没していないシリカ粒子の残存量は5%未満である。
【0088】
(機械的負荷を与えた後のシリカ脱離性評価)
樹脂粒子に機械的負荷をかけた後のシリカ粒子の脱離性(耐脱離性の維持性)について評価した。具体的には、次のようにして評価した。
樹脂粒子(1)5gと、100μmの鉄粉200gとをガラス瓶に入れ、ターブラ振とう機で60分間混合した後、鉄粉に移行した疎水性シリカ粒子(1)の量を蛍光X線で分析し、下記基準に基づいて評価した。
−評価基準(脱離性)−
○:樹脂粒子から鉄粉へのシリカ移行量が5質量%未満である。
△:樹脂粒子から鉄粉へのシリカ移行量が5質量%以上10質量%未満である。
×:樹脂粒子から鉄粉へのシリカ移行量が10質量%以上である。
【0089】
(機械的負荷を与えた後の樹脂粒子流動性評価)
樹脂粒子に機械的負荷をかけた後のシリカ粒子の流動性(流動性の維持性)について評価した。具体的には、次のようにして評価した。
樹脂粒子(1)5gと、100μmの鉄粉200gとをガラス瓶に入れ、ターブラ振で60分間混合した後に、孔径が75μmの篩で鉄粉を取り除いた。その後、篩下の樹脂粒子(1)2gを45μmの篩にのせ、振幅1mmで90秒間振動させて、樹脂粒子(1)の落下の様子を観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
凝集度(%)=45μm網上質量(g)÷2×100
−評価基準(流動性)−
○:凝集度が20%未満
△:凝集度が20%以上50%未満
×:凝集度が50%以上
【0090】
疎水性シリカ粒子(1)および樹脂粒子(1)の製造条件、物性、及び評価結果を表1及び2に示す。
【0091】
〔実施例2〜実施例6、及び、比較例1〜比較例7〕
(シリカ粒子の製造)
アルカリ触媒溶液(1)の調製において、10%アンモニア水「50g」を、表1の「被添加成分」「10%アンモニア水」「質量(g)」欄に示す量とした他は同様にして、アルカリ触媒溶液(2)〜アルカリ触媒溶液(6)、及び、アルカリ触媒溶液(101)〜アルカリ触媒溶液(107)を調製した。
上記調製後のアルカリ触媒溶液(2)〜アルカリ触媒溶液(6)、及び、アルカリ触媒溶液(101)〜アルカリ触媒溶液(107)中の各触媒量:NH量を、表1の「被添加成分」「10%アンモニア水」「NH量[mol/L]」欄に示した。
【0092】
次いで、シリカ粒子懸濁液(1)の調製において、アルカリ触媒溶液(1)の代わりにアルカリ触媒溶液(2)〜アルカリ触媒溶液(6)、または、アルカリ触媒溶液(101)〜アルカリ触媒溶液(107)を用い、アルカリ触媒溶液に添加するテトラメトキシシランの量及び供給量と、アルカリ触媒溶液に添加するアンモニア水の触媒濃度、量、及び供給量とを、表1に示す量に変更したほかは、同様にしてシリカ粒子懸濁液(2)〜シリカ粒子懸濁液(6)、及び、シリカ粒子懸濁液(101)〜シリカ粒子懸濁液(107)の調製を試みた。
【0093】
具体的には、アルカリ触媒溶液に添加するテトラメトキシシランの量及び供給量については、テトラメトキシシランの量「450g」を表1の「全添加量」「TMOS」「質量[g]」欄に示す量に変更し、テトラメトキシシランの供給量「9g/min」を表1の「供給量[g/min]」「TMOS」欄に示す量に変更した。
【0094】
アルカリ触媒溶液に添加するアンモニア水の触媒濃度、量、及び供給量については、アンモニア水の触媒濃度「4.44%」を表1の「全添加量」「アンモニア水」「NH濃度[%]」欄に示す量に変更し、アンモニア水の量「270g」を表1の「全添加量」「アンモニア水」「質量[g]」欄に示す量に変更し、アンモニア水の供給量「5.4g/min」を表1の「供給量[g/min]」「アンモニア水」欄に示す量に変更した。
【0095】
ここで、アルカリ触媒溶液(2)〜アルカリ触媒溶液(6)、及び、アルカリ触媒溶液(101)〜アルカリ触媒溶液(107)へのアンモニア触媒の供給量であって、テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1molに対する量を、表1の「相対量」「NH量[mol/min](対TMOS)」欄に示した。
また、アルカリ触媒溶液(2)〜アルカリ触媒溶液(6)、及び、アルカリ触媒溶液(101)〜アルカリ触媒溶液(107)へのテトラアルコキシシラン(TMOS)の供給量であって、アルカリ触媒溶液(2)〜アルカリ触媒溶液(6)、及び、アルカリ触媒溶液(101)〜アルカリ触媒溶液(107)中のメタノール1molに対する量を、表1の「相対量」「TMOS量[mol/(mol・min)](対メタノール)」欄に示した。
【0096】
得られたシリカ粒子懸濁液(2)〜シリカ粒子懸濁液(6)、シリカ粒子懸濁液(101)〜シリカ粒子懸濁液(104)、及びシリカ粒子懸濁液(107)について、シリカ粒子懸濁液(1)と同様にして溶媒を留去し、乾燥して、親水性シリカ粒子(2)〜親水性シリカ粒子(6)、親水性シリカ粒子(101)〜親水性シリカ粒子(104)、及び親水性シリカ粒子(107)を得た。
なお、比較例5のシリカ粒子懸濁液(105)及び比較例6のシリカ粒子懸濁液(106)については、シリカ粒子生成工程中に液状がゲル状になり、親水性シリカ粒子が得られなかった。
【0097】
さらに、親水性シリカ粒子(2)〜親水性シリカ粒子(5)、親水性シリカ粒子(101)〜親水性シリカ粒子(104)、及び親水性シリカ粒子(107)を、実施例1と同様にして疎水化処理して、疎水性シリカ粒子(2)〜疎水性シリカ粒子(5)、疎水性シリカ粒子(101)〜疎水性シリカ粒子(104)、及び疎水性シリカ粒子(107)を得た。
【0098】
得られた疎水性シリカ粒子(2)〜疎水性シリカ粒子(5)、疎水性シリカ粒子(101)〜疎水性シリカ粒子(104)、及び疎水性シリカ粒子(107)、並びに親水性シリカ粒子(6)を、疎水性シリカ粒子(1)と同様にしてSEM写真観察し、画像解析を行なった。画像解析により得られた各一次粒子の体積平均粒径(D50v)、粒度分布指標、平均円形度[100/SF2]を、表2の「一次粒子特徴」欄に示した。
また、得られたシリカ粒子の疎水性/親水性の別、および形状を、表2の「一次粒子の特徴」「親/疎水性、形状」欄に示した。疎水異型とは、シリカ粒子が異型状の疎水性シリカ粒子であることを示し、親水異型とは、シリカ粒子が異型状の親水性シリカ粒子であることを示し、疎水球形とは、シリカ粒子が球形状の疎水性シリカ粒子であることを示す。
【0099】
得られた疎水性シリカ粒子(2)〜疎水性シリカ粒子(5)、疎水性シリカ粒子(101)〜疎水性シリカ粒子(104)、及び疎水性シリカ粒子(107)、並びに親水性シリカ粒子(6)において、SEM写真撮影を行った各シリカ粒子の一次粒子100個のうち、式(1)を満たしていた割合を、表2の「シリカ粒子の一次粒子特徴」「式(1)」「割合」欄に示した。なお、「割合」欄の数値の単位は[個数%]である。
【0100】
SEM写真撮影を行った各シリカ粒子の一次粒子100個について、縦軸に円形度、横軸に体積平均粒径をとってプロットした点から得られた回帰直線のα及びβを、表2の「回帰直線」「α」欄及び「β」欄に示した。
【0101】
(樹脂粒子の製造)
実施例1における樹脂粒子(1)の製造において、疎水性シリカ粒子(1)を、疎水性シリカ粒子(2)〜疎水性シリカ粒子(5)、疎水性シリカ粒子(101)〜疎水性シリカ粒子(104)、及び疎水性シリカ粒子(107)、並びに親水性シリカ粒子(6)に代えた他は同様にして、実施例2〜実施例6、比較例1〜比較例4、及び、比較例7の樹脂粒子(2)〜(6)、(101)〜(104)、及び(107)を製造した。
【0102】
得られた樹脂粒子(2)〜(6)、(101)〜(104)、及び(107)について、樹脂粒子(1)と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0103】
〔実施例7、実施例8〕
樹脂粒子本体(1)の製造において、エルボー型分級機のカットポイントを変更したほかは同様にして、体積平均粒径が2μm、及び20μmの樹脂粒子本体(2)、及び(3)を製造した。
【0104】
実施例1における樹脂粒子(1)の製造において、樹脂粒子本体(1)を、樹脂粒子本体(2)及び(3)に代えた他は同様にして、樹脂粒子(7)及び(8)を製造した。
得られた樹脂粒子(7)及び(8)について、樹脂粒子(1)と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0105】
〔実施例9〕
十分に脱水したポリオキシテトラメチレングリコール(OH価55、酸価1)100g及び1,4ブタンジオール12gを3本ロールを使って練り込み液状混練物を得た。次に該液状混練物を90℃に、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートを60℃に加熱し、両者を各々ギヤポンプにて液状混練物を100g/min、イソシアネート化合物を20g/minの供給速度で連続的に混合機に送り、急速撹拌を行った後、得られた混合物を二軸押出機に導入し、スクリュー回転数350rpm、200℃の条件で重合混練反応を行いポリウレタン樹脂(本体樹脂(2))を製造した。
【0106】
本体樹脂(1)の製造において、本体樹脂(1)(非晶性ポリエステル樹脂)を、得られた本体樹脂(2)に代えた他は同様にして、体積平均粒径7μmの樹脂粒子本体(4)を得た。
【0107】
実施例1における樹脂粒子(1)の製造において、樹脂粒子本体(1)を、樹脂粒子本体(4)に代えた他は同様にして、樹脂粒子(9)を製造した。
得られた樹脂粒子(9)について、樹脂粒子(1)と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0108】
〔実施例10〕
反応器にシクロヘキサン3.8L、テトラヒドロフラン20cc、スチレンモノマー14モルを投入し、n−ブチルリチウム0.07モルを投入した後、反応温度50℃で5分間反応させ、プレポリマー溶液を作製した。この溶液にスチレンモノマーを6モル入れ、n−ブチルリチウム0.02モルを投入し、80℃で10分間反応させた後、この反応液にメタノールを加えて反応を終結させた。続いて溶媒を減圧留去し、乾燥させることにより、ポリスチレン樹脂(本体樹脂(3))を製造した。
【0109】
本体樹脂(1)の製造において、本体樹脂(1)(非晶性ポリエステル樹脂)を、得られた本体樹脂(3)に代えた他は同様にして、体積平均粒径7μmの樹脂粒子本体(5)を得た。
【0110】
実施例1における樹脂粒子(1)の製造において、樹脂粒子本体(1)を、樹脂粒子本体(5)に代えた他は同様にして、樹脂粒子(10)を製造した。
得られた樹脂粒子(10)について、樹脂粒子(1)と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0111】
〔実施例11、12〕
実施例1における樹脂粒子(1)の製造において、樹脂粒子本体(1)に対する疎水性シリカ粒子(1)添加量を変更し、表1の「粒子付着工程」「シリカ粒子」「被覆率[%]」に示す量となるように添加量を代えた他は同様にして、樹脂粒子(11)及び(12)を製造した。
得られた樹脂粒子(11)及び(12)について、樹脂粒子(1)と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
表2からわかるように、樹脂粒子(2)〜(12)も樹脂粒子(1)と同様に、いずれも表面に付着したシリカ粒子の形状が異型状であり、強度に優れ、樹脂粒子に機械的負荷を与えた場合も、流動性が維持された。さらに、樹脂粒子(1)〜(12)は、シリカ粒子の分散性、埋没性、及び離脱性にも優れた。
【0115】
比較例5及び6では、シリカ粒子生成工程中に分散液がゲル状化したため、シリカ粒子が得られなかった。そのため、表2では、「シリカ粒子の一次粒子の特徴」および「樹脂粒子の評価」の各欄は「−」を記した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子本体と、
前記樹脂粒子本体の表面に付着したシリカ粒子であって、体積平均粒径が100nm以上500nm以下、粒度分布指標が1.40以上1.80以下、かつ、平均円形度が0.5以上0.85以下である一次粒子が、円形度と体積平均粒径(nm)とについて、下記式(1)で表される回帰直線を有するシリカ粒子と、
を含む樹脂粒子。
円形度=α×体積平均粒径/1000+β (1)
(−2.5≦α≦−0.9、0.8≦β≦1.2)
【請求項2】
アルコールを含む溶媒中に、0.6mol/L以上0.85mol/L以下の濃度でアルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備する工程と、
前記アルカリ触媒溶液中に、前記アルコールに対して、0.006mol/(mol・min)以上0.009mol/(mol・min)以下の供給量でテトラアルコキシシランを供給すると共に、前記テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対して、0.1mol以上0.4mol以下でアルカリ触媒を供給してシリカ粒子を得る工程と、
得られたシリカ粒子を樹脂粒子本体の表面に付着する工程と、
を有する樹脂粒子の製造方法。

【公開番号】特開2012−149169(P2012−149169A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8842(P2011−8842)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】