説明

樹脂粒子組成物

【課題】光拡散剤、粉体塗料、トナー用材料、潤滑剤成分、立体物造形用粉末等として好適に使用でき、耐熱性、透明性及び強度に優れ、しかも粉末間の融着特性に劣るという環状オレフィン系樹脂の欠点が解消された樹脂粒子組成物を提供すること。
【解決手段】体積平均粒子径が1〜100μm、ガラス転移温度が80〜200℃である環状オレフィン系樹脂粒子(A)と、特定の構造単位および芳香族環を含有する構造単位を有する芳香族基含有共重合体粒子(B)との樹脂粒子組成物であって、前記樹脂粒子(A)のガラス転移温度(℃)をTg(A)、体積平均粒子径(μm)をD(A)、波長589nm、温度23℃における屈折率をn(A)とし、前記共重合体粒子(B)のガラス転移温度(℃)をTg(B)、体積平均粒子径(μm)をD(B)、波長589nm、温度23℃における屈折率をn(B)としたとき、特定の要件を満足することを特徴とする樹脂粒子組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂粒子組成物に関する。より詳しくは本発明は、特定の環状オレフィン系樹脂粒子と特定の芳香族基含有共重合体粒子との樹脂粒子組成物であって、他材料との密着性や接着性が良好で、高透明であり、さらに高耐熱性であり、光拡散剤、粉体塗料、トナー用材料、潤滑剤成分、立体物造形用粉末等として有用な樹脂粒子組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種樹脂からなる粒子は光拡散剤、粉体塗料、トナー用材料、潤滑剤成分、立体物造形用粉末等として用いられているが、特に粉末焼結積層造形法による立体物造形は成型物開発の期間の短縮および費用節約に効果的である事から、近年ポリアミド樹脂粒子を中心として立体物造形用粉末の需要が拡大している。
【0003】
粉末焼結積層造形法は、あらかじめ目的とする造形物の一定間隔の断面形状のデータ(第1〜第n番目の断面のデータ)を作成し、前記一定間隔の厚さに敷き詰められた樹脂・金属粉末に、レーザーを前記第1番目の断面のデータに対応する断面形状に走査照射して、樹脂や金属を融着し、その上に再び一定間隔の厚さに樹脂・金属粉末を敷き詰め、レーザーを前記第2番目の断面のデータに対応する断面形状に走査照射して積層するということを繰り返して目的の造形物を製造する技術であり、例えば特許文献1にその技術が開示されている。
【0004】
一方、環状オレフィン系樹脂は、ガラス転移温度、光線透過率が高く、しかも屈折率の異方性が小さいことにより、従来のポリカーボネートやポリメタクリル酸メチル等の光学材料と比べて低複屈折性を示すなどの特長を有しており、耐熱性、透明性、光学特性および機械強度に優れた透明熱可塑性樹脂として注目されている(たとえば特許文献2〜6参照)。
【0005】
このように優れた性質を有する環状オレフィン系樹脂は粒子としての特性も期待でき、特に粉末焼結積層造形に応用すれば、従来の光硬化反応を利用した光造形法やポリアミド粒子の粉末造形法では製造困難であった高耐熱、高透明、且つ高強度な造形物が得られることが期待される。
【0006】
しかしながら、現在粉末造形に使用されているポリアミド等が半結晶性の樹脂であり融点以上での粘度低下が大きい特性を有することに対して、環状オレフィン系樹脂は非晶性であり温度に対する粘度変化が緩やかであるため、透明性に優れる一方で粉末間の融着特性に劣るという欠点を有している。そのため熱に対して溶融しやすい特性を持った環状オレフィン系樹脂粒子が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開公報WO1997/029148号
【特許文献2】特開平1−132625号公報
【特許文献3】特開昭63−218726号公報
【特許文献4】特開平2−133413号公報
【特許文献5】特開昭61−120816号公報
【特許文献6】特開昭61−115912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、光拡散剤、粉体塗料、トナー用材料、潤滑剤成分、立体物造形用粉末等として好適に使用でき、耐熱性、透明性及び強度に優れ、しかも粉末間の融着特性に劣るという環状オレフィン系樹脂の欠点が解消された樹脂粒子組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、特定の環状オレフィン系樹脂粒子と芳香族基含有共重合体粒子との樹脂粒子組成物が、上記要求を満たすことを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0010】
すなわち本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]体積平均粒子径が1〜100μm、ガラス転移温度が80〜200℃である環状オレフィン系樹脂粒子(A)と、下記一般式(式−1)で表される構造単位および芳香族環を含有する構造単位を有する芳香族基含有共重合体粒子(B)との樹脂粒子組成物であって、
前記樹脂粒子(A)のガラス転移温度(℃)をTg(A)、体積平均粒子径(μm)をD(A)、波長589nm、温度23℃における屈折率をn(A)とし、
前記共重合体粒子(B)のガラス転移温度(℃)をTg(B)、体積平均粒子径(μm)をD(B)、波長589nm、温度23℃における屈折率をn(B)としたとき、下記要件a)〜c)を満足することを特徴とする樹脂粒子組成物:
a)Tg(A)>Tg(B)
b)D(A)×0.8>D(B)
c)[n(B)-0.01]≦n(A)≦[n(B)+0.01]
【0011】
【化1】

[式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は酸素原子または窒素原子を含む連結基を介してカルボニル炭素に結合した置換もしくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基、水素原子、水酸基、またはアミノ基を表す。]。
【0012】
[2]前記樹脂粒子(A)と前記共重合体粒子(B)との重量比が、[樹脂粒子(A)]/[共重合体粒子(B)]=10/90〜99/1であることを特徴とする[1]に記載の樹脂粒子組成物。
[3]前記樹脂粒子(A)を構成する環状オレフィン系樹脂が、
下記(1)〜(6)の何れかの環状オレフィン系樹脂であり、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が30,000〜200,000であり、
ウッベローデ型粘度計を用いて測定した対数粘度が0.30〜0.95dL/gであることを特徴とする[1]または[2]に記載の樹脂粒子組成物:
(1)下記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体に由来する構造単位を有する開環(共)重合体
(2)下記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体に由来する構造単位を有する開環(共)重合体を水素添加して得られる開環(共)重合水添体
(3)上記(1)または(2)の開環(共)重合体または開環(共)重合水添体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加して得られる開環(共)重合水添体
(4)下記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体の付加(共)重合体
(5)下記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体とエチレンまたは1置換エチレンとの付加共重合体
(6)下記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体の付加型(共)重合体またはその水添体
【0013】
【化2】

[上記式中、aおよびbは独立に0または1を示し、cおよびdは独立に0〜2の整数を示し、
4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12およびR13はそれぞれ独立に、
水素原子;
ハロゲン原子;
酸素原子、硫黄原子、窒素原子、またはケイ素原子を含む連結基を有してもよい置換もしくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基;
または極性基を示し、
10とR11、またはR12とR13とは一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、
10またはR11とR12またはR13とは相互に結合して炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい。]。
【0014】
[4]前記環状オレフィン系樹脂が前記(2)の環状オレフィン系樹脂であり、該環状オレフィン系樹脂の芳香族性の不飽和結合を除く炭素-炭素二重結合部分のうち95%以上が水素添加されていることを特徴とする[3]に記載の樹脂粒子組成物。
【0015】
[5]前記共重合体粒子(B)における芳香族環を含有する構造単位が、下記一般式(式−3)で表される構造単位であることを特徴とする[1]〜[4]の何れかに記載の樹脂粒子組成物:
【0016】
【化3】

[式中、R14およびR15は独立に水素原子またはメチル基を表す。]。
【0017】
[6]前記共重合体粒子(B)を構成する一般式(式−1)で表される構造単位が、(メタ)アクリル酸エステル類または(メタ)アクリルアミド類から誘導される構造単位であり、
前記共重合体粒子(B)を構成する一般式(式−3)で表される構造単位が、スチレンまたはα−メチルスチレンから誘導される構造単位であることを特徴とする[5]に記載の樹脂粒子組成物。
【0018】
[7][1]〜[6]の何れかに記載の樹脂粒子組成物を粉末焼結積層造形法により造形して得られる造形物。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐熱性、透明性および強度に優れ、しかも粉末間の融着特性も実用に供することのできるレベルにある樹脂粒子組成物が提供され、その樹脂粒子組成物は光拡散剤、粉体塗料、トナー用材料、潤滑剤成分、立体物造形用粉末等の各種粒子の用途に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明について詳細に説明する。
[本発明の樹脂粒子組成物]
本発明の樹脂粒子組成物は、体積平均粒子径が1〜100μm、ガラス転移温度が80〜200℃である環状オレフィン系樹脂粒子(A)(以下単に樹脂粒子(A)ともいう)と、下記一般式(式−1)で表される構造単位および芳香族環を含有する構造単位を有する芳香族基含有共重合体粒子(B)(以下単に共重合体粒子(B)ともいう)との樹脂粒子組成物である。
【0021】
【化4】

上記(式−1)において、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は酸素原子または窒素原子を含む連結基を介してカルボニル炭素に結合した置換もしくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基、水素原子、水酸基、またはアミノ基を表す。
【0022】
前記樹脂粒子(A)の体積平均粒子径は1〜100μmであるが、好ましくは10〜90μm、より好ましくは15〜80μmである。体積平均粒子径が100μmよりも大きいと、粉末焼結積層造形法による造形時に断面一層分(スライス)の厚みが厚くなり、立体造形物の精細性を欠くことになり、一方、体積平均粒子径が1μm未満であると、スライスの数が多くなり過ぎ、また粒子の流動性が悪くなるため立体造形物の生産性を欠くことになる。
【0023】
なお、本明細書において体積平均粒子径とは、日機装(株)製マイクロトラックMT3300を用いて測定した値である。またこの体積平均粒子径の調整方法については後述する。
前記樹脂粒子(A)のガラス転移温度〔Tg〕は80〜200℃であり、好ましくは115〜180℃である。Tgが80℃未満の場合は、高温条件下での使用時に樹脂粒子が変形することがある。一方、Tgが200℃を超えると、樹脂粒子の成形加工が困難になることがあり、また成形加工時の加熱温度を高くする必要が生じるため、熱によって樹脂粒子が劣化する可能性がある。
【0024】
なお、本発明においてガラス転移温度とは、示差走査熱量計(SIIナノテクノロジー社製、商品名:DSC6220)を用いて、日本工業規格K7121に従って求めた補外ガラス転移温度である。またこのガラス転移温度の調整方法については後述する。
【0025】
また、本発明の樹脂粒子組成物においては、前記樹脂粒子(A)のガラス転移温度(℃)をTg(A)、体積平均粒子径(μm)をD(A)、波長589nm、温度23℃における屈折率をn(A)とし、前記共重合体粒子(B)のガラス転移温度(℃)をTg(B)、体積平均粒子径(μm)をD(B)、波長589nm、温度23℃における屈折率をn(B)としたとき、下記要件a)〜c)を満足することを特徴とする。
a)Tg(A)>Tg(B)
b)D(A)×0.8>D(B)
c)[n(B)-0.01]≦n(A)≦[n(B)+0.01]
【0026】
即ち、環状オレフィン系樹脂粒子(A)のガラス転移温度および体積平均粒子径は、何れも芳香族基含有共重合体粒子(B)のそれよりも大きい。一般的に(式−1)で表される構造単位からなる付加型共重合体は環状オレフィン系樹脂よりも溶融粘度が低いことが知られており、本発明はこのような特徴を生かして芳香族基含有共重合体粒子(B)を環状オレフィン系樹脂粒子(A)同士の接着剤のように利用して加熱加工への適正を付与するものである。
【0027】
環状オレフィン系樹脂粒子(A)のガラス転移温度は前述の通り80〜200℃であるが、芳香族基含有共重合体粒子(B)のガラス転移温度は通常60〜180℃、好ましくは75〜160℃である。芳香族基含有共重合体粒子(B)のガラス転移温度が60℃未満であると本発明の樹脂粒子組成物を加工して得られる成型物が変形しやすくなる。一方、180℃より高いと、樹脂粒子組成物の耐熱性が必要以上に高く加工性が悪くなる。樹脂粒子(A)と共重合体粒子(B)のガラス転移温度が上記範囲にあるとき、樹脂粒子の加工性と耐熱性とのバランスが非常に良好となる。
【0028】
また、上記の要件b)で示されるようにD(A)×0.8>D(B)であり、好ましくはD(A)×0.8>D(B)≧D(A)×0.05である。D(B)≧D(A)×0.8であると、樹脂粒子(A)との粒子径差が小さくなり、共重合体粒子(B)が樹脂粒子(A)の粒子間に均一に分散しにくいため好ましくない。一方D(B)<D(A)×0.05であると、共重合体粒子(B)が樹脂粒子(A)との混合状態を維持することが困難となる場合がある。
【0029】
また、樹脂粒子(A)と共重合体粒子(B)との波長589nm、温度23℃における屈折率差は、上記要件c)に示される通り0.01以下である。屈折率差がこれよりも大きいと、本発明の樹脂粒子組成物を加工して得られる成型品において、樹脂粒子(A)と共重合体粒子(B)との界面での光の屈折・散乱が起こり透明な外観を損なうことになるので好ましくない。また、樹脂粒子(A)の屈折率は通常1.500〜1.580である。屈折率の調整方法については後述する。
【0030】
本発明の樹脂粒子組成物における樹脂粒子(A)と共重合体樹脂粒子(B)との重量比は、[樹脂粒子(A)]/[共重合体樹脂粒子(B)]=10/90〜99/1であることが好ましく、20/80〜98/2であることがより好ましく、30/70〜97/3であることが特に好ましい。樹脂粒子(A)の混合比が10未満であると、本発明の樹脂粒子組成物を加工して得られる成型品の耐熱性が不十分となる場合があり、99をこえると、樹脂粒子組成物の加工性が低下することがある。
【0031】
環状オレフィン系樹脂粒子(A)を構成する環状オレフィン系樹脂は、下記(1)〜(6)の何れかの環状オレフィン系樹脂であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が30,000〜200,000であり、且つ対数粘度が0.30〜0.95dL/gであることが、造形物の強度と樹脂粒子組成物の加工時の流動性のバランスが良好であるため好ましい。
【0032】
(1)下記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体に由来する構造単位を有する開環(共)重合体
(2)下記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体に由来する構造単位を有する開環(共)重合体を水素添加して得られる開環(共)重合水添体
(3)上記(1)または(2)の開環(共)重合体または開環(共)重合水添体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加して得られる開環(共)重合水添体
(4)下記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体の付加(共)重合体
(5)下記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体とエチレンまたは1置換エチレンとの付加共重合体
(6)下記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体の付加型(共)重合体およびその水添体
【0033】
【化5】

上記式において、aおよびbは独立に0または1を示し、cおよびdは独立に0〜2の整数を示し、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12およびR13はそれぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子、またはケイ素原子を含む連結基を有してもよい置換もしくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基;または極性基を示し、R10とR11、またはR12とR13とは一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R10またはR11とR12またはR13とは相互に結合して炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい。
【0034】
環状オレフィン系樹脂粒子(A)を構成する環状オレフィン系樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量〔Mw〕が、好ましくは30,000〜200,000、より好ましくは32000〜180000、特に好ましくは35000〜160000である。Mwが30,000未満であると、本発明の樹脂粒子組成物を加工して得られる成型品強度が不十分となる場合がある。また200,000を超えると、樹脂粒子組成物の加工性が低下する場合がある。
【0035】
また、分子量分布〔Mw/Mn〕は、好ましくは1.1〜10.0、さらに好ましくは1.3〜8.0であり、特に好ましくは1.5〜6.0である。
樹脂粒子(A)を構成する環状オレフィン系樹脂の対数粘度は、好ましくは0.30〜0.95dL/gであり、より好ましくは0.32〜0.90dL/g、特に好ましくは0.35〜0.80dL/gである。対数粘度が0.30dL/g未満であると、本発明の樹脂粒子組成物を加工して得られる成型品強度が不十分となる場合がある。また0.95dL/gを超えると、樹脂粒子組成物の加工性が低下する場合がある。
【0036】
このような本発明の樹脂粒子組成物は、上記の特定の関係を満たす樹脂粒子(A)および共重合体粒子(B)の組成物であるため、環状オレフィン系樹脂の特徴である優れた耐熱性、透明性および強度を有し、しかも粉末間の融着特性に劣るという従来の環状オレフィン系樹脂の欠点が解消されている。
【0037】
したがって本発明の樹脂粒子組成物は、光拡散剤、粉体塗料、トナー用材料、潤滑剤成分、立体物造形用粉末等の各種粒子の用途に好適に使用でき、特に粉末焼結積層造形法により造形して造形物を製造する用途に好適である。以下では、本発明の樹脂粒子組成物の製造方法を説明する。
【0038】
[樹脂粒子組成物の製造方法]
〔環状オレフィン系樹脂粒子(A)〕
樹脂粒子(A)は前述のように、体積平均粒子径およびガラス転移温度が上記の範囲にあり、また共重合体粒子(B)との関係で上記要件a)〜c)のすべてを満たす。
【0039】
前記樹脂粒子(A)を構成する環状オレフィン系樹脂は、前述のように好ましくは上記(1)〜(6)のいずれかの環状オレフィン系樹脂であって、重量平均分子量および対数粘度が上記の特定の範囲にある環状オレフィン系樹脂である。以下、これら(1)〜(6)の環状オレフィン系樹脂およびその製造方法について説明する。
【0040】
<(1)〜(6)の環状オレフィン系樹脂>
{(1)の環状オレフィン系樹脂}
(1)の環状オレフィン系樹脂は、上記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体(以下特定単量体ともいう)に由来する構造単位を有する開環(共)重合体である。
【0041】
上述のように、一般式(式−2)においてR4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12およびR13はそれぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子、またはケイ素原子を含む連結基を有してもよい置換もしくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基;または極性基を示すが、前記ハロゲン原子としては、たとえばフッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
【0042】
前記置換もしくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基などが挙げられる。
【0043】
また、上記の置換もしくは非置換の炭化水素基は直接環構造に結合していてもよいし、あるいは連結基を介して結合していてもよい。
前記連結基としては、たとえば、炭素数1〜10の2価の炭化水素基(たとえば、−(CH2)m−(式中、mは1〜10の整数)で表されるアルキレン基);酸素、窒素、イオウまたはケイ素を含む連結基(たとえば、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−O(CO)−)、カルボニルオキシ基(−COO−)、スルホン基(−SO2−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−、−CONH−)およびシロキサン結合(−OSi(R)−(式中、Rはメチル、エチル等のアルキル基))等が挙げられ、これらを複数含む連結基であってもよい。
【0044】
前記極性基としては、たとえば、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、カルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル基およびカルボキシル基など挙げられる。
【0045】
さらに具体的には、上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等;
カルボニルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等のアルキルカルボニルオキシ基、およびベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基;
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等;
アリーロキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基等;
トリオルガノシロキシ基としては、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基等;
トリオルガノシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等;
アミノ基としては、第1級アミノ基;
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等;
アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が挙げられる。
【0046】
上述のようにR10とR11、またはR12とR13とは一体化して2価の炭化水素基(環状構造のものなど)を形成してもよく、またR10またはR11とR12またはR13とは相互に結合して炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合した多環構造でもよい。)を形成してもよい。
【0047】
このような環状構造としては例えば下記式で表されるものを列挙することができる。下記式中Rは炭素数20以下の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基、またはアリール基を表す。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等を挙げることができる。
【0048】
【化6】

【0049】
【化7】

【0050】
【化8】

【0051】
【化9】

【0052】
【化10】

【0053】
【化11】

【0054】
【化12】

【0055】
【化13】

【0056】
【化14】

【0057】
【化15】

【0058】
【化16】

特定単量体(一般式(式−2)で表わされる環状オレフィン系単量体)の具体例としては、次のような化合物が挙げられる。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、トリシクロ[5.2.1.02,6 ]−デカ−3,8−ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン、5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(1−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(2−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−〈4−フェニルフェノキシ〉カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−(1−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−(2−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−〈4−フェニルフェノキシ〉カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン、ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン、5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェニル−5―メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−n−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−シクロヘキセニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−n−オクチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−n−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−イソプロピルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(1−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−ナフチル)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(4−ビフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(4−ビフェニル)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−アミノメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリメトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリn-プロポキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリn-ブトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−クロロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、スピロ[フルオレン−9,8'−トリシクロ[4.3.0.12.5][3]デセン]など。
【0059】
特定単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記一般式(式―2)において、aおよびbはそれぞれ独立に0または1であるが、好ましくはa=b=0である。また、cおよびdは独立に0〜2の整数を示すが、好ましくは0〜1、より好ましくはc=0且つd=0またはd=1である。a〜dがこのような数値である単量体は、単量体を製造するための原料の入手性および経済性に優れ、また単量体を生産性よく製造することができる。
【0060】
上記式(式−2)中、R4〜R9はそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有してもよい置換もしくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基;または極性基を示すが、好ましくは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基、さらに好ましくは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基、特に好ましくは水素原子である。R4〜R9が上記の基である単量体は、高収率で製造することができるため好ましい。
【0061】
また、R10〜R13はそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有してもよい置換もしくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基;または極性基を示すか、あるいは、R10とR11、またはR12とR13とは一体化して2価の炭化水素基を形成するか、またはR10もしくはR11とR12もしくはR13とが相互に結合して炭素環もしくは複素環を形成するが、R10およびR11またはR12およびR13の何れかが水素原子であるか、R10またはR11とR12またはR13とが結合して環構造を形成していることが好ましい。R10〜R13が上記の構造である単量体は、製造が容易で、当該単量体から得られる環状オレフィン系樹脂は、そのガラス転移温度〔Tg〕が高く、かつ機械的強度も優れている点で好ましい。
【0062】
このような好ましい単量体としては、例えば下記のものを挙げることができる。ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、トリシクロ[5.2.1.02,6 ]−デカ−3,8−ジエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン。
【0063】
(共重合性単量体)
上記(1)の環状オレフィン系樹脂には、上記(式−2)で表わされる環状オレフィン系単量体以外の共重合性単量体が共重合されていてもよい。共重合性単量体としては、炭素数4〜20のシクロオレフィンを挙げることができ、好ましくは、炭素数4〜12のシクロオレフィンである。なお、後述する(2)〜(4)の環状オレフィン系樹脂にも、共重合性単量体が共重合されていてもよい。
【0064】
(開環重合触媒)
上記(1)の環状オレフィン系樹脂の製造に用いられる開環(共)重合用の触媒としては、Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization(K.J.IVIN,J.C.MOL, Academic Press 1997)に記載されている触媒が好ましく用いられる。なお、後述する(2)および(3)の環状オレフィン系樹脂の製造に際しても、上記と同様の開環重合触媒を使用することができる。
【0065】
(重合反応用溶媒)
開環重合反応において用いられる重合反応用溶媒(後述する分子量調節剤溶液の溶媒、特定単量体および/またはメタセシス触媒の溶媒)としては、例えば、ペンタン、ヘキサン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロモヘキサン、塩化メチレン等のハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリール化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタン等の飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類などを挙げることができ、これらは1種単独で、または2種以上混合して用いることができる。これらのうちでも、芳香族炭化水素が好ましい。
なお、後述する(2)〜(6)の環状オレフィン系樹脂の製造の際にも、上記と同様の重合反応用溶媒を使用することができる。
【0066】
(分子量調節剤)
得られる開環(共)重合体の分子量の調節は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができる。また、本発明においては、分子量調節剤を重合反応系に共存させることでも調節することができる。
【0067】
好適な分子量調節剤としては、例えば、エチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。なお、後述する(2)〜(4)および(6)の環状オレフィン系樹脂の製造に際しても、上記と同様の分子量調節剤を使用することができる。
【0068】
(重合反応)
重合反応は常圧〜1MPaの圧力下で行うことができ、反応温度は通常40〜140℃、反応時間は通常0.5〜5時間である。
【0069】
以上のようにして得られる開環(共)重合体は、そのままでも用いられるが、これをさらに水素添加して得られた水添体(すなわち(2)の環状オレフィン系樹脂)は、耐衝撃性の大きい樹脂粒子の原料として有用である。
【0070】
{(2)の環状オレフィン系樹脂}
(2)の環状オレフィン系樹脂は、特定単量体に由来する構造単位を有する開環(共)重合体を水素添加して得られる開環(共)重合水添体であり、該開環(共)重合体としては、たとえば(1)の環状オレフィン系樹脂が挙げられる。
【0071】
(水素添加触媒)
上記の重合反応により得られた開環(共)重合体を水素添加することにより、(2)の環状オレフィン系樹脂が得られる。
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。
【0072】
(水素添加反応)
水素添加反応を行う際の反応条件は、圧力が通常1〜20MPa、温度が通常40〜250℃、反応時間が通常0.5〜5時間である。
【0073】
{(3)の環状オレフィン系樹脂}
上記(1)または(2)の環状オレフィン系樹脂をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加することにより、上記(3)の環状オレフィン系樹脂が得られる。
【0074】
(フリーデルクラフト反応による環化)
(1)または(2)の環状オレフィン系樹脂をフリーデルクラフト反応により環化する方法は特に限定されるものではないが、特開昭50−154399号公報に記載の酸性化合物を用いた公知の方法が採用できる。酸性化合物としては、具体的には、AlCl3、BF3、FeCl3、Al23、HCl、CH2ClCOOH、ゼオライト、活性白土などのルイス酸、ブレンステッド酸が用いられる。
【0075】
環化された環状オレフィン系樹脂を、(2)の環状オレフィン系樹脂の製造の場合と同様に水素添加することで、(3)の環状オレフィン系樹脂を得ることができる。
このようにして得られる(3)の環状オレフィン系樹脂は、低複屈折性ならびに機械的強度に優れるため好ましい。
【0076】
{(4)の環状オレフィン系樹脂}
上記(4)の環状オレフィン系樹脂は、上記特定単量体の付加(共)重合体である。
前記特定単量体の付加(共)重合体を得るためには、例えば特開2008-115379号公報に記載の方法を用いることができる。すなわち、特定単量体を、ニッケル化合物またはパラジウム化合物を含む触媒を用いて、分子量調節剤の存在下に付加重合し、好ましくは単量体の総量の80重量%以下の量の単量体を使用して重合反応を開始させ、その重合反応中に単量体の残余を反応系に供給することにより、(4)の環状オレフィン系樹脂を得ることができる。
【0077】
前記触媒、分子量調節剤、重合反応用溶媒および反応条件等は、特開2008-115379号公報に記載されているとおりである。
前記方法などにより得られる(4)の環状オレフィン系樹脂は、耐熱性に優れるため好ましい。
【0078】
なお、(4)の環状オレフィン系樹脂の製造に際しては、(1)の環状オレフィン系樹脂の説明で説明したのと同様の共重合性単量体を使用することができる。
【0079】
{(5)の環状オレフィン系樹脂}
上記(5)の環状オレフィン系樹脂は、上記特定単量体とエチレンまたは1置換エチレンとの付加共重合体である。付加共重合体を製造するに当たっては、公知の通常の付加重合法を使用することができる。
【0080】
(1置換エチレン)
1置換エチレンとしては、例えば、プロピレン、ブテンなど、好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のαオレフィン系化合物を挙げることができる。
【0081】
(付加重合触媒)
上記(5)の環状オレフィン系樹脂を合成するための触媒としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物およびバナジウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、助触媒としての有機アルミニウム化合物とが好ましく用いられる。
【0082】
(重合反応用溶媒)
付加重合に使用される重合反応用溶媒としては、前述の(1)の環状オレフィン系樹脂の製造の際の開環重合反応に用いられる重合反応用溶媒と同じものを使用することができる。
【0083】
また、得られる(5)の環状オレフィン系樹脂の分子量の調節は、通常、水素を用いて行われる。
このようにして得られた(5)の環状オレフィン系樹脂は、低複屈折性に優れるため好ましい。
【0084】
{(6)の環状オレフィン系樹脂}
上記(6)の環状オレフィン系樹脂は、上記特定単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体の付加型(共)重合体またはその水添体である。
【0085】
(ビニル系環状炭化水素系単量体)
前記ビニル系環状炭化水素系単量体としては、ビニルシクロペンテン系単量体、ビニルシクロペンタン系単量体、ビニルシクロヘキセン系単量体、ビニルシクロヘキサン系単量体、スチレン系単量体、テルペン系単量体、ビニルシクロヘプテン系単量体、ビニルシクロヘプタン系単量体などが挙げられる。
【0086】
(シクロペンタジエン系単量体)
前記シクロペンタジエン系単量体としては、例えば、シクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、2−メチルシクロペンタジエン、2−エチルシクロペンタジエン、5−メチルシクロペンタジエン、5,5−メチルシクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0087】
(付加重合反応)
上記特定単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体の付加型(共)重合体は、例えば特許3277568号に記載の方法と同様の付加重合法で得ることができる。
【0088】
(水素添加反応)
また、上記付加型(共)重合体の水添体は、上記(2)の環状オレフィン樹脂を製造する際の水素添加と同様の方法で得ることができる。使用する水素添加触媒も同様である。さらに、前記付加型(共)重合体を製造する際に用いられる重合反応用溶媒および分子量調節剤としては、上記(1)の環状オレフィン系樹脂の説明で説明したのと同様なものも用いることができる。
このようにして得られた(6)の環状オレフィン系樹脂は、低複屈折性ならびに色相に優れるため好ましい。
【0089】
以上説明した環状オレフィン系樹脂(1)〜(6)のうち、好ましい樹脂は(2)〜(5)、特に好ましい樹脂は(2)の環状オレフィン系樹脂である。(2)の環状オレフィン系樹脂は、耐熱性、機械的強度、加工性、透明性および生産性等に特に優れるため好ましい。
【0090】
また特に、(2)の環状オレフィン系樹脂において、芳香族性の不飽和結合を除く炭素‐炭素二重結合部分のうち95%以上が水素添加されていることが、環状オレフィン系樹脂の抗酸化性の点から好ましい。
【0091】
なお、環状オレフィン系樹脂粒子(A)のガラス転移温度は前述のように80〜200℃であるが、ガラス転移温度(Tg)は、一般に(式−2)で表される単量体(特定単量体)のcおよび/またはdが大きいと高くなる傾向がある。また、特定単量体のR4〜R13が直鎖状で、R4〜R13を構成する原子数が多いと、Tgが低下する傾向があり、一方これらが環状構造の場合は、Tgが高くなる傾向にある。更に環状オレフィン系樹脂粒子(A)を構成する環状オレフィン系樹脂の製造にビニル系環状炭化水素系単量体を用いる場合には、ビニル系環状炭化水素系単量体上の置換基に関して上記(式−2)におけるR4〜R13と同様の傾向があり、またビニル系環状炭化水素系単量体を構成する環構造の縮合環数が多いと、樹脂粒子(A)のTgが高くなる傾向にある。これらの特徴を利用して各種単量体を組み合わせて重合させることで、80〜200℃の範囲の任意のTgを有する環状オレフィン系樹脂を得ることができる。
【0092】
また樹脂粒子(A)の屈折率は、環状オレフィン系樹脂が芳香族性置換基、ハロゲン置換基、および/または含硫黄置換基を含有するようにする、または環状オレフィン系樹脂中の炭素−炭素結合を高密度化することにより高くでき、また前記置換基数を低減または炭素−炭素結合を低密度化することにより低くすることができる。このように屈折率を調整することで、樹脂粒子(A)の屈折率と共重合体粒子(B)の屈折率が上記要件c)を満たすようにする。
【0093】
(添加剤)
これらの環状オレフィン系樹脂には各種添加剤を添加してもよく、例えば公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、染料、蛍光増白剤等の樹脂添加剤を添加することができる。前記滑剤および離型剤は、加工性を向上させる目的で添加することができる。また、前記染料および蛍光増白剤は、樹脂の色相を調整するために添加することができる。
【0094】
<環状オレフィン系樹脂粒子(A)の製造方法>
本発明の樹脂粒子組成物は、環状オレフィン系樹脂の粒子(樹脂粒子(A))を含む。環状オレフィン系樹脂を粒子にする方法としては公知の種々の方法を採用することができ、たとえば乳化法や機械的粉砕法により樹脂粒子にすることができる。また、得られた樹脂粒子の粒度分布が所望の分布よりも広い場合には、公知の分級機により分級してもよい。分級方式は湿式でも乾式でもよい。分級機として具体的には、エアセパレーター等の慣性分級機、サイクロン、ミクロンセパレーター等の乾式遠心分級機、遠心沈降機、液体サイクロン等の湿式遠心分級機、ふるい分け機等を用いることができる。
【0095】
以下に前記2種の粒子製法について説明する。
{乳化法}
環状オレフィン系樹脂粒子(A)を乳化法により製造する場合、その製造方法として、環状オレフィン系樹脂を有機溶媒に溶解する工程1と、工程1で得られた溶液Aを、水中または界面活性剤を含有する水溶液B中で乳化させる工程2と、工程2で得られた乳化液中に分散した環状オレフィン系樹脂粒子を回収し乾燥する工程3とを有することを特徴とする製造方法が挙げられる。以下、これら各工程について説明する。
【0096】
(工程1)
工程1で使用される有機溶媒は、環状オレフィン系樹脂を溶解できれば特に限定されないが、たとえば、石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの炭化水素類;
シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどの環状炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類;
ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類;
ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサンなどのエーテル類;
N,N−11ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;
を挙げることができる。これらは単独であるいは二種以上を混合して用いることができる。本発明では、これらのうち、芳香族炭化水素類が、環状オレフィン系樹脂の溶解性の点から好ましく用いられる。
【0097】
工程1は、たとえば下記の何れかのようにして実施することが出来る。
(1)環状オレフィン系樹脂ペレット等を前記有機溶媒に溶解する。
(2)前記有機溶媒中で環状オレフィン系樹脂を合成し、必要に応じて水素添加する。すなわち環状オレフィン系樹脂の合成に使用した有機溶媒をそのまま工程1における有機溶媒として使用する。
(3)前記有機溶媒中で環状オレフィン系樹脂を合成し、必要に応じて水素添加した反応溶液に、抽出精製または吸着処理等による精製を加えて残留モノマーや触媒を除去する。
【0098】
環状オレフィン系樹脂の有機溶媒溶液(以下単に溶液Aともいう)中の環状オレフィン系樹脂の濃度は通常5〜40重量%であり、好ましくは7〜35重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。濃度が5重量%未満であると環状オレフィン系樹脂粒子の生産性が低くなることがあり、また、40重量%を超えると、溶液Aの後述する水中または界面活性剤を含有する水溶液中への分散性が低下し、所望の粒子径の樹脂粒子が得られない等の問題を生じることがある。
【0099】
(工程2)
工程2では、工程1で得られた溶液Aを水中または界面活性剤を含有する水溶液B中で乳化させる。これにより、環状オレフィン系樹脂が水中または水溶液B中に分散し、粒子の形状をとる。
【0100】
前記の乳化させる際の攪拌・分散手段としては、従来公知の攪拌装置を特に制限なく挙げることが出来る。このような装置として具体的には、インペラー式攪拌機、のこぎり歯状のブレードミキサー、閉式ローターミキサー、ローター/ステーター式ミキサー、スタティックミキサー、インラインプロペラ/タービン式ミキサー、インラインローター/ステーター式ミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー等を挙げることができる。
【0101】
攪拌機の回転数等の攪拌条件は、設備や樹脂粒子の生産量およびその他の条件により変動するため一義的に決定することは出来ないが、一般的な攪拌条件(たとえば、10〜30000rpm)にて実施することが出来る。
【0102】
攪拌時間についても同様に一義的に決定することは出来ないが、通常は5〜300分間、好ましくは10〜180分間、より好ましくは15〜120分間である。攪拌時間が5分よりも短いと環状オレフィン系樹脂の分散が不十分となり、所望の粒子径の樹脂粒子を得ることができない場合があり、また攪拌時間が300分よりも長いと樹脂粒子の生産性が低下する傾向がある。
【0103】
溶液Aを、水中または水溶液B中で乳化させる際の温度は、通常0〜100℃、好ましくは5〜80℃、特に好ましくは10〜60℃である。乳化させる際の温度が100℃を超えると、樹脂粒子が、溶液Aが乳化した乳化液中で凝集しやすくなる傾向があり、0℃未満であると樹脂粒子の製造費用が高くなる傾向にある。
【0104】
樹脂粒子(A)の体積平均粒子径は前述のように1〜100μmであるが、上記の撹拌の回転数を上げたり、撹拌時間を長くすることにより、体積平均粒子径の小さな樹脂粒子を得ることができる。このように溶液Aを、水中または水溶液B中で乳化させる際の条件を調整することにより、体積平均粒子径が上記範囲内にある樹脂粒子(A)を得ることができる。
【0105】
工程2における溶液Aと水または水溶液Bとの重量比(使用量の比)は、通常[溶液A]/[水または水溶液B]=1/100〜5/1であり、好ましくは1/50〜4/1、特に好ましくは1/30〜3/1である。溶液Aと水または水溶液Bとの重量比が1/100よりも小さいと樹脂粒子の生産性が低下する傾向にあり、5/1よりも大きいと樹脂粒子が乳化液中で凝集しやすく、所望の粒子径を有する樹脂粒子が得られない場合がある。
【0106】
溶液Aを分散させる媒体としては、水または水溶液Bが用いられるが、好ましくは水溶液Bである。界面活性剤が存在することにより、樹脂粒子(A)の工程2で得られる乳化液中での安定性が高まる。
【0107】
前記界面活性剤としては公知の脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤;
アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤;
アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等の両性界面活性剤;
しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等のノニオン系の界面活性剤;
などを特に制限なく用いることができる。
【0108】
これらのうちノニオン系の界面活性剤が、環状オレフィン系樹脂との相溶性が高く、樹脂粒子(A)中に微量に残留した際の樹脂粒子(A)の透明性への影響が小さい点で好ましく、特に好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエステル等の、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンの誘導体である。
【0109】
より具体的には花王(株)製のエマルゲンシリーズ、レオドールシリーズ、エマノーンシリーズ、ライオン(株)製のレオックスシリーズ、レオコールシリーズ、ライオノールシリーズ、レオファットシリーズ、リオノンシリーズ等を列挙することができる。これらは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0110】
上記界面活性剤のHLB値(Hydrophile-Lipophile Balance)は、用いる環状オレフィン系樹脂の種類や有機溶媒の種類により適宜選択されるため一義的には決定できないが、通常6〜20、好ましくは7〜19.5、特に好ましくは7.5〜19である。
【0111】
前記界面活性剤の、水溶液B中の濃度は、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜18重量%、特に好ましくは0.3〜15重量%である。濃度が0.1重量%未満であると樹脂粒子(A)の工程2で得られる乳化液中における安定性が低下することがあり、濃度が20重量%を超えると、得られる樹脂粒子(A)の粒子径が必要以上に小さくなるとともに樹脂粒子(A)中に残留する界面活性剤量が増加する傾向にある。
【0112】
(工程3)
上記の工程2において得られた乳化液中に分散した樹脂粒子をフィルターまたはメッシュ等により回収して乾燥することにより、平均粒子径が1〜100μmの樹脂粒子を得ることが可能である。
【0113】
なお、この回収をする前に、工程1で用いた有機溶媒および水の両方と相溶し、且つ環状オレフィン系樹脂を溶解しない溶媒Cと、工程2で得られた乳化液とを混合することが好ましい。
【0114】
溶媒Cを用いることにより、樹脂粒子が球形状を保ったまま固化させることができ、さらに環状オレフィン系樹脂を溶解するために用いた有機溶媒や界面活性剤を抽出除去することができるため好ましい。
【0115】
前記の「環状オレフィン系樹脂を溶解しない」とは、具体的には25℃の100gの溶媒Cに溶解する環状オレフィン系樹脂が1g以下であるということである。
このような条件を満たす溶媒Cとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、イソブタノール等のアルコール類が好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが特に好ましい。
【0116】
溶媒Cの使用量は、前記乳化液100重量部に対して通常30〜2000重量部、好ましくは50〜1000重量部である。
また溶媒Cと乳化液との混合は、攪拌機で撹拌することにより行うことが好ましく、その際の撹拌条件は、通常回転数10〜30000rpm、撹拌温度0〜60℃、撹拌時間5〜120分である。
【0117】
また、工程2で得られた乳化液中に分散した樹脂粒子をフィルターまたはメッシュ等により回収する前、または上記溶媒Cと前記乳化液とを混合する前に、環状オレフィン系樹脂を溶解させるために使用した有機溶媒を濃縮する工程を加えてもよい。濃縮工程を加えることによって、乾燥時に樹脂粒子中から揮発する有機溶媒の量が少なくなり、より真球形状に近い形状の樹脂粒子(A)を得ることが出来る。
【0118】
上述の樹脂粒子(A)を回収するためのフィルターまたはメッシュの孔径は、必要な樹脂粒子(A)の粒子径により選択される。回収した樹脂粒子を真空または熱風乾燥機等にて乾燥することにより形状の安定した樹脂粒子(A)とすることが出来る。
【0119】
乾燥温度は通常20〜160℃、好ましくは30〜140℃、更に好ましくは40〜120℃である。乾燥温度が20℃未満であると乾燥時間が長くなるため生産性が低下する傾向にあり、また、160℃を超えると樹脂粒子どうしが融着して所望の粒子径の樹脂粒子が得られないことがある。
【0120】
このようにして得られる樹脂粒子(A)中の残留溶媒量は通常1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、更に好ましくは0.2重量%未満である。残留溶媒がこの範囲である樹脂粒子(A)は、長期保管した際のブロッキング性が低い。
【0121】
{機械的粉砕法}
機械的粉砕法では、環状オレフィン系樹脂を製造し、その樹脂を機械的に粉砕することにより、樹脂粒子(A)を得る。
【0122】
機械的粉砕は、凍結粉砕でも常温での粉砕でもよい。機械的粉砕を実施する装置としては公知の種々の装置が挙げられるが、たとえばハンマーミル、ジェットミル、ボールミル、インペラーミル、カッターミル、ピンミル、2軸クラッシャーが挙げられる。機械的に粉砕する場合には樹脂が摩擦熱を発生し、温度上昇による融着を起こして所望の粒子径の樹脂粒子が得られない場合があるため、液体窒素等を用いて冷却すると共に脆化させて破砕することが好ましい。
【0123】
なお、一般に機械的粉砕法は乳化法よりも球形の粒子を得ることが難しい。樹脂粒子の形状が球形でないと、スライス一層分の樹脂粒子を供給する際の樹脂粒子(正確には共重合体粒子(B)との樹脂粒子組成物)の滑り性が劣るため好ましくない場合があるので、環状オレフィン系樹脂を樹脂粒子とする方法としては、乳化法が好ましい場合がある。一方、生産性は機械的粉砕法の方が優れているため、要求される品質と製造コストによって適宜選択される。
【0124】
{その他の粒子製造方法}
環状オレフィン系樹脂を樹脂粒子とするにあたっては、前記二法以外の他の公知の粒子製造技術を採用してもよい。このような技術としては例えば次のようなものがある。
(1)環状オレフィン系樹脂と、これと非相溶性の異種高分子材料とを混練して分散させた後に、環状オレフィン系樹脂のみが溶解しない溶剤で前記異種高分子材料を溶解し、回収する方法。このような技術は特開2007-217651号公報に開示されている。
(2)環状オレフィン系樹脂を適当な溶媒中に溶解させ、該溶液を噴霧乾燥する方法。このような技術は特表2000-504642号公報に開示されている。
(3)環状オレフィン系樹脂の有機溶媒溶液または乳濁液を特許3260684号公報に記載の方法で再沈殿させて回収・乾燥する方法。
【0125】
〔芳香族基含有共重合体粒子(B)〕
本発明の樹脂粒子組成物は、上記の環状オレフィン系樹脂粒子(A)と、芳香族基含有共重合体粒子(B)との混合物である。共重合体粒子(B)は、樹脂粒子(A)との関係で上記要件a)〜c)のすべてを満たす。以下、共重合体粒子(B)を構成する芳香族基含有共重合体について説明する。
【0126】
<芳香族基含有共重合体>
芳香族基含有共重合体は、下記一般式(式−1)で表わされる構造単位および芳香族環を含有する構造単位を有する共重合体である。
【0127】
【化17】

上記式において、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は酸素原子または窒素原子を含む連結基を介してカルボニル炭素に結合した置換もしくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基、水素原子、水酸基、またはアミノ基を表す。
【0128】
前記酸素原子または窒素原子を含む連結基の例としては、エーテル基、エステル基、−NH−基、アミド基が挙げられる。これらの中でも、単量体の製造のし易さ、溶解性、重合性、および化合物の安定性の観点からエーテル基、アミノ基が好ましい。
【0129】
また前記置換もしくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基等の直鎖または分岐のアルキル基;
シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ジシクロペンタジエニル基、ジシクロペンタニル基等のシクロアルキル基;
フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ベンジル基、等のアリール基;
これらの列挙した基に、ハロゲン原子、水酸基、メトキシキやエトキシ基等のアルコキシ基等が置換した基等が挙げられる。
【0130】
これらの中でも、単量体の生産性および得られる重合体の耐熱性の観点からメチル基、エチル基、フェニル基、シクロヘキシル基が好ましい。
このような構造単位は、下記一般式(式−4)で表される単量体から誘導される。
【0131】
【化18】

上記式において、R1およびR2は一般式(式−1)で定義した通りである。
前記(式−4)で表される単量体としては、例えば下記のものを列挙することができる。
アクロレイン、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸 2-ヒドロキシエチル、アクリル酸 2-ヒドロキシエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル;等の(メタ)アクリル酸エステル類、
アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-フェニルアクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N-フェニルメタクリルアミド;等の(メタ)アクリルアミド類。
【0132】
これらのうち、得られる重合体の耐熱性の観点から好ましくは(メタ)アクリル酸エステル類または(メタ)アクリルアミド類であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル類である。これらの単量体は一種単独で、または複数を併用して用いてもよい。
【0133】
芳香族環を含有する構造単位としては、例えば前記(式−1)で表される構造単位のうち芳香族環を含有する構造単位、下記一般式(式−3)および下記式(式−5)で表される構造単位を挙げることが出来る。
【0134】
【化19】

上記式において、R14およびR15は独立に水素原子またはメチル基を表す。
【0135】
【化20】

これらのうち(式―3)で表される構造単位が原料の入手性、重合性、得られる重合体の着色性および透明性等の観点から好ましい。
【0136】
(式−3)で表される構造単位は、下記一般式(式−6)で表される単量体から誘導される。
【0137】
【化21】

上記式において、R14およびR15は一般式(式−3)で定義したとおりである。
一般式(式−6)で表される単量体としては、例えば下記のものを列挙することができる。
スチレン、α−メチルスチレン、p-メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン。これらのうち、入手性および経済性から好ましくはスチレンまたはα−メチルスチレンである。これらの単量体は一種単独で、または複数を併用して用いてもよい。
【0138】
一般式(式−4)で表わされる単量体(以下単に単量体4ともいう)および芳香族環を含有する構造単位となる単量体(以下単に芳香族単量体ともいう)の共重合方法としては、公知の重合方法を採用することが出来る。重合方法としては例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合を挙げることができるが、好ましくはラジカル重合である。ラジカル重合方法としては塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合の何れをも採用することができる。
【0139】
上記共重合における単量体4および芳香族単量体の使用量は、通常重量比で単量体4/芳香族単量体=30/70〜95/5、好ましくは50/50〜90/10である。このような重量比で単量体4および芳香族単量体を用いると、得られる芳香族基含有共重合体と環状オレフィン系樹脂粒子(A)を構成する環状オレフィン系樹脂との屈折率差が小さくなるので好ましい。また、芳香族基含有共重合体を得るために用いる単量体としては、単量体4および芳香族単量体以外の単量体を、本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。このような単量体としては例えば下記のものを挙げることが出来る。
【0140】
マレイミド;メチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド等のN置換マレイミド類;無水マレイン酸;酢酸ビニル等のビニルエステル類;エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ブタジエン、イソプレン、ジシクロペンタジエン等のジエン類;アクリロニトリル;等。
【0141】
これらの単量体4および芳香族単量体以外の単量体の使用量は、芳香族基含有共重合体の合成に用いる全単量体を100モル%として、通常20モル%以下、好ましくは15モル%以下である。
【0142】
このようにして得られる芳香族基含有共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量Mwは、通常10000〜200000、好ましくは15000〜160000、より好ましくは20000〜140000である。また分子量分布Mw/Mnは通常1.1〜3.0、好ましくは1.2〜2.8、より好ましくは1.3〜2.6である。
【0143】
<芳香族基含有共重合体粒子(B)の製造方法>
芳香族基含有共重合体粒子(B)の製造方法としては、環状オレフィン系樹脂粒子(A)の製造方法と同様の方法が挙げられるが、懸濁重合または乳化重合によって粒子径が調整された樹脂粒子を直接得ることが好ましい。懸濁重合または乳化重合の方法としては、例えば特許第3662875号公報、特開2000-219701号公報、特開平05-155907号公報、特開2001-342260号公報、特許第3339116号公報、特開2004-307763号公報等に開示されている方法を採用することができる。なお共重合体粒子(B)を樹脂粒子(A)の製造方法と同様の方法で製造する場合、樹脂粒子(A)の製造方法で述べたのと同様の方法により、共重合体粒子(B)の平均粒子径を調整することができる。
【0144】
また共重合体粒子(B)のガラス転移温度は、共重合反応時に使用する単量体の種類および共重合組成比により調整することができる。たとえば上記の調整方法により、上記要件a)を満たすように共重合体粒子(B)のガラス転移温度を調整する。
【0145】
共重合体粒子(B)の屈折率は、共重合反応時に芳香族環を含有する単量体の使用量を増量することにより高くでき、また芳香族環を含有する単量体の使用量を減量することにより低くすることができる。このように屈折率を調整することで、樹脂粒子(A)の屈折率と共重合体粒子(B)の屈折率が上記要件c)を満たすようにする。
【0146】
〔樹脂粒子組成物の製造方法〕
本発明の樹脂粒子組成物は、以上説明した環状オレフィン系樹脂粒子(A)と芳香族基含有共重合体粒子(B)との組成物であり、環状オレフィン系樹脂の特徴である優れた耐熱性、透明性および強度を有し、しかも粉末間の融着特性に劣るという従来の環状オレフィン系樹脂の欠点が解消されている。
【0147】
このような樹脂粒子組成物は、樹脂粒子(A)と共重合体粒子(B)とを物理的に混合することにより得られ、その混合の方法に特に制限はない。
【実施例】
【0148】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0149】
<分析方法>
GPC:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置(東ソー(株)製HLC-8220GPC、カラム;東ソー(株)製ガードカラムHXL-H、TSK gel G7000HXL、TSK gel GMHXL2本、TSK gel G2000HXLを順次連結、溶媒;テトラヒドロフラン、流速;1mL/min、サンプル濃度0.7〜0.8wt%、サンプル注入量;70μL、測定温度;40℃、検出器;RI(40℃)、標準物質;東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレン)を用い、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、前記Mnは数平均分子量である。
【0150】
NMR:超伝導核磁気共鳴吸収装置(NMR、Bruker社製、商品名:AVANCE500)を用い、重水素化クロロホルム中で1H−NMRを測定し、下記の合成例で合成例で合成された(共)重合体および実施例で使用された共重合体の共重合組成比および水素添加率を算出した。
【0151】
対数粘度:ウッベローデ型粘度計を用いて、クロロホルム中、試料濃度0.5g/dL、温度30℃で測定した。
Tg:示差走査熱量計(SIIナノテクノロジー社製、商品名:DSC6220)を用いて、日本工業規格K7121に従って補外ガラス転移温度を求めた。
体積平均粒子径:日機装(株)製マイクロトラックMT3300を用いて測定した。
走査型電子顕微鏡:日本電子(株)製JSM6360LA型を用いた。
屈折率:メトリコン社製 PC-2010型プリズムカプラを用い、加熱プレスして得たフィルムサンプルの任意の5箇所の屈折率を測定し、最大値および最小値を除く3点の平均値の値を採用した。尚、光源には408、633、および830nmのレーザー光源を用い、得られた屈折率からコーシーの式を用いた回帰計算により589nmにおける屈折率を算出した。
【0152】
[合成例1]
単量体として下記式(1a)に示す8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン100g、分子量調節剤として1−へキセン7.2g、およびトルエン200gを窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。
【0153】
【化22】

これにトリエチルアルミニウム(0.6mol/L)のトルエン溶液0.21mL、およびメタノール変性WCl6トルエン溶液(0.025モル/L)0.86mLを加え、80℃で1時間反応させることにより開環重合体を得た。
【0154】
次いで、得られた開環重合体溶液に水素添加触媒であるクロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(RuHCl(CO)[P(C6533)を0.04g添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし、160〜165℃の温度で、3時間反応させた。
【0155】
反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素添加物を得た[ガラス転移温度(Tg)=163℃、重量平均分子量(Mw)=6.7×104、分子量分布(Mw/Mn)=5.0、対数粘度0.45dL/g、収量90g(収率90%)]。NMR測定により求めたこの水素添加物の水素添加率は99.0%以上であった。屈折率は1.511であった。以後、得られた開環重合水添体を環状オレフィン系樹脂1Aとする。
【0156】
[合成例2]
前記式(1a)で表される単量体133.5g、下記式(2a)で表される単量体16.5g、分子量調節剤として1−へキセン15.4g、およびトルエン225gを窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。
【0157】
【化23】

これにトリエチルアルミニウム(0.6mol/L)のトルエン溶液0.34mL、およびメタノール変性WCl6トルエン溶液(0.025モル/L)1.37mLを加え、80℃で1時間反応させることにより開環共重合体を得た。
【0158】
次いで、得られた開環共重合体溶液に水素添加触媒であるクロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(RuHCl(CO)[P(C6533)を0.06g添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし、160〜165℃の温度で、3時間反応させた。
【0159】
反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素添加物を得た[ガラス転移温度(Tg)=126℃、重量平均分子量(Mw)=5.0×104、分子量分布(Mw/Mn)=4.2、対数粘度0.43dL/g、収量90g(収率90%)]。NMR測定により求めたこの水素添加物の水素添加率は99.0%以上であり、共重合組成比は[(1a)由来の構造]/[(2a)由来の構造]=89/11(重量比)であった。屈折率は1.515であった。以後、得られた開環共重合水添体を環状オレフィン系樹脂2Aとする。
【0160】
[合成例3]
前記式(1a)で表される単量体113.2g、前記式(2a)で表される単量体1.5g、下記式(3a)で表される単量体35.3g、分子量調節剤として1−へキセン20.5g、およびトルエン225gを窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。
【0161】
【化24】

これにトリエチルアルミニウム(0.6mol/L)のトルエン溶液0.34mL、およびメタノール変性WCl6トルエン溶液(0.025モル/L)1.39mLを加え、80℃で1時間反応させることにより開環共重合体を得た。
【0162】
次いで、得られた開環共重合体溶液に水素添加反応触媒である(4−ペンチルベンゾイロキシ)カルボニル(ヒドリド)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム{RuH(OCO-Ar-CH2CH2CH2CH2CH3)(CO)[P(C6532(式中Arはパラフェニレン基を表す)}を0.06g添加し、90℃に昇温した後、水素ガス圧を9〜10MPaとし、更に160〜165℃まで昇温して3時間反応させた。
【0163】
反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素添加物を得た[ガラス転移温度(Tg)=141℃、重量平均分子量(Mw)=4.4×104、分子量分布(Mw/Mn)=5.1、対数粘度0.41dL/g、収量90g(収率90%)]。NMR測定により求めたこの水素添加物の水素添加率は99.0%以上であり、共重合組成比は[(1a)由来の構造]/[(2a)由来の構造]/[(3a)由来の構造]=75.3/23.6/1.1(重量比)であった。屈折率は1.517であった。以後、得られた開環共重合水添体を環状オレフィン系樹脂3Aとする。
【0164】
[合成例4] 芳香族基含有共重合体粒子の懸濁重合法による合成例
内容積2Lのガラス容器にイオン交換水1900g、懸濁安定剤として分子量約700万のポリメタクリル酸ナトリウム(和光純薬製)7g、およびプルロニックF68(旭電化製ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル)2.5g、リン酸水素2ナトリウム1.2gを仕込んだ後、メタクリル酸メチル380g、スチレン127g、ラウロイルパーオキサイド0.8g、n−ドデシルメルカプタン1.5gを仕込んだ。800rpmで攪拌しながら75℃で2時間、さらに100℃で1時間重合反応を行った。この際、重合率が12〜100%までの間に、0.5gのプルロニックF68を連続追添加した。重合後、洗浄、脱水、乾燥を行い平均粒子径20μmの共重合体粒子を得た。
【0165】
プルロニックF68の使用量により平均粒子径を、ラウロイルパーオキサイドおよびn−ドデシルメルカプタンの使用量により分子量を調整して各種の芳香族基含有共重合体粒子を得た。また共重合成分としてメタクリル酸エチルを使用した共重合体粒子も得た。
【0166】
[実施例1]
合成例1で得た環状オレフィン系樹脂1A 49gをトルエン148gに溶解した溶液を調製した。一方、花王(株)製のノニオン界面活性剤エマルゲン130K(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB=18.1) 2.0gをイオン交換水188gに溶解した水溶液を調製した。
【0167】
界面活性剤の水溶液を500mLの容器に入れ、プライミクス(株)製T.K.ホモミクサーMARKIIにて2000〜2500rpmの回転数で攪拌しながら環状オレフィン系樹脂1Aのトルエン溶液を界面活性剤の水溶液中に投入した。
【0168】
その後、25℃にて1時間攪拌を継続した。
この乳化液をメタノール1420g中に入れ、スリーワンモーター(プロペラ翼)を用い、25℃、200rpmにて10分間攪拌した。析出した樹脂粒子をステンレス製の500メッシュ金網で回収し、100℃の真空乾燥機にて12時間乾燥した。樹脂粒子の回収率は95%であり、体積平均粒子径は36μmであった。走査型電子顕微鏡にて回収した樹脂粒子の形状を観察したところ、ほぼ球状であった。
【0169】
得られた環状オレフィン系樹脂粒子90gと懸濁重合法で得たメタクリル酸メチル/スチレン=75/25重量%共重合体粒子(体積平均粒子径10μm、Mw=5万、Tg=105℃、屈折率=1.515)10gとを混合して本発明の樹脂粒子組成物を得た。
【0170】
[実施例2]
合成例2で得た環状オレフィン系樹脂2Aを用いた以外は実施例1と同様にして環状オレフィン系樹脂粒子を回収率96%で得た。得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は50μmであり、また、形状はほぼ球形であった。
【0171】
得られた環状オレフィン系樹脂粒子90gと懸濁重合法で得たメタクリル酸メチル/スチレン=75/25重量%共重合体粒子(体積平均粒子径10μm、Mw=5万、Tg=105℃、屈折率=1.515)10gとを混合して本発明の樹脂粒子組成物を得た。
【0172】
[実施例3]
合成例3で得た環状オレフィン系樹脂3Aを用いた以外は実施例1と同様にして環状オレフィン系樹脂粒子を回収率95%で得た。得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は78μmであり、また、形状はほぼ球形であった。
【0173】
得られた環状オレフィン系樹脂粒子90gと懸濁重合法で得たメタクリル酸メチル/スチレン=75/25重量%共重合体粒子(体積平均粒子径10μm、Mw=5万、Tg=105℃、屈折率=1.515)10gとを混合して本発明の樹脂粒子組成物を得た。
【0174】
[実施例4]
合成例1で得た環状オレフィン系樹脂1Aを2軸押出し機にてペレットとした後、ハンマーミルを用いた機械的凍結粉砕を行ったところ、体積平均粒子径49μmの樹脂粒子が得られた。回収率は90%であった。
【0175】
得られた環状オレフィン系樹脂粒子90gと懸濁重合法で得たメタクリル酸メチル/スチレン=75/25重量%共重合体粒子(体積平均粒子径10μm、Mw=5万、Tg=105℃、屈折率=1.515)10gとを混合して本発明の樹脂粒子組成物を得た。
【0176】
[実施例5]
合成例2で得た環状オレフィン系樹脂2Aを2軸押出し機にてペレットとした後、ハンマーミルを用いた機械的凍結粉砕を行ったところ、体積平均粒子径60μmの樹脂粒子が得られた。回収率は90%であった。
【0177】
得られた環状オレフィン系樹脂粒子90gと懸濁重合法で得たメタクリル酸メチル/スチレン=75/25重量%共重合体粒子(体積平均粒子径10μm、Mw=5万、Tg=105℃、屈折率=1.515)10gとを混合して本発明の樹脂粒子組成物を得た。
【0178】
[実施例6]
合成例3で得た環状オレフィン系樹脂3Aを2軸押出し機にてペレットとした後、ハンマーミルを用いた機械的凍結粉砕を行ったところ、体積平均粒子径60μmの樹脂粒子が得られた。回収率は90%であった。
【0179】
得られた環状オレフィン系樹脂粒子90gと懸濁重合法で得たメタクリル酸メチル/スチレン=75/25重量%共重合体粒子(体積平均粒子径10μm、Mw=5万、Tg=105℃、屈折率=1.515)10gとを混合して本発明の樹脂粒子組成物を得た。
【0180】
[実施例7]
芳香族基含有共重合体粒子として、懸濁重合法で得たメタクリル酸メチル/スチレン=75/25重量%共重合体粒子(体積平均粒子径20μm、Mw=5万、Tg=105℃、屈折率=1.515)を用いた以外は実施例5と同様にして本発明の樹脂粒子組成物を得た。
【0181】
[実施例8]
芳香族基含有共重合体粒子として、懸濁重合法で得たメタクリル酸メチル/スチレン=75/25重量%共重合体粒子(体積平均粒子径20μm、Mw=10万、Tg=107℃、屈折率=1.515)を用いた以外は実施例5と同様にして本発明の樹脂粒子組成物を得た。
【0182】
[実施例9]
環状オレフィン系樹脂粒子80gに対して芳香族基含有共重合体粒子20gを混合したこと以外は実施例5と同様にして本発明の樹脂粒子組成物を得た。
【0183】
[実施例10]
芳香族基含有共重合体粒子として、懸濁重合法で得たメタクリル酸メチル/スチレン=75/25重量%共重合体粒子(体積平均粒子径10μm、Mw=1.5万、Tg=85℃、屈折率=1.515)を用いたこと以外は実施例5と同様にして本発明の樹脂粒子組成物を得た。
【0184】
[実施例11]
芳香族基含有共重合体粒子として、懸濁重合法で得たスチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸エチル共重合体粒子(体積平均粒子径20μm、Mw=3万、Tg=75℃、屈折率=1.515)を用いたこと以外は実施例5と同様にして本発明の樹脂粒子組成物を得た。
【0185】
[実施例12]
芳香族基含有共重合体粒子として、懸濁重合法で得たスチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸エチル共重合体粒子(体積平均粒子径20μm、Mw=3万、Tg=75℃、屈折率=1.515)を用い、環状オレフィン系樹脂粒子50gに対して芳香族基含有共重合体粒子50gを混合したこと以外は実施例5と同様にして本発明の樹脂粒子組成物を得た。
【0186】
[比較例1]
芳香族基含有共重合体粒子を添加せず、環状オレフィン系樹脂粒子の使用量を100gとしたこと以外は実施例1と同様にして環状オレフィン系樹脂粒子を得た。
【0187】
[比較例2]
芳香族基含有共重合体粒子を添加せず、環状オレフィン系樹脂粒子の使用量を100gとしたこと以外は実施例4と同様にして環状オレフィン系樹脂粒子を得た。
【0188】
[比較例3]
芳香族基含有共重合体粒子を添加せず、環状オレフィン系樹脂粒子の使用量を100gとしたこと以外は実施例5と同様にして環状オレフィン系樹脂粒子を得た。
【0189】
[比較例4]
芳香族基含有共重合体粒子として、懸濁重合法で得たメタクリル酸メチル/スチレン=75/25重量%共重合体粒子(体積平均粒子径50μm、Mw=5万、Tg=105℃、屈折率=1.515)を用いた以外は実施例5と同様にして樹脂粒子組成物を得た。
【0190】
[比較例5]
芳香族基含有共重合体粒子として、懸濁重合法で得たメタクリル酸メチル/スチレン=65/35重量%共重合体粒子(体積平均粒子径10μm、Mw=5万、Tg=103℃、屈折率=1.532)を用いた以外は実施例5と同様にして樹脂粒子組成物を得た。
【0191】
[比較例6]
芳香族基含有共重合体粒子として、懸濁重合法で得たメタクリル酸メチル/N-フェニルマレイミド=75/25重量%共重合体(体積平均粒子径10μm、Mw=5万、Tg=130℃、屈折率=1.515)を用いた以外は実施例5と同様にして樹脂粒子組成物を得た。
【0192】
[比較例7]
環状オレフィン系樹脂粒子を使用せず、メタクリル酸メチル/スチレン=75/25重量%共重合体粒子(体積平均粒子径10μm、Mw=5万、Tg=105℃、屈折率=1.515)100gを用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。
【0193】
<評価>
《融着性》
実施例および比較例で得た樹脂粒子組成物または樹脂粒子1gを良く混合した後3.5mLのサンプル瓶に入れ、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度よりも30℃(A法)または70℃(B法)高い温度に設定したオーブン中にて加熱した時の融着性を下記の基準により評価した。
◎:溶融融着時の外観に透明性がある
○:部分的に透明性がある
× :全体的に不透明である
【0194】
《耐熱性》
上記融着生評価により得られた融着物をサンプル瓶から取り出して110℃のオーブンにて1時間加熱し熱変形の有無を下記基準により評価した。
○:変形なし、
× :変形有り
結果をまとめて下表1に示した。
【0195】
【表1】

上記結果から、本発明の樹脂粒子組成物は粒子同士がより低温で融着し、その際に透明性を発現することがわかる。比較例1〜3は芳香族基含有樹脂粒子を含まない環状オレフィン系樹脂粒子であり、環状オレフィン系樹脂は本来透明性を有しているが、A法(環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度より30℃高い温度で加熱)で加熱しても不透明であり、B法(環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度より70℃高い温度で加熱)で加熱をすれば透明になっていることから、比較例1〜3の環状オレフィン系樹脂粒子は低温(A法)での加熱では融着不良を起こすことが分かる。さらに本発明の樹脂粒子組成物は耐熱性にも優れるため、粉末焼結積層造形等の用途に有用であることもわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積平均粒子径が1〜100μm、ガラス転移温度が80〜200℃である環状オレフィン系樹脂粒子(A)と、下記一般式(式−1)で表される構造単位および芳香族環を含有する構造単位を有する芳香族基含有共重合体粒子(B)との樹脂粒子組成物であって、
前記樹脂粒子(A)のガラス転移温度(℃)をTg(A)、体積平均粒子径(μm)をD(A)、波長589nm、温度23℃における屈折率をn(A)とし、
前記共重合体粒子(B)のガラス転移温度(℃)をTg(B)、体積平均粒子径(μm)をD(B)、波長589nm、温度23℃における屈折率をn(B)としたとき、下記要件a)〜c)を満足することを特徴とする樹脂粒子組成物:
a)Tg(A)>Tg(B)
b)D(A)×0.8>D(B)
c)[n(B)-0.01]≦n(A)≦[n(B)+0.01]
【化1】

[式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は酸素原子または窒素原子を含む連結基を介してカルボニル炭素に結合した置換もしくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基、水素原子、水酸基、またはアミノ基を表す。]。
【請求項2】
前記樹脂粒子(A)と前記共重合体粒子(B)との重量比が、[樹脂粒子(A)]/[共重合体粒子(B)]=10/90〜99/1であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂粒子組成物。
【請求項3】
前記樹脂粒子(A)を構成する環状オレフィン系樹脂が、
下記(1)〜(6)の何れかの環状オレフィン系樹脂であり、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が30,000〜200,000であり、
ウッベローデ型粘度計を用いて測定した対数粘度が0.30〜0.95dL/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂粒子組成物:
(1)下記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体に由来する構造単位を有する開環(共)重合体
(2)下記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体に由来する構造単位を有する開環(共)重合体を水素添加して得られる開環(共)重合水添体
(3)上記(1)または(2)の開環(共)重合体または開環(共)重合水添体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加して得られる開環(共)重合水添体
(4)下記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体の付加(共)重合体
(5)下記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体とエチレンまたは1置換エチレンとの付加共重合体
(6)下記一般式(式―2)で表される環状オレフィン系単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体の付加型(共)重合体またはその水添体
【化2】

[上記式中、aおよびbは独立に0または1を示し、cおよびdは独立に0〜2の整数を示し、
4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12およびR13はそれぞれ独立に、
水素原子;
ハロゲン原子;
酸素原子、硫黄原子、窒素原子、またはケイ素原子を含む連結基を有してもよい置換もしくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基;
または極性基を示し、
10とR11、またはR12とR13とは一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、
10またはR11とR12またはR13とは相互に結合して炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい。]。
【請求項4】
前記環状オレフィン系樹脂が前記(2)の環状オレフィン系樹脂であり、該環状オレフィン系樹脂の芳香族性の不飽和結合を除く炭素-炭素二重結合部分のうち95%以上が水素添加されていることを特徴とする請求項3に記載の樹脂粒子組成物。
【請求項5】
前記共重合体粒子(B)における芳香族環を含有する構造単位が、下記一般式(式−3)で表される構造単位であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の樹脂粒子組成物:
【化3】

[式中、R14およびR15は独立に水素原子またはメチル基を表す。]。
【請求項6】
前記共重合体粒子(B)を構成する一般式(式−1)で表される構造単位が、(メタ)アクリル酸エステル類または(メタ)アクリルアミド類から誘導される構造単位であり、
前記共重合体粒子(B)を構成する一般式(式−3)で表される構造単位が、スチレンまたはα−メチルスチレンから誘導される構造単位であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂粒子組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の樹脂粒子組成物を粉末焼結積層造形法により造形して得られる造形物。

【公開番号】特開2010−174068(P2010−174068A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15637(P2009−15637)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】