説明

樹脂組成物、これを用いた接着剤および塗料

【課題】 天然由来資源から得ることができるモノマーであるイソソルビドを共重合成分として含有する共重合ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物とを含有し、比較的低温かつ短時間のエージングで硬化反応が進行する樹脂組成物およびこれを含有する接着剤および塗料を提供する。
【解決手段】 イソソルビドが共重合されている共重合ポリエステル樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(B)とを含有し、酸価(対固形分)が30当量/10g以上である樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来原料であるイソソルビドを共重合成分としている共重合ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物を含有する樹脂組成物に関するものであり、本発明の樹脂組成物は、たとえば接着剤および/または塗料として利用することが可能なものである。
【背景技術】
【0002】
これまで共重合ポリエステル樹脂を構成するモノマーのほとんどが石油資源由来であった。近年、石油資源の枯渇や焼却処分の際の炭素ガスの環境中への放出に関する懸念が広がり、これらに対する懸念の軽減策として天然資源由来のモノマーが注目されるようになってきている。中でもイソソルビドは、糖類やでんぷんから容易に合成することができるので入手が比較的容易であり、共重合ポリエステル樹脂を構成するグリコール成分としての検討が進んでいる。
【0003】
イソソルビドを共重合することによって、共重合ポリエステル樹脂の耐熱性を高める効果があることが既に知られている。特許文献1〜2では、イソソルビドを共重合した成型用の結晶性樹脂の開示があり、耐熱性に優れるポリエステル樹脂を作ることができるとしている。特許文献3では、イソソルビドを共重合したポリエステルを用いたフィルムは、透明性を有し、食品包装等で用いることができるとしている。特許文献4では、透明性と耐熱性を生かしたホットフィルボトルの開示を行っている。特許文献5では、イソソルビドを水溶液として取り扱い、ポリエステルの重合の効率を高める開示を行っている。
【0004】
一方、特許文献6には、芳香族ジカルボン酸を40モル%以上、イソソルビドを3〜80モル%含有し、25℃において2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)に濃度10重量%で溶解する可溶性共重合ポリエステル樹脂が開示されており、耐熱性が高い塗料およびコーティング用に用いることが想定されているようである。ところが、特許文献6には、イソソルビドを共重合したポリエステル樹脂が数種類開示されているものの、その数平均分子量、ガラス転移温度および特定の2種類の溶媒に対する溶解性が示されているのみであり、塗料やコーティング剤において必須の特性である接着性や耐湿熱性がまったく評価されていないので、実際に塗料やコーティング剤として有効であるのかは不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3413640号公報
【特許文献2】特許3399465号公報
【特許文献3】特表2007−508412号公報
【特許文献4】特表2007−504352号公報
【特許文献5】特表2006−506485号公報
【特許文献6】特開2010−95696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、従来から知られているイソソルビド共重合ポリエステル樹脂を、溶剤溶解型接着剤、塗料およびコーティング剤のバインダー成分として利用することを検討した。特許文献1〜5に開示されているイソソルビド共重合ポリエステル樹脂は、いずれも汎用溶剤に対する溶解性に乏しく、このため溶剤溶解型接着剤、塗料およびコーティング剤のバインダー成分として用いることができないことが判明した。また、特許文献6のイソソルビド共重合ポリエステル樹脂は、一部の汎用溶剤には溶解するものの、接着性、耐候性および耐湿熱性が不十分であり、バインダー成分としての実用性には乏しいことが判明した。また、特許文献1〜6に開示されているイソソルビド共重合ポリエステル樹脂は、たとえ汎用溶剤に溶解するものであっても、イソシアネート化合物との反応性に乏しく、高温かつ長時間のエージングを行なわないと効果的な硬化反応が生じないので、ポリイオシアネート硬化系の実用性には乏しいことが判明した。
【0007】
本発明の課題は、天然由来資源から得ることができるモノマーであるイソソルビドを共重合成分として含有する共重合ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物とを含有し、比較的低温かつ短時間のエージングで硬化反応が進行する樹脂組成物およびこれを含有する接着剤および塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意研究した結果、イソソルビドを共重合成分として含有した共重合ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物とからなる樹脂組成物の酸価を高くすることにより、40〜60℃程度の比較的低い温度における1日程度のエージングにより硬化反応が十分に進行し、耐湿熱性に優れる硬化物を得ることができることを見出した。また、共重合ポリエステル樹脂およびポリイソシアネート化合物として特定組成のものを用いることにより、さらに、実用に耐える程度の初期接着性と高度な耐候性をも発揮させることができ、塗料や接着剤として有用であることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は
(1) イソソルビドが共重合されている共重合ポリエステル樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(B)とを含有し、酸価(対固形分)が30当量/10g以上である樹脂組成物。
(2) 前記共重合ポリエステル(A)の酸価が30当量/10g以上であることを特徴とする(1)に記載の樹脂組成物。
(3) カルボキシル基を有し前記共重合ポリエステル(A)に該当しない化合物(C)を含有することを特徴とする(1)に記載の樹脂組成物。
(4) 前記共重合ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して前記ポリイソシアネート化合物(B)が1〜20重量部配合されていることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の樹脂組成物。
(5) 前記共重合ポリエステル樹脂(A)が、共重合ポリエステル樹脂を構成する全多価酸成分に対して、イソフタル酸および/またはオルトフタル酸を合計60モル%以上共重合されているものであることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の樹脂組成物。
(6) 前記共重合ポリエステル樹脂(A)が、共重合ポリエステル樹脂を構成する全多価アルコール成分に対して、イソソルビドを5モル%以上60モル%以下共重合されているものであることを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載の樹脂組成物。
(7) 前記ポリイソシアネート化合物(B)が脂肪族ポリイソシアネート化合物および/または脂環族ポリイソシアネート化合物であることを特徴とする(1)〜(6)いずれかに記載の樹脂組成物。
(8) 前記化合物(C)がモノカルボン酸、多価カルボン酸および/またはカルボキシル基を有するポリエステル樹脂から選ばれるいずれか1種以上であることを特徴とする(3)〜(7)いずれかに記載の樹脂組成物。
(9) (1)〜(8)いずれかの樹脂組成物を含有する接着剤。
(10) (1)〜(8)いずれかの樹脂組成物を含有する塗料。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、イソソルビドが共重合されている共重合ポリエステル樹脂をバインダー成分とするにもかかわらず、比較的低温かつ短時間のエージングにより硬化反応が十分に進行し、高度な耐湿熱性を有する硬化物を得ることができる。。また、好ましい実施態様においてはさらに、実用に耐える程度の初期接着性と高度な耐候性をも発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、イソソルビドが共重合されている共重合ポリエステル樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(B)とを含有し、酸価(対固形分)が30当量/10g以上である樹脂組成物である。
【0013】
低酸価の共重合ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物を配合した場合、共重合ポリエステル樹脂が有する水酸基とポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基の反応性が低く、実用的な硬化状態を生じさせるためには50〜60℃で5〜7日間程度の長時間にわたるエージングが必要とされることが知られている。共重合ポリエステル樹脂としてイソソルビドを共重合した樹脂を用いると更に反応性が低下し、50〜60℃で5〜7日間程度の長時間にわたるエージングを行なってもなお硬化不十分な状態にある場合が多い。ところが、イソソルビドが共重合された共重合ポリエステル樹脂を用いる場合であっても、樹脂組成物の固形分当たり酸価を高くすることにより、40〜60℃程度の比較的低い温度における1日程度のエージングにより硬化反応が十分に進行し、耐湿熱性に優れる硬化物を得ることができる。
【0014】
本発明の樹脂組成物の酸価は、前記共重合ポリエステル(A)に起因するものであっても、カルボキシル基を有し前記共重合ポリエステル(A)に該当しない化合物(C)に起因するものであってもよく、また両者が併用されていてもよい。本発明の樹脂組成物の酸価は30当量/10g以上であり、35当量/10g以上であることがより好ましい。樹脂組成物の酸価が低すぎると、硬化反応を促進する効果が発揮されない。一方、本発明の樹脂組成物の酸価の上限は特に限定されないが、酸価が高すぎると得られる硬化物の耐湿熱性が低下する場合がある。このため、高温高湿下や特に長期間の耐久性を要求される用途に用いる場合には、150当量/10g以下であることが好ましく、100当量/10g以下であることがさらに好ましい。
【0015】
本発明の樹脂組成物を構成するポリエステル樹脂(A)の酸価は、化合物(C)を配合する場合は特に限定されないが、化合物(C)を配合しない場合には樹脂組成物酸価を30当量/10g以上とするに足りるだけの酸価を有するものを用いる必要がある。化合物(C)を配合しない場合のポリエステル樹脂(A)の酸価は30当量/10g以上であり、35当量/10g以上であることがより好ましい。
【0016】
本発明に使用される共重合ポリエステル樹脂(A)を酸価を有するものとするには、例えばカルボキシル基を導入すればよい。共重合ポリエステル樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、共重合ポリエステル樹脂を重合した後に常圧、窒素雰囲気下で酸無水物を後付加して酸価を付与する方法や、ポリエステルを高分子量化する前のオリゴマー状態のものにこれらの酸無水物を投入し次いで減圧下の重縮合により高分子量化することでポリエステルに酸価を導入する方法などがある。前者の方法でかつ無水トリメリット酸を使用すると、目標とする酸価が特に得られやすい。これらの反応に用いることのできる酸無水物しては、既述の無水トリメリット酸のほか、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水コハク酸、無水1,8−ナフタル酸、無水1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸=3,4−無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ナフタレン−1,8:4,5−テトラカルボン酸二無水物などの芳香族カルボン酸無水物および脂環族カルボン酸無水物であることが好ましく、これらの1種または2種以上を選択して使用することができる。
【0017】
本発明に使用される共重合ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量は特に限定されないが、4,000〜40,000であることが好ましく、より好ましくは9,000〜30,000である。ポリエステル樹脂の数平均分子量が低すぎると架橋間分子量が小さいため、塗膜が硬くなりすぎて接着強度が低下してしまう恐れがある。40,000を超えると硬化剤と十分に反応できないために耐湿熱性が低下してしまう恐れがある。
【0018】
本発明に使用される共重合ポリエステル樹脂(A)は、多価カルボン酸成分(A1)と多価グリコール成分(A2)の重縮合物、または、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)とヒドロキシカルボン酸成分(A3)の重縮合物であり、成分(A1)と成分(A2)の少なくとも一方が複数の成分からなるものである。
【0019】
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)を構成する多価カルボン酸成分(A1)は特に限定されないが、イソフタル酸成分および/またはオルソフタル酸成分が共重合されていることが好ましく、イソフタル酸成分とオルソフタル酸成分の合計は、全ジカルボン酸成分に対し、60モル%以上であることがより好ましい。イソフタル酸成分とオルソフタル酸成分の合計共重合比率は70モル%以上であることが更に好ましく、80モル%以上であることがよりさらに好ましい。イソフタル酸成分とオルソフタル酸成分の合計が低すぎると、その他の共重合成分によっては得られる共重合樹脂のガラス転移温度が低くなりすぎて耐湿熱性が悪化する場合や、十分な耐候性、初期接着性が得られない場合がある。
【0020】
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)を構成する他の多価カルボン酸成分としては、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ジカルボキシビフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸の脂環族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸を例示することができる。
【0021】
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)に脂肪族ジカルボン酸を共重合する場合には、本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成する全酸成分に対し30モル%以下とすることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸の共重合比率が高くなりすぎると、得られる共重合ポリエステル樹脂の耐加水分解性が悪化し、樹脂の使用環境によっては接着性に悪影響を及ぼすことがある。なお、「全酸成分」とは、本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分(A1)とヒドロキシカルボン酸成分(A3)の総和である。
【0022】
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)には、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール(以降「イソソルビド」と呼び、下記に化学式を示す)が共重合されている。イソソルビドは、再生可能資源、例えば糖類およびでんぷんから容易に製造することができる。例えば、D−グルコースを水添し、脱水反応をすることにより、イソソルビドを得ることができる。現在市販されているイソソルビドは再生可能資源から製造されたものであるとされている。
【0023】
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)におけるイソソルビドの共重合比率は特に限定されないが、全グリコール成分に対し5モル%〜60モル%であることが好ましい。共重合比率が低すぎると、共重合ポリエステル樹脂(A)の耐湿熱性を高める効果がほとんどなく、また、共重合比率が高すぎると、ガラス転移温度が高くなりすぎる傾向にある。接着剤としての接着性を発現させる為には、共重合ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は50℃以下であることが好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましい。一方、塗料としての基材に対する密着性を発現させるためには、共重合ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は60℃以下であることが好ましい。このような共重合ポリエステル樹脂(A)を得るには、例えば長い脂肪族鎖を有する二塩基酸またはグリコールを導入すればよく、耐湿熱性をも併せ持つためには炭素数5以上の脂肪族グリコールを共重合することが好ましい。一方、共重合ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が低すぎると、樹脂が柔軟すぎるために接着力および耐湿熱性が低下してしまう傾向にある。
【0024】
一方、イソソルビドは二級アルコールであるため、重合性が低く、共重合比率を高くすると重合時間が長くなる傾向があり、共重合ポリレステルの製造コストの面で不利となる。したがって、重合性を損なわないためには、イソソルビドの共重合比率は、60モル%以下にすることが好ましく、30モル%以下にすることがさらに好ましい。
【0025】
なお、「全グリコール成分」とは、本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分(A2)とヒドロキシカルボン酸成分(A3)の総和である。
【0026】
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)を構成する他の多価アルコール成分(A2)としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族グリコールを挙げることができる。また、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、ビスフェノールAPおよび4,4’−ビフェノールのエチレンオキサイド付加体またはプロピレンオキサイド付加体、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレンエーテルグリコールを挙げることができる。これらの中でも、汎用性があるエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールが好ましい。
【0027】
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)には、適度な柔軟性、接着性の向上、ガラス転移温度の調整などの目的に応じて、ヒドロキシカルボン酸成分(A3)を共重合することができる。成分(A3)は、全カルボン酸成分の20モル%以下とすることが好ましい。成分(A3)の割合が高すぎると、接着性に悪影響を及ぼすことがあるので好ましくない。
【0028】
成分(A3)の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、10−ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシカルボン酸のほか、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトンを挙げることができる。これらの中でも、汎用性があるε−カプロラクトンが好ましい。
【0029】
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)には、少量であれば、3官能以上のカルボン酸成分や3官能以上のアルコール成分を共重合してもよい。3官能以上のカルボン酸成分としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸等の芳香族カルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族カルボン酸が挙げられる。3官能以上のアルコール成分としては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコース、マニトール、ソルビトールが挙げられる。
【0030】
多価カルボン酸成分(A1)や多価アルコール成分(A2)は、共重合ポリエステル樹脂(A)に対し付与したい特性に応じて、複数種以上混合して用いることが可能である。このとき、3官能以上のモノマーの共重合比率は、全カルボン酸成分または全アルコール成分に対して0.2〜5モル%程度が適当である。3官能以上のモノマーの共重合比率が低すぎると共重合による効果が発現せず、共重合比率が高すぎるとゲル化が問題になる場合がある。
【0031】
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)には、モノカルボン酸、モノアルコールが共重合されていてもよい。モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等、モノアルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0032】
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)はテレフタル酸成分の共重合比率が20モル%未満であることが好ましい。テレフタル酸成分の共重合比率が高すぎると十分な耐候性を示さない場合がある。
【0033】
本発明において、耐候性とは紫外線照射に対する耐久性を指し、黄変着色の程度によって評価する。紫外線照射はアイスーパーUVテスターにより行い、黄変着色の程度は紫外線照射前後のCo−b値の差により判定する。
【0034】
光劣化を開始する活性種としてはヒドロペルオキシドおよびペルオキシド基、カルボニル基、一重項酸素等などが知られている。共重合ポリエステル樹脂中のテレフタル酸成分はこれらの活性種の影響により着色物質へと変化しやすいことから、テレフタル酸成分を減らすことは耐候性を上昇させる有効な手段となる。
【0035】
また、共重合ポリエステル樹脂の光劣化は、発生したアルコキシラジカル、ペルオキシラジカル等の活性種の影響を共重合ポリエステル樹脂が受けることによって進行するものと考えられており、エステル結合部分も比較的活性種の影響を受けやすいが、グリコール成分の選択により耐候性を改善することができる。すなわち、第二級ヒドロキシル基とカルボン酸により形成されるエステル結合は第一級ヒドロキシル基とカルボン酸により形成されるエステル結合よりも安定性が高いため、第二級ヒドロキシル基をもつイソソルビドを多価アルコール成分として使用することでより耐候性を上昇させることができる。
【0036】
一般的に共重合ポリエステル樹脂を製造する反応は、エステル化反応工程および重縮合反応工程からなる。エステル化反応工程とは、全モノマーおよび/または低重合体から、所望の組成の低重合体を作製する工程あり、重縮合反応工程とは、エステル化反応工程で生成された低重合体からグリコール成分を留去させ、所望の分子量の重合物を得る工程である。
【0037】
本発明の共重合ポリエステル樹脂の製造においても、一般的な共重合ポリエステル樹脂を製造する方法を用いることができる。
【0038】
ここで、共重合ポリエステル樹脂の製造方法の例について説明する。
【0039】
エステル化反応工程では、全モノマー成分および/またはその低重合体を不活性雰囲気下、加熱熔融して反応させる。イソソルビドは2級アルコールであるため、1級アルコールと比べて、反応性が低い。そのため、エステル化温度は、180〜250℃が好ましく、220〜250℃がより好ましく、反応時間は2.5〜10時間が好ましく、2.5時間〜6時間がより好ましい。なお、反応時間は所望の反応温度になってから、つづく重縮合反応までの時間とする。
【0040】
重縮合反応工程では、減圧下、220〜280℃の温度で、エステル化反応工程で得られたエステル化物から、グリコール成分を留去させ、所望の分子量に達するまで重縮合反応を進める。重縮合の反応温度は、220〜270℃が好ましく、220〜250℃がより好ましい。減圧度は、0.1Torr以下であることが好ましい。減圧度が低いと、重縮合時間が長くなる傾向があるので好ましくない。大気圧から0.1Torr以下に達するまでの減圧時間としては、60〜180分かけて徐々に減圧することが好ましい。
【0041】
エステル化反応および重縮合反応の際には、必要に応じて、テトラブチルチタネートなどの有機チタン酸化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の酢酸塩、三酸化アンチモン、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズなどの有機錫化合物を用いて重合を行う。その際の触媒使用量は、生成する樹脂質量に対し、1.0質量%以下で用いるのが好ましい。
【0042】
また、一般的に共重合ポリエステル樹脂に所望の酸価や水酸基価を付与する場合には、前記の重縮合反応に引き続き、多塩基酸成分や多価グリコール成分をさらに添加し、不活性雰囲気下、解重合を行うことができる。
【0043】
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)の製造においても、一般的な共重合ポリエステル樹脂を製造する場合と同様に解重合を行い、所望の酸価や水酸基価を付与することができる。
【0044】
本発明の樹脂組成物にはポリイソシアネート化合物(B)が配合されている。本発明に用いられるポリイソシアネート化合物(B)の組成は特に限定されないが、脂肪族イソシアネート化合物および/または脂環族イソシアネート化合物を用いると、屋外用途での経時的な黄変を軽減させる硬化があり、好ましく、ヘキキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートを使用することが特に好ましい。それぞれイソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体の種類があるがイソシアヌレート体が好ましい。本発明においては、40〜60℃程度の比較的低い温度における1日程度のエージングであっても容易に硬化反応が進行するため、硬化剤として脂肪族イソシアネート化合物および/または脂環族イソシアネート化合物を用いること好ましい。
【0045】
本発明の樹脂組成物における共重合ポリエステル樹脂(A)とイソシアネート化合物(B)の配合比は、共重合ポリエステル樹脂(A)100重量部に対してイソシアネート化合物(B)1〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは5〜10重量部である。配合比が低すぎると架橋密度が低すぎて初期接着性や耐湿熱性に影響する恐れがあり、配合比が高すぎると塗膜の架橋密度が高すぎるために接着性に劣る可能性がある。
【0046】
本発明の樹脂組成物には、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を含有させることができる。
【0047】
本発明の樹脂組成物はそれ自体で、あるいは溶剤、ポリイソシアネート化合物以外の硬化剤、フィラー等を更に配合することにより、接着剤として用いることができる。
【0048】
本発明の樹脂組成物はそれ自体で、あるいは溶剤、ポリイソシアネート化合物以外の硬化剤、顔料等を更に配合することにより、塗料として用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中、単に部とあるのは重量部を示す。また、各測定項目は以下の方法に従った。
【0050】
(1)ポリエステル樹脂組成
ポリエステル樹脂の組成及び組成比の決定は共鳴周波数400MHzのH−NMR分析(プロトン型核磁気共鳴分光分析)にて行った。測定装置はVARIAN社製NMR装置400−MRを用い、溶媒には重クロロホルム(トリフルオロ酢酸添加)を用いた。
【0051】
(2)共重合ポリエステル樹脂の酸価
試料0.2gを精秤しクロロホルム40mlに溶解し、0.01Nの水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定を行った。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。単位は、試料10gあたりのモル数、すなわち、当量/10gとした。
【0052】
(3)ガラス転移温度
示差走査型熱量計(SII社、DSC−200)により測定した。サンプルは試料5mgをアルミニウム抑え蓋型容器に入れ密封し、液体窒素を用いて−50℃まで冷却、次いで150℃まで20℃/分にて昇温させた。その過程にて得られる吸熱曲線において、吸熱ピークが出る前のベースラインと、吸熱ピークに向かう接線との交点の温度をもって、ガラス転移温度とした。
【0053】
(4)数平均分子量
試料4mgを、4mlのテトラヒドロフラン(テトラブチルアンモニウムクロライド5mM添加)に溶解した後、0.2μmのメンブランフィルターでろ過した試料溶液のゲル浸透クロマトグラフィー分析を行った。装置はTOSOH HLC−8220で示差屈折率検出器を用い、40℃で測定を実施した。数平均分子量は標準ポリスチレン換算値とし、分子量1000未満に相当する部分を省いて算出した。
【0054】
(5)樹脂組成物の酸価
樹脂組成物の固形分濃度は以下の方法により決定した。樹脂組成物が薄膜塗布できる液状である場合、ドライ膜厚が10μmになるようにバーコーターで樹脂組成物の塗膜を形成し、次いで120℃下3分の乾燥条件で揮発させ、不揮発分を固形分とした。樹脂組成物が薄膜塗布できる液状でない場合、切断、粉砕、圧延等の方法により最大厚が5mm以下となるように樹脂組成物の形状を整えた後、120℃下で3時間の減圧乾燥を行ない、不揮発分を固形分とした。
樹脂組成物0.2gを精秤しクロロホルム40mlに溶解し、0.01Nの水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定を行った。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。得られた酸価を樹脂組成物の固形分濃度で割り返し、樹脂組成物中の固形分10gあたりのモル数、すなわち当量/10gで表した。
【0055】
共重合ポリエステル樹脂(1)の製造例
2リッターステンレス製オートクレーブにイソフタル酸267.9g(1.34モル)、オルソフタル酸116.5g(0.60モル)、トリメリット酸5.0g(0.02モル)、1、6−ヘキサンジオール281.2g(2.38モル)、イソソルビド61.4g(0.42モル)、触媒としてテトラブチルチタネート0.18gを仕込み、200℃まで昇温しつつ、0.25MPaの加圧下で150分間エステル化反応を行い、オリゴマー混合物を得た。その後、60分間かけて220℃まで昇温しつつ、反応系の圧力を徐々に下げて、0.1Torrとして、ポリエステル重縮合反応を60分間行った。放圧に続き、窒素雰囲気下で220℃まで冷却し、無水トリメリット酸5.0g(0.02モル)を加えて30分攪拌した。微加圧下のレジンを冷水にストランド状に吐出して急冷し、その後20秒間冷水中で保持した後、カッティングして長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状のペレットを得た。得られたペレットは常温で24時間以上風乾してから使用した。
【0056】
共重合ポリエステル樹脂(2)〜(9)の製造例
ポリエステル樹脂(1)の製造例に準じて、但し、原料の種類と配合比率を変更して、ポリエステル樹脂(2)〜(9)を製造した。樹脂組成と樹脂物性は表1に示した。
【0057】
【表1】

【0058】
共重合ポリエステル樹脂溶液の調製
200mLの四つ口フラスコに、樹脂30g、2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)70gを入れ、フラスコに設置したメカニカルスターラーを用い、攪拌速度100rpm、温度65℃で溶解した。溶解後、溶液を常温になるまで冷却し、樹脂濃度30重量%の共重合ポリエステル樹脂溶液とした。
【0059】
塗工液組成物の調製
前記共重合ポリエステル樹脂溶液20gに、ポリイソシアネートN3300(住化バイエルウレタン製)を0.6g添加、混合し、塗工液組成物とした。この塗工液組成物において、共重合ポリエステル樹脂とポリイソシアネートの比率は、重量比で10:1である。実施例1〜6、比較例1、2においてはこの塗工液組成物をそのまま使用して、以下の評価を行った。また、実施例7〜9においてはさらにトリメリット酸またはコハク酸を配合して溶解したものを塗工液組成物として用い、以下の評価を行った。
【0060】
接着・耐湿熱試験用サンプルの調製
ポリエステルフィルム(東洋紡製シャインビームQ1210 厚さ125μm)の片面に、前記塗工液組成物をドライ膜厚が10μmになるようにバーコーターで塗布し、溶媒を120℃下3分の乾燥条件で揮発させ、ポリエステルフィルム/樹脂組成物積層体を得た。
次いで、ポリエステルフィルム/樹脂組成物積層体の接着剤側とポリエステルフィルム(東洋紡製シャインビームQ1210 厚さ125μm)とを接触させ、ドライラミネーターを用いて圧着させた。ドライラミネーション条件は、ロール温度120℃、ロール荷重3kg/cm、被圧着物速度1m/分とした。その後、40℃、24時間のエージングを行なって樹脂組成物を硬化させ、接着・耐湿熱試験用サンプルを得た。
【0061】
塗料・耐湿熱試験用サンプルの調製
ポリエステルフィルム(東洋紡製シャインビームQ1210 厚さ125μm)の片面に、前記塗工液組成物をドライ膜厚が10μmになるようにバーコーターで塗布し、溶媒を120℃下3分の乾燥条件で揮発させ、ポリエステルフィルム/樹脂組成物積層体を得た。このサンプルを塗料・耐湿熱試験用サンプルとした。
【0062】
耐候性試験用サンプル
ポリエステルフィルム(東洋紡製、シャインビームQ1210、厚み50μm)に前記塗工液組成物をドライ膜厚20μmになるように塗布し、溶媒を揮発させ、ポリエステルフィルム/樹脂組成物積層体を得た。次いで、ポリエステルフィルム/樹脂組成物積層体の樹脂組成物側とポリプロピレンフィルム(東洋紡製P2161、厚み50μm)の非コロナ処理面とを接触させ、ドライラミネーターを用いて圧着させた。ドライラミネーション条件は、ロール温度120℃、ロール荷重3kg/cm、被圧着物速度1m/分とした。その後、40℃、24時間のエージングを行なって樹脂組成物を硬化させ、更にポリプロピレンフィルムを剥離させ、耐候性試験用サンプルを得た。
【0063】
性能評価項目および評価方法は下記の通りである。
【0064】
接着剤評価−初期接着性:
前記接着・耐湿熱試験用サンプルを幅15mmの短冊状に切り取り、テンシロン(東洋測器(株)製、UTM−IV)で剥離強度(T型ピール剥離、引っ張り速度50mm/分)を測定し、初期剥離強度とした。初期接着性はSABCの4段階評価とし、初期剥離強度が1000g/1.5cm以上のものをS、600g/1.5cm以上のものをA、300g/1.5cm以上のものをB、300g/1.5cm未満のものをCとした。
【0065】
接着剤評価−耐湿熱性:
105℃、相対湿度100%のレトルト試験機(トミー工業(株)製 ES−315)内に前記接着・耐湿熱試験用サンプルを96時間静置した後の剥離強度(180゜ピール剥離強度、引っ張り速度50mm/分、単位;Kgf/15mm)を測定し、耐湿熱試験後の剥離強度とした。剥離強度耐湿熱保持率を以下の式から算出し、耐湿熱性の評価指標とした。数値が高いほど耐湿熱性が良好なことを示す。
剥離強度耐湿熱保持率(%)=(耐湿熱試験後の剥離強度/初期剥離強度)×100
耐湿熱性はABCの3段階評価とし、剥離強度耐湿熱保持率が50%以上のものをA、40%以上のものをB、40%未満のものをCとした。但し、耐湿熱試験後の剥離強度が100g/1.5cm以下の場合には、剥離強度耐湿熱保持率の値にかかわらずCとした。
【0066】
塗料評価−初期接着性:
前記塗料・耐湿熱試験用サンプルを25℃・50%の環境下に24時間保存した後すぐに、25℃・50%環境下にて接着剤層の塗膜上にセロハンテープを貼り、塗工面に対して45°の角度で剥離試験を行い、以下の基準にて評価した。
(評価基準)
○:塗膜の剥がれが認められない。
×:塗膜の剥がれが認められる。
【0067】
塗料評価−耐湿熱性:
105℃、相対湿度100%のレトルト試験機(トミー工業(株)製 ES−315)内に前記塗料・耐湿熱試験用サンプルを192時間静置した。その後25℃・50%の環境下に24時間保存した後すぐに、25℃・50%環境下にて接着剤層の塗膜上にセロハンテープを貼り、塗工面に対して45°の角度で剥離試験を行い、以下の基準にて評価した。
(評価基準)
○:塗膜の剥がれが認められない。
×:塗膜の剥がれが認められる。
【0068】
樹脂評価−硬化性:
ポリエステルフィルム(東洋紡製シャインビームQ1210 厚さ125μm)の片面に、前記塗工液組成物をドライ膜厚が10μmになるようにバーコーターで塗布し、溶媒を120℃下3分の乾燥条件で揮発させ、ポリエステルフィルム/樹脂組成物積層体を得た。
積層体を40℃の環境下に24時間静置し、硬化させた。硬化後、塗膜のゲル分率を測定した。塗膜のゲル分率は以下の方法により決定した。前記積層体を2.5cm×10cm切り出し(質量:W1)、メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比)の溶液に1時間浸漬した後、100℃の恒温槽で1時間乾燥させた(質量:W2)。その後、残存塗膜部分を削り取り、ポリエステルシートのみとした(質量:W3)。下記数式(1)に従ってゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)={(W1−W3)/(W2−W3)}×100 ・・・(1)
ゲル分率が80%以上のものを◎、80%未満60%以上のものを○、60%未満のものを×とした。
【0069】
樹脂評価−耐候性:
前記耐候性試験用サンプルの接着剤側から紫外線を照射した。紫外線照射はUV照射試験機(岩崎電気(株)製、アイスーパーUVテスター、SUV−W151)を用いて行い、照射条件は60℃(ブラックパネル温度)、相対湿度60%、照射のみ、とし、照射時間は24時間、照射強度は100mW/cm2とした。紫外線照射前後の耐候性試験用サンプルのCo−b値を色差計(日本電色(株)製 ZE2000)を用いて測定し、紫外線照射前後の差(ΔCo−b)を耐候性の指標とした。(ΔCo−b)の数値が大きいほど黄変の度合が大きく、耐候性に劣ることを示す。耐候性はABCの3段階評価とし、ΔCo−bが+10未満のものをA、+10以上+15未満のものをB、+15以上のものをCとした。
【0070】
実施例1〜6および比較例1〜3
共重合ポリエステル樹脂1〜9を使用して接着剤評価として初期接着性と耐湿熱性、塗料評価として初期接着性と耐湿熱性、樹脂評価として硬化性と耐候性を評価した。評価結果を表2に示した。
【0071】
【表2】

【0072】
本発明の共重合ポリエステル樹脂を用いた実施例1〜9については、いずれについても、40℃24時間の比較的低温かつ短時間のエージングにより硬化反応が十分に進行し、良好な初期接着性、耐湿熱性、硬化性、耐候性を示した。
【0073】
比較例1
共重合ポリエステル樹脂8を使用して初期接着性、耐湿熱性、硬化性および耐候性を評価した。評価結果を表2に示す。この樹脂は塗料評価において初期接着性は良好な結果を示したものの、接着剤評価において良好な初期接着性を示さなかった。また、耐湿熱性の評価が悪かった。さらに硬化性を評価したところ良好な硬化性を示さなかった。共重合ポリエステル樹脂の酸価が非常に低い値であることから、イソシアネートとの反応性が非常に悪かったためと考えられる。
【0074】
比較例2
共重合ポリエステル樹脂9を使用して初期接着性、耐湿熱性、硬化性および耐候性を評価した。評価結果を表2に示す。この樹脂は初期接着性は良好な結果を示したものの、耐湿熱性評価において良好な結果を示さなかった。さらに硬化性を評価したところ良好な硬化性を示さなかった。共重合ポリエステル樹脂の酸価が非常に低い値であることから、イソシアネートとの反応性が非常に悪かったためと考えられる。
【0075】
実施例1〜9、比較例1〜2より、本発明の樹脂組成物は、比較的低温かつ短時間のエージングにより硬化反応が十分に進行し、実用レベルの初期接着性を発揮することが理解できる。また、好ましい実施態様においてはさらに、高度な耐湿熱性、耐候性をも発揮することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の樹脂組成物は、たとえば耐湿熱性および耐候性に優れた塗料、コーティング剤、接着剤等に適用することが可能であり、産業上の利用価値の高いものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソソルビドが共重合されている共重合ポリエステル樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(B)とを含有し、酸価(対固形分)が30当量/10g以上である樹脂組成物。
【請求項2】
前記共重合ポリエステル(A)の酸価が30当量/10g以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
カルボキシル基を有し前記共重合ポリエステル(A)に該当しない化合物(C)を含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記共重合ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して前記ポリイソシアネート化合物(B)が1〜20重量部配合されていることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記共重合ポリエステル樹脂(A)が、共重合ポリエステル樹脂を構成する全多価酸成分に対して、イソフタル酸および/またはオルトフタル酸を合計60モル%以上共重合されているものであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記共重合ポリエステル樹脂(A)が、共重合ポリエステル樹脂を構成する全多価アルコール成分に対して、イソソルビドを5モル%以上60モル%以下共重合されているものであることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート化合物(B)が脂肪族ポリイソシアネート化合物および/または脂環族ポリイソシアネート化合物であることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記化合物(C)がモノカルボン酸、多価カルボン酸および/またはカルボキシル基を有するポリエステル樹脂から選ばれるいずれか1種以上であることを特徴とする請求項3〜7いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8いずれかの樹脂組成物を含有する接着剤。
【請求項10】
請求項1〜8いずれかの樹脂組成物を含有する塗料。

【公開番号】特開2013−10809(P2013−10809A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142575(P2011−142575)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】