説明

樹脂組成物、その成形体及びその製造方法

生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)10〜99質量%と、ポリオレフィン樹脂(Y)90〜1質量%とからなる樹脂組成物。好ましくは、JIS K7105に基づいて厚さ3mmの試験片について測定した全光線透過率が60%以下であるか、あるいは、上記樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂(Y)が連続相を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂とを含んで、耐熱性、耐衝撃性、耐久性、成形性、外観に優れた樹脂組成物、その成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の高まりから、ポリ乳酸に代表される生分解性を有する各種の脂肪族ポリエステル樹脂が注目されている。ポリ乳酸は、トウモロコシやサツマイモなどの植物由来の原料からの量産技術が確立しており、さらに他の脂肪族ポリエステル樹脂と比較して融点(Tm)が高いという特徴を有している。しかしながら、ポリ乳酸には、硬くてもろいために衝撃強度が不足し、また加水分解を受けやすいために耐久性(耐加水分解性)が十分でないという問題がある。またポリ乳酸は、融点は比較的高いものの、ガラス転移温度(Tg)が低いために、耐熱性が不足であるという問題もある。一方、ポリ乳酸の耐熱性を上げるためにはその結晶化を十分高める必要がある。例えば、射出成形においては、金型温度や成形サイクル時間などの設定条件によって、成形品を形成するポリ乳酸の結晶化の度合いすなわち耐熱性をコントロールすることができる。しかしながら、実際に結晶化を高めるためには、金型温度を比較的高めにする必要があり、それに伴い、成形サイクル時間も比較的長くしなければならない。そのため、生産性あるいは操業性に問題が生じる。
【0003】
ポリ乳酸以外の他の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂であるところの、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸なども、耐熱性、耐衝撃性、耐久性が十分とはいえない。
【0004】
上記のように、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂100%からなる組成物は、成形用材料として使用する場合には物性や生産面の制約を受けるため、単独遣いで普及させることは難しいと考えられるようになってきた。一方、他の非生分解性の樹脂との混合物であっても、生分解性樹脂がポリ乳酸のように植物由来であれば、これが広く使用されることによって石油由来の樹脂の使用を低減することとなり、結果として石油資源の節約に貢献できるため環境に好ましいとする考え方が浸透してきている。
【0005】
樹脂に対して耐久性が要求される用途では、前述の傾向が強まっており、例えばポリオレフィン樹脂のような汎用の樹脂とポリ乳酸系樹脂とを組み合わせる検討がなされている。JP−A−10−251498には、ポリ乳酸を主成分とする脂肪族ポリエステル樹脂と、ポリプロピレンの中でも結晶性の低いシンジオタクティックポリプロピレンとを混合することにより、透明性を保持しつつ衝撃強度を改良することが提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらJP−A−10−251498に記載の発明は、樹脂組成物の透明性を重視した結果、組成物としての結晶性が低下し、耐熱性、耐久性、成形性などの物性に改良の余地がある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するものであり、耐熱性、耐衝撃性、耐久性に加えて、成形性及び表面外観に優れた樹脂組成物、その樹脂組成物から得られる成形体、及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の比率の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂とからなる樹脂組成物が、上記の課題を解決することを見いだし、本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明の特徴は、次のとおりである。
【0010】
(1)生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)10〜99質量%と、ポリオレフィン樹脂(Y)90〜1質量%とからなる樹脂組成物。
【0011】
(2)JIS K7105に準拠し厚さ3mmの試験片について測定した全光線透過率が60%以下である(1)の樹脂組成物。
【0012】
(3)樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂(Y)が連続相を形成している(1)または(2)の樹脂組成物。
【0013】
(4)生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)の末端が封鎖されている(1)から(3)までのいずれかの樹脂組成物。
【0014】
(5)生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)とポリオレフィン樹脂(Y)との総和100質量部あたり、さらにエポキシ基含有添加剤0.1〜30質量部を含有している(1)から(4)までのいずれかの樹脂組成物。
【0015】
(6)生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)とポリオレフィン樹脂(Y)との総和100質量部あたり、さらに無機充填剤1〜30質量部を含有している(1)から(5)までのいずれかの樹脂組成物。
【0016】
(7)生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)とポリオレフィン樹脂(Y)との総和100質量部あたり、さらに膨潤性層状珪酸塩0.05〜30質量部を含有している(1)から(6)までのいずれかの樹脂組成物。
【0017】
(8)(1)から(7)までのいずれかの樹脂組成物を成形して得られる成形体。
【0018】
(9)生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)とポリオレフィン樹脂(Y)とを溶融混練し、その際に、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)の190℃、21.2N荷重におけるメルトフローインデックス(MI)と、ポリオレフィン樹脂(Y)の同条件におけるメルトフローインデックス(MIPO)との比(MI/MIPO)が0.1〜10の範囲のものを用いて、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)10〜99質量%と、ポリオレフィン樹脂(Y)90〜1質量%とからなる樹脂組成物を得ることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【0019】
本発明によれば、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を利用した、耐熱性、耐衝撃性、耐久性、成形性に加えて、表面外観に優れた樹脂組成物が得られる。本発明の樹脂組成物は、各種の成形体として、種々の用途に好適に利用することができる。本発明の製造方法によれば、本発明の樹脂組成物を好適に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】後述する本発明の実施例1において金型温度15℃で作製したサンプルの破断面をクロロホルムに浸漬した後の同サンプルの破断面を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【図2】後述する本発明の実施例3において金型温度15℃で作製したサンプルの破断面をクロロホルムに浸漬した後の同サンプルの破断面を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【図3】後述する本発明の実施例4において金型温度15℃で作製したサンプルの破断面をクロロホルムに浸漬した後の同サンプルの破断面を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【図4】後述する本発明の実施例20において金型温度15℃で作製したサンプルの破断面をクロロホルムに浸漬した後の同サンプルの破断面を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【図5】後述する比較例1において金型温度15℃で作製したサンプルの破断面をクロロホルムに浸漬した後の同サンプルの破断面を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明における生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)としては、α−及び/又はβ−ヒドロキシカルボン酸単位を主成分とする脂肪族ポリエステル樹脂や、脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とからなる脂肪族ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0022】
α−及び/又はβ−ヒドロキシカルボン酸単位の例としては、D−乳酸、L−乳酸、これらの混合物、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒロドキシ吉草酸、3−ヒドロキシカプロン酸などが挙げられる。なかでも、D−乳酸、L−乳酸、これらの混合物が、特に好ましい。
【0023】
脂肪族ジカルボン酸の例としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、それらの誘導体としての低級アルキルエステル化合物や酸無水物などを挙げることができる。なかでも好ましいのは、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸である。
【0024】
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。特に好ましいのは1,4−ブタンジオールである。
【0025】
ポリエステル樹脂には、その生分解性を損なわない範囲であれば、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸が共重合されていてもよい。このような共重合ポリエステル樹脂も、本発明でいう生分解性脂肪族ポリエステル樹脂に含まれるものとする。
【0026】
本発明における生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)の具体例としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3−ヒロドキシ吉草酸)、ポリ(3−ヒドロキシカプロン酸)、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、これらの共重合体、これらの混合物などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸が共重合された生分解性脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリ(ブチレンアジペート/ブチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンアジペート/エチレンテレフタレート)共重合体などが挙げられる。これらの樹脂は、一部が架橋されていたり、エポキシ化合物などで修飾されていてもかまわない。ポリ乳酸において、D−乳酸、L−乳酸の含有比率は、特に限定されない。
【0027】
生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)は、通常は、公知の溶融重合法で、あるいは必要に応じてさらに固相重合法を併用して、製造される。ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)やポリ(3−ヒロドキシ吉草酸)などについては、微生物による生産が可能である。
【0028】
生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)には、架橋ないし分岐構造が導入されていてもよい。架橋ないし分岐構造の導入方法としては、有機過酸化物を添加する方法、有機過酸化物とラジカル重合性化合物とを併用する方法、放射線を照射する方法、多官能性開始剤存在下で製造する方法などが挙げられる。過酸化物としては、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどが挙げられる。ラジカル重合性化合物としては、グリシジルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。多官能性開始剤としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール部分鹸化物、セルロースジアセテートなどが挙げられる。
【0029】
生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)の耐久性を向上させるために、末端封鎖剤を添加して、樹脂の末端を封鎖することができる。末端封鎖剤としては、カルボジイミド、オキサゾリン、エポキシ化合物などが挙げられる。添加量は、特に限定されないが、樹脂(X)100質量部に対し、0.1〜5質量部が好ましい。
【0030】
生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)の分子量は、特に限定されないが、その指標となる190℃、21.2N荷重におけるメルトフローインデックス(MFI)が0.1〜50の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、0.2〜40の範囲である。
【0031】
本発明におけるポリオレフィン樹脂(Y)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリブテン、ポリイソブチレン、シクロオレフィン樹脂などを挙げることができる。なかでもポリプロピレン、ポリエチレンが好ましく、ポリプロピレンが最も好ましい。耐熱性・耐久性の面からは、アイソタクチックポリプロピレンが好ましい。ポリオレフィン樹脂(Y)は、有機化過酸化物などで三次元架橋されたものでもよいし、一部が塩素化されていてもよいし、酢酸ビニル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸などとの共重合体でもかまわない。
【0032】
ポリオレフィン樹脂(Y)の分子量は、特に限定されないが、その指標となる190℃、21.2N荷重におけるメルトフローインデックス(MFI)が0.1〜50の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、0.5〜50の範囲である。
【0033】
本発明の樹脂組成物において、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)およびポリオレフィン樹脂(Y)の配合比率は、(X)10〜99質量%に対して、(Y)90〜1質量%であることが必要である((X)100質量部に対して(Y)1〜900質量部)。好ましくは、(X)/(Y)=29〜91質量%/71〜9質量%((X)100質量部に対して、(Y)10〜250質量部)、さらに好ましくは、(X)/(Y)=29〜83質量%/71〜17質量%((X)100質量部に対して、(Y)20〜250質量部)である。ポリオレフィン樹脂(Y)の割合が1質量%よりも少ないと、ポリオレフィン樹脂の添加効果が見られず、衝撃強度や耐熱性の向上が不十分となる。さらに、後述するように樹脂組成物中においてポリオレフィン樹脂が連続相を形成しにくくなる傾向となり、物性が向上しない。また、ポリオレフィン樹脂(Y)が90質量%よりも多いと、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の比率が少なすぎて、環境に配慮した樹脂組成物とは言い難くなる。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、全光線透過率が60%以下(JIS K7105に準拠して、試料の厚み3mmでの測定値)であることが好ましい。全光線透過率が60%を超えると、樹脂の結晶性が低くなるため耐熱性が低下しやすい。後述のように(X)、(Y)両成分のMFI比を特定範囲として溶融混練することによって(Y)成分が連続層を形成した場合においては、樹脂組成物がミクロな相分離構造をとるため、その全光線透過率はさらに低下するが、耐熱性、耐衝撃性、耐久性がいっそう向上したものとなる。
【0035】
本発明の樹脂組成物には、エポキシ基含有添加剤を添加するのが好ましい。エポキシ基含有添加剤は、エポキシ基を含有していれば、特に限定されない。エポキシ基は主に生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)と反応すると考えられるため、エポキシ基含有添加剤は、その骨格部分に、ポリオレフィン樹脂(Y)と相溶性のよい構造を持った部分を含むもの、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリブタジエン水添ポリマー、ポリエチレンブチレン、ポリイソブチレン、シクロオレフィンなどの樹脂構造を有するものが好ましい。前記の構造にさらにビニル系、アクリル系、エステル系、アミド系などの樹脂成分が共重合されていてもよい。さらに、エポキシ基を上記の樹脂構造に直接付加したものでもよいし、エポキシ基を付加したポリマーを上記樹脂構造にグラフトした構造であってもよい。
【0036】
エポキシ基含有添加剤として特に好ましいものは、ポリエチレンやポリプロピレンの骨格にエポキシ基が付加された構造を有するものであり、このような構造を有する市販のエポキシ基含有添加剤としては、ボンドファースト2C、ボンドファーストE(いずれも住友化学社製)、ARUFON UG4030(東亞合成社製)、モディパーA4200(日本油脂社製)、などを挙げることができる
エポキシ基含有添加剤は、そのエポキシ基が生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)と反応し、骨格部分がポリオレフィン樹脂(Y)と相溶することにより、両者の密着性を高め、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)とポリオレフィン樹脂(Y)とによる海島構造を固定化したり、島の大きさをより細かくしたりする。その結果として、樹脂(X)(Y)同士の界面が強固に接着されるため、耐衝撃性等の物性が向上し、樹脂組成物の外観を改善し、成形性が改良される。また、末端封鎖剤的な効果も期待できるため、耐久性も向上する。
【0037】
エポキシ基含有添加剤の添加量は、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)とポリオレフィン樹脂(Y)の総和100質量部に対して0.1〜30質量部とするのが好ましい。より好ましくは0.2〜20質量部であり、さらに好ましくは0.3〜15質量部である。0.1質量部未満であると、ポリオレフィン樹脂と生分解性脂肪族ポリエステル樹脂とを相溶するには不十分であり、30質量部より多い場合は、樹脂組成物における(X)、(Y)両成分による海島構造が崩れる傾向となる。
【0038】
本発明の樹脂組成物には、さらに無機充填材を添加するのが好ましい。無機充填材としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ベントナイト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、酸化チタン、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。なかでも、タルク、マイカ、シリカが好ましく、タルクが最も好ましい。これら無機充填材は、1種のみ添加してもよいし、2種以上を添加してもよい。無機充填材は、エポキシ基含有添加剤によってポリオレフィン樹脂と生分解性脂肪族ポリエステル樹脂との密着性が向上した樹脂組成物に添加されると、より両成分の海島構造を安定化させる働きを有し、外観や成形性、さらには耐熱性を向上させることができる。
【0039】
無機充填材の添加量は、(X)成分と(Y)成分との総和100質量部あたり1〜30質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。1質量部未満では添加効果が低く、30質量部を超えると樹脂の柔軟性が損なわれるなど物性低下が起こることがある。無機充填材の粒子径は、特に限定されないが、0.5〜50μmの範囲が好適である。
【0040】
本発明の樹脂組成物の製造法としては、一般的な押出機を用いて、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)とポリオレフィン樹脂(Y)とを溶融混練する方法があるが、混合均一性や分散性を高める点からは二軸押出機を使用することが好ましい。エポキシ基含有添加剤、無機充填材、末端封鎖剤などを添加する場合は、原料樹脂とドライブレンドしてホッパーから投入しても良いし、押出し機の途中からフィーダーなどを使って添加しても良いし、可塑剤など液体に溶解・または分散させて液添加するなどさまざまな方法をとることができる。
【0041】
生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)とポリオレフィン樹脂(Y)とを溶融混合するに際しては、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)の190℃、21.2N荷重におけるメルトフローインデックス(MI)とポリオレフィン樹脂(Y)の同条件におけるメルトフローインデックス(MIPO)の比(MI/MIPO)が0.1〜10の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは0.15〜8の範囲である。メルトフローインデックス(MFI)の測定温度として190℃における値を採用するのは、この測定温度がMFIには一般に用いられていること、および本発明の樹脂組成物の製造における(X)、(Y)成分の溶融混練温度に近いことの理由による。
【0042】
上記したMFIの比すなわちMI/MIPOを0.1〜10の範囲とすることで、たとえポリオレフィン樹脂(Y)の量が生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)の量より少ない場合でも、その粘度関係により(Y)成分を樹脂組成物中で連続相とすることができる。つまりは、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)が島で、ポリオレフィン樹脂(Y)が海であるような海島構造をとることになる。このようなミクロ構造により、耐衝撃性、耐熱性、耐久性が飛躍的に向上する。MFIの比すなわちMI/MIPOが0.1未満の場合には、ポリオレフィン樹脂(Y)が非連続相になりやすく、このため衝撃強度や耐久性が不十分となることがある。
【0043】
樹脂組成物中の各樹脂成分が連続相、非連続相のいずれのミクロ構造をなしているかは、成形体断面を走査型または透過型電子顕微鏡で観察することによって判定することができる。このとき、クロロホルムや塩化メチレンなどの溶媒で生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を溶かすと、より鮮明に構造を観察できる。
【0044】
本発明の樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、さらに顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、有機充填材等を添加することも可能である。熱安定剤や酸化防止剤としては、たとえばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物を使用することができる。有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ、ケナフ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品などを添加することもできる。
【0045】
本発明の樹脂組成物の耐熱性、結晶化速度、成形性等をさらに向上させる目的で、膨潤性層状珪酸塩を添加してもよい。その添加量は、特に限定されないが、(X)成分と(Y)成分の総和100質量部あたり0.05〜30質量部が適当である。添加方法は、(X)成分と(Y)成分の混合前にいずれかまたは両方の成分に膨潤性層状珪酸塩を含有させておいてもよく、また、(X)、(Y)成分の混合時に膨潤性層状珪酸塩を同時に添加することもできる。樹脂中に分散した膨潤性層状珪酸塩は、その層間距離が20Å(2nm)以上、粒径は1〜1000nm程度となる。このような膨潤性層状珪酸塩としては、スメクタイト、バーミキュライト、膨潤性フッ素雲母などが挙げられる。スメクタイトの例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイトなどが挙げられる。膨潤性フッ素雲母の例としては、Na型フッ素四ケイ素雲母、Na型テニオライト、Li型テニオライトなどが挙げられる。
【0046】
これらの膨潤性層状珪酸塩は、樹脂成分への分散性を向上させるために、必要に応じて予め有機カチオン処理しておくことができる。有機カチオンとしては、1級ないし3級アミンのプロトン化物、第4級アンモニウム、有機ホスホニウムなどが挙げられる。1級アミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミンなどが挙げられる。2級アミンとしては、ジオクチルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジオクタデシルアミンなどが挙げられる。3級アミンとしては、トリオクチルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジドデシルモノメチルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどが挙げられる。4級アンモニウムとしてはテトラエチルアンモニウム、オクタデシルトリメリルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジヒドロキシエチルメチルオクタデシルアンモニウム、メチルドデシルビス(ポリエチレングリコール)アンモニウム、メチルジエチル(ポリプロピレングリコール)アンモニウムなどが挙げられる。有機ホスホニウムとしては、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、2−ヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウムなどが挙げられる。これらのカチオンは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、一般的な成形方法を用いて成形体にすることができる。本発明の樹脂組成物によると、特に、射出成形法においては、耐熱性を有する成形体を得るために必要とされる金型温度範囲を、公知の技術に比べて広げることができる。それに伴って射出成形サイクルが短くなり、生産性が顕著に向上する。たとえば、公知の技術においては、ポリ乳酸単体で耐熱性を有する成形体を作製する場合には、金型温度を100℃以上とする必要があったが、本発明の樹脂組成物では、金型温度100℃以上の場合はもちろん、100℃未満であっても同程度の耐熱性を得ることができる。金型温度は、50℃〜90℃の範囲が好ましく、60〜90℃の範囲がなお好ましい。
【0048】
本発明の樹脂組成物を用いた成形体の具体例としては、以下のものを挙げることができる。すなわち、たとえば本発明の樹脂組成物から押出成形法によりまずシート、発泡シートまたはパイプを得たうえで、これらを、クレジットカード等のカード類、下敷き、クリアファイル、ストロー、農業・園芸用・工業用硬質/軟質パイプまたはパイプカバーなどとして応用することができる。さらにこれらのシート類に、真空成形、圧空成形、真空圧空成形などの深絞り成形や、うち抜き成形などを施すことで、食品用容器、農業・園芸・工業用容器、各種雑貨、ブリスターパック容器、プレススルーパック容器、折りたたみ式緩衝材、各種建材、各種パッキン、仕切り板や標識、掲示板、自動車内装材、マネキン、靴底、帽子のつば、各種芯材などを製造することができる。
【0049】
射出成形法により射出成形品を得ることもできる。射出成形品の形態は特に限定されず、その具体例としては、皿、椀、鉢、箸、スプーン、フォーク、ナイフ、お盆等の食器関連品;流動体用容器(乳製品や清涼飲料水や酒類などの飲料用コップおよび飲料用ボトル、醤油、ソース、マヨネーズ、ケチャップ、食用油等の調味料の一時保存容器、シャンプー・リンスなどの容器、化粧品用容器、農薬用容器など);容器用キャップ;定規、筆記具、クリアケース、CDケース、いす等の事務用品;コンテナーなど各種収納容器;台所用三角コーナー、ゴミ箱、洗面器、歯ブラシ、櫛、ハンガー等の日用品;ファスナー・ボタンなどの服飾関連品;植木鉢や育苗ポットなどの農業・園芸用資材;プラモデル等の各種玩具類;エアコンパネル、冷蔵庫トレイ、パソコンや携帯電話などの各種筐体などの電化製品用樹脂部品;バンパー、インパネ、ドアトリム等の自動車用樹脂部品;さお・ルアーなどのつり用品;ラケット・プロテクターなどのスポーツ用品;建材などが挙げられる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。しかし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
【0051】
下記の実施例および比較例の評価に用いた測定法は次のとおりである。
(1)メルトフローインデックス(MFI):JIS K7210に従い、付属書A表の条件のなかから、温度190℃、荷重21.2N(2.16kg)で測定した。単位はg/10分である。
(2)衝撃強度:
ASTM−256に準じて65mm×12mm×3mmの試験片を作製し、この試験片にノッチをつけてアイゾット衝撃強度を測定した。
(3)熱変形温度:
ASTM−648に準じて125mm×12mm×3mmの試験片を作製し、この試験片を用いて荷重0.48MPaで熱変形温度を測定した。
(4)耐久性:
恒温恒湿器にて、60℃95%RHの条件で125mm×12mm×3mmの試験片を10日間保存した。その後、同試験片を用いてASTM−790に準じて変形速度2mm/分で荷重をかけて曲げ試験を行い、曲げ強度を求めることで、耐久性を測定した。
(5)曲げ強度:
ASTM−790に準じて125mm×12mm×3mmの試験片を作製し、この試験片に変形速度2mm/分で荷重をかけ、曲げ強度を測定した。
(6)分子量:
生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)の分子量は、示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)装置(島津製作所社製)を用い、テトラヒドロフランを溶出液として40℃で測定し、標準ポリスチレン換算で求めた。テトラヒドロフランに溶けにくいサンプルの場合は、少量のクロロホルムに溶解した後、テトラヒドロフランで希釈して測定した。ポリブチレンサクシネートについては、溶出液としてクロロホルムのみを用いて測定した。
(7)ミクロ構造観察:
樹脂ペレットもしくは射出成形した試験片を液体窒素に浸して割り、その破断部をクロロホルムに浸漬して、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)を溶出した。次いで断面を走査型電子顕微鏡で観察し、残った樹脂(ポリオレフィン樹脂(Y))が連続相かどうか観察した。あるいは、上記ペレット等の試験片を薄片に切断した後、クロロホルムに浸漬して同様の処理を行ったものについて、観察を行った。
(8)全光線透過率:
50mm×50mm×厚さ3mmの試験片を作製し、JIS K7105(光線透過率測定法A)に準拠して、色差計(日本電色工業社製)を用いて厚さ方向の全光線透過率を測定した。
(9)外観:
射出成形した試験片の表面を目視観察した。ヒケ、膨れ、剥離などの不良点が全くなく均一できれいな場合を◎と評価し、◎より若干劣るが試験片の表面にヒケ、膨れ、剥離など不良点がない場合を○と評価し、試験片の表面のごく一部にヒケ、膨れ、剥離などの不良点がある場合を△と評価し、試験片の表面にヒケ、膨れ、剥離など不良点があり、外観不良である場合を×と評価した。
以下の各実施例および比較例に用いた原料は、次の通りである(MFI値についてのカッコ内の値は測定温度である)。
(1)生分解性脂肪族ポリエステル樹脂
PLA−1:ポリ乳酸(カーギル・ダウ社製、ネイチャーワークス 重量平均分子量20万、L体99%、D体1%、MFI(190℃)=2.3)
PLA−2:ポリ乳酸(カーギル・ダウ社製、ネイチャーワークス 重量平均分子量18万、L体90%、D体10%、MFI(190℃)=4.5)
PLA−3:ポリ乳酸(カーギル・ダウ社製、ネイチャーワークス 重量平均分子量16万、L体99%、D体1%、MFI(190℃)=8.9)
PLA−X:ポリ乳酸変性品(100質量部のPLA−3をポリエチレングリコールジメタクリレート0.1質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.2質量部と混合して、溶融押出したもの。MFI(190℃)=1.0)
PBS:ポリブチレンサクシネート(三菱化学社製、GsPLa重量平均分子量19万、MFI(190℃)=4.2)
(2)ポリオレフィン樹脂
PP−1:ポリプロピレン(チッソ社製、K7014、MFI(190℃)=0.6)
PP−2:ポリプロピレン(チッソ社製、K4017、MFI(190℃)=3.3)
PP−3:ポリプロピレン(チッソ社製、K5019F、MFI(190℃)=5.4)
PP−4:ポリプロピレン(チッソ社製、K5360、MFI(190℃)=24.8)
PE−1:ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、YF30、MFI(190℃)=1.1)
PE−2:ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、LF547、MFI(190℃)=3.8)
(3)エポキシ基含有添加剤
BF−2C:エポキシ基含有ポリエチレンコポリマー(住友化学社製、ボンドファースト2C)
BF−E:エポキシ基含有ポリエチレンコポリマー(住友化学社製、ボンドファーストE)
AR−UG:エポキシ基含有アクリル・スチレンポリマー(東亞合成社製、ARUFON UG4030)
MD−A:エポキシ基含有ポリエチレン・アクリルグラフト共重合ポリマー(日本油脂社製、モディパーA4200)
(4)無機充填材
Tc:タルク(林化成社製、MW−HS−T、平均粒径2.7μm)
Mc:マイカ(クラレ社製、スゾライト325−S、平均粒径40μm)
Sc:シリカ(水澤化学工業社製、ミズカシル、平均粒径2.0μm)
実施例1
池貝社製の二軸押出機、PCM−30(ダイス直径4mm×3孔)を用い、押出温度190℃、ダイ出口温度190℃にて、PLA−1の70質量部に対して、PP−2を30質量部混合した。混合された樹脂をストランド状に押出し、水浴で冷却後、ペレタイザーでペレット状に切断した。得られた樹脂組成物ペレットを乾燥後、東芝機械社製の射出成形機、IS−80G型を用いて、シリンダ設定温度190℃、射出圧力100MPa、射出時間20秒の条件で射出成形し、各種物性評価を行った。このとき、金型温度は15℃、85℃、120℃の3段階とし、冷却時間は15℃では20秒、85℃および120℃では80秒とした。
実施例2〜5
実施例1に比べ、樹脂の配合比を表1のように変えた。そして、それ以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得て、各種評価を行った。
実施例6〜11
ポリオレフィン樹脂の種類と量を、表1のように変えた。そして、それ以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得て、各種評価を行った。
【0052】
ポリオレフィン樹脂としてポリエチレンを用いた実施例8〜11では、耐熱性が不足したため、金型温度120℃における射出成形は行わなかった。
【0053】
実施例1〜11の結果をまとめて表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例12〜15
実施例1に比べ、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の種類を変えた。そして、それ以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得て、各種評価を行った。
実施例16〜18
生分解性脂肪族ポリエステル樹脂としてPLA−Xを用い、ポリオレフィン樹脂としてPP−3を用い、実施例16〜18でその配合比を変えた。その他は実施例1と同様にして樹脂組成物を得て、各種評価を行った。
【0056】
実施例12〜18の結果をまとめて表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
実施例19〜25
実施例1に比べ、エポキシ基含有添加剤を用いるとともに、その量と種類とを変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
実施例26〜28
実施例1に比べ、無機充填材を用いるとともに、その種類を変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0059】
実施例19〜28についての各種評価の結果を、まとめて表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
実施例29〜35
実施例1に比べ、エポキシ基含有添加剤と無機充填材とを併用した系を用い、それぞれの系におけるエポキシ基含有添加剤と無機充填材とのそれぞれの量と種類とを変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
実施例36〜38
実施例30に比べ、有機化処理された膨潤性層状珪酸塩(ホージュン社製、エスベンW)を、実施例36〜38で添加量を変更して加えて押出機に投入した。そして、それ以外は実施例30と同様にして樹脂組成物を得た。
実施例39、40、41
実施例1、20、30に比べ、末端封鎖剤としてカルボジイミド化合物(バイエル社製、スタバックゾールI)を0.7質量部加えて押出機に投入した。そして、それ以外は実施例1、20、30と同様にして樹脂組成物を得た。
【0062】
実施例29〜41について各種評価の結果を、まとめて表4に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
比較例1
実施例1に比べ、PLA−1を99.5質量部、PP−2を0.5質量部とした。そして、それ以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得て、各種評価を行った。なお、この比較例1では、金型温度85℃、120℃では樹脂組成物が固化しなかったため、金型温度15℃でのみ評価を行った。
比較例2〜3
PP−2、PLA−1の樹脂単体についてそれぞれ各種評価を行った。なお、比較例3は、金型温度85℃、120℃では樹脂組成物が固化しなかったため、金型温度15℃でのみ評価を行った。
【0065】
比較例1〜3の結果を表1に示す。
【0066】
以上の結果から、実施例1〜41では、衝撃強度が高い樹脂組成物が得られ、特に金型温度を85℃以上にすれば耐熱性も飛躍的に向上することがわかる。実施例1、3、4、20についての金型温度15℃で作製したサンプルの断面をクロロホルムに浸漬後、走査型電子顕微鏡で観察した結果を、図1、2、3、4にそれぞれ示す。ポリ乳酸はクロロホルムに溶解してなくなっており、クロロホルムに溶解しないポリプロピレンのみが観察されている。図1〜4より、ポリプロピレンは連続相を形成していることがわかる。この組成物の衝撃強度が、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂単独(比較例3)およびポリオレフィン樹脂単独(比較例2)それぞれの衝撃強度より高くなっていることは驚くべきことである。これは、それぞれの樹脂のMFIが適正な範囲にあったため、ポリプロピレンと脂肪族ポリエステルの量の相対的な大小関係によらず、ポリプロピレンが連続相を形成し、その結果、全光線透過率が低かったためである。
【0067】
実施例3、4では、ポリプロピレンの量の増加に従い、金型温度が低くとも耐熱性が高まり、耐衝撃性も向上している。
【0068】
実施例1〜5では、いずれも、ポリオレフィン樹脂の量が少ない比較例1、ポリオレフィン樹脂が全く入っていない比較例3に比べて、耐久性が向上している。
【0069】
実施例6〜17では、実施例1に比べて脂肪族ポリエステル樹脂やポリオレフィン樹脂の種類が変わっても、衝撃強度、耐熱性、耐久性いずれも向上している。さらに、両樹脂のMFI比が0.1〜10の間にあり、ポリオレフィン樹脂が連続相を形成している。
【0070】
実施例3、4、18では、ポリプロピレンの量が多いときは、金型温度が低くとも耐熱性が非常に高く、耐衝撃性も比較例2、3のそれぞれの樹脂単独の場合より向上しており、耐久性も非常に優れている。
【0071】
実施例19〜25では、エポキシ基含有添加剤を添加することにより、耐熱性、衝撃強度が高いうえに、さらに外観が向上している。また、エポキシ基含有添加剤の種類と量が変わっても、良好な物性を示している。
【0072】
実施例26〜28では、無機充填材の添加により、耐熱性、衝撃強度が高いうえに、成形品の外観も改良されている。
【0073】
実施例29〜35では、エポキシ基含有添加剤と無機充填剤とを併用することにより、耐熱性・衝撃強度が高いうえに、さらに外観が向上している。
【0074】
実施例36〜38では、有機化処理された膨潤性層状珪酸塩を添加にすることにより、耐熱性が飛躍的に向上している。
【0075】
実施例39〜41では、脂肪族ポリエステル樹脂を末端封鎖したため、耐熱性・衝撃強度が高いうえに、さらに耐久性が飛躍的に向上している。
【0076】
比較例1は、ポリオレフィン樹脂の量が少なすぎるために、耐熱性、衝撃性、耐久性いずれも不十分な結果となっている。また、ポリオレフィン樹脂が塊を形成しており、連続相を形成していない(図5参照)。
【0077】
比較例2は、ポリオレフィン樹脂単体であったので、耐熱性、耐久性は優れているが、衝撃強度は低い。また、生分解性樹脂を使用していない点が問題である。
【0078】
比較例3は、ポリ乳酸単体であったので、耐熱性、衝撃性、耐久性に劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)10〜99質量%と、ポリオレフィン樹脂(Y)90〜1質量%とからなる樹脂組成物。
【請求項2】
JIS K7105に準拠し厚さ3mmの試験片について測定した全光線透過率が60%以下である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂(Y)が連続相を形成していることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)の末端が封鎖されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)とポリオレフィン樹脂(Y)との総和100質量部あたり、さらにエポキシ基含有添加剤0.1〜30質量部を含有していることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)とポリオレフィン樹脂(Y)との総和100質量部あたり、さらに無機充填剤1〜30質量部を含有していることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)とポリオレフィン樹脂(Y)との総和100質量部あたり、さらに膨潤性層状珪酸塩0.05〜30質量部を含有していることを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれかに記載の樹脂組成物を成形して得られる成形体。
【請求項9】
生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)とポリオレフィン樹脂(Y)とを溶融混練し、その際に、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)の190℃、21.2N荷重におけるメルトフローインデックス(MI)と、ポリオレフィン樹脂(Y)の同条件におけるメルトフローインデックス(MIPO)との比(MI/MIPO)が0.1〜10の範囲のものを用いて、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(X)10〜99質量%と、ポリオレフィン樹脂(Y)90〜1質量%とからなる樹脂組成物を得ることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【国際公開番号】WO2005/035656
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514597(P2005−514597)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014841
【国際出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】