説明

樹脂組成物、ダイボンディング材および半導体装置

【課題】配線基板との低温粘着性がよく、配線段差の凹部の充填性がよいダイボンディング材およびその材料の樹脂組成物ならびに半導体装置の提供。
【解決手段】式(1)のビニル化合物(A)、エラストマー(B)、溶解度パラメーターが8.00〜9.00のポリオールと、イソシアネート基を有する化合物とのウレタンプレポリマー(C)、シランカップリング剤(D)を含有する組成物。
【化1】


[式(1)中、R1〜R7は水素、アルキル基等;−(O−X−O)−のXはジフェニレン骨格;−(Y−O)−のYはフェニレン骨格;Zは有機基;a、bは一方が0でない0〜300の整数;c、dは0または1の整数]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に半導体素子を搭載し、配線を施した配線基板の上に貼り付けるダイボンディング材の材料である樹脂組成物、該樹脂組成物からなるフィルム状ダイボンディング材、および、該ダイボンディング材を用いて組立てた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、配線を施した配線基板表面に半導体素子を搭載して構成される。該配線基板の表面は、配線の段差等に起因する凹凸を有するので、通常粘着性のフィルム状ダイボンディング材を貼り付けて該凹凸の凹部の埋込み(充填)を行っている。
通常、半導体装置の組立工程において、封止剤をトランスファ成形するときの熱および圧力により、フィルム状ダイボンディング材を半導体素子を搭載する配線基板表面に接着させるが、その際に、該ダイボンディング材が溶融し流動して、凹部を充填する。充填が不十分な場合には、半導体装置の耐湿信頼性および配線間の絶縁信頼性を損ねるおそれがあるので、該充填の度合いは重要である。
【0003】
従来、ダイボンディング材としては、テトラカルボン酸二無水物と、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン等のジアミンとから得られるポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂と、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と硬化剤とシリカ等のフィラー、さらにはシランカップリング剤を含有する組成物からなるダイボンディング材が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、接着層と保護層の二層からなるダイボンディング材が提案されている。該接着層は、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂のいずれでもよく、水酸化アルミニウム、シリカ等の微粒子状の無機成分、各種シランカップリング剤を含有していてもよい(特許文献2)。
また、末端にイソシアネート基を有するウレタンオリゴマーを、テトラカルボン酸二無水物で鎖延長したブロック共重合体等のポリウレタンイミド樹脂を、ポリエステルフィルム等の基材フィルムに積層したダイボンディング材が提案されている(特許文献3)。
【0005】
また、ダイボンディング材ではないが、接着性フィルムとして、両末端にビニル基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマー、二重結合を有するスチレン系熱可塑性エラストマーおよびt−ブチルハイドロキノン等の重合禁止剤・酸化防止剤を含有する硬化性樹脂組成物のフィルムが提案されている(特許文献4)。
同様に、両末端にビニル基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマー、多官能ビニル芳香族共重合体、熱可塑性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物のフィルムまたは基材フィルムとの硬化性複合材料が提案されている(特許文献5)。
また、ダイボンディング材ではないが、両末端にビニル基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマー、ならびに、ゴムおよび/または熱可塑性エラストマーを含有する硬化性樹脂組成物のフィルムまたはこのフィルムを用いたプリント配線基板の層間絶縁膜が提案されている(特許文献6)。
【0006】
前記ダイボンディング材は、従来のような配線基板の配線段差により生じる凹部の充填を高温(200℃以上)で行う場合には有効であった。しかし、昨近、半導体装置の薄型化の要求が強く、それに従う半導体素子の薄型化(100μm以下)に伴い、硬化後の高温高湿条件下での耐熱性、接着強度等の性能を低下させることなく、薄膜化することがダイボンディング材に求められている。また、多用される基板のガラス転移点は200℃近辺であるため、半導体素子搭載時(マウント工程)の温度が150℃以下の低温であることが求められ、低温における配線基板表面に対する濡れ性や低温における配線基板表面の凹部への充填性が良好なダイボンディング材、そのための接着剤組成物が求められている。
このようなより高いレベルの要求に、従来のダイボンディング材は十分対応することができなかった。なお、前記のダイボンディング用として特定されていない、硬化性樹脂組成物からなるフィルムは全くダイボンディング材に使用できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−131914号公報
【特許文献2】特開2004−266137号公報
【特許文献3】特開2006−241174号公報
【特許文献4】特開2007−191681号公報
【特許文献5】再公表特許2005−73264号公報
【特許文献6】国際公開特許2008−18483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来のダイボンディング材およびダイボンディング用樹脂組成物の問題点を解消することを目的とする。すなわち、本発明は、低温において、配線基板との粘着性がよく、かつ、配線基板上の配線段差の凹部を十分に充填することができるような低温溶融性がよいダイボンディング材またはダイボンディング用組成物の提供、および、高温高湿条件下でも配線基板表面との接着強度が劣化しないダイボンディング材、すなわち、耐湿信頼性、絶縁信頼性が高いダイボンディング材付き配線基板、半導体装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、式(1)で表されるビニル化合物(A)、エラストマーおよび/または熱可塑性エラストマー(B)、溶解度パラメーターが8.00〜9.00であるポリオールを少なくとも使用するポリオール中に50重量部以上含有し、少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基またはブロックされたイソシアネート基を含むウレタンプレポリマー(C)およびシランカップリング剤(D)を含有する樹脂組成物、である。
【0010】
【化1】

【0011】
[式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン化アルキル基またはフェニル基を表し、複数のR1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、同一であっても異なっていてもよい。
【0012】
−(O−X−O)−は下記式(2)で表される構造であり、−(Y−O)−は下記式(3)で表される繰返し単位であり、Zは酸素原子、窒素原子、イオウ原子、ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜3の有機基を表す。
aおよびbは少なくとも一方が0でない0〜300の整数を表し、cおよびdは、それぞれ独立に0または1の整数を表す。]
【0013】
【化2】

【0014】
[式(2)中、R8、R9、R10、R14およびR15は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基を表し、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基を表す。
式(3)中、R16およびR17は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基を表し、R18およびR19は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基を表す。]
【0015】
本発明の組成物は、前記(A)成分の−(O−X−O)−が下記式(4)で表される構造であり、前記−(Y−O)−が下記式(5)または(6)で表される繰返し単位であることが好ましい。
【0016】
【化3】

【0017】
本発明の樹脂組成物は、前記(A)成分の−(Y−O)−が前記式(6)で表される繰返し単位であることが好ましい。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、前記(B)成分がスチレン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、前記(A)成分に対する前記(B)成分の質量割合が10〜90%であることが好ましい。
【0020】
本発明の樹脂組成物に用いるウレタンプレポリマー(C)の原料ポリオールの溶解度パラメーターは、8.10〜8.80であることが好ましい。
【0021】
本発明の樹脂組成物に用いるウレタンプレポリマー(C)の原料ポリオールが、ひまし油系ポリオールであることが好ましい。
【0022】
本発明の樹脂組成物に用いるウレタンプレポリマー(C)の原料のイソシアネート基を含む化合物が、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートであることが好ましい。
【0023】
本発明の樹脂組成物は、前記(D)成分がビニルシラン系、(メタ)アクリロキシシラン系、イソシアネートシラン系、エポキシシラン系、アミノシラン系、メルカプトシラン系、クロロプロピルシラン系および、それらのオリゴマーであるシランカップリング剤であることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、前記いずれかの樹脂組成物を有機溶剤に溶解してなるワニスである。
【0025】
また、本発明は、前記いずれかの樹脂組成物からなるフィルムである。
【0026】
また、本発明は、前記いずれかの樹脂組成物からなるダイボンディング材である。
【0027】
また、本発明は、前記いずれかの樹脂組成物からなるダイボンディング材を用いた半導体装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の樹脂組成物は、有機溶剤に溶解しやすいので、ワニスを容易に調製することができ、該ワニスを用いてキャスティングにより基材フィルム上に容易にダイボンディング材用フィルムを形成することができる。基材フィルムと樹脂組成物からなるフィルムとが積層したダイボンディング材は、配線基板表面に配線基板への影響がない低温で粘着し、かつ、該配線基板表面の凹部に低温で溶融流動し、該凹部を十分に充填することができる。また、該ダイボンディング材は高温高湿下において、配線基板表面に高温においても強固に接着し、剥離することがなく、耐熱性がよい。
よって、本発明の樹脂組成物を用いてなるダイボンディング材用フィルムを用いた薄型の配線基板、したがって、半導体装置は耐湿信頼性、絶縁信頼性が高く、昨近の要求性能を十分に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】加熱温度の変化に伴う樹脂組成物のタック荷重の変化を示すグラフである。
【図2】時間の変化に伴うダイボンディング材の溶融温度および溶融粘度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の樹脂組成物は、式(1)で示されるビニル化合物(A)、エラストマーおよび/または熱可塑性エラストマー(B)、溶解度パラメータが8.00〜9.00であるポリオールを少なくとも使用するポリオール中に50重量部以上含有し、少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基またはブロックされたイソシアネート基を含むウレタンプレポリマー(C)およびシランカップリング剤(D)を含有する。該ウレタンプレポリマー(C)の含有により、樹脂組成物の低温粘着性が向上し、かつ、低温流動性、低温硬化性も向上する。勿論、硬化後の該樹脂組成物を含有するダイボンディング材の接着強度、耐熱性、耐湿性の低下はない。
【0031】
(ビニル化合物)
本発明に使用されるビニル化合物は式(1)で表されるエーテル結合とベンゼン核を有するビニル化合物である。
【0032】
【化4】

【0033】
[式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン化アルキル基またはフェニル基を表し、複数のR1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
−(O−X−O)−は下記式(2)で表される構造であり、−(Y−O)−は下記式(3)で表される繰返し単位であり、Zは酸素原子、窒素原子、イオウ原子、ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜3の有機基を表す。
aおよびbは少なくとも一方が0でない0〜300の整数を表し、cおよびdは、それぞれ独立に0または1の整数を表す。]
【0035】
【化5】

【0036】
[式(2)中、R8、R9、R10、R14およびR15は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基を表し、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基を表す。
式(3)中、R16およびR17は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基を表し、R18およびR19は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基を表す。]
【0037】
本発明の樹脂組成物は、前記(A)成分の−(O−X−O)−が下記式(4)で表される構造であり、前記−(Y−O)−が下記式(5)または(6)で表される繰返し単位であることが好ましい。また、前記(A)成分のZは炭素原子数が1〜3のアルキレン基であることが好ましい。
【0038】
【化6】

【0039】
本発明に使用されるビニル化合物(A)は、数平均分子量が500〜5000であることが好ましく、1000〜3000であることがより好ましい。また、ビニル化合物(A)は、両末端にビニル基を有する官能基であり、官能基当たりの当量が数平均分子量の半分に相当する250〜2500であることが好ましく、500〜1500であることがより好ましい。官能基当たりの当量は樹脂組成物の硬化物の架橋密度の度合いを示すものであり、250以上であると十分な機械強度が得られ、ダイボンディング材にクラック等が発生することを回避できる。逆に2500以下であると、成分(B)との相溶性が良好で、透明性が上がる。加えて溶融粘度が高くなって反応性が低下し、そのために硬化温度が下がる。なお、数平均分子量はGPCにより、標準ポリスチレンによる検量線を用いて求めた値である。
【0040】
ビニル化合物(A)の具体例は、前記式(1)において、R1〜R7が水素であり、−(O−X−O)−が構造式(4)であり、−(Y−O)−が構造式(6)であり、Zがメチレン基であり、a〜dが1である化合物で、数平均分子量が2200または1200の2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルビフェニル−4,4’−ジオール・2,6−ジメチルフェノールとクロロメチルスチレンとの反応生成物(三菱ガス化学株式会社製;「OPE−2st」)や、前記式(1)において、R1〜R7が水素であり、−(O−X−O)−が構造式(4)であり、−(Y−O)−が構造式(5)であり、Zがメチレン基であり、a〜dが1である化合物で、数平均分子量が2200または1200の2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルビフェニル−4,4’−ジオール・2,3,6−トリメチルフェノールとクロロメチルスチレンとの反応生成物が挙げられる。
【0041】
(ゴム、熱可塑性エラストマー)
本発明に使用される成分(B)はゴムおよび/または熱可塑性エラストマーである。
ゴムとしては、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム等が挙げられる。ゴムは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
一方、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。熱可塑性エラストマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(A)成分との相溶性が良好で、得られる樹脂組成物の接着性および製膜性に優れ、得られたダイボンディング材の柔軟性が優れることから、熱可塑性エラストマーが好ましく、スチレン系熱可塑性エラストマーが特に好ましい。
【0042】
具体的には、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、または、それらの二重結合の一部を水添した共重合体であり、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)等が挙げられる。SBS、SEBSが硬化物のガラス転移点を適切な範囲に制御しやすく、シェア強度が高温でも良好であることから好ましい。特に好ましいのはSBSである。
【0043】
スチレン系熱可塑性エラストマーは重量平均分子量が20,000〜250,000であるのが好ましい。成分(A)との相溶性が良好で、透明性に優れることから、スチレン系熱可塑性エラストマーにおけるスチレン含有量は25〜60質量%、好ましくは30〜50質量%である。なお、重量平均分子量はGPCにより、標準ポリスチレンによる検量線を用いて求めた値である。
具体的には、JSR株式会社製のスチレン−ブタジエンブロック共重合体「JSR TR」シリーズ、スチレン−イソプレンブロック共重合体「JSR SIS」シリーズなどが挙げられる。
【0044】
(ウレタンプレポリマー)
本発明の樹脂組成物において、該ウレタンプレポリマー(C)の含有により、樹脂組成物の低温粘着性が向上し、かつ、低温流動性、低温硬化性も向上する。
本発明に使用されるウレタンプレポリマー(C)は、溶解度パラメーター(solubility parameter sp値)が8.00〜9.00であるポリオールと、少なくとも1 分子中に2 個以上のイソシアネート基またはブロックされたイソシアネート基を有する化合物とのウレタンプレポリマーである。
該ウレタンプレポリマー(C)は、該溶解度パラメーターが8.00〜9.00のポリオールが全ポリオール50質量%以上であることが好ましい。
該ウレタンプレポリマー(C)の作用効果を損なわない限り、他のウレタンプレポリマーを混在させてもよい。
【0045】
ウレタンプレポリマー(C)の原料のポリオールの溶解度パラメーターは、J.Polymer Science Part-1 第5巻 第1671頁−第1681頁(1967年)および高分子論文集 第62巻 第9号 第438頁−第440頁(2005年)に記載された濁度法によって測定した。すなわち、ポリオールを0.5g秤量して10mlのアセトンに溶解させた試料を2本準備し、一方をn−ヘキサンで滴定し、他方を水で滴定し、それぞれ濁った点で滴定量を求めた。滴定量から、Flory-Hugginsの相互採用パラメーター算出式から導かれる式によって、溶解度パラメーター(sp値)を算出した。なお、使用した溶媒の溶解度パラメーター、モル体積を下記した。
n−ヘキサン: sp=7.29 モル体積=131.6
アセトン: sp=9.81 モル体積=74.0
水: sp=23.40 モル体積=18.0
【0046】
本発明に好適に使用できる溶解度パラメーターが8.00〜9.00のポリオールは、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ひまし油系ポリオール、ポリイソプレンポリオール等を水素化して得られるポリオレフィン系ポリオール、ダイマー酸をカルボン酸成分として用いたダイマー酸ポリエステルポリオール等である。該ポリオールを併用することができる。該溶解度パラメーターが8.10〜8.80のポリオールがより好ましく、ポリブタジエンポリオール、ひまし油系ポリオール等が挙げられる。
【0047】
溶解度パラメーターが8.00〜9.00のポリオール1のほかに、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコールなどの2官能アルコール、トリメチロールプロパン等の3官能アルコールをポリオール2として併用することができる。ポリオール1の100質量部に対し、ポリオール2の比率は50質量部以下、好ましくは10質量部以下である。
【0048】
ウレタンプレポリマー(C)の他の原料のイソシアネート基を有する化合物は特に限定されない。例えばトリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられるが、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが特に好適である。また、ブロックされたイソシアネート基を有する化合物としては、ここに例示したイソシアネート基を有する化合物をアルコール類、フェノール類、オキシム類等のブロック剤でブロックした化合物が挙げられる。
【0049】
ウレタンプレポリマー(C)の製造はイソシアネート基と反応する活性水素を有しない有機溶媒を用いて行われる。該有機溶剤としてはトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が例示される。トルエンが特に好ましい。
本発明のウレタンプレポリマー(C)は1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート基もしくはブロックされたイソシアネート基を含んでいる。通常は活性の高いイソシアネート基をそのままウレタンプレポリマー中に存在させることが望ましい。しかしながら、乾燥条件次第ではイソシアネート基をブロック剤でブロックしたブロックジイソシアネートも利用できる。使用できるブロック剤は特に限定されないが、乾燥温度などからメチルエチルケトンオキシムが好ましい。
【0050】
好ましいウレタンプレポリマー(C)は、ポリブタジエンポリオールまたはひまし油系ポリオールと、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートまたはヘキサメチレンジイソシアネートと、1,4−ブタンジオールとから得られる溶解度パラメーターが8.00〜9.00のウレタンプレポリマーを50重量部以上含有するウレタンプレポリマーである。
【0051】
本発明に使用されるシランカップリング剤(D)は、本発明のダイボンディング材の耐湿信頼性を向上させる成分である。シランカップリング剤としてはビニルシラン系、(メタ)アクリロキシシラン系、イソシアネートシラン系、エポキシシラン系、アミノシラン系、メルカプトシラン系、クロロプロピルシラン系および、それらのオリゴマーであるシランカップリング剤が挙げられる。好ましいのは(メタ)アクリロキシシラン系、アミノシラン系のシランカップリング剤である。
【0052】
具体的には、ビニルシラン系としてビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン等;(メタ)アクリロキシシラン系としてγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等;イソシアネートシラン系として3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート等;エポキシシラン系として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等;アミノシラン系としてN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン等;クロロプロピルシラン系として3−クロロプロピルトリクロロシラン等;メルカプトシラン系として(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン等、および、それらのオリゴマーが挙げられる。
【0053】
好ましいのはγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン系のシランカップリング剤;N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系のシランカップリング剤である。
【0054】
本発明の樹脂組成物は、本来の物性、特性を損なわない限り、各種添加剤、例えば、充填剤を含有することができる。充填剤としては、銀粉、金粉、銅粉等の金属や、シリカ、アルミナ、チタニア、窒化ホウ素、酸化鉄等の金属化合物等の無機充填剤;カーボン等の有機充填剤が挙げられる。金属はダイボンディング材の導電性、チクソ性を向上し、金属化合物は低熱膨張性、低吸湿性を向上させ、有機充填剤は靭性を向上させる効果もある。
充填剤の配合は、通常の攪拌機、らい潰機、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて実施することができる。
【0055】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、ビニル化合物(A)、ゴムおよび/または熱可塑性エラストマー(B)、ウレタンプレポリマー(C)およびシランカップリング剤(D)を含有するが、成分(A)〜(D)を公知の方法、例えば、碇型攪拌機を備えた混合器を用い攪拌混合して調製することができる。
ビニル化合物(A)100%に対するゴムおよび/または熱可塑性エラストマー(B)の質量割合は10〜90%、好ましくは30〜60%である。前記範囲であると相溶性、接着性および製膜性が良好である。
【0056】
成分(A)と成分(B)の総量に対するウレタンプレポリマー(C)の質量割合は99:1〜40:60、好ましくは97.5:2.5〜50:50、より好ましくは95:5〜60:40である。前記上限を超えると相溶性が低下し、前記下限を超えると耐湿信頼性が劣化する。
成分(A)〜成分(C)の総量に対するシランカップリング剤(D)の質量割合は99.99:0.01〜90:10、好ましくは99.9:0.1〜95:5、より好ましくは99.7:0.3〜98:2である。前記上限を超えると相溶性が悪化するため保存安定性が低下し、前記下限を超えると耐湿信頼性が劣化する。
各種添加剤(充填剤以外)は、接着剤組成物の特性を損なわない範囲で配合することができる。なお、充填剤は、成分(A)〜(D)の総量100質量部に対して8000質量部以下、好ましくは4000質量部以下の範囲で配合することができる。8000質量部を超えるとダイボンディング材の接着性が低下する。
【0057】
(ワニス)
本発明の樹脂組成物は有機溶媒に添加し混合してワニスに調製される。
例えば、成分(A)〜(D)を任意の順序に有機溶媒に溶解し混合してワニスを調製することができる。混合方法に特に制限はなく、公知の方法が採用できる。例えば、金属容器やガラス容器に、成分(A)〜(D)、および有機溶媒、場合によっては、さらに充填剤を入れ加熱攪拌する方法で実施される。加熱温度はビニル化合物(A)の重合が進行しない程度の温度である0〜100℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。
【0058】
有機溶媒はビニル化合物(A)、ゴムおよび/または熱可塑性エラストマー(B)などを均一に溶解または分散できるものであればよく、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン; エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル; トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。好ましいのはMEK、MIBK、トルエン、キシレン等である。
【0059】
(ダイボンディング材)
ワニスを基材フィルム上に塗布し乾燥し、冷却すると積層フィルムであるダイボンディング材が得られる。ワニスの塗布量によりダイボンディング材の厚みが決まるが、ダイボンディング材の厚みは100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
ワニスの塗布は通常の方法で実施されるが、グラビア法によるのが好ましい。
ワニスの乾燥は有機溶媒が十分に揮散する条件、例えば、200℃で2時間加熱したときの前後の質量減少率が2質量%以下になる条件、すなわち、60〜200℃で、0.1〜90分間加熱して行う。
ダイボンディング材の冷却は、通常の方法、すなわち、室温放置によるのが好ましい。
【0060】
基材フィルムは、樹脂組成物の製膜時の加熱、乾燥に耐えるものであれば、特に制限されない。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等のフィルムが挙げられる。これらのフィルムを2種以上組合せて複層フィルムとしてもよい。これらのフィルムをシリコーン離型剤で表面処理してもよい。
【0061】
(半導体装置)
本発明のダイボンディング材を用いて、配線基板にダイボンディングする方法は、従来と同じ方法が採用される。本発明のダイボンディング材は、半導体装置の製造、すなわち、IC、LSI等の半導体素子と支持部材の接着に用いられ、同時に配線により生じる配線基板表面の凸部を充填する。例えば、各種半導体素子と支持部材との間に、本発明のダイボンディング材を挟み、加熱圧着して、接着させる。半導体製造装置のステージの加熱温度は、配線基板のガラス転移点Tg以下の温度であることが好ましい。加熱時間は0.1〜300秒であることが好ましく、1〜200秒であることがより好ましい。圧力(荷重)は0.005〜2MPaであることが好ましく、0.01〜1MPaであることがより好ましい。
その後、ワイヤボンディング工程、必要に応じ封止材による封止工程を経て半導体装置が完成される。
支持部材は、ガラス繊維等にポリイミド樹脂、BTレジン、エポキシ樹脂等の有機樹脂を含浸させ、硬化したものが好適である。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。表示は断りがない限り質量部である。
【0063】
(製造例1)ウレタンプレポリマー(C−1)の製造
還流冷却器、攪拌翼、温度計を備えた2000mlの四つ口フラスコにトルエン600g、ポリオール(「エポールPIP−H」、出光石油化学製;sp=8.20)633.3g、1,4−ブタンジオール33.3g、イソホロンジイソシアネート233.3gを仕込み、均一に溶解した後、触媒としてトリエチレンジアミン0.06gを加えた。フラスコ内部温度が70℃から80℃となるように加熱し、ウレタン化反応を7時間行った。その後、冷却して固形分あたりの遊離イソシアネート量が3.5重量%のウレタンプレポリマー(C−1)のトルエン溶液を得た。
【0064】
(製造例2〜3、比較製造例1)ウレタンプレポリマー(C−2)〜(C−4)の製造
製造例1において、表1に示す原材料を、表1に示す量だけ用いて、それぞれウレタンプレポリマー(C−2)〜(C−4)を製造した。
【0065】
【表1】

【0066】
(実施例1)
下記する4成分(A−1)〜(D−1)を下記する割合で、スリーワンモーター(新東科学株式会社製、BLW1200)を用いて周速度400rpmで乾式混合し樹脂組成物を調製した。該樹脂組成物を溶媒メチルエチルケトンに加えて加熱攪拌してワニス(固形分濃度約30質量%)を調製した。該ワニスを基材PETフィルム(厚さ50μm)にグラビアコーターで塗布した後、80〜120℃で10分間乾燥し、放置冷却して未硬化フィルム(ダイボンディング材用)を得た。基材PETフィルム上のフィルムの膜厚は30μmで均一であった。
【0067】
(A−1)2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルビフェニル−4,4’−ジオール-2、6−ジメチルフェノールとクロロメチルスチレンとの反応生成物(三菱ガス化学株式会社製;「OPE−2st」;数平均分子量1200) 54.3部
(B−1)スチレン−ブタジエンブロック共重合体(JSR株式会社製:「TR2003」:重量平均分子量約10万、スチレン含有量43質量%) 36.2部
(C−1)製造例1のウレタンプレポリマー 9部
(D−1)γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製;「KBM−5103」) 0.5部
【0068】
(実施例2)
実施例1において、(A−1)2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルビフェニル−4,4’−ジオール2,6−ジメチルフェノールとクロロメチルスチレンとの反応生成物(数平均分子量1200)の代わりに、(A−2)2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルビフェニル−4,4’−ジオール2,6−ジメチルフェノールとクロロメチルスチレンとの反応生成物(三菱ガス化学株式会社製;「OPE−2st」;数平均分子量2200)を用いて樹脂組成物を調製する以外、実施例1と同様な方法と条件で樹脂組成物の調製からフィルムの製造までを行った。
【0069】
(比較例1)
実施例2において、成分(C−1)および成分(D−1)を配合せずに成分(A−1)および成分(B−1)を50:50の割合で混合して樹脂組成物を調製する以外、実施例1と同様な方法と条件で樹脂組成物の調製からフィルムの硬化までを行った。
【0070】
実施例1、2および比較例1の樹脂組成物を用いて製造した未硬化フィルムの特性(粘着温度、最低溶融温度および最低溶融粘度)および硬化フィルムの特性(ガラス転移温度、弾性率、CTE、吸水率、シェア強度および濡れ性)を測定した。結果を表2に示した。 また、実施例1と比較例1の温度変化に対するタック荷重の変化を図1に示した。
【0071】
【表2】

【0072】
前記特性の測定方法を下記する。
(粘着性)
タッキネス試験機(株式会社レスカ製、タック−II)を用いて、プローグの押込速度1.0mm/min、試験速度600mm/min、初期荷重100gf、加圧時間1.0sec、温度20〜200℃で未硬化フィルムのタック荷重の変化を測定した。
【0073】
(溶融粘度)
硬化性ワニスを乾燥させた後の樹脂組成物について粘度計(REOLOGICA社製、「VAR-100」)を用いて2500秒までの時間の経過に伴う樹脂組成物の溶融粘度の変化を測定した。
【0074】
(溶融温度)
硬化フィルムの0.3gを測り取り測定用試料として、アルミ製試料容器に入れてアルミパンにより密閉した。該試料をDSC(株式会社島津製作所製、DSC−60)を用いて、−30℃から昇温速度10℃/minで350℃まで昇温した後、降温速度10℃/minで350℃から−30℃まで降温させた。測定結果の解析から硬化フィルムの溶融温度を測定した。
【0075】
(ガラス転移点)
硬化フィルムの0.3gを測り取り、アルミ製試料容器に入れてアルミパンにより密閉した。密閉した測定用試料をDSC(株式会社島津製作所製、DSC−60)を用いて、−30℃から昇温速度10℃/minで350℃まで昇温した後、降温速度10℃/minで350℃から−30℃まで降温させた。測定結果の解析からガラス転移点Tgを測定した。
【0076】
(弾性率)
動的粘弾性測定装置(レオロジ株式会社製、DVE−V4)を使用して、硬化フィルムに引張荷重をかけ、周波数10Hz、昇温速度5〜10℃/minで−50℃〜300℃まで測定する温度依存性測定モードで弾性率を測定した。
【0077】
(CTE)
TMA(熱機械分析機、Brucker社製、TMA4000S)を使用して、硬化フィルムに引張応力をかけた状態で、昇温速度5.0℃/minで昇温し、1sec毎に応力を測定した。25℃から250℃までの昇温状態における温度と引張応力の変化率をCTEに変換した。
【0078】
(吸水率)
JIS C6481に基づき、23℃±0.5℃の蒸留水に硬化フィルムを浸漬し、24hr±1hr放置後、取出した。取出した後の硬化フィルムを、乾燥したキムタオルで表面上の水を拭取り、表面の塵を羽毛で払い、1min以内に秤量瓶に入れて密栓し、吸水後の重さを1mg単位まで測定した。
【0079】
(シェア強度)
基材PETフィルム上の未硬化フィルムを150℃に加熱し、2mm角のシリコンチップを載せて仮接着した。ついで、PETフィルムを剥離して180℃に加熱されたガラス基板上に載置した。未硬化フィルムを200℃で60分間加熱硬化した後、室温に冷却し、ボンドテスター(アークテック株式会社製、万能型ボンドテスターシリーズ4000)を用い、室温および180℃で剪断速度0.1mm/secでシェア強度を測定した。
【0080】
(濡れ性)
ダイボンディングマシーン(パナソニックファクトリーソリューションズ株式会社製、FCBIIM)のヘッドに吸着保持したシリコンチップ(5mm×5mm)を介して、硬化フィルムを吸着保持し、150℃に加熱されたステージ上に設置した配線基板(厚さ15μm)の上に戴置した該硬化フィルムを荷重5Nで5秒間圧着し、ついで、180℃で1時間加熱硬化した。冷却後、該硬化フィルムの上面から顕微鏡(倍率40倍)を用いて目視観察した。
【0081】
実施例1と比較例1の樹脂組成物、未硬化フィルムまたは硬化フィルムの諸特性の対比から下記が明らかである。
【0082】
粘着性: 未硬化フィルムのタック荷重の変化を示す図1から、最高温度が、実施例1は100℃であるのに対し、比較例1は150℃であり、実施例1の低温粘着性が格段に優れる。
【0083】
溶融性: 加熱時間の変化に対する未硬化フィルムの溶融温度および溶融粘度の変化を示す図2から、最低溶融温度が実施例1は145℃、比較例1は200℃であり、実施例1の溶融温度が低温であることが明らかである。また、最低溶融粘度が実施例1は2.7kPa、比較例1は4.6kPaであり、実施例1の溶融粘度が低粘度であることが明らかである。
【0084】
濡れ性: 未硬化フィルムをダイボンディングに用いた配線基板は、表面の凹凸が7μmであるにも拘わらず、実施例1は硬化フィルムの漏れがなく、配線が鮮明あるのに対し、比較例1は硬化フィルムの漏れにより、配線が不鮮明で黒ずんでいた。これは、配線基板がポリイミドの場合、比較例1(従来技術)の200℃より低い180℃で表面の凹部を充填したことになる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の樹脂組成物はダイボンディング材の原料として好適であるが、低温粘着性、低温溶融性であることから、一般的な半導体装置の接着剤としての使用も可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるビニル化合物(A)、エラストマーおよび/または熱可塑性エラストマー(B)、溶解度パラメーターが8.00〜9.00であるポリオールを少なくとも使用するポリオール中に50重量部以上含有し、少なくとも1分子中に2個以上のイソシアネート基またはブロックされたイソシアネート基を含むウレタンプレポリマー(C)およびシランカップリング剤(D)を含有する樹脂組成物
【化1】


[式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン化アルキル基またはフェニル基を表し、複数のR1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、同一であっても異なっていてもよい。
−(O−X−O)−は下記式(2)で表される構造であり、−(Y−O)−は下記式(3)で表される繰返し単位であり、Zは酸素原子、窒素原子、イオウ原子、ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜3の有機基を表す。
aおよびbは少なくとも一方が0でない0〜300の整数を表し、cおよびdは、それぞれ独立に0または1の整数を表す。]
【化2】


[式(2)中、R8、R9、R10、R14およびR15は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基を表し、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基を表す。
式(3)中、R16およびR17は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基を表し、R18およびR19は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基またはフェニル基を表す。]
【請求項2】
前記(A)成分の−(O−X−O)−が下記式(4)で表される構造であり、前記−(Y−O)−が下記式(5)または(6)で表される繰返し単位である請求項1に記載の樹脂組成物。
【化3】

【請求項3】
前記(A)成分の−(Y−O)−が前記式(6)で表される繰返し単位である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分がスチレン系熱可塑性エラストマーである請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)成分100%に対する前記(B)成分の質量割合が10〜90%である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ウレタンプレポリマー(C)の原料ポリオールの溶解度パラメーターが8.10〜8.80である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ウレタンプレポリマー(C)の原料ポリオールが、ひまし油系ポリオールである請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ウレタンプレポリマー(C)の原料イソシアネート基を含む化合物が、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートである請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記(D)成分がビニルシラン系、(メタ)アクリロキシシラン系、イソシアネートシラン系、エポキシシラン系、アミノシラン系、メルカプトシラン系、クロロプロピルシラン系および、それらのオリゴマーであるシランカップリング剤である請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物を有機溶媒に溶解してなるワニス。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物からなるダイボンディング材。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物からなるダイボンディング材を用いた半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−153205(P2011−153205A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15210(P2010−15210)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【出願人】(591252862)ナミックス株式会社 (133)
【Fターム(参考)】