説明

樹脂組成物、プリプレグ、積層板及び配線板

【課題】低コストで低熱膨張な樹脂組成物、プリプレグ、積層板及び配線板を提供する。
【解決手段】積層板の製造に用いられる樹脂組成物であって、樹脂組成物が芳香環を有する絶縁性樹脂を含み、かつ芳香環を有する絶縁性樹脂のTg以上のせん断弾性率から求めた、絶縁性樹脂の架橋点間分子量が、積層板製造後の段階で300〜1000である樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、プリプレグ、積層板及び配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化・高性能化の流れに伴い、プリント配線板では配線ピッチが狭小化した、高密度の配線が要求されている。高密度配線に対応する半導体の実装方法としては、従来のワイヤボンディング方式に代わり、フリップチップ接続方式が広く用いられている。フリップチップ接続方式は、ワイヤに代えてはんだボールにより、配線板と半導体とを接続させる方法である。互いに向き合わせにした配線板と半導体との間にはんだボールを配置させ、全体に加熱して、はんだをリフロー(溶融接続)させて、配線板と半導体を接続させて実装している。この方法では、はんだリフロー時に300℃近い熱が配線板等にかかる。この際、従来の樹脂組成物を材料として形成された配線板では、配線板が熱収縮して、配線板と半導体を接続するはんだボールに大きな応力が発生し、配線の接続不良を起こす場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−182851号公報
【特許文献2】特許第2740990号公報
【特許文献3】特開2000−243864号公報
【特許文献4】特開2000−114727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の状況を背景として、低熱膨張率の積層板が求められている。従来、積層板としては、エポキシ樹脂を主剤とした樹脂組成物とガラス織布とを硬化・一体成形したものが一般的である。エポキシ樹脂は、絶縁性や耐熱性、コスト等のバランスに優れるが、熱膨張率が大きいため、シリカ等の無機充填材を添加して熱膨張を抑制するのが一般的である(特許文献1参照)。無機充填材を高い割合で充填することにより、さらなる低熱膨張を図ることも可能であるが、充填量を増やすことは吸湿による絶縁信頼性の低下や樹脂−配線層の密着不足、プレス成形不良を起こすことが知られている。そのため、多層配線板における用途では、無機充填材の高充填には限界がある。
【0005】
また、樹脂の選択或いは改良により、低熱膨張を達成することが試みられている。例えば、芳香環を有するエポキシ樹脂の公知例としては、2官能のナフタレン骨格、あるいはビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を用いた低熱膨張性加圧成形用樹脂組成物(特許文献2)があるが、充填材を80〜92.5vol%配合している。また、従来、配線板用の樹脂組成物の低熱膨張率化は特許文献3、及び4に示すように架橋密度を高める、すなわち本願出願の架橋点間分子量を小さくし、Tgを高くして熱膨張率を低減する方法が一般的である。しかしながら、架橋密度を高める、すなわち架橋点間分子量を小さくすることは官能基間の分子鎖を短くすることであるが、一定以上分子鎖を短くすることは反応性や樹脂強度等の点で不可能である。このため、架橋密度を高める手法での低熱膨張率化は限界となっていた。
【0006】
熱膨張の小さい樹脂としてはポリイミドが広く知られているが、成形に高温を要する、コストが高いといった問題がある。また、フィルム状の形態であるためフレキシブル基板用の材料として適している反面、剛性を必要とする多層配線板用途には適さなかった。
本発明は、低コストで低熱膨張な樹脂組成物、プリプレグ、積層板及び配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、次の態様を有する。
積層板の製造に用いられる樹脂組成物であって、樹脂組成物が芳香環を有する絶縁性樹脂を含み、かつ芳香環を有する絶縁性樹脂のTg以上のせん断弾性率から求めた、絶縁性樹脂の架橋点間分子量が、積層板製造後の段階で300〜1000であることを特徴とする樹脂組成物。
【0008】
芳香環を有する絶縁性樹脂が、多環式化合物を含むことを特徴とする樹脂組成物。
絶縁性樹脂が、ビフェニル構造、ナフタレン構造、アントラセン構造、及びジヒドロアントラセン構造のいずれか1つを有することを特徴とする樹脂組成物。
絶縁性樹脂が、エポキシ樹脂であることを特徴とする樹脂組成物。
エポキシ樹脂が結晶性エポキシ樹脂を1つ以上含むことを特徴とする樹脂組成物。
【0009】
エポキシ樹脂が、下記の一般式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R〜Rは同一、又は互いに異なるC2m+1基を表し、ここでmは0又は1以上の整数を表し、nは0又は1以上の整数を表す)
のビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、一般式(2):
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R5〜R8は同一、又は互いに異なるC2p+1基を表し、ここでpは0又は1以上の整数を表す)
のアントラセン型エポキシ樹脂、一般式(3):
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R9は同一、又は互いに異なるC2t+1基を表し(ここでtは0又は1以上の整数を表す)、rは0〜4の整数を表し、R10は同一、又は互いに異なるC2u+1基を表し(ここでuは0又は1以上の整数を表す)、sは0〜6の整数を示す)
のジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂のいずれか1つ以上含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【0016】
エポキシ樹脂の硬化剤が、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、アミノトリアジンノボラック樹脂、ビスマレイミド含有アミノトリアジンノボラック樹脂、ジシアンジアミド、ベンゾグアナミンのいずれか1つ以上含むことを特徴とする樹脂組成物。
上述の樹脂組成物を基材に塗布して含浸させ、次いで乾燥させて成るプリプレグ。
基材が、ガラス織布、ガラス不織布、アラミド不織布のいずれかであることを特徴とするプリプレグ。
本発明のプリプレグを、積層成形して成る積層板。
本発明の積層板を回路加工して成る配線板。
【発明の効果】
【0017】
従来手法のように架橋密度を高めるのではなく、芳香環を有する樹脂組成物の架橋点間分子量が300〜1000になるように樹脂組成を調整し、適正な架橋密度にすることで、低コストで低熱膨張率の樹脂組成物、プリプレグ、積層板及び配線板を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らが研究した結果、従来のように架橋密度を高める、すなわち本願出願の架橋点間分子量を小さくする手法は、熱膨張率の低減には不向きであるという意外な事実がわかった。さらに鋭意研究を進めた結果、芳香環を有する樹脂組成物の架橋密度を架橋点間分子量に換算して300〜1000の範囲になるように樹脂組成を適正化することが、熱膨張率の低減に効果が大きいという意外な事実を知見するに至った。本発明の樹脂組成物は、積層板の製造に用いられ、芳香環を有する絶縁性樹脂を含む。本発明に用いる芳香環を有する絶縁性樹脂は、積層板製造後の段階で、Tg以上のせん断弾性率から求めた架橋点間分子量が300〜1000である。絶縁性樹脂の架橋点間分子量を300〜1000にすることで芳香環同士の相互作用を強く発現でき、熱膨張率が低い樹脂組成物と多層配線板材料(プリプレグ、積層板)を得ることができる。また、架橋点間分子量が300以下の場合は、芳香環を有する官能基数の少ない材料(ただし、単官能の材料を含まない)を配合して架橋点間分子量を300以上にすることができる。また、官能基当量の大きな材料の配合も有効である。この際、芳香環が、多環式化合物を含むことが好ましく、ビフェニル構造、ナフタレン構造、アントラセン構造、及びジヒドロアントラセン構造のいずれかを有することがさらに好ましい。一方、架橋点間分子量が1000以上の場合は、芳香環を有する官能基数の多い材料を配合して架橋点分子量を1000以下にすることができる。また、官能基当量の少ない材料の配合も有効である。この場合も芳香環が前記多環式化合物を含むことが好ましい。なお積層板製造後の段階とは、例えば、積層板製造時、あるいは積層板を用い多層配線板等を製造した際、熱履歴工程が施された後である。また絶縁性樹脂のせん断弾性率は、一般的に動的粘弾性装置で測定される。
【0019】
ここで、動的粘弾性装置で測定し、Tg以上のせん弾性率弾性率から求められた架橋点間分子量とは、例えば、(株)化学同人社発行の高分子と複合材料の力学的性質(著者:L.E.Nielsen、訳者:小野木 重治)に記載され、その本文中の記載から架橋点間分子量が求められる。すなわち、
【0020】
logG≒7.0+293ρ/Mc(G:せん断弾性率、ρ:材料の密度、Mc:架橋点間分子量)…式(1)
【0021】
が実験結果と良く一致する経験式を利用し計算されたものである。本式において、せん断弾性率の単位はdynを用いる。
なお、式(1)中のG(せん断弾性率)は、一般的に動的粘弾性装置から算出された貯蔵弾性率EのTg以上の値を下記式(2)の変換式から求められる。
【0022】
E=2G(1+σ) (σ:ポアソン比)…式(2)
【0023】
動的粘弾性測定装置とは、一般的に試料に強制振動非共振法により引っ張り、圧縮、曲げ又はせん断方向に正弦波振動又は合成波振動を加えて動的粘弾性を測定するものである。市販されているものとして、(株)UBM社製のRheosol−E−4000がある。測定方法は、恒温槽中の試料に正弦波又は合成波振動を設定された周波数と振幅で加えて、その時に発生する応力レスポンスを検出器でとらえ、貯蔵弾性率等に測定演算式から算出され求めることができる。
【0024】
上記の測定装置により芳香環を有する絶縁性樹脂が、Tg以上のせん断弾性率から求めた架橋点間分子量は、300〜1000であり、310〜900であることが好ましく、310〜800であるとさらに好ましい。架橋点間分子量が300未満では、芳香環の相互作用が弱く熱膨張率の低減効果が小さい。一方、架橋点間分子量が1000より大きい場合、芳香環の相互作用は発現できるが、架橋密度が低下して熱膨張率の低減効果が小さくなる。
【0025】
本発明で用いる絶縁性樹脂は芳香環を有していれば特に限定するものではないが、多層配線板用途では絶縁性や吸湿性の面で優れているエポキシ樹脂が好適に用いられる。用いるエポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基をもつ化合物であれば、限定されない。例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂(特に2官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、アントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が例示される。これらのうち、結晶性エポキシ樹脂とは、結晶性の強いエポキシ樹脂であり、融点以下の温度では、高分子鎖が規則正しく配列する性質があり、固形樹脂でありながらも、溶融時には液状樹脂並みの低粘度となる熱硬化性のエポキシ樹脂である。結晶性エポキシ樹脂としては、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂及びビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは芳香環の相互作用を強める上で好ましく用いられる。これらの化合物の分子量はどのようなものでもよく、何種類かを併用することもできる。
【0026】
本発明の樹脂組成物においてエポキシ樹脂を用いる場合には、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤はエポキシ樹脂の硬化作用があれば特に限定されるものではないが、各種アミン類、酸無水物類、ノボラック樹脂類等が挙げられる。この中でも特に、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、アミノトリアジンノボラック樹脂、ビスマレイミド含有アミノトリアジンノボラック樹脂、ジシアンジアミド、ベンゾグアナミンが好ましく、単独又は二種以上で用いることができる。
また、本発明の樹脂組成物は、硬化促進剤を含むことができ、硬化促進剤は硬化促進作用があれば特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂を用いる場合には、潜在性のある各種イミダゾールやイミダゾール誘導体、BF3アミン錯体、トリフェニルホスフィン、1,8−ジアザビシクロ−(5.4.0)ウンデセン−7、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド等が挙げられ、特にイミダゾールやイミダゾール誘導体が好ましい。
【0027】
また、本発明の樹脂組成物を混合するため、溶剤を加えることが好ましい。溶剤は、絶縁性樹脂と、これを硬化反応させる硬化剤等を溶解・混合させる性質を有する剤であれば限定されない。溶剤として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等が樹脂組成物の溶解性に優れ、比較的沸点が低いため、好ましい。これらの溶剤の配合量は、絶縁性樹脂が溶解できればどのような量でもよいが、絶縁性樹脂と硬化剤の総量100重量部に対して、20〜300重量部の範囲が好ましく、30〜200重量部の範囲がさらに好ましい。また、上記の溶剤は、組み合わせて用いても構わない。
【0028】
樹脂組成物に、無機充填材を配合することができる。無機充填材としては、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、クレイ、タルク、窒化珪素、窒化ホウ素、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ストロンチウム等を使用することができる。この無機充填材の配合量としては、本発明の樹脂組成物の絶縁性樹脂と硬化剤の総量100重量部に対して、300重量部以下とすることが好ましく、さらに250重量部以下にすることが本発明の多層配線板用材料(プリプレグ、積層板)が均一でかつ良好な取扱性を得るために好ましい。無機充填材を配合する場合は、均一に分散させるため、らいかい機、ホモジナイザー等を用いることが有効である。
【0029】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的の範囲内において、更に、添加剤を含ませることができる。添加剤としては、各種シランカップリング剤、消泡剤等を使用できる。この配合量としては、絶縁性樹脂と硬化剤の総量100重量部に対して、5重量部以下とすることが好ましく、さらに3重量部以下にすることが樹脂組成物の特性を維持する上で好ましい。
【0030】
また、一般的に絶縁性樹脂に無機充填材を配合した場合の架橋点間分子量は、無機充填材の弾性率の影響で、樹脂組成物の弾性率が大きくなり、絶縁性樹脂単独の架橋点間分子量の値よりも見かけ上小さくなる。このため、無機充填材を除いた状態で弾性率を測定し、架橋点間分子量を計算することが好ましいが、無機充填材を除去できない場合、式(3)を用いて弾性率の修正を行い、前記式(1)及び式(2)を用いて計算された架橋点間分子量を、本発明の架橋点間分子量として適用することができる。ただし、式(3)を用いた弾性率の修正は、弾性率の単位としてPaを用いて行い、式(1)でdynに修正し、式(2)のポアソン比及び比重は樹脂のみの値を用いる必要がある。実際に、測定できない場合には、ポアソン比0.5、比重1.2を代入して算出する。
【0031】
Eb=Ea−(0.065×Vf×Vf+0.023×Vf+0.001)×Vf×Ef/8…式(3)
(Vf:無機充填材の体積分率、Ea:無機充填材を配合した状態の貯蔵弾性率、Eb:修正した貯蔵弾性率、Ef:無機充填材の弾性率)
【0032】
本発明のプリプレグは、上述の樹脂組成物を基材に塗布乾燥させて得られる。また本発明の積層板は、プリプレグを、積層成形して得られる。積層成形条件は特に限定されず、また、積層成形の際、金属箔を配し、金属張積層板としてもよい。また本発明の配線板は、上述の積層板に一般的な回路加工を施して得られる。
【0033】
基材は、樹脂組成物を含浸させて、熱硬化・一体化できるものであればよく、ガラス織布、ガラス不織布、アラミド不織布が好適に用いられる。例えば、合成繊維の不織布、又は織布、紙等用いることができる。また、樹脂組成物と基材とを熱硬化・一体化させた場合、基材の弾性率の影響で、樹脂組成物の弾性率が大きくなり、絶縁性樹脂単独の架橋点間分子量の値よりも見かけ上小さくなる。このため、基材から分離させた樹脂単独の弾性率から架橋点間分子量を計算することが好ましいが、基材と分離できない場合、式(4)を用いて基材と一体化した状態で測定した弾性率の修正を行うことができる。修正した貯蔵弾性率を用いて、式(1)、式(2)を用いて算出した架橋点間分子量を本発明の架橋点間分子量として適用することができ、式(2)のポアソン比及び比重は樹脂のみの値を用いる必要がある。実際に、測定できない場合には、ポアソン比0.5、比重1.2を代入して算出する。
【0034】
Ea=0.11×Eb−6.25×10・・・式(4)
(Ea:修正後の貯蔵弾性率、Eb:基材と一体化した状態の貯蔵弾性率)
なお無機充填材が配合されている場合は、式(4)で計算された弾性率を、前記の式(3)でさらに弾性率の修正を行う必要がある。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に示される態様に限定されるものではない。
【0036】
実施例1
下記組成の絶縁性樹脂ワニスを作製した。この時のエポキシに対する熱硬化剤の当量は1.0当量とした。この絶縁性樹脂ワニスをPETフィルム上に塗工し、120℃で10分間乾燥させて、半硬化状態とし、膜厚70±5μmの絶縁性樹脂付フィルムを作製した。絶縁性樹脂付フィルムから半硬化した樹脂を採取して粉末にした。半硬化樹脂の粉末から、次の手順で樹脂板を作製した。スペーサ及び離型シートとして、樹脂板の型として50mm角に穴明をしたフッ素樹脂シートを配置し、この中に樹脂粉を入れ、この上下に銅箔を配置して、175℃、90分、2.5MPaのプレス条件で硬化させた。その後銅箔をエッチング除去し、樹脂板はフッ素樹脂シートから剥がして、厚さ0.2mmの熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を作製した。
・2官能ナフタレン型エポキシ樹脂:HP−4032D:100g(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)
・アミノトリアジンノボラック樹脂:LA−3018:52.9g(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)
・硬化促進剤:1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール:2PZ−CN:0.5g(商品名、四国化成工業株式会社製)
・溶剤:メチルエチルケトン:250g
【0037】
実施例2
エポキシ樹脂を、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂:YX−8800(商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)100gに代え、硬化剤であるアミノトリアジンノボラック樹脂LA−3018を、52.9gから39.8gにした以外は、実施例1と同様にして熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を得た。
【0038】
実施例3
エポキシ樹脂をビフェニルノボラック型エポキシ樹脂:NC−3000−H(商品名、日本化薬株式会社製)100gに代え、硬化剤であるアミノトリアジンノボラック樹脂LA−3018を24.9gにした以外は、実施例1と同様にして熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を得た。
【0039】
実施例4
実施例1の組成に、シリカ:SO−G1(商品名、株式会社アドマテックス製、平均粒径0.2〜0.4μm)を187.5g加えた以外は、実施例1と同様にして熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を得た。
【0040】
実施例5
(1)ガラス織布含浸用樹脂の作製
以下に示す組成のガラス織布含浸用樹脂ワニスを作製した。
・2官能ナフタレン型エポキシ樹脂:HP−4032D:100g(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)
・アミノトリアジンノボラック樹脂:LA−3018:52.9g(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)
・硬化促進剤:2PZ−CN:0.5g(商品名、四国化成工業株式会社製)
・シリカ:SO−G1:187.5g(商品名、株式会社アドマテックス製、平均粒径0.2〜0.4μm)
・溶剤:メチルエチルケトン:400g
【0041】
(2)熱膨張率測定基板の作製
(1)で作製したガラス織布含浸用樹脂ワニスを厚みが0.2mmのガラス織布(坪量210g/m)に含浸し、160℃で3分間加熱して半硬化(Bステージ状態)のプリプレグを得た。このプリプレグを4枚重ね、その両側に金属箔として厚さ18μmの商品名F2−WS銅箔(Rz:2.0μm、Ra:0.3μm)を重ね、175℃、90分、2.5MPaのプレス条件で両面銅張積層板を作製した。この銅張り積層板を過硫酸アンモニウム150g/lの水溶液に40℃−20分間浸漬して銅箔をエッチング除去し、熱膨張率・弾性率測定用基板を得た。
【0042】
実施例6
エポキシ樹脂としてジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂:YX−8800(商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)を100g、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂:NC−3000−H(商品名、日本化薬株式会社製)65.8g、クレゾールノボラック樹脂:KA−1165(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)を84.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテルに2重量%溶解したジシアンジアミド(関東化学株式会社製)をジシアンジアミド換算で1.66gにした以外は、実施例1と同様にして熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を得た。
【0043】
実施例7
エポキシ樹脂としてジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂:YX−8800(商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)を100g、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂:NC−3000−H(商品名、日本化薬株式会社製)65.8g、クレゾールノボラック樹脂:KA−1165(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)を75.1g、ベンゾグアナミン(関東化学株式会社製)9.9gにした以外は、実施例1と同様にして熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を得た。
【0044】
実施例8
エポキシ樹脂として2官能ナフタレン型エポキシ樹脂:HP−4032D(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)を100g、ビスマレイミド含有アミノトリアジンノボラック樹脂:IZ−9872(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)を478gにした以外は、実施例1と同様にして熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を得た。
【0045】
実施例9
エポキシ樹脂としてジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂:YX−8800(商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)を100g、フェノールノボラック型エポキシ樹脂:N−770(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)44.8g、LA−3018を59.6gに代え、更に、シリカ:SO−G1(商品名、株式会社アドマテックス製、平均粒径0.2〜0.4μm)を249.8g加えた以外は、実施例1と同様にして熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を得た。
【0046】
実施例10
エポキシ樹脂としてジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂:YX−8800(商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)を100g、フェノールノボラック型エポキシ樹脂:N−740(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)42.6g、硬化剤としてのLA−3018を59.6gに代え、更に、シリカ:SO−G1(商品名、株式会社アドマテックス製、平均粒径0.2〜0.4μm)を247.1g加えた以外は、実施例1と同様にして熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を得た。
【0047】
実施例11
エポキシ樹脂としてジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂:YX−8800(商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)を100g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂:N−865(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)49.5g、硬化剤としてのLA−3018を59.6gに代え、更に、シリカ:SO−G1(商品名、株式会社アドマテックス製、平均粒径0.2〜0.4μm)を255.6g加えた以外は、実施例1と同様にして熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を得た。
【0048】
実施例12
エポキシ樹脂としてジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂:YX−8800(商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)を100g、及びビフェニルノボラック型エポキシ樹脂:NC−3000−H(商品名、日本化薬株式会社製)65.8g、硬化剤としてのクレゾールノボラック樹脂:KA−1165(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)を84.5g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルに2重量%溶解したジシアンジアミド(関東化学株式会社製)をジシアンジアミド換算で1.66gにし、シリカ:SO−G1(商品名、株式会社アドマテックス製、平均粒径0.2〜0.4μm)を、308.0gとした以外は、実施例5と同様にして熱膨張率・弾性率測定用基板を得た。
【0049】
比較例1
下記組成の絶縁性樹脂ワニスを作製した。この時のエポキシに対する熱硬化剤の当量は1.0当量とした。この絶縁性樹脂ワニスをPETフィルム上に塗工し、120℃−10分乾燥させて、膜厚70±5μmの絶縁性樹脂付フィルムを作製した。絶縁性樹脂付フィルムから半硬化樹脂を採取して粉末にした。半硬化樹脂の粉末から、次の手順で樹脂板を作製した。スペーサ及び離型シートとして、樹脂板の型として50mm角に穴明をしたフッ素樹脂シートを配置し、この中に樹脂粉を入れ、この上下に銅箔を配置して、175℃、90分、2.5MPaのプレス条件で硬化させた。その後銅箔をエッチング除去し、樹脂板はフッ素樹脂シートから剥がして、厚さ0.2mmの熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を作製した。
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂:N−770:100g(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)
・フェノールノボラック樹脂:HP−850:53.3g(商品名、日立化成工業株式会社製)
・ジシアンジアミド:0.13g(商品名、関東化学株式会社製)
・硬化促進剤:2PZ−CN:0.5g(商品名、四国化成工業株式会社製)
・溶剤:メチルエチルケトン:250g
【0050】
比較例2
エポキシ樹脂として4官能ナフタレン型エポキシ樹脂:HP−4700(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)を100g、硬化剤としてアミノトリアジンノボラック樹脂:LA−3018(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)を43.4gにした以外は、比較例1と同様にして熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を得た。
【0051】
比較例3
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた1リットルの4つ口セパラブルフラスコに、下記の組成1を投入し、100℃で2時間反応させて、反応物(HP−4032反応物)を得た。次いで、室温(25℃)まで冷却し、更に、下記の組成2を投入して絶縁性樹脂ワニスを作製した。この絶縁性樹脂ワニスをPETフィルム上に塗工し、160℃−10分乾燥させて、膜厚70±5μmの絶縁性樹脂付フィルムを作製した。絶縁性樹脂付フィルムから半硬化樹脂を採取して粉末にした。半硬化樹脂の粉末から、次の手順で樹脂板を作製した。スペーサ及び離型シートとして、樹脂板の型として50mm角に穴明をしたフッ素樹脂シートを配置し、この中に樹脂粉を入れ、この上下に銅箔を配置して、175℃、90分、2.5MPaのプレス条件で硬化させた。その後銅箔をエッチング除去し、樹脂板はフッ素樹脂シートから剥がして、厚さ0.2mmの熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を作製した。
「組成1」
・2官能ナフタレン型エポキシ樹脂:HP−4032D:83.2g(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)
・ビスフェノールA:69.8g(試薬、関東化学株式会社製)
・硬化促進剤:2PZ−CN:0.4g(商品名、四国化成工業株式会社製)
「組成2」
・2官能ナフタレン型エポキシ樹脂:HP−4032D:100g(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)
・アミノトリアジンノボラック樹脂:LA−3018:52.9g(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)
・硬化促進剤:2PZ−CN:0.5g(商品名、四国化成工業株式会社製)
・溶剤:シクロヘキサノン:250g
【0052】
比較例4
シリカ:SO−G1(商品名、株式会社アドマテックス製、平均粒径0.2〜0.4μm)を188.2g加えた以外は、比較例1と同様にして熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を得た。
【0053】
比較例5
(1)ガラス織布含浸用樹脂の作製
以下に示す組成のガラス織布含浸用樹脂ワニスを作製した。
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂:N−770:100g(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)
・フェノールノボラック樹脂:HP−850:53.3g(商品名、日立化成工業株式会社製)
・ジシアンジアミド:0.13g(商品名、関東化学株式会社製)
・硬化促進剤:2PZ−CN:0.5g(商品名、四国化成工業株式会社製)
・シリカ:SO−G1:188.2g(商品名、株式会社アドマテックス製、平均粒径0.2〜0.4μm)
・溶剤:メチルエチルケトン:400g
【0054】
(2)熱膨張率測定基板の作製
(1)で作製したガラス織布含浸用樹脂ワニスを厚みが0.2mmのガラス織布(坪量210g/m)に含浸し、160℃で3分間加熱して半硬化(Bステージ状態)のプリプレグを得た。このプリプレグを4枚重ね、その両側に18μmの商品名F2−WS銅箔(Rz:2.0μm、Ra:0.3μm)を重ね、175℃、90分、2.5MPaのプレス条件で両面銅張積層板を作製した。この銅張り積層板を過硫酸アンモニウム150g/lの水溶液に40℃−20分間浸漬して銅箔をエッチング除去し、熱膨張率・弾性率測定用基板を得た。
【0055】
比較例6
シリカSO−G1配合量を282.3gにした以外は比較例5と同様にして熱膨張率・弾性率測定用基板を得た。
【0056】
比較例7
シリカSO−G1配合量を422.0gにした以外は比較例5と同様にしてサンプル作製を行ったが、プレス成形性が悪く、サンプルが作製できなかった。
【0057】
比較例8
エポキシ樹脂として2官能ナフタレン型エポキシ樹脂:HP−4032D(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)を100g、硬化剤としてビスフェノールA(関東化学株式会社製)を83.8gにし、ジシアンジアミドを添加しない以外は、比較例1と同様にしてサンプル作製を行ったが、Tg以上では測定装置の荷重でサンプルが伸びてしまい、Tg以上での貯蔵弾性率を測定できなかった。
【0058】
比較例9
硬化剤としてトリフェノールメタン:MEH−7500(商品名、明和化成株式会社製)を58.6gにした以外は、比較例2と同様にして、熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を得た。
【0059】
比較例10
エポキシ樹脂としてジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂:YX−8800(商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)を100g、硬化剤としてビスフェノールA(関東化学株式会社製)を63.0gにした以外は、比較例1と同様にしてサンプル作製を行ったが、Tg以上では測定装置の荷重でサンプルが伸びてしまい、Tg以上での貯蔵弾性率を測定できなかった。
【0060】
比較例11
エポキシ樹脂としてナフタレンノボラック型エポキシ樹脂:NC−7000L(商品名、日本化薬株式会社製)を100g、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂:HP−850(商品名、日立化成工業株式会社製)を45.5gにした以外は、比較例1と同様にして熱膨張率・弾性率測定用樹脂板を得た。
【0061】
[熱膨張率の測定]
実施例1〜4、6〜11、比較例1〜4、8〜11の銅箔を取り除いた熱膨張率・弾性率測定用樹脂板から4×20mmの試験片を切り出して、TAインスツルメンツ株式会社製TMA試験装置(TMA−2940)を用いて、昇温10℃/min、引張り法でTg未満の熱膨張率を測定した。実施例5、12、比較例5〜7の銅箔を取り除いた熱膨張率・弾性率測定用基板から5mm角の試験片を切り出して、TAインスツルメンツ株式会社製TMA試験装置(TMA−2940)を用いて、昇温10℃/min、圧縮法でTg未満の熱膨張率を測定した。
【0062】
[貯蔵弾性率の測定]
銅箔を除去した熱膨張率・弾性率測定用樹脂板、熱膨張率・弾性率測定用基板から5×30mmの試験片を切り出して、動的粘弾性測定装置(株式会社UBM製E−4000)を用いて昇温;5℃/min、自動静荷重の条件で貯蔵弾性率を測定した。
【0063】
[ガラスクロス含浸時の取扱い性(粉落ち)]
作製したプリプレグをカッターで切断し、その粉落ち状態を目視で観察した。
【0064】
実施例で作製した熱膨張率・弾性率測定用の樹脂板(樹脂を含み、無機充填剤、ガラスクロスを含まない)の長さ方向の貯蔵弾性率、Tg未満の熱膨張率の測定結果を表1、3に示す。
また、実施例で作製した熱膨張率・弾性率測定用の基板(樹脂と、無機充填剤及び/又はガラスクロスとを含む)の面方向の貯蔵弾性率、Tg未満の熱膨張率測定結果も表1、3に併せて示す。
【0065】
一方、比較例で作製した熱膨張率・弾性率測定用の樹脂板の長さ方向の貯蔵弾性率、Tg未満の熱膨張率の測定結果を表2、4に示す。
また、比較例で作製した熱膨張率・弾性率測定用の基板の面方向の貯蔵弾性率、Tg未満の熱膨張率測定結果も表2、4に併せて示す。
【0066】
材料の比重は、実施例1〜3、6〜8、比較例1〜3、8〜11では1.2とした。実施例4、9〜11、比較例4は、材料の比重を1.6とした。実施例5、12、比較例5、6は、材料の比重を2.0とした。比較例7は、材料の比重を2.2とした。架橋点間分子量の修正は、シリカの貯蔵弾性率は80GPaとして貯蔵弾性率の修正を行い、材料の比重は1.2として架橋点間分子量を算出した。また、ポアソン比は、全て0.5とした。
【0067】
樹脂板である実施例1〜3及び6〜8のTg未満の熱膨張率が55〜64ppm/℃であるのに対し、比較例1〜3及び8〜11のTg未満の熱膨張率は68〜87ppm/℃と、最小で4ppm/℃最大で32ppm/℃低いTg未満の熱膨張率を示していることがわかる。ここで、比較例8及び10は、Tg以上では測定装置の荷重でサンプルが伸びてしまい、Tg以上での貯蔵弾性率の測定ができなかった。この時、実施例1〜3及び6〜8の架橋点間分子量は請求範囲の300〜1000の範囲であるが、比較例1〜3及び9、11の架橋点間分子量は250以下を示し、架橋密度が高く、芳香環の相互作用を充分に発現できず、熱膨張率が下がらなかった。
【0068】
また、実施例1に実施例1と同じエポキシ樹脂を用いた反応物を配合し、架橋点間分子量を3860にした比較例3のTg未満の熱膨張率は68ppm/℃であった。このことから、芳香環を有する絶縁性樹脂を配合するだけでは芳香環同士の相互作用によって、Tg未満の熱膨張率を低くさせることは不可能であり、本発明の架橋点間分子量を300〜1000の範囲に樹脂組成を設定することが芳香環同士の相互作用による低熱膨張率化に重要であることがわかる。
【0069】
実施例4、9〜11と比較例4は無機の充填剤としてシリカを配合したものである。実施例4、9〜11のTg未満の熱膨張率は、34〜36ppm/℃であるが、比較例4は40ppm/℃であった。このときの修正後の架橋点間分子量は実施例4が458、実施例9が320、実施例10が564、実施例11が365であるのに対し、比較例4が235であった。実施例1〜3の絶縁性樹脂と同様に実施例4、9〜11は芳香環同士の相互作用により低熱膨張率化が発現していることがわかる。また、絶縁性樹脂の架橋点間分子量を本願特許の範囲にすることで、充填剤を配合した場合でも従来材料に比較して低いTg未満の熱膨張率を示すことがわかった。
【0070】
実施例5と比較例5は、実施例4と比較例4をガラスクロスに含浸したものである。実施例5のTg未満の熱膨張率は、13.5ppm/℃であるが、比較例5は15ppm/℃であった。このときの貯蔵弾性率の修正を行った架橋点間分子量は実施例5が458、比較例5が233であった。
また、実施例12は実施例6にシリカを配合しガラスクロスに含浸したものである。実施例12のTg未満の熱膨張率は、12.5ppm/℃である。このときの貯蔵弾性率の修正を行った架橋点間分子量は314であった。
また、比較例6、7は比較例5にシリカ配合量を増やしたものである。比較例6のTg未満の熱膨張率は、13.5ppm/℃であるもののガラスクロス含浸時の取り扱い性は粉落ちが多く望ましくない。比較例7はプレス成形性に問題があり、サンプルを作製できなかった。このときの貯蔵弾性率の修正を行った架橋点間分子量は比較例6が218であった。絶縁性樹脂の架橋点間分子量を300から1000の範囲に樹脂組成を設定することが芳香環同士の相互作用を発現して低熱膨張率化する上で重要であることがわかる。
【0071】
従来の充填剤を増やす方法の低熱膨張率化では、プレス成形不良を起こすTg未満の熱膨張率でも実施例12では達成しており、本願特許の有効性を示すものである。
【0072】
以下の表中、配合の単位はグラムである。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
本発明の例等で用いた樹脂の構造を以下に示す。
【化4−1】


【化4−2】

【0078】
【表5】

【0079】
本発明によれば、架橋点間分子量が300〜1000の範囲に入るように芳香環を有する絶縁性樹脂の樹脂組成を制御することで低熱膨張率の樹脂組成物を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
低コストで架橋密度を上げることなく、低熱膨張な樹脂組成物、プリプレグ、積層板及び配線板を提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層板の製造に用いられる樹脂組成物であって、樹脂組成物が芳香環を有する絶縁性樹脂を含み、かつ芳香環を有する絶縁性樹脂のTg以上のせん断弾性率から求めた、前記絶縁性樹脂の架橋点間分子量が、積層板製造後の段階で300〜1000であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記芳香環を有する絶縁性樹脂が、多環式化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記絶縁性樹脂が、ビフェニル構造、ナフタレン構造、アントラセン構造、及びジヒドロアントラセン構造のいずれかを有することを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記絶縁性樹脂が、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂が結晶性エポキシ樹脂を1つ以上含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂が、下記の一般式(1):
【化5】


(式中、R〜Rは同一、又は互いに異なるC2m+1基を表し、ここでmは0又は1以上の整数を表し、nは0又は1以上の整数を表す)
のビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、一般式(2):
【化6】


(式中、R5〜R8は同一、又は互いに異なるC2p+1基を表し、ここでpは0又は1以上の整数を表す)
のアントラセン型エポキシ樹脂、一般式(3):
【化7】


(式中、R9は同一、又は互いに異なるC2t+1基を表し(ここでtは0又は1以上の整数を表す)、rは0〜4の整数を表し、R10は同一、又は互いに異なるC2u+1基を表し(ここでuは0又は1以上の整数を表す)、sは0〜6の整数を示す)
のジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂のいずれか1つ以上含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂の硬化剤が、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、アミノトリアジンノボラック樹脂、ビスマレイミド含有アミノトリアジンノボラック樹脂、ジシアンジアミド、ベンゾグアナミンのいずれか1つ以上含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の樹脂組成物を基材に塗布して含浸させ、次いで乾燥させて成るプリプレグ。
【請求項9】
前記基材が、ガラス織布、ガラス不織布、アラミド不織布のいずれかであることを特徴とする請求項8に記載のプリプレグ。
【請求項10】
積層成形された請求項8又は9に記載のプリプレグから成る積層板。
【請求項11】
請求項10に記載の積層板の片面又は両面に張られた金属箔を回路加工して成る配線板。

【公開番号】特開2013−80931(P2013−80931A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−233865(P2012−233865)
【出願日】平成24年10月23日(2012.10.23)
【分割の表示】特願2008−204304(P2008−204304)の分割
【原出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】