説明

樹脂組成物、プリプレグおよびプリプレグの製造方法

【課題】優れた電気特性を発揮することができるとともに、基材により多く保持することのできる樹脂組成物、これを用いたプリプレグおよびこのプリプレグの製造方法を提供すること。
【解決手段】樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、無機充填剤とを有し、前記無機充填剤は、シリカで構成される第1の無機充填剤と、シリコーンパウダーで構成される第2の無機充填剤とを有する。また、熱硬化性樹脂の含有量は、樹脂組成物全体の40〜60質量%の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、プリプレグおよびプリプレグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化が進んでおり、これらに使用される高密度実装対応のプリント配線板等は、従来にも増して小型化かつ高密度化が進んでいる。これに対応すべく、優れた電気特性すなわち誘電率および誘電正接が共に低いプリント配線基板が望まれている。そして、このようなプリント配線板として、ガラスクロス等の基材をなるべく薄くし、その基体になるべく多くの樹脂材料を含浸させたプリプレグを用いたものが知られている。また、樹脂材料として、シリカ等の無機充填剤を充填したものを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1の樹脂組成物では、十分な粘度が得られないため、十分な量の樹脂材料を基材に含浸させることができず、得られたプリプレグ(プリント配線板)は、優れた電気特性を発揮することができない。また、樹脂材料の含浸量が少ないためプリプレグの厚さを厚くすることができず、機械的強度を維持することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−285523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、優れた電気特性を発揮することができるとともに、基材により多く保持することのできる樹脂組成物、これを用いたプリプレグおよびこのプリプレグの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。
(1) 熱硬化性樹脂と、
無機充填剤とを有し、
前記無機充填剤は、シリカで構成される第1の無機充填剤と、シリコーンパウダーで構成される第2の無機充填剤とを有することを特徴とする樹脂組成物。
【0006】
(2) 前記熱硬化性樹脂の含有量は、前記樹脂組成物全体の40〜60質量%の範囲内である上記(1)に記載の樹脂組成物。
【0007】
(3) 前記無機充填剤の含有量は、前記樹脂組成物全体の40〜60質量%の範囲内である上記(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
【0008】
(4) 前記第2の無機充填剤の含有量は、前記無機充填剤全体の20〜60質量%の範囲内である上記(3)に記載の樹脂組成物。
【0009】
(5) 前記シリコーンパウダーは、ゴム状ポリマーからなるコアと、前記コアを被覆し、ガラス状ポリマーからなるシェルとを有するコア/シェル構造をなしている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0010】
(6) 前記熱硬化性樹脂として、少なくとも、エポキシ樹脂と、少なくとも2つのマレイミド骨格を有するマレイミド化合物と、少なくとも2つのアミノ基を有するとともに芳香族環構造を有する芳香族ジアミン化合物とを有している上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0011】
(7) 前記マレイミド化合物と前記芳香族ジアミンとの反応を促す、塩基性基およびフェノール性水酸基を有する触媒を有している上記(6)に記載の樹脂組成物。
【0012】
(8) 前記シリコーンパウダーは、前記エポキシ樹脂に溶解しない上記(6)または(7)に記載の樹脂組成物。
【0013】
(9) 上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の樹脂組成物を基材に含浸させてなることを特徴とするプリプレグ。
【0014】
(10) 樹脂組成物と溶媒とを混合してなる樹脂ワニス中に基材を浸漬させ、前記基材に前記樹脂ワニスを含浸させる浸漬工程と、
前記樹脂ワニスが含浸した前記基材を乾燥する乾燥工程とを有し、
前記樹脂ワニスは、熱硬化性樹脂と、無機充填剤とを有し、
前記無機充填剤は、シリカで構成される第1の無機充填剤と、シリコーンパウダーで構成される第2の無機充填剤とを有することを特徴とするプリプレグの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の樹脂組成物によれば、優れた電気特性を発揮することができるとともに、基材により多く保持することができる樹脂組成物が得られる。これにより、優れた電気特性を発揮することのできるプリプレグが得られる。特に、樹脂組成物中の熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂と、少なくとも2つのマレイミド骨格を有するマレイミド化合物と、少なくとも2つのアミノ基を有するとともに芳香族環構造を有する芳香族ジアミン化合物とを有することにより、さらに優れた電気特性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のプリプレグを製造するための製造装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の樹脂組成物、プリプレグおよびプリプレグの製造方法の好適な実施形態について説明する。
1.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、触媒(B)、無機充填剤(C)とを有している。このような樹脂組成物の粘度としては、特に限定されないが、常温で、1〜10Pa・s程度であるのが好ましい。これにより、樹脂組成物の粘度が適度(低すぎず高すぎない)なものとなり、後述するように、基材に十分な量の樹脂組成物を含浸させることができる。
【0018】
以下、これら各成分について説明する。
[熱硬化性樹脂]
樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)として、エポキシ樹脂(A1)と、少なくとも2つのマレイミド骨格(マレイミド基)を有するマレイミド化合物(A2)と、少なくとも2つのアミノ基を有するとともに、芳香族環構造を有する芳香族ジアミン化合物(A3)とを有している。
【0019】
(エポキシ樹脂)
樹脂組成物がエポキシ樹脂(A1)を有することにより、樹脂組成物を硬化させてなる硬化体の耐熱性が向上する。さらには、硬化体の線膨張率を低くすることができるとともに、誘電率および誘電正接を低くすることができる。すなわち、エポキシ樹脂(A1)を有することにより、耐久性および電気特性に優れる硬化体を得ることができる。
【0020】
このようなエポキシ樹脂(A1)としては、特に限定されず、例えば、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0021】
なお、エポキシ樹脂(A1)としては、これらのうちの1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
ここで、本明細書中の「樹脂組成物の硬化体」とは、樹脂組成物中の硬化性樹脂が有する官能基の反応が実質的に完結した状態を意味し、例えば、示差走査熱量測定(DSC)装置により発熱量を測定することにより評価することができる。具体的には、「樹脂組成物の硬化体」とは、この発熱量がほとんど検出されない状態を言い、後述するプリント配線板の内層回路基板や絶縁層がこれに当たる。
【0023】
(マレイミド化合物)
マレイミド化合物(A2)は、少なくとも2つのマレイミド骨格を有する。樹脂組成物がこのようなマレイミド化合物(A2)を有することにより、硬化体の線膨張率を低くすることができる。さらには、硬化体のガラス転移温度を高くすることができ、優れた耐熱性(特に半田耐熱性)を発揮することのできる硬化体が得られる。これは、マレイミド化合物(A2)に由来する剛直な骨格が、硬化体中の分子鎖のミクロブラウン運動を抑制するためであると考えられる。
【0024】
このようなマレイミド化合物(A2)としては、2つのマレイミド骨格を有していれば特に限定されず、例えば、例えば、N、N’−4、4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N、N’−1、3−フェニレンジマレイミド、N、N’−1、4−フェニレンジマレイミド、1、2−ビス(マレイミド)エタン、1、6−ビスマレイミドヘキサン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2、2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、4−メチル−1、3−フェニレンビスマレイミド、1、6−ビスマレイミド−(2、2、4−トリメチル)ヘキサンおよびこれらのオリゴマー、並びにマレイミド骨格含有ジアミン縮合物等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、マレイミド化合物(A2)としては、吸水率が低いという観点から、特に、2、2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンが好ましい。
【0026】
なお、マレイミド化合物(A2)としては、これらのうちの1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
(芳香族ジアミン化合物)
芳香族ジアミン化合物(A3)は、少なくとも2つのアミノ基を有するとともに、芳香族環構造を有している。このような芳香族ジアミン化合物(A3)を前述のマレイミド化合物(A2)と反応させることにより、硬化体の線膨張率をさらに下げることができ、また硬化体のガラス転移温度をさらに高めることができる。また、芳香族ジアミン化合物(A3)は、その分子内に窒素原子を有しているため、硬化体と金属層(導体回路)との密着性をより高くすることができる。
【0028】
このような芳香族ジアミン化合物(A3)としては、少なくとも2つのアミノ基を有するとともに、芳香族環構造を有していれば特に限定されず、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−キシレンジアミン等の芳香族環を1個有する芳香族ジアミン化合物、ビフェニル系ジアミン化合物、ジフェニルエーテル系ジアミン化合物、ベンゾフェノン系ジアミン化合物、ジフェニルスルホン系ジアミン化合物、ジフェニルメタン系ジアミン化合物、ジフェニルプロパン系ジアミン化合物、ジフェニルチオエーテル系ジアミン化合物等の芳香族環を2個有する芳香族ジアミン化合物、ビス(フェノキシ)ベンゼン系ジアミン化合物、ビス(フェノキシフェニル)スルホン系ジアミン化合物等の芳香族環を3個有する芳香族ジアミン化合物、ビス(フェノキシ)ジフェニルスルホン系ジアミン化合物、ビス(フェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン系ジアミン化合物、ビス(フェノキシフェニル)プロパン系ジアミン化合物等の芳香族環を4個有する芳香族ジアミン化合物を挙げることができる。なお、芳香族ジアミン化合物(A3)としては、これらのうちの1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
これらの中でも、芳香族ジアミン化合物(A3)としては、芳香族環が2個以上、4個以下の芳香族ジアミン類化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば、4、4’−ジアミノジフェニルメタン、4、4’−ジアミノジフェニルプロパン、4、4’−ジアミノジフェニルエーテル、4、4’−ジアミノジフェニルスルホン、3、3’−ジアミノジフェニルスルホン、1、5−ジアミノナフタレン、4、4’−ジアミノ−3、3’−ジエチル−5、5’−ジメチルジフェニルメタン、3、3’−ジエチル−4、4’−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族環を2個有するもの、4、4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、1、4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族環を3個有するもの、2、2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族環を4つ有するものなどが挙げられる。
以上、熱硬化性樹脂(A)について説明した。
【0030】
この熱硬化性樹脂(A)の含有量としては、特に限定されないが、樹脂組成物全体の40〜60質量%程度であるのが好ましく、50質量%程度であるのがより好ましい。熱硬化性樹脂(A)の含有量が前記下限値未満であると後述するプリプレグを形成するのが困難となる場合がある。反対に、熱硬化性樹脂(A)の含有量が前記上限値を超えると形成されたプリプレグの強度が低下する場合がある。
【0031】
また、エポキシ樹脂(A1)の含有量としては、特に限定されないが、熱硬化性樹脂(A)100質量%中、20〜30質量%程度であるのが好ましい。そして、残りをマレイミド化合物(A2)および芳香族ジアミン化合物(A3)で占めるのが好ましい。これにより、より優れた耐熱性および電気特性を有する硬化体が得られる。
【0032】
また、マレイミド化合物(A2)および芳香族ジアミン化合物(A3)の含有量としては、特に限定されないが、これらの当量比が0.8〜1.2となる量であるのが好ましい。これにより、マレイミド化合物(A2)と芳香族ジアミン化合物(A3)とをバランス良く反応させることができ、未反応のマレイミド樹脂(A2)や芳香族ジアミン化合物(A3)の残存を効果的に抑制することができる。そのため、硬化体の線膨張率がより低くなるとともに、ガラス転移温度がより高くなる。
【0033】
[触媒]
触媒(B)は、マレイミド化合物(A2)と芳香族ジアミン化合物(A3)との反応を促進する機能を有している。このような触媒(B)は、塩基性基およびフェノール性水酸基を有する化合物である。触媒(B)中のフェノール性水酸基では、水素イオンが容易に離脱することができ、この離脱した水素イオンの作用によって、マレイミド化合物(A2)と芳香族ジアミン化合物(A3)との反応が促進される。
【0034】
具体的には、触媒(B)から離脱した水素イオンは、マレイミド化合物(A2)中のマレイミド基が有するC=C(炭素−炭素二重結合)に付加し、C=Cの一方の炭素がカチオンとなる。これにより、芳香族ジアミン化合物(A3)の窒素原子がマレイミド化合物(A2)のカチオンとなった炭素原子を求核攻撃し易くなり、その結果、マレイミド化合物(A2)と芳香族ジアミン化合物(A3)との硬化反応を促進することができる。
【0035】
したがって、触媒(B)の存在下では、低温であっても、マレイミド化合物(A2)と芳香族ジアミン化合物(A3)とを反応させることができる。そのため、硬化体の線膨張率をさらに下げることができるとともに、硬化体のガラス転移温度をさらに高めることができる。
【0036】
また、触媒(B)は、マレイミド化合物(A2)の自己重合、具体的には、マレイミド基が有するC=C(炭素−炭素二重結合)同士の重合を抑制することができ、硬化体の架橋構造に歪を生じさせないため、残留応力が小さく金属配線層(導体回路)との密着性に優れる硬化体が得られる。
【0037】
また、触媒(B)は、塩基性基を有しているため、硬化体の誘電正接をより低くすることができる。
【0038】
また、例えば、触媒(B)として、例えばフェノールのようにフェノール性水酸基を有するが塩基性基を有しない化合物を使用した場合、樹脂組成物中に遊離するフェノールによって硬化体の耐熱性(半田耐熱性)が悪化するが、本発明のように、触媒(B)として、塩基性基およびフェノール性水酸基を有する化合物を使用することにより、上述したような触媒効果を発揮しつつ、塩基性基の存在により硬化体の耐熱性(半田耐熱性)をより高めることができる。
【0039】
このような触媒(B)としては、塩基性基およびフェノール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリアジン変性ノボラック化合物、アニリン変性ノボラック化合物、メラミン変性ノボラック化合物等が挙げられる。
【0040】
なお、触媒(B)としては、これらのうちの1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
これらの中でも、触媒(B)としては、トリアジン変性ノボラック化合物であるのが好ましい。このように、触媒(B)としてトリアジン骨格を有する化合物を使用することで、上述した触媒効果を十分に発揮することができるとともに、硬化体の誘電率および誘電正接をより低くすることができる。トリアジン骨格を有する化合物としては、例えば、下記一般式(1)で示される化合物を用いることができる。
【0042】
【化1】

【0043】
触媒(B)の含有量としては、特に限定されないが、樹脂組成物全体の1〜5質量%であることが好ましい。これにより、触媒としての機能を十分に発揮することができるとともに、硬化体の耐熱性をより高め、誘電正接をより低くすることができる。
【0044】
[無機充填剤]
樹脂組成物は、無機充填剤(C)として、第1の無機充填剤であるシリカ(C1)と、第2の無機充填剤であるシリコーンパウダー(C2)とを有している。
【0045】
(シリカ)
樹脂組成物がシリカ(C1)を有することにより、硬化体の線膨張率をより低くすることができる。このようなシリカ(C1)としては、特に限定されず、溶融シリカ、粉砕シリカ、ゾルゲルシリカ等を用いることができるが、溶融シリカであるのが好ましい。これにより、上記効果をより効果的に発揮することができる。
【0046】
また、シリカ(C1)は、球状であるのが好ましい。これにより、樹脂組成物中におけるシリカ(C1)の含有量を多くしても流動性に優れる樹脂組成物が得られる。そのため、硬化体の形成が容易で、かつ硬化体の線膨張率をより低くすることができる。
【0047】
また、シリカ(C1)の平均粒径としては、特に限定されないが、0.05〜2.0μm程度であるのが好ましい。これにより、樹脂組成物の粘度を適度なものに保つことができるとともに、樹脂組成物中でのシリカ(C1)の沈降を防止することができる。なお、シリカ(C1)の平均粒径は、島津製作所SALD−7000等の機器を用いて測定することができる。
【0048】
また、シリカ(C1)の比表面積としては、特に限定されないが、1〜200m/g程度であることが好ましい。比表面積が前記上限値を超えるとシリカ(C1)同士が凝集しやすくなり、樹脂組成物の構造が不安定になる場合がある。また前記下限値未満であると樹脂組成物中にシリカ(C1)を充填し難くなる場合がある。なお、比表面積は、BET法により求めることができる。
【0049】
シリカ(C1)は、官能基含有シラン類、アルキルシラザン類などのカップリング剤によって表面処理されていてもよい。このような表面処理を予め施すことにより、シリカ(C1)の凝集を抑制することができ、樹脂組成物中にシリカ(C1)を良好に分散させることができる。さらには、シリカ(C1)と熱硬化性樹脂(A)との密着性が向上するため、硬化体の機械強度が向上する。
【0050】
カップリング剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、エポキシシラン、スチリルシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシラン、メルカプトシラン、N−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメトキシルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルシラン、イソシアネートシラン、スルフィドシラン、クロロプロピルシラン、ウレイドシラン化合物等が挙げられる。
【0051】
カップリング剤の含有量としては、特に限定されないが、シリカ(C1)100質量%に対して、0.01〜5質量%程度であるのが好ましく、0.1〜3質量%程度であるのがより好ましい。カップリング剤の含有量が前記上限値を超えると、硬化体製造時において硬化体にクラックが入る場合があり、前記下限値未満であると、櫛組成物中の熱硬化性樹脂(A)とシリカ(C1)との結合力(密着性)が低下する場合がある。
【0052】
(シリコーンパウダー)
シリコーンパウダー(C2)は、コアと、コアを被覆するシェルとを有するコア/シェル構造をなしている。また、コアは、ゴム状ポリマーからなり、シェルは、ガラス状ポリマーからなる。このようなシリコーンパウダー(C2)は、チキソ性を有し、後述するように、樹脂組成物と溶媒とを混合してなる樹脂ワニスの粘度を高めることができる。樹脂ワニスの粘度が高まれば、基材がより多くの樹脂組成物を保持することができるため、より誘電率および誘電正接の小さいプリプレグを形成することができる。
【0053】
また、シリコーンパウダー(C2)として、エポキシ樹脂に溶解(相溶)しないものを用いることが好ましい。これにより、より効果的にチキソ性を発揮することができ、樹脂材料の粘度を高めることができる。
【0054】
前記コアを構成するゴム状ポリマーとしては、特に限定されず、例えば、ポリメチルシロキサンをビニル化シラン化合物で架橋したポリマーが挙げられる。
【0055】
また、前記シェルを構成するガラス状ポリマーとしては、特に限定されず、例えば、ポリメチルシルセスキオキサンが挙げられる。
【0056】
また、シリコーンパウダー(C2)の平均粒径としては、特に限定されないが、1〜15μm程度であるのが好ましく、5μm程度であるのがより好ましい。これにより、樹脂組成物中でのシリコーンパウダーの分散性が向上し、シリコーンパウダーの沈降を防止することができる。
以上、無機充填剤(C)について説明した。
【0057】
この無機充填剤(C)の含有量としては、特に限定されないが、樹脂組成物全体の40〜60質量%程度であるのが好ましく、50質量%程度であるのがより好ましい。無機充填剤(C)の含有量が前記下限値未満であると、硬化物の電気的特性および樹脂組成物の粘度が低下する場合がある。反対に、無機充填剤(C)の含有量が前記上限値を超えると硬化体の強度および耐熱性が低下する場合がある。
【0058】
また、シリカ(C1)の含有量としては、特に限定されないが、無機充填剤(C)100質量%中、40〜80質量%であるのが好ましい。そして、無機充填剤(C)の残りをシリコーンパウダー(C2)で占めるのが好ましい。これにより、樹脂組成物の粘度がより高くなるとともに、優れた電気特性を有する硬化体が得られる。
【0059】
[他の成分]
本発明の樹脂組成物は、前述したように、熱硬化性樹脂(A)と、触媒(B)と、無機充填剤(C)とを必須成分としているが、本発明の目的に反しない範囲において、その他の樹脂、硬化剤、硬化促進剤、難燃剤、カップリング剤、無機充填材、その他の成分を添加してもよい。
【0060】
2.プリプレグ
本発明のプリプレグは、上述した本発明の樹脂組成物を基材に含浸させてなるものである。これにより、線膨張率が低く、優れた密着性(金属配線層との密着性)および耐熱性を有し、誘電率および誘電正接が低いプリプレグが得られる。
【0061】
プリプレグで用いる基材としては、特に限定されず、例えば、ガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、ガラス以外の無機化合物を成分とする繊布または不繊布等の無機繊維基材、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維基材等が挙げられる。これら基材の中でも強度、吸水率の点でガラス織布に代表されるガラス繊維基材が好ましい。
【0062】
また、基材の厚さとしては、特に限定されないが、20〜60μm程度であるのが好ましい。これにより、誘電率および誘電正接がともに低く、電気特性に優れるプリプレグを得ることができる。
【0063】
樹脂組成物を基材に含浸させる方法としては、特に限定されず、例えば、溶剤を用いて樹脂組成物を樹脂ワニスとして調整し、この樹脂ワニスに基材を浸漬する方法、樹脂ワニスを各種コーターにより塗布する方法、樹脂ワニスをスプレーにより吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対する樹脂組成物の含浸性が向上する。樹脂ワニスを調整する際に用いる溶媒としては、樹脂組成物に対して良好な溶解性を示すことが望ましい。このような溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンN−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0064】
プリプレグは、樹脂組成物(樹脂ワニス)を含浸させた基材を加熱乾燥させることにより得られる。
【0065】
得られたプリプレグの厚さとしては、特に限定されないが、0.1〜0.5mm程度であるのが好ましい。これにより、樹脂組成物で構成された樹脂層の厚さが十分に厚くなり、プリプレグの強度を確保することができるとともに、優れた電気特性を発揮することができる。
【0066】
次いで、プリプレグの製造方法(本発明のプリプレグの製造方法)について説明する。
プリプレグの製造方法は、樹脂組成物と溶媒とを混合してなる樹脂ワニス中に基材を浸漬させ、前記基材に前記樹脂ワニスを含浸させる浸漬工程と、樹脂ワニスが含浸した基材を乾燥する乾燥工程とを有している。
【0067】
図1に示すように、まず、浸漬工程として、ロール状に巻き取られた長尺状(帯状)の基材1を樹脂ワニス2に浸漬させ、基材1に樹脂ワニス2を含浸させる。
【0068】
次いで、乾燥工程として、樹脂ワニス2を含浸した基材1を面方向にかつ上方に送り出しながら、乾燥器3内を通過させ乾燥する。具体的には、基材1に付着した樹脂ワニス2から溶媒を除去するとともに、樹脂ワニス2(樹脂組成物)中の熱硬化性樹脂(A)の反応を途中まで進め半硬化状態とする。乾燥条件としては、特に限定されないが、温度180℃で、時間2分間程度であるのが好ましい。
【0069】
このような乾燥工程では、基材1を面方向にかつ鉛直方向上側に移動させるため、従来のような粘度の低い樹脂材料では、移動途中で、基材から樹脂材料が流れ落ち、形成されるプリプレグに十分な厚さを持たせることが困難であった。また、形成されるプリプレグの表面に、樹脂材料が流れ落ちた痕が残り平坦な表面とすることが困難でもあった。これに対して本発明の樹脂材料は、高い粘度を有しているため、基材からの樹脂材料の流れ落ちを抑制でき、十分な量の樹脂材料が保持され、十分な厚さを有するプリプレグを形成することができる。また、表面が平坦なプリプレグを形成することもできる。
【0070】
次いで、帯状の基材1を所望の長さ(形状)に裁断することにより、プリプレグが得られる。
このようにして、プリプレグを製造することができる。
【0071】
3.積層板
本発明の積層板は、上述したプリプレグを少なくとも1枚成形してなるものである。これにより、線膨張率が低く、優れた密着性(金属配線層との密着性)および耐熱性を有し、誘電率および誘電正接が低い積層板が得られる。
【0072】
このような積層板は、例えば、次のようにして形成することができる。すなわち、まず、プリプレグを1枚または複数枚用意する。複数枚用意した場合には、これらを積層する。次いで、プリプレグの両面(複数枚を積層している場合には、その積層体の両面)に金属箔(金属配線層)またはキャリアフィルムを重ねる。次に、これを加熱、加圧し、プリプレグ中の樹脂組成物を硬化(完全硬化)させることにより積層板が得られる。加熱温度は、特に限定されないが、150〜240℃程度であるのが好ましく、180〜220℃程度であるのがより好ましい。また、加圧する際の圧力は、特に限定されないが、2〜5MPa程度であるのが好ましく、2.5〜4MPa程度であるのがより好ましい。
【0073】
4.プリント配線板
プリント配線板は、上述した積層板を用いて製造される。
【0074】
以下、プリント配線板の製造方法の一例について説明するが、プリント配線板の製造方法は、下記の製造方法に限定されない。
【0075】
まず、両面に金属層(銅箔)が重ねられた積層板を用意し、この積層板にドリル等によりスルーホールを形成する。次に、スルーホールにメッキ等を充填し導体ポストを形成する。次に、積層板の両面に形成された金属層をエッチング等により所定パターンにパターニングし導体回路(内層回路)を形成する。次に、導体回路を黒化処理等の粗化処理する。これにより、内層回路基板が得られる。
【0076】
次に、内層回路基板の両面に前述したプリプレグを重ね、これを真空加圧式ラミネーター装置を用いて加熱加圧成形する。その後、熱風乾燥装置等で加熱硬化させることにより内層回路基板の両面上に、プリプレグ中の樹脂組成物が完全硬化してなる絶縁層が形成される。加熱加圧成形する条件としては、特に限定されないが、例えば、温度60〜160℃、圧力0.2〜3MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては、特に限定されないが、例えば、温度140〜240℃、時間30〜120分間で実施することができる。
【0077】
次に、各絶縁層にレーザー照射によってスルーホールを形成し、このスルーホールにメッキ等を充填し導体ポストを形成する。次に、各絶縁層の表面に金属層を形成し、この金属層を所望のパターンにパターニングすることにより、各絶縁層の表面に導体回路(外層回路)を形成する。なお、外層回路には、半導体素子を実装するための接続用電極部等を設ける。
【0078】
次に、最外層にソルダーレジストを形成し、露光・現像により半導体素子が実装できるよう接続用電極部を露出させる。次に、所定の大きさに切断する。これにより、多層プリント配線板が得られる。
【0079】
このようなプリント配線板は、線膨張率が低く、優れた密着性(金属配線層との密着性)および耐熱性を有し、誘電率および誘電正接が低いものとなる。また、プリント配線板はその反りが抑制されたものとなる。
【0080】
5.半導体装置
半導体装置は、上述したプリント配線板に半導体素子を実装、封止したものである。半導体素子の実装方法、封止方法は特に限定されない。例えば、フリップチップボンダーなどを用いて多層プリント配線板上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプの位置合わせを行う。その後、半田バンプを融点以上に加熱し、プリント配線板と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。次に、プリント配線板と半導体素子との間に液状封止樹脂を充填し、硬化させる。これにより、半導体装置が得られる。
【0081】
以上、本発明の樹脂組成物、プリプレグおよびプリプレグの製造方法について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、樹脂組成物およびプリプレグを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物(添加物)が付加されていてもよい。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0083】
1.樹脂ワニス、プリプレグ、積層板、プリント配線板および半導体装置の作製
(実施例1)
[1]樹脂ワニスの調製
2、2’−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成製、商品名「BMI−80」)を25.7質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬製、商品名「NC−3000H」、エポキシ当量285)を11.0質量部、2、2’−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(和歌山精化製、商品名「BAPP」)を12.3質量部、溶融シリカ(アドマテックス製、商品名「SO−E2」、平均粒径0.5μm)を40.0質量部、シリコーンゴム微粒子(信越化学工業製、商品名「KMP―600」、平均粒子径5μm)を10.0質量部に、N−メチルピロリドンを加え、高速撹拌装置を用い撹拌して、樹脂組成物が固形分基準で70質量%のワニスを得た。
【0084】
[2]プリプレグの製造
前記[1]で得られた樹脂ワニスを用いて、ガラス織布(厚さ0.050mm、旭化成エレクトロニクス製)48.0質量部に対して、樹脂ワニスを樹脂組成物の固形分で117.0質量部含浸させて、180℃の乾燥炉で5分間乾燥させ、樹脂組成物含有量71.0質量%のプリプレグを作製した。
【0085】
[3]積層板の製造
前記[2]で得られたプリプレグを4枚重ね、上下に厚さ12μmの電解銅箔(古河サーキットホイル製、商品名「F2WS−12」)を重ねて、圧力4MPa、温度220℃で180分間加熱加圧成形を行い、厚さ0.4mmの両面銅張積層板を得た。
【0086】
[4]プリント配線板の製造
前記[4]で得られた両面銅張積層板に、0.1mmのドリルビットを用いてスルーホール加工を行った後、スルーホールにメッキを充填した。さらに、両面をエッチングにより回路形成し、内層回路基板を形成した。そして、この内層回路基板の表裏に、前記[2]で得られたプリプレグを重ね合わせ、これを真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させた。さらに、これを熱風乾燥装置にて170℃で60分間加熱し硬化させて、積層体を得た。
【0087】
次に、表面の電解銅箔層に黒化処理を施した後、炭酸ガスレーザーで、層間接続用のφ60μmのビアホールを形成した。次いで、70℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、商品名「スウェリングディップ セキュリガント P」)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、商品名「コンセントレート コンパクト CP」)に15分浸漬後、中和してビアホール内のデスミア処理を行った。次に、フラッシュエッチングにより電解銅箔層表面を1μm程度エッチングした後、無電解銅メッキを厚さ0.5μmで行い、電解銅メッキ用レジスト層を厚さ18μm形成しパターン銅メッキし、温度200℃時間60分加熱してポストキュアした。次いで、メッキレジストを剥離し全面をフラッシュエッチングして、L/S=20/20μmのパターンを形成した。最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ社製PSR4000/AUS308)を厚さ20μm形成し多層プリント配線板を得た。
【0088】
[5]半導体装置の製造
まず、前記[4]で得られた多層プリント配線板であって、半導体素子の半田バンプ配列に相当するニッケル金メッキ処理が施された接続用電極部を配したものを50mm×50mmの大きさに切断し使用した。半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.8mm)は、Sn/Pb組成の共晶で形成された半田バンプを有し、半導体素子の回路保護膜はポジ型感光性樹脂(住友ベークライト社製、商品名「CRC−8300」)で形成されたものを使用した。半導体装置の組み立ては、まず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、次にフリップチップボンダー装置を用い、多層プリント配線板上に加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、商品名「CRP−4152S」)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。尚、液状封止樹脂の硬化条件は、温度150℃、120分の条件であった。
【0089】
(実施例2〜16、および比較例1〜8)
表1および表2に記載の配合表に従い樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、積層板、プリント配線板、半導体装置を作製した。
【0090】
また、各実施例および比較例により得られた樹脂ワニスおよび積層板について、次の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0091】
2.評価方法
(1)ワニス粘度
E型粘度計を用いて、温度25℃、せん断速度5.0rpmの条件で測定した。
【0092】
(2)ボイドの発生状況
各実施例1〜16および各比較例1〜8で得られた両面銅張積層板を全面エッチングし、ボイドの発生状況を目視により評価した。ボイドが確認されなかったものを「問題なし」とし、ボイドが確認されたものを「ボイドあり」とした。
【0093】
(3)スジ状ムラの発生状況
各実施例1〜16および各比較例1〜8で得られた両面銅張積層板表面のスジ状のムラの発生状況を目視により評価した。スジ状のムラが確認されなかったものを「問題なし」とし、スジ状のムラが確認されたものを「スジ状ムラ」とした。
【0094】
(4)線膨張係数
各実施例1〜16および各比較例1〜8で得られた厚さ0.4mmの両面銅張積層板を全面エッチングし、得られた積層板から5mm×20mmの試験片を作製し、TMA装置(TAインスツルメント社製)を用いて5℃/分の条件で、面方向(Z方向)の線膨張係数を測定した。
【0095】
(5)半田耐熱性
各実施例1〜16および各比較例1〜8で得られた積層板を50mm×50mmにグラインダーソーでカットした後、エッチングにより銅箔を1/4だけ残した試料を作製し、JIS C 6481に準拠して評価した。評価は、121℃、100%、2時間、PCT吸湿処理を行った後に、288℃の半田槽に30秒間浸漬した後で外観の異常の有無を調べた。
評価基準:異常なし
:膨れあり(全体的に膨れの箇所がある)
【0096】
(6)誘電率および誘電正接
各実施例1〜16および各比較例1〜8で得られた両面銅張積層板を全面エッチングし、97×25mm、53×25mm、38×25mmに切断し、0.018mmの圧延銅箔を貼り付け、トリプレート線路共振器を作成し、マイクロ波ネットワークアナライザHP8510C、HP83651A、HP8517B(アジレントテクノロジー製)を用いて、トリプレート線路共振器法で誘電率及び誘電正接を測定した。
以上、各評価(1)〜(6)の評価結果を表1および表2に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
3.評価結果
表1および表2から明らかなように、実施例1〜16は、本発明の熱硬化性組成物を用いた積層板であり、ボイドやスジ状ムラもなく、熱膨張係数も低い値であり、半田耐熱性も問題なく、誘電特性に優れていた。これに対して、比較例1、2、8は、シリコーンゴム微粒子を用いなかったため、粘度が低く、比較例1、8では、ガラスクロスに対して十分な樹脂組成物を塗布できなかったため、誘電特性が悪化した。ガラスクロスに対して十分な樹脂組成物を塗布したところ比較例2では、スジ状ムラが発生した。
【0100】
シリコーンゴム微粒子を十分に含まない比較例3では、比較例2と同様にスジ状ムラが発生した。シリコーンゴム微粒子を大量に含む比較例4では、誘電特性は問題なかったものの、ボイドが発生した。シリカを用いず、シリコーンゴム微粒子だけを用いた比較例5、6、7は、誘電特性は問題なかったものの、ボイドが発生し、線膨張係数が大きくなり、半田耐熱性が悪化した。
【符号の説明】
【0101】
1‥‥基材
2‥‥樹脂ワニス
3‥‥乾燥器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と、
無機充填剤とを有し、
前記無機充填剤は、シリカで構成される第1の無機充填剤と、シリコーンパウダーで構成される第2の無機充填剤とを有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂の含有量は、前記樹脂組成物全体の40〜60質量%の範囲内である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機充填剤の含有量は、前記樹脂組成物全体の40〜60質量%の範囲内である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記第2の無機充填剤の含有量は、前記無機充填剤全体の20〜60質量%の範囲内である請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記シリコーンパウダーは、ゴム状ポリマーからなるコアと、前記コアを被覆し、ガラス状ポリマーからなるシェルとを有するコア/シェル構造をなしている請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂として、少なくとも、エポキシ樹脂と、少なくとも2つのマレイミド骨格を有するマレイミド化合物と、少なくとも2つのアミノ基を有するとともに芳香族環構造を有する芳香族ジアミン化合物とを有している請求項1ないし5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記マレイミド化合物と前記芳香族ジアミンとの反応を促す、塩基性基およびフェノール性水酸基を有する触媒を有している請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記シリコーンパウダーは、前記エポキシ樹脂に溶解しない請求項6または7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の樹脂組成物を基材に含浸させてなることを特徴とするプリプレグ。
【請求項10】
樹脂組成物と溶媒とを混合してなる樹脂ワニス中に基材を浸漬させ、前記基材に前記樹脂ワニスを含浸させる浸漬工程と、
前記樹脂ワニスが含浸した前記基材を乾燥する乾燥工程とを有し、
前記樹脂ワニスは、熱硬化性樹脂と、無機充填剤とを有し、
前記無機充填剤は、シリカで構成される第1の無機充填剤と、シリコーンパウダーで構成される第2の無機充填剤とを有することを特徴とするプリプレグの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−255058(P2012−255058A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127708(P2011−127708)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】