説明

樹脂組成物、プリプレグおよび積層板

【課題】
樹脂フローが少なく、ハロゲンフリーでかつ密着性に優れた、樹脂組成物、プリプレグおよび積層板を提供することである。
【解決手段】
基材に含浸させてシート状のプリプレグを形成するために用いる樹脂組成物であって、フェノールアラルキルエポキシ樹脂と、ポリアミドイミド樹脂と、硬化剤とを含有すること、さらには、リン酸エステル化合物を含み、さらには、合成ゴムを含み、また前記硬化剤の含有量は、全樹脂組成物の5重量%以上30重量%以下であることを特徴とする樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、プリプレグおよび積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
多層フレキシブル回路基板は、多層部とフレキシブル部から構成されている。フレキシブル部は、多層部まで延在し多層部を構成している。フレキシブル部は、通常少なくとも1つの片面または両面フレキシブル回路基板から構成されており、複数のフレキシブル部が存在する時は、可とう性を損なわないよう各フレキシブル部は接着されていないことが多い。一方、多層部は層間にプリプレグを介して積層接着された構成となっている。
【0003】
プリプレグは、これまでリジット回路基板の絶縁基材として用いられてきており、板厚精度とボイドレスに優位性を求めるため、成形時の樹脂フローが比較的多い。これをそのまま多層フレキシブル回路基板に適用すると、多層部からフレキシブル部にプリプレグの樹脂フローが生じ、成形後フレキシブル特性が損なわれる等の欠点が生じる。よって多層フレキシブル回路基板には樹脂フローの少ないノンフロープリプレグが求められている。
【0004】
ノンフロープリプレグの場合、エポキシ系樹脂が多く用いられているが、樹脂フロー度合いを調節するためにエポキシ樹脂の硬化度合いを調節し、樹脂の溶融粘度を高めている。硬化反応の早い樹脂系では硬化度合いのコントロールが難しく、積層接着時の相手となるポリイミドフィルム等の基材や金属箔との密着性が低下する可能性があった。
【0005】
また、従来の難燃性接着剤としては臭素化エポキシ樹脂を使用するのが一般的であったが(例えば特許文献1、2)、燃焼時にダイオキシンの発生が懸念されるため、環境対応問題から難燃剤としてハロゲンを含まないことが要求されている。
【特許文献1】特開平 7−162113号公報
【特許文献2】特開平10−212637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、樹脂フローが少なく、ハロゲンフリーでかつ密着性に優れた、樹脂組成物、プリプレグおよび積層板を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(13)に記載の本発明により達成される。
(1)基材に含浸させてシート状のプリプレグを形成するために用いる樹脂組成物であって、
フェノールアラルキルエポキシ樹脂と、ポリアミドイミド樹脂と、硬化剤と、リン酸エステル化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物。
(2)さらには、合成ゴムを含有する上記(1)に記載の樹脂組成物。
(3)前記硬化剤の含有量は、全樹脂組成物の10重量%以上25重量%以下である上記(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
(4)前記硬化剤は、下記化合物(I)で表されるトリアジン環を有したノボラック型フェノール樹脂を含むものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
(5)前記トリアジン環を有したノボラック型フェノール樹脂の含有量が、前記硬化剤100重量部に対して5重量部以上30重量部以下である上記(4)に記載の樹脂組成物。
(6)前記フェノールアラルキルエポキシ樹脂のエポキシ当量が150以上350以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(7)前記フェノールアラルキルエポキシ樹脂の含有量は、全樹脂組成物の45重量%以上55重量%以下である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(8)前記ポリアミドイミド樹脂の含有量は、全樹脂組成物の5重量%以上25重量%以下である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(9)前記ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量が8000以上15000以下である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(10)前記リン酸エステル化合物の含有量は、全樹脂組成物の10重量%以上25重量%以下である上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(11)前記合成ゴムの含有量は、樹脂組成物100重量部に対して0.5重量部以上10重量部以下である上記(2)ないし(10)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(12)上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の樹脂組成物を基材に含浸させてなることを特徴とするプリプレグ。
(13)上記(12)に記載のプリプレグを一枚以上積層してなることを特徴とする積層板。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、樹脂フローが少なく、ハロゲンフリーでかつ密着性に優れた、樹脂組成物、プリプレグおよび積層板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の樹脂組成物、プリプレグ、および積層板について詳細に説明する。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、基材に含浸させてシート状のプリプレグを形成するために用いる樹脂組成物であって、フェノールアラルキルエポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、硬化剤、リン酸エステル化合物を含むことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のプリプレグは、上述の樹脂組成物を基材に含浸させてなることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の積層板は、上述のプリプレグを一枚以上積層してなることを特徴とするものである。
【0015】
以下、本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。
【0016】
本発明の樹脂組成物では、フェノールアラルキルエポキシ樹脂を使用する。前記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、150当量以上350当量以下のフェノールアラルキルエポキシ樹脂を用いることが好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂に比べ、骨格が剛直であり、より硬度を得たい場合に使用すると良い。フェノールアラルキルエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、25℃において固体であり、ノボラック型フェノール樹脂を用いて硬化すればより高い耐熱効果並びに、強刃性を得ることが出来る。エポキシ当量が前記下限値未満では相溶性が低下する場合がある。また、前記上限値を超えると耐熱性が低下する場合がある。
【0017】
前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、全樹脂組成物の35重量%以上65重量%以下が好ましく、40重量%以上55重量%以下がさらに好ましい。前記下限値未満では接着対象との濡れ性が低下することがある。また、前記上限値を超えると樹脂フロー制御が困難となり、ポリアミドイミド樹脂との相溶性が低下する場合がある。
【0018】
本発明の樹脂組成物では、ポリアミドイミド樹脂を使用する。前記ポリアミドイミド樹脂は重量平均分子量が、特に限定されないが、8000以上15000以下を用いることが好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満では染み出し量が大きくなり、前記上限値を超えると当該エポキシ樹脂と相溶性及び基材への含浸性が低下する場合がある。
【0019】
また、ポリアミドイミド樹脂の含有量は、特に限定されないが、全樹脂組成物の5重量%以上30重量%以下が好ましく、8重量%以上20重量%以下がさらに好ましい。前記下限値未満では染み出しが多くなる場合がある。また、前記上限値を超えるとエポキシ樹脂との相溶性が低下する場合がある。
【0020】
本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂はその分子骨格上、耐熱性と難燃性の効果も得られる。
【0021】
本発明の樹脂組成物では、硬化剤を用いる。
【0022】
硬化剤の含有量は、特に限定されないが、全樹脂組成物の5重量%以上30重量%以下が好ましく、15重量%以上25重量%以下がさらに好ましい。前記下限値未満では得られた硬化物の耐薬品性や耐溶剤性が低下する場合がある。前記上限値を超えると反応に寄与していない硬化剤が残るため樹脂フローが多くなる場合がある。
【0023】
前記硬化剤のうち一部が、下記化学式で表されるノボラック型フェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
【化2】

【0025】
前記ノボラック型フェノール樹脂は、トリアジン環を有するノボラックフェノール型樹脂を用いる。トリアジン環は窒素を含んでおり難燃効果に寄与する。また第一級アミンを有しており、これがエポキシ樹脂の硬化反応に寄与する。
【0026】
これにより多段的な硬化反応が期待され、硬化度合いのコントロールを容易にし、密着性を損なうことなく樹脂フローを抑制することを可能とすることができる。
【0027】
前記ノボラック型フェノール樹脂の含有量は、前記硬化剤全体量の、特に限定されないが、5重量%以上30重量%以下含む事が好ましく、10重量%以上22重量%以下がさらに好ましい。前記下限値未満ではトリアジン環の難燃効果が得られ難くい場合があり、前記上限値を超えると反応に寄与していない硬化剤が残るため、樹脂フローが多くなる場合がある。
【0028】
他の硬化剤としては、特に限定はされないが、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、アミン類等が挙げられる。これらの中でもアミン類が望ましい。
【0029】
本発明の樹脂組成物では、リン酸エステル化合物を用いる。これによりプリプレグ単体での難燃性を確実にすることができる。前述にもあるとおり、元来より難燃性接着剤としては臭素化エポキシ樹脂を使用するのが一般的であった。しかし、燃焼時にダイオキシンの発生が懸念され、ハロゲンフリー材料が求められている。ハロゲンフリーを達成する難燃剤としては、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの無機フィラーやリン単体、リン含有化合物などがある。無機フィラーは燃焼遅延効果を持つ。その点リン単体、リン含有化合物は消火作用が持つ。前記リン酸エステル化合物の含有量は、特に限定されないが、全樹脂組成物の10重量%以上25重量%以下が好ましく、12重量%以上20重量%以下がさらに好ましい。前記下限値未満では難燃効果が得られない場合があり、また、前記上限値を超えるとエポキシ樹脂との相溶性が低下したり密着性が低下したりする場合がある。
【0030】
本発明で用いられるリン酸エステル化合物はその分子骨格上、高い難燃効果が得られ、含有した樹脂組成物は良好な電気特性を保持する。
【0031】
本発明の樹脂組成物では、合成ゴムを含むことが好ましい。これにより、樹脂フロー制御、密着性向上、プリプレグ切断加工時の粉落ちを防止することが出来る。
【0032】
合成ゴムとしては、特に限定されるものではないが、NBR、アクリルゴム、ポリブタジエン、イソプレン、カルボン酸変性NBR、水素転化型ポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエンなどが挙げられる。これらの中で、固形タイプのものが液状タイプに比べて、仮接着時の作業性が向上してより好ましい。
【0033】
また、エポキシ樹脂やポリアミドイミドとの相溶性を上げる為にカルボン酸変性、水酸基変性やエポキシ変性したものや熱劣化を防止するために水素転化型の合成ゴムなどを用いてもよい。
【0034】
前記合成ゴムの含有量は、特に限定されないが、0.5重量%以上10重量%以下が好ましく、1重量%以上5重量%以下がさらに好ましい。前記下限値未満では粉落ちが発生したり、樹脂フローが多くなったりする場合がある。前記上限値を超えると耐熱性が低下したり、線膨張係数が大きくなったりするため、多層フレキシブル回路基板にて使用される層間接続のスルーホールにおいて断線を引き起こす原因となる場合がある。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、上記成分以外の添加剤を、特性を損なわない範囲で添加することができる。添加剤としては、例えば無機充填材、カップリング材、消泡材、レベリング材等を挙げることができる。
【0036】
次に、プリプレグについて説明する。
【0037】
本発明のプリプレグは、上述の樹脂組成物を基材に含浸させてなるものである。これにより、ハロゲンフリーで且つ密着性に優れ、樹脂フローの少ないプリプレグを得ることができる。
【0038】
本発明で用いる基材としては、例えばガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、あるいはガラス以外の無機化合物を成分とする繊布又は不繊布等の無機繊維基材、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維基材等が挙げられる。これら基材の中でも強度、吸水率の点でガラス織布に代表されるガラス繊維基材が好ましい。
【0039】
本発明で得られる樹脂組成物を基材に含浸させる方法には、例えば基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターによる塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対する樹脂組成物の含浸性を向上することができる。なお、基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。
【0040】
前記樹脂ワニスに用いられる溶剤は、前記樹脂組成物に対し良好な溶解性を持つもの、前記樹脂組成物を基材に含浸させた後、乾燥するにあたり、接着剤中に残らないものを選択することが好ましい。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、キシレン、メシチレン、n−ヘキサン、メタノール、エタノール、エチルセルソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどを一種または二種以上の混合系を使用することが可能である。
【0041】
前記樹脂ワニスの固形分は、特に限定されないが、前記樹脂組成物の固形分10重量%以上60重量%以下が好ましく、特に15重量%以上45重量%以下が好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を更に向上できる。前記基材に前記樹脂組成物を含浸させ、所定温度、例えば80℃以上200℃以下で乾燥させることによりプリプレグを得ることが出来る。
【0042】
次に、積層板について説明する。
【0043】
本発明の積層板は、上述のプリプレグを少なくとも1枚成形してなるものである。プリプレグ1枚のときは、その上下両面もしくは片面に金属箔あるいはフィルムを重ねる。また、プリプレグを2枚以上積層することもできる。プリプレグ2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔あるいはフィルムを重ねる。次に、プリプレグと金属箔等とを重ねたものを加熱、加圧することで積層板を得ることができる。前記加熱する温度は、特に限定されないが、120℃以上220℃以下が好ましく、特に150℃以上200℃以下が好ましい。また、前記加圧する圧力は、特に限定されないが、0.5MPa以上4MPa以下が好ましく、特に1.0MPa以上3.5MPa以下が好ましい。これにより、厚み精度が高く、且つ成形性に優れた積層板を得ることができる。本発明における樹脂組成物にはより高分子な樹脂を使用しており、溶融粘度が高い。そのため、プレスやロールによる樹脂のフローアウトを低減し、板厚精度を高めることが可能である。
【0044】
前記金属箔を構成する金属としては、例えば銅および銅系合金、アルミおよびアルミ系合金、鉄および鉄系合金等が挙げられる。 また、フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。
【0045】
上記のようにして得られたプリプレグをフレキシブル回路基板の層間接着剤として用いる事で多層フレキシブル回路基板を得る事ができる。
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
樹脂組成分としてフェノールアラルキルエポキシ樹脂(エポキシ当量274、日本化薬(株)NC3000H)50重量%、ポリアミドイミド樹脂(分子量10000、Tg=280℃、東洋紡績(株))11重量%、硬化剤として、ジアミノジフェニルスルホン(三井化学ファイン(株)、3,`3−DAS)18重量%、ノボラック型トリアジンフェノール樹脂(OH当量125、大日本インキ化学工業(株)フェノライトLA−7054)4重量%、添加物としてリン酸エステルアミド(P含有率10%、四国化成(株)開発品)15重量%を配合し、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン(株)Nippol1072J)を2重量%配合し、ブチルセロソルブ及びN−メチルピロリドンとの混合溶剤に不揮発分が30〜40%となるように攪拌した。この樹脂ワニスを厚さ88μmのガラスクロスに含浸、190℃5分で乾燥し、プリプレグを得た。
この得られたプリント回路基板用プリプレグを片面銅張り積層板のポリイミド面に真空プレスにて190℃、1.5MPa、2時間熱圧着成形を行い、評価用基板を得た。
(実施例2)
フェノールアラルキルエポキシ樹脂の配合量を45重量%とした以外は、表1に示す配合量とし、実施例1と同様にして評価基板を得、同様に評価した。
(実施例3)
フェノールアラルキルエポキシ樹脂の配合量を55重量%とした以外は、表1に示す配合量とし、実施例1と同様にして評価基板を得、同様に評価した。
(実施例4)
硬化剤にトリアジン環を有するノボラック型フェノールの配合量を全硬化剤100重量部に対して10重量部を使用した以外は、表1に示す配合量とし、実施例1と同様にして評価基板を得、同様に評価した。
(実施例5)
硬化剤にトリアジン環を有するノボラック型フェノールの配合量を全硬化剤100重量部に対して25重量部を使用した以外は、表1に示す配合量とし、実施例1と同様にして評価基板を得、同様に評価した。
(実施例6)
ポリアミドイミド樹脂の配合量を5重量%とした以外は、表1に示す配合量とし、実施例1と同様にして評価基板を得、同様に評価した。
(実施例7)
ポリアミドイミド樹脂の配合量を25重量%とした以外は、表1に示す配合量とし、実施例1と同様にして評価基板を得、同様に評価した。
(実施例8)
リン酸エステルアミドの配合量を10重量%とした以外は、表1に示す配合量とし、実施例1と同様にして評価基板を得、同様に評価した。
(実施例9)
リン酸エステルアミドの配合量を25重量%とした以外は、表1に示す配合量とし、実施例1と同様にして評価基板を得、同様に評価した。
(実施例10)
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムの配合量を0.5重量%とした以外は、表1に示す配合量とし、実施例9と同様にして評価基板を得、同様に評価した。
(実施例11)
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムの配合量を10重量%とした以外は、表1に示す配合量とし、実施例9と同様にして評価基板を得、同様に評価した。
(比較例1)
エポキシ当量が274であるフェノールアラルキルエポキシ樹脂を用いず、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、大日本インキ化学工業(株)N−655−EXP−S)を用いた以外は実施例1と同様にして評価基板を得、同様に評価した。
(比較例2)
ポリアミドイミド樹脂を用いずフェノキシ樹脂(エポキシ当量7800、ジャパンエポキシレジン(株)JER−1256B40)を用いた以外は実施例1と同様にして評価基板を得、同様に評価した。
(比較例3)
ポリアミドイミド樹脂を使用しない以外は実施例1と同様にして評価基板を得、同様に評価した。
【0047】

このようにして得られた評価基板を樹脂フロー量、切断時の粉落ち、吸湿半田耐熱、密着性、電気絶縁性、難燃性を測定及び評価し、その結果を表2〜4に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
*樹脂フロー
熱圧着成形後、ガラスクロス端部より染み出ている樹脂部位を金属顕微鏡にて測長した。(n=20)
*ガラスクロスへの含浸性
樹脂組成物の相溶性、樹脂組成物のガラスクロスへの含浸性、及び乾燥後の発泡等の異常が無いか、外観にて確認した。
*切断時の粉落ち
プリプレグ成形前及び成形後のリングカッターまたはビク抜きによる切断時に粉落ちが発生するか否かを目視にて判断した。
*吸湿はんだ耐熱性
JIS規格C5016−10.3に順ずる。フクレ、剥がれが無いか確認した。
*密着力
JIS規格C5016−8.1に順ずる。
*電気絶縁性

JIS規格K6911に順ずる。硬化品を測定。
*難燃性
UL規格UL94Vに順ずる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
近年、電子機器の小型化、軽量化、高密度化に伴い、プリント回路基板の高密度・高ファインの回路パターンが必要とされてきている。これを解決するため、フレキシブルプリント回路基板を積層した多層フレキシブルプリント回路基板が製造されてきている。多層フレキシブルプリント回路基板は表面導体層を含めて3層以上に導体パターンがあるプリント回路基板であり、表面導体回路を外層回路、絶縁層内にある導体層を内層回路と称している。多層フレキシブルプリント回路基板はプリント回路基板を回路加工した内層回路板とガラス布や不織布等の基材に樹脂を含浸し、半硬化状態としたプリプレグ、外層回路となる金属はくまたはプリント回路基板から成り、これを金属板間に挟み加熱加圧して、プリプレグを硬化成形することにより得る事ができる。プリプレグを介して異なった層位の導体間の電気的な接続はスルーホールめっきで行われる。本発明は、加熱加圧して積層成形する際に、樹脂フローが少なく、成形性及び耐熱性に優れた多層フレキシブルプリント回路基板用プリプレグに使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に含浸させてシート状のプリプレグを形成するために用いる樹脂組成物であって、
フェノールアラルキルエポキシ樹脂と、ポリアミドイミド樹脂と、硬化剤と、リン酸エステル化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
さらには、合成ゴムを含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化剤の含有量は、全樹脂組成物の10重量%以上25重量%以下である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化剤は、下記化合物(I)で表されるトリアジン環を有したノボラック型フェノール樹脂を含むものである請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化1】

【請求項5】
前記トリアジン環を有したノボラック型フェノール樹脂の含有量が、前記硬化剤100重量部に対して5重量部以上30重量部以下である請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記フェノールアラルキルエポキシ樹脂のエポキシ当量が150以上350以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記フェノールアラルキルエポキシ樹脂の含有量は、全樹脂組成物の45重量%以上55重量%以下である請求項1ないし6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリアミドイミド樹脂の含有量は、全樹脂組成物の5重量%以上25重量%以下である請求項1ないし7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量が8000以上15000以下である請求項1ないし8のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記リン酸エステル化合物の含有量は、全樹脂組成物の10重量%以上25重量%以下である請求項1ないし9のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記合成ゴムの含有量は、樹脂組成物100重量部に対して0.5重量部以上10重量部以下である請求項2ないし10のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の樹脂組成物を基材に含浸させてなることを特徴とするプリプレグ。
【請求項13】
請求項12に記載のプリプレグを一枚以上積層してなることを特徴とする積層板。

【公開番号】特開2006−169481(P2006−169481A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367917(P2004−367917)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】