説明

樹脂組成物、レジスト組成物及びレジストパターン形成方法

【課題】光感度及び薄膜での耐エッチング性、特に王水や塩酸と塩化第二鉄の混合液等の強酸のエッチング液を用いたエッチング条件における耐エッチング性に優れたレジスト組成物を提供する。
【解決手段】1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と1分子中に1個以上の水酸基及び1個のカルボキシル基を有する化合物(b)との反応物(I)に、飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)とエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物(d)を反応させてなる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)を含有することを特徴とする樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたレジスト組成物及びレジストパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にエッチングレジスト組成物への用途に有用な樹脂組成物、レジスト組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レジスト組成物は、プリント配線板、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、集積回路(IC)、有機ELディスプレイ、薄型トランジスタ、半導体パッケージ、カラーフィルター、フォトスペーサー、リブレジスト等における導体回路や電極加工基板等を形成する際のフォトリソグラフィー工程に使用されている。
【0003】
フォトリソグラフィー工程は、通常、導電層が形成された基板上にレジスト組成物を塗布し乾燥させてレジスト層を形成する工程、前記基板上のレジスト層を回路や電極パターンが描かれたマスクフィルムを通して画像露光する若しくはレーザー光を用いて画像露光する工程、露光部と非露光部の現像液に対する溶解性の差を利用して現像処理することによって回路や電極パターンに対応したレジストパターンを形成する工程、及び前記レジストパターンを保護膜として前記基板をエッチング加工、メッキ加工、或いはソルダー加工等した後、レジストパターンを除去することによりマスクフィルムやレーザーパターンに描かれた回路や電極パターンを基板上に形成する工程により行われる。
【0004】
前記フォトリソグラフィー工程に用いられるレジスト組成物として、例えば、特許文献1には1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と1分子中に1個のアミノ基と少なくとも1個の水酸基を有する化合物との付加反応物に飽和又は不飽和の多塩基酸無水物及び不飽和基を有するモノイソシアネートを反応させて得られるプレポリマー、並びに増感剤等を含有してなる感光性樹脂組成物に関する発明が開示されている。
【0005】
また例えば、特許文献2には、特定の組み合わせのエチレン性不飽和単量体からなる官能基を有する共重合体にその含有する官能基を介して光重合可能なエチレン性不飽和基を有する反応性化合物を反応させてなる光重合性共重合体、光重合可能なエチレン性不飽和単量体、及び光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物に関する発明が開示されている。
【0006】
その他、前記フォトリソグラフィー工程に用いられるレジスト組成物として、例えば特許文献3に開示されている特定のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物と多塩基性カルボン酸又はその無水物との反応物である不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂と、光重合開始剤及びエチレン性不飽和単量体を含有する感光性樹脂組成物などが挙げられる。
【0007】
【特許文献1】特開平4−225355号公報
【特許文献2】特開平7−128856号公報
【特許文献3】特開平5−32746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
LCD、PDP、有機ELディスプレイ等の表示装置の電極パターンには、酸化インジウムドープ酸化錫(ITO)等の透明導電層が使用されている。そして近年、電極パターンに使用されるITO等の透明導電層は、低抵抗もしくは高透過率が要求されている。その要求に応じるべく透明導電層の低抵抗もしくは高透過率への改良が進められているが、その改良に伴ってフォトリソグラフィー工程での透明導電層のエッチング加工において、エッチング時間が長くなる若しくはエッチング性の高いエッチング液を使用する等、エッチング条件が過酷な条件となる傾向にある。そこで、そのような過酷なエッチング条件、特に王水(塩酸と硝酸の混合液)や塩酸と塩化第二鉄の混合液等の強酸のエッチング液を用いたエッチング条件に対して耐性を有するレジスト組成物が要求されている。また併せて、レジスト組成物には、高光感度、薄膜のレジスト層での各種性能を有することが要求されている。しかしながら、前記したレジスト組成物はそれら要求を必ずしも満足するものではない。
【0009】
本発明は上記の事情を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光感度に優れ、かつ薄膜のレジスト層においても過酷なエッチング条件、特に王水(塩酸と硝酸の混合液)や塩酸と塩化第二鉄の混合液等の強酸のエッチング液を用いたエッチング条件に対して耐エッチング性を有するレジスト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、レジスト組成物に、エポキシ化合物と水酸基及びカルボキシル基を有する化合物との反応物に、多塩基酸無水物とエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物を反応させてなる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を用いることにより本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と1分子中に1個以上の水酸基及び1個のカルボキシル基を有する化合物(b)との反応物(I)に、飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)とエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物(d)を反応させてなる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)を含有することを特徴とする樹脂組成物に関する。
【0012】
また本発明は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と1分子中に1個以上の水酸基及び1個のカルボキシル基を有する化合物(b)との反応物(I)に、飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)とエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物(d)を反応させてなる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)、並びに光重合開始剤(B)を含有することを特徴とするレジスト組成物に関する。
【0013】
また本発明は、(1)基板上に前記のレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する工程、(2)前記基板上に形成されたレジスト膜に所望のレジストパターンが得られるように活性エネルギー線を直接もしくはネガマスクを通して照射する工程、(3)前記レジスト膜を現像処理して前記基板上にレジストパターンを形成する工程、を含むレジストパターン形成方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エポキシ化合物と水酸基及びカルボキシル基を有する化合物との反応物に、多塩基酸無水物とエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物を反応させてなる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を用いることにより、光感度及び薄膜での耐エッチング性、特に王水(塩酸と硝酸の混合液)や塩酸と塩化第二鉄の混合液等の強酸のエッチング液を用いたエッチング条件における耐エッチング性に優れたレジスト組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の樹脂組成物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と1分子中に1個以上の水酸基及び1個のカルボキシル基を有する化合物(b)との反応物(I)に、飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)とエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物(d)を反応させてなる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)を含有することを特徴とする。
【0016】
前記反応物(I)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と1分子中に1個以上の水酸基及び1個のカルボキシル基を有する化合物(b)を反応させてなる。
【0017】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロムビスフェノールA等のビスフェノール類とエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させてなるエポキシ樹脂や、ビスフェノールA或いはビスフェノールFのジグリシジルエーテルと前記ビスフェノール類の縮合物とエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させてなるエポキシ樹脂等である。市販品としては、ジャパンエポキシレジン社製のjER−1001、jER−1002、jER−1007、jER−4004P、jER−4005P等が挙げられる。)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール、アルキルフェノール等のフェノール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒下で反応させてなるノボラック類とエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させてなるエポキシ樹脂等である。市販品としては、日本化薬社製のEOCN−103、EOCN−104S、EOCN−102、EOCN−1027、EPPN−201、NC−3000H;大日本インキ化学工業社製のN−730、N−770、N−865、N−665、N−673、VH−4150等が挙げられる。)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(例えば、トリスフェノールメタン、トリスクレゾールメタン等とエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させてなるエポキシ樹脂等である。市販品としては、日本化薬社製のEPPN−501、EPPN−502等が挙げられる。)、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、ビフェニルジグリシジルエーテル等が挙げられる。その他、セロキサイド2021(商品名、ダイセル化学工業社製)、jER−1031S(商品名、ジャパンエポキシレジン社製)、EPB−13(商品名、日本曹達社製)、EPB−27(商品名、日本曹達社製)等のエポキシ樹脂も挙げることができる。
【0018】
前記エポキシ化合物(a)は、耐エッチング性の点から、芳香族環を有するものが好ましい。さらに耐エッチング性、光感度の点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、特にビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
前記エポキシ化合物(a)のエポキシ当量は、好ましくは150〜2,500g/eqであり、より好ましくは450〜1,200g/eqである。これら範囲の下限値は、耐エッチング性の点で意義がある。これら範囲の上限値は、現像性の点で意義がある。
【0020】
前記1分子中に1個以上の水酸基及び1個のカルボキシル基を有する化合物(b)としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、ジメチロールカプロン酸等のポリヒドロキシ含有モノカルボン酸類、ヒドロキシピバリン酸、p−ヒドロキシ安息香酸等のモノヒドロキシ含有モノカルボン酸類等が挙げられる。特に光感度の点から、ポリヒドロキシ含有モノカルボン酸類が好ましく、ジメチロールプロピオン酸がより好ましい。
【0021】
前記エポキシ化合物(a)と前記化合物(b)を反応させて前記反応物(I)を得る際の、前記エポキシ化合物(a)のエポキシ基と前記化合物(b)のカルボキシル基の当量比は、特に限定されるものではない。前記反応物(I)は、前記エポキシ化合物(a)のエポキシ基と前記化合物(b)のカルボキシル基の当量比を、1.0:0.7〜1.0:1.3で反応させてなることが好ましく、1.0:0.9〜1.0:1.1で反応させてなることがより好ましい。これら範囲は現像性及び耐エッチング性の点で意義がある。
【0022】
前記エポキシ化合物(a)と前記化合物(b)の反応は有機溶剤中で行うことができる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルへキシルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類;芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
前記エポキシ化合物(a)と前記化合物(b)の反応において、反応を促進させるために触媒を使用することができる。触媒としては、例えば、トリフェニルフォスフィン、ベンジルジメチルアミン、テトラブチルアンモニウムブロマイド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、トリフェニルスチビン、オクタン酸クロム等が挙げられる。前記反応において触媒を使用した場合には、必要により、反応終了後に有機過酸化物等を反応系内に添加して触媒を酸化処理して触媒活性を実質的に不活性化してもよい。触媒の使用量は特に限定されるものではないが、通常は、前記エポキシ化合物(a)及び前記化合物(b)の合計量100質量部に対して0.1〜10質量部である。
【0024】
前記エポキシ化合物(a)と前記化合物(b)の反応における反応条件は、特に限定されるものではない。例えば、反応温度は120〜180℃が挙げられ、また反応時間は1〜12時間が挙げられる。
【0025】
以上のようにして前記反応物(I)を得ることができる。
【0026】
不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)は、前記反応物(I)に、飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)とエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物(d)を反応させてなる。
【0027】
飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)としては、例えば、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水メチル2置換ブテニルテトラヒドロフタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水アルケニル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸のリノレイン酸付加物、無水クロレンド酸、メチルシクロペンタジエンの無水マレイン酸付加物、無水トリメリット酸等が挙げられる。特に光感度及び耐エッチング性の点から、無水テトラヒドロフタル酸が好ましい。
【0028】
前記反応物(I)に、飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)と前記化合物(d)を反応させて前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)を得る際において、前記反応物(I)の水酸基と飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)の酸無水物基の当量比は、特に限定されるものではない。前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)は、前記反応物(I)の水酸基と前記飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)の酸無水物基を当量比1.0:0.2〜1.0:0.9で反応させてなることが好ましく、1.0:0.3〜1.0:0.7で反応させてなることがより好ましい。これら範囲の下限値は、現像性の点で意義がある。これら範囲の上限値は、耐エッチング性の点で意義がある。
【0029】
前記反応物(I)と前記飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)の反応における反応条件は、特に限定されるものではない。例えば、反応温度は80〜120℃が挙げられ、また反応時間は3〜12時間が挙げられる。
【0030】
前記エチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物(d)としては、例えば、イソシアネートメチル(メタ)アクリレート、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、イソシアネートオクチル(メタ)アクリレート等のイソシアネートアルキル(メタ)アクリレート:p−メタクリロキシ−α,α′−ジメチルベンジルイソシアネート、m−アクリロキシ−α,α′−ジメチルベンジルイソシアネート、m−またはp−イソプロペニル−α,α′−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、例えば、ジイソシアネート化合物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの水酸基が当量比1.0:0.5〜1.0:0.6で反応させてなる化合物が挙げられる。ここでジイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。またヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が2〜7であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0031】
前記化合物(d)としては、1分子中に1個のエチレン性不飽和基及び1個のイソシアネート基を有する化合物が好ましい。光感度の点から、イソシアネートアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、イソシアネートエチルアクリレートが特に好ましい。
【0032】
前記反応物(I)に、飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)と前記化合物(d)を反応させて前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)を得る際において、前記反応物(I)の水酸基と前記化合物(d)のイソシアネート基の当量比は、特に限定されるものではない。前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)は、前記反応物(I)の水酸基と前記化合物(d)のイソシアネート基を当量比1.0:0.1〜1.0:0.8で反応させてなることが好ましく、1.0:0.3〜1.0:0.7で反応させてなることがより好ましい。これら範囲の下限値は、光感度の点で意義がある。これら範囲の上限値は、現像性の点で意義がある。
【0033】
前記反応物(I)と前記化合物(d)の反応における反応条件は、特に限定されるものではない。例えば、反応温度は80〜120℃が挙げられ、また反応時間は5〜16時間が挙げられる。
【0034】
前記反応物(I)に、飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)と前記化合物(d)を反応させて前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)を得る際のその反応の方法として、以下の(i)〜(iii)のいずれの方法が採ることができる。(i)前記反応物(I)に前記飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)と前記化合物(d)を同時に反応させる方法。(ii)前記反応物(I)に前記飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)を反応させた後に、前記化合物(d)を反応させる方法。(iii)前記反応物(I)に前記化合物(d)を反応させた後に、前記飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)を反応させる方法。これらの方法のうち、(ii)による方法が、安定して製造できる点から好ましい。
【0035】
前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の重量平均分子量は特に限定されるものではない。前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜10,000であり、より好ましくは3,000〜7,000である。これら範囲の下限値は、耐エッチング性の点で意義がある。これら範囲の上限値は、現像性の点で意義がある。
【0036】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0037】
前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の酸価は特に限定されるものではない。前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の酸価は、好ましくは50〜120mgKOH/gであり、より好ましくは60〜90mgKOH/gである。これら範囲の下限値は、現像性の点で意義がある。これら範囲の上限値は、耐エッチング性の点で意義がある。
【0038】
前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の不飽和基濃度は、特に限定されるものではない。前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の不飽和基濃度は、好ましくは0.1〜4.0mmol/gであり、より好ましくは1.0〜3.0mmol/gである。これら範囲の下限値は、光感度の点で意義がある。これら範囲の上限値は、耐エッチング性の点で意義がある。
【0039】
前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の水酸基価は、特に限定されるものではない。前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の水酸基価は、好ましくは10mgKOH/g未満であり、より好ましくは3mgKOH/g未満である。これら範囲は耐エッチング性の点で意義がある。
【0040】
本発明のレジスト組成物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と1分子中に1個以上の水酸基及び1個のカルボキシル基を有する化合物(b)との反応物(I)に、飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)とエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物(d)を反応させてなる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)、並びに光重合開始剤(B)を含有する。
【0041】
前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)については、上記本発明の樹脂組成物の説明において詳述したものと同様のものを用いることができる。
【0042】
前記光重合開始剤(B)は、活性エネルギー線を吸収してラジカルを発生する開始剤であれば特に限定されることなく使用できる。
【0043】
前記光重合開始剤(B)としては、例えばベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン類;ベンゾイン等のアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ミヒラーケトン類;アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α,α′−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2′−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、α−イソヒドロキシイソブチルフェノン、α,α′−ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシルアセトフェノン等のアセトフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(アシル)フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−(4−フェニルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−ベンゾアート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−アセタート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1−オンオキシム−O−アセタート等のO−アシルオキシム類;アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化合物;ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として使用できる。
【0044】
前記光重合開始剤(B)の市販品としては、例えば、イルガキュア(IRGACURE)−184、同261、同500、同651、同907、同OXE01、同CGI−1700(商品名、チバ スペシャルティ ケミカルズ社製)、ダロキュア(Darocur)−1173、同1116、同2959、同1664、同4043(商品名、メルクジャパン社製)、カヤキュア(KAYACURE)−DETX−S、同MBP、同DMBI、同EPA、同OA(商品名、日本化薬社製)、ビキュア(VICURE)−10、同55〔商品名、ストウファー社(STAUFFER Co., LTD.)製〕、トリゴナル(TRIGONAL)P1〔商品名、アクゾ社(AKZO Co., LTD.)製〕、サンドレイ(SANDORAY)1000〔商品名、サンドズ社(SANDOZ Co., LTD.)製〕、ディープ(DEAP)〔商品名、アプジョン社(APJOHN Co., LTD.)製〕、カンタキュア(QUANTACURE)−PDO、同ITX、同EPD〔商品名、ウォードブレキンソプ社(WARD BLEKINSOP Co., LTD.)製〕等を挙げることができる。
【0045】
前記光重合開始剤(B)としては、光感度の点からチオキサントン類及びO−アシルオキシム類を含有する混合物であることが好ましい。
【0046】
前記光重合開始剤(B)の含有量は、特に限定されるものではないが、レジスト組成物の固形分100質量部に対して、0.5〜40質量部が好ましく、さらに好ましくは10〜25質量部の範囲である。これら範囲の下限値は、光感度の点で意義がある。これら範囲の上限値は、現像性及びレジスト膜のパターン形成性の点で意義がある。
【0047】
本発明のレジスト組成物は、エチレン性不飽和基含有化合物(C)を含有することができる。エチレン性不飽和基含有化合物(C)としては、前記(A)以外の化合物であって、その化学構造中にエチレン性不飽和二重結合を1個以上有する化合物であれば特に限定されない。
【0048】
前記エチレン性不飽和基含有化合物(C)としては、例えば、一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート化合物;その他、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0049】
前記エチレン性不飽和基含有化合物(C)の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)100質量部に対して、40質量部以下である。さらに好ましくは0.5〜35質量部であり、特に好ましくは3〜20質量部である。これら範囲の下限値は、光感度の点で意義がある。これら範囲の上限値は、耐エッチング性の点で意義がある。
【0050】
本発明のレジスト組成物は、各種の添加剤、例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、クレー等の充填剤、アエロジル等のチキソトロピー付与剤、シリコーン、フッ素系のレベリング剤や消泡剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤等をレジスト組成物の諸性能を高める目的で必要に応じて添加することができる。
【0051】
本発明のレジスト組成物は、有機溶剤によって液状組成物としてもよい。この有機溶剤としては、上記各成分を溶解できる有機溶剤であれば特に限定されることなく使用できる。具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルへキシルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類;エチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類;芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
本発明のレジスト組成物は、エッチングに対する保護膜として用いた後にアルカリ水溶液等により基板から剥離することで除去可能な、エッチングレジスト組成物として極めて有用である。
【0053】
続いて、本発明のレジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法について説明する。
【0054】
本発明のレジストパターン形成方法は、(1)基板上に上記レジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する工程、(2)前記基板上に形成されたレジスト膜に所望のレジストパターンが得られるように活性エネルギー線を直接もしくはネガマスクを通して照射する工程、(3)前記レジスト膜を現像処理して前記基板上にレジストパターンを形成する工程を含むものである。
【0055】
上記で使用する基板は、絶縁基材と導電層からなり、絶縁基材表面に導電層が形成されたものである。絶縁基材としては特に限定されるものではなく、例えば、樹脂、紙、無機物、複合材料等が挙げられる。樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、弗素樹脂等が挙げられる。無機物としては、例えば、ガラス、アルミナ、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。複合材料としては、例えば、ガラス布基材エポキシ樹脂、ガラス不織布基材エポキシ樹脂、紙基材エポキシ樹脂、紙基材フェノール樹脂等が挙げられる。導電層としては、特に限定されるものではなく、例えば、銅、金、銀、クロム、亜鉛、錫、アルミニウム、鉛、ニッケル、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウムドープ酸化錫(ITO)等からなる導電層が挙げられる。前記絶縁基材表面へ導電層を形成する方法としては、例えば、前記金属等の箔を加熱、圧着ラミネートするか、前記金属等をスパッタリング、蒸着、メッキする等の方法があげられる。
【0056】
本発明のレジスト組成物を基板上へ塗布する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スピンコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、ワイヤーバーコート法、ディッピング法、エアーナイフコート法、ローラコート法、カーテンコート法等を用いることができる。
【0057】
塗布により形成されるレジスト膜の膜厚は、その目的用途に応じて設定され限定されるものではない。好ましくは0.5〜10μm、さらに好ましくは1〜7μm、特に好ましくは1.5〜3.0μmである。
【0058】
基板上に形成されたレジスト膜へ活性エネルギー線を照射する方法としては、例えば、レーザー光を走査させ直接に活性エネルギー線を照射する直接描画方法、ネガマスクを通して活性エネルギー線を照射する方法などにより行うことができる。
【0059】
照射する活性エネルギー線としては、例えば紫外線、可視光線、レーザー光(近赤外線、可視光レーザー、紫外線レーザー等)が挙げられる。
【0060】
活性エネルギー線の照射源としては、従来から使用されているもの、例えば超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等の各光源や、紫外から可視領域に発振線を持つ各種レーザー等が使用できる。
【0061】
活性エネルギー線の照射量は、特に限定されるものではない。ネガマスクを通して活性エネルギー線を照射する場合は、好ましくは100〜20,000J/m、さらに好ましくは200〜10,000J/mの範囲である。レーザー光により直接に活性エネルギー線を照射する場合は、好ましくは1〜800J/m、さらに好ましくは10〜650J/mの範囲である。これら範囲の下限値は、パターン形状向上及び耐エッチング性の点で意義がある。これら範囲の上限値は、解像性の点で意義がある。
【0062】
現像処理に用いる現像液としては、活性エネルギー線が照射されなかったレジスト膜部分を溶解する現像液であれば特に限定されるものでない。現像液としては例えばアルカリ現像液を利用することができる。アルカリ現像液に用いるアルカリ成分としては、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、第二燐酸ナトリウム、第三燐酸ナトリウム、第二燐酸アンモニウム、第三燐酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム等の無機アルカリ塩、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アミン化合物があげられる。現像液には、必要に応じて、各種の界面活性剤(アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤)やアルコール等の有機溶媒を加えることができる。また、アルカリ成分の含有量は、レジスト組成物の組成等によって選択することができるが、例えば0.1〜5質量%程度とすることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0064】
<実施例1>
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中でjER−4005P(商品名、ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量1027g/eq)2054g(エポキシ基2.0mol)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2368.44gに溶解させた。そこへジメチロールプロピオン酸268.26g(カルボキシル基2.0mol)及びテトラブチルアンモニウムブロマイド46.44gを添加して150℃で8時間反応を行い反応物(水酸基12.8mol)を得た。その後、反応物を室温まで冷却し、無水テトラヒドロフタル酸897.73g(酸無水物基5.90mol)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート897.73gを添加して100℃で8時間反応を行った。その後、さらにイソシアネートエチルアクリレート973.02g(イソシアネート基6.90mol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート979.39g、ジラウリル酸−n−ジブチル錫4.24g及びメトキノン2.12gを添加して100℃で8時間反応を行い、さらにエチレングリコールモノブチルエーテルを943.51gを添加して不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A−1)を含有する固形分45%の樹脂組成物(樹脂組成物1)を得た。得られた不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A−1)の重量平均分子量は4,200、酸価は78mgKOH/g、不飽和基濃度は1.62mmol/g、水酸基価は0.1mgKOH/gであった。
【0065】
<実施例2>
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中でjER−4004P(商品名、ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量862g/eq)1724g(エポキシ基2.0mol)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2032.11gに溶解させた。そこへジメチロールプロピオン酸268.26g(カルボキシル基2.0mol)及びテトラブチルアンモニウムブロマイド39.85gを添加して150℃で8時間反応を行い反応物(水酸基11.5mol)を得た。その後、反応物を室温まで冷却し、無水テトラヒドロフタル酸701.83g(酸無水物基4.61mol)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート701.83gを添加して100℃で8時間反応を行った。その後、さらにイソシアネートエチルアクリレート973.02g(イソシアネート基6.90mol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート978.59g、ジラウリル酸−n−ジブチル錫3.71g及びメトキノン1.86gを添加して100℃で8時間反応を行い、さらにエチレングリコールモノブチルエーテルを824.99gを添加して不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A−2)を含有する固形分45%の樹脂組成物(樹脂組成物2)を得た。得られた不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A−2)の重量平均分子量は3,700、酸価は70mgKOH/g、不飽和基濃度は1.86mmol/g、水酸基価は0.1mgKOH/gであった。
【0066】
<実施例3>
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中でjER−4007P(商品名、ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量2212g/eq)4424g(エポキシ基2.0mol)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4786.11gに溶解させた。そこへジメチロールプロピオン酸268.26g(カルボキシル基2.0mol)及びテトラブチルアンモニウムブロマイド93.85gを添加して150℃で8時間反応を行い反応物(水酸基22.0mol)を得た。その後、反応物を室温まで冷却し、無水テトラヒドロフタル酸1521.50g(酸無水物基10.0mol)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1521.50gを添加して100℃で8時間反応を行った。その後、さらにイソシアネートエチルアクリレート1693.44g(イソシアネート基12.0mol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1705.45g、ジラウリル酸−n−ジブチル錫8.02g及びメトキノン4.01gを添加して100℃で8時間反応を行い、さらにエチレングリコールモノブチルエーテルを1780.67gを添加して不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A−3)を含有する固形分45%の樹脂組成物(樹脂組成物3)を得た。得られた不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A−3)の重量平均分子量は8,000、酸価は70mgKOH/g、不飽和基濃度は1.50mmol/g、水酸基価は0.1mgKOH/gであった。
【0067】
<実施例4>
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中でNC−3000H(商品名、日本化薬社製、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量288g/eq)288g(エポキシ基1.0mol)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート430.57gに溶解させた。そこへジメチロールプロピオン酸134.13g(カルボキシル基1.0mol)及びテトラブチルアンモニウムブロマイド8.44gを添加して150℃で8時間反応を行い反応物(水酸基3.00mol)を得た。その後、反応物を室温まで冷却し、無水テトラヒドロフタル酸236.59g(酸無水物基1.55mol)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート236.59gを添加して100℃で8時間反応を行った。その後、さらにイソシアネートエチルアクリレート203.92g(イソシアネート基1.45mol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート205.23g、ジラウリル酸−n−ジブチル錫0.87g及びメトキノン0.44gを添加して100℃で8時間反応を行い、さらにエチレングリコールモノブチルエーテルを193.86gを添加して不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A−4)を含有する固形分45%の樹脂組成物(樹脂組成物4)を得た。得られた不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A−4)の重量平均分子量は2,900、酸価は100mgKOH/g、不飽和基濃度は1.66mmol/g、水酸基価は0.1mgKOH/gであった。
【0068】
<合成例1>
メチルメタクリレート20g、アクリル酸60g、メタクリル酸20g及びt−ブチルパーオキシオクトエート6gからなる混合液を、窒素ガス雰囲気下において110℃に保持したn−ブチルアルコール90g中に3時間を要して滴下した。滴下後、1時間熟成させ、アゾビスジメチルバレロニトリル1g及びn−ブチルアルコール10gからなる混合液を1時間要して滴下し、さらに5時間熟成させて高酸価アクリル樹脂(樹脂酸価約520mgKOH/g)溶液を得た。次に、この溶液にグリシジルメタクリレート114g、ハイドロキノン0.24g及びテトラエチルアンモニウムブロマイド1.0gを加えて空気を吹き込みながら110℃で5時間反応させて重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(樹脂酸価約70mgKOH/g、重合性不飽和基濃度3.75mmol/g、Tg点8℃、数平均分子量約18,000)溶液(樹脂組成物5)を得た。この樹脂溶液の固形分は68%であった。
【0069】
<合成例2>
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中でjER−828(商品名、ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190g/eq)228gをN−メチルピロリドン60g及びカルビトールアセテート140gに溶解させた。続いて、反応温度を45℃に保ちながらモノエタノールアミン48.8gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、6時間かけて120℃に昇温し、120℃で2時間撹拌を続けた。続いて、温度を65℃にし、無水テトラヒドロフタル酸121.6gを添加した。添加後、65℃で10時間撹拌を続けた。続いて、反応温度を65℃に保ちながらイソシアナートエチルメタクリレート31gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、65℃で5時間撹拌を続け、固形分78%の樹脂組成物(樹脂組成物6)を得た。
【0070】
<実施例5>
実施例1で得た不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A−1)を含有する樹脂組成物(樹脂組成物1)222g(固形分量で100部)、ニューフロンティアL−C9A(商品名、第一工業製薬社製、1,9−ノナンジオールジアクリレート)5g、IRGACURE OXE01(商品名、チバ スペシャルティ ケミカルズ社製、O−アシルオキシム類光重合開始剤)5g、KAYACURE DETX−S(商品名、日本化薬社製、チオキサントン類光重合開始剤)10g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル261gを加えて混合し、均一なレジスト組成物を得た。
【0071】
<実施例6〜9及び比較例1〜4>
レジスト組成物の組成を表1に示す配合組成に従って配合した以外は、実施例5と同様の方法で、実施例6〜9及び比較例1〜4の各レジスト組成物を製造した。
【0072】
<評価試験>
上記のようにして得たレジスト組成物を、ITO膜(厚み200nm)を形成した10cm×10cmのガラス基材の該ITO膜上にスピンコーターを用いて塗装し、65℃で1分間乾燥し、乾燥膜厚2.0μmのレジスト膜を得た。得られたレジスト膜について、下記の評価試験に供した。
【0073】
【表1】

(注1)樹脂組成物7:KAYARAD ZFR−1401H(商品名、日本化薬社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のエポキシ基に、アクリル酸を開環付加させた後、無水テトラヒドロフタル酸で変性したエポキシアクリレート系樹脂、固形分62%)
【0074】
<光感度>
基板上に形成されたレジスト膜に、レジストパターンがライン&スペース(L/S)パターンで100μm/100μmとなるように、405nmのレーザー光を照射した。次いで、25℃の0.25質量%炭酸ソーダ水溶液で現像を行った。なお、現像時間は、未照射の状態の前記レジスト膜が前記現像液に溶解する時間の1.5倍の時間とした。照射量を変動させて上記試験を行い、現像後に良好なレジストパターンが得られる最小の照射量を求め、表1に示した。なお、求めた最小の照射量が小さいほど光感度が高いことを示す。
【0075】
<耐エッチング性>
基板上に形成されたレジスト膜に、レジストパターンがライン&スペース(L/S)パターンで100μm/100μmとなるように、405nmのレーザー光を照射した。ここで、照射量は、前記光感度の評価において求めた最小の照射量とした。次いで、25℃の0.25質量%炭酸ソーダ水溶液で現像を行い、レジストパターン形成基材を得た。なお、現像時間は、未照射の状態の前記レジスト膜が前記現像液に溶解する時間の1.5倍の時間とした。得られたレジストパターン形成基材を、25℃の塩酸/塩化第二鉄混合エッチング液に浸漬した。一定時間浸漬した後に、レジストパターンが基材から剥離しているか否かを確認し、下記基準により耐エッチング性を評価した。評価結果を表1に示した。
◎:10分間の浸漬では剥離なし
○:5分間の浸漬では剥離しないが、10分間の浸漬で剥離が見られる
△:3分間の浸漬では剥離しないが、5分間の浸漬で剥離が見られる
×:3分間の浸漬で剥離が見られる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と1分子中に1個以上の水酸基及び1個のカルボキシル基を有する化合物(b)との反応物(I)に、飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)とエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物(d)を反応させてなる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の重量平均分子量が1,000〜10,000である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の酸価が50〜120mgKOH/gである請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の不飽和基濃度が0.1〜4.0mmol/gである請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の水酸基価が10mgKOH/g未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ化合物(a)が芳香族環を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ化合物(a)のエポキシ当量が150〜2,500g/eqである請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記反応物(I)が前記エポキシ化合物(a)のエポキシ基と前記化合物(b)のカルボキシル基を当量比1.0:0.7〜1.0:1.3で反応させてなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と1分子中に1個以上の水酸基及び1個のカルボキシル基を有する化合物(b)との反応物(I)に、飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)とエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物(d)を反応させてなる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)、並びに光重合開始剤(B)を含有することを特徴とするレジスト組成物。
【請求項10】
さらに前記(A)以外のエチレン性不飽和基含有化合物(C)を含有する請求項9記載のレジスト組成物。
【請求項11】
(1)基板上に請求項9又は10記載のレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する工程、(2)前記基板上に形成されたレジスト膜に所望のレジストパターンが得られるように活性エネルギー線を直接もしくはネガマスクを通して照射する工程、(3)前記レジスト膜を現像処理して前記基板上にレジストパターンを形成する工程、を含むレジストパターン形成方法。

【公開番号】特開2009−250985(P2009−250985A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94567(P2008−94567)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】