説明

樹脂組成物、レンズ用樹脂組成物及びその硬化物

【課題】離型性、型再現性、密着性に優れ、高屈折率で、カールが少なく、力や温度変化にさらされた際のレンズ形状の変形が少ない硬化物およびそれが得られる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】分子中に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基と活性水素を有する多官能(メタ)アクリレ−ト(a−1)と有機ポリイソシアネート(a−2)とを反応させた多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)、分子量1000以下のジオール化合物(b−1)と芳香族有機ポリイソシアネート(b−2)と水酸基含有(メタ)アクリレート(b−3)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(B)、o−フェニルフェノールポリ(n=1〜3)エトキシアクリレート(C)及び光重合開始剤(D)を含むことを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関する。更に詳しくは、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等のレンズ類に特に適する樹脂組成物及び硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のレンズはプレス法、キャスト法等の方法により成形されていた。前者のプレス法は加熱、加圧、冷却サイクルで製造するため生産性が悪かった。また、後者のキャスト法は金型にモノマーを流し込んで重合するため製作時間が長くかかるとともに金型が多数個必要なため、製造コストが上がるという問題があった。このような問題を解決するために、紫外線硬化性樹脂組成物を使用することについて種々の提案がなされている(特許文献1、特許文献2等)。
【0003】
これら紫外線硬化型樹脂組成物を使用することによって透過型スクリーンを製造する方法はある程度成功している。しかしながら、これら従来の樹脂組成物は基板との密着性、型からの離型性が悪いという課題があった。密着性が悪いと、使用可能な基板の種類が限られ、意図する光学物性を得づらくなる。離型性が悪いと、離型時に型に樹脂が残り、型が使用できなくなる。また、密着性の良い樹脂組成物は型への密着も良くなるため離型性が悪くなり易く、一方、離型性の良い樹脂組成物は密着性が悪くなり易いという課題もある。そのため、基板との密着性と型からの離型性の両性能を満足できる樹脂組成物を提供することが望まれている。
さらに、これら透過型スクリーン等に用いられるレンズ類は、近年の画像の高精細化などに伴いより微細な形状に加工されたり、より薄く加工されたりするために、力や温度変化にさらされた際に、形状が潰れたり変形したりするという問題がある。
上記のような問題は、紫外線硬化樹脂の軟化点や硬度を上げると解消は可能であるが、基板との密着性が低下する等の問題がおこり易くなり、また硬化収縮が大きくなることにより成型が難しくなる。
また、特に基板が薄いフィルム状のレンズシートなどの場合は、紫外線硬化樹脂の硬化収縮が大きいことによるカールが発生し、正確な形状を加工するのが困難になったり、その後の加工や、使用時の熱による変形で不備が生じたりする問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−167301号公報
【特許文献2】特開昭63−199302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、離型性、型再現性、密着性に優れ、高屈折率で、カールが少なく、力や温度変化にさらされた際のレンズ形状の変形が少ない硬化物およびそれが得られる樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究の結果、特定の組成を有する紫外線硬化性樹脂組成物が前記課題を解決することを見いだし、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)分子中に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基と活性水素を有する多官能(メタ)アクリレ−ト(a−1)と有機ポリイソシアネート(a−2)とを反応させた多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)、分子量1000以下のジオール化合物(b−1)と芳香族有機ポリイソシアネート(b−2)と水酸基含有(メタ)アクリレート(b−3)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(B)、o−フェニルフェノールポリ(n=1〜3)エトキシアクリレート(C)及び光重合開始剤(D)を含むことを特徴とする樹脂組成物、
(2)有機ポリイソシアネート(a−2)が、その分子中に芳香環をもたないことを特徴とする(1)に記載の樹脂組成物、
(3)有機ポリイソシアネート(a−2)がその分子中に、芳香環ではない環状構造をもつことを特徴とする(1)又は(2)に記載の樹脂組成物、
(4)有機ポリイソシアネート(a−2)が、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート環化3量体、イソホロンジイソシアネート環化3量体から選択される少なくとも1種である、(1)ないし(3)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
(5)分子量1000以下のジオール化合物(b−1)がビスフェノールAポリ(n=2〜8)エトキシジオール及びビスフェノールAポリ(n=2〜6)プロポキシジオールから選択される1種以上である(1)ないし(4)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
【0008】
(6)さらに、(A),(B)、(C)以外の(メタ)アクリレートモノマー及び(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択される1種以上を含有する、(1)ないし(5)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
(7)多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)と任意成分の(メタ)アクリレートモノマー及び(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択される1種以上が、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートであり、組成物中に合計量として10〜40重量%含有することを特徴とする(6)に記載の樹脂組成物、
(8)レンズ用である(1)ないし(7)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
(9)前記(1)ないし(8)のいずれか一項に記載の樹脂組成物を硬化して得られる膜屈折率(25℃)が1.55以上である硬化物、
(10)レンズ用である(9)に記載の硬化物、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、離型性、型再現性、密着性に優れ、その硬化物は高屈折率で、カールが少なく、温度や力によるレンズ形状の変形が少ない。そのため特にフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)を得るために使用する分子中に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基と活性水素を有する多官能(メタ)アクリレ−ト(a−1)としては、例えばペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
好ましい具体例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートが挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレ−トは単独で用いても又は2種以上混合して用いてもよい。
【0011】
有機ポリイソシアネート(a−2)としては、鎖状飽和炭化水素、環状飽和炭化水素、芳香族炭化水素で構成されるポリイソシアネートを用いることができる。このようなポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の鎖状飽和炭化水素ポリイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等の環状飽和炭化水素イソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートを挙げることができる。
中でも本発明の用途にはその分子中に芳香環をもたないものが好ましく、さらに芳香環ではない環状構造をもつものがより好ましい。好ましい具体例としては、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート環化3量体、イソホロンジイソシアネート環化3量体が挙げられる。これら有機ポリイソシアネートは単独で用いても又は2種以上混合して用いてもよい。
【0012】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、前記の活性水素を有する多官能(メタ)アクリレ−ト(a−1)とポリイソシアネート(a−2)とを反応させることにより得られる。反応に際しては、活性水素を有する放射線硬化型多官能(メタ)アクリレ−ト(a−1)中の活性水素基1当量に対し、ポリイソシアネート(a−2)は、イソシアネート基当量として0.1〜1の範囲である。反応温度は、通常30〜150℃、好ましくは、50〜100℃の範囲である。反応の終点はイソシアネート量の減少推移で確認する。
【0013】
これらの反応に際し、反応時間の短縮を目的として触媒を添加しても良い。この触媒としては、塩基性触媒及び酸性触媒のいずれかが用いられる。塩基性触媒の例としては、ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、アンモニアなどのアミン類、トリブチルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン等のフォスフィン類を挙げることができる。また、酸性触媒の例としては、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリブトキシアルミニウム、トリチタニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラブトキシド等の金属アルコキシド類、塩化アルミニウム等のルイス酸類、2−エチルヘキサンスズ、オクチルスズトリラウレート、ジブチルスズジラウレート、オクチルスズジアセテート等のスズ化合物を挙げることができる。これら触媒の中で、好ましくは、酸性触媒であり、より好ましくは、スズ化合物である。これら触媒の添加量は、ポリイソシアネートを100重量部に対して、0.1〜1重量部である。
【0014】
ウレタン(メタ)アクリレート(B)を得るために使用する、分子量1000以下のジオール化合物(b−1)の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ビスフェノールAポリプロポキシジオール等のジオール化合物(b−1−1)、これらジオール化合物(b−1−1)と二塩基酸又はその無水物(例えばコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸あるいは、これらの無水物)との反応物であるポリエステルジオール(b−1−2)等を挙げることができる。ジオール成分(b−1)として好ましくは、ビスフェノールAポリプロポキシジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを挙げることができる。
中でも分子量1000以下のジオール化合物(b−1)としてビスフェノールAポリ(n=2〜8)エトキシジオール、ビスフェノールAポリ(n=2〜6)プロポキシジオールが好ましい。
【0015】
芳香族有機ポリイソシアネート(b−2)の具体例としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
中でも2,4−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0016】
水酸基含有(メタ)アクリレート(b−3)の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
中でも2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0017】
本発明に使用するウレタン(メタ)アクリレート(B)は、分子量1000以下のジオール化合物(b−1)と芳香族有機ポリイソシアネート(b−2)と水酸基含有(メタ)アクリレート(b−3)を用いて常法で合成することにより得ることができる。即ち、例えば、分子量1000以下のジオール化合物(b−1)と芳香族有機ポリイソシアネート(b−2)とを付加することにより反応物(I)を得て、次いで反応物(I)に水酸基含有(メタ)アクリレート(b−3)を付加することによりウレタン(メタ)アクリレート(B)が得られる。
反応物(I)の合成に際しては、前記ジオール(b−1)の水酸基1当量に対して、芳香族有機ポリイソシアネート(b−2)のイソシアネート基1.1〜2.0当量を反応させることが好ましく、1.3〜2.0当量を反応させることが特に好ましい。反応温度は、60〜100℃が好ましい。
なお、反応に際しては粘度を下げるために、反応に関与しない化合物を希釈剤として添加することも出来る。具体的には、後に具体例として挙げている(メタ)アクリレートモノマーのうち、単官能や2官能のモノマーで、水酸基を持たない構造のものを希釈剤として用いることができる。また、後述するo−フェニルフェノールポリ(n=1〜3)エトキシアクリレート(C)を用いることも可能である。
【0018】
次に、ウレタン(メタ)アクリレート(B)への反応は、(b−1)成分と(b−2)成分との反応物(I)中のイソシアネート基1当量あたり、水酸基含有(メタ)アクリレート(b−3)中の水酸基0.95〜1.1当量を反応させることが好ましい。反応温度は、60〜100℃が好ましい。なお、これら反応を促進するために、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン等の第3級アミン類、ジブチルスズラウリレート、ジオクチルスズラウリレート等のジラウリレート化合物を触媒として用いることができる。触媒の添加量は反応混合物全体に対して0.001〜5重量%であることが好ましく、0.01〜1重量%であることが特に好ましい。また、反応中の重合を防止するために、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−メトキシフェノール、p−ベンゾキノン等の重合禁止剤を用いることができる。重合禁止剤の添加量は反応混合物全体に対して0.001〜5重量%であることが好ましく、0.01〜1重量%であることが特に好ましい。なお、本発明の樹脂組成物においては、ウレタン(メタ)アクリレート(B)は単独で用いても良いし、複数種を混合して用いても良い。
【0019】
さらに、本発明の樹脂組成物にはo−フェニルフェノールポリ(n=1〜3)エトキシアクリレート(C)を用いる。o−フェニルフェノールポリ(n=1〜3)エトキシアクリレート(C)は、p-フェニルフェノールとエチレンオキサイドとの反応物と(メタ)アクリル酸を反応させることにより得ることができる。p-フェニルフェノールとエチレンオキサイドとの反応は公知の方法によりp−トルエンスルホン酸または硫酸等のエステル化触媒およびハイドロキノン、フェノチアジン等の重合禁止剤の存在下に好ましくは溶剤類(例えばトルエン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等)の存在下に好ましくは70〜150℃の温度で反応させることにより得られる。(メタ)アクリル酸の使用割合は、p-フェニルフェノールとエチレンオキサイドとの反応物1モルに対して1〜5モル、好ましくは1.05〜2モルである。エステル化触媒は使用する(メタ)アクリル酸に対して0.1〜15モル%、好ましくは1〜6モル%の濃度である。
【0020】
さらに、先に挙げた多官能ウレタンアクリレート(A)、ウレタン(メタ)アクリレート(B)、o−フェニルフェノールポリ(n=1〜3)エトキシアクリレート(C)の他に、得られる本発明の樹脂組成物の密着性や、ガラス転移点温度(Tg)、硬さ等を考慮して、(A)、(B)、(C)以外の(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマーを単独あるいは数種類混合して任意に使用しても良い。
【0021】
(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、例えば、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフロフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリエトキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620、等)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のモノマー類を挙げることができる。
【0022】
(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。エポキシ(メタ)アクリレートの具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の末端グリシジルエーテル、フルオレンエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂類と(メタ)アクリル酸との反応物等を挙げることができる。好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の末端グリシジルエーテルを挙げることができる。 ポリエステル(メタ)アクリレートの具体例としては、前記のポリエステルジオール(b−1−2)と(メタ)アクリル酸の反応物等を挙げることができる。
【0023】
本発明の樹脂組成物で使用する、光重合開始剤(D)の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、4,4'−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等を挙げることができる。好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを挙げることができる。なお、本発明の樹脂組成物においては、光重合開始剤(D)は単独で用いても良いし、複数種を混合して用いても良い。
【0024】
本発明の樹脂組成物で含有される成分の使用割合は、(A)成分+(B)成分+(C)成分を100重量部とした場合、(A)成分は5〜50重量部使用することが好ましく、特に好ましくは5〜30重量部である。(B)成分は5〜30重量部使用することが好ましく、特に好ましくは10〜25重量部である。(C)成分は5〜70重量部使用することが好ましく、特に好ましくは10〜60重量部である。(D)成分は(A)+(B)+(C)の総量100重量部に対して、0.1〜10重量部使用することが好ましく、特に好ましくは0.3〜5重量部である。
【0025】
また、得られる樹脂組成物の密着性や必要なガラス転移点温度(Tg)や硬さ等を考慮すると、多官能ウレタンアクリレート(A)と、任意成分として使用する(メタ)アクリレートモノマーおよび(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレ−トが好ましい。さらに、これら分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレ−トはその合計量として樹脂組成物中に10〜40重量%であることがより好ましい。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、前記成分以外に離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤、有機溶剤等を併用して含有することができる。さらに、必要に応じて、アクリルポリマー、ポリエステルエラストマー、ウレタンポリマー及びニトリルゴム等のポリマー類も添加することができる。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、各成分を常法に従い混合溶解することにより調製することができる。具体的には撹拌装置、温度計のついた丸底フラスコに各成分を仕込み、40〜80℃にて0.5〜6時間撹拌することにより得ることができる。
【0028】
本発明の硬化物は、常法に従い、本発明の樹脂組成物に紫外線を照射することにより硬化して得ることができる。具体的には本発明のレンズ用樹脂組成物を、例えば、フレネルレンズ又はレンチキュラーレンズの形状を有するスタンパー上に塗布し、該樹脂組成物の層を設け、その層の上に硬質透明基板であるバックシート(例えば、ポリメタクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、或いはこれらポリマーのブレンド品等からなる基板あるいはフィルム)を接着させ、次いで該硬質透明基板側から高圧水銀灯などにより、紫外線を照射して該樹脂組成物を硬化させた後、該スタンパーから硬化物を剥離する。また、これらの応用として連続式での加工を行うこともできる。
【0029】
この様にして屈折率(25℃)が1.55以上で離型性、型再現性、密着性、耐光性に優れたフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等のレンズを得ることができる。なお、屈折率はアッベ屈折率計(型番:DR−M2、(株)アタゴ製)等で測定することができる。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等のレンズ類用として有用であるが、その他に各種コーティング剤、接着剤等にも有用である。
【実施例】
【0031】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0032】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)の合成
合成例1
乾燥容器中にペンタエリスリトールトリアクリレート1020部、ジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.6部、メトキノン0.6部を入れ、80℃まで加熱撹拌した。これにイソフォロンジイソシアネート177.8部を1時間かけて滴下し、1〜2時間撹拌後のイソシアネート値は0.3以下であり、反応がほぼ定量的に終了したことを示した。
【0033】
合成例2
乾燥容器中にペンタエリスリトールトリアクリレート1020部、ジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.6部、メトキノン0.6部を入れ、80℃まで加熱撹拌した。これにノルボルナンジイソシアネート165.0部を1時間かけて滴下し、1〜2時間撹拌後のイソシアネート値は0.3以下であり、反応がほぼ定量的に終了したことを示した。
【0034】
ウレタン(メタ)アクリレート(B)の合成
合成例3
乾燥容器中に、o−フェニルフェノールモノエトキシアクリレート94.7部、2,4−トリレンジイソシアネート139.3部を仕込み、ビスフェノールAポリ(n=2)プロポキシジオール(水酸基価312mgKOH/g)143.9部を発熱を確認しながら3分割で仕込み、80℃で攪拌し、約10時間反応を行った。イソシアネート基が11.9重量%になったところで2−ヒドロキシエチルアクリレート95.7部とp−メトキシフェノール0.2部とジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.06部を仕込み80℃で約12時間反応を行い、イソシアネート基が0.1重量%以下になったところで反応を終了した。
【0035】
合成例4
乾燥容器中に、o−フェニルフェノールモノエトキシアクリレート99.4部、2,4−トリレンジイソシアネート139.3部を仕込み、ビスフェノールAポリ(n=4)エトキシジオール(水酸基価276mgKOH/g)162.6部を発熱を確認しながら3分割で仕込み、80℃で攪拌し、約10時間反応を行った。イソシアネート基が11.1重量%になったところで2−ヒドロキシエチルアクリレート95.7部とp−メトキシフェノール0.2部とジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.06部を仕込み80℃で約12時間反応を行い、イソシアネート基が0.1重量%以下になったところで反応を終了した。
【0036】
実施例1、2、比較例1
表1に示すような組成(数値は重量部を示す)の実施例及び比較例の紫外線硬化性樹脂組成物を得た。レンズ金型の上に膜厚が約50μmになるように該組成物を塗布し、その上に易接着PETフィルム(東レルミラー100μm厚)を接着させ、さらにその上から高圧水銀ランプで600mj/cm2の照射量の紫外線を照射して硬化させた後剥離して、プリズムレンズを得た。樹脂組成物及び得られたそれぞれの硬化膜について、以下の性能評価を行った。それらの結果も併せて表1に示した。
【0037】
(1)離型性:硬化した樹脂を金型より離型させるときの難易
○・・・・金型からの離型が良好
△・・・・離型がやや困難あるいは、離型時に剥離音がある
×・・・・離型が困難あるいは型のこりがある
(2)型再現性:硬化した紫外線硬化性樹脂層の表面形状と金型の表面形状を観察した。
○・・・・再現性良好
×・・・・再現性が不良
【0038】
(3)密着性:易接着PETフィルム(東レルミラー100μm厚)上に樹脂組成物を膜厚約50μm程度に塗布し、次いで高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で600mj/cm2の照射を行い硬化させたテストピースを作製し、JIS K5600−5−6に準じて密着性評価を行った。評価結果は0〜2を○とし、3〜5を×とした。
(4)カール:(3)の密着性評価と同様に硬化膜を作製したテストピースを5cm角に切り取り、80℃乾燥機中で1時間加熱した。取り出してから10分間静置したのち、水平な台上で4角の高さを測定し、平均値を求めた。
【0039】
(5)屈折率(25℃):硬化した紫外線硬化性樹脂層の屈折率(25℃)をアッベ屈折率計(型番:DR−M2、(株)アタゴ製)で測定した。
(6)ガラス転移点温度(Tg):硬化した紫外線硬化性樹脂層のTg点を粘弾性測定システムDMS−6000(セイコー電子工業製)、引っ張りモード、周波数1Hzにて測定した。
【0040】
表1
実施例 比較例
1 2 1
(A)成分
合成例1で得たウレタンアクリレート 25
合成例2で得たウレタンアクリレート 25
(B)成分
合成例3で得たウレタンアクリレート 19 19
合成例4で得たウレタンアクリレート 19
(C)成分
o−フェニルフェノールモノエトキシ 51 51 51
アクリレート
(D)成分
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 3 3 3
(その他成分)
フェニルオキシエチルアクリレート 5 5 5
ペンタエリスリトールトリアクリレート 25
(評価結果)
離型性 ○ ○ △
型再現性 ○ ○ ○
密着性 ○ ○ ○
カール(mm) 7.5 7.5 9.6
屈折率 1.583 1.582 1.577
Tg(℃) 81 72 82
【0041】
実施例3
(A)成分として合成例1で得たウレタンアクリレート33部、(B)成分として合成例3で得たウレタンアクリレート15部、(C)成分としてo−フェニルフェノールモノエトキシアクリレート1部、(D)成分として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 3部、その他成分としてフェニルオキシエチルアクリレート31部、ビスフェノールAポリ(n=10)エトキシジアクリレート20部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート15部を混合し、本発明の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を硬化させた膜の屈折率(25℃)は1.576であった。
この樹脂組成物をレンズ金型の上に膜厚が100〜150μmになるように塗布し、その上に2.5mm厚のMS(メチルメタクリレート・スチレン)板を接着させ、さらにその上から高圧水銀ランプで600mj/cm2の照射量の紫外線を照射して硬化させた後剥離して、フレネルレンズを得た。
離型性、型再現性は良好で、硬化膜とMS板との密着性をJIS K5600−5−6に準じて評価したところ、密着性良好だった。
【0042】
表1に示した実施例1、2、比較例1の評価結果から明らかなように、本発明の樹脂組成物の硬化物は、高屈折率で、離型性、型再現性に優れており、易接着PETへの密着性が良好で、Tgが同等でも、よりカールが少なかった。
また、実施例3の結果から明らかなように、本発明の樹脂組成物の硬化物は、高屈折率で、離型性、型再現性に優れており、MS板への密着性が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物及びその硬化物は、主に、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等のレンズ類に特に適するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基と活性水素を有する多官能(メタ)アクリレ−ト(a−1)と有機ポリイソシアネート(a−2)とを反応させた多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)、分子量1000以下のジオール化合物(b−1)と芳香族有機ポリイソシアネート(b−2)と水酸基含有(メタ)アクリレート(b−3)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(B)、o−フェニルフェノールポリ(n=1〜3)エトキシアクリレート(C)及び光重合開始剤(D)を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
有機ポリイソシアネート(a−2)が、その分子中に芳香環をもたないことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
有機ポリイソシアネート(a−2)がその分子中に、芳香環ではない環状構造をもつことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
有機ポリイソシアネート(a−2)が、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート環化3量体、イソホロンジイソシアネート環化3量体から選択される少なくとも1種である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
分子量1000以下のジオール化合物(b−1)がビスフェノールAポリ(n=2〜8)エトキシジオール及びビスフェノールAポリ(n=2〜6)プロポキシジオールから選択される1種以上である請求項1ないし4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、(A),(B)、(C)以外の(メタ)アクリレートモノマー及び(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)と任意成分の(メタ)アクリレートモノマー及び(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択される1種以上が、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートであり、組成物中に合計量として10〜40重量%含有することを特徴とする請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
レンズ用である請求項1ないし7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の樹脂組成物を硬化して得られる膜屈折率(25℃)が1.55以上である硬化物。
【請求項10】
レンズ用である請求項9に記載の硬化物。

【公開番号】特開2007−39482(P2007−39482A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222351(P2005−222351)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】