説明

樹脂組成物、及び、その製造方法とそれを用いた成形体

【課題】靭性と流動性とのバランスに優れる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記重合体(A1)20〜80重量%、下記重合体(A2)5〜55重量%、および下記共重合体(B)10〜50重量%を含み、230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が20g/10分以上である樹脂組成物。
重合体(A1):極限粘度が0.5dl/g以上、2.0dl/g未満であり、分子量分布が3.0未満であり、かつプロピレンに由来する構造単位の含有量が90重量%以上であるプロピレン重合体
重合体(A2):極限粘度が2.0dl/g以上、7.0dl/g以下であり、分子量分布が3.0以上であり、かつプロピレンに由来する構造単位の含有量が90重量%以上であるプロピレン重合体
共重合体(B):エチレンに由来する構造単位の含有量が20〜80重量%である、エチレンとプロピレンまたは炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靭性と流動性のバランスに優れる樹脂組成物、及びその製造方法とそれを用いた成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、剛性や耐衝撃性等に優れる材料であり、自動車内外装材や電気部品箱体等の成形体として、広範な用途に利用されている。そのポリプロピレン樹脂の中でも、こうした用途に用いられる、エチレンとの共重合により、ポリエチレン成分や非晶質あるいは低結晶性のプロピレン−エチレン共重合体を、結晶性ポリプロピレン中に分散せしめた所謂インパクトコポリマーがある。このインパクトコポリマーは、剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、バンパー、インストルメントパネル、ガーニッシュ等の自動車内外装部品、テレビケース等の家電機器部品等の各種工業部品用成形材料に利用されているが、これらの製品は近年、薄肉化、高機能化、大型化されているため、更なる材料の高性能化が要求されている。特に、製品の大型化のため、材料の高流動化による成形性能の向上が望まれている。
【0003】
特許文献1には、立体規則性触媒を用いて重合された、極限粘度が0.5dl/g以上2.5dl/g未満のプロピレン重合体50〜94重量%、極限粘度が2.5dl/g以上のプロピレン重合体3〜30重量%、及び極限粘度が2.8dl/g以上のプロピレン−エチレン共重合体3〜30重量%からなるポリプロピレン重合体組成物において、難白化性、耐衝撃性、剛性に優れることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、a)MFRが0.001〜5g/10minを有するプロピレンホモポリマ−、b)エチレン含量5〜80w/w%を有するプロピレン/エチレンコポリマ−、c)MFRが1〜10g/10minを有するプロピレンホモポリマ−を含有し、プロピレンホモポリマ−c)のMFRのプロピレンホモポリマ−a)のMFRに対する比が10:1〜10:1の範囲内にあることを特徴とする、異なったプロピレンポリマ−のブレンドが、良好な流動性を有するにもかかわらず、良好な機械特性、特に高い剛性を有することが記載されている。
【0005】
特許文献3には、(A3)固体状チタン触媒成分と有機金属化合物触媒成分とを含むオレフィン重合用触媒成分の存在下にプロピレンを重合することで得られたMFRが0.01〜30g/10分の範囲にあり、GPCにより求められる分子量分布(Mw/Mn)が4〜15の範囲にあるプロピレン重合体;10〜90%と、(A4)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IVB族の遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物及び前記遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有するオレフィン重合用触媒の存在下にプロピレンを重合することにより得られ、MFRが30〜1000g/10分の範囲にあり、GPCにより求められる分子量分布(Mw/Mn)が2〜4の範囲にあるプロピレン重合体;90〜10重量%とからなるプロピレン重合体組成物が、耐熱性、機械的強度、引張り破断伸び等が優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−195032号公報
【特許文献2】特開平7−149974号公報
【特許文献3】国際公開94/16009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3に記載のポリプロピレン重合体組成物では、その性能は十分ではなく、機械物性のバランスを維持しつつ、更なる流動性の改良が望まれている。本発明の目的は、靭性と流動性とのバランスに優れる樹脂組成物、及び、その製造方法とそれを用いた成形体を提供することにある。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記重合体(A1)20〜80重量%、下記重合体(A2)5〜55重量%、および下記共重合体(B)10〜50重量%を含み(但し、重合体(A1)、重合体(A2)及び共重合体(B)の合計の重量を100重量%とする。)、230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が20g/10分以上である樹脂組成物に係るものである。
重合体(A1):135℃のテトラリン中で測定される極限粘度([η]A1)が0.5dl/g以上、2.0dl/g未満であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.0未満であり、かつプロピレンに由来する構造単位の含有量が90重量%以上であるプロピレン重合体
重合体(A2):135℃のテトラリン中で測定される極限粘度([η]A2)が2.0dl/g以上、7.0dl/g以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.0以上であり、かつプロピレンに由来する構造単位の含有量が90重量%以上であるプロピレン重合体
共重合体(B):エチレンに由来する構造単位の含有量が20〜80重量%である、エチレンとプロピレンまたは炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、靭性と流動性のバランスに優れる樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、下記重合体(A1)20〜80重量%、下記重合体(A2)5〜55重量%、および下記共重合体(B)10〜50重量%を含み(但し、重合体(A1)、重合体(A2)及び共重合体(B)の合計の重量を100重量%とする。)、230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が20g/10分以上である。
重合体(A1):135℃のテトラリン中で測定される極限粘度([η]A1)が0.5dl/g以上、2.0dl/g未満であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.0未満であり、かつプロピレンに由来する構造単位の含有量が90重量%以上であるプロピレン重合体
重合体(A2):135℃のテトラリン中で測定される極限粘度([η]A2)が2.0dl/g以上、7.0dl/g以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.0以上であり、かつプロピレンに由来する構造単位の含有量が90重量%以上であるプロピレン重合体
共重合体(B):エチレンに由来する構造単位の含有量が20〜80重量%である、エチレンとプロピレンまたは炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体
【0012】
樹脂組成物に含まれる重合体(A1)の含有量としては、20〜80重量%であり、好ましくは、23〜80重量%であり、より好ましくは、25〜80重量%である。重合体(A1)の含有量が20重量%未満である場合、樹脂組成物のMFRが低下し、流動性が低下することがある。80重量%を超えると、靭性が低下することがある。
【0013】
樹脂組成物に含まれる重合体(A2)の含有量としては、5〜55重量%であり、好ましくは、5〜52重量%であり、より好ましくは、5〜50重量%である。重合体(A2)の含有量が、5重量%未満である場合、耐衝撃性が低下することがある。55重量%を超えると、ポリプロピレン樹脂組成物のMFRが低下し、流動性が低下することがある。
【0014】
重合体(A1)の135℃のテトラリン中で測定される極限粘度([η]A1)は、0.5dl/g以上、2.0dl/g未満であり、好ましくは、0.6dl/g以上、1.8dl/g未満であり、より好ましくは、0.7dl/g以上1.5未満dl/gである。[η]A1が0.5dl/g未満の場合には靭性の低下が起き、2.0dl/gを越える場合には流動性が低く、加工性の悪化を招く。
【0015】
重合体(A2)の135℃のテトラリン中で測定される極限粘度([η]A2)は、2.0dl/g以上、7.0dl/g以下であり、好ましくは、2.3dl/g以上、6.0dl/g以下であり、より好ましくは、2.5dl/g以上5.0dl/g以下である。[η]A2が2.0dl/g未満の場合、靭性が十分でなく成形品の引張破断伸びが低下することがあり、7.0dl/gを越える場合には流動性が低く、加工性の悪化を招く。
【0016】
重合体(A1)のゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィ−(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(分子量分布(Mw/Mn))は、3.0未満であり、好ましくは、2.8未満であり、より好ましくは、2.5未満である。重合体(A1)のMw/Mnが3.0以上の場合、靭性が十分でなく成形品の引張破断伸びが低下することがある。
【0017】
重合体(A2)のGPCにより測定されるMw/Mnは、3.0以上であり、好ましくは3.2以上であり、より好ましくは、3.5以上である。重合体(A2)のMw/Mnが3.0未満の場合、成形品の引張破断伸びが低下することがある。
【0018】
重合体(A1)に含有されるプロピレンに由来する構造単位の含有量、すなわち、13C−NMRスペクトルによって測定されるプロピレン含量は、90重量%以上であり、好ましくは、95重量%以上である(但し、重合体(A1)の全重量を100重量%とする。)。プロピレン含量が90重量%より少ないと共重合体(B)と過度に相溶するため、剛性が不十分なことがある。
【0019】
重合体(A2)に含有されるプロピレンに由来する構造単位の含有量、すなわち、13C−NMRスペクトルによって測定されるプロピレン含量は、90重量%以上であり、好ましくは、95重量%以上である(但し、重合体(A2)の全重量を100重量%とする。)。プロピレン含量が90重量%より少ないと共重合体(B)と過度に相溶するため、剛性が不十分なことがある。
【0020】
重合体(A1)および重合体(A2)には、プロピレンに由来する構造単位の他に、エチレンに由来する構造単位、炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構造単位を含有していてもよい。炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。重合体(A1)として好ましくは、プロピレン単独重合体成分であり、重合体(A2)として好ましくは、プロピレン単独重合体成分である。
【0021】
重合時、プロピレンは、通常1,2−挿入(メチレン側が触媒と結合する)して下記式(I)のような頭−尾結合したプロピレン連鎖を形成するが、稀に2,1−挿入、あるいは1,3−挿入することがある。2,1−挿入および1,3−挿入したプロピレンは、ポリマー中で、下記構造(II)、および(III)で示されるような位置不規則単位を形成する。
【0022】


【0023】
重合体(A1)は、13C核磁気共鳴(13C−NMR)スペクトルによって測定される全プロピレン単位中の2,1−挿入及び1,3−挿入に起因する異種結合の割合が0.01以下であることが好ましい。
【0024】
プロピレン重合体の「全プロピレン単位中の2,1−挿入及び1,3−挿入に起因する異種結合の割合」とは、筒井等のPOLYMER, 30, 1350 (1989)に記載された方法に基づき13C−NMRにより測定されるポリプロピレン分子鎖中の2,1−挿入反応に起因する異種結合の存在割合及び1,3−挿入反応に起因する異種結合の存在割合の合計である。
【0025】
本発明で用いられる重合体(A1)は、全プロピレン単位中の2,1−挿入及び1,3−挿入に起因する異種結合の割合が0.01以下であることが好ましく、より好ましくは、0.008以下であり、さらに好ましくは、0.005以下である。異種結合割合が0.01を超えると、成形体にしたときに剛性が不十分となることがある。
【0026】
重合体(A1)及び重合体(A2)は、それぞれ、上記記載のポリマー構造を満たす限りにおいて、複数の異なるプロピレン重合体成分から構成されていても構わない。
【0027】
重合体(A1)及び重合体(A2)の製造方法としては、例えば、公知の立体規則性触媒を用いて、原料であるプロピレン、エチレン、炭素数4〜20のα−オレフィンを公知の方法で重合する方法が挙げられる。
【0028】
立体規則性触媒としては、例えば、固体状チタン触媒成分と、有機金属化合物触媒成分と、さらに必要に応じて用いられる電子供与体とを接触させて形成される触媒、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物と、アルキルアルミノキサンとを接触させて形成される触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物と、有機アルミニウム化合物とを接触させて形成される触媒が挙げられる。中でも好ましくは、固体状チタン触媒成分と、有機金属化合物触媒成分と、さらに必要に応じて用いられる電子供与体とを接触させて形成される触媒である。
【0029】
一般的に、有機過酸化物を溶融相中でポリプロピレン樹脂と混合することで、狭い分子量分布をより狭くすることが可能であることが知られている。重合体(A1)に関して、有機過酸化物を用いて分子量(Mw)、及び、分子量分布(Mw/Mn)を調整した重合体を用いてもよい。
【0030】
上記の有機過酸化物としては、従来公知の有機過酸化物が挙げられるが、例えば、半減期が1分となる分解温度が120℃以上である有機過酸化物が好ましい。半減期が1分となる分解温度が120℃以上である有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブテン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレラート、ジ−t−ブチルペルオキシイソフタレート、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。半減期が1分となる分解温度が150℃以上である有機過酸化物がより好ましい。
【0031】
共重合体(B)は、エチレンとプロピレンまたは炭素数4〜20のα−オレフィンとを共重合して得られる共重合体である。炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられ、1種類、もしくは2種類以上のα−オレフィンを用いることができる。
【0032】
共重合体(B)は、固体状チタン触媒成分と、有機金属化合物触媒成分と、さらに必要に応じて用いられる電子供与体とを接触させて形成される触媒や、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物と、アルキルアルミノキサンとを接触させて形成される触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物と、有機アルミニウム化合物とを接触させて形成される触媒等を用い、公知の重合方法によって製造することができる。
【0033】
樹脂組成物に含まれる共重合体(B)の含有量としては、10〜50重量%であり、好ましくは、10〜45重量%であり、より好ましくは、10〜40重量%である。共重合体(B)の含有量が、10重量%未満である場合、耐衝撃性が低下することがある。50重量%を超えると、剛性の低下を招き、十分な機械物性バランスを得ることができない。
【0034】
共重合体(B)に含有されるエチレンに由来する構造単位の含有量、すなわち、13C−NMRスペクトルによって測定されるエチレン含量は、20〜80重量%であり、好ましくは、30〜70重量%である(但し、共重合体(B)の全重量を100重量%とする。)。エチレン含量が20重量%より少ないと重合体(A1)及び重合体(A2)と過度に相溶するため、剛性が不十分なことがある。一方で、80重量%よりも多い場合は、重合体(A1)及び重合体(A2)との相溶性が十分に高くないこと、ポリエチレン結晶成分が生成すること等から耐衝撃性が不十分なことがある。
【0035】
共重合体(B)の135℃のテトラリン中で測定される極限粘度([η])は、1.0dl/gより大きいことが好ましく、より好ましくは、1.5dl/gよりも大きく、更に好ましくは、2.0dl/gよりも大きい。
【0036】
本発明の樹脂組成物の230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)は、20g/10分以上であり、好ましくは、23g/10分以上であり、より好ましくは、25g/10分以上である。ポリプロピレン樹脂組成物のMFRが20g/10分未満の場合、流動性が低く、加工性が悪化することがある。
【0037】
樹脂組成物に含まれる成分のうち、GPCによって決定されるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が21000以下である成分の含有量が5.0重量%未満であることが好ましく、より好ましくは、4.8重量%未満である。Mwが21000以下である成分が5.0重量%未満である場合、靱性の低下もなく、さらには樹脂組成物から放出されるVOC成分の量も少なくすることができる。
【0038】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、添加剤、無機充填剤を添加しても良い。
【0039】
上記の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
【0040】
上記の無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、結晶性ケイ酸カルシウム、タルク、硫酸マグネシウム繊維等が挙げられる。これらの無機充填剤は、2種以上を併用しても良い。
【0041】
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、例えば、
(1)重合体(A1)及び重合体(A2)に引き続き、連続して共重合体(B)を重合して製造する方法、
(2)重合体(A1)及び重合体(A2)と、共重合体(B)を、一括に溶融混練して製造する方法、
(3)重合体(A1)及び重合体(A2)と共重合体(B)を逐次的に混合装置へ装入した後、溶融混練して製造する方法、
(4)多段重合により、重合体(A2)と共重合体(B)とからなるポリプロピレン樹脂成分(C)を製造し、前記ポリプロピレン樹脂成分(C)と重合体(A1)とを混合して製造する方法
等が挙げられ、これらの中でも、樹脂組成物中の共重合体(B)の分散性に優れる方法(4)が好ましい。
【0042】
上記に記載の溶融混練としては、従来公知の方法及び装置を用いて行うことができる。例えば、重合体(A1)及び重合体(A2)と共重合体(B)と各種添加剤とを、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、タンブルミキサー等の混合装置を用いて混合した後、溶融混練する方法や、定量供給機を用いて、一定の割合で、重合体(A1)及び重合体(A2)と共重合体(B)と各種添加剤とをそれぞれ連続的に供給することで均質な混合物を得た後、該混合物を単軸又は二軸以上の押出機、バンバリーミキサー、ロール式混練機等を用いて溶融混練する方法が挙げられる。
【0043】
上記の溶融混練の温度は、180℃〜350℃であることが好ましい。より好ましくは、180℃〜320℃であり、更に好ましくは、180℃〜300℃である。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、通常工業的に用いられている方法で成形することにより成形物を得ることができる。成形方法としては、例えば、押出成形法、ブロー成形法、射出成形法、圧縮成形法、カレンダ成形法等が挙げられる。
【0045】
本発明の樹脂組成物の用途としては、例えば、各種自動車材料、家電材料、家具等が挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明について実施例及び比較例を用いて説明する。なお、発明の詳細な説明及び実施例及び比較例における各項目の測定値は、下記の方法で測定した。
【0047】
(1)極限粘度([η]、単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2、及び、0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対してプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。還元粘度はテトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定を行った。
【0048】
(2)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS−K−7210に規定された方法に従って、測定した。特に断りのない限り、測
定温度230℃で、荷重2.16kgで測定した。
【0049】
(3)重量平均分子量(Mw)及び、分子量分布(Mw/Mn)
GPCによって、下記条件により重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、さらにそれらの比(Mw/Mn)を算出した。
機種:ウォーターズ社製150C型
カラム:TSK−GEL GMH6−HT 7.5Φmm×300mm×3本
測定温度:140℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン
測定濃度:5mg/5ml
【0050】
(4)異種結合割合(単位:モル%)
重合体中の「全プロピレン単位中の2,1−挿入及び1,3−挿入に起因する異種結合の割合」は、下記の条件で測定した13C−NMRスペクトルから、Tsutsuiらの報告(POLYMER, 30, 1350 (1989))に基づいて求めた。10mmΦの試験管中で約250mgのプロピレン重合体を2.5mlのオルソジクロロベンゼンに均一に溶解させて試料を調製し、その試料の13C−NMRスペクトルを下記の条件下で測定した。
機種:Bruker AVANCE600 10mmクライオプローブ
測定温度:130℃
パルス繰り返し時間:4秒
パルス幅:45°
積算回数:700回
【0051】
(5)重合により第1工程で重合体(A1)または重合体(A2)を、第2工程で共重合体(B)を生成させることにより得られるポリプロピレン樹脂成分(C)中の重合体(A1)または重合体(A2)の極限粘度([η]A)、及び、共重合体(B)の極限粘度([η]B)
前段重合(第1工程)により製造された重合体(A1)または重合体(A2)の極限粘度([η]A)は、上記(1)の方法で、第1工程終了後に重合槽内より取り出した重合サンプルの極限粘度を測定することにより求めた。
後段(第2工程)で得られた共重合体(B)の極限粘度([η]B)は以下の方法で求めた。後段終了後に得られたポリプロピレン樹脂成分(C)の重合パウダーの極限粘度([η]C)を上記(1)の方法により測定し、ポリプロピレン樹脂成分(C)に対する共重合体(B)の重量比率(Y)を用いて次式から計算により求めた(共重合体(B)の重量比率(Y)は、下記(6)に記載の方法で求めた)
[η]B={[η]C−(1−Y)×[η]A2}/Y
[η]A:前段(第1工程)で生成した重合体(A1)または重合体(A2)の極限粘度
[η]C:後段(第2工程)終了後に得られたポリプロピレン樹脂成分(C)の極限粘度
Y:後段終了後に得られたポリプロピレン樹脂成分(C)に対する共重合体(B)の重量比率
【0052】
(6)ポリプロピレン樹脂成分(C)に対する共重合体(B)の重量比率(Y)、及び、共重合体(B)中のエチレン含量(重量%)
後段終了後に得られたポリプロピレン樹脂成分(C)に対する共重合体(B)の重量比率(Y)、及び、共重合体(B)中のエチレン含量(重量%)は下記条件で測定した13C−NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(Macromolecules 1982、15、1150−1152)に基づいて求めた。10mmΦの試験管中で約200mgのポリマーサンプルを3mLのオルトジクロロベンゼンに均一に溶解させて試料を調製し、その試料の13C−NMRスペクトルを下記条件下で測定した。
機種:Bruker AVANCE600 10mmクライオプローブ
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:4.3秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
【0053】
(7)引張破断伸び(UE、単位:%)
サンプル厚みを2mmにした成形体を用い、A.S.T.M.D638に従って、下記条件で測定した。
測定温度:23℃
引張速度:50mm/分
【0054】
(8)せん断粘度
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを使用して、下記条件で測定した。
測定温度:220℃
L/D:40
せん断速度:2.432×103sec-1
【0055】
(9)揮発性物質量の測定(単位:ppm)
HS−GC/FID分析装置を用いて下記の条件下で試料中の揮発性物質の量を測定した。試料ガスのGCへの注入から20分間に検出された成分すべてをn−ヘプタンと見做し、その合算量を測定した。
HS(ヘッドスペース)条件
測定装置:HEADSPACE Autosampler7000(Tekmar社製)
加熱温度/時間:120℃/60分
試料量:0.5g
GC条件
測定装置:GC−14A(島津製作所製)
カラム:DB−WAX 0.53mm(内径)×60m(長さ)×1.0μm(厚み)
オーブン:50℃で試料ガスを注入し、5℃/分の昇温速度で100℃まで昇温し、さらに 20℃/min昇温速度で230℃まで昇温し、5分間保持した。
検出器:水素炎イオン化検出器(230℃)
【0056】
(10)オリゴマー量の測定(単位:ppm)
ポリプロピレン樹脂組成物を100μm厚みのプレスシートとし、そのシート1gをテトラヒドロフラン10ml中で1時間超音波抽出し、GC/FID分析装置を用いて下記条件でオリゴマー成分の量を測定した。検出されたオリゴマー成分すべてをn−ペンタデカンと見做し、その合計量を定量した。
測定装置:GC−2010(島津製作所製)
カラム:無極性 0.53mm(内径)×15m(長さ)×1.5μm(厚み)
オーブン:100℃で注入し、そのまま1分間保持した後、10℃/分の昇温速度で310℃まで昇温し、20分間保持した。
キャリアーガス:ヘリウム 10ml/分
試料液注入量:2μl
インジェクション温度:310℃
【0057】
(11)フィルムのn−ヘキサン抽出量(単位:重量%)
FDA177.1520(d)(3)(ii)に記載の方法に従って、厚み100μmのフィルムの50℃、n−ヘキサン抽出量を測定した。
【0058】
(12)フォギング(単位:%)
下記条件下においてフォギング性試験を行い、ガラス表面のグロスとヘイズを測定し、それぞれ実験前後での値を比較した。
測定装置:スガ試験機 ウィンドウスクリーンフォギングテスター WF−2型
加熱条件:120℃
冷却条件:25℃
時間:20時間
試料量:5g
【0059】
実施例または比較例では、以下に示した製造の方法で作成した樹脂を用いた。
(製造例1)重合体(A1)−1
特開2002−012734の実施例に記載のプロピレン単独重合体(HPP)の重合方法に従い、重合時の水素濃度を調整することにより極限粘度3.0dl/gのプロピレン重合体を得た。ついで、このプロピレン重合体100重量部に対し、ステアリン酸カルシウム0.05重量部、有機過酸化物として1,3−ビス(ターシャリブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン0.22重量部とを均一に混合し、二軸混練押出機(商品名 KZW15−45MG、同方向回転型スクリュー15mm×45L/D、テクノベル社製)を用いて、設定温度250℃で溶融混練してペレット化し、重合体((A1)−1)を得た。得られた重合体((A1)−1)の極限粘度は0.73dl/gであり、Mw/Mnは2.0であった。
【0060】
(製造例2)重合体(A1)−2
製造例1と同様に、特開2002−012734の実施例に記載のプロピレン単独重合体(HPP)の重合方法に従い、重合時の水素濃度を調整することにより極限粘度1.0dl/g、Mw/Mnが3.7である重合体((A1)−2)を得た。
【0061】
(製造例3)重合体(A1)−3
特開2002−012734の実施例に記載のプロピレン単独重合体(HPP)の重合方法に従い、重合時の水素濃度を調整することにより極限粘度2.8dl/gのプロピレン重合体を得た。ついで、このプロピレン重合体100重量部に対し、ステアリン酸カルシウム0.05重量部、有機過酸化物として1,3−ビス(ターシャリブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン0.24重量部とを均一に混合し、二軸混練押出機(商品名 KZW15−45MG、同方向回転型スクリュー15mm×45L/D、テクノベル社製)を用いて、設定温度250℃で溶融混練してペレット化し、重合体((A1)−3)を得た。得られた重合体((A1)−3)の極限粘度は0.71dl/gであり、Mw/Mnは1.9であった。
【0062】
重合体(A1)−4
極限粘度が0.51dl/gであり、Mw/Mnは2.4であるMF650X(Basell Polyplefins社製)を用いた。
【0063】
(製造例4)重合体((A2)−1)
製造例1と同様に、特開2002−012734の実施例に記載のプロピレン単独重合体(HPP)の重合方法に従い、重合時の水素濃度を調整することにより極限粘度2.9dl/g、Mw/Mnが3.6である重合体((A2)−1)を得た。
【0064】
(製造例5)ポリプロピレン樹脂成分(C)−1
減圧乾燥、アルゴンガスにより置換後、冷却した内容積3リットルの攪拌機付きステンレス製オートクレーブ内を真空とし、トリエチルアルミニウム4.4ミリモル、シクロヘキシル−エチル−ジメトシキシラン0.44ミリモル、及び、特開2002−182981の実施例1(2)記載の固体触媒成分11.1ミリグラムをガラスチャージャー内のヘプタン中で接触させた後、前記オートクレーブ内に一括に投入し、さらに液化プロピレン780グラムを投入した後、水素を280mmHgを前記記載のオートクレーブに仕込んで、70℃まで昇温しプロピレンの重合を開始した。重合開始20分後、未反応のプロピレンをオートクレーブ外へパージした。オートクレーブをアルゴンで置換した後、少量のポリマーをサンプリングした(第1工程)。サンプリングしたホモポリプロピレンの極限粘度([η]A)は2.7dl/gであった。サンプリング後、オートクレーブの温度を55℃に調整し、エチレンガスを2.5NL/分、及び、プロピレンガスを6.0NL/分の流速でオートクレーブ内に流通させることで、エチレン−プロピレン共重合体の重合を開始した。60分後、エチレン、及び、プロピレンガスの流通を止め、重合を終了した(第2工程)。最終的に得られたポリプロピレン樹脂成分(C)−1の収量は289gであり、極限粘度([η]C)は2.9dl/gであった。13C−NMRより計算される(C)−1中の共重合体(B)−1の含有量は53重量%であり、共重合体(B)−1中のエチレン含量は38重量%、極限粘度([η]B)は3.1dl/gであった。
【0065】
(製造例6)ポリプロピレン樹脂成分(C)−2
固体触媒成分の添加量を11.3ミリグラム、前段(第1工程)で添加する水素量を6840mmHgに変更した以外、製造例1と同様の方法によって行った。第1工程でサンプリングしたホモポリプロピレンの極限粘度([η]A)は1.0dl/gであった。最終的に得られたポリマーの収量は332gであり、ポリプロピレン樹脂成分(C)−2の極限粘度([η]C)は1.9dl/gであった。13C−NMRより計算される(C)−2中の共重合体(B)−2の含有量は36重量%であり、共重合体(B)−2のエチレン含量は38重量%、極限粘度([η]B)は3.4dl/gであった。
【0066】
(製造例7)ポリプロピレン樹脂成分(C)−3
固体触媒成分の添加量を11.0ミリグラムに変更した以外、製造例5と同様の方法によって行った。第1工程でサンプリングしたホモポリプロピレンの極限粘度([η]A)は3.4dl/gであった。最終的に得られたポリマーの収量は287gであり、ポリプロピレン樹脂成分(C)−3の極限粘度([η]C)は3.0dl/gであった。13C−NMRより計算される(C)−3中の共重合体(B)−3の含有量は57重量%であり、共重合体(B)−3のエチレン含量は29重量%、極限粘度([η]B)は2.8dl/gであった。
【0067】
(製造例8)ポリプロピレン樹脂成分(C)−4
固体触媒成分の添加量を12.6ミリグラムに変更した以外、製造例5と同様の方法によって行った。第1工程でサンプリングしたホモポリプロピレンの極限粘度([η]A)は2.9dl/gであった。最終的に得られたポリマーの収量は320gであり、ポリプロピレン樹脂成分(C)−4の極限粘度([η]C)は2.8dl/gであった。13C−NMRより計算される(C)−4中の共重合体(B)−4の含有量は54重量%であり、共重合体(B)−4のエチレン含量は28重量%、極限粘度([η]B)は2.8dl/gであった。
【0068】
(製造例9)ポリプロピレン樹脂成分(C)−5
固体触媒成分の添加量を12.0ミリグラム、後段(第2工程)の重合時間を30分に変更した以外、製造例5と同様の方法によって行った。第1工程でサンプリングしたホモポリプロピレンの極限粘度([η]A)は2.9dl/gであった。最終的に得られたポリマーの収量は237gであり、ポリプロピレン樹脂成分(C)−5の極限粘度([η]C)は2.9dl/gであった。13C−NMRより計算される(C)−5中の共重合体(B)−5の含有量は38重量%であり、共重合体(B)−5のエチレン含量は30重量%、極限粘度([η]B)は2.8dl/gであった。
【0069】
(製造例10)ポリプロピレン樹脂成分(C)−6
固体触媒成分の添加量を14.2ミリグラム、後段(第2工程)の重合時間を20分に変更した以外、製造例5と同様の方法によって行った。第1工程でサンプリングしたホモポリプロピレンの極限粘度([η]A)は3.0dl/gであった。最終的に得られたポリマーの収量は233gであり、ポリプロピレン樹脂成分(C)−6の極限粘度([η]C)は2.9dl/gであった。13C−NMRより計算される(C)−6中の共重合体(B)−6の含有量は31重量%であり、共重合体(B)−6のエチレン含量は31重量%、極限粘度([η]B)は2.7dl/gであった。
【0070】
(製造例11)ポリプロピレン樹脂成分(C)−7
固体触媒成分の添加量を13.7ミリグラム、後段(第2工程)の重合時間を15分に変更した以外、製造例5と同様の方法によって行った。第1工程でサンプリングしたホモポリプロピレンの極限粘度([η]A)は3.1dl/gであった。最終的に得られたポリマーの収量は194gであり、ポリプロピレン樹脂成分(C)−7の極限粘度([η]C)は2.9dl/gであった。13C−NMRより計算される(C)−7中の共重合体(B)−7の含有量は24重量%であり、共重合体(B)−7のエチレン含量は33重量%、極限粘度([η]B)は2.3dl/gであった。
【0071】
(製造例12)ポリプロピレン樹脂成分(C)−8
固体触媒成分の添加量を16.2ミリグラム、前段(第1工程)の水素を350mmHg、後段(第2工程)の重合時間を11分に変更した以外、製造例5と同様の方法によって行った。第1工程でサンプリングしたホモポリプロピレンの極限粘度([η]A)は2.6dl/gであった。最終的に得られたポリマーの収量は228gであり、ポリプロピレン樹脂成分(C)−8の極限粘度([η]C)は2.7dl/gであった。13C−NMRより計算される(C)−8中の共重合体(B)−8の含有量は16重量%であり、共重合体(B)−8のエチレン含量は36重量%、極限粘度([η]B)は3.1dl/gであった。
【0072】
(製造例13)ポリプロピレン樹脂成分(C)−9
固体触媒成分の添加量を8.6ミリグラム、前段(第1工程)の水素を4940mmHg、前段(第1工程)の重合時間を30分とした以外、製造例5と同様の方法によって行った。第1工程でサンプリングしたホモポリプロピレンの極限粘度([η]A)は1.1dl/gであった。最終的に得られたポリマーの収量は294gであり、ポリプロピレン樹脂成分(C)−9の極限粘度([η]C)は1.5dl/gであった。13C−NMRより計算される(C)−9中の共重合体(B)−9の含有量は30重量%であり、共重合体(B)−9のエチレン含量は37重量%、極限粘度([η]B)は2.6dl/gであった。
【0073】
(製造例14)ポリプロピレン樹脂成分(C)−10
固体触媒成分の添加量を7.6ミリグラム、前段(第1工程)の水素を4940mmHg、前段(第1工程)の重合時間を30分とし、後段(第2工程)の重合温度を57℃に変更した以外、製造例5と同様の方法によって行った。第1工程でサンプリングしたホモポリプロピレンの極限粘度([η]A)は1.1dl/gであった。最終的に得られたポリマーの収量は272gであり、ポリプロピレン樹脂成分(C)−10の極限粘度([η]C)は1.7dl/gであった。13C−NMRより計算される(C)−10中の共重合体(B)−10の含有量は28重量%であり、共重合体(B)−10のエチレン含量は39重量%、極限粘度([η]B)は3.5dl/gであった。
【0074】
[実施例1]
重合体(A1)−1を60重量%、重合体(A2)−1を5重量%、ポリプロピレン樹脂成分(C)−1を35重量%、及び各種安定剤(住友化学(株)製 スミライザーGA80、スミライザーGP)を均一混合し、二軸混練押出機(商品名 KZW15−45MG、同方向回転型スクリュー15mm×45L/D、テクノベル社製)を用いて、設定温度200℃、スクリュー回転速度500rpmの条件で溶融混練して、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表1および表2に示した。
【0075】
[比較例1]
プロピレン重合体(A1)−2を44重量%、ポリプロピレン樹脂成分(C)−2を56重量%用い、実施例1と同様の方法によって樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表1および表2に示した。
【0076】
[比較例2]
重合体(A1)−1の配合量を48重量%、重合体(A2)−1の配合量を17重量%に変更した以外は、実施例1に記載の方法と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表1および表2に示した。
【0077】
[実施例2]
プロピレン重合体(A1)−3を80重量%、ポリプロピレン樹脂成分(C)−3を20重量%用い、実施例1と同様の方法によって樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表1および表2に示した。
【0078】
[実施例3]
プロピレン重合体(A1)−3を60重量%、ポリプロピレン樹脂成分(C)−4を40重量%用い、実施例1と同様の方法によって樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表1および表2に示した。
【0079】
[比較例3]
プロピレン重合体(A1)−4を50重量%、ポリプロピレン樹脂成分(C)−3を50重量%用い、実施例1と同様の方法によって樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表1および表2に示した。
【0080】
[実施例4]
プロピレン重合体(A1)−3を68重量%、ポリプロピレン樹脂成分(C)−6を32重量%用い、実施例1と同様の方法によって樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表1および表2に示した。
【0081】
[実施例5]
プロピレン重合体(A1)−4を58重量%、ポリプロピレン樹脂成分(C)−7を42重量%用い、実施例1と同様の方法によって樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表1および表2に示した。
【0082】
[実施例6]
プロピレン重合体(A1)−3を74重量%、ポリプロピレン樹脂成分(C)−5を26重量%用い、実施例1と同様の方法によって樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表1および表2に示した。
【0083】
[比較例4]
プロピレン重合体(A1)−4を42重量%、ポリプロピレン樹脂成分(C)−8を58重量%用い、実施例1と同様の方法によって樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表1および表2に示した。
【0084】
[比較例5]
プロピレン重合体(A1)−3を68重量%、ポリプロピレン樹脂成分(C)−9を32重量%用い、実施例1と同様の方法によって樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表1および表2に示した。
【0085】
[比較例6]
プロピレン重合体(A1)−3を64重量%、ポリプロピレン樹脂成分(C)−10を36重量%用い、実施例1と同様の方法によって樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表1および表2に示した。
【0086】
本発明の要件を満足する実施例1は、流動性と引張破断伸びとのバランスに優れ、n−ヘキサン抽出量が少ないことが分かる。
これに対して、本発明の要件である重合体(A1)のMw/Mnを満たさず、重合体(A2)を含まない比較例1は引張破断伸びが小さく、発明の要件であるMFRを満たさない比較例2〜4はせん断粘度が高く、流動性が不十分であり、本発明の要件である重合体(A2)の極限粘度を満たさない比較例5、および6は、引張破断伸びが小さことが分かる。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記重合体(A1)20〜80重量%、下記重合体(A2)5〜55重量%、および下記共重合体(B)10〜50重量%を含み(但し、重合体(A1)、重合体(A2)及び共重合体(B)の合計の重量を100重量%とする。)、230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が20g/10分以上である樹脂組成物。
重合体(A1):135℃のテトラリン中で測定される極限粘度([η]A1)が0.5dl/g以上、2.0dl/g未満であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.0未満であり、かつプロピレンに由来する構造単位の含有量が90重量%以上であるプロピレン重合体
重合体(A2):135℃のテトラリン中で測定される極限粘度([η]A2)が2.0dl/g以上、7.0dl/g以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.0以上であり、かつプロピレンに由来する構造単位の含有量が90重量%以上であるプロピレン重合体
共重合体(B):エチレンに由来する構造単位の含有量が20〜80重量%である、エチレンとプロピレンまたは炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体
【請求項2】
樹脂組成物に含まれ重量平均分子量(Mw)が21000以下である成分の含有量が5.0重量%未満である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
重合体(A1)は、13C−NMRスペクトルによって測定される全プロピレン単位中の2,1−挿入および1,3−挿入に起因する異種結合の割合が0.01%以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
多段重合により、重合体(A2)と共重合体(B)とからなるポリプロピレン樹脂成分(C)を製造し、前記ポリプロピレン樹脂成分(C)と重合体(A1)とを混合することにより製造されることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
多段重合により、重合体(A2)と共重合体(B)とからなるポリプロピレン樹脂成分(C)を製造する工程、および前記ポリプロピレン樹脂成分(C)と重合体(A1)とを混合して、樹脂組成物を製造する工程を含む請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4いずれかに記載の樹脂組成物からなる成形体。

【公開番号】特開2013−79375(P2013−79375A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−207887(P2012−207887)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】