説明

樹脂組成物、樹脂シート及び積層構造体

【課題】接着対象部材に対する接着性が良好であり、更に硬化後の硬化物の耐水性及び耐湿性に優れている樹脂組成物及び樹脂シートを提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂組成物及び樹脂シートはそれぞれ、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられる。本発明に係る樹脂組成物及び樹脂シートはそれぞれ、エポキシ基又はオキセタン基を有する硬化性化合物と、硬化剤と、フィラーと、エポキシ基を有する第1のシランカップリング剤と、炭素数4〜12のアルキル基を有する第2のシランカップリング剤とを含む。本発明に係る樹脂シートは、上記成分に加えて、重量平均分子量が1万以上であるポリマーをさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられるペースト状の樹脂組成物及び樹脂シートに関し、より詳細には、接着性が高く、かつ硬化後の硬化物の耐水性及び耐湿性が良好である樹脂組成物及び樹脂シート、並びに該樹脂組成物又は樹脂シートを用いた積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器及び通信機器では、絶縁層を有するプリント配線板が用いられている。該絶縁層は、ペースト状又はシート状の絶縁接着材料を用いて形成されている。
【0003】
上記絶縁接着材料の一例として、下記の特許文献1には、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、硬化促進剤、エラストマー及び無機充填剤を含む接着剤組成物を、ガラスクロスに含浸させた絶縁接着シートが開示されている。
【0004】
ガラスクロスを含まない絶縁接着材料も知られている。例えば、下記の特許文献2の実施例には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノールノボラック、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びアルミナを含む絶縁接着剤が開示されている。ここでは、エポキシ樹脂の硬化剤としては、3級アミン、酸無水物、イミダゾール化合物、ポリフェノール樹脂及びマスクイソシアネート等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−342238号公報
【特許文献2】特開平8−332696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の絶縁接着シートでは、ハンドリング性を高めるために、ガラスクロスが用いられている。ガラスクロスを含む絶縁接着シートでは、薄膜化が困難であり、かつレーザー加工又はドリル穴開け加工等の各種加工が困難である。また、ガラスクロスを含む絶縁接着シートの硬化物の熱伝導率は比較的低いため、充分な放熱性が得られないことがある。さらに、ガラスクロスに接着剤組成物を含浸させるために、特殊な含浸設備を用意しなければならない。
【0007】
特許文献2に記載の絶縁接着剤では、ガラスクロスが用いられていないため、未硬化状態ではそれ自体が自立性を有するシートではない。このため、絶縁接着剤のハンドリング性が低い。
【0008】
さらに、特許文献1に記載の絶縁接着シートでは、シランカップリング剤が用いられていないため、絶縁接着シートの接着性が低かったり、硬化後の硬化物の耐水性及び耐湿性が低かったりすることがある。また、特許文献2に記載の絶縁接着剤では、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが用いられているものの、このシランカップリング剤を用いただけでは、絶縁接着剤の接着性、及び硬化物の耐水性及び耐湿性を充分に高くすることは困難である。
【0009】
本発明の目的は、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられ、接着対象部材に対する接着性が良好であり、更に硬化後の硬化物の耐水性及び耐湿性に優れている樹脂組成物及び樹脂シート、並びに該樹脂組成物又は樹脂シートを用いた積層構造体を提供することである。
【0010】
本発明の限定的な目的は、接着性と硬化後の硬化物の耐水性及び耐湿性とが良好であるだけでなく、未硬化状態でのハンドリング性に優れている樹脂シート、並びに該樹脂シートを用いた積層構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられるペースト状の樹脂組成物であって、エポキシ基又はオキセタン基を有する硬化性化合物と、硬化剤と、フィラーと、エポキシ基を有する第1のシランカップリング剤と、炭素数4〜12のアルキル基を有する第2のシランカップリング剤とを含む、樹脂組成物が提供される。
【0012】
また、本発明の他の広い局面によれば、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられる樹脂シートであって、重量平均分子量が1万以上であるポリマーと、重量平均分子量が1万未満であり、かつエポキシ基又はオキセタン基を有する硬化性化合物と、硬化剤と、フィラーと、エポキシ基を有する第1のシランカップリング剤と、炭素数4〜12のアルキル基を有する第2のシランカップリング剤とを含む、樹脂シートが提供される。
【0013】
本発明に係る樹脂組成物及び樹脂シートは、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられ、ペースト状の樹脂組成物又は樹脂シートである絶縁材料である。本発明に係る樹脂組成物及び本発明に係る樹脂シートは、ペースト状又はシート状の絶縁材料である。本発明に係る樹脂組成物及び本発明に係る樹脂シートはいずれも、エポキシ基又はオキセタン基を有する硬化性化合物と、硬化剤と、フィラーと、エポキシ基を有する第1のシランカップリング剤と、炭素数4〜12のアルキル基を有する第2のシランカップリング剤とを含むことに主な特徴を有する。
【0014】
上記第2のシランカップリング剤は、炭素数6〜10の直鎖アルキル基を有することが好ましい。
【0015】
上記フィラーは、アルミナ、合成マグネサイト、結晶性シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0016】
上記ポリマーは、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が3万以上であるポリマーであることが好ましい。
【0017】
上記硬化性化合物は、芳香族骨格とエポキシ基とを有し、かつ重量平均分子量が600以下であるエポキシモノマー、又は芳香族骨格とオキセタン基とを有し、かつ重量平均分子量が600以下であるオキセタンモノマーを含有することが好ましい。
【0018】
上記ポリマーと上記硬化性化合物と上記硬化剤と上記第1のシランカップリング剤と上記第2のシランカップリング剤とを含む樹脂シート中の樹脂成分の合計100重量%中、上記ポリマーの含有量が20重量%以上、60重量%以下、上記硬化性化合物の含有量が10重量%以上、60重量%以下であることが好ましい。
【0019】
上記ポリマーはフェノキシ樹脂であることが好ましい。
【0020】
上記硬化剤は、フェノール樹脂、ジシアンジアミド又は芳香族骨格もしくは脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物であることが好ましい。上記硬化剤は、多脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物、又はテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られた脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物であることが好ましい。上記硬化剤は、下記式(1)〜(4)の内のいずれかで表される酸無水物であることが好ましい。
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
上記式(4)中、R1及びR2はそれぞれ水素、炭素数1〜5のアルキル基又は水酸基を示す。
【0026】
本発明に係る積層構造体は、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体と、該熱伝導体の少なくとも一方の表面に積層された絶縁層と、該絶縁層の上記熱伝導体が積層された表面とは反対側の表面に積層された導電層とを備えており、上記絶縁層が、本発明に従って構成された樹脂組成物又は樹脂シートを硬化させることにより形成されている。
【0027】
上記熱伝導体は金属であることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る樹脂組成物及び本発明に係る樹脂シートはいずれも、エポキシ基又はオキセタン基を有する硬化性化合物と、硬化剤と、フィラーと、エポキシ基を有する第1のシランカップリング剤と、炭素数4〜12のアルキル基を有する第2のシランカップリング剤とを含むので、樹脂組成物及び樹脂シートの接着対象部材に対する接着性を良好にすることができる。さらに、硬化後の硬化物の耐水性及び耐湿性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る積層構造体を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0031】
本発明に係る樹脂組成物及び本発明に係る樹脂シートはいずれも、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられる。
【0032】
本発明に係る樹脂組成物及び本発明に係る樹脂シートはいずれも、エポキシ基又はオキセタン基を有する硬化性化合物(B)と、硬化剤(C)と、フィラー(D)と、エポキシ基を有する第1のシランカップリング剤(E1)と、炭素数4〜12のアルキル基を有する第2のシランカップリング剤(E2)とを含む。本発明に係る樹脂シートは、重量平均分子量が1万以上であるポリマー(A)をさらに含む。本発明に係る樹脂組成物は、重量平均分子量が1万以上であるポリマー(A)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。本発明に係る樹脂シートでは、上記エポキシ基又はオキセタン基を有する硬化性化合物(B)の重量平均分子量は1万未満である。
【0033】
上記のような用途に用いられる樹脂組成物及び樹脂シートの硬化物には、熱伝導率が高いことが求められる。従って、フィラー(D)が用いられている。
【0034】
上記組成の採用により、樹脂組成物及び樹脂シートの接着対象部材である導電層及び熱伝導体に対する接着性を高くすることができる。この結果、樹脂組成物の硬化物及び樹脂シートの硬化物の接着対象部材である導電層及び熱伝導体に対する接着性が高くなる。さらに、樹脂組成物の硬化物及び樹脂シートの硬化物の耐水性及び耐湿性を高くすることができる。更に、上記組成の採用により、未硬化状態での樹脂シートのハンドリング性を高めることもできる。上記のような用途に用いられる樹脂シートには、未硬化状態においてハンドリング性が高いことが求められる。
【0035】
以下、先ず本発明に係る樹脂組成物及び本発明に係る樹脂シートに含まれている各成分の詳細を説明する。
【0036】
(ポリマー(A))
本発明に係る樹脂シートに含まれているポリマー(A)は、重量平均分子量が1万以上であれば特に限定されない。ポリマー(A)は、芳香族骨格を有することが好ましい。この場合には、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。ポリマー(A)が芳香族骨格を有する場合には、芳香族骨格をポリマー全体のいずれかの部分に有していればよく、主鎖骨格内に有していてもよく、側鎖中に有していてもよい。ポリマー(A)は、芳香族骨格を主鎖骨格内に有することが好ましい。この場合には、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。ポリマー(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
上記芳香族骨格は特に限定されない。上記芳香族骨格の具体例としては、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びビスフェノールA型骨格等が挙げられる。なかでも、ビフェニル骨格又はフルオレン骨格が好ましい。この場合には、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0038】
ポリマー(A)として、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂等を用いることができる。
【0039】
上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、特に限定されない。上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルケトン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂として、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミド、ベンゾオキサジン、及びポリベンゾオキサゾールとベンゾオキサジンとの反応物などのスーパーエンプラと呼ばれている耐熱性樹脂群等を使用できる。上記熱可塑性樹脂及び上記熱硬化性樹脂はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の内のいずれか一方が用いられてもよく、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とが併用されてもよい。
【0040】
ポリマー(A)は、スチレン系重合体、(メタ)アクリル系重合体又はフェノキシ樹脂であることが好ましく、フェノキシ樹脂であることがより好ましい。この好ましいポリマーの使用により、硬化物の酸化劣化を防止でき、かつ耐熱性をより一層高めることができる。特に、フェノキシ樹脂の使用により、硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0041】
上記スチレン系重合体として、具体的には、スチレン系モノマーの単独重合体、又はスチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体等を用いることができる。中でも、スチレン−メタクリル酸グリシジルの構造を有するスチレン系重合体が好ましい。
【0042】
上記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン及び3,4−ジクロロスチレン等が挙げられる。
【0043】
上記アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル及びメタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0044】
上記フェノキシ樹脂は、具体的には、例えばエピハロヒドリンと2価フェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
【0045】
上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有することが好ましい。中でも、上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格及びビフェニル骨格からなる群から選択された少なくとも1種の骨格を有することがより好ましく、フルオレン骨格及びビフェニル骨格の内の少なくとも1種の骨格を有することが更に好ましい。これらの好ましい骨格を有するフェノキシ樹脂の使用により、硬化物の耐熱性がさらに一層高くなる。
【0046】
上記フェノキシ樹脂は、主鎖中に多環式芳香族骨格を有することが好ましい。また、上記フェノキシ樹脂は、下記式(11)〜(16)で表される骨格の内の少なくとも1つの骨格を主鎖中に有することがより好ましい。
【0047】
【化5】

【0048】
上記式(11)中、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Xは単結合、炭素数1〜7の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−、又は−CO−である。
【0049】
【化6】

【0050】
上記式(12)中、R1aは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、mは0〜5の整数である。
【0051】
【化7】

【0052】
上記式(13)中、R1bは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、lは0〜4の整数である。
【0053】
【化8】

【0054】
【化9】

【0055】
上記式(15)中、R及びRは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子であり、Xは−SO−、−CH−、−C(CH−、又は−O−であり、kは0又は1である。
【0056】
【化10】

【0057】
ポリマー(A)として、例えば、下記式(17)又は下記式(18)で表されるフェノキシ樹脂が好適に用いられる。
【0058】
【化11】

【0059】
上記式(17)中、Aは上記式(11)〜(13)の内のいずれかで表される構造を有し、かつその構成は上記式(11)で表される構造が0〜60モル%、上記式(12)で表される構造が5〜95モル%、及び上記式(13)で表される構造が5〜95モル%であり、Aは水素原子、又は上記式(14)で表される基であり、nは平均値で25〜500の数である。上記式(17)中、上記式(11)で表される構造は含まれていなくてもよい。
【0060】
【化12】

【0061】
上記式(18)中、Aは上記式(15)又は上記式(16)で表される構造を有し、nは少なくとも21以上の値である。
【0062】
ポリマー(A)のガラス転移温度Tgは、好ましくは60℃以上、より好ましくは90℃以上、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。ポリマー(A)のTgが上記下限以上であると、樹脂が熱劣化し難い。ポリマー(A)のTgが上記上限以下であると、ポリマー(A)と他の樹脂との相溶性が高くなる。この結果、未硬化状態での樹脂シートのハンドリング性がより一層良好になり、かつ硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0063】
ポリマー(A)がフェノキシ樹脂である場合には、フェノキシ樹脂のガラス転移温度Tgは、好ましくは95℃以上、より好ましくは110℃以上、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。フェノキシ樹脂のTgが上記下限以上であると、樹脂の熱劣化をより一層抑制できる。フェノキシ樹脂のTgが上記上限以下であると、フェノキシ樹脂と他の樹脂との相溶性が高くなる。この結果、未硬化状態での樹脂シートのハンドリング性、並びに硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0064】
ポリマー(A)の重量平均分子量は、10000以上である。ポリマー(A)の重量平均分子量は、好ましくは30000以上、より好ましくは40000以上、好ましくは1000000以下、より好ましくは250000以下である。ポリマー(A)の重量平均分子量が上記下限以上であると、樹脂組成物又は樹脂シートが熱劣化し難い。ポリマー(A)の重量平均分子量が上記上限以下であると、ポリマー(A)と他の樹脂との相溶性が高くなる。この結果、未硬化状態での樹脂シートのハンドリング性がより一層良好になり、並びに硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0065】
なお、本明細書において、重量平均分子量とは、重合体ではない場合、及び構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
【0066】
ポリマー(A)は、原材料として添加されていてもよく、本発明に係る樹脂組成物又は樹脂シートの作製時における攪拌、塗工及び乾燥などの各工程中における反応を利用して生成されたポリマーであってもよい。
【0067】
本発明に係る樹脂シートでは、ポリマー(A)と硬化性化合物(B)と硬化剤(C)と第1のシランカップリング剤(E1)と第2のシランカップリング剤(E2)とを含む樹脂シートに含まれている全樹脂成分(以下、全樹脂成分Xと略記することがある)の合計100重量%中、ポリマー(A)の含有量は20重量%以上、60重量%以下であることが好ましい。樹脂シートにおける全樹脂成分Xの合計100重量%中のポリマー(A)の含有量は、より好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以下である。ポリマー(A)の含有量が上記下限以上であると、未硬化状態での樹脂シートのハンドリング性がより一層良好になる。ポリマー(A)の含有量が上記上限以下であると、フィラー(D)の分散が容易になる。なお、全樹脂成分Xとは、ポリマー(A)、硬化性化合物(B)、硬化剤(C)、第1のシランカップリング剤(E1)、第2のシランカップリング剤(E2)及び必要に応じて添加される他の樹脂成分の総和をいう。全樹脂成分Xには、フィラー(D)は含まれない。なお、本発明に係る樹脂組成物がポリマー(A)を含まない場合には、全樹脂成分Xは、ポリマー(A)を含まず、硬化性化合物(B)と硬化剤(C)と第1のシランカップリング剤(E1)と第2のシランカップリング剤(E2)とを含む。
【0068】
本発明に係る樹脂組成物は、ポリマー(A)を含んでいなくてもよい。本発明に係る樹脂組成物がポリマー(A)を含む場合には、上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、ポリマー(A)の含有量は、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。樹脂組成物における全樹脂成分Xの合計100重量%中のポリマー(A)の含有量の下限は特に限定されないが、該ポリマー(A)の含有量は例えば0.1重量%以上である。ポリマー(A)の含有量が上記上限以下であると、フィラー(D)の分散が容易になり、更に樹脂組成物の塗工性が高くなる。
【0069】
(エポキシ基又はオキセタン基を有する硬化性化合物(B))
本発明に係る樹脂組成物及び樹脂シートに含まれている硬化性化合物(B)は、エポキシ基又はオキセタン基(オキセタニル基)を有していれば特に限定されない。但し、本発明に係る樹脂シートに含まれている硬化性化合物(B)の重量平均分子量は1万未満である。本発明に係る樹脂組成物に含まれている硬化性化合物(B)の重量平均分子量は、1万以上であってもよいが、1万未満であることが好ましい。重量平均分子量が1万未満である硬化性化合物(B)は、重量平均分子量が1万以上であるポリマー(A)と異なる。また、硬化性化合物(B)には、エポキシ基を有するシランカップリング剤(E1)は含まれない。エポキシ基又はオキセタン基を有する硬化性化合物(B)として、従来公知のエポキシ化合物又はオキセタン化合物を用いることができる。硬化性化合物(B)は、硬化剤(C)の作用により硬化する。硬化性化合物(B)は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
硬化性化合物(B)は、エポキシ基を有するエポキシ化合物(B1)を含んでいてもよく、オキセタン基を有するオキセタン化合物(B2)を含んでいてもよい。
【0071】
硬化物の耐熱性及び絶縁破壊特性をより一層高める観点からは、硬化性化合物(B)は、芳香族骨格を有することが好ましい。
【0072】
エポキシ基を有するエポキシ化合物(B1)の具体例としては、ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマー、ナフタレン骨格を有するエポキシモノマー、アダマンタン骨格を有するエポキシモノマー、フルオレン骨格を有するエポキシモノマー、ビフェニル骨格を有するエポキシモノマー、バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマー、キサンテン骨格を有するエポキシモノマー、アントラセン骨格を有するエポキシモノマー、及びピレン骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。これらの水素添加物又は変性物を用いてもよい。エポキシ化合物(B1)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
上記ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマーとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型又はビスフェノールS型のビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。
【0074】
上記ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマーとしては、ジシクロペンタジエンジオキシド、及びジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシモノマー等が挙げられる。
【0075】
上記ナフタレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリシジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、及び1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等が挙げられる。
【0076】
上記アダマンタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン、及び2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン等が挙げられる。
【0077】
上記フルオレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0078】
上記ビフェニル骨格を有するエポキシモノマーとしては、4,4’−ジグリシジルビフェニル、及び4,4’−ジグリシジル−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル等が挙げられる。
【0079】
上記バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,1’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、及び1,2’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン等が挙げられる。
【0080】
上記キサンテン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−2,7−ビス−オキシラニルメトキシ−9−フェニル−9H−キサンテン等が挙げられる。
【0081】
オキセタン基を有するオキセタン化合物(B2)の具体例としては、例えば、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、及びオキセタン変性フェノールノボラック等が挙げられる。オキセタン化合物(B2)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0082】
硬化性化合物(B)の重量平均分子量は、10000未満であることが好ましい。硬化性化合物(B)の重量平均分子量は、好ましくは200以上、より好ましくは600以下、更に好ましくは550以下である。硬化性化合物(B)の重量平均分子量が上記下限以上であると、硬化性化合物(B)の揮発性が低くなり、樹脂組成物及び樹脂シートの取扱い性がより一層高くなる。硬化性化合物(B)の重量平均分子量が上記上限以下であると、樹脂組成物及び樹脂シートの接着性がより一層高くなる。さらに、樹脂シートが固くかつ脆くなり難くなる。
【0083】
本発明に係る樹脂シートでは、上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、硬化性化合物(B)の含有量は10重量%以上、60重量%以下であることが好ましい。樹脂シートにおける全樹脂成分Xの合計100重量%中の硬化性化合物(B)の含有量は、より好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以下である。硬化性化合物(B)の含有量が上記下限以上であると、樹脂シートの接着性及び硬化物の耐熱性がより一層高くなる。硬化性化合物(B)の含有量が上記上限以下であると、樹脂シートのハンドリング性がより一層高くなる。
【0084】
本発明に係る樹脂組成物では、上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、硬化性化合物(B)の含有量は10重量%以上、80重量%以下であることが好ましい。樹脂組成物における全樹脂成分Xの合計100重量%中の硬化性化合物(B)の含有量は、より好ましくは20重量%以上、より好ましくは70重量%以下である。硬化性化合物(B)の含有量が上記下限以上であると、樹脂組成物の接着性及び硬化物の耐熱性がより一層高くなる。硬化性化合物(B)の含有量が上記上限以下であると、樹脂組成物の塗工性がより一層高くなる。
【0085】
硬化性化合物(B)は、芳香族骨格とエポキシ基とを有し、かつ重量平均分子量が600以下であるエポキシモノマー(B1b)、又は芳香族骨格とオキセタン基とを有し、かつ重量平均分子量が600以下であるオキセタンモノマー(B2b)を含有することが好ましい。
【0086】
硬化性化合物(B)は、エポキシモノマー(B1b)又はオキセタンモノマー(B2b)を、40重量%以上、100重量%以下で含むことが好ましい。硬化性化合物(B)は、エポキシモノマー(B1b)又はオキセタンモノマー(B2b)を、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは80重量%以上含むことが特に好ましい。エポキシモノマー(B1b)及びオキセタンモノマー(B2b)の含有量が上記下限以上であると、樹脂シートの柔軟性、樹脂組成物及び樹脂シートの接着性、並びに硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0087】
(硬化剤(C))
本発明に係る樹脂組成物及び樹脂シートに含まれている硬化剤(C)は、樹脂組成物又は樹脂シートを硬化させることが可能であれば特に限定されない。硬化剤(C)は、熱硬化剤であることが好ましい。硬化剤(C)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0088】
硬化剤(C)は、フェノール樹脂、ジシアンジアミド又は芳香族骨格もしくは脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物であることが好ましい。これらの硬化剤の使用により、耐熱性、耐湿性及び電気物性のバランスに優れた硬化物を得ることができる。これらの硬化剤は、熱硬化剤である。
【0089】
上記フェノール樹脂は特に限定されない。上記フェノール樹脂の具体例としては、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ−o−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−m−ヒドロキシフェニル)メタン、及びポリ(ジ−p−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。なかでも、樹脂シートの柔軟性及び硬化物の難燃性をより一層高める観点からは、メラミン骨格を有するフェノール樹脂、トリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂が好ましい。
【0090】
上記フェノール樹脂の市販品としては、MEH−8005、MEH−8010及びNEH−8015(以上いずれも明和化成社製)、YLH903(ジャパンエポキシレジン社(2010年4月1日に三菱化学に吸収合併)製)、LA―7052、LA−7054、LA−7751、LA−1356及びLA−3018−50P(以上いずれもDIC社製)、並びにPS6313及びPS6492(群栄化学社製)等が挙げられる。
【0091】
芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物は、特に限定されない。芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物としては、例えば、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、フェニルエチニルフタル酸無水物、グリセロールビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及びトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。なかでも、メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸が好ましい。メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸の使用により、硬化物の耐水性を高めることができる。
【0092】
上記芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、SMAレジンEF30、SMAレジンEF40、SMAレジンEF60及びSMAレジンEF80(以上いずれもサートマー・ジャパン社製)、ODPA−M及びPEPA(以上いずれもマナック社製)、リカシッドMTA−10、リカシッドMTA−15、リカシッドTMTA、リカシッドTMEG−100、リカシッドTMEG−200、リカシッドTMEG−300、リカシッドTMEG−500、リカシッドTMEG−S、リカシッドTH、リカシッドHT−1A、リカシッドHH、リカシッドMH−700、リカシッドMT−500、リカシッドDSDA及びリカシッドTDA−100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにEPICLON B4400、EPICLON B650、及びEPICLON B570(以上いずれもDIC社製)等が挙げられる。
【0093】
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、リカシッドHNA及びリカシッドHNA−100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにエピキュアYH306、エピキュアYH307、エピキュアYH308H及びエピキュアYH309(以上いずれもジャパンエポキシレジン社製)等が挙げられる。
【0094】
硬化剤(C)は、下記式(1)〜(4)の内のいずれかで表される酸無水物、又はジシアンジアミドであることがより好ましい。また、硬化剤(C)は、下記式(1)〜(4)の内のいずれかで表される酸無水物であることが好ましい。この好ましい硬化剤の使用により、硬化物の柔軟性、及び硬化物の耐湿性、並びに樹脂組成物及び樹脂シートの接着性がより一層高くなる。
【0095】
【化13】

【0096】
【化14】

【0097】
【化15】

【0098】
【化16】

【0099】
上記式(4)中、R1及びR2はそれぞれ水素、炭素数1〜5のアルキル基又は水酸基を示す。
【0100】
硬化速度又は硬化物の物性などを調整するために、上記硬化剤と硬化促進剤とを併用してもよい。
【0101】
上記硬化促進剤は特に限定されない。硬化促進剤の具体例としては、例えば、3級アミン、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリアジン類、有機リン系化合物、4級ホスホニウム塩類及び有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類等が挙げられる。また、上記硬化促進剤としては、有機金属化合物類、4級アンモニウム塩類及び金属ハロゲン化物等が挙げられる。上記有機金属化合物類としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫及びアルミニウムアセチルアセトン錯体等が挙げられる。
【0102】
上記硬化促進剤として、高融点のイミダゾール硬化促進剤、高融点の分散型潜在性硬化促進剤、マイクロカプセル型潜在性硬化促進剤、アミン塩型潜在性硬化促進剤、及び高温解離型かつ熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等を使用できる。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0103】
上記高融点の分散型潜在性促進剤としては、ジシアンジアミド又はアミンがエポキシモノマー等に付加されたアミン付加型促進剤等が挙げられる。上記マイクロカプセル型潜在性促進剤としては、イミダゾール系、リン系又はホスフィン系の促進剤の表面がポリマーにより被覆されたマイクロカプセル型潜在性促進剤が挙げられる。上記高温解離型かつ熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤としては、ルイス酸塩及びブレンステッド酸塩等が挙げられる。
【0104】
上記硬化促進剤は、高融点のイミダゾール系硬化促進剤であることが好ましい。高融点のイミダゾール系硬化促進剤の使用により、反応系を容易に制御でき、かつ樹脂組成物及び樹脂シートの硬化速度、及び硬化物の物性などをより一層容易に調整できる。融点100℃以上の高融点の硬化促進剤は、取扱性に優れている。従って、硬化促進剤の融点は100℃以上であることが好ましい。
【0105】
本発明に係る樹脂シートでは、上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、硬化剤(C)の含有量は10重量%以上、40重量%以下であることが好ましい。樹脂シートにおける全樹脂成分Xの合計100重量%中、硬化剤(C)の含有量は、より好ましくは12重量%以上、より好ましくは25重量%以下である。硬化剤(C)の含有量が上記下限以上であると、樹脂シートを充分に硬化させることが容易である。硬化剤(C)の含有量が上記上限以下であると、硬化に関与しない余剰な硬化剤(C)が発生し難くなる。このため、硬化物の耐熱性、並びに樹脂シートの接着性がより一層高くなる。
ことが好ましい。
【0106】
本発明に係る樹脂組成物では、上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、硬化剤(C)の含有量は10重量%以上、50重量%以下であることが好ましい。樹脂組成物における全樹脂成分Xの合計100重量%中、硬化剤(C)の含有量は、より好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以下である。硬化剤(C)の含有量が上記下限以上であると、樹脂組成物を充分に硬化させることが容易である。硬化剤(C)の含有量が上記上限以下であると、硬化に関与しない余剰な硬化剤(C)が発生し難くなる。このため、硬化物の耐熱性、並びに樹脂組成物の接着性がより一層高くなる。
【0107】
(フィラー(D))
本発明に係る樹脂組成物及び樹脂シートに含まれているフィラー(D)は特に限定されない。フィラー(D)として、従来公知のフィラーを用いることができる。フィラー(D)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0108】
フィラー(D)の熱伝導率は10W/m・K以上であることが好ましい。このフィラーの使用により、硬化物の熱伝導性を高めることができる。この結果、硬化物の放熱性が高くなる。フィラー(D)の熱伝導率が10W/m・Kよりも小さいと、硬化物の熱伝導性を充分に高めることは困難である。フィラー(D)の熱伝導率は、好ましくは15W/m・K以上、より好ましくは20W/m・K以上である。フィラー(D)の熱伝導率の上限は特に限定されない。熱伝導率300W/m・K程度の無機フィラーは広く知られており、また熱伝導率200W/m・K程度の無機フィラーは容易に入手できる。
【0109】
硬化物の放熱性をより一層高める観点からは、フィラー(D)は、無機フィラーであることが好ましい。
【0110】
フィラー(D)は、アルミナ、合成マグネサイト、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、タルク、マイカ及びハイドロタルサイトからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0111】
フィラー(D)は、アルミナ、合成マグネサイト、結晶性シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることがより好ましく、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが更に好ましい。これらの好ましいフィラーの使用により、硬化物の放熱性をより一層高めることができる。
【0112】
フィラー(D)は、球状アルミナ、破砕アルミナ及び球状窒化アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種であることがより好ましく、球状アルミナ又は球状窒化アルミニウムであることがさらに好ましい。これらの好ましいフィラーの使用により、硬化物の放熱性をより一層高めることができる。
【0113】
フィラー(D)の新モース硬度は、好ましくは3.1以上、より好ましくは4以上、好ましくは14以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは7以下である。フィラー(D)の新モース硬度が上記下限以上であると、樹脂シートの硬化物の熱伝導性と加工性とを高いレベルで両立できる。フィラー(D)の新モース硬度が上記上限以下であると、硬化物の高い熱伝導性と高い加工性とを両立することが容易である。
【0114】
硬化物の弾性率をかなり低くする観点からは、フィラー(D)の新モース硬度は、9以下であることが好ましく、7以下であることが特に好ましい。
【0115】
新モース硬度が7以下であるので、フィラー(D)は、合成マグネサイト、結晶シリカ、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0116】
フィラー(D)は球状のフィラーであってもよく、破砕されたフィラーであってもよい。フィラー(D)は、球状であることが特に好ましい。球状フィラーの場合には、高密度で充填可能であるため、硬化物の放熱性をより一層高めることができる。
【0117】
上記破砕されたフィラーとしては、破砕アルミナ等が挙げられる。破砕されたフィラーは、例えば、一軸破砕機、二軸破砕機、ハンマークラッシャー又はボールミル等を用いて、塊状の無機物質を破砕することにより得られる。破砕されたフィラーの使用により、樹脂組成物及び樹脂シート中のフィラーが、橋掛け又は効率的に近接された構造となりやすい。従って、硬化物の熱伝導性をより一層高めることができる。また、破砕されたフィラーは、一般的に、通常のフィラーに比べて安価である。このため、破砕されたフィラーの使用により、樹脂組成物及び樹脂シートのコストを低減できる。
【0118】
破砕されたフィラーの平均粒子径は、12μm以下であることが好ましい。平均粒子径が12μmを超えると、樹脂シート中に、破砕されたフィラーを高密度に分散させることができず、樹脂シートの硬化物の絶縁破壊特性が低下することがある。破砕されたフィラーの平均粒子径は、より好ましくは10μm以下、好ましくは1μm以上である。破砕されたフィラーの平均粒子径が小さすぎると、破砕されたフィラーを高密度に充填させることが困難となることがある。
【0119】
破砕されたフィラーのアスペクト比は、特に限定されない。破砕されたフィラーのアスペクト比は、1.5以上、20以下であることが好ましい。アスペクト比が1.5未満のフィラーは、比較的高価である。従って、樹脂シートのコストが高くなる。上記アスペクト比が20以下であると、破砕されたフィラーの充填が容易である。
【0120】
破砕されたフィラーのアスペクト比は、例えば、デジタル画像解析方式粒度分布測定装置(商品名:FPA、日本ルフト社製)を用いて、フィラーの破砕面を測定することにより求めることができる。
【0121】
フィラー(D)が球状のフィラーである場合には、球状のフィラーの平均粒子径は、0.1μm以上、40μm以下であることが好ましい。平均粒子径が0.1μm以上であると、フィラー(D)を高密度で容易に充填できる。平均粒子径が40μm以下であると、硬化物の絶縁破壊特性がより一層高くなる。
【0122】
上記「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
【0123】
樹脂シート100体積%中及び樹脂組成物100体積%中、フィラー(D)の含有量はそれぞれ、20体積%以上、90体積%以下であることが好ましい。フィラー(D)の含有量が上記範囲内であると、硬化物の放熱性がより一層高くなり、更に樹脂シートのハンドリング性がより一層良好になる。硬化物の放熱性をより一層高める観点からは、樹脂シート100体積%中及び樹脂組成物100体積%中のフィラー(D)の含有量は、より好ましくは30体積%以上、更に好ましくは35体積%以上、より好ましくは85体積%以下、更に好ましくは80体積%以下、特に好ましくは70体積%以下、最も好ましくは60体積%以下である。フィラー(D)の含有量が上記下限以上であると、硬化物の放熱性がより一層高くなる。フィラー(D)の含有量が上記上限以下であると、樹脂シートのハンドリング性がより一層高くなり、かつ樹脂組成物の貯蔵安定性がより一層高くなる。
【0124】
(第1のシランカップリング剤(E1)及び第2のシランカップリング剤(E2))
本発明に係る樹脂組成物及び本発明に係る樹脂シートはそれぞれ、エポキシ基を有する第1のシランカップリング剤(E1)と、炭素数4〜12のアルキル基を有する第2のシランカップリング剤(E2)とを含む。この第1,第2のシランカップリング剤(E1)(E2)を併用することにより、樹脂組成物及び樹脂シートの硬化物の耐水性及び耐湿性、並びに樹脂組成物及び樹脂シートの接着対象部材に対する接着性がかなり高くなる。また、第1,第2のシランカップリング剤(E1)(E2)の使用により、フィラー(D)の凝集を抑制でき、かつ硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性をより一層高めることができる。
【0125】
第1のシランカップリング剤(E1)は、エポキシ化合物(B1)と異なる。第1のシランカップリング剤(E1)としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン等が挙げられる。これら以外のエポキシ基を有するシランカップリング剤を用いてもよい。第1のシランカップリング剤(E1)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0126】
第2のシランカップリング剤(E2)は、炭素数4〜12のアルキル基を有するシランカップリング剤である。第2のシランカップリング剤(E2)は、第1のシランカップリング剤(E1)と異なることが好ましい。上記炭素数4〜12のアルキル基は、直鎖であってもよく、分岐構造を有していてもよい。該炭素数4〜12のアルキル基としては、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基及び2−エチルヘキシル基等が挙げられる。第2のシランカップリング剤(E2)における上記炭素数4〜12のアルキル基は、アルキル基の直鎖部分の炭素数が4〜12であることが好ましい。例えば、2−エチルヘキシル基の炭素数は8であり、直鎖部分の炭素数は6である。第2のシランカップリング剤(E2)は、炭素数4〜12の直鎖アルキル基を有することが好ましい。
【0127】
硬化物の耐水性及び耐湿性をより一層高める観点からは、第2のシランカップリング剤(E2)は、好ましくは炭素数5以上のアルキル基を有し、より好ましくは炭素数6以上のアルキル基を有し、好ましくは炭素数10以下のアルキル基を有し、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基を有する。硬化物の耐水性及び耐湿性をより一層高める観点からは、第2のシランカップリング剤(E2)は、炭素数6〜10の直鎖アルキル基を有することが好ましい。
【0128】
第2のシランカップリング剤(E2)の具体例としては、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、イソペンチルトリメトキシシラン、ネオペンチルトリメトキシシラン、t−ペンチルトリメトキシシラン、イソへキシルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘプチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、イソペンチルトリエトキシシラン、ネオペンチルトリエトキシシラン、t−ペンチルトリエトキシシラン、イソへキシルトリエトキシシラン及び2−エチルヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。これら以外の炭素数4〜12のアルキル基を有するシランカップリング剤を用いてもよい。第2のシランカップリング剤(E2)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0129】
本発明に係る樹脂シートでは、上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、第1のシランカップリング剤(E1)と第2のシランカップリング剤(E2)との合計の含有量は0.01重量%以上、20重量%以下であることが好ましい。樹脂シートにおける全樹脂成分Xの合計100重量%中、第1,第2のシランカップリング剤(E1),(E2)の合計の含有量は、より好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは10重量%以下である。第1,第2のシランカップリング剤(E1),(E2)の合計の含有量が上記下限以上であると、樹脂シートの硬化物の絶縁性と、耐水及び耐湿性と、接着性とがより一層高くなる。第1,第2のシランカップリング剤(E1),(E2)の合計の含有量が上記上限以下であると、樹脂シートの硬化物の耐熱性がより一層高くなる。さらに、第1,第2のシランカップリング剤(E1),(E2)の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、フィラー(D)の凝集をより一層抑制でき、かつ硬化物の熱伝導性、絶縁破壊特性、耐水性、耐湿性及び接着性をより一層高めることができる。
【0130】
本発明に係る樹脂組成物では、上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、第1のシランカップリング剤(E1)と第2のシランカップリング剤(E2)との合計の含有量は0.05重量%以上、20重量%以下であることが好ましい。樹脂組成物における全樹脂成分Xの合計100重量%中、第1,第2のシランカップリング剤(E1),(E2)の合計の含有量は、より好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは15重量%以下である。第1,第2のシランカップリング剤(E1),(E2)の合計の含有量が上記下限以上であると、樹脂組成物の硬化物の絶縁性と、耐水及び耐湿性と、接着性とがより一層高くなる。第1,第2のシランカップリング剤(E1),(E2)の合計の含有量が上記上限以下であると、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0131】
本発明に係る樹脂シート及び本発明に係る樹脂組成物ではいずれも、第1のシランカップリング剤(E1)と第2のシランカップリング剤(E2)とを重量比で、99:1〜1:99で含むことが好ましく、90:10〜10:90で含むことがより好ましく、80:20〜20:80で含むことが特に好ましい。第1のシランカップリング剤(E1)の含有量が相対的に多くなると、硬化物の接着性がより一層良好になる。第2のシランカップリング剤(E2)の含有量が相対的に多くなると、硬化物の耐水及び耐湿性がより一層良好になる。
【0132】
(他の成分)
本発明に係る樹脂組成物及び樹脂シートは、ゴム粒子を含んでいてもよい。該ゴム粒子の使用により、樹脂シート、樹脂組成物の硬化物及び樹脂シートの硬化物の応力緩和性及び柔軟性を高めることができる。
【0133】
本発明に係る樹脂組成物及び樹脂シートは、分散剤を含んでいてもよい。該分散剤の使用により、硬化物の熱伝導率及び絶縁破壊特性をより一層高めることができる。
【0134】
上記分散剤は、水素結合性を有する水素原子を含む官能基を有することが好ましい。上記分散剤が水素結合性を有する水素原子を含む官能基を有することで、硬化物の熱伝導率及び絶縁破壊特性をより一層高めることができる。上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基としては、例えば、カルボキシル基(pKa=4)、リン酸基(pKa=7)、及びフェノール基(pKa=10)等が挙げられる。
【0135】
上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基のpKaは、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、好ましくは10以下、より好ましくは9以下である。上記官能基のpKaが上記下限以上であると、上記分散剤の酸性度が高くなりすぎない。従って、樹脂組成物及び樹脂シートの貯蔵安定性がより一層高くなる。上記官能基のpKaが上記上限以下であると、上記分散剤としての機能が充分に果たされ、硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性がより一層高くなる。
【0136】
上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基は、カルボキシル基又はリン酸基であることが好ましい。この場合には、硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性がさらに一層高くなる。
【0137】
上記分散剤としては、具体的には、例えば、ポリエステル系カルボン酸、ポリエーテル系カルボン酸、ポリアクリル系カルボン酸、脂肪族系カルボン酸、ポリシロキサン系カルボン酸、ポリエステル系リン酸、ポリエーテル系リン酸、ポリアクリル系リン酸、脂肪族系リン酸、ポリシロキサン系リン酸、ポリエステル系フェノール、ポリエーテル系フェノール、ポリアクリル系フェノール、脂肪族系フェノール、及びポリシロキサン系フェノール等が挙げられる。上記分散剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0138】
樹脂組成物100重量%中及び樹脂シート100重量%中、上記分散剤の含有量はそれぞれ、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記分散剤の含有量が上記下限以上及び上限以下であると、フィラー(D)の凝集を抑制でき、かつ硬化物の放熱性及び絶縁破壊特性をより一層高めることができる。
【0139】
ハンドリング性をより一層高めるために、本発明に係る樹脂シートに、ガラスクロス、ガラス不織布、アラミド不織布等の基材物質を含んでいてもよい。ただし、上記基材物質を含まなくても、樹脂シートは室温(23℃)において自立性を有し、かつ優れたハンドリング性を有する。よって、樹脂シートは基材物質を含まないことが好ましく、特にガラスクロスを含まないことが好ましい。樹脂シートが上記基材物質を含まない場合には、樹脂シートの厚みを薄くすることができ、かつ硬化物の熱伝導性をより一層高めることができる。さらに、樹脂シートが上記基材物質を含まない場合には、必要に応じて樹脂シートにレーザー加工又はドリル穴開け加工等の各種加工を容易に行うこともできる。なお、自立性とは、PETフィルム又は銅箔といった支持体が存在しなくても、シートの形状を保持し、シートとして取り扱うことができることをいう。
【0140】
さらに、本発明に係る樹脂組成物及び樹脂シートは、必要に応じて、粘着性付与剤、可塑剤、チキソ性付与剤、難燃剤、光増感剤及び着色剤などを含んでいてもよい。
【0141】
本発明に係る樹脂組成物及び樹脂シートはそれぞれ、溶剤を含まないか、又は溶剤を5重量%以下で含むことが好ましい。本発明に係る樹脂組成物及び樹脂シート100重量%中、溶剤の含有量は、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下である。本発明に係る樹脂組成物及び樹脂シートはそれぞれ、溶剤を含有しないことが最も好ましい。溶剤の含有量が少ないと、溶剤を除去するために乾燥工程を必要としなかったり、乾燥に必要な熱量を少なくしたりすることができる。溶剤の含有量が少ないと、硬化時の溶剤の揮発量が少なくなり、環境負荷を低減できる。さらに、樹脂組成物及び樹脂シートの取り扱い性が高くなる。
【0142】
(樹脂組成物及び樹脂シート)
本発明に係る樹脂組成物及び樹脂シートはそれぞれ、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられる。
【0143】
本発明に係る樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。本発明に係る樹脂組成物は、例えば、上述した材料を混合することにより得ることができる。
【0144】
本発明に係る樹脂シートの製造方法は特に限定されない。樹脂シートは、例えば、上述した材料を混合した混合物を溶剤キャスト法又は押し出し成膜法等の方法でシート状に成形することにより得ることができる。シート状に成形する際に、脱泡することが好ましい。
【0145】
樹脂シートの厚みは特に限定されない。樹脂シートの厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは70μm以上、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは120μm以下である。厚みが上記下限以上であると、樹脂シートの硬化物の絶縁性が高くなる。厚みが上記上限以下であると、熱伝導体を導電層に接着したときに放熱性が高くなる。
【0146】
未硬化状態での樹脂組成物及び樹脂シートのガラス転移温度Tgはそれぞれ、25℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が25℃以下であると、樹脂シートが室温において固く、かつ脆くなり難い。このため、未硬化状態での樹脂シートのハンドリング性が高くなる。
【0147】
樹脂組成物及び樹脂シートの硬化物の熱伝導率は、好ましくは0.7W/m・K以上、より好ましくは1.0W/m・K以上、更に好ましくは1.5W/m・K以上である。熱伝導率が上記下限以上であると、硬化物の放熱性が充分に高くなる。
【0148】
樹脂組成物及び樹脂シートの硬化物の絶縁破壊電圧は、好ましくは30kV/mm以上、より好ましくは40kV/mm以上、更に好ましくは50kV/mm以上、特に好ましくは80kV/mm以上、最も好ましくは100kV/mm以上である。絶縁破壊電圧が低すぎると、樹脂組成物及び樹脂シートが例えば電力素子用のような大電流用途に用いられた場合に、絶縁性が低くなることがある。
【0149】
本発明に係る樹脂組成物は、スクリーン印刷、ディスペンサー又はスピンコーター等を用いて塗工可能である。本発明に係る樹脂組成物は、スクリーン印刷に用いられることが好ましい。本発明に係る樹脂組成物は、スクリーン印刷用樹脂組成物であることが好ましい。
【0150】
(積層構造体)
本発明に係る樹脂シートは、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体の少なくとも片面に、絶縁層を介して導電層が積層されている積層構造体の絶縁層を構成するために好適に用いられる。
【0151】
図1に、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物又は樹脂シートを用いた積層構造体の一例を示す。
【0152】
図1に示す積層構造体1は、熱伝導体2と、熱伝導体2の一方の表面2aに積層された絶縁層3と、絶縁層3の熱伝導体2が積層された表面とは反対側の他方の表面に積層された導電層4とを備える。絶縁層3は、本発明に係る樹脂シートを硬化させることにより形成されている。熱伝導体2の熱伝導率は10W/m・K以上である。
【0153】
熱伝導体2の少なくとも一方の表面2aに、絶縁層3と導電層4とがこの順に積層されていればよく、熱伝導体2の他方の表面2bにも、絶縁層と導電層とがこの順に積層されていてもよい。
【0154】
積層構造体1では、絶縁層3が高い熱伝導率を有するので、導電層4側からの熱が絶縁層3を介して熱伝導体2に伝わりやすい。積層構造体1では、熱伝導体2によって熱を効率的に放散させることができる。
【0155】
例えば、両面に銅回路が設けられた積層板又は多層配線板、銅箔、銅板、半導体素子又は半導体パッケージ等の各導電層に、樹脂組成物又は樹脂シートを介して金属体を接着した後、樹脂組成物又は樹脂シートを硬化させることにより、積層構造体1を得ることができる。
【0156】
上記熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体は特に限定されない。上記熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体としては、例えば、アルミニウム、銅、アルミナ、ベリリア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム及びグラファイトシート等が挙げられる。中でも、上記熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体は、銅又はアルミニウムであることが好ましい。銅又はアルミニウムは、放熱性に優れている。
【0157】
本発明に係る樹脂組成物又は樹脂シートは、基板上に半導体素子が実装されている半導体装置の導電層に、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を接着するために好適に用いられる。
【0158】
本発明に係る樹脂組成物又は樹脂シートは、半導体素子以外の電子部品素子が基板上に搭載されている電子部品装置の導電層に、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を接着するためにも好適に用いられる。
【0159】
半導体素子が大電流用の電力用デバイス素子である場合には、樹脂シートの硬化物には、絶縁性又は耐熱性等により一層優れていることが求められる。従って、このような用途に、本発明に係る樹脂組成物又は樹脂シートは好適に用いられる。
【0160】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0161】
以下の材料を用意した。
【0162】
[ポリマー(A)]
(1)ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:E1256、Mw=51000、Tg=98℃)
(2)高耐熱フェノキシ樹脂(東都化成社製、商品名:FX−293、Mw=43700、Tg=163℃)
(3)エポキシ基含有スチレン樹脂(日油社製、商品名:マープルーフG−1010S、Mw=100000、Tg=93℃)
【0163】
[エポキシ基を有するエポキシ化合物(B1)]
(1)ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート828US、Mw=370)
(2)ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート806L、Mw=370)
(3)3官能グリシジルジアミン型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート630、Mw=300)
(4)フルオレン骨格エポキシ樹脂(大阪ガスケミカル社製、商品名:オンコートEX1011、Mw=486)
(5)ナフタレン骨格液状エポキシ樹脂(DIC社製、商品名:EPICLON HP−4032D、Mw=304)
(6)ヘキサヒドロフタル酸骨格液状エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:AK−601、Mw=284)
(7)ビスフェノールA型固体状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:1003、Mw=1300)
【0164】
[オキセタン基を有するオキセタン化合物(B2)]
(1)ベンゼン骨格含有オキセタン樹脂(宇部興産社製、商品名:エタナコールOXTP、Mw=362.4)
【0165】
[硬化剤(C)]
(1)脂環式骨格酸無水物(新日本理化社製、商品名:MH−700)
(2)芳香族骨格酸無水物(サートマー・ジャパン社製、商品名:SMAレジンEF60)
(3)多脂環式骨格酸無水物(新日本理化社製、商品名:HNA−100)
(4)テルペン系骨格酸無水物(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピキュアYH−306)
(5)ビフェニル骨格フェノール樹脂(明和化成社製、商品名:MEH−7851−S)
(6)アリル基含有骨格フェノール樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:YLH−903)
(7)トリアジン骨格系フェノール樹脂(DIC社製、商品名:フェノライトKA−7052−L2)
(8)メラミン骨格系フェノール樹脂(群栄化学工業社製、商品名:PS−6492)
(9)ジシアンジアミド
【0166】
[フィラー(D)]
(1)5μm破砕アルミナ(破砕フィラー、日本軽金属社製、商品名:LT300C、平均粒子径5μm、最大粒子径15μm、熱伝導率36W/m・K、新モース硬度12)
(2)2μm破砕アルミナ(破砕フィラー、日本軽金属社製、商品名:LS−242C、平均粒子径2μm、最大粒子径20μm、熱伝導率36W/m・K、新モース硬度12)
(3)6μm破砕窒化アルミニウム(破砕フィラー、東洋アルミニウム社製、商品名:FLC、平均粒子径6μm、最大粒子径20μm、熱伝導率200W/m・K、新モース硬度11)
(4)球状アルミナ(デンカ社製、商品名:DAM−10、平均粒子径10μm、最大粒子径30μm、熱伝導率36W/m・K、新モース硬度12)
(5)合成マグネサイト(神島化学社製、商品名:MSL、平均粒子径6μm、最大粒子径20μm、熱伝導率15W/m・K、新モース硬度3.5)
(6)窒化アルミニウム(東洋アルミニウム社製、商品名:TOYALNITE―FLX、平均粒子径14μm、最大粒子径30μm、熱伝導率200W/m・K、新モース硬度11)
(7)結晶シリカ(龍森社製、商品名:クリスタライトCMC−12、平均粒子径5μm、最大粒子径20μm、熱伝導率10W/m・K、新モース硬度7)
(8)炭化ケイ素(信濃電気製錬社製、商品名:シナノランダムGP#700、平均粒子径17μm、最大粒子径70μm、熱伝導率125W/m・K、新モース硬度13)
(9)酸化亜鉛(堺化学工業社製、商品名:LPZINC−5、平均粒子径5μm、最大粒子径20μm、熱伝導率54W/m・K、新モース硬度5)
(10)酸化マグネシウム(堺化学工業社製、商品名:SMO Large Particle、平均粒子径1.1μm、最大粒子径7μm、熱伝導率35W/m・K、新モース硬度6)
(11)マイカ(山口雲母工業所社製、商品名:SJ005、平均粒子径5μm、新モース硬度2.7)
(12)タルク(日本タルク社製、商品名:K−1、平均粒子径8μm、新モース硬度1)
【0167】
[第1のシランカップリング剤(E1)]
(1)エポキシシランカップリング剤1(信越化学工業社製、商品名:KBE403)
(2)エポキシシランカップリング剤2(信越化学工業社製、商品名:KBM303)
(3)エポキシシランカップリング剤3(信越化学工業社製、商品名:KBM403)
【0168】
[第2のシランカップリング剤(E2)]
(1)ヘキシルシランカップリング剤(炭素数6のn−ヘキシル基を有する、東京化成工業社製、商品名:ヘキシルトリメトキシシラン)
(2)オクチルシランカップリング剤(炭素数8のn−オクチル基を有する、東京化成工業社製、商品名:n―オクチルトリエトキシシラン)
(3)デシルシランカップリング剤(炭素数10のn−デシル基を有する、信越化学工業社製、商品名:KBM3103−C)
【0169】
[第1,第2のシランカップリング剤(E1),(E2)以外のシランカップリング剤]
(1)アミノシランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM903)
(2)メルカプトシランカップリング剤(東京化成工業社製、商品名:(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシラン)
【0170】
[分散剤]
(1)アクリル系分散剤(ビックケミージャパン社製、商品名:Disperbyk−2070、pKaが4のカルボキシル基を有する)
(2)ポリエーテル系分散剤(楠本化成社製、商品名:ED151、pKaが7のリン酸基を有する)
【0171】
[溶剤]
メチルエチルケトン
【0172】
(実施例1〜31及び比較例1〜7)
ホモディスパー型撹拌機を用いて、下記の表1〜5に示す割合(配合単位は重量部)で各原料を配合し、混練し、絶縁材料である樹脂組成物を調製した。
【0173】
(実施例32〜64及び比較例8〜14)
ホモディスパー型攪拌機を用いて、下記の表6〜10に示す割合(配合単位は重量部)で各原料を配合し、混練し、絶縁組成物を調製した。
【0174】
厚み50μmの離型PETシートに、上記絶縁組成物を100μmの厚みになるように塗工し、90℃のオーブン内で30分乾燥して、PETシート上に絶縁材料である樹脂シートを作製した。
【0175】
(評価)
(1−1)未硬化状態の樹脂組成物の塗工性
樹脂組成物を用いて、室温(23℃)でPETシート上にアプリケーターを用いて塗工したときの塗工性を下記の基準で評価した。
【0176】
[塗工性の判定基準]
〇:樹脂組成物の流動性が良く、容易に塗工可能
△:樹脂組成物を塗工できるものの、フィラー凝集によるスジ又はムラが発生する
×:樹脂組成物を塗工できない
【0177】
(1−2)未硬化状態の樹脂シートのハンドリング性
PETシートと、該PETシート上に形成された樹脂シートとを有する積層シートを460mm×610mmの大きさに切り出して、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを用いて、室温(23℃)でPETシートから熱硬化前の樹脂シートを剥離したときのハンドリング性を下記の基準で評価した。
【0178】
[ハンドリング性の判定基準]
〇:樹脂シートの変形がなく、容易に剥離可能
△:樹脂シートを剥離できるものの、シート伸び又は破断が発生する
×:樹脂シートを剥離できない
【0179】
(2)ガラス転移温度
示差走査熱量測定装置「DSC220C」(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、3℃/分の昇温速度で、未硬化状態での樹脂組成物及び未硬化状態での樹脂シートのガラス転移温度を測定した。
【0180】
(3)熱伝導率
京都電子工業社製熱伝導率計「迅速熱伝導率計QTM−500」を用いて、樹脂組成物の硬化物及び樹脂シートの熱伝導率を測定した。
【0181】
なお、熱伝導率の測定に用いた樹脂組成物の硬化物は、厚み50μmの離型PETシート上に、上記樹脂組成物を100μmの厚みになるように塗工し、次に120℃で1時間、その後200℃で1時間、樹脂組成物を硬化させて作製した。
【0182】
(4)耐水性
厚み1.5mmのアルミニウム板と厚み35μmの電解銅箔との間に樹脂組成物(厚み100μm)又は樹脂シートを挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間、樹脂組成物又は樹脂シートをプレス硬化し、銅張り積層板を形成した。得られた銅張り積層板を100mm×100mmの大きさに切り出し、銅箔を剥がし、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを沸騰した浴槽に24時間浸した後、アルミニウム板からの硬化物の膨れ又は剥がれの発生の有無により、耐水性を評価した。耐水性を下記の基準で判定した。
【0183】
[耐水性の判定基準]
○○:24時間後、変化なし
○: 24時間後、四隅に1mm以下の膨れあり
△: 24時間後、全面に1mm以下の膨れあり
×: 24時間後、全面に1mm以上の膨れ、もしくは剥離あり
【0184】
(5)耐湿性
厚み1.5mmのアルミニウム板と厚み35μmの電解銅箔との間に樹脂組成物(厚み100μm)又は樹脂シートを挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間、樹脂組成物又は樹脂シートをプレス硬化し、銅張り積層板を形成した。得られた銅張り積層板を100mm×100mmの大きさに切り出し、銅箔を剥がし、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを121℃、2気圧及び相対湿度100%条件のオートクレーブ中で24時間放置した後、アルミニウム板からの硬化物の膨れ又は剥がれの発生の有無により、耐湿性を評価した。耐湿性を下記の基準で判定した。
【0185】
[耐湿性の判定基準]
○○:24時間後、変化なし
○: 24時間後、四隅に1mm以下の膨れあり
△: 24時間後、全面に1mm以下の膨れあり
×: 24時間後、全面に1mm以上の膨れ、もしくは剥離あり
【0186】
(6)半田耐熱試験(耐熱性)
厚み1.5mmのアルミニウム板と厚み35μmの電解銅箔との間に樹脂組成物(厚み100μm)又は樹脂シートを挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間、樹脂組成物又は樹脂シートをプレス硬化し、銅張り積層板を形成した。得られた銅張り積層板を50mm×60mmの大きさに切り出し、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを288℃の半田浴に銅箔側を下に向けて浮かべ、銅箔の膨れ又は剥がれが発生するまでの時間を測定し、以下の基準で判定した。
【0187】
[半田耐熱試験の判定基準]
○○:10分経過しても膨れ及び剥離の発生なし
〇:3分経過後、かつ10分経過する前に膨れ又は剥離が発生
△:1分経過後、かつ3分経過する前に膨れ又は剥離が発生
×:1分経過する前に膨れ又は剥離が発生
【0188】
(7)絶縁破壊電圧(耐電圧性)
厚み50μmの離型PETシート上に、上記樹脂組成物を100μmの厚みになるように塗工し、次に120℃で1時間、その後200℃で1時間、樹脂組成物を硬化させて、樹脂組成物を用いたテストサンプルを作製した。
【0189】
また、樹脂シートを100mm×100mmの大きさに切り出して、120℃で1時間、その後200℃で1時間硬化させ、樹脂シートを用いたテストサンプルを得た。
【0190】
耐電圧試験器(MODEL7473、EXTECH Electronics社製)を用いて、テストサンプル(樹脂組成物の硬化物又は樹脂シートの硬化物)間に1kV/秒の速度で電圧が上昇するように、交流電圧を印加した。樹脂組成物又は樹脂シートの硬化物が破壊した電圧を、絶縁破壊電圧とした。
【0191】
(8)接着力(接着性)
厚み1.5mmのアルミニウム板と厚み35μmの電解銅箔との間に樹脂組成物(厚み100μm)又は樹脂シートを挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間、樹脂組成物又は樹脂シートをプレス硬化し、銅張り積層板を形成した。得られた銅張り積層板の銅箔をエッチングして幅10mmの銅箔の帯を形成し、テストサンプルを得た。
【0192】
引っ張り試験機(エー・アンド・デイ社製、万能試験機テンシロンRTF)を用いて、銅箔をアルミニウム板に対して90℃の角度で50mm/分の引っ張り速度で剥離した際の引き剥がし強さを測定し、得られた測定値を樹脂組成物又は樹脂シートの接着力とした。
【0193】
結果を下記の表1〜10に示す。なお、下記の表1〜10において、※1は、「全樹脂成分X100重量%中の含有量(重量%)」を示す。※2は、「樹脂組成物100体積%又は樹脂シート100体積%中の含有量(体積%)」を示す。
【0194】
【表1】

【0195】
【表2】

【0196】
【表3】

【0197】
【表4】

【0198】
【表5】

【0199】
【表6】

【0200】
【表7】

【0201】
【表8】

【0202】
【表9】

【0203】
【表10】

【符号の説明】
【0204】
1…積層構造体
2…熱伝導体
2a…第1の表面
2b…第2の表面
3…絶縁層
4…導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられるペースト状の樹脂組成物であって、
エポキシ基又はオキセタン基を有する硬化性化合物と、
硬化剤と、
フィラーと、
エポキシ基を有する第1のシランカップリング剤と、
炭素数4〜12のアルキル基を有する第2のシランカップリング剤とを含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記第2のシランカップリング剤が、炭素数6〜10の直鎖アルキル基を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記フィラーが、アルミナ、合成マグネサイト、結晶性シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化性化合物が、芳香族骨格とエポキシ基とを有し、かつ重量平均分子量が600以下であるエポキシモノマー、又は芳香族骨格とオキセタン基とを有し、かつ重量平均分子量が600以下であるオキセタンモノマーを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記硬化剤が、フェノール樹脂、ジシアンジアミド又は芳香族骨格もしくは脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化剤が、多脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物、又はテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られた脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物である、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記硬化剤が、下記式(1)〜(4)の内のいずれかで表される酸無水物である、請求項6に記載の樹脂組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

上記式(4)中、R1及びR2はそれぞれ水素、炭素数1〜5のアルキル基又は水酸基を示す。
【請求項8】
熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられる樹脂シートであって、
重量平均分子量が1万以上であるポリマーと、
重量平均分子量が1万未満であり、かつエポキシ基又はオキセタン基を有する硬化性化合物と、
硬化剤と、
フィラーと、
エポキシ基を有する第1のシランカップリング剤と、
炭素数4〜12のアルキル基を有する第2のシランカップリング剤とを含む、樹脂シート。
【請求項9】
前記第2のシランカップリング剤が、炭素数6〜10の直鎖アルキル基を有する、請求項8に記載の樹脂シート。
【請求項10】
前記フィラーが、アルミナ、合成マグネサイト、結晶性シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種である、請求項8又は9に記載の樹脂シート。
【請求項11】
前記ポリマーが、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が3万以上であるポリマーである、請求項8〜10のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項12】
前記硬化性化合物が、芳香族骨格とエポキシ基とを有し、かつ重量平均分子量が600以下であるエポキシモノマー、又は芳香族骨格とオキセタン基とを有し、かつ重量平均分子量が600以下であるオキセタンモノマーを含有する、請求項8〜11のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項13】
前記ポリマーと前記硬化性化合物と前記硬化剤と前記第1のシランカップリング剤と前記第2のシランカップリング剤とを含む樹脂シート中の樹脂成分の合計100重量%中、前記ポリマーの含有量が20重量%以上、60重量%以下、前記硬化性化合物の含有量が10重量%以上、60重量%以下である、請求項8〜12のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項14】
前記ポリマーがフェノキシ樹脂である、請求項8〜13のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項15】
前記硬化剤が、フェノール樹脂、ジシアンジアミド又は芳香族骨格もしくは脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物である、請求項8〜14のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項16】
前記硬化剤が、多脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物、又はテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られた脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物である、請求項15に記載の樹脂シート。
【請求項17】
前記硬化剤が、下記式(1)〜(4)の内のいずれかで表される酸無水物である、請求項16に記載の樹脂シート。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

上記式(4)中、R1及びR2はそれぞれ水素、炭素数1〜5のアルキル基又は水酸基を示す。
【請求項18】
熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体と、
前記熱伝導体の少なくとも一方の表面に積層された絶縁層と、
前記絶縁層の前記熱伝導体が積層された表面とは反対側の表面に積層された導電層とを備え、
前記絶縁層が、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を硬化させることにより形成されている、積層構造体。
【請求項19】
熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体と、
前記熱伝導体の少なくとも一方の表面に積層された絶縁層と、
前記絶縁層の前記熱伝導体が積層された表面とは反対側の表面に積層された導電層とを備え、
前記絶縁層が、請求項8〜17のいずれか1項に記載の樹脂シートを硬化させることにより形成されている、積層構造体。
【請求項20】
前記熱伝導体が金属である、請求項18又は19に記載の積層構造体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−77172(P2012−77172A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222867(P2010−222867)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】