説明

樹脂組成物、樹脂ワニス、プリプレグ、金属張積層板、及びプリント配線板

【課題】PPEの有する優れた誘電特性を維持したまま、ワニス状にしたときの粘度が低く、硬化物の耐熱性に優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】数平均分子量が500〜3000の、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が1〜3である低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と、数平均分子量が1000以下の、分子中のハロゲン濃度が0.5質量%未満の、1分子中に平均2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)と、硬化促進剤(C)とを含み、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基が、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基1個当たり1〜10個であることを特徴とする樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の絶縁材料等に好適に用いられる樹脂組成物、前記樹脂組成物を含有する樹脂ワニス、前記樹脂ワニスを用いて得られたプリプレグ、前記プリプレグを用いて得られた金属張積層板、及び前記プリプレグを用いて製造されたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器は、情報処理量の増大に伴い、搭載される半導体デバイスの高集積化、配線の高密度化、及び多層化等の実装技術が急速に進展している。各種電子機器において用いられるプリント配線板等の絶縁材料には、信号の伝送速度を高め、信号伝送時の損失を低減させるために、誘電率及び誘電正接が低いことが求められる。
【0003】
ポリフェニレンエーテル(PPE)は、MHz帯からGHz帯という高周波数帯(高周波領域)においても誘電率や誘電正接等の誘電特性が優れているので、高周波数帯を利用する電子機器のプリント配線板等の絶縁材料に好ましく用いられる。しかしながら、高分子量のPPEは、一般的に融点が高いため、粘度が高く、流動性が低い傾向がある。そして、このようなPPEを用いて、多層プリント配線板等を製造するために使用されるプリプレグを形成し、形成されたプリプレグを用いてプリント配線板を製造すると、製造時、例えば、多層成形時にボイドが発生する等の成形不良が発生し、信頼性の高いプリント配線板が得られにくいという成形性の問題が生じていた。このような問題を解決するために、例えば、高分子量のPPEを溶媒中でフェノール種とラジカル開始剤との存在下で再分配反応させることによって、分子切断を起こし、PPEを低分子量化する技術が知られている。しかしながら、PPEを低分子量化した場合、硬化が不充分となり、硬化物の耐熱性等が低下するという傾向があった。
【0004】
また、PPEは、比較的難燃性に乏しいために、プリント配線板等の絶縁材料として用いられる樹脂組成物には、一般的に、臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤や、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等のハロゲン含有エポキシ樹脂等のハロゲンを含有する化合物が配合されていることが多かった。しかしながら、このようなハロゲンを含有する樹脂組成物の硬化物は、燃焼時にハロゲン化水素等の有害物質を生成するおそれがあり、人体や自然環境に対し悪影響を及ぼすという欠点を有している。このような背景のもと、プリント配線板等の絶縁材料としても、ノンハロゲン化が求められている。
【0005】
そこで、ノンハロゲン化された樹脂組成物としては、具体的には、例えば、下記特許文献1に記載の組成物等が挙げられる。特許文献1には、(A)1分子中にエポキシ基を少なくとも2個以上有する非ハロゲン化エポキシ基含有化合物と、(B)窒素化合物で変性させたフェノール樹脂硬化剤であり、かつ水酸基当量が140〜190、含有窒素量が17.0%〜25.0%である樹脂硬化剤と、(C)数平均分子量(Mn)が1500〜3500、かつ重量平均分子量(Mw)が2500〜7000であるポリフェニレンエーテル又は変性ポリフェニレンエーテルと、(D)リン含有難燃剤とを含むことを特徴とする難燃性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−105099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1によれば、非ハロゲン系難燃剤を使用し、かつPPEを使用しても、優れた難燃性、誘電特性、及び成形性に優れた樹脂組成物が得られることが開示されている。しかしながら、特許文献1のように、リン含有難燃剤を含有させることによって、難燃性をある程度高めることができても、耐熱性を充分に高めることが困難になるという問題があった。さらに、前記樹脂組成物を含有するプリプレグに金属箔を積層して、加熱加圧成形して得られる金属張積層板の、金属箔の密着性が乏しくなるという現象が生じた。
【0008】
これらのことは、以下のことによると考えられる。低分子量のPPEは、上述したように、耐熱性が低いという傾向があった。そこで、低分子量のPPEとエポキシ樹脂とを含有する樹脂組成物は、PPEとエポキシ樹脂との硬化反応を進行させて、3次元的な架橋を形成させることによって、硬化物の耐熱性を高めることができると考えられる。しかしながら、難燃剤等の添加剤を含有させると、PPEとエポキシ樹脂との硬化反応を阻害し、耐熱性を低下させる傾向がある。すなわち、ハロゲン及び鉛を含有しない難燃剤、例えば、リン系難燃剤を用いる場合、硬化物の難燃性を充分に高めることができるような比較的多量のリン系難燃剤を含有させると、PPEとエポキシ樹脂との硬化反応が進行しにくくなると考えられる。したがって、ハロゲン及び鉛を含有させずに難燃性を充分に高めると、充分な耐熱性を維持することは困難になるためであると考えられる。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、PPEの有する優れた誘電特性を維持したまま、ワニス状にしたときの粘度が低く、硬化物の耐熱性に優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。また、前記樹脂組成物を含有する樹脂ワニス、前記樹脂ワニスを用いて得られたプリプレグ、前記プリプレグを用いて得られた金属張積層板、及び前記プリプレグを用いて製造されたプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、プリント配線板等の電子部品を構成する材料としては、ハロゲン及び鉛を含有させずに、難燃性を充分に高めるためには、硬化物の耐熱性を高める必要があることに着目した。そして、そのためには、上述したように、3次元的な架橋を充分に形成させることが必要であると考えた。
【0011】
そこで、本発明者等は、上記の知見から、以下のような本発明に想到するに到った。
【0012】
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、数平均分子量が500〜3000の、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が1〜3である低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と、数平均分子量が1000以下の、分子中のハロゲン濃度が0.5質量%未満の、1分子中に平均2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)と、硬化促進剤(C)とを含み、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基が、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基1個当たり1〜10個であることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、PPEの有する優れた誘電特性を維持したまま、ワニス状にしたときの粘度が低く、硬化物の耐熱性に優れた樹脂組成物を得ることができる。よって、得られた樹脂組成物は、ハロゲン及び鉛を含有させずに、例えば、リン系難燃剤を含有させて、難燃性を充分に高めても、充分な耐熱性を維持することができる。
【0014】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0015】
まず、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の含有割合を、上記の前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基の個数と前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基の個数との比率(当量比)が上記範囲内になるようにすることによって、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応を好適に進行させることができると考えられる。よって、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との反応によって、3次元的な架橋が好適に形成されると考えられる。
【0016】
そして、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)は、分子量が比較的低いだけではなく、分子量分布が比較的狭いので、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との反応が、比較的均一に進行すると考えられる。よって、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との反応によって、3次元的な架橋が均一に形成されると考えられる。
【0017】
以上のことから、PPEの有する優れた誘電特性を維持したまま、ワニス状にしたときの粘度が低く、硬化物の耐熱性に優れた樹脂組成物になると考えられる。そして、得られた樹脂組成物は、ハロゲン及び鉛を含有させずに、例えば、リン系難燃剤を含有させて、難燃性を充分に高めても、充分な耐熱性を維持することができると考えられる。
【0018】
また、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)が、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0019】
【化1】

【0020】
(式(1)中、mは、0〜20を示し、nは、0〜20を示し、mとnとの合計は、1〜30を示す。)
このような構成によれば、誘電特性及び硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる。このことは、2,6−ジメチルフェノールからなるPPEの有する優れた誘電特性を維持したまま、上記3次元的な架橋を好適に形成できることによると考えられる。
【0021】
また、前記硬化促進剤(C)が、イミダゾール系化合物、脂肪酸金属塩、及びカチオン重合触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。このような構成によれば、誘電特性及び硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる。
【0022】
このことは、イミダゾール系化合物、脂肪酸金属塩、及びカチオン重合触媒が、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応だけではなく、前記エポキシ樹脂(B)同士の硬化反応も促進させることができるものであるので、過剰に含有させた前記エポキシ樹脂(B)同士の硬化反応によって、硬化物の耐熱性の向上に寄与できることによると考えられる。
【0023】
また、硬化剤(D)を含有することが好ましい。このような構成によれば、誘電特性及び硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる。このことは、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応だけではなく、前記硬化剤(D)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応により、3次元的な架橋をより好適に形成できることによると考えられる。
【0024】
また、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基が、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基と前記硬化剤(D)の水酸基との合計1個当たり1〜5個であることが好ましい。このような構成によれば、誘電特性及び硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる。このことは、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応、及び前記硬化剤(D)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応がより進行し、3次元的な架橋をより好適に形成できることによると考えられる。
【0025】
また、前記硬化剤(D)が、アミン系硬化剤、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、及び分子内にベンゾオキサジン環を有するベンゾオキサジン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。このような構成によれば、誘電特性及び硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる。このことは、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応の阻害を抑制しつつ、及び前記硬化剤(D)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応がより進行し、3次元的な架橋をより好適に形成できることによると考えられる。
【0026】
また、前記ベンゾオキサジン系樹脂が、ビスフェノールFとアニリンとホルムアルデヒドとを重合させて得られるものであることが好ましい。このような構成によれば、誘電特性及び硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる。このことは、前記ベンゾオキサジン系樹脂がトルエンに溶解することができ、よって、トルエンに溶解される前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)との相溶性が高いことによると考えられる。このため、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応、及び前記硬化剤(D)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応がそれぞれ均一に進行し、一方の反応が他方の反応を阻害することなく進行すると考えられる。よって、3次元的な架橋をより好適に形成できることによると考えられる。
【0027】
また、本発明の他の一態様に係る樹脂ワニスは、前記樹脂組成物と溶媒とを含有する。このような構成によれば、誘電特性、及び硬化物の耐熱性に優れ、粘度が低く、流動性の高い樹脂ワニスが得られる。そして、この樹脂ワニスを用いて得られたプリプレグは、プリント配線板等の電子部品を、成形不良の発生を抑制しつつ製造できる。
【0028】
また、前記溶媒が、トルエン、シクロヘキサノン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。このような構成によれば、プリント配線板等の電子部品を、成形不良の発生をより抑制しつつ製造できる樹脂ワニスが得られる。このことは、トルエン、シクロヘキサノン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの沸点が比較的高く、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)及び前記エポキシ樹脂(B)を溶解させることができるので、得られたプリプレグが適切な乾燥速度を有することによると考えられる。
【0029】
また、本発明の他の一態様に係るプリプレグは、前記樹脂ワニスを繊維質基材に含浸させて得られたことを特徴とする。このような構成によれば、誘電特性、及び硬化物の耐熱性に優れた金属張積層板を製造するのに好適に用いられるものであり、さらに、樹脂組成物の粘度が低く、流動性が高いので、金属張積層板やプリント配線板を製造する際の成形不良の発生を抑制できる信頼性に優れたものが得られる。
【0030】
また、本発明の他の一態様に係る金属張積層板は、前記プリプレグに金属箔を積層して、加熱加圧成形して得られたことを特徴とする。この構成によれば、誘電特性、及び硬化物の耐熱性に優れたプリント配線板を、成形不良の発生を抑制しつつ製造できる、信頼性に優れた金属張積層板が得られる。
【0031】
また、本発明の他の一態様に係るプリント配線板は、前記プリプレグを用いて製造されたことを特徴とする。この構成によれば、誘電特性、及び硬化物の耐熱性に優れ、さらに、成形不良の発生を抑制されたものが得られる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、PPEの有する優れた誘電特性を維持したまま、ワニス状にしたときの粘度が低く、硬化物の耐熱性に優れた樹脂組成物を提供することできる。また、前記樹脂組成物を含有する樹脂ワニス、前記樹脂ワニスを用いて得られたプリプレグ、前記プリプレグを用いて得られた金属張積層板、及び前記プリプレグを用いて製造されたプリント配線板が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、数平均分子量が500〜3000の、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が1〜3である低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と、数平均分子量が1000以下の、分子中のハロゲン濃度が0.5質量%未満の、1分子中に平均2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)と、硬化促進剤(C)とを含み、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基が、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基1個当たり1〜10個であることを特徴とする。
【0034】
前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)としては、数平均分子量(Mn)が500〜3000であり、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が1〜3であるポリフェニレンエーテルであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、重合反応により直接得られた数平均分子量が500〜3000のもの等が挙げられる。また、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の分子量が低すぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られない傾向がある。また、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の分子量が高すぎると、溶融粘度が高くなり、充分な流動性が得られず、成形不良を抑制できない傾向がある。よって、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)を用いることによって、広い周波数領域において誘電特性が良好であるだけではなく、成形不良を抑制できる充分な流動性を有する。また、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の前記比(Mw/Mn)は、分散比と呼ばれ、分子量分布の指標となる。すなわち、前記比(Mw/Mn)が小さいほど、分子量分布が狭いことになる。この比(Mw/Mn)が高すぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られない傾向がある。このことは、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の分子量分布が広くなりすぎ、前記エポキシ樹脂との反応が不均一になりやすいためと考えられる。
【0035】
なお、ここでの前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、具体的には、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー等を用いて測定することができる。
【0036】
また、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)としては、1分子当たりの水酸基の平均個数(平均水酸基数)が1.5〜3個であることが好ましく、1.8〜2.4個であることがより好ましい。前記平均水酸基数が少なすぎると、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基との反応性が低下し、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られにくい傾向がある。また、前記平均水酸基数が多すぎると、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基との反応性が高くなりすぎ、例えば、樹脂組成物の保存性が低下したり、誘電率及び誘電正接が高くなる等の不具合が発生するおそれがある。
【0037】
なお、ここでの前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の平均水酸基数は、使用する前記低分子量ポリフェニレンエーテルの製品の規格値からわかる。前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の平均水酸基数としては、具体的には、例えば、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)1モル中に存在する全ての低分子量ポリフェニレンエーテルの1分子あたりの水酸基の平均値等が挙げられる。
【0038】
前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)としては、具体的には、例えば、2,6−ジメチルフェノールと2官能フェノール及び3官能フェノールの少なくともいずれか一方とからなるポリフェニレンエーテルやポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)等のポリフェニレンエーテルを主成分とするもの等が挙げられる。この中でも、2,6−ジメチルフェノールと2官能フェノール及び3官能フェノールの少なくともいずれか一方とからなるポリフェニレンエーテルが好ましい。また、前記2官能フェノールとしては、例えば、テトラメチルビスフェノールA等が挙げられる。前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)としては、より具体的には、例えば、下記一般式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【0039】
【化2】

【0040】
上記式(1)中、m,nは、前記数平均分子量(Mn)、及び数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)がともに上記範囲内になるような重合度であればよい。具体的には、mとnとの合計値が、1〜30であることが好ましい。また、mが、0〜20であることが好ましく、nが、0〜20であることが好ましい。
【0041】
前記エポキシ樹脂(B)としては、数平均分子量が1000以下の、分子中のハロゲン濃度が0.5質量%未満の、1分子中に平均2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。
【0042】
前記エポキシ樹脂(B)の分子量が高すぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られにくい傾向がある。このことは、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)との相溶性が低くなり、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と均一に反応しにくくなり、よって、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と3次元的な架橋が形成されにくくなるためと考えられる。また、前記エポキシ樹脂(B)の分子量が上記範囲内であると、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と3次元的な架橋が形成されやすくなると考えられ、硬化物の耐熱性が高まる。
【0043】
また、分子中の、臭素濃度等のハロゲン濃度が高すぎると、ハロゲンフリー化の目的を達成できなくなる。
【0044】
また、前記エポキシ樹脂(B)の1分子当たりのエポキシ基の平均個数(平均エポキシ基数)が少なすぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られにくい傾向がある。このことは、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基と前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基とが反応しにくくなり、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と3次元的な架橋が形成されにくくなるためと考えられる。また、前記エポキシ樹脂(B)の平均エポキシ基数が上記範囲内であると、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と3次元的な架橋が形成されやすくなると考えられ、硬化物の耐熱性が高まる。なお、ここでの前記エポキシ樹脂(B)の平均エポキシ基数は、使用する前記エポキシ樹脂の製品の規格値からわかる。前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基数としては、具体的には、例えば、前記エポキシ樹脂(B)1モル中に存在する全ての前記エポキシ樹脂(B)の1分子あたりのエポキシ基の平均値等が挙げられる。
【0045】
また、前記エポキシ樹脂(B)としては、具体的には、例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA骨格を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF骨格を有するビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂が、前記低分子量ポリフェニレンエーテルとの相溶性が良い点から好ましく、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましく用いられる。なお、前記樹脂組成物には、ハロゲン化エポキシ樹脂を含有しないことが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて配合してもよい。
【0046】
また、前記エポキシ樹脂(B)は、トルエンに対する溶解度が25℃において10質量%以上であることが好ましい。このようなエポキシ樹脂であると、PPEの有する、優れた誘電特性を阻害することなく、硬化物の耐熱性が充分に高められる。このことは、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)との相溶性が比較的高く、よって、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と均一に反応しやすく、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と3次元的な架橋が形成されやすいためであると考えられる。
【0047】
前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との含有比率は、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基が、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基1個当たり1〜10個となる含有比率であればよい。すなわち、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基の、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基1個当たりに対する個数(当量比:前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基/前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基)が1〜10となる含有比率であればよい。
【0048】
前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)が少なすぎると、ポリフェニレンエーテルの有する優れた誘電特性を維持することができない傾向にある。また、多すぎると、硬化物の耐熱性が不充分になる傾向がある。すなわち、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の含有量が上記範囲内であることによって、硬化物の耐熱性が充分に高く、ポリフェニレンエーテルの優れた誘電特性を発揮できる。
【0049】
また、前記エポキシ樹脂(B)が少なすぎると、硬化物の耐熱性が不充分になる傾向がある。また、前記エポキシ樹脂(B)が多すぎると、エポキシ樹脂の影響が大きくなり、ポリフェニレンエーテルの有する優れた誘電特性を維持することができない傾向がある。すなわち、前記エポキシ樹脂(B)の含有量が上記範囲内であることによって、硬化物の耐熱性が充分に高く、ポリフェニレンエーテルの優れた誘電特性を発揮できる。
【0050】
前記硬化促進剤(C)は、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応を促進することができるものであれば、特に制限することなく使用することができる。具体的には、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン等の有機ホスフィン系化合物、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン系化合物、PFを有する芳香族スルホニウム塩等のカチオン重合触媒、脂肪酸金属塩等が挙げられる。また、前記脂肪酸金属塩は、一般的に金属石鹸と呼ばれるものであって、具体的には、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸、及びオクチル酸等の脂肪酸と、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、及び亜鉛等の金属とからなる脂肪酸金属塩等が挙げられる。より具体的には、オクチル酸亜鉛等が挙げられる。前記硬化促進剤(C)は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
また、前記硬化促進剤(C)としては、上記の中でも、イミダゾール系化合物及びカチオン重合触媒を含有することが、誘電特性及び硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる点から好ましい。また、イミダゾール系化合物を用いる場合、イミダゾール系化合物に加えて、脂肪酸金属塩を含有することがより好ましい。このことは、カチオン重合触媒、イミダゾール系化合物及び脂肪酸金属塩が、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応だけではなく、前記エポキシ樹脂(B)同士の硬化反応も促進させることができるものであるので、前記エポキシ樹脂(B)を過剰に含有させた場合であっても、前記エポキシ樹脂(B)同士の硬化反応によって、硬化物の耐熱性の向上に寄与できることによると考えられる。
【0052】
前記硬化促進剤(C)の含有量としては、例えば、前記硬化促進剤(C)としてイミダゾール系化合物を含有する場合、前記イミダゾール系化合物の含有量が、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との合計量100質量部に対して、0.05〜1質量部であることが好ましい。また、前記イミダゾール系化合物に、前記脂肪酸金属塩を併用した場合、前記脂肪酸金属塩の含有量が、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との合計量100質量部に対して、0.5〜3質量部であることが好ましい。前記硬化促進剤(C)の含有量が少なすぎると、硬化促進効果を高めることができない傾向にある。また、多すぎると、成形性に不具合を生じる傾向があり、また、硬化促進剤の含有量が多すぎて経済的に不利となる傾向がある。また、樹脂組成物のライフ性が低下する傾向がある。
【0053】
また、前記樹脂組成物には、硬化剤(D)を配合してもよい。前記硬化剤(D)としては、従来から一般的に用いられているものを使用することができる。具体的には、1級アミンや2級アミン等のアミン系硬化剤、ビスフェノールA、ビスフェノールFやジシクロペンタジエン型フェノール樹脂等のフェノール系硬化剤、及び酸無水物系硬化剤等が挙げられる。また、分子内にベンゾオキサジン環を有するベンゾオキサジン系樹脂も硬化剤(D)として用いることができる。この中でも、アミン系硬化剤が、硬化性を高める点から好ましく、具体的には、アミン系硬化剤の中でも、ジエチルトルエンジアミンがより好ましい。前記硬化剤(D)は、前記エポキシ樹脂(B)に対して、当量比で0.1〜0.5配合することが好ましい。
【0054】
また、ベンゾオキサジン系樹脂が、誘電特性及び硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる点で好ましい。このことは、前記ベンゾオキサジン系樹脂がトルエンに溶解することができ、よって、トルエンに溶解される前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)との相溶性が高いことによると考えられる。このため、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応、及び前記硬化剤(D)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応がそれぞれ均一に進行し、一方の反応が他方の反応を阻害することなく進行すると考えられる。よって、3次元的な架橋をより好適に形成できることによると考えられる。また、前記ベンゾオキサジン系樹脂としては、ビスフェノールFとアニリンとホルムアルデヒドとを重合させて得られる、いわゆるFa型のベンゾオキサジン系樹脂が好ましい。
【0055】
また、硬化剤(D)を含有する場合、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)及び前記硬化剤(D)との含有比率は、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基が、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基と前記硬化剤(D)の水酸基との合計1個当たり1〜5でとなる含有比率であることが好ましい。すなわち、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基の、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基と前記硬化剤(D)の水酸基との合計1個当たりに対する個数(当量比:前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基/前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基+前記硬化剤(D)の水酸基)が1〜5となる含有比率であることが好ましい。
【0056】
前記硬化剤(D)が少なすぎると、前記硬化剤を含有させた効果が低くなり、硬化物の耐熱性が不充分になる傾向がある。また、前記硬化剤(D)が多すぎると、エポキシ樹脂の影響が大きくなり、ポリフェニレンエーテルの有する優れた誘電特性を維持することができない傾向がある。
【0057】
また、より具体的には、例えば、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の含有量は、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)、前記エポキシ樹脂(B)、及び前記硬化剤(D)の合計100質量部に対して、15〜75質量部であることが好ましく、25〜50質量部であることがより好ましい。
【0058】
また、前記エポキシ樹脂(B)の含有量は、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)、前記エポキシ樹脂(B)、及び前記硬化剤(D)の合計100質量部に対して、15〜75質量部であることが好ましく、25〜50質量部であることが好ましい。
【0059】
また、前記樹脂組成物には、難燃性を高めるために、難燃剤を含有させてもよい。前記難燃剤としては、ハロゲンフリー化のために、ホスフィン酸塩系難燃剤、及びトリアジン骨格を有するポリリン酸塩系難燃剤等のリン含有化合物であることが好ましい。前記樹脂組成物は、硬化物の耐熱性が充分に高いので、充分な難燃性を示すほどのリン含有化合物が含有させても、充分な耐熱性を確保できる。
【0060】
前記ホスフィン酸塩系難燃剤としては、特に限定されない。具体的には、例えば、ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩等のホスフィン酸金属塩等が挙げられる。前記ホスフィン酸塩系難燃剤としては、上記ホスフィン酸塩系難燃剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
前記ポリリン酸塩系難燃剤としては、特に限定されない。具体的には、例えば、トリアジン骨格を有するポリリン酸塩等が挙げられる。このポリリン酸塩系難燃剤は、ポリマーであることにより、難燃性を高めるだけではなく、耐加水分解性や耐熱性等を高めることができると考えられる。また、前記ポリリン酸塩系難燃剤は、前記ポリフェニレンエーテル樹脂に対して、前記エポキシ樹脂よりも炭化促進効果を顕著に発揮させうると考えられる。そして、その炭化促進効果が発揮されることにより形成される炭化層が可燃ガスや熱の広がりを抑制し、難燃性を充分に高めることができると考えられる。よって、前記ポリリン酸塩を、所定量以上のポリフェニレンエーテル樹脂と併用することによって、得られた樹脂組成物の硬化物の難燃性を充分に高めることができると考えられる。
【0062】
前記ポリリン酸塩系難燃剤としては、具体的には、例えば、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム、及びこれらの複合塩等が挙げられる。この中でも、ポリリン酸メラミンが好ましく用いられる。また、前記複合塩としては、例えば、特開平10−306081号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0063】
また、前記ポリリン酸塩系難燃剤のpHは、4〜7であることが好ましい。前記ポリリン酸塩系難燃剤のpHが低すぎると、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応を阻害し、硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。また、前記ポリリン酸塩系難燃剤のpHが高すぎると、材料として不安定であるか、又は副生成物が大量に混在してしまうという傾向がある。なお、前記ポリリン酸塩のpHは、一般的なpH計で測定することができる。
【0064】
また、前記ポリリン酸塩系難燃剤としては、具体的には、例えば、平均粒径が10μm以下のものが好ましく、5μm以下のものがより好ましい。
【0065】
前記ポリリン酸塩系難燃剤としては、上述したように、トリアジン骨格を有するポリリン酸塩であれば、特に限定されずに用いることができ、具体的には、例えば、特開平10−306081号公報に記載の方法等により調製したものを用いることができる。また、前記ポリリン酸塩系難燃剤のpHを調整する方法としては、例えば、ポリリン酸塩の製造方法において、ポリリン酸と、メラミン、メラム及びメレム等との混合比を調整する方法等が挙げられる。
【0066】
また、前記リン含有化合物の含有量は、リン原子の含有量が、前記樹脂組成物に対して、3.5質量%以上となるような量であることが好ましい。前記リン含有化合物の含有量が少なすぎると、硬化物の難燃性を充分に高めることができない傾向がある。また、前記リン含有化合物の含有量としては、リン原子の含有量が、前記樹脂組成物に対して、5質量%以下となるような量であることが好ましく、4.5質量%以下となるような量であることがより好ましい。前記リン含有化合物の含有量が多すぎると、硬化物の耐熱性及び誘電特性等が低下する傾向があり、耐熱性の低下に起因して硬化物の難燃性が充分に得ることができなくなる傾向がある。なお、前記リン原子の含有量は、前記樹脂組成物に対する割合(質量%)であり、使用する前記ホスフィン酸塩系難燃剤及び前記ポリリン酸塩系難燃剤のリン原子の含有量から算出できる。
【0067】
また、前記樹脂組成物には、加熱時における寸法安定性を高めたり、難燃性を高める等の目的で、必要に応じてさらに無機充填材を配合してもよい。前記無機充填材としては、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、マイカ、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等が挙げられる。また、前記無機充填材としては、そのまま用いてもよいが、エポキシシランタイプ、又はアミノシランタイプのシランカップリング剤で表面処理されたものが、特に好ましい。前記のようなシランカップリング剤で表面処理された無機充填材が配合されたポリフェニレンエーテル樹脂組成物を用いて得られる金属張積層板は、吸湿時における耐熱性が高く、また、層間ピール強度も高くなる傾向がある。
【0068】
前記樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、例えば熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料や顔料、滑剤等の添加剤を配合してもよい。
【0069】
前記樹脂組成物は、プリプレグを製造する際には、プリプレグを形成するための基材(繊維質基材)に含浸する目的でワニス状に調製して用いられることが多い。すなわち、前記樹脂組成物は、通常、ワニス状に調製されたものであることが多い。このようなワニスは、例えば、以下のようにして調製される。
【0070】
まず、前記低分子量ポリフェニルエーテル(A)、前記エポキシ樹脂(B)、及び硬化剤(D)等を、有機溶媒等に投入して溶解させる。この際、必要に応じて、加熱してもよい。さらに、硬化促進剤(C)、また、必要に応じて、難燃剤や無機充填材を添加して、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ロールミル等を用いて、所定の分散状態になるまで分散させることにより、ワニス状の樹脂組成物が調製される。前記有機溶媒としては、前記低分子量ポリフェニルエーテル(A)、前記エポキシ樹脂(B)、及び硬化剤(D)等を溶解させ、硬化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、トルエン、シクロヘキサノン、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0071】
得られたワニス状の樹脂組成物を用いてプリプレグを製造する方法としては、例えば、前記樹脂組成物を繊維質基材に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。
【0072】
前記繊維質基材としては、具体的には、例えば、ガラスクロス、アラミドクロス、ポリエステルクロス、ガラス不織布、アラミド不織布、ポリエステル不織布、パルプ紙、及びリンター紙等が挙げられる。なお、ガラスクロスを用いると、機械強度が優れた積層板が得られ、特に偏平処理加工したガラスクロスが好ましい。偏平処理加工としては、具体的には、例えば、ガラスクロスを適宜の圧力でプレスロールにて連続的に加圧してヤーンを偏平に圧縮することにより行うことができる。なお、前記繊維質基材の厚みとしては、例えば、0.04〜0.3mmのものを一般的に使用できる。
【0073】
前記含浸は、浸漬(ディッピング)、及び塗布等によって行われる。前記含浸は、必要に応じて複数回繰り返すことも可能である。また、この際、組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【0074】
前記樹脂組成物が含浸された繊維質基材は、所望の加熱条件、例えば、80〜170℃で1〜10分間加熱されることにより半硬化状態(Bステージ)のプリプレグが得られる。
【0075】
このようにして得られたプリプレグを用いて金属張積層板を作製する方法としては、前記プリプレグを一枚または複数枚重ね、さらにその上下の両面又は片面に銅箔等の金属箔を重ね、これを加熱加圧成形して積層一体化することによって、両面金属箔張り又は片面金属箔張りの積層体を作製することができるものである。加熱加圧条件は、製造する積層板の厚みやプリプレグの樹脂組成物の種類等により適宜設定することができるが、例えば、温度を170〜220℃、圧力を3〜4MPa、時間を60〜150分間とすることができる。
【0076】
前記樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテルの有する優れた誘電特性を維持したまま、硬化物の耐熱性、及び難燃性に優れたものである。このため、前記樹脂組成物を用いて得られたプリプレグを用いた金属張積層板は、誘電特性、及び耐熱性、及び難燃性に優れたものである。また、前記樹脂組成物に含有されるポリフェニレンエーテルが低分子量化したものであるので、前記樹脂組成物の粘度が低く、流動性が高い。よって、得られたプリプレグは、金属張積層板や金属張積層板を用いたプリント配線板を製造する際に成形不良の発生を抑制できる信頼性に優れたものである。
【0077】
また、プリプレグを用いて、プリント配線板を製造することができる。具体的には、例えば、作製された積層体の表面の金属箔をエッチング加工等して回路形成をすることによって、積層体の表面に回路として導体パターンを設けたプリント配線板を得ることができるものである。このように得られるプリント配線板は、誘電特性に優れており、また、高い耐熱性及び難燃性を備えたものである。
【0078】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0079】
<実施例1〜12、比較例1〜5>
[樹脂組成物の調製]
本実施例において、樹脂組成物を調製する際に用いる各成分について説明する。ここで、トルエンに対する、25℃における溶解度を、トルエン溶解度と示す。
【0080】
(ポリフェニレンエーテル)
PPE1:ポリフェニレンエーテル(国際公開第2008/067669号に記載の方法で合成したポリフェニレンエーテル、数平均分子量Mn1800、Mw/Mn=2.5、官能基当量1000、平均水酸基数1.8個)
PPE2:ポリフェニレンエーテル(国際公開第2008/067669号に記載の方法で合成したポリフェニレンエーテル、数平均分子量Mn800、Mw/Mn=2.5、官能基当量450、平均水酸基数1.8個)
PPE3:ポリフェニレンエーテル(米国特許第6,384,176号明細書に記載の方法で合成したポリフェニレンエーテル、数平均分子量Mn3500、Mw/Mn=3.1、官能基当量3000、平均水酸基数1.2個)
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製のエピクロン830S、数平均分子量Mn400、官能基当量170、平均エポキシ基数2、トルエン溶解度100質量%)
エポキシ樹脂2:ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製のエピクロンHP−5000、数平均分子量Mn700、官能基当量250、平均エポキシ基数2.8、トルエン溶解度100質量%)
エポキシ樹脂3:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製のEOCN103S、数平均分子量Mn1200、官能基当量210、平均エポキシ基数6、トルエン溶解度80質量%)
(硬化促進剤)
イミダゾール系化合物:2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製の2E4MZ)
脂肪酸金属塩(金属石鹸):オクタン酸亜鉛(DIC株式会社製)
カチオン重合触媒:PFを有する芳香族スルホニウム塩(三新化学工業株式会社製のサンエイドSI−110L)
TPP:トリフェニルホスフィン(北興化学工業株式会社製)
(硬化剤)
芳香族アミン化合物:ジエチルトルエンジアミン(アルベマール日本株式会社製のエタキュア100、トルエン溶解度100質量%)
フェノール樹脂:フェノール樹脂(新日本石油株式会社製のDPP−6115S、トルエン溶解度25質量%)
ベンゾオキサジン系樹脂1:四国化成工業株式会社製のFa型(ビスフェノールFとアニリンとホルムアルデヒドとの重合物)
ベンゾオキサジン系樹脂2:四国化成工業株式会社製のPd型(フェノールとジアミノジフェニルメタンとホルムアルデヒドとの重合物)
(その他の成分)
ホスフィン酸塩系難燃剤:ジアルキルホスフィン酸アルミニウム(クラリアントジャパン株式会社製のOP935)
シリカ粒子:シリカ粒子(株式会社アドマテックス製のSC2500−SEJ)
[調製方法]
まず、ポリフェニレンエーテルとトルエンとを混合させて、その混合液を80℃になるまで加熱することによって、ポリフェニレンエーテルをトルエンに溶解させて、ポリフェニレンエーテルの50質量%トルエン溶液を得た。その後、そのポリフェニレンエーテルのトルエン溶液に、表1に記載の配合割合(質量部)になるように、エポキシ樹脂や硬化剤を添加した後、30分間攪拌することによって、完全に溶解させた。そして、さらに、ホスフィン酸塩系難燃剤やシリカ粒子等の他の成分を添加して、ボールミルで分散させることによって、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)が得られた。
【0081】
次に、得られた樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製の♯2116タイプ、WEA116E、Eガラス)に含浸させた後、150℃で約3〜8分間加熱乾燥することによりプリプレグを得た。その際、ポリフェニレンエーテル、エポキシ樹脂及び硬化剤等の樹脂成分の含有量(レジンコンテント)が40〜45質量%となるように調整した。
【0082】
そして、得られた各プリプレグを4枚重ねて積層し、温度200℃、2時間、圧力3MPaの条件で加熱加圧することにより、厚み0.4mmの評価基板を得た。
【0083】
上記のように調製された各プリプレグ及び評価基板を、以下に示す方法により評価を行った。
【0084】
[ガラス転移温度(Tg)]
セイコーインスツルメンツ株式会社製の粘弾性スペクトロメータ「DMS100」を用いて、プリプレグのTgを測定した。このとき、曲げモジュールで周波数を10Hzとして動的粘弾性測定(DMA)を行い、昇温速度5℃/分の条件で室温から280℃まで昇温した際のtanαが極大を示す温度をTgとした。
【0085】
[誘電特性(誘電率及び誘電正接)]
1GHzにおける評価基板の誘電率及び誘電正接を、IPC−TM650−2.5.5.9に準拠の方法で測定した。具体的には、インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー株式会社製のRFインピーダンスアナライザ HP4291B)を用い、1GHzにおける評価基板の誘電率及び誘電正接を測定した。
【0086】
[耐熱性]
耐熱性は、JIS C 6481に準拠の方法で測定した。具体的には、評価基板を、121℃、2気圧(0.2MPa)、1時間のプレッシャークッカーテスト(PCT)を各サンプルで行い、サンプル数5個で、所定温度の半田槽中に20秒間浸漬し、ミーズリングや膨れ等の異常発生の有無を目視で観察した。異常発生が確認されない最高温度を測定した。
【0087】
[難燃性]
評価基板から、長さ125mm、幅12.5mmのテストピースを切り出した。そして、このテストピースについてUnderwriters Laboratoriesの”Test for Flammability of Plastic Materials−UL 94”に準じて行い、評価した。
【0088】
[銅箔密着強度(銅箔ピール強度)]
まず、評価基板の両外層にそれぞれ銅箔(1oz、三井金属鉱業株式会社製の3EC−III、厚み35μm)を配し、温度220℃、圧力3MPaの条件で加熱加圧することにより、厚み0.4mmの銅張積層板を得た。得られた銅張積層板の表面の銅箔の引きはがし強さ(銅箔密着強度)を、JIS C 6481に準拠して測定した。このとき、幅20mm、長さ100mmの試験片上に幅10mm、長さ100mmのパターンを形成し、銅箔を引っ張り試験器により50mm/分の速度で引きはがし、その時の引きはがし強さ(kg/cm)を銅箔密着強度として測定した。
【0089】
[耐クロロホルム性(クロロホルム抽出度)]
評価基板を液体窒素で凍結させた後、ミルで細かく粉砕した。その粉砕物を、約8g、10質量%となるように、クロロホルムに浸漬させた。そして、還流クロロホルムで3時間抽出(熱クロロホルム抽出)した。この抽出によって得られた抽出液を室温(常温)で24時間乾燥させて、抽出液に含まれていた固形分(溶出成分)が得られた。この溶出成分を、電子天秤を用いて秤量した。そして、クロロホルムに浸漬させた粉砕物に対する、溶出成分の質量比率(溶出成分/粉砕物)を、耐クロロホルム性(クロロホルム抽出度)(質量%)として算出した。
【0090】
[プリプレグの流動性(樹脂流れ性)]
各プリプレグの流動性(樹脂流れ性)は、JIS C 6521に準拠の方法で測定した。
【0091】
これらの結果を表1に示す。なお、ベンゾオキサジン系樹脂は、自重合し、その際に発生する水酸基が、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応して、樹脂組成物が硬化するので、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基の、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基と前記硬化剤(D)の水酸基との合計1個当たりに対する個数(当量比:前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基/前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基+前記硬化剤(D)の水酸基)が不明確であり、「−」と表記した。
【0092】
【表1】

【0093】
表1からわかるように、数平均分子量が500〜3000の、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が1〜3である低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と、数平均分子量が1000以下の、分子中のハロゲン濃度が0.5質量%未満の、1分子中に平均2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)と、硬化促進剤(C)とを含み、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基が、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基1個当たり1〜10個である樹脂組成物を用いた場合(実施例1〜12)は、分子量が高すぎるPPEを含み、エポキシ基が多すぎる樹脂組成物を用いた場合(比較例1)、分子量が高すぎるエポキシ樹脂を含む樹脂組成物を用いた場合(比較例2,3)、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基の、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基1個当たりに対する個数が1個未満である樹脂組成物を用いた場合(比較例4)や前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基の、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基1個当たりに対する個数が10個を超える樹脂組成物を用いた場合(比較例5)と比較して、PPEの有する優れた誘電特性を維持したまま、プリプレグの流動性が高く、硬化物の耐熱性等に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が500〜3000の、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が1〜3である低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と、
数平均分子量が1000以下の、分子中のハロゲン濃度が0.5質量%未満の、1分子中に平均2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)と、
硬化促進剤(C)とを含み、
前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基が、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基1個当たり1〜10個であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】


(式(1)中、mは、0〜20を示し、nは、0〜20を示し、mとnとの合計は、1〜30を示す。)
【請求項3】
前記硬化促進剤(C)が、イミダゾール系化合物、脂肪酸金属塩、及びカチオン重合触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
硬化剤(D)を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基が、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸基と前記硬化剤(D)の水酸基との合計1個当たり1〜5個である請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化剤(D)が、アミン系硬化剤、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、及び分子内にベンゾオキサジン環を有するベンゾオキサジン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項4又は請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ベンゾオキサジン系樹脂が、ビスフェノールFとアニリンとホルムアルデヒドとを重合させて得られるものである請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物と溶媒とを含有する樹脂ワニス。
【請求項9】
前記溶媒が、トルエン、シクロヘキサノン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載の樹脂ワニス。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の樹脂ワニスを繊維質基材に含浸させて得られたプリプレグ。
【請求項11】
請求項10に記載のプリプレグに金属箔を積層して、加熱加圧成形して得られた金属張積層板。
【請求項12】
請求項10に記載のプリプレグを用いて製造されたプリント配線板。

【公開番号】特開2011−74123(P2011−74123A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224415(P2009−224415)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】