説明

樹脂組成物、樹脂組成物の製造方法及び高周波同軸ケーブル

【課題】発泡絶縁体の材料として、低密度ポリエチレンの高密度ポリエチレンに対する割合を少なくし、ケーブルの電圧定在波比(VSWR)が小さく、かつ減衰量の小さい高周波同軸ケーブルを提供する。
【課題を解決するための手段】高密度ポリエチレンと、わずかな架橋構造を導入した低密度ポリエチレンを混合することによって、低密度ポリエチレンの混合量を少なくすることが可能になり、誘電体損失における誘電正接tanδの値の上昇を極力抑えることができ、かつ、溶融破断張力を高くすることができるので高発泡度としても気泡同士がつながった連続気泡の発生を防止できる。さらに、内部導体の外周に、内部充実層、本発明のポリエチレン樹脂組成物を用いた発泡樹脂絶縁層、外部充実層、外部導体及びシースを順次設けることにより、高周波同軸ケーブルは、良好な高周波特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信施設やマイクロ波通信施設で用いられる高周波同軸ケーブル及び高周波ケーブルを構成する樹脂組成物と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に必要な移動体通信施設やテレビ局のマイクロ波通信施設で用いられる高周波同軸ケーブルは、通信速度と容量のアップを目的として、使用周波数が高くなる傾向にある。これに伴い、減衰量の小さいケーブルが要求されるようになっている。同軸ケーブルの減衰量は導体に起因する導体損失と絶縁体材料(ポリエチレン)に起因する誘電体損失とを足した値である。導体損失はケーブル形状で決定されるため変更できない。
そのため誘電体損失を小さくする必要がある。誘電体損失は(1)式のような関係で示される。

本式が示すように誘電体損失を小さくするためには、誘電率ε、誘電正接tanδを小さくすることが有効である。εを小さくするためには発泡樹脂絶縁層の発泡度を上げることが効果的である。
【0003】
発泡の方法としては、窒素や二酸化炭素などのガス成分を樹脂に溶解して発泡させる物理発泡方式と、アゾジカルボン酸アミドやオキシベンゼンスルホニルヒドラジドなどの化学発泡剤を樹脂に混合してその分解ガスを発泡の起点として発泡させる化学発泡方式がある。化学発泡方式では、発泡度を上げるために化学発泡剤を比較的多量に混合するため、その分解残渣がケーブルの電気特性に悪影響を及ぼしやすい。物理発泡は樹脂に溶解させるガス成分を増やすことで発泡度を上げることに適しており、このことはケーブルの電気特性に悪影響を及ぼすことがないため、高発泡化には物理発泡方式が好ましい。
【0004】
また、一般に誘電正接tanδは低密度ポリエチレン(LDPE)よりも高密度ポリエチレン(HDPE)の方が小さい。これは、高密度ポリエチレンの分子構造中の側鎖が少ないことによるものと考えられる。そのため、発泡絶縁体の組成物の主材料として高密度ポリエチレンが多く使用されているが、高密度ポリエチレンは分岐が少なく分子同士の絡み合いが小さいので、溶融破断張力が小さくなる。そのため、押出し時のガス圧力を上げて樹脂に溶解するガス量を増やし発泡度を上げようとすると、発泡絶縁体内の気泡が独立したものではなく、つながった連続気泡(巣)になりやすく、その結果、ケーブルの長さ方向の安定性の指標である電圧定在波比(VSWR)が増大(悪化)する傾向がある。
【0005】
そこで発泡絶縁体の材料には、誘電体損失における誘電正接tanδの値が高くなってでも、溶融破断張力の大きい低密度ポリエチレンを高密度ポリエチレンに混合する必要があった。
【0006】
特許文献1には、低密度ポリエチレンを中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンに混合した樹脂組成物及び高周波同軸ケーブルが提案されている。低密度ポリエチレンの中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンに対する割合は、5〜45%(重量)で混合させており、一定の基準を満たす同軸ケーブルもあるが、電波減衰量が6.10以下、電圧定在波比(VSWR)が1.07以下の条件を満たすものは無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4123087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、発泡絶縁体の材料には、電圧定在波比(VSWR)を少なくするため、誘電体損失における誘電正接tanδの値が大きくなってでも、低密度ポリエチレンを高密度ポリエチレンに混合する必要があるが、低密度ポリエチレンの高密度ポリエチレンに対する割合をできるだけ少なくすることが望まれている。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みて、発泡絶縁体の材料には、低密度ポリエチレンの高密度ポリエチレンに対する割合を少なくし、ケーブルの電圧定在波比(VSWR)が小さく、かつ減衰量の小さい発泡同軸ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の問題を解決するため、本発明は、高密度ポリエチレンと、架橋構造を導入した低密度ポリエチレンの混合物からなることを特徴とするポリエチレン樹脂組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、前記架橋構造を導入した低密度ポリエチレン樹脂は、密度が0.920g/cm以上、0.930g/cm以下である前記ポリエチレン樹脂組成物を提供する。
【0012】
本発明はまた、前記架橋構造を導入した低密度ポリエチレン樹脂は、メルトフローレートが0.01g以上、0.5g/10分以下である前記ポリエチレン樹脂組成物を提供する。
【0013】
本発明はまた、前記高密度ポリエチレン樹脂と、前記架橋構造を導入した低密度ポリエチレン樹脂が、重量比で99対1から70対30の範囲の混合比であることを特徴とする前記ポリエチレン樹脂組成物を提供する。
【0014】
本発明はまた、前記ポリエチレン樹脂組成物の誘電体損失における誘電正接tanδの値が、空洞共振摂動法による2GHzでの測定で2.0×10−4以下であることを特徴とする前記ポリエチレン樹脂組成物を提供する。
【0015】
本発明は、また、内部導体の外周に、内部充実層、発泡樹脂絶縁層、外部充実層、外部導体を順に設けた高周波同軸ケーブルにおいて、発泡絶縁層が前記ポリエチレン樹脂組成物の発泡体により構成されることを特徴とする高周波同軸ケーブルを提供する。
【0016】
本発明は、また、低密度ポリエチレン樹脂に架橋構造を導入し、高密度ポリエチレンと、前記架橋構造を導入した低密度ポリエチレンを混合させることを特徴とするポリエチレン樹脂組成物を製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高密度ポリエチレンと、わずかな架橋構造を導入した低密度ポリエチレンを混合することによって、低密度ポリエチレンの混合量を少なくすることが可能になり、誘電正接tanδの値の上昇を極力抑えることができ、かつ、溶融破断張力を高くすることができるので高発泡度としても気泡同士がつながった連続気泡の発生を抑制できることを見出した。さらに、内部導体の外周に、内部充実層、本発明のポリエチレン樹脂組成物を用いた発泡樹脂絶縁層、外部充実層、外部導体及びシースを順次設けた高周波同軸ケーブルは、良好な高周波特性を持つことが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本高発泡高周波同軸ケーブルの製造装置の模式図。
【図2】本高発泡高周波同軸ケーブルの発泡コア(断面)の構造図。
【図3】本高発泡高周波同軸ケーブルの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を表及び図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0020】
本発明では、架橋構造を導入していない高密度ポリエチレンに、架橋構造を導入した低密度ポリエチレンを混合させてポリエチレン樹脂組成物を製造するが、最初にわずかに架橋構造を導入した低密度ポリエチレンの製造方法について述べる。
【0021】
わずかに架橋構造を導入した低密度ポリエチレンを製造する方法としては、第1に電子線照射、第2に過酸化物による化学架橋、第3にシラングラフトによる水架橋などが挙げられる。この中で、わずかな架橋を安定して導入できることや、不純物を混入させないという面から電子線照射による方法が最適であり、本実施例では一番多く実施している方法であるが、第2と第3の架橋方法も実施している。次にそれぞれの架橋方法と実施例について説明し、特性評価結果を表1、表2に示し、さらに架橋構造を導入していない比較例を表3に示す。
【0022】
第1の電子線照射架橋の場合、酸化によるポリエチレンの劣化を防ぐため、窒素ガスなど不活性ガス雰囲気もしくは真空中で低密度ポリエチレンのペレットに電子線を照射する。電子線の照射量は、低密度ポリエチレンの種類により多少違いはあるが、概ね0.1〜2.0Mrad程度が良い。照射量が2.0Mradより多くなると、低密度ポリエチレンのメルトフローレートの値が低くなりすぎ熱流動性が悪くなるため、高密度ポリエチレン樹脂に混合したときに均一にならない、さらには押出し作業時に本樹脂層外観が悪くなるといった問題が生じやすくなる。また、照射量が0.1Mradより少なくなると、架橋による期待効果が小さくなる。本実施例では、窒素ガス雰囲気下で低密度ポリエチレンのペレットに電子線を照射して架橋構造を導入した低密度ポリエチレンを製造した。具体的には表1、表2に示す通りである。
【0023】
第2の過酸化物による架橋の場合、微量のジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物と低密度ポリエチレンを樹脂温度180℃以上になるように設定した押出機中で反応させた後ペレタイズを行いわずかに架橋した低密度ポリエチレンペレットを得ることができる。本実施例では、有機過酸化物としてジクミルパーオキサイド(DCP)0.1重量%を低密度ポリエチレン樹脂に混合して架橋構造を導入した低密度ポリエチレンを製造した。
【0024】
第3のシラングラフトによる水架橋の場合は、低密度ポリエチレンにビニルシラン0.2〜1.0重量%を有機過酸化物などの適当な反応開始剤および架橋反応触媒(ジブチルスズジラウレート)と共に溶融混練してグラフトポリマを製造後、これを80℃の水蒸気雰囲気中で24時間キュアすることにより得られる。本実施例では、低密度ポリエチレンとビニルシラン0.5重量%にDCPを0.05重量%溶かした溶液とジブチルスズジラウレート0.02重量%とを樹脂温度が180℃以上になるように設定した押出機に投入してシラングラフトポリエチレンを製造し、ペレタイズ後のペレットを80℃の水蒸気雰囲気中で24時間キュアして製造したものを用いた。
【0025】
本実施例において、架橋構造を導入していない高密度ポリエチレン樹脂の密度は0.931g/cm以上とし、わずかに架橋構造を導入した低密度ポリエチレン樹脂の密度は0.920g/cm以上、0.930g/cm以下が好ましい。密度が0.920g/cmより小さい低密度ポリエチレン樹脂を使用すると、得られる高密度ポリエチレンと混合した樹脂組成物は誘電正接tanδの値が大きくなりやすくなるためである。なお、誘電正接tanδの値が大きいポリエチレン樹脂組成物を発泡絶縁層として適用した高周波同軸ケーブルは、減衰量が大きくなる傾向にある。
【0026】
また本発明において、わずかに架橋構造を導入した低密度ポリエチレン樹脂のメルトフローレートは、好ましくは0.5g/10分以下とした理由は、押出し時のガス圧力を上げて樹脂に溶解するガス量を増やし発泡度を上げても、発泡絶縁体内の気泡が独立したものではなく、つながった連続気泡になりやすくなるためである。さらにメルトフローレートが0.01/10分以上としたのは、0.01より小さくなると高密度ポリエチレン樹脂に混合したときに均一にならないため、同軸ケーブル外観が悪くなるといった問題がある。
【0027】
本発明において、高密度ポリエチレンと、わずかな架橋構造を導入した低密度ポリエチレンが重量比で99対1から70対30の範囲の混合比とすることが好ましい。架橋構造を導入した低密度ポリエチレンの量が1以上にすることによって、押出し時のガス圧力を上げて樹脂に溶解するガス量を増やし発泡度を上げても、発泡絶縁体内の気泡が独立したものとなり、つながった連続気泡になりにくくなるためである。また、30以下とすることによって、空洞共振摂動法による2GHzでの誘電正接tanδの値を2.0×10−4以下にすることが容易になるためである。
【0028】
前記ポリエチレン樹脂組成物には、定法に従い発泡核剤、発泡剤、酸化防止剤、銅害防止剤、滑剤、難燃剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、架橋助剤を添加することができる。発泡核剤としてはタルク、シリカ、窒化ホウ素、無機酸化物、金属酸化物などの無機化合物や、化学発泡剤として市販されている有機化合物を使用することができ、化学発泡剤のアゾジカルボン酸アミド(ADCA)やオキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)が好適である。
【0029】
同軸ケーブルの製造は以下の手順に基づいて行った。
【0030】
高密度ポリエチレンに1.0重量%の発泡核剤アゾジカルボン酸アミド(ADCA)を練り込み、核剤マスターバッチを製造する。その後、高密度ポリエチレン樹脂、及び前記のわずかに架橋した低密度ポリエチレン樹脂との混合物と核剤マスターバッチを重量比99対1の比率でドライブレンドして発泡層用材料とした。このとき、高密度ポリエチレンとわずかに架橋した低密度ポリエチレンの比率は表1〜3に示すとおり、重量比率で99対1、90対10、80対20、70対30、60対40にして用いた。
【0031】
この発泡層用材料を図1に示すケーブル製造装置20に投入して、同軸ケーブルを製造する。以下、図1、図2及び図3を参照しながら、説明する。ケーブル製造装置20は、主に、内部導体11(図2参照)を送出する送出ドラム21と、送出された内部導体11の外周に接着層としての内部充実層12(図2参照)を被覆する内部充実層押出機23と、発泡絶縁層13(図2参照)を被覆する発泡絶縁層押出機24と、外部充実層14(図2参照)を被覆する外部充実層押出機25と、内部導体11の外周に発泡絶縁層を設けてなる発泡コア10の巻取を行う巻取ドラム27とで構成される。
【0032】
送出ドラム21から送出された内部導体11は、予熱槽22において予熱された後、内部充実層押出機23に導入され、内部充実層12が形成された後、発泡絶縁層押出機24に導入される。発泡絶縁層押出機24において内部導体11の外周に発泡絶縁層が被覆形成されると同時に、外部充実層押出機25により外部充実層14が形成され、発泡コア10が得られる。発泡絶縁層押出機24は、第1押出部24a、第2押出部24b、及び押出ヘッド部24cで構成される。
【0033】
より詳細に説明すると、発泡絶縁層を構成するコンパウンドは、第1押出部24aにおいて、上記の溶融樹脂28と、ガス注入装置29から注入、供給される発泡剤(例えば、炭酸ガスなど)とを170℃で混練される。その後、第2押出部24bで発泡に適した温度である140℃まで温度を下げられる。そして、内部充実層押出機23により予め内部充実層を約0.1mmの厚さで被覆された直径9.0mmの導体上に、発泡絶縁層13を厚さ約6.5mm、外部充実層14を厚さ約0.15mmとなるように同時に被覆し、押出ヘッド部24cで押出す。なお、発泡絶縁体の発泡度は比重法で73%以上になるように窒素ガスを圧入した。
【0034】
次に、発泡コア10を冷却水槽26内に導入して冷却を行い、巻取ドラム27に巻き取る。その後、巻取ドラム27に巻き取られた発泡コア10を送出し、銅テープをコルネート状にして外部充実層14の上にかぶせ外部導体15(図3参照)を設け、さらにその上に黒に着色したポリエチレンを押出しして外皮16(図3参照)を設けた。発泡コア10の構造を図2に示し、図3にケーブルの構造を示す。このようにして、高周波同軸ケーブル100が得られる。
【0035】
ケーブルの減衰量及び電圧定在波比の測定は、アジレント社製スカラネットワークアナライザ8757Dを用いて行い、2.0GHzでの減衰量が6.14dB/100m以下を○、6.10dB/100m以下を◎、6.14dB/100mより大きいものを×とした。VSWRは1.07以下を◎、1.10以下を○、1.10より大きいものを×とした。◎および○が合格である。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

メルトフローレートの値はJIS K7210に基づいて、190℃、21.8Nの荷重で測定した。
【0039】
tanδは摂動(空洞共振器)法に基づき関東電子応用開発製2.0GHz空洞共振器を用い、アジレント社製ネットワークアナライザ8720Dで測定を行った。
計算式は以下の通り。

Fr,Qr :試料非装時の共振周波数と無負荷Q
Fs,Qs :試料装荷時の共振周波数と無負荷時のQ
Sc,Ss :電界に垂直な空洞共振器及び試料の断面積
α :空洞共振器のモードにより決まる定数
表1の実施例1から4は、低密度ポリエチレンに電子線を0.1Mradから2.0Mradの範囲で照射しわずかに架橋構造を導入したものと、高密度ポリエチレンを重量比20対80の割合で混合したものの例である。同軸ケーブルの発泡層には巣の発生がなく、減衰量および電圧定在波比が合格している。実施例2から4については、減衰量と電圧定在波比が共に◎で合格している。
【0040】
表1の実施例5から7は、わずかに架橋構造を導入した低密度ポリエチレン樹脂と高密度ポリエチレン樹脂の配合を重量比1対99、10対90、30対70の割合で変えた場合の例である。これらについても同軸ケーブルの発泡層には巣の発生がなく高い発泡度が得られ、実施例6、7は減衰量および電圧定在波比が共に◎で合格している。
【0041】
表2の実施例8、9は電子線照射以外の架橋方法によるもの、表2の実施例10〜12は高密度ポリエチレン樹脂や低密度ポリエチレン樹脂の種類を変えたものの例であるが、これらについても同様に合格している。特に実施例10、11は減衰量および電圧定在波比が共に◎で合格している。
【0042】
表2の実施例13は、わずかに架橋構造を導入した低密度ポリエチレン樹脂の比率が40%とやや多い例であり、実施例7と比較するとtanδが大きいため減衰量がやや大きいが、合格している。
【0043】
表3の比較例1〜4は、高密度ポリエチレン樹脂に非架橋の低密度ポリエチレン樹脂を重量比90対10から60対40の値で配合比率を変えた例である。比較例1〜3は同軸ケーブルの減衰量は合格しているものの、発泡層には巣が発生し電圧定在波比が不合格となる。比較例4はMFRの値の小さい低密度ポリエチレンの配合量を40まで増やしたため巣の発生は抑えられているが、tanδの値が悪化し、同軸ケーブルの減衰量が不合格となる。比較例5〜7は高密度ポリエチレン樹脂や低密度ポリエチレン樹脂の種類を変えたものの例であるが、いずれも低密度ポリエチレンが非架橋のため巣の発生を抑えきれず、電圧定在波比が不合格となる。
【0044】
以上により本発明で得られる樹脂組成物および高周波同軸ケーブルは有用なものである。
【符号の説明】
【0045】
10…発泡コア、11…内部導体、12…内部充実層、13…発泡絶縁層、14…外部充実層、15…外部導体、16…外皮、20…ケーブル製造装置、21…送出ドラム、22…予熱槽、23…内部充実層押出機、24…発泡絶縁層押出機、24a…第1押出部、24b…第2押出部、24c…押出ヘッド部、25…外部充実層押出機、27…巻取ドラム、28…溶融樹脂、29…ガス注入装置、26…冷却水槽、100…高周波同軸ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度ポリエチレンと、架橋構造を導入した低密度ポリエチレンの混合物からなることを特徴とするポリエチレン樹脂組成物。
【請求項2】
前記架橋構造を導入した低密度ポリエチレン樹脂は、密度が0.920g/cm以上、0.930g/cm以下である請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物。
【請求項3】
前記架橋構造を導入した低密度ポリエチレン樹脂は、メルトフローレートが0.01g以上、0.5g/10分以下である請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物。
【請求項4】
前記高密度ポリエチレン樹脂と、前記架橋構造を導入した低密度ポリエチレン樹脂が、重量比で99対1から70対30の範囲の混合比であることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリエチレン樹脂組成物の誘電体損失における誘電正接tanδの値は、空洞共振摂動法による2GHzでの測定で2.0×10−4以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物。
【請求項6】
内部導体の外周に、内部充実層、発泡樹脂絶縁層、外部充実層、外部導体を順に設けた高周波同軸ケーブルにおいて、発泡絶縁層が請求項1〜請求項5のいずれかに記載のポリエチレン樹脂組成物の発泡体により構成されることを特徴とする高周波同軸ケーブル。
【請求項7】
低密度ポリエチレン樹脂に架橋構造を導入し、
高密度ポリエチレンと、前記架橋構造を導入した低密度ポリエチレンを混合させること
を特徴とするポリエチレン樹脂組成物を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−38456(P2012−38456A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175214(P2010−175214)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】