説明

樹脂組成物、発泡成形体およびその製造方法

【課題】セル構造を均一にし、発泡セルの微細性に優れた発泡成形体を得ることができる樹脂組成物、発泡成形体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】プロピレン重合体(A)を40〜95質量%、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)を5〜60質量%(ただし、前記プロピレン重合体(A)および前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の総量を100質量%とする。)、ならびに、有機ポリマービーズ(C)を、前記プロピレン重合体(A)および前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の総量100質量部に対して、0.1〜20質量部含み、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の密度が、0.85〜0.89g/cm3であることを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、発泡成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、機械的性質、耐薬品性等に優れ、経済性とのバランスにおいて極めて有用なため各成形分野に広く用いられている。
ポリプロピレンの発泡成形体が得られる組成物またはポリプロピレン成形発泡体を得る手段として、例えば、メタロセン担持型触媒を用いて製造された、プロピレンおよびα,ω−ジエンからなる共重合体、該共重合体に発泡剤が含有されたポリプロピレン系樹脂組成物、該組成物を加熱、溶融、混練、発泡成形した発泡体、ならびに、該発泡体を成形した発泡成形体が開示されている(特許文献1)。
【0003】
ポリプロピレンフィルムが得られる組成物を得る手段として、例えば、ポリプロピレン系樹脂に架橋ポリマービーズを混練して得られる組成物およびその延伸フィルムが開示されている(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−316510号公報
【特許文献2】特開平8−225689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたポリプロピレン系樹脂組成物は、必ずしも発泡性が充分ではなく、高発泡倍率の発泡体、あるいは、緻密な発泡セル構造を有する発泡体を得ることは困難であった。
また、特許文献2に開示されたポリプロピレン系樹脂組成物は、押出成形製品(フィルム)の耐ブロッキング性の問題を解決するためになされたものであり、射出成形製品の発泡体には用いられていないのが現状である。
【0006】
かかる状況の下、本発明の目的は、セル構造を均一にし、発泡セルの微細性に優れた発泡成形体を得ることができる樹脂組成物、発泡成形体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、以下の手段により達成された。
プロピレン重合体(A)を40〜95質量%、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)を5〜60質量%(ただし、前記プロピレン重合体(A)および前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の総量を100質量%とする。)、ならびに、有機ポリマービーズ(C)を、前記プロピレン重合体(A)および前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の総量100質量部に対して、0.1〜20質量部含み、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の密度が、0.85〜0.89g/cm3であることを特徴とする樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セル構造を均一にし、発泡セルの微細性に優れた発泡成形体を得ることができる樹脂組成物、その発泡成形体および製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、プロピレン重合体(A)を40〜95質量%、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)を5〜60質量%(ただし、前記プロピレン重合体(A)および前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の総量を100質量%とする。)、ならびに、有機ポリマービーズ(C)を、前記プロピレン重合体(A)および前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の総量100質量部に対して、0.1〜20質量部含み、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の密度が、0.85〜0.89g/cm3であることを特徴とする。
本発明の樹脂組成物は、発泡成形体用樹脂組成物として特に好適に使用することができる。
以下、詳細に説明する。
【0010】
<プロピレン重合体(A)>
本発明の樹脂組成物は、プロピレン重合体(A)を含む。
本発明に用いることができるプロピレン重合体(A)とは、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、および、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体をいう。これらの中でも、プロピレン単独重合体、および/または、プロピレン−エチレン共重合体を用いることが好ましく、プロピレン単独重合体、および、プロピレン−エチレン共重合体を用いることがより好ましい。
プロピレン−エチレン共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、または、プロピレン−エチレンブロック共重合体が挙げられる。プロピレン−エチレンブロック共重合体とは、プロピレン単独重合体成分と、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分とからなる共重合体である。
プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、または、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体が挙げられる。プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体とは、プロピレン単独重合体成分と、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分とからなる共重合体である。なお、本発明におけるα−オレフィンとしては、炭素数4以上のα−オレフィンが挙げられる。
プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、または、プロピレン−エチレン−α−オレフィンブロック共重合体が挙げられる。プロピレン−エチレン−α−オレフィンブロック共重合体とは、プロピレン単独重合体成分と、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体成分とからなる共重合体である。
プロピレン−α−オレフィン共重合体およびプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体で用いられるα−オレフィンとしては、炭素数が4〜20のα−オレフィンが挙げられ、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。プロピレン重合体(A)は2種類以上併用してもよい。
【0011】
プロピレン重合体(A)として、好ましくは、剛性、耐熱性または硬度を高めるという観点から、プロピレン単独重合体およびプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
【0012】
プロピレン単独重合体の13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は0.95以上が好ましく、さらに好ましくは0.98以上である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン単独重合体成分の、13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は、0.95以上が好ましく、さらに好ましくは0.98以上である。
【0013】
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、プロピレン重合体分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の中にあるプロピレンモノマー単位の分率であり、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖(以下、mmmmと表す)の中にあるプロピレンモノマー単位の分率である。アイソタクチック・ペンタッド分率の測定方法は、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法、すなわち13C−NMRによって測定される方法である(ただし、NMR吸収ピークの帰属は、その後発刊されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて決定される。)。
【0014】
具体的には、13C−NMRスペクトルによって測定されるメチル炭素領域の吸収ピークの面積に対する、mmmmピークの面積の割合が、アイソタクチック・ペンタッド分率である。この方法によって測定された英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率は、0.944であった。
【0015】
プロピレン−エチレンブロック共重合体の135℃のテトラリン溶媒中で測定される固有粘度(極限粘度数)([η]T)は、好ましくは0.1〜5dl/gであり、より好ましくは0.1〜3dl/gである。
また、プロピレン−エチレンブロック共重合体において、該ブロック共重合体を構成するプロピレン単独重合体成分の135℃のテトラリン溶媒中で測定される固有粘度([η]P)は、好ましくは0.1〜5dl/gであり、より好ましくは0.1〜3dl/gである。
さらに、プロピレン−エチレンブロック共重合体において、該ブロック共重合体を構成するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の135℃のテトラリン溶媒中で測定される固有粘度([η]EP)は、好ましくは1.0〜10dl/gであり、より好ましくは3〜8dl/gであり、さらに好ましくは4〜6dl/gである。
【0016】
上記プロピレン−エチレンブロック共重合体を構成するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の含有量は、好ましくは10〜60質量%であり、より好ましくは10〜40質量%である。
【0017】
上記プロピレン−エチレンブロック共重合体において、該ブロック共重合体を構成するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分中のエチレン含有量は、好ましくは20〜65質量%、より好ましくは25〜50質量%である(ただし、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の全量を100質量%とする)。
【0018】
また、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン単独重合体成分およびプロピレン−エチレンランダム共重合体成分のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布(Q値、Mw/Mn)は、それぞれ好ましくは3以上7以下である。
【0019】
上記プロピレン単独重合体のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1〜500g/10分であり、より好ましくは1〜400g/10分である。ただし、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgである。
【0020】
上記プロピレン−エチレンブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1〜200g/10分であり、より好ましくは5〜150g/10分である。ただし、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgである。
本発明におけるメルトフローレート(MFR)の測定は、JIS K7210に規定された方法に準じて行うことが好ましい。
【0021】
本発明に用いることができるプロピレン重合体(A)の製造方法としては、例えば、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。
公知の重合触媒としては、例えば、(1)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と、(2)有機アルミニウム化合物と(3)電子供与体成分からなる触媒系が挙げられる。この触媒の製造方法としては、例えば、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報や特開平10−212319号公報に記載されている製造方法が挙げられる。
【0022】
公知の重合方法としては、例えば、バルク重合法、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでもよく、また、これらの重合方法を任意に組み合わせてもよい。
【0023】
上記のプロピレン−エチレンブロック共重合体の製造方法として、好ましくは、前記の固体触媒成分(1)と、有機アルミニウム化合物(2)と電子供与体成分(3)からなる触媒系の存在下に少なくとも2槽からなる重合槽を直列に配置し、上記プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン単独重合体成分を製造した後、製造された前記成分を次の重合槽に移し、その重合槽でプロピレン−エチレンランダム共重合体成分を連続して製造して、プロピレン−エチレンブロック共重合体を製造する方法が挙げられる。
上記の製造方法で用いることができる固体触媒成分(1)、有機アルミニウム化合物(2)および電子供与体成分(3)の使用量や、各触媒成分を重合槽へ供給する方法は、適宜、決めればよい。
【0024】
重合温度は、好ましくは−30〜300℃であり、より好ましくは20〜180℃である。重合圧力は、好ましくは常圧〜10MPaであり、より好ましくは0.2〜5MPaである。分子量調整剤として、例えば、水素を用いてもよい。
【0025】
本発明に用いることができるプロピレン重合体(A)の製造において、本重合を実施する前に、公知の方法によって、予備重合を行ってもよい。公知の予備重合の方法としては、例えば、固体触媒成分および有機アルミニウム化合物の存在下、少量のプロピレンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法が挙げられる。
【0026】
<エチレン−α−オレフィン重合体(B)>
本発明の樹脂組成物は、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)を含む。
本発明に用いることができるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)として、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、または、これらの混合物が挙げられる。
【0027】
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の密度は、0.85〜0.89g/cm3である。好ましくは0.85〜0.88g/cm3であり、より好ましくは0.855〜0.875g/cm3である。上記範囲内であると、セル構造の均一性および微細性が向上する。
【0028】
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)に含有されるエチレン含量は、好ましくは20〜95質量%であり、より好ましくは30〜90質量%であり、α−オレフィン含量は、好ましくは80〜5質量%であり、より好ましくは70〜10質量%である。
【0029】
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)のMFR(測定温度は190℃、荷重は2.16kg)は、好ましくは1〜50g/10分であり、より好ましくは5〜50g/10分である。さらに好ましくは10〜40g/10分である。
【0030】
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)に用いることができるα−オレフィンとしては、炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられ、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。α−オレフィンとして、好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素数4〜12のα−オレフィンである。
【0031】
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の製造方法としては、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等によって、所定のモノマーを、メタロセン系触媒を用いて重合する方法が挙げられる。
メタロセン系触媒としては、例えば、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報等に記載されているメタロセン系触媒が挙げられる。
メタロセン系触媒を用いるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の製造方法として、好ましくは、欧州特許出願公開第1211287号明細書に記載されている方法が挙げられる。
【0032】
<(A)と(B)との割合>
本発明の樹脂組成物は、プロピレン重合体(A)を40〜95質量%、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)を5〜60質量%含む。ただし、前記プロピレン重合体(A)および前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の総量を100質量%とする。上記範囲内であると、発泡成形体とした場合に機械物性バランスが優れる。
【0033】
<有機ポリマービーズ(C)>
本発明の樹脂組成物は、有機ポリマービーズ(C)を含む。
本発明に用いることができる有機ポリマービーズ(C)は、架橋された有機ポリマービーズであることがより好ましい。
有機ポリマービーズ(C)は、例えば、一般的な乳化重合法、分散重合法、懸濁重合法、ソープフリー重合法、シード重合法等を用いて得ることができる。有機ポリマービーズの重合に使用できるモノマー種の例としては、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマー等を挙げることができる。(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、アクリル酸・アクリル酸メチル・アクリル酸エチル・アクリル酸ブチル等のアクリル酸またはアクリル酸のエステル誘導体、メタクリル酸・メタクリル酸メチル・メタクリル酸エチル・メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸またはメタクリル酸のエステル誘導体を挙げることができる。スチレン系モノマーの具体例としては、スチレン・メチルスチレン・エチルスチレン・ブチルスチレン・プロピルスチレン等のスチレン誘導体、また、その他モノマーとしては、酢酸ビニル・塩化ビニル・塩化ビニリデン・アクリロニトリル・メタクリロニトリル等の重合性ビニルモノマーを挙げることができる。これらのモノマーのうち、(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマーを用いることが好ましい。これらのモノマーは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明に用いることができる有機ポリマービーズ(C)の重合には架橋剤を併用することが好ましい。架橋剤としては、ビニル基を2つ以上含有するラジカル重合可能なモノマーであればよい。そのような具体例としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、ペンタエリストールテトラメタアクリレートが挙げられる。これらの架橋剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
また上記以外の有機ポリマービーズとして、1以上の有機基を有するシロキサン系ポリマービーズが挙げられる。シロキサン系ポリマービーズとは、一般的にシリコーンゴム、シリコーンレジンと呼称されるものであり、常温で固体状のものを指す。
有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、炭化水素環基等が例示できる。
シロキサン系ポリマーは主にオルガノクロロシラン類の加水分解と縮合によって製造される。
例えば、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、フェニルメチルクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシランに代表されるオルガノクロロシラン類を加水分解と縮合することにより、シロキサン系ポリマーを得ることができる。
これらのオルガノクロロシラン類は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
また、上記オルガノクロロシラン類とテトラクロロシラン等とを加水分解と縮合によってもシロキサン系ポリマーを得ることができる。
さらに、これらのシロキサン系ポリマーを過酸化ベンゾイル、過酸化−2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化−p−クロルベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化ジ−t−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等の過酸化物により架橋したり、シロキサン系ポリマーの末端にシラノール基を導入し、アルコキシシラン類と縮合架橋させたりすることにより架橋シロキサン系ポリマービーズを得ることができる。
また、本発明に用いることができる有機ポリマービーズ(C)は、多孔質のポリマービーズであってもよい。
これらの中でも、本発明に用いることができる有機ポリマービーズ(C)は、架橋ポリメタアクリル酸メチルポリマービーズ、架橋シロキサン系ポリマービーズ、または、架橋ポリスチレンポリマービーズであることが好ましく、架橋ポリメタアクリル酸メチルポリマービーズ、または、架橋シロキサン系ポリマービーズであることがより好ましく、架橋ポリメタアクリル酸メチルポリマービーズであることが特に好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物に含まれる有機ポリマービーズ(C)の含有量は、前記プロピレン重合体(A)と前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)100質量部に対して、0.1〜20質量部である。好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.1〜5質量部である。上記範囲内であると、セル構造の均一性および微細性が向上する。
【0037】
有機ポリマービーズの重量平均粒子径は、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.1〜6μmである。また、ポリマービーズの形状は、球状、楕円状、破砕状等が挙げられる。
【0038】
<無機フィラー(D)>
本発明の樹脂組成物は、無機フィラー(D)をさらに含むことが好ましい。
本発明に用いることができる無機フィラー(D)としては、例えば、炭素繊維、金属繊維、ガラスビーズ、マイカ、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカー、タルク、ベントナイト、スメクタイト、マイカ、セピオライト、ワラストナイト、アロフェン、イモゴライト、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、硫酸バリウム、ガラスフレーク等が挙げられるが、好ましくはタルクおよび繊維状マグネシウムオキシサルフェートであり、より好ましくはタルクである。これらの無機フィラーは1種用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
無機フィラー(D)の平均粒子径としては、好ましくは0.01〜50μmであり、より好ましくは0.1〜30μmであり、さらに好ましくは0.1〜5μmである。ここで無機フィラー(D)の平均粒子径とは、遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて水、アルコール等の分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
【0040】
無機フィラー(D)は、無処理のまま使用してもよく、樹脂組成物との界面接着強度を向上させるために、または、樹脂組成物中での無機フィラーの分散性を向上させるために、公知の各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類あるいは他の界面活性剤で無機フィラーの表面を処理して使用してもよい。
【0041】
無機フィラー(D)の含有量としては、プロピレン重合体(A)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の総量100質量部に対し、好ましくは0.1〜60質量部、より好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは1〜10質量部である。
【0042】
本発明の樹脂組成物のメルトフローレート(測定温度は230℃、荷重は2.16kg)は、好ましくは40〜200g/10分であり、より好ましくは40〜150g/10分、さらに好ましくは40〜120g/10分である。上記範囲内であると、流動性が好適であり、発泡成形時にバリ等の不良が発生しにくくなる。
【0043】
<添加剤>
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤を含有させてもよい。
本発明に用いることができる添加剤としては、特に制限はなく、公知の添加剤を用いることができ、例えば、中和剤、酸化防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤、銅害防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、分散剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、造核剤、難燃剤、気泡防止剤、架橋剤、着色剤、顔料等が挙げられる。
【0044】
以下、本発明の発泡成形体およびその製造方法について詳細に説明する。
本発明の発泡成形体は、本発明の樹脂組成物を用いて得られる発泡成形体であり、本発明の樹脂組成物からなる発泡成形体であることが好ましい。
本発明の発泡成形体の製造方法としては、特に制限はないが、本発明の樹脂組成物を調製する工程(調製工程)、および、前記樹脂組成物を発泡成形する工程(発泡工程)を含むことが好ましい。
【0045】
本発明の樹脂組成物を調製する工程(調製工程)は、上述した方法により製造した樹脂組成物の各成分を所定量計量し、タンブラー等で均一に予備混合する工程と、予備混合物を溶融混練する工程とを含むことが好ましい。
【0046】
前記樹脂組成物を発泡成形する工程(発泡工程)は、上記調製工程で得られた樹脂組成物と発泡剤とを混合する工程、および、前記樹脂組成物を発泡成形する工程を含むことが好ましい。
【0047】
本発明に用いることができる発泡剤としては、化学発泡剤、物理発泡剤などの公知の発泡剤が挙げられる。
本発明に用いることができる発泡剤は、特に限定されるものではなく、公知の化学発泡剤や物理発泡剤を用いることができる。発泡剤の添加量は、本発明の樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.2〜8質量部である。
【0048】
化学発泡剤としては、無機化合物であっても有機化合物であってもよく、2種以上を併用してもよい。無機化合物としては、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩などが挙げられる。有機化合物としては、クエン酸などのポリカルボン酸、アゾジカルボンアミド(ADCA)などのアゾ化合物などが挙げられる。
本発明では物理発泡剤を用いることが好ましい。物理発泡剤としては、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスや揮発性有機化合物などが挙げられる。中でも二酸化炭素、窒素、あるいはこれらの混合物を使用することが好ましい。物理発泡剤は2種以上を併用してもよく、化学発泡剤と物理発泡剤を併用してもよい。
【0049】
物理発泡剤を用いる場合には、物理発泡剤を超臨界状態で溶融状の樹脂組成物に混合することが好ましい。超臨界状態の物理発泡剤は樹脂への溶解性が高く、短時間で溶融状の樹脂組成物に均一に拡散することができるため、発泡倍率が高く、均一な発泡セル構造をもつ発泡成形体を得ることができる。
溶融状の樹脂組成物に物理発泡剤を混合する工程としては、物理発泡剤を射出成形装置のノズルまたはシリンダ内に注入する工程が挙げられる。
【0050】
本発明の樹脂組成物を発泡成形する工程として、具体的には、射出発泡成形法、プレス発泡成形法、押出発泡成形法、スタンパブル発泡成形法などの公知の方法を用いた工程が挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を、実施例および比較例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0052】
実施例または比較例では、以下に示した重合体、有機ポリマービーズおよび無機フィラーを用いた。
(1)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)
特開平7−216017号公報に記載の固体触媒成分を用いて気相重合法により製造した。
MFR(230℃、2.16kg荷重 JIS K7210に準拠。以下同様):31.7g/10分
プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の固有粘度([η]T):1.6dl/g
プロピレン単独重合体部分の固有粘度([η]P):0.93dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の共重合体全体に対する質量比率:20質量%
プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の固有粘度([η]EP):4.5dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン単位含量:36質量%
【0053】
(2)プロピレン単独重合体(A−2)
商品名:U501E1(住友化学(株)製)
MFR(230℃、2.16kg荷重):120g/10分
【0054】
(3)プロピレン単独重合体(A−3)
特開平7−216017号公報に記載の固体触媒成分を用いて気相重合法により製造した。
MFR(230℃、2.16kg荷重):300g/10分
【0055】
(4)エチレン−ブテン共重合体ゴム(B)
商品名:CX5505(住友化学(株)製)
密度:0.878(g/cm3
MFR(190℃、2.16kg荷重):14g/10分
【0056】
(5)有機ポリマービーズ(C)
(C−1)架橋ポリメタアクリル酸メチルポリマービーズ
商品名:エポスター MA1002(日本触媒(株)製)
粒径:2.0μm
(C−2)架橋ポリメタアクリル酸メチルポリマービーズ
商品名:テクノポリマー MBX−5(積水化成品工業(株)製)
粒径:5.7μm
(C−3)架橋シロキサン系ポリマービーズ
商品名:XC99−A8808(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
粒径:0.75μm
(C−4)架橋シロキサン系ポリマービーズ
商品名:トスパール120(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
粒径:2.0μm
(C−5)架橋ポリスチレンポリマービーズ
商品名:SX−130H(綜研化学(株)製)
粒径:1.3μm
(C−6)架橋ポリメタアクリル酸メチルポリマービーズ
商品名:GM−1005−MA(ガンツ化成(株)製)
粒径:10μm
(C−7)多孔質架橋ポリメタアクリル酸メチルポリマービーズ
商品名:GM−1005−10(ガンツ化成(株)製)
粒径:10μm
【0057】
<実施例1〜6、比較例1>
表1に示した各成分を所定量、計量し、タンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機((株)日本製鋼所製TEX44SS 30BW−2V型)を用いて、押出量30〜50kg/hr、スクリュー回転数300rpm、ベント吸引下で混練押出して、樹脂組成物ペレットを製造した。
このペレットを用い、エンゲル社製ES2550/400HL−MuCell(型締力400トン)射出成形機を用いて、射出発泡成形を行った。発泡剤としては、超臨界状態の窒素を用いた。
金型として、成形体概略寸法が、図1に示した成形品部寸法が290mm×370mm、高さ45mm、型締めした状態の基本キャビティクリアランス(初期板厚)1.5mmtに、一部1.6mmtの部分を有するの箱型形状(ゲート構造:ダイレクトゲート)のものを用いた。
シリンダ温度250℃、金型温度50℃に設定し、型締め後、発泡剤を含む樹脂組成物の射出を開始した。前記樹脂組成物を、金型キャビティ内に完全に射出充填した後、金型のキャビティ壁面を2.0mm後退させて該キャビティを増加させて前記樹脂組成物を発泡させた。発泡した樹脂組成物をさらに冷却し、完全に固化させて発泡成形体を得、ゲートから100mmの部位にて発泡成形体の評価を行った。
結果を表1および図2〜9に示す。なお、表1においては、プロピレン重合体(A)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の総量を100質量%として、(A)成分および(B)成分の組成を表し、また、プロピレン重合体(A)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の総量を100質量部として、(C)成分の組成を表した。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例および比較例で用いた、樹脂成分および樹脂組成物の物性の測定法を以下に示した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210に規定された方法に従って測定した。
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)以外の樹脂成分および組成物については、230℃、2.16kg荷重にて測定した。エチレン−α−オレフィン共重合体(B)については、190℃、2.16kg荷重にて測定した。
【0060】
(2)プロピレン−エチレンブロック共重合体の構造分析
(2−1)プロピレン−エチレンブロック共重合体の固有粘度
(2−1−a)プロピレン単独重合体成分の固有粘度:[η]P
プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン単独重合体成分の固有粘度:[η]Pは、その製造時に、プロピレン単独重合体の重合後に重合槽内よりプロピレン単独重合体を取り出し、取り出されたプロピレン単独重合体の[η]Pを測定して求めた。
【0061】
(2−1−b)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の固有粘度:[η]EP
プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の固有粘度:[η]EPは、プロピレン単独重合体成分の固有粘度:[η]Pとプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の固有粘度:[η]Tをそれぞれ測定し、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する質量比率:Xを用いて次式から計算により求めた。
[η]EP=[η]T/X−(1/X−1)[η]EP
[η]P:プロピレン単独重合体成分の固有粘度(dl/g)
[η]T:プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の固有粘度(dl/g)
【0062】
(2−1−c)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する質量比率:X
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する質量比率:Xはプロピレン単独重合体成分とプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の結晶融解熱量をそれぞれ測定し、次式を用いて計算により求めた。結晶融解熱量は、示差走査型熱分析(DSC)により測定した。
X=1−(ΔHf)T/(ΔHf)P
(ΔHf)T:ブロック共重合体全体の融解熱量(cal/g)
(ΔHf)P:プロピレン単独重合体成分の融解熱量(cal/g)
【0063】
(3)プロピレン−エチレンブロック共重合体中のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン含量:(C2’)EP
プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン含量:(C2’)EPは、赤外線吸収スペクトル法によりプロピレン−エチレンブロック共重合体全体のエチレン含量(C2’)Tを測定し、次式を用いて計算により求めた。
(C2’)EP=(C2’)T/X
(C2’)T:プロピレン−エチレンブロック共重合体全体のエチレン含量(質量%)
(C2’)EP:プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン含量(質量%)
X:プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する質量比率
【0064】
(4)発泡体の断面評価(発泡セルの微細性)
発泡成形により得られた発泡成形体の断面(ゲートから10cm離れた部位)でのセル状態を光学顕微鏡で観察し、発泡セルの微細性を5段階で判定した。ただし、1は最も低い微細性(セル密度低い)、5は最も高い微細性(セル密度高い)を示す。
具体的な5段階の判定基準は、以下の通りである。
5・・・気泡径が10〜100μmで均一であり、セルの破れ等が見られない。
4・・・気泡径が100〜300μmで均一であり、セルの破れ等が見られない。
3・・・気泡径が100〜500μmの範囲にあり、セルの破れ等が見られない。
2・・・気泡径が100〜500μmの範囲にあるが、セルの破れが見られる。
1・・・気泡径が100〜1,000μmで非常に不均一である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施態様として作製した、発泡成形体の斜視図である。
【図2】実施例1で作製した発泡成形体断面のセル状態を示す図である。
【図3】実施例2で作製した発泡成形体断面のセル状態を示す図である。
【図4】実施例3で作製した発泡成形体断面のセル状態を示す図である。
【図5】実施例4で作製した発泡成形体断面のセル状態を示す図である。
【図6】実施例5で作製した発泡成形体断面のセル状態を示す図である。
【図7】実施例6で作製した発泡成形体断面のセル状態を示す図である。
【図8】実施例7で作製した発泡成形体断面のセル状態を示す図である。
【図9】比較例1で作製した発泡成形体断面のセル状態を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1:ゲート接触部分
2:ゲートから10cm離れた部位(発泡体の断面評価をした部位)
3:発泡成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン重合体(A)を40〜95質量%、
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)を5〜60質量%(ただし、前記プロピレン重合体(A)および前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の総量を100質量%とする。)、ならびに、
有機ポリマービーズ(C)を、前記プロピレン重合体(A)および前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の総量100質量部に対して、0.1〜20質量部含み、
前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の密度が、0.85〜0.89g/cm3であることを特徴とする
樹脂組成物。
【請求項2】
無機フィラー(D)を、前記プロピレン重合体(A)および前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の総量100質量部に対して、0.1〜60質量部さらに含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが40〜200g/10分である、請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂組成物からなる発泡成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−108230(P2009−108230A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283094(P2007−283094)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】