説明

樹脂組成物、Bステージフィルム、積層フィルム及び多層基板

【課題】容易に得ることができ、更に穴又は凹凸を表面に有する部材に積層された場合に表面の平坦性を高めることができる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、充填剤とを含む。上記充填剤は、ビニル基を有するシランカップリング剤により表面処理されている。本発明に係る樹脂組成物では、上記エポキシ樹脂と上記硬化剤との合計100重量部に対して、上記充填剤の含有量が160重量部以上、900重量部以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、多層基板の絶縁層を形成するために用いられる樹脂組成物に関し、より詳細には、エポキシ樹脂と硬化剤と充填剤とを含む樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を用いたBステージフィルム、積層フィルム及び多層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層板及びプリント配線板等の電子部品を得るために、様々な樹脂組成物が用いられている。例えば、多層プリント配線板では、内部の層間を絶縁するための絶縁層を形成したり、表層部分に位置する絶縁層を形成したりするために、樹脂組成物が用いられている。
【0003】
上記樹脂組成物の一例として、下記の特許文献1には、シアネート樹脂と、フェノール樹脂と、無機充填剤とを含む樹脂組成物が開示されている。ここでは、樹脂組成物の難燃性及び耐熱性が高く、線膨張率が低いことが記載されている。また、特許文献1には、シアネート樹脂の反応性を向上させるために、エポキシ樹脂を用いることが好ましいことが記載されている。
【0004】
下記の特許文献2には、シアネートエステル樹脂と、アントラセン型エポキシ樹脂と、フェノキシ樹脂などの熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物が開示されている。ここでは、樹脂組成物の熱膨張率が低いこと、並びにスミアの除去が容易である絶縁層を形成できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−096296号公報
【特許文献2】特開2007−291368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多層プリント配線板の絶縁層には、該絶縁層に積層される他の絶縁層又は回路などと剥離が生じ難いことが強く求められる。このため、上記絶縁層では、熱により寸法が大きく変化しないことが望まれる。すなわち、上記絶縁層の線膨張率が低いことが望ましい。
【0007】
また、近年、パッケージの高密度化に伴い、該パッケージに用いられている基板がそりやすくなっている。このため、基板のそりを小さくする要求が非常に高まっている。基板のそりを十分に抑制するためには、基板上に積層される上記絶縁層の線膨張率を大幅に下げる必要がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1〜2に記載のような従来の樹脂組成物を用いた場合には、該樹脂組成物の硬化物の熱による寸法変化を十分に小さくすることができないことがあり、上記絶縁層の線膨張率が比較的高くなることがある。
【0009】
さらに、従来の樹脂組成物が穴又は凹凸を表面に有する基板上などに塗布されたときには、穴埋め性又は凹凸追従性が十分に得られないことがあり、その結果、積層された樹脂組成物の表面が十分に平坦にならないことがある。
【0010】
本発明の目的は、容易に得ることができ、更に穴又は凹凸を表面に有する部材に積層された場合に、表面の平滑性を高めることができる樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を用いたBステージフィルム、積層フィルム及び多層基板を提供することである。
【0011】
本発明の限定的な目的は、熱による寸法変化が小さい硬化物を得ることができる樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を用いたBステージフィルム、積層フィルム及び多層基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、エポキシ樹脂と、硬化剤と、充填剤とを含み、該充填剤が、ビニル基を有するシランカップリング剤により表面処理されており、上記エポキシ樹脂と上記硬化剤との合計100重量部に対して、上記充填剤の含有量が160重量部以上、900重量部以下である、樹脂組成物が提供される。
【0013】
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、上記エポキシ樹脂は、ビスフェノールS型エポキシ樹脂である。
【0014】
本発明に係る樹脂組成物の他の特定の局面では、上記硬化剤は、シアネートエステル樹脂又はフェノール化合物である。
【0015】
本発明に係る樹脂組成物のさらに他の特定の局面では、上記充填剤はシリカである。
【0016】
本発明に係るBステージフィルムは、本発明に従って構成された樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルムである。
【0017】
本発明に係る積層フィルムは、基材と、該基材の一方の表面に積層されており、かつ本発明に従って構成されたBステージフィルムとを備える。
【0018】
本発明に係る多層基板は、回路基板と、該回路基板の回路が形成された表面に積層された硬化物層とを備えており、上記硬化物層が、本発明に従って構成された樹脂組成物又は該樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルムを硬化させることにより形成されている。
【0019】
本発明に係る多層基板は、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数層の硬化物層とを備え、上記複数層の硬化物層の内の上記回路基板側とは反対の外側の表面に位置する硬化物層が本発明に従って構成された樹脂組成物又は該樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルムを硬化させることにより形成されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る樹脂組成物は、エポキシ樹脂と硬化剤と充填剤とを含み、該充填剤がビニル基を有するシランカップリング剤により表面処理されているので、エポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対する充填剤の含有量が160重量部以上、900重量部以下であって、該充填剤の含有量が比較的多いにもかかわらず、樹脂組成物又はBステージフィルムが穴又は凹凸を表面に有する部材に積層された場合に、樹脂組成物又はBステージフィルムの硬化後の表面の平滑性を高めることができる。さらに、本発明では、充填剤がビニル基を有するシランカップリング剤により表面処理されているので、該充填剤を用いて、樹脂組成物を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いた多層基板を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0023】
(樹脂組成物)
本発明に係る樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、充填剤とを含む。該充填剤は、ビニル基を有するシランカップリング剤により表面処理されている。
【0024】
本発明に係る樹脂組成物では、上記エポキシ樹脂と上記硬化剤との合計100重量部に対して、上記充填剤の含有量は160重量部以上、900重量部以下である。
【0025】
エポキシ樹脂を含む樹脂組成物及びBステージフィルムにおいて、それらの硬化物の熱による寸法変化を小さくするためには、すなわち線膨張率を低くするためには、シリカなどの充填剤を多く配合する必要がある。
【0026】
しかしながら、充填剤を多く配合した従来の樹脂組成物又は該樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルムでは、該樹脂組成物又はBステージフィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が比較的低い。埋め込み性が低いと、回路基板上に積層された樹脂組成物及び該樹脂組成物の硬化物の上面の平坦性が低くなる。
樹脂組成物又はBステージフィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性は特に、エポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対する充填剤の含有量が160重量部以上である樹脂組成物ではより一層低くなり、充填剤の含有量が200重量部以上である樹脂組成物ではさらに一層低くなる。
【0027】
これに対して、本発明に係る樹脂組成物の上記組成の採用により、該樹脂組成物又はBステージフィルムが穴又は凹凸を表面に有する部材に積層された場合に、エポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対する充填剤の含有量が160重量部以上であって、該充填剤の含有量が比較的多いにもかかわらず、樹脂組成物又はBステージフィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性を高めることができる。その結果、樹脂組成物又はBステージフィルムを各種パターンに積層又はラミネートした後の表面の平滑性を高めることができる。さらに、各種パターンに積層又はラミネートされた樹脂組成物又はBステージフィルムが硬化された後の硬化物の表面の平滑性を高めることができ、さらに基板作成工程で生じる薬液処理によるウエット工程後の硬化物の表面の平滑性を高めることができる。樹脂組成物、樹脂組成物の硬化物、Bステージフィルム又はBステージフィルムの硬化物の表面が平坦であると、該平坦な表面に、銅回路などの回路パターンを容易に形成できる。また、硬化物の表面が凹凸である場合に、銅回路を形成したときに凹部部分に意図せずに銅が侵入して生じる回路間のショートが生じやすいのに対し、硬化物の表面が平坦であると、回路間のショートを生じ難くすることができる。
【0028】
また、充填剤を多く含む樹脂組成物において、ビニル基を有するシランカップリング剤により表面処理された充填剤を用いることにより、表面に光沢がでるほどに樹脂組成物の硬化物及びBステージフィルムの硬化物の表面の平坦性を高めることができる。さらに、上記ビニル基を有するシランカップリング剤により充填剤が表面処理されていることによって、薬液処理により樹脂表面をあらす工程において微細な表面形状を維持することができる。このため、本発明に係る樹脂組成物及びBステージフィルムは、表面層を形成するために好適に用いられる。
【0029】
穴又は凹凸を表面に有する部材上に配置された樹脂組成物の硬化物及びBステージフィルムの硬化物の上面の凹凸は小さく、該硬化物の上面の算術平均粗さRaは小さいことが好ましい。この場合には、硬化物の上面に導電層を形成し、該導電層をエッチング処理して微細な回路を形成する際に、除去されるべき導電層部分の除去が容易になる。導電層を容易に除去できるので、該導電層を除去するために高濃度の薬液で長時間処理する必要がなくなる。このため、硬化物の表面の劣化、及び除去されるべきではない導電層部分が部分的に除去されるのを抑制できる。
【0030】
また、本発明に係る樹脂組成物では、エポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対して、充填剤の含有量が160重量部以上であると、硬化物の熱による寸法変化が小さくなり、すなわち線膨張率が低くなる。例えば、0〜50℃での硬化物の平均線膨張率を20ppm/℃以下にすることができる。この結果、リフロー工程などで硬化物が高温に晒されても、硬化物の寸法が大きく変化し難くなり、硬化物の剥離が生じ難くなる。本発明に係る樹脂組成物では、硬化物の寸法が大きく変化し難いため、近年の高密度化されたパッケージにおいて、該パッケージに用いられている基板の反りを十分に抑制することができる。
【0031】
本発明では、エポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対して、充填剤の含有量が160重量部以上であるにも関わらず、硬化物の線膨張率を低くすることができ、しかも樹脂組成物又はBステージフィルムを各種パターンに積層又はラミネートした後の表面の平滑性を高めることができ、各種パターンに積層又はラミネートされた樹脂組成物又はBステージフィルムが硬化された後の硬化物の表面の平滑性を高めることができ、さらに基板作成工程で生じる薬液処理によるウエット工程後の硬化物の表面の平滑性を高めることができる。
【0032】
また、ビニル基を有するシランカップリング剤により表面処理された充填剤を溶剤に分散させたスラリーは、貯蔵安定性が比較的高い。従って、上記スラリーを大量に調製し、該スラリーを用いて樹脂組成物を調製することにより、樹脂組成物を効率よくかつ容易に得ることができる。
【0033】
なお、上記「貯蔵安定性」とは、表面処理された充填剤を含むスラリーの経時での色の変化を示し、又はシランカップリング剤により表面処理された充填剤とエポキシ樹脂と硬化剤とを含む樹脂組成物又はBステージフィルムの経時での色の変化を示す。表面処理された充填剤を含むスラリー、樹脂組成物又はBステージフィルムの色の変化が少ないほど、貯蔵安定性に優れ、色の変化がないと貯蔵安定性に特に優れる。
【0034】
硬化物の熱による寸法変化をより一層小さくし、かつ硬化物の剥離をより一層抑制する観点からは、本発明に係る樹脂組成物の硬化物の0〜50℃での平均線膨張率は、好ましくは銅と同程度の17ppm/℃以下、より好ましくは15ppm/℃以下、更に好ましくは11ppm/℃以下である。
【0035】
回路基板上の穴又は凹凸に対して埋め込まれた後の樹脂組成物、該樹脂組成物の硬化物、Bステージフィルム又は該Bステージフィルムの硬化物の上面の算術平均粗さRaは、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、最も好ましくは50nm以下である。上記算術平均粗さRaが上記上限以下であると、樹脂組成物又はBステージフィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性及び基板上での樹脂均一性が十分に高くなる。算術平均粗さRaは、JIS B0601−1994に準拠した測定法により求められる。また、基板作成工程で生じる薬液処理によるウエット工程後の硬化物の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、最も好ましくは100nm以下である。
【0036】
以下、本発明に係る樹脂組成物に含まれているエポキシ樹脂、硬化剤及び充填剤などの詳細を説明する。
【0037】
[エポキシ樹脂]
本発明に係る樹脂組成物に含まれているエポキシ樹脂は特に限定されない。該エポキシ樹脂として、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。該エポキシ樹脂は、少なくとも1つのエポキシ基を有する有機化合物をいう。エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0039】
上記エポキシ樹脂は、ビスフェノールS型エポキシ樹脂であることが好ましい。ビスフェノールS型エポキシ樹脂の使用により、硬化物の熱による寸法変化をより一層小さくすることができ、かつ凹凸表面に埋め込まれた樹脂組成物及びBステージフィルムの表面の平坦性をより一層高めることができる。
【0040】
また、従来のエポキシ樹脂を含む樹脂組成物において、硬化物の熱による寸法変化を小さくするためには、すなわち線膨張率を低くするためには、シリカなどの充填剤を多く配合する必要がある。また、多層プリント配線板などの多層基板では、硬化物の表面には平坦性が求められる一方で、導電層の密着性を高めたり、ビア内のスミアを除去したりするために硬化物の表面が粗化処理又はデスミア処理されることがある。硬化物の線膨張率を低くするために充填剤を多く配合すると、樹脂組成物の硬化物の表面を粗化処理又はデスミア処理したときに、表面の表面粗さが大きくなる。
【0041】
特にエポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対する充填剤の含有量が160重量部以上である樹脂組成物では、粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の表面粗さが大きくなりやすく、充填剤の含有量が400重量部以上である樹脂組成物では、粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の表面粗さがかなり大きくなり、粗化処理及びデスミア処理の制御が困難となる。一方で、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用した場合、0〜50℃での平均線膨張率11ppm以下を達成しようとした場合、エポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対する充填剤の含有量が400重量部以下であると、硬化物の上記平均線膨張率が11ppmよりも大きくなる。これに対して、ビスフェノールS型エポキシ樹脂の使用により、硬化物の熱による寸法変化をより一層小さくすることができ、充填剤の含有量が400重量部以下でも、上記平均線膨張率11ppm以下を達成することができ、しかも粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくすることができる。上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂の使用により、充填剤の含有量が比較的少なく400重量部以下であっても、硬化物の線膨張率が充分に低くなる。従って、例えば、0〜50℃での平均線膨張率が11ppm/℃以下である硬化物を得るために、上記エポキシ樹脂は、ビスフェノールS型エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0042】
上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂の市販品としては、DIC社製の「EXA−1514」及び「EXA−1517」、並びにJER社製の「YL7487」及び「YL7459」等が挙げられる。
【0043】
硬化物の熱による寸法変化をより一層小さくし、かつ粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくする観点からは、上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂は、2官能以上のビスフェノールS型エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0044】
粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくする観点からは、上記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、90〜1000の範囲内であることが好ましい。該エポキシ当量は好ましくは100以上、より好ましくは800以下である。
【0045】
(硬化剤)
本発明に係る樹脂組成物に含まれている硬化剤は特に限定されない。該硬化剤として、従来公知の硬化剤を用いることができる。硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
上記硬化剤としては、シアネートエステル樹脂(シアネートエステル硬化剤)、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、アミン化合物、酸無水物及びジシアンジアミド等が挙げられる。なかでも、熱による寸法変化がより一層小さい硬化物を得る観点からは、上記硬化剤は、シアネートエステル樹脂又はフェノール化合物であることが好ましい。上記硬化剤は、シアネートエステル樹脂であることが好ましく、フェノール化合物であることも好ましい。上記硬化剤は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
【0047】
上記シアネート樹脂の使用により、シリカの含有量が多いBステージフィルムのハンドリング性を良好にすることができ、硬化物のガラス転移温度をより一層高くすることができる。上記シアネートエステル樹脂は特に限定されない。該シアネートエステル樹脂として、従来公知のシアネートエステル樹脂を用いることができる。上記シアネートエステル樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
上記シアネートエステル樹脂としては、ノボラック型シアネート樹脂及びビスフェノール型シアネート樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネート樹脂としては、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等が挙げられる。
【0049】
上記シアネートエステル樹脂の市販品としては、フェノールノボラック型シアネート樹脂(Lonza社製「PT−30」及び「PT−60」)、並びにビスフェノールAジシアネートがトリアジン化され、三量体とされたプレポリマー(Lonza社製「BA230」)等が挙げられる。
【0050】
エポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対する充填剤の含有量が160重量部以上であっても、穴又は凹凸を表面に有する部材に積層された場合の樹脂組成物又はBステージフィルムの表面の平坦性をより一層高め、更に樹脂組成物又はBステージフィルムを各種パターンに積層又はラミネートした後の表面の平滑性をより一層高め、各種パターンに積層又はラミネートされた樹脂組成物又はBステージフィルムが硬化された後の硬化物の表面の平滑性をより一層高め、さらには基板作成工程で生じる薬液処理によるウエット工程後の硬化物の表面の平滑性をより一層高める観点からは、上記シアネート樹脂原料のシアネート当量は、シアネート樹脂が多量体(3量体)ではないシアネートエステル樹脂である場合、100〜300の範囲内であることが好ましい。該シアネート当量は、より好ましくは120以上、より好ましくは250以下である。また上記シアネート樹脂原料のシアネート当量は多量体(3量体)のシアネートエステル樹脂である場合、130〜500の範囲内であることが好ましい。該シアネート当量は、より好ましくは150以上、より好ましくは300以下である。上記シアネート当量は、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応可能な官能基の官能基当量である。
【0051】
上記フェノール化合物の使用により、硬化物と金属層との密着性をより一層高めることができる。また、上記フェノール化合物の使用により、例えば、樹脂組成物の硬化物の表面上に設けられた銅の表面を黒化処理又はCz処理することにより、硬化物と銅との密着性をより一層高めることができる。上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
【0052】
粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくする観点からは、上記フェノール化合物の水酸基当量は、130〜500の範囲内であることが好ましい。該水酸基当量は、より好ましくは220以下、更に好ましくは180以下である。上記水酸基当量は、エポキシ樹脂と反応性がある、フェノール性水酸基当量である。さらに、フェノール硬化剤としてアミノトリアジン骨格を有するフェノール化合物が好ましい。上記アミノトリアジン骨格を有するフェノール化合物であれば、エポキシ樹脂と反応性がある官能基としてフェノール性水酸基とアミノ基とがあり、結果的に架橋密度が非常に高くなり、硬化物の線膨張率をより一層小さくすることができる。
【0053】
上記硬化剤は、シアネートエステル樹脂又はフェノール化合物であることが好ましい。シアネートエステル樹脂又はフェノール化合物の使用により、熱による寸法変化がより一層小さい硬化物を得ることができ、更に粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくすることができる。
【0054】
エポキシ樹脂と硬化剤との含有量は特に限定されない。硬化剤がフェノール化合物である場合、樹脂組成物中でのエポキシ樹脂のエポキシ基の数のフェノール化合物のフェノール性水酸基の数に対する比(エポキシ基の数/フェノール性水酸基の数)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは1.0以上、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは2.0以下である。上記比(エポキシ基の数/フェノール性水酸基の数)が上記下限以上であると、エポキシ基の数が十分に多くなり、硬化物の耐熱性及び耐湿性がより一層高くなる。上記比(エポキシ基の数/フェノール性水酸基の数)が上記上限以下であると、フェノール性水酸基の数が十分に多くなり、エポキシ樹脂材料を充分に硬化させることができ、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0055】
硬化剤が多量体(3量体)ではないシアネートエステル樹脂である場合、樹脂組成物中でのエポキシ樹脂のエポキシ基の数のシアネートエステル樹脂のシアネート基の数に対する比(エポキシ基の数/シアネート基の数)は、0.75〜2.0であることが好ましい。硬化剤がシアネートエステル樹脂の多量体である場合には、樹脂組成物中でのエポキシ樹脂のエポキシ基の数のシアネートエステル樹脂のシアネート基の数に対する比(エポキシ基の数/シアネート基の数)は、1.5〜4.0であることが好ましく、更に好ましくは3.0〜3.8である。上記比(エポキシ基の数/シアネート基の数)が上記下限以上であると、エポキシ基の数が十分に多くなり、硬化物が脆くなり難く、粗化処理又は膨潤処理前の硬化物の耐薬品性が高くなることで粗化処理又は膨潤処理で硬化物が荒れ難くなる。上記比(エポキシ基の数/シアネート基の数)が上記上限以下であると、シアネート基の数が十分に多くなり、硬化不足が生じ難く、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0056】
[充填剤]
本発明に係る樹脂組成物に含まれている充填剤は、ビニル基を有するシランカップリング剤により表面処理されている。上記充填剤としては、無機充填剤、有機充填剤及び有機無機複合充填剤等が挙げられる。なかでも、無機充填剤が好ましい。上記充填剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
上記無機充填剤としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等が挙げられる。なかでも、シリカが好ましく、溶融シリカがより好ましい。シリカの使用により、硬化物の線膨張率をより一層低くすることができ、かつ粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の表面粗さを効果的に小さくすることができる。シリカの形状は略球状であることが好ましい。
【0058】
上記有機充填剤としては、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等からなる粒子状物が挙げられる。
【0059】
上記有機無機複合充填剤は、無機充填剤の表面に有機化合物が共有結合された化合物等が挙げられる。上記有機無機複合充填剤を構成する材料としては、例えばシリコン樹脂及びポリシルセスキオキサン等が挙げられる。
【0060】
上記ビニル基を有するシランカップリング剤は、加水分解性シリル基とビニル基とを有する有機珪素化合物であることが好ましい。上記加水分解性シリル基は、アルコキシシリル基であることが好ましい。上記アルコキシシリル基としては、メトキシ基及びエトキシ基等が挙げられる。
【0061】
上記ビニル基を有するシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及び3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。穴又は凹凸を表面に有する部材に積層された場合に、樹脂組成物又はBステージフィルムの表面の平坦性をより一層高める観点からは、上記ビニル基を有するシランカップリング剤は、アリルトリアルコキシシランであることが好ましく、アリルトリメトキシシラン又はアリルトリエトキシシランであることがより好ましい。
【0062】
エポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対する充填剤の含有量が160重量部以上であっても、穴又は凹凸を表面に有する部材に積層された場合に樹脂組成物又はBステージフィルムの表面の平坦性を高め、更に樹脂組成物又はBステージフィルムを各種パターンに積層又はラミネートした後の表面の平滑性を高め、各種パターンに積層又はラミネートされた樹脂組成物又はBステージフィルムが硬化された後の硬化物の表面の平滑性を高め、さらには基板作成工程で生じる薬液処理によるウエット工程後の硬化物の表面の平滑性を高める観点からは、充填剤は、アミノ基を有するシランカップリング剤により表面処理されていることも好ましい。しかし、アミノ基を有するシランカップリング剤では、一般的に表面処理されたシリカなどの充填剤を含むスラリーが経時で色が変化しやすく、更に表面処理されたシリカなどの充填剤を含むスラリーを用いた樹脂組成物又はBステージフィルムにおいても、経時で色が変化するという問題がある。これは経時で品質安定性が悪いことを示しており、主に外観上の課題があることを示している。従って、アミノ基を有するシランカップリング剤により表面処理された充填剤は、使用しないことが望ましい。
【0063】
ビニル基を有するシランカップリング剤により表面処理された充填剤を溶剤に分散させたスラリーは、アミノフェニルシランカップリング剤などのアミノ基を有するシランカップリング剤により表面処理された充填剤を溶剤に分散させたスラリーと比較して、貯蔵安定性が比較的高い。従って、上記スラリーを大量に調製し、該スラリーを用いて樹脂組成物を調製することにより、樹脂組成物を効率よくかつ容易に得ることができる。更に、スラリーの使用により、樹脂組成物中での充填剤の分散性を高くすることができ、均質な硬化物を得ることができる。
【0064】
上記充填剤の平均粒子径は、0.1〜20μmの範囲内であることが好ましい。上記平均粒子径は、好ましくは0.2μm以上、好ましくは2μm以下である。
【0065】
樹脂組成物に含まれているエポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対して、上記充填剤の含有量は160重量部以上、900重量部以下である。上記充填剤の含有量が上記範囲内であると、熱による寸法安定性が十分に小さい硬化物を得ることができ、さらに積層後の樹脂組成物及びBステージフィルムの表面の平坦性を十分に高めることができる。
【0066】
硬化物の熱による寸法変化をより一層小さくする観点からは、エポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対して、上記充填剤の含有量は、好ましくは200重量部以上、より好ましくは250重量部以上、特に好ましくは300重量部以上である。本発明における上記組成の採用により、充填剤の含有量が200重量部以上又は300重量部以上であっても、硬化物の線膨張率を充分に低くすることができ、更に積層後の樹脂組成物及びBステージフィルムの表面の平坦性を充分に高めることができる。
【0067】
積層後の樹脂組成物及びBステージフィルムの表面の平坦性をさらに一層高める観点からは、上記エポキシ樹脂と上記硬化剤との合計100重量部に対して、上記充填剤の含有量は、好ましくは600重量部以下、特に好ましくは400重量部以下である。
【0068】
特に、ビスフェノールS型エポキシ樹脂ではなくビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いた場合には、硬化物の0〜50℃での平均線膨張率を例えば11ppm/℃以下にするために、シリカ等の充填剤の含有量を400重量部以上にしなければならないことがある。一方で、本発明における上記組成を採用し、かつビスフェノールS型エポキシ樹脂を用いることにより、充填剤の含有量が400重量部以下であっても、硬化物の線膨張率を低くして、更に樹脂組成物又はBステージフィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性を良好にすることでき、さらには基板作成工程で生じる薬液処理によるウエット工程後の硬化物の表面を平滑にすることができる。
【0069】
上記充填剤の含有量が少ないと、特にエポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対して、上記充填剤の含有量が400重量部以下であると、Bステージフィルム及び硬化物がより一層脆くなり難く、硬化物の表面に充填剤の脱離により形成された比較的大きな孔がより一層形成され難くなる。更に、上記充填剤の含有量が少ないと、特にエポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対する上記充填剤の含有量が400重量部以下であると、樹脂組成物又はBステージフィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性をより一層良好に保つことができ、硬化物の絶縁性をより一層高く保つことができ、更に粗化処理又はデスミア処理に用いられる液及びめっき液の過度のしみ込みを抑制できる。
【0070】
また、エポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対して、充填剤の含有量が400重量部を超える場合と比較して、充填剤の含有量が400重量部以下である場合には、回路基板などの部材上に樹脂組成物又はBステージフィルムを積層し、硬化させたときに硬化物の表面の外観を良好にすることができ、充填剤の脱離により形成された比較的大きな孔が形成され難くなり、更に最低溶融粘度が比較的低くなるので、凹凸表面への樹脂組成物の埋め込み性をより一層良好にすることができる。さらには、基板作成工程で生じる薬液処理によるウエット工程後の硬化物の表面の平滑性を高めることができる。
【0071】
樹脂組成物に含まれている全固形分(以下、全固形分Bと略記することがある)100重量%中、上記充填剤の含有量は、好ましくは61.5重量%以上、より好ましくは66.7重量%以上、より好ましくは71.4重量%以上、更に好ましくは75.0重量%以上、好ましくは90.0重量%以下、より好ましくは85.7重量%以下、特に好ましくは80.0重量%以下、最も好ましくは79.5重量%以下である。「全固形分B」とは、エポキシ樹脂と硬化剤と充填剤と必要に応じて配合される固形分との総和をいう。「固形分」とは、不揮発成分であり、成形又は加熱時に揮発しない成分をいう。
【0072】
[フェノキシ樹脂]
本発明に係る樹脂組成物は、フェノキシ樹脂を含んでいてもよい。該フェノキシ樹脂の使用により、樹脂組成物の回路の凹凸への追従性を高めることができ、更に粗化処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくすることができ、粗度を均一にすることができる。
【0073】
上記フェノキシ樹脂は特に限定されない。該フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を用いることができる。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、及びナフタレン骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、5,000〜100,000の範囲内であることが好ましい。上記フェノキシ樹脂の具体例としては、例えば、東都化成社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びにジャパンエポキシレジン社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」、「YX8100BH30」、「YL7600DMAcH25」及び「YL7213BH30」などが挙げられる。
【0075】
樹脂組成物の硬化物の表面を粗化処理した後に、金属層を形成するためにめっき処理した場合に、硬化物と金属層との接着強度を高めることができるので、上記フェノキシ樹脂は、ビフェニル骨格を有することが好ましく、ビフェノール骨格を有することがより好ましい。
【0076】
上記フェノキシ樹脂の含有量は特に限定されない。樹脂組成分に含まれている充填剤を除く全固形分(以下、上記全固形分Aと略記することがある)100重量%中、上記フェノキシ樹脂の含有量は0〜40重量%の範囲内であることが好ましい。上記全固形分A100重量%中、上記フェノキシ樹脂の含有量は、より好ましくは20重量%以下である。上記フェノキシ樹脂を用いなくてもよい。上記フェノキシ樹脂の含有量が上記上限以下であると、樹脂組成物又はBステージフィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。さらに、充填剤の含有量が比較的多い場合でも、樹脂組成物又はBステージフィルムを各種パターンに積層又はラミネートした後の表面の平滑性をより一層高め、各種パターンに積層又はラミネートされた樹脂組成物又はBステージフィルムが硬化された後の硬化物の表面の平滑性をより一層高めることができる。「全固形分A」とは、エポキシ樹脂と硬化剤と必要に応じて配合される他の固形分との総和をいう。全固形分Aには、充填剤は含まれない。「固形分」とは、不揮発成分であり、成形又は加熱時に揮発しない成分をいう。
【0077】
[他の成分及び樹脂組成物の詳細]
本発明に係る樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤を含んでいてもよい。該硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を用いることができる。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0078】
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。
【0079】
上記イミダゾール化合物としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0080】
上記リン化合物としては、トリフェニルフォスフィン等が挙げられる。
【0081】
上記有機金属塩としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
【0082】
硬化物の電気絶縁性を高める観点からは、上記硬化促進剤は、イミダゾール化合物であることが特に好ましい。硬化物の電気絶縁性を高める観点からは、上記硬化促進剤は、有機金属化合物を含まないことが好ましい。
【0083】
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。樹脂組成物を効率的に硬化させる観点からは、エポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対して、上記硬化促進剤の含有量は0.01〜3重量部の範囲内であることが好ましい。
【0084】
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、樹脂組成物には、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤及び上述した樹脂以外の他の樹脂等を添加してもよい。
【0085】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0086】
上記カップリング剤の含有量は特に限定されない。上記全固形分A100重量%中、上記カップリング剤の含有量は0.01〜3重量%の範囲内であることが好ましい。
【0087】
上記他の樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチラール樹脂、ジビニルベンジルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、ビスマレイミド樹脂及びアクリレート樹脂等が挙げられる。
【0088】
本発明に係る樹脂組成物を得るために、溶剤を用いてもよい。該溶剤は、樹脂組成物中に含まれる成分に対して良好な溶解性を示すものであれば特に限定されない。上記溶剤としては、例えばアセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N−メチル−ピロリドン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。上記溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0089】
本発明に係る樹脂組成物は、大部分の溶剤を揮発させて用いられることが好ましい。溶剤を揮発させるために、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、加熱乾燥すればよい。溶剤を含む樹脂組成物を、例えば90〜200℃で10〜180分間乾燥させることにより、ハンドリング性が良好な樹脂組成物を得ることができる。
【0090】
本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形する方法としては、例えば、押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法、樹脂組成物を有機溶剤等の溶剤に溶解又は分散させた後、キャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法、並びに従来公知のその他のフィルム成形法等が挙げられる。なかでも、薄型化を進めることができるので、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
【0091】
樹脂組成物をフィルム状にし、回路の絶縁層として用いる場合、樹脂組成物により形成された層の厚さは、回路を形成する導体層の厚さ以上であることが好ましい。上記樹脂組成物により形成された層の厚さは、好ましくは5μm以上、好ましくは200μm以下である。
【0092】
本発明に係る樹脂組成物は、基材に含浸され、プリプレグとされてもよい。
【0093】
上記基材としては、例えば金属、ガラス、カーボン、アラミド、ポリエステル又は芳香族ポリエステル等により形成された織布又は不織布、並びにフッ素系樹脂又はポリエステル系樹脂等により形成された多孔質膜等が挙げられる。
【0094】
(プリント配線板)
次に、プリント配線板について説明する。
【0095】
上記プリント配線板は、例えば、本発明に係る樹脂組成物により形成されたフィルムを用いて、該フィルムを加熱加圧成形することにより得られる。
【0096】
上記フィルムに対して、片面又は両面に金属箔を積層できる。上記フィルムと金属箔とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネータ等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記フィルムを金属箔に積層できる。上記加熱の温度及び上記加圧の圧力は適宜変更することができ、特に限定されない。上記加熱の温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、好ましくは220℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記加圧の圧力は、好ましくは0.5MPa以上、より好ましくは1MPa以上、好ましくは10MPa以下、より好ましくは6MPa以下である。
【0097】
(Bステージフィルム及び積層フィルム)
本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形することにより、Bステージフィルムを得ることができる。
【0098】
上述のような乾燥工程により得ることができる、ハンドリング性が良好なフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。更に、ハンドリング性をより一層高めるために、完全硬化に至らない範囲で半硬化状態とされたフィルム状の樹脂組成物もBステージフィルムと称する。
【0099】
上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある半硬化物である。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
【0100】
上記Bステージフィルムの不揮発性の固形分100重量部に対して、上記溶剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上、好ましくは6重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。上記溶剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、Bステージフィルムの表面の粘着性が高くなりすぎず、ハンドリング性を高めることができる。さらに、Bステージフィルムを他の部材に積層した場合に、表面の平坦性を高めることができる。
【0101】
本発明に係る樹脂組成物は、基材と、該基材の一方の表面に積層されたBステージフィルムとを備える積層フィルムを形成するために好適に用いることができる。積層フィルムのBステージフィルムが、本発明に係る樹脂組成物により形成される。
【0102】
上記積層フィルムの上記基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムなどのオレフィン樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、銅箔及びアルミニウム箔などの金属箔等が挙げられる。上記基材の表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
【0103】
(銅張り積層板及び回路基板)
本発明に係る樹脂組成物は、銅張り積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張り積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層されたBステージフィルムとを備える銅張り積層板が挙げられる。この銅張り積層板のBステージフィルムが、本発明に係る樹脂組成物により形成される。
【0104】
上記銅張り積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、Bステージフィルムを硬化した硬化物層と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
【0105】
また、本発明に係る樹脂組成物は、多層基板を得るために好適に用いられる。上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された硬化物層とを備える回路基板が挙げられる。この多層基板の硬化物層が、上記樹脂組成物又は該樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルムを硬化させることにより形成される。上記硬化物層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記硬化物層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。本発明に係る樹脂組成物の使用により、上記回路間に上記硬化物層を十分に埋め込ませることができる。
【0106】
上記多層基板では、上記硬化物層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理又はデスミア処理されていることが好ましく、粗化処理されていることがより好ましい。
【0107】
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ特に限定されない。上記硬化物層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
【0108】
また、上記多層基板は、上記硬化物層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
【0109】
また、上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された硬化物層と、該硬化物層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える回路基板が挙げられる。上記硬化物層及び上記銅箔が、銅箔と該銅箔の一方の面に積層されたBステージフィルムとを備える銅張り積層板を用いて、上記Bステージフィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
【0110】
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の硬化物層とを備える回路基板が挙げられる。上記複数層の硬化物層の内の上記回路基板側とは反対の外側の表面に位置する硬化物層が、上記樹脂組成物又は該樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルムを硬化させることにより形成される。上記外側の表面に位置する硬化物層は、回路基板の回路が形成された表面上に積層されていることが好ましい。上記多層基板は、樹脂組成物又は該樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルムを硬化させることにより形成されている上記硬化物層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
【0111】
図1に本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いた多層基板を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
【0112】
図1に示す多層基板11では、回路基板12の上面12aに、複数層の硬化物層13〜16が積層されている。複数層の硬化物層のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する硬化物層16以外の硬化物層13〜15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。すなわち、積層された硬化物層13〜16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
【0113】
多層基板11では、硬化物層13〜16が、本発明に係る樹脂組成物又は該樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルムを硬化させることにより形成されている。本実施形態では、硬化物層13〜16の表面が粗化処理又はデスミア処理されているので、硬化物層13〜16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。従って、硬化物層13〜16と金属層17との接着強度を高めることができる。また、多層基板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。
【0114】
(粗化処理及び膨潤処理)
本発明に係る樹脂組成物を予備硬化させることにより得られた予備硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、予備硬化物は粗化処理されることが好ましい。粗化処理の前に、予備硬化物は膨潤処理されることが好ましい。硬化物は、予備硬化の後、かつ粗化処理される前に、膨潤処理されており、さらに粗化処理の後に硬化されていることが好ましい。ただし、予備硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
【0115】
上記膨潤処理の方法としては、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、予備硬化物を処理する方法が用いられる。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30〜85℃で1〜20分間、予備硬化物を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に硬化物と金属層との粗化接着強度が低くなる傾向がある。
【0116】
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。
【0117】
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム又は無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0118】
上記粗化処理の方法は特に限定されない。上記粗化処理の方法として、例えば、30〜90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30〜85℃及び1〜10分間の条件で、1回又は2回、予備硬化物を処理する方法が好適である。上記粗化処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。
【0119】
(デスミア処理)
また、本発明に係る樹脂組成物を予備硬化させることにより得られた予備硬化物又は硬化物に、貫通孔が形成されることがある。上記多層基板などでは、貫通孔として、ビア又はスルーホール等が形成される。例えば、ビアは、COレーザー等のレーザーの照射により形成できる。ビアの直径は特に限定されないが、60〜80μm程度である。上記貫通孔の形成により、ビア内の底部には、硬化物層に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアが形成されることが多い。
【0120】
上記スミアを除去するために、硬化物層の表面は、デスミア処理されることが好ましい。デスミア処理が粗化処理を兼ねることもある。
【0121】
上記デスミア処理には、上記粗化処理と同様に、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。
【0122】
上記デスミア処理の方法は特に限定されない。上記デスミア処理の方法として、例えば、30〜90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30〜85℃及び1〜10分間の条件で、1回又は2回、予備硬化物又は硬化物を処理する方法が好適である。上記デスミア処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。
【0123】
本発明に係る樹脂組成物の使用により、デスミア処理された硬化物の表面の表面粗さを十分に小さくすることができる。
【0124】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0125】
実施例及び比較例では、以下に示す材料を用いた。
【0126】
(エポキシ樹脂)
ビスフェノールS型エポキシ樹脂(DIC社製「EXA−1517」、エポキシ当量237)
【0127】
(硬化剤)
フェノール化合物溶液A(アミノトリアジン骨格を有するフェノール硬化剤、DIC社製「LA3018−50P」、水酸基当量151、固形分50重量%とプロピレングリコールモノメチルエーテル50重量%とを含む)
シアネートエステル樹脂溶液A(シアネートエステル硬化剤、ビスフェノールAジシアネートがトリアジン化され、三量体とされたプレポリマー、Lonza社製「BA230S−75」、シアネート当量230、固形分75重量%とメチルエチルケトン25重量%とを含む)
【0128】
シアネートエステル樹脂溶液B(シアネートエステル硬化剤、ビスフェノールAジシアネートがトリアジン化され、3量体とされたプレポリマーと、3量化されたプレポリマーに対して少量(10重量%以下)のエラストマーを含む、Lonza社製「BA3000S」、シアネート当量215、固形分75重量%とメチルエチルケトン25重量%とを含む)
【0129】
(硬化促進剤)
イミダゾール化合物(2−フェニル−4−メチルイミダゾール、四国化成社製「2P4MZ」)
【0130】
(充填剤)
ビニルシラン処理シリカを含むスラリーA(アドマテックス社製「SC2050HNF」、平均粒子径0.5μmの溶融シリカ、シリカ100重量部がビニルシラン(アリルトリメトキシシラン)0.5重量部で表面処理されている、固形分70重量%とシクロヘキサノン30重量%とを含む)
【0131】
アミノフェニルシラン処理シリカを含むスラリーB(アドマテックス社製「SC2050HNK」、平均粒子径0.5μmの溶融シリカ、シリカ100重量部がアミノフェニルシラン(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)0.5重量部で表面処理されている、固形分70重量%とシクロヘキサノン30重量%とを含む)
【0132】
エポキシシラン処理シリカを含むスラリーC(アドマテックス社製「SC2050HND」、平均粒子径0.5μmの溶融シリカ、シリカ100重量部がエポキシシラン(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)0.5重量部で表面処理されている、固形分70重量%とシクロヘキサノン30重量%とを含む)
【0133】
(実施例1)
ビニルシラン処理シリカを含むスラリーA(アドマテックス社製「SC2050HNF」)79.8重量部(溶剤を含む)と、フェノール化合物溶液A(DIC社製「LA3018−50P」)7.8重量部(溶剤を含む)と、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(DIC社製「EXA−1517」)12.2重量部と、イミダゾール化合物(四国化成社製「2P4MZ」)0.2重量部とを混合し、均一な液となるまで常温で攪拌し、樹脂組成物ワニスを得た。
【0134】
離型処理された透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製「PET5011 550」、厚み50μm)を用意した。このPETフィルムの離型処理された面上にアプリケーターを用いて、乾燥後の厚みが50μmとなるように、得られた樹脂組成物ワニスを塗工した。次に、100℃のギアオーブン内で3分間乾燥して、縦200mm×横200mm×厚み50μmの樹脂シートの未硬化物とポリエチレンテレフタレートフィルムとの積層フィルムを作製した。次に、積層フィルムからポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、樹脂シートの未硬化物を180℃のギアオーブン内で80分間加熱して、樹脂シートの一次硬化物を作製した。
【0135】
(実施例2〜3及び比較例1〜4)
使用した材料の種類及び配合量(固形分重量部)を下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層フィルム及び樹脂シートの一次硬化物を作製した。
【0136】
(評価)
(1)平均線膨張率
得られた樹脂シートの一次硬化物を、190℃で3時間加熱し、更に硬化させ、硬化物Aを得た。得られた硬化物Aを、3mm×25mmの大きさに裁断した。線膨張率計(セイコーインスツルメンツ社製「TMA/SS120C」)を用いて、引張り荷重3.3×10−2N、昇温速度5℃/分の条件で、裁断された硬化物の0〜50℃における平均線膨張率を測定した。
【0137】
(2)ラミネート性(凹凸表面への埋め込み性)
銅張り積層板(厚さ150μmのガラスエポキシ基板と厚さ25μmの銅箔との積層体)を用意した。銅箔をエッチング処理し、L/Sが50μm/50μm及び長さが1cmである銅パターンを26本作製し、凹凸基板を得た。
【0138】
実施例及び比較例で得られた樹脂シートの未硬化物(厚さ50μm)を凹凸基板の凹凸表面に重ねて、名機製作所製真空加圧式ラミネーター機(型番MVLP−500)を用い、ラミネート圧0.4MPa及びラミネート温度90℃で20秒、更にプレス圧力0.8MPa及びプレス温度90℃で20秒の各条件で、ラミネート及びプレスした。このようにして、凹凸基板上に樹脂シートの未硬化物が積層されている積層体を得た。
【0139】
得られた積層体において、樹脂シートの未硬化物を170℃で60分加熱した後に190℃で180分加熱して、硬化物Cを得た。
【0140】
JIS B0601−1994に準拠して、凹凸表面に埋め込まれた硬化物Cの上面の算術平均粗さRaを測定した。算術平均粗さRaは、Veeco社製のWYKOを用いて測定した。
【0141】
(3)粗化処理された硬化物の表面の算術平均粗さRa
実施例及び比較例で得られた積層フィルムを、樹脂シートの未硬化物が、ガラスエポキシ基板(FR−4、品番「CS−3665」、利昌工業社製)側となるようにセットした。積層フィルムとガラスエポキシ基板とを、100℃に加熱した平行平板プレス機を用いて、減圧下で0.5MPaで60分間加圧加熱し、樹脂シートの一次硬化物を含む積層体を得た。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、ガラスエポキシ基板と予備硬化物との積層体を得た。その後、予備硬化物を、下記の(a)膨潤処理をした後、下記の(b)過マンガン酸塩処理すなわち粗化処理をした。
【0142】
(a)膨潤処理:
60℃の膨潤液(スウェリングディップセキュリガントP、アトテックジャパン社製)に、上記積層体を入れて、20分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
【0143】
(b)過マンガン酸塩処理:
75℃の過マンガン酸カリウム(コンセントレートコンパクトCP、アトテックジャパン社製)粗化水溶液に、上記積層体を入れて、20分間揺動させ、ガラスエポキシ基板上に粗化処理された硬化物を得た。得られた硬化物を、23℃の洗浄液(リダクションセキュリガントP、アトテックジャパン社製)により2分間洗浄した後、純粋でさらに洗浄した。
【0144】
120℃のギアオーブン中で2時間乾燥し、冷却した後、JIS B0601−1994に準拠して、粗化処理された硬化物の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0145】
(4)貯蔵安定性
シランカップリング剤により表面処理されたシリカを含むスラリーを得た後に、23℃で1週間保管した。初期のシリカを含むスラリーの色と比較して、保管後のシリカを含むスラリーの色が目視で変化していない場合を「○」、変化している場合を「×」として結果を下記の表1に示した。
【0146】
結果を下記の表1に示す。
【0147】
【表1】

【0148】
上記表1に示す結果から、ビニルシラン処理シリカを含むスラリーを用いた樹脂組成物及びアミノフェニルシラン処理シリカを含むスラリーを用いた樹脂組成物では、凹凸基板上に形成した硬化物の上面の凹凸が小さいことがわかる。さらに、エポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対する充填剤が160重量部以上である樹脂組成物では、0〜50℃での硬化物の平均線膨張率が低いことがわかる。また、ビニルシラン処理シリカを含むスラリー及びエポキシシラン処理シリカを含むスラリーでは、シリカを含むスラリーの貯蔵安定性が高いことがわかる。
【符号の説明】
【0149】
11…多層基板
12…回路基板
12a…上面
13〜16…硬化物層
17…金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、硬化剤と、充填剤とを含み、
前記充填剤が、ビニル基を有するシランカップリング剤により表面処理されており、
前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計100重量部に対して、前記充填剤の含有量が160重量部以上、900重量部以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールS型エポキシ樹脂である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化剤が、シアネートエステル樹脂又はフェノール化合物である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記充填剤がシリカである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルム。
【請求項6】
基材と、
前記基材の一方の表面に積層された請求項5に記載のBステージフィルムとを備える、積層フィルム。
【請求項7】
回路基板と、
前記回路基板の回路が形成された表面に積層された硬化物層とを備え、
前記硬化物層が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は該樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルムを硬化させることにより形成されている、多層基板。
【請求項8】
回路基板と、
前記回路基板の表面上に積層された複数層の硬化物層とを備え、
前記複数層の硬化物層の内の前記回路基板側とは反対の外側の表面に位置する硬化物層が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は該樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルムを硬化させることにより形成されている、多層基板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−41510(P2012−41510A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186493(P2010−186493)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】