説明

樹脂組成物およびその成形体

【課題】 安価な樹脂組成物で、耐熱性、曲げ弾性率、難燃性などに優れしかも射出成形体、ブロー成形体、チューブ、パイプ、ボトル、自動車外板部材、ハウジング材、電気・電子部品、自動車部品、フィルム、シートなどに適用可能なポリフェニレンエーテル組成物を提供する。
【解決手段】 (A)一般式(1)
【化1】


(式中、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を有することもある全炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
で示される構造単位を有するポリフェニレンエーテル99〜1質量%と、(B)該ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体1〜99質量%に、成分(A)と成分(B)の和100質量部に対し、(C)ガラス繊維を0.5〜80質量部含有してなる組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、曲げ弾性率、難燃性などに優れしかも安価なポリフェニレンエーテル系樹脂組成物および該組成物からなる成形体とその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリングプラスチックの一種であるポリフェニレンエーテルは、耐熱性、電気絶縁性を有するとともに、他のエンジニアリングプラスチックであるポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどに比べて低誘電率であり、しかも比較的安価であるという特徴を有する。
そこで、ポリフェニレンエーテル樹脂を含む組成物として、次のようなものが知られている。
ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、タルクなどからなる組成物をブロー成形することで、剛性の優れた自動車外板部材が得られると記載されているが、この場合には耐熱性は不十分であった(例えば、特許文献1参照)。
ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、表面処理したガラス繊維からなる組成物が優れた機械的強度、寸法安定性を示すと記載されている(例えば、特許文献2参照)。
また、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、表面処理したガラス繊維からなる組成物は引張り強度、曲げ強度などに優れることが記載されているが、曲げ弾性率などは十分ではなかった(例えば、特許文献3参照)。
また特許文献4には、ポリフェニレンエーテルにポリスチレン、またはポリエステルなどを配合した樹脂にガラス繊維を加え、溶融混練することで、曲げ弾性率などが向上した組成物が得られると記載きてあるが、この場合にも耐熱性などは不十分であった(例えば、特許文献4参照)。
また、特許文献5〜7にはタフネスや強度などの機械的強度を向上させるためにポリフェニレンエーテル、ポリスチレンにガラス繊維などを配合した組成物が記載されている。しかしながら、これらの場合にも、組成物の耐熱性などは十分ではなかった。
【0003】
上述のように、従来のポリフェニレンエーテルを用いた組成物は、ガラス繊維をさらに配合した組成物も含め、いずれも耐熱性、曲げ弾性率、難燃性などで難点を有するものであり、市場からその改良が求められていた。
ポリフェニレンエーテルを用いた他の樹脂組成物として、例えば、ポリフェニレンエーテルと、ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体とからなる樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献8)。しかし、この場合でも市場の要求を必ずしも満足させるものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平5−220826号公報
【特許文献2】特開平11−29700号公報
【特許文献3】特開平9−241397号公報
【特許文献4】特開平6−122771号公報
【特許文献5】特開平8−12879号公報
【特許文献6】特開2001−64503号公報
【特許文献7】特開2003−14190号公報
【特許文献8】特開2002−319316
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた耐熱性を有し、機械的特性(曲げ弾性率など)や難燃性などに優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。さらに本発明は射出成形体、ブロー成形体、チューブ、パイプ、ボトル、自動車外板部材、ハウジング材、電気・電子部品、自動車部品、フィルム、シート用として好適なポリフェニレンエーテル組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリフェニレンエーテルと、ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体に、ガラス繊維を配合してなる組成物が、耐熱性、曲げ弾性率、難燃性などに優れることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、
(1) (A)一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよい全炭素数1〜20の炭化水素を表す。)
で示される構造単位を有するポリフェニレンエーテル99〜1質量%と、(B)該ポリフェニレンエーテルとの反応性官能基を持った共重合体1〜99質量%に、成分(A)と成分(B)の和100質量部に対し、(C)ガラス繊維を0.5〜80質量部含有してなる組成物、
(2)前記ポリフェニレンエーテルとの反応性官能基を持った共重合体(B)が、エポキシ基を有する共重合体である(1)に記載の組成物、
(3)前記エポキシ基を有する共重合体が、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を0.1〜30質量%含有する共重合体である(1)または(2)に記載の組成物、
(4)前記共重合体(B)の融解熱量が3J/g未満である(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物、
(5)前記共重合体(B)のムーニー粘度が、3〜70の範囲である(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物、
(6)前記エポキシ基を有する共重合体が、(a)エチレン単位を60〜99質量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を0.1〜20質量%、(c)エチレン系不飽和エステル化合物単位を0〜40質量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体である請求項(2)〜(5)のいずれかに記載の組成物、
(7)前記エポキシ基を有する共重合体が、エポキシ基を有するゴムである(2)〜(6)のいずれかに記載の組成物、
(8)前記エポキシ基を有するゴムが、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムからなることを特徴とする(7)に記載の組成物、
(9)前記(メタ)アクリル酸エステルが、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種を含むものであることを特徴とする(8)に記載の組成物、
(10)前記ガラス繊維が、平均径5〜25μmであることを特徴とする(1)に記載の組成物、
(11)前記ガラス繊維が、表面処理したガラス繊維であることを特徴とする請求項1または10に記載の組成物、
(12)(1)〜(11)のいずれかに記載の組成物を用いてなる射出成形体、
(13)(1)〜(11)のいずれかに記載の組成物を用いてなるチューブ、
(14)(1)〜(11)のいずれかに記載の組成物を用いてなる自動車外板部材、
(15)(1)〜(11)のいずれかに記載の組成物を用いてなるボトル、または容器、
(16)(1)〜(11)のいずれかに記載の組成物を用いてなるパイプ、
(17)(1)〜(11)のいずれかに記載の組成物を用いてなるハウジング材、
(18)(1)〜(11)のいずれかに記載の組成物を用いてなる電気・電子部品または電送部品、
(19)(1)〜(11)のいずれかに記載の組成物を用いてなるモバイル機器部品、
(20)(1)〜(11)のいずれかに記載の組成物を用いてなる自動車部品、および
(21)(1)〜(11)のいずれかに記載の組成物を用いてなるフィルムまたはシート、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は低コストで得られ、容易に各種成形方法で成形でき、これを用いた成形体は、耐熱性が優れる上に機械的強度(曲げ弾性率、耐衝撃性など)及び難燃性などに優れ、自動車外板部材、チューブ、パイプ、フィルム、シート、ボトル、ハウジング材、電気・電子部品、電送部品、モバイル機器部品、自動車部品等に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の好ましい実施の形態について、詳細に説明する。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の(A)成分であるポリフェニレンエーテルは、前記一般式(1)の構造単位を有する重合体であり、該重合体は一般式(1)の構造単位を2種以上有してなるものでもよい。
【0011】
一般式(1)において、RおよびRは、それぞれ独立に水素、又は置換基を有していてもよい全炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
全炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等の全炭素数1〜20のアルキル基;フェニル基、4ーメチルフェニル基、1ーナフチル基、2ーナフチル基等の全炭素数6〜20のアリール基;ベンジル基、2ーフェニルエチル基、1ーフェニルエチル基等の全炭素数7〜20のアラルキル基;等が挙げられる。該炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、t−ブチルオキシ基等のアルコキシ基、3−ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基等が挙げられる。置換基を有する炭化水素基の具体例としては、例えば、トリフルオロメチル基、2−t−ブチルオキシエチル基、3−ジフェニルアミノプロピル基等が挙げられる。なお全炭素数には、置換基の炭素数は含まない。
なかでも、R、Rは、水素、メチル基などであることが好ましく、とりわけ水素であることが好ましい。
【0012】
成分(A)のポリフェニレンエ−テルは前記一般式(1)の構造単位を有する単独重合体であっても、前記一般式(1)以外に、一般式(1)に対応するフェノール化合物以外のフェノール化合物である単量体から誘導される構造単位を有する共重合体であってもよい。このようなフェノール化合物としては、例えば、多価ヒドロキシ芳香族化合物(例えばビスフェノール−A,テトラブロモビスフェノール−A,レゾルシン、ハイドロキノン、ノボラック樹脂)が挙げられる。かかる共重合体においては、式(1)の構造単位を80モル%以上含むことが好ましく、90モル%以上含むことがより好ましい。
【0013】
また本発明における成分(A)の固有粘度[η](25℃、クロロホルム溶液)は、0.30〜0.65の範囲が好ましく、0.35〜0.50がさらに好ましい。[η]が0.30未満では、組成物の耐熱性が低下する傾向にあり、また、[η]が0.65を超えると組成物の成形加工性が低下する傾向にある。
【0014】
成分(A)のポリフェニレンエーテルは、例えば、下記一般式(2)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、RおよびRは前記と同じ意味を表す。)
で示されるフェノール化合物を酸化重合させて製造することができる。
【0017】
上記一般式(2)のフェノール化合物のみを原料として用いると、上記単独重合体を製造することができ、さらに、前記一般式(2)の化合物と(2)以外のフェノール化合物を用いることにより、上記共重合体を製造することができる。
【0018】
酸化重合は、上記のようなフェノール化合物を酸化カップリング触媒を用い、酸化剤として例えば、酸素または酸素含有ガスを用いて行うことができる。酸化カップリング触媒は、特に限定されるものではなく、重合能を有するいかなる触媒でも使用しうる。例えば、その代表的なものとしては、塩化第一銅を含む触媒や二価のマンガン塩類を含む触媒が挙げられる(例えば、特開昭60−229923号公報参照)。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、上記のような成分(A)のポリフェニレンエーテルとともに成分(B)の、該ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体を必要とする。この成分(B)の該ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基としては、成分(A)と反応性を有しておればよく、例えば、オキサゾリル基、エポキシ基、アミノ基等が挙げられ、好ましくはエポキシ基である。
【0020】
成分(B)として用いられる該共重合体としては、該官能基を有する構造単位と、該官能基を有しない構造単位とを有するものがあげられる。
この場合に用いられる官能基を有する構造単位として、官能基がエポキシ基であるものでは、グリシジル基を含有する構造単位が好ましい。該構造単位としては、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位があげられる。ここに不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位、不飽和グリシジルエーテル単位とは不飽和カルボン酸グリシジルエステル、不飽和グリシジルエーテルである単量体から誘導される構造単位のことをいう。
【0021】
ここに、不飽和カルボン酸グリシジルエステル、不飽和グリシジルエーテルとしては、例えば下記一般式(3)
【0022】
【化3】

【0023】
で示されるものが挙げられる。
【0024】
不飽和カルボン酸グリシジルエステルの具体例としては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸ジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸トリグリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸グリシジルエステルなどを挙げることができ、不飽和グリシジルエーテルの具体例としては、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル等が挙げられる。
【0025】
本発明の組成物に用いられる成分(B)の共重合体における官能基を有しない構造単位としては、エチレン系不飽和結合を有する化合物であるモノマーから誘導される構造単位が挙げられ、該化合物としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステル、等のアクリル酸エステル類、エチレン、ビニル芳香族炭化水素化合物、エチレン系不飽和エステル化合物、共役ジエン化合物、エチレン系不飽和エステル化合物等があげられる。
【0026】
成分(B)の共重合体は、該共重合体が有する全構造単位を100質量%としたとき、かかる不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を0.1〜30質量%含有することが好ましく、0.1〜20質量%含有することがより好ましい。
【0027】
成分(B)としての共重合体のなかで、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を含むものは、例えば、上記一般式(2)で示される不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテルとエチレン系不飽和結合を有する化合物とを常法により共重合させることにより製造しうる。
また、成分(B)としての共重合体は、共重合体に該官能基を有する単量体をグラフト共重合することにより製造することも可能である。
【0028】
共重合体(B)は、ゴムであっても熱可塑性樹脂であってもよいし、ゴムと熱可塑性樹脂の混合物であってもよい。
【0029】
まず、本発明に用いられる成分(B)がゴムである場合について説明する。
本発明の成分(B)としてのゴムとしては、ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持つアクリルゴムや、ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持つビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体ゴムも例示することができる。
【0030】
ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持つアクリルゴムとして好ましくは、下記一般式(8)〜(10)
CH2=CR7−C(O)−OR1 (8)
CH2=CR8−C(O)−OROR3 (9)
CH2=CR4H−C(O)−O(R(C(O)O)nR6 (10)
(式中、R1は炭素原子数1〜18(好ましくは1〜8)のアルキル基または炭素原子数1〜18のシアノアルキル基を示す。R2は炭素原子数1〜12のアルキレン基を、R3は炭素原子数1〜12のアルキル基を示す。R4、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基、R5は、炭素原子数3〜30のアルキレン基、R6は炭素原子数1〜20のアルキル基またはその誘導体、nは1〜20の整数を示す。)
で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体とポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を有する単量体をそれぞれ重合体の構成成分とするものである。
【0031】
上記一般式(8)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、アクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、シアノエチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどを挙げることができ、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートが好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸エステルとしては、その一種を単独で使用してもよく、または二種以上を併用してもよい。
【0032】
また、上記一般式(9)で表されるアクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えばメトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート、メトキシエチルメタアクリレート、エトキシエチルメタアクリレート、ブトキシエチルメタアクリレート、エトキシプロピルメタアクリレート等があげられる。これらの1種あるいは2種以上を該アクリルゴムの成分として用いることができる。
【0033】
かかるアクリルゴムにおいては、構成成分として、必要に応じて上記の一般式(8)〜(10)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体と共重合可能な不飽和単量体を用いることができる。
このような不飽和単量体の例としては、エチレン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、ハロゲン化スチレン、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルナフタレン、N−メチロールアクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ベンジルアクリレート、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
【0034】
ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を有する単量体としては、不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテルが好ましい。この場合好ましい構成成分比は、上記の一般式(8)〜(10)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体40.0〜99.9質量%、不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル0.1〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、上記の一般式(8)〜(10)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体と共重合可能な不飽和単量体は含まれない場合もあり、0.0〜30質量%である。該アクリルゴムの構成成分比が上記の範囲内であると、組成物の耐熱性、成形加工性などが良好であり好ましい。
【0035】
上記アクリルゴムの製法は特に限定するものではなく、例えば、特開昭59−113010号公報、特開昭62−64809号公報、特開平3−160008号公報、あるいはWO95/04764などに記載されているような周知の重合法を用いることができ、ラジカル開始剤の存在下で乳化重合、懸濁重合、溶液重合あるいはバルク重合で製造することができる。
【0036】
共重合体(B)としては、エポキシ基を有するゴムが好ましく、中でも、エポキシ基を有する(アクリル)ゴムである、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴム等がより好ましい。
【0037】
また、共重合体(B)はムーニー粘度が3〜70のものが好ましく、3〜30のものがさらに好ましく、4〜25のものが特に好ましい。ムーニー粘度が大きすぎると樹脂組成物の溶融混練が困難になる場合があり、また、小さすぎると樹脂組成物の耐衝撃性などが不十分になる場合がある。
ここでいうムーニー粘度は、JIS K6300に準じて100℃ラージローターを用いて測定した値をいう。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、それを用いて得られる成形体の熱安定性や機械的性質を向上させるためには共重合体としての(B)成分が有する構造単位全体に対して、(メタ)アクリル酸エステル単位は40質量%をこえ96質量%未満であることが好ましく、さらに好ましくは45〜70質量%である。エチレン単位は3質量%以上50質量%未満が好ましく、さらに好ましくは10〜49質量%である。また、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位は0.1〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜20質量%である。この共重合体の代表的な重合方法は、特開昭48−11388号公報、特開昭61−127709号公報などに記載された方法、例えばフリーラジカルを生成する重合開始剤の存在下、圧力500kg/cm2以上、温度40〜300℃の条件により製造することができる。
【0039】
本発明において(B)成分である、ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持つビニル芳香族炭化水素化合物―共役ジエン化合物ブロック共重合体ゴムにおける共重合成分としてのビニル芳香族炭化水素化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどを挙げることができ、中でもスチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエンなどを挙げることができ、ブタジエンまたはイソプレンが好ましい。
かかるビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体あるいはその水添物は、周知の方法で製造することができ、例えば、特公昭40−23798号公報、特開昭59−133203号公報等に記載されている。
このポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持つビニル芳香族炭化水素化合物―共役ジエン化合物ブロック共重合体ゴムは、上記の方法などで得られたビニル芳香族炭化水素化合物―共役ジエン化合物ブロック共重合体にエポキシ基など、ポリフェニレンエーテルと反応性を有する単量体を導入することで得ることができる。かかる単量体をビニル芳香族炭化水素化合物―共役ジエン化合物ブロック共重合体に導入する方法は特に限定するものではないが、グラフト共重合などで導入することが好ましい。
【0040】
本発明に用いる共重合体(B)としてのゴムは、必要に応じて加硫を行い、加硫ゴムとして用いることができる。
上記の(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムの加硫は、多官能性有機酸、多官能性アミン化合物、イミダゾール化合物などを用いることで達成されるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
また、ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体(B)は、上述のようなゴム以外に、樹脂であってもよく、その具体例としてのエポキシ基を有する熱可塑性樹脂としては、(a)エチレン単位が60〜99質量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位が0.1〜20質量%、および必要に応じて(c)エチレン系不飽和エステル化合物単位が0〜40質量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体を挙げることができる。
【0042】
この(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位の定義、具体例は前記したと同様である。
またエチレン系不飽和エステル化合物(c)としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のカルボン酸ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル等が挙げられる。特に酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
【0043】
該エポキシ基含有エチレン共重合体としては、たとえばエチレン単位とグリシジルメタクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸メチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸エチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位および酢酸ビニル単位からなる共重合体等が挙げられる。
【0044】
該エポキシ基含有エチレン共重合体のメルトインデックス(以下、MFRということがある。JIS K6760に準拠し、190℃、2.16kg荷重で測定)は、好ましくは0.5〜100g/10分、更に好ましくは2〜50g/10分である。メルトインデックスはこの範囲外であってもよいが、メルトインデックスが100g/10分を越えると組成物にした時の機械的物性の点で好ましくなく、0.5g/10分未満では(A)成分との相溶性が劣り好ましくない。
【0045】
該エポキシ基含有エチレン共重合体は、曲げ剛性率が10〜1300kg/cm2の範囲のものが好ましく、20〜1100kg/cm2のものがさらに好ましい。曲げ剛性率がこの範囲外であると組成物の機械的性質が不十分となる場合がある。
【0046】
また、共重合体(B)としては、本発明の成形体の熱安定性や柔軟性を良好にするために、その結晶の融解熱量が好ましくは3J/g未満、より好ましくは2.5J/g未満の共重合体である。
【0047】
本発明に用いられる該エポキシ基含有エチレン共重合体は、通常不飽和エポキシ化合物とエチレンをラジカル発生剤の存在下、例えば、500〜4000気圧、100〜300℃で適当な溶媒や連鎖移動剤の存在下または不存在下に共重合させる高圧ラジカル重合法により製造される。また、ポリエチレンに不飽和エポキシ化合物およびラジカル発生剤を混合し、押出機の中で溶融グラフト共重合させる方法によっても製造し得る。
【0048】
本発明の樹脂組成物は、成分(C)としてガラス繊維を含有する。本発明においては、成分(A)及び成分(B)に対して含有させるガラス繊維は、チョップドストランド、ミルドガラス、連続ストランドなど、任意の形状のガラス繊維を配合することができる。なかでもチョップドストランドが好ましく用いられる。
ガラス繊維のガラスの種類は、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、例えばEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラスなどを挙げることができる。用いるガラス繊維の平均径は好ましくは5〜25μmであり、より好ましくは5〜18μmである。平均繊維径が小さすぎると樹脂組成物の製造時や成形加工時にガラス繊維が破損して成形加工品の耐疲労性が低下する場合があり、また、繊維径が大きすぎると成形加工品の外観不良が生ずる場合があり好ましくない。
本発明において、樹脂組成物中におけるガラス繊維の平均繊維長は好ましくは20〜5000μm、より好ましくは50〜4000μmである。組成物中における平均ガラス繊維長が短すぎると組成物の曲げ弾性率などが低下し好ましくない。また、該ガラス繊維長が長すぎると、成形加工品の外観が悪くなるなどの問題が生じて好ましくない。
【0049】
ガラス繊維としては表面処理されたガラス繊維を用いることができる。表面処理は、修飾剤、シランカップリング剤、ホウ素化合物などで行うことができる。修飾剤としては、芳香族ウレタン系のもの、脂肪族ウレタン系のもの、アクリル系のものをなどがあるが、芳香族ウレタン系の修飾剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、シランカップリング剤が樹脂組成物と反応する有機官能基を持つものが好ましい。ここでいう有機官能基としては、アミノ基、エポキシ基、メタクリル基、ビニル基、メルカプト基などを挙げることができるが、アミノ基、エポキシ基が好ましい。シラン系処理剤の具体例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−(メタクリロイルオキシプロプル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピル−トリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0050】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、(A)成分と(B)成分との比が、(A)成分99〜1質量%、好ましくは99〜40質量%、さらに好ましくは99〜50質量%、であり、これに対応して(B)成分1〜99質量%、好ましくは1〜60質量%、さらに好ましくは1〜50質量%である。(A)成分が多すぎると該樹脂組成物の成形加工性が低下の傾向にあり、(A)成分が少な過ぎると該樹脂組成物の耐熱性などが著しく低下する傾向にある。
本発明の(A)成分と(B)成分及び(C)成分からなる組成物は、これらを混練することにより、その機構の詳細についてはまだ定かではないが、(A)成分と(B)成分との混合分散によって反応性官能基による化学結合が形成され、そのうえで、ガラス繊維が樹脂中に均一に分散することによって、組成物の優れた物性が実現できるものと考えられる。この結果、(B)成分中の反応性官能基はかかる混練により大幅に減少する。
本発明においては、(A)成分が99〜40質量%で連続相を形成し、(B)成分が1〜60質量%で分散相を形成しているのが好ましい。
(A)成分と(B)成分の和100質量部に対し、(C)成分の配合比は通常0.5〜80質量部、好ましくは1〜60質量部、さらに好ましくは2〜50質量部である。(C)成分の配合比が多すぎると樹脂組成物の成形が困難になる傾向があり、また、(C)成分の配合比が少な過ぎると該樹脂組成物の耐熱性などが不十分となる場合がある。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、無機または有機系着色剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂などの離型改良剤、無機酸化物あるいは金属類などの充填剤、有機充填剤などの各種の樹脂組成物に慣用の添加剤を含有していてもよい。
【0052】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては周知の方法を用いることができるが、好ましいのは、溶融状態で各成分を混練(溶融混練)する方法である。
溶融混練により本発明における組成物を得るには、一般に使用されている一軸または二軸の押出機、各種のニーダー等の混練装置を用いることができる。なかでも二軸の押出機が好ましい。
溶融混練に際しては、混練装置のシリンダー設定温度は、200〜340℃の範囲が好ましく、220〜310℃の範囲がさらに好ましく、各成分は予めタンブラーもしくはヘンシェルミキサーのような装置で各成分を均一に混合した後、混練装置に供給してもよいし、各成分を混練装置にそれぞれ別個に定量供給する方法も用いることができる。
【0053】
上記の樹脂組成物を、常法によって、押出成形、射出成形、回転成形、吹込成形、ブロー成形、トランスファー成形、プレス成形、フィルム成形等の各種成形方法によって所望の形状に成形することにより成形体を得ることができる。これらの成形体を、その成形方法により、順に、押出成形体、射出成形体、回転成形体、吹込成形体、ブロー成形体、トランスファー成形体、プレス成形体、フィルムまたはシートと呼ぶ。
これらの成形体の形状としては、チューブ、パイプ、容器、ボトル、フィルム、シート等があげられ、射出成形体では、ハウジング材、電気・電子・電送部品、自動車外板部材、自動車部品、モバイル機器部品などを具体例として挙げることができる。
【0054】
また、上記の樹脂組成物を成形して容器、ボトルなどの中空成形体を得るには、例えば、ブロー成形機を使用して、上記樹脂組成物に、空気、水などの流体圧力を吹き込んで、金型内へ密着させる方法(ブロー成形)を使用できる。特に、自動車外板部材はブロー成形法によっても得ることができる。射出成形法あるいはブロー成形法により、バンパー、インスツルメント等の自動車部品などを得ることもできる。
また、上記の樹脂組成物を成形して管、チューブを得るには、チューブ成形機を使用して、上記樹脂組成物を、押出し機からチューブダイへ溶融押し出しする方法を使用できる。
さらに、上記の樹脂組成物を射出成形して、電気・電子・電送部品、モバイル機器部品などを得るには、射出成形機を使用して、溶融した上記樹脂組成物を押出し機から金型中へ高圧で注入する方法を使用できる。
【0055】
本発明においては、各種成型体の表面には、必要に応じて表面処理を施すことができる。このような表面処理法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、赤外線処理、スパッタリング処理、溶剤処理、研磨処理などが挙げられる。これらの処理は、成形加工の過程で行なっても良いし、成形加工後の成型体に対して行なっても良い。
【実施例】
【0056】
次に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下の各実施例および比較例に用いた樹脂組成物を構成する各樹脂成分は以下のとおりである。
樹脂組成物
成分(A)
成分(A)として、[η]=0.4のポリフェニレンエーテルを使用した。
成分(B)
成分(B)として、住友化学工業(株)製、商品名ボンドファースト7L(エチレン/グリシジルメタクリレート/メチルアクリレート=67/3/30 重量比、MFR(190℃)=9g/10min)を使用した。
成分(C)
成分(C)に使用したガラス繊維は以下のものである。
CC−1:セントラル硝子(株)製シラン系処理チョップドストランド
ECS03−350 (ストランド長3mm、13μm径)
CC−2:セントラル硝子(株)製シラン系処理チョップドストランド
ECS03−630 (ストランド長3mm、9μm径)
CC−3:セントラル硝子(株)製シラン系処理ミルドストランド
EFH75−01 (平均繊維長75μm、11μm径)
成分(D)
成分(D)は耐衝撃性ポリスチレン(エー・アンド・エム スチレン(株)製、商品名AG102)である。
【0057】
各実施例および比較例で得られた試験片の物性の測定は次の通りである。
物性測定
(i)荷重たわみ温度(HDT,耐熱性)
樹脂試験片を、短冊状に切り出し、JIS K−7191に準拠して、18.5Kg荷重で、試験片が一定たわみに達する温度(荷重たわみ温度)を測定した。
(ii)曲げ弾性率
樹脂試験片を短冊状に切り出し、島津製作所製オートグラフAG500B型を使用して、JIS K−7171に準拠して、室温で曲げ速度1.5mm/minで曲げ試験を行い、曲げ弾性率を求めた。
(iii)アイゾット衝撃強度
樹脂試験片を、ノッチ加工したのち、JIS K−7110に準拠して、23℃でアイゾット衝撃試験を行った。
(iv)難燃性試験
樹脂試験片を短冊状に切り出した後、試料状態 23℃、50%RHで48時間調整し、垂直燃焼予備試験(UL94V)を行い、その難燃性レベルを評価した。難燃性レベルはV−0からV−1,HBなどにランクされ、V−0が最も難燃性に優れ、V−1がそれに次ぐものである。
【0058】
[実施例1および実施例2]
上記成分(A)および成分(C)を、120℃で8時間乾燥し、上記成分(B)を、60℃で2時間乾燥した後、表1に示す割合(質量部)で各成分を良く混合したのち、テクノベル(株)製二軸押出し機、TZW−15−30MG(スクリュー径 15mm,L/D=30)を使用し、シリンダー設定温度は300℃、スクリュー回転数は150rpmで、ベントで脱気しながら溶融混練を行ない、組成物のペレットを得ることができた。
次に、得られた組成物のペレットを、新潟鉄工所(株)製射出成形機 NIIGATA NN75を使用し、シリンダー設定温度は315℃、金型温度は90℃、射出圧力は
1800kg/cm、押出し機のスクリュー回転数は150rpmで射出成形を行なった。なお、金型には175mm長、3.2mm厚、くびれ部12.5mm幅のダンベル形状金型を用いた。かかる射出成形により、ダンベル形状の試験片を得ることができた。
得られた試験片について、物性を測定した結果を表1に示す。
【0059】
[実施例3]
成分(A)、成分(B)および成分(C)を、実施例1と同様にして乾燥した後、表1に示す割合で各成分を良く混合したのち、テクノベル(株)製二軸押出し機、TZW−15−30MG(スクリュー径 15mm,L/D=30)を使用し、シリンダー設定温度は320℃、スクリュー回転数は90rpmで、ベントで脱気しながら溶融混練を行ない、組成物のペレットを得ることができた。
次に、得られた組成物のペレットを、新潟鉄工所(株)製射出成形機 NIIGATA NN75を使用し、シリンダー設定温度は315℃、金型温度は90℃、射出圧力は1800kg/cm、押出し機のスクリュー回転数は90rpmで射出成形を行ない、実施例1と同様の形状の試験片を得た。得られた試験片について、物性を測定した結果を表1に示す。
【0060】
[比較例1]
成分(A)、および成分(B)を、実施例1と同様にして乾燥した後、表1に示す割合で各成分を良く混合したのち、テクノベル(株)製二軸押出し機、TZW−15−30MG(スクリュー径 15mm,L/D=30)を使用し、シリンダー設定温度は290℃、スクリュー回転数は200rpmで、ベントで脱気しながら溶融混練を行ない、組成物のペレットを得ることができた。
次に、得られた組成物のペレットを、新潟鉄工所(株)製射出成形機 NIIGATA NN75を使用し、シリンダー設定温度は300℃、金型温度は90℃、射出圧力は
1550kg/cm、押出し機のスクリュー回転数は90rpmで射出成形を行ない、実施例1と同様の形状の試験片を得た。得られた試験片について、物性を測定した結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
[実施例4]
成分(A)、成分(B)および成分(C)を、実施例1と同様にして乾燥した後、表2に示す割合で各成分を良く混合したのち、テクノベル(株)製二軸押出し機、TZW−15−30MG(スクリュー径 15mm,L/D=30)を使用し、シリンダー設定温度は300℃、スクリュー回転数は200rpmで、ベントで脱気しながら溶融混練を行ない、組成物のペレットを得ることができた。
次に、得られた組成物のペレットを、新潟鉄工所(株)製射出成形機 NIIGATA NN75を使用し、シリンダー設定温度は300℃、金型温度は90℃、射出圧力は1300kg/cm、押出し機のスクリュー回転数は200rpmで射出成形を行ない、実施例1と同様の試験片を得た。得られた試験片について、物性を測定した結果を表2に示す。
【0063】
[比較例2]
成分(A)を、実施例1と同様にして乾燥し、また成分(D)を、60℃で5時間乾燥した後、表2に示す割合で各成分を良く混合したのち、テクノベル(株)製二軸押出し機、TZW−15−30MG(スクリュー径 15mm,L/D=30)を使用し、シリンダー設定温度は290℃、スクリュー回転数は200rpmで、ベントで脱気しながら溶融混練を行ない、組成物のペレットを得ることができた。
次に、得られた組成物のペレットを、新潟鉄工所(株)製射出成形機 NIIGATA NN75を使用し、シリンダー設定温度は300℃、金型温度は90℃、射出圧力は1000kg/cm、押出し機のスクリュー回転数は85rpmで射出成形を行ない、実施例1と同様の形状の試験片を得た。得られた試験片について、物性を測定した結果を表2に示す。
【0064】
[比較例3]
成分(A)および成分(C)を、実施例1と同様にして乾燥し、また成分(D)を、60℃で5時間乾燥した後、表2に示す割合で各成分を良く混合したのち、テクノベル(株)製二軸押出し機、TZW−15−30MG(スクリュー径 15mm,L/D=30)を使用し、シリンダー設定温度は300℃、スクリュー回転数は200rpmで、ベントで脱気しながら溶融混練を行ない、組成物のペレットを得ることが出来た。
次に、得られた組成物のペレットを、新潟鉄工所(株)製射出成形機 NIIGATA NN75を使用し、シリンダー設定温度は315℃、金型温度は90℃、射出圧力は1300kg/cm、押出し機のスクリュー回転数は85rpmで射出成形を行ない、実施例1と同様の形状の試験片を得た。得られた試験片について、物性を測定した結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
上記表示の結果から、本発明に係るポリフェニレンエーテル組成物は、耐熱性、曲げ弾性、難燃性のいずれも比較例のものに比べ優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1)
【化1】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい全炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
で示される構造単位を有するポリフェニレンエーテル99〜1質量%と、(B)該ポリフェニレンエーテルとの反応性官能基を持った共重合体1〜99質量%に、成分(A)と成分(B)の和100質量部に対し、(C)ガラス繊維を0.5〜80質量部含有してなる組成物。
【請求項2】
前記ポリフェニレンエーテルとの反応性官能基を持った共重合体(B)が、エポキシ基を有する共重合体である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エポキシ基を有する共重合体が、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を0.1〜30質量%含有する共重合体である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記共重合体(B)の融解熱量が3J/g未満である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記共重合体(B)のムーニー粘度が、3〜70の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記エポキシ基を有する共重合体が、(a)エチレン単位を60〜99質量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を0.1〜20質量%、(c)エチレン系不飽和エステル化合物単位を0〜40質量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体である請求項2〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記エポキシ基を有する共重合体が、エポキシ基を有するゴムである請求項2〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記エポキシ基を有するゴムが、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムからなることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記(メタ)アクリル酸エステルが、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種を含むものであることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ガラス繊維が、平均径5〜25μmであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ガラス繊維が、表面処理したガラス繊維であることを特徴とする請求項1または10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を用いてなる射出成形体。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を用いてなるチューブ。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を用いてなる自動車外板部材。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を用いてなるボトル、または容器。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を用いてなるパイプ。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を用いてなるハウジング材。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を用いてなる電気・電子部品または電送部品。
【請求項19】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を用いてなるモバイル機器部品。
【請求項20】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を用いてなる自動車部品。
【請求項21】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を用いてなるフィルムまたはシート。

【公開番号】特開2006−117787(P2006−117787A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306852(P2004−306852)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究、産業再生法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】