説明

樹脂組成物およびその成形体

【課題】本発明の目的は、製造または成型工程において、悪臭のする遊離のイソシアネート化合物が発生せず、成形性、耐熱性、耐薬品性の改善された樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている特定の環状構造を含み、環状構造を形成する原子数が8〜50である環状カルボジイミド化合物、トリメチレンテレフタレート骨格を主たる構成単位とする芳香族ポリエステルおよびポリ乳酸を含有する、樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物に関し、更に詳しくは、成形性、耐熱性、耐加水分解性、耐薬品性の改善された樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の枯渇の懸念や、地球温暖化を引き起こす空気中の二酸化炭素の増加の問題から、原料を石油に依存せず、また燃焼させても二酸化炭素を増加させないカーボンニュートラルが成り立つバイオマス資源が大きく注目を集めるようになり、ポリマーの分野においても、バイオマス資源から生産されるバイオマスプラスチックが盛んに開発されている。特にポリ乳酸は、バイオマスプラスチックの中でも比較的高い耐熱性、機械特性を有するため、食器、包装材料、雑貨などに用途展開が広がりつつあるが、更に、工業材料としての可能性も検討されるようになってきた。
【0003】
しかしながら、ポリ乳酸はその耐加水分解性の低さから、エンジニアリングプラスチックに代表されるポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートが使われる、電気・電子部品、自動車部品などの工業材料への展開が進んでいない。
【0004】
特許文献1、2には、ポリ乳酸に対し、カルボジイミド化合物と酸化防止剤を始めとする安定剤を配合する事で耐加水分解性を向上させる技術が示されているが、ここで示されているカルボジイミドは、カルボジイミド化合物がポリエステルの末端に結合する反応に伴い、イソシアネート基を有する化合物が遊離し、イソシアネート化合物の独特の臭いを発生し、作業環境を悪化させることが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−050584号公報
【特許文献2】特許第4085943号公報
【特許文献3】特開2007−056246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、その目的は、耐薬品性、成形性、耐
熱性、耐加水分解性、力学物性の改善され、製造または成型工程において、悪臭のする遊離のイソシアネート化合物発生による作業環境の悪化を伴わない樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ね、エンジニアリングプラスチックとしてポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと略記することがある。)に着目し、更に鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の目的は、
カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている下記式(1)で表される環状構造を含み、環状構造を形成する原子数が8〜50である環状カルボジイミド化合物、トリメチレンテレフタレート骨格を主たる構成単位とする芳香族ポリエステルおよびポリ乳酸を含有する、樹脂組成物によって達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐薬品性、成形性、耐熱性、耐加水分解性、力学物性の改善された樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明におけるポリ乳酸は、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、またはその混合物の何れを用いてもよい。
ポリ−L−乳酸は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに高融点を実現するためには99〜100モル%、くわえてステレオコンプレックス結晶化度を優先するならば95〜99モル%のL−乳酸単位から構成されることがさらに好ましい。他の単位としては、D−乳酸単位、乳酸以外の共重合成分単位が挙げられる。D−乳酸単位、乳酸以外の共重合成分単位は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
【0011】
ポリ−D−乳酸は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに高融点を実現するためには99〜100モル%、くわえてステレオコンプレックス結晶化度を優先するならば95〜99モル%のL−乳酸単位から構成されることがさらに好ましい。他の単位としては、L−乳酸単位、乳酸以外の共重合成分単位が挙げられる。L−乳酸単位、乳酸以外の共重合成分単位は、0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
【0012】
共重合成分単位は、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位およびこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
【0013】
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテオラメチレングリコール等の脂肪族多価アルコール等あるいはビスフェノールにエチレンオキシドが付加させたものなどの芳香族多価アルコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0014】
ステレオコンプレックスポリ乳酸は、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸の混合物であり、ステレオコンプレックス結晶を形成しうる。ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸は、共に重量平均分子量が、好ましくは10万〜50万、より好ましくは15万〜35万である。
【0015】
ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸は、公知の方法で製造することができる。例えば、L−またはD−ラクチドを金属重合触媒の存在下、加熱し開環重合させ製造することができる。また、金属重合触媒を含有する低分子量のポリ乳酸を結晶化させた後、減圧下または不活性ガス気流下で加熱し固相重合させ製造することができる。さらに、有機溶媒の存在/非存在下で、乳酸を脱水縮合させる直接重合法で製造することができる。
【0016】
重合反応は、従来公知の反応容器で実施可能であり、例えばヘリカルリボン翼等、高粘度用攪拌翼を備えた縦型反応器あるいは横型反応器を単独、または並列して使用することができる。また、回分式あるいは連続式あるいは半回分式のいずれでも良いし、これらを組み合わせてもよい。
【0017】
重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノールなどを好適に用いることができる。
【0018】
固相重合法では、前述した開環重合法や乳酸の直接重合法によって得られた、比較的低分子量の乳酸ポリエステルをプレポリマーとして使用する。プレポリマーは、そのガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度範囲にて予め結晶化させることが、融着防止の面から好ましい形態と言える。結晶化させたプレポリマーは固定された縦型或いは横型反応容器、またはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器(ロータリーキルン等)中に充填され、プレポリマーのガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度範囲に加熱される。重合温度は、重合の進行に伴い段階的に昇温させても何ら問題はない。また、固相重合中に生成する水を効率的に除去する目的で前記反応容器類の内部を減圧することや、加熱された不活性ガス気流を流通する方法も好適に併用される。
【0019】
また、本発明のポリ乳酸はポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸の混合物であって、ステレオコンプレックス結晶を含有していることが好ましい。ここで、ステレオコンプレックスポリ乳酸は、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸から形成され、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸は、下記式で表されるL−乳酸単位およびD−乳酸単位から実質的になる。
【0020】
【化1】

【0021】
ステレオコンプレックスポリ乳酸におけるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との重量比は、90:10〜10:90の範囲である。75:25〜25:75の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは60:40〜40:60の範囲であり、できるだけ50:50に近いことが好ましい。
【0022】
ステレオコンプレックスポリ乳酸の重量平均分子量は、10万〜50万である。より好ましくは10万〜30万である。重量平均分子量は溶離液にクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量値である。
【0023】
ステレオコンプレックスポリ乳酸は、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸からなりステレオコンプレックス結晶を含有する。ステレオコンプレックス結晶の含有率は、好ましくは80〜100%、より好ましくは95〜100%である。本発明で言うステレオコンプレックスポリ乳酸は、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、195℃以上の融解ピークの割合が好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。融点は、195〜250℃の範囲、より好ましくは200〜220℃の範囲である。融解エンタルピーは、20J/g以上、好ましくは30J/g以上である。具体的には、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、195℃以上の融解ピークの割合が90%以上であり、融点が195〜250℃の範囲にあり、融解エンタルピーが20J/g以上である
ことが好ましい。
【0024】
ステレオコンプレックスポリ乳酸は、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを所定の重量比で共存させ混合することにより製造することができる。
混合は、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸が溶解するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、フェノール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ブチロラクトン、トリオキサン、ヘキサフルオロイソプロパノール等の単独あるいは2種以上混合したものが好ましい。
【0025】
また混合は、溶媒の非存在下で行うことができる。即ち、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを所定量混合した後に溶融混練する方法、いずれか一方を溶融させた後に残る一方を加えて混練する方法を採用することができる。
あるいは、ポリ−L−乳酸セグメントとポリ−D−乳酸セグメントが結合している、ステレオブロックポリ乳酸も本発明のポリ乳酸成分に好適に用いることが出来る。
【0026】
ステレオブロックポリ乳酸はポリ−L−乳酸セグメントとポリ−D−乳酸セグメントが分子内で結合してなる、ブロック重合体である。
このようなブロック重合体は、たとえば、逐次開環重合によって製造する方法や、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を重合しておいてあとで鎖交換反応や鎖延長剤で結合する方法、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を重合しておいてブレンド後固相重合して鎖延長する方法、立体選択開環重合触媒を用いてラセミラクチドから製造する方法、など上記の基本的構成を持つ、ブロック共重合体であれば製造法によらず、用いることができる。
しかしながら、逐次開環重合によって得られる高融点のステレオブロック重合体、固相重合法によって得られる重合体を用いることが製造の容易さからより好ましい。
【0027】
本発明で用いるステレオコンプレックスポリ乳酸およびステレオブロックポリ乳酸は、そのステレオコンプレックス結晶化度が、90%以上であることが好ましく、より好ましくは100%である。ステレオコンプレックス結晶化度は、DSC測定において融点のエンタルピーを比較することによって下記式(2)によって決定することができる。
ステレオコンプレックス結晶化度
=[(ΔHms/ΔHms0)/(ΔHmh/ΔHmh0+ΔHms/ΔHms0)] (2)
(ただし、ΔHms0=203.4J/g、ΔHmh0=142J/g、ΔHms=ステレオコンプレックス融点の融解エンタルピー、ΔHmh=ホモ結晶の融解エンタルピー)
【0028】
本発明で用いるポリ乳酸成分には、ステレオコンプレックス結晶化度を向上させるために特定の添加物を添加することが好ましい。そのような添加物としては、下記式に示すリン酸金属塩が好ましい例として挙げることができる。
【0029】
【化2】

【0030】
MはNa、K、Al、Mg、Caであり、特に、K、Na、Alを好適に用いることができる。
これらの金属塩は、ポリ乳酸成分に対して、好ましくは10ppmから2wt%、より好ましくは50ppmから0.5wt%、さらに好ましくは100ppmから0.3wt%用いることが好ましい。少なすぎる場合には、ステレオコンプレックス結晶化度を向上する効果が小さく、多すぎると樹脂自体を劣化させるので好ましくない。
【0031】
また、ポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性を向上させるために、さらにケイ酸カルシウムを添加することが好ましい。ケイ酸カルシウムとしては、例えば、六方晶を含むものを用いることができ、その粒子径は低いほうが好ましい。例えば、平均一次粒子径は0.2〜0.05μmの範囲であるとポリ乳酸樹脂組成物に適度に分散するので、ポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性は良好なものとなる。また、添加量はポリ乳酸樹脂組成物を基準として、0.01から1wt%の範囲であることが好ましく、さらに好ましいのは0.05から0.5wt%の範囲である。多すぎる場合には、外観が悪くなりやすく、少なければ特段の効果を示さないので好ましくない。
【0032】
本発明で使用する環状カルボジイミド化合物は、環状構造を有する。環状カルボジイミド化合物は、環状構造を複数有していてもよい。
環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有するが、例えば、スピロ環など、分子中に複数の環状構造を有する場合にはスピロ原子に結合するそれぞれの環状構造中に1個のカルボジイミド基を有していれば、化合物として複数のカルボジイミド基を有していてよいことはいうまでもない。環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜15である。
【0033】
ここで、環状構造中の原子数とは、環構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合があるためである。また反応性の観点よりは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より環状構造中の原子数は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜15の範囲が選択される。
【0034】
環状構造は、下記式(1)で表される構造であることが好ましい。
【化3】

【0035】
式中、Qは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基である。ヘテロ原子とはこの場合、O、N、S、Pを指す。この結合基の価のうち2つの価は環状構造を形成するために使用される。Qが3価あるいは4価の結合基である場合、単結合、二重結合、原子、原子団を介して、ポリマーあるいは他の環状構造と結合している。
【0036】
結合基は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基またはこれらの組み合わせであり、上記で規定される環状構造を形成するための必要炭素数を有する結合基が選択される。組み合わせの例としては、アルキレン基とアリーレン基が結合した、アルキレン−アリーレン基のような構造などが挙げられる。
結合基(Q)は、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基であることが好ましい。
【0037】
【化4】

【0038】
式中、ArおよびArは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0039】
およびRは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。
【0040】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0041】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。シクロアルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。シクロアルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0042】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これら芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0043】
およびXは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0044】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0045】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0046】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0047】
式(1−1)、(1−2)においてs、kは0〜10の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜1の整数である。sおよびkが10を超えると、環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より整数は好ましくは0〜3の範囲が選択される。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。
【0048】
は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0049】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0050】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂環族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0051】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0052】
また、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
【0053】
本発明で用いる環状カルボジイミドとして、下記式(2)〜(4)で表される化合物が挙げられる。
【0054】
<環状カルボジイミド(2)>
【化5】

【0055】
式中、Qaは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(2)の化合物においては、脂肪族基、脂環族基、芳香族基は全て2価である。Qaは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基であることが好ましい。
【0056】
【化6】

【0057】
式中、Ara、Ara、Ra、Ra、Xa、Xa、Xa、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらは全て2価である。
かかる環状カルボジイミド化合物(2)としては、以下の化合物が挙げられる。
【0058】
【化7】

【0059】
【化8】

【0060】
【化9】

【0061】
【化10】

【0062】
【化11】

【0063】
【化12】

【0064】
【化13】

【0065】
【化14】

【0066】
【化15】

【0067】
【化16】

【0068】
【化17】

【0069】
【化18】

【0070】
【化19】

【0071】
【化20】

【0072】
<環状カルボジイミド(3)>
【化21】

【0073】
式中、Qbは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基、またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(3)の化合物においては、Qbを構成する基の内一つは3価である。Qbは、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基であることが好ましい。
【0074】
【化22】

【0075】
式中、Arb、Arb、Rb、Rb、Xb、Xb、Xb、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。Yは結合部であり、複数の環状構造がYを介して結合し、式(3)で表される構造を形成している。かかる環状カルボジイミド化合物(3)としては、下記化合物が挙げられる。
【0076】
【化23】

【0077】
【化24】

【0078】
【化25】

【0079】
【化26】

【0080】
<環状カルボジイミド(4)>
【化27】

【0081】
式中、Qcは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。ZおよびZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(4)の化合物において、Qcは4価である。従って、これらの基の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。Qcは、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基であることが好ましい。
【0082】
【化28】

【0083】
Arc、Arc、Rc、Rc、Xc、Xc、Xc、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、Arc、Arc、Rc、Rc、Xc、XcおよびXcは、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
およびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。ZおよびZは結合部であり、複数の環状構造がZおよびZを介して結合し、式(4)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(4)としては、下記化合物を挙げることができる。
【0084】
【化29】

【0085】
【化30】

【0086】
【化31】

【0087】
<芳香族ポリエステル>
本発明で用いる芳香族ポリエステルは、トリメチレンテレフタレート骨格を主たる構成単位とする。ここで主たるとは、芳香族ポリエステル中で、トリメチレンテレフタレート骨格がモル分率50モル%以上を占めることを意味する。トリメチレンテレフタレート骨格がモル分率において70%以上含まれていることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらには95%以上であることが成形性向上の観点から好ましい。
【0088】
発明で用いる芳香族ポリエステルは、トリメチレンテレフタレート骨格以外に、共重合成分を含んでいても良い。共重合成分としては、ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール類等を挙げることができる。例えば、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、D−乳酸、L−乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸などが、ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸などのような芳香族ジカルボン酸や、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等のような脂肪族環式ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のような脂肪族ジカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、ε−オキシ安息香酸などのようなオキシ酸などの二官能性カルボン酸などが、ジオール類としては、例えばエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸などをそれぞれ挙げることができる。
【0089】
本発明の芳香族ポリエステルは、固有粘度が0.5〜2.0であれば問題なく用いることができる。
なお、本発明において芳香族ポリエステルは環状ダイマー含有量がエステル結合1モル当り0.05〜2.5モル%であることが好ましい。該ダイマー含有量が上記範囲内にあるときには、本発明組成物の成形品表面に環状ダイマーが析出して表面欠陥となる問題、また本発明の両構成成分の相互作用が低下し物性の発揮が低下する問題、が生じることが無い。
【0090】
また、本発明の芳香族ポリエステルはビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル(以下BPEと略称することがある。)を0.2〜3wt%共重合されていることが好ましい。
さらに好ましい範囲として0.2〜2.5wt%、より好ましい範囲として0.3〜2wt%、とりわけ好ましい範囲として0.5〜2wt%の範囲が選択される。
【0091】
上記範囲を超えて共重合されているときには、本発明組成物の酸化に対する安定性、とりわけ加熱状態での酸化に対する安定性がおよび、本発明組成物成形品の脆性も減少する。なお環状ダイマー量、およびBPE量をコントロールするには、重合開始から終了までの任意の段階で、該成分を添加する方法、PTTペレットを高真空、加熱あるいは非加熱条件下、固相重合などの真空処理する方法などの組み合わせにより所望の値とすることができる。
【0092】
<組成物>
本発明では、樹脂組成物のポリマー成分に占める芳香族ポリエステルの割合は、20wt%から50wt%の範囲であることが好ましい。本発明が目的とする耐薬品性等の改善効果と、バイオベースポリマーを使用するという観点から、さらに好ましくは、20wt%から45wt%、特に好ましくは30wt%から40wt%である。
【0093】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物を製造するにあたっては、トリメチレンテレフタレート骨格を主たる構成単位とする芳香族ポリエステルと融点が190℃以上のポリ乳酸樹脂とを均一に混合し両者の物性を損なうことなく発揮出来ることが好ましい。
【0094】
上記芳香族ポリエステルとポリ乳酸樹脂とは、溶融ブレンド、溶液ブレンドなど、均一に混合することができればあらゆる方法によってブレンドすることが可能である。特に、ニーダー、一軸式混練機、二軸式混練機、溶融反応装置などの中で溶融状態にて混練することが好ましい。
【0095】
混練温度は両樹脂が溶融する温度であれば良いが、樹脂の安定性などを加味すると、240度から280度の範囲が好ましく、240度から260度の範囲で混練することがより好ましい。混練する際に、相溶化剤を用いることは、樹脂の均一性を向上し、混練温度が下げられるのでより好ましい。相溶化剤としては、例えば、無機充填剤、グリシジル化合物または酸無水物をグラフトまたは共重合した高分子化合物、芳香族ポリカーボネート鎖を有するグラフトポリマー、および有機金属化合物が挙げられ、一種または2種以上で用いてもよい。
【0096】
また、相溶化剤の配合量は、ポリ乳酸樹脂組成物を基準として、15wt%〜1wt%が好ましく、より好ましくは10wt%〜1wt%であり、1wt%未満では相溶化剤としての効果が小さく、15wt%を超えると機械特性が低下するため好ましくない。
【0097】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、そのままでも用いることができるのはいうまでも無いが、離型剤、表面平滑剤、耐湿熱性改善剤、難燃剤、フィラー、安定剤(酸化防止剤、UV吸収剤)、可塑剤、核剤、タルク、フレーク、エラストマー、帯電防止剤、ゴム強化スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリカーボネートからなる群から選ばれた添加物を少なくとも含むことが好ましい。
【0098】
離型剤としては、公知のものをいずれも用いることができるが、カルナウバワックス、ライスワックス等の植物系ワックス、蜜蝋、ラノリン等の動物系ワックス、モンタンワックス、モンタン酸部分ケン化エステルワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の石油系ワックス、ひまし油及びその誘導体、脂肪酸及びその誘導体等の油脂系ワックスが挙げられ、モンタン酸部分ケン化エステルワックスが特に好適に用いられ、離型剤のなかでも特に後述のハイサイクル性を向上させる効果に優れる。
【0099】
表面平滑剤としては、公知のものをいずれも用いることができるが、シリコーン系化合物、フッ素系界面活性剤、有機界面活性剤を挙げることができる。
【0100】
難燃剤としては、公知のものをいずれも用いることができるが、具体的には、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、その他の無機系難燃剤等を挙げることができる。
【0101】
臭素系難燃剤の具体例としては、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン、1,1−スルホニル[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロムビスフェノール−S、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリ(11) ブロモネオペンチルアルコール、ブロム化ポリスチレン、ブロム化ポリエチレン、テトラブロムビスフェノール−A、テトラブロムビスフェノール−A誘導体、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマーまたはポリマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマーまたはポリマー、ブロム化フェノールノボラックエポキシなどのブロム化エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2−ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ジブロモネオペンチルグリコール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、N,N′−エチレン−ビス−テトラブロモフタルイミドなどが挙げられる。なかでも、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマー、ブロム化エポキシ樹脂が好ましい。
【0102】
塩素系難燃剤の具体例としては、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、パークロロシクロペンタデカン、テトラクロロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0103】
リン系難燃剤としては、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩などの有機リン系化合物や、赤リン等を挙げることができる。
【0104】
フィラーとしては、公知のものをいずれも用いることができるが、例えば、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、ワラストナイト、ケイ酸カルシウム繊維、炭素繊維、マグネシウムオキシサルフェート繊維、チタン酸カリウム繊維、酸化チタン、亜硫酸カルシウム、ホワイトカーボン、クレー、モンモリロナイト、硫酸カルシウム等を挙げることができる。
【0105】
安定剤としては、公知のものをいずれも用いることができるが、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の各種金属せっけん系安定剤、ラウレート系、マレート系やメルカプト系各種有機錫系安定剤、ステアリン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の各種鉛系安定剤、エポキシ化植物油等のエポキシ化合物、アルキルアリルホスファイト、トリアルキルホスファイト等のホスファイト化合物、ジベンゾイルメタン、デヒドロ酢酸等のβ−ジケトン化合物、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール等のポリオール、ハイドロタルサイト類やゼオライト類、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0106】
可塑剤としては、公知のものをいずれも用いることができるが、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤およびエポキシ系可塑剤などを挙げることができる。
【0107】
ポリエステル系可塑剤としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などのジカルボン酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルや、ポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルなどを挙げることができる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸もしくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
【0108】
グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレートおよびグリセリンモノアセトモノモンタネートなどを挙げることができる。
【0109】
多価カルボン酸エステル系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシルなどのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシルアジピン酸エステルなどのアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、およびセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸エステルなどの他、ビス(メチルジグリコール)サクシネート、ビス(ブチルジグリコール)サクシネートメチルジグリコールブチルジグリコールサクシネート、エチルジグリコールブチルジグリコールサクシネート、プロピルジグリコールブチルジグリコールサクシネート、ベンジルメチルジグリコールサクシネート、メトキシカルボニルメチルメチルジグリコールサクシネート、エトキシカルボニルメチルメチルジグリコールサクシネート、ベンジルブチルジグリコールサクシネート、ビス(メチルジグリコール)アジペート、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、エチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、プロピルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、ベンジルブチルジグリコールアジペート、メトキシカルボニルメチルメチルジグリコールアジペート、メトキシカルボニルメチルブチルジグリコールアジペート、エトキシカルボニルメチルメチルジグリコールアジペート、エトキシカルボニルメチルブチルジグリコールアジペート、ジメチルジグリコールモノブチルジグリコールサイトレート、ベンジルジメチルジグリコールサイトレート、メトキシカルボニルメチルジメチルサイトレート、メトキシカルボニルメチルジエチルサイトレート、メトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジメチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジオクチルサイトレート、ブトキシカルボニルメチルジメチルサイトレート、ブトキシカルボニルメチルジエチルサイトレート、ブトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、ジメトキシカルボニルメチルモノメチルサイトレート、ジメトキシカルボニルメチルモノエチルサイトレート、ジメトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノメチルサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノオクチルサイトレート、ジブトキシカルボニルメチルモノメチルサイトレート、ジブトキシカルボニルメチルモノエチルサイトレート、ジブトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジメチルジグリコールサイトレート、エトキシカルボニルメチルジブチルジグリコールサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノメチルジグリコールサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノブチルジグリコールサイトレート等を挙げることができ、なかでもメチルジグリコールブチルジグリコールサクシネート、ベンジルメチルジグリコールサクシネート、ベンジルブチルジグリコールサクシネート、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、ベンジルブチルジグリコールアジペート、メトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、ブトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、ジメトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレート、ジブトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレートを挙げることができる。
【0110】
リン酸エステル系可塑剤としては、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシルおよびリン酸トリクレシル等を挙げることができる。
【0111】
ポリアルキレングリコール系可塑剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロックおよび/又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物、および末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物などを挙げることができる。
【0112】
エポキシ系可塑剤としては、エポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリドなどがあるが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするようなエポキシ樹脂も使用することができる。
【0113】
その他、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートなどの脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチルなどのオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイル、およびパラフィン類などを挙げることができる。
【0114】
核剤としては、公知のものをいずれも用いることができるが、無機系結晶核剤および有機系結晶核剤のいずれをも使用することができる。無機系結晶核剤の具体例としては、カオリナイト、モンモリロナイト、合成マイカ、硫化カルシウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウムおよびフェニルホスホネートの金属塩などを挙げることができる。これらの無機系結晶核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていることが好ましい。
【0115】
また、有機系結晶核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートなどの有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(tert−ブチルアミド)などのカルボン酸アミド、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートなどのリン化合物金属塩、および2,2−メチルビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウムなどを挙げることができる。
【0116】
タルクとしては公知のものをいずれも用いることができるが、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などの表面処理剤で処理されていてもよい。タルクの平均粒径としては、0.1〜50μmのものが好ましく、さらには0.5〜10μmのものが好ましい。
【0117】
フレークとしては、公知のものをいずれも用いることができるが、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔などを挙げることができる。
【0118】
エラストマーとしては、公知のものをいずれも用いることができるが、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、各種アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体(たとえば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、ジエンゴム(たとえばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル単量体との共重合体(たとえばスチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合せしめたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴムなどが挙げられる。
【0119】
帯電防止剤としては、公知のものをいずれも用いることができるが、アニオン系帯電防止剤、カチオン系帯電防止剤、非イオン系帯電防止剤、両性系帯電防止剤等の低分子型帯電防止剤及び高分子型帯電防止剤等が挙げられる。
【0120】
好適なアニオン系帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびアルキルホスフェートを挙げることができる。アルキル基としては、炭素数が4〜20の直鎖状のアルキル基が好ましく用いられる。
【0121】
好適なカチオン系帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸ホスホニウム、アルキルベンゼンスルホン酸ホスホニウムおよび4級アンモニウム塩化合物を挙げることができる。アルキル基としては、炭素数が4〜20の直鎖状のアルキル基が好ましく用いられる。
【0122】
好適な非イオン系帯電防止剤としては、ポリオキシエチレン誘導体、多価アルコール誘導体およびアルキルエタノールアミンを挙げることができる。ポリオキシエチレン誘導体として、例えばポリエチレングリコールは、数平均分子量が500〜100000のものが好ましく用いられる。
【0123】
好適な両性系帯電防止剤としては、アルキルベタイン及びスルホベタイン誘導体を挙げることができる。好適な高分子型帯電防止剤としては、ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、ポリアルキレンオキシド共重合体、ポリエチレンオキシドーエピクロルヒドリン共重合体およびポリエーテルエステルを挙げることができる。これらの帯電防止剤は併用してもよい。
【0124】
ゴム強化スチレン系樹脂としては、公知のものをいずれも用いることができるが、例えば、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)およびAES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)などを挙げることができる。
【0125】
これらの添加物は、付与しようとする特性に応じて単独であるいは複数種を組み合わせて用いることができ、例えば、安定剤、離型剤及びフィラーを組み合わせて添加することができる。
【0126】
以下に、特に付与する特性と組み合わせの一例について記載する。
(1)ハイサイクル性:
ハイサイクル性とは、射出成形サイクルの短さを意味する。ハイサイクル性を向上させるにあたっては、例えば、安定剤、タルク、離型剤を組み合わせて用いればよい。
離型剤の添加割合は、ポリ乳酸樹脂組成物を基準として0.05〜3.0wt%、安定剤の添加割合は、0.05〜5.0wt%、タルクの添加割合は1〜10wt%であればよい。
【0127】
(2)靱性・耐低温衝撃性:
靭性は、粘り強さを意味し、破壊に対する抵抗の指標で、一般にシャルピー衝撃試験により評価されるものである。靭性および耐低温衝撃性を向上させるにあたっては、離型剤、安定剤およびエラストマーを組み合わせて用いるか、あるいは、離型剤、安定剤、エラストマーおよびポリカーボネートを組み合わせて用いればよい。
離型剤の添加割合は、ポリ乳酸樹脂組成物を基準として0.05〜3.0wt%、安定剤の添加割合は、0.05〜5.0wt%、エラストマーの添加割合は1〜10wt%、ポリカーボネートの添加割合は1〜10wt%であればよい。
靭性・耐低温衝撃性を有するポリ乳酸樹脂組成物は、特に自動車部品のハーネスコネクタ、バンパー部品に好適に用いることができる。
【0128】
(3)難燃性:
難燃性を向上させるにあたっては難燃剤を添加するだけでもよいが、離型剤、安定剤、難燃剤及びフィラーを組み合わせて用いることが好ましい。
難燃剤の添加割合は、ポリ乳酸樹脂組成物を基準として0.05〜5.0wt%、離型剤の添加割合は、0.05〜3.0wt%、安定剤の添加割合は0.05〜5.0wt%、フィラーの添加割合は1〜10wt%であればよい。
【0129】
(4)低そり性:
低そり性を向上させるにあたっては、離型剤、安定剤、フレーク及びフィラーを組み合わせて用いるか、あるいは、離型剤、安定剤、フィラー及びポリカーボネートを組み合わせて用いればよい。また、離型剤、安定剤、フィラー及びポリカーボネートに更に、ポリエチレンテレフタレートを添加物として加えてもよい。
更に、離型剤、安定剤、フィラー及びゴム強化スチレン系樹脂を組み合わせて用いてもよい。
離型剤の添加割合は、ポリ乳酸樹脂組成物を基準として0.05〜3.0wt%、安定剤の添加割合は、0.05〜5.0wt%、フィラーの添加割合は1〜10wt%、ポリカーボネートの添加割合は1〜10wt%、ポリエチレンテレフタレートの添加割合は1〜10wt%、ゴム強化スチレン系樹脂の添加割合は1〜10wt%であればよい。
低そり性が良好なポリ乳酸樹脂組成物は、家電用途に好適に用いることができる。
【0130】
(5)表面外観性:
表面外観性は、樹脂組成物を成形したときの表面平滑性と光沢性とからなり、一般的に、触感および目視により判断されるものである。
表面外観性を向上させるにあたっては、離型剤、安定剤、フィラー及びポリエチレンテレフタレートを組み合わせて用いればよい。また離型剤、安定剤、フィラー及びポリエチレンテレフタレートに更に、ポリカーボネートを添加物として加えてもよい。
離型剤の添加割合は、ポリ乳酸樹脂組成物を基準として0.05〜3.0wt、安定剤の添加割合は、0.05〜5.0wt%、フィラーの添加割合は1〜10wt%、ポリカーボネートの添加割合は1〜10wt%、ポリブチレンテレフタレートの添加割合は1〜10wt%であればよい。
表面外観性が高いポリ乳酸樹脂組成物は、家電用途に好適に用いることができる。
【0131】
(6)耐加水分解性:
耐加水分解性を向上させるには、耐湿熱性改善剤を添加するだけでもよいが、離型剤、安定剤、フィラー及び耐湿熱性改善剤を組み合わせて用いることが好ましい。
更に、ポリ乳酸樹脂成分のカルボキシル末端基濃度、芳香族ポリエステルのカルボキシル末端基濃度を低下させておくことが好ましく、カルボキシル末端基濃度は例えば、固相重合反応等により低下させることができる。
離型剤の添加割合は、ポリ乳酸樹脂組成物を基準として0.05〜3.0wt、安定剤の添加割合は、0.05〜5.0wt%、フィラーの添加割合は1〜10wt%、耐湿熱性改善剤の添加割合は0.05〜5.0wt%、であればよい。
耐加水分解が高いポリ乳酸樹脂組成物は、自動車部品用途に好適に用いることができる。
【0132】
(7)耐ヒートショック性:
ヒートショック性は、低温保持(−40℃前後30分間程度)と高温保持(100℃前後30分間程度)とを交互に繰り返した場合の樹脂の耐久性の度合いを意味するものである。
耐ヒートショック性を向上するにあたっては、離型剤、安定剤、フィラー、エラストマー及び耐質熱性改善剤を組み合わせて用いることが好ましい。
離型剤の添加割合は、ポリ乳酸樹脂組成物を基準として0.05〜3.0wt、安定剤の添加割合は、0.05〜5.0wt%、フィラーの添加割合は1〜10wt%、エラストマーの添加割合は、1〜10wt%、耐質熱性改善剤の添加割合は0.05〜5.0wt%、であればよい。
耐ヒートショック性の良好なポリ乳酸樹脂組成物は、自動車部品用途に好適に用いることができる。
【0133】
(8)耐トラッキング性:
耐トラッキング性とは、材料に永久的な炭化導電路を生じさせる電圧の程度を評価するものであって、高いほど好ましいものである。
耐トラッキング性を向上させるにあたっては、離型剤、安定剤、難燃剤、タルク及びフィラーを組み合わせて用いることが好ましい。
離型剤の添加割合は、ポリ乳酸樹脂組成物を基準として0.05〜3.0wt、安定剤の添加割合は0.05〜5.0wt%、難燃剤の添加割合は0.05〜5.0wt%、タルクの添加割合は1〜10wt%、フィラーの添加割合は1〜10wt%であればよい。トラッキング性の良好なポリ乳酸樹脂組成物は、電気部品、特にリレー、スイッチ等に好適に用いることができる。
【0134】
(9)耐光性:
耐光性を向上させるにあたっては、安定剤を添加するだけでもよいが、離型剤、安定剤、フィラー及び難燃剤を組み合わせて用いることが好ましい。
離型剤の添加割合は、ポリ乳酸樹脂組成物を基準として0.05〜3.0wt、安定剤の添加割合は、0.05〜5.0wt%、難燃剤の添加割合は、0.05〜5.0wt%、フィラーの添加割合は1〜10wt%であればよい。
耐光性の良好なポリ乳酸樹脂組成物は、照明部品等に好適に用いることができる。
【0135】
(10)静音性:
静音性とは、騒音源を有する構造材料やハウジング類またはリレー部品等の電気電子部品、モーターケース等に使用した場合の、静音性、振動減衰特性を意味する。
静音性を向上させるにあたっては、離型剤、安定剤、エラストマー、タルク及びフィラーを組み合わせて用いることが好ましい。
離型剤の添加割合は、ポリ乳酸樹脂組成物を基準として0.05〜3.0wt、安定剤の添加割合は0.05〜5.0wt%、エラストマーの添加割合は、1〜10wt%、タルクの添加割合は、1〜10wt%、フィラーの添加割合は1〜10wt%であればよい。静音性の良好なポリ乳酸樹脂組成物は、上記の通りに騒音源を有する構造材料やハウジング類またはリレー部品等の電気電子部品、モーターケース等に好適に用いることができる。
【0136】
(11)低ガス性:
低ガス性とは、ポリ乳酸樹脂組成物を高温または長期間使用した際のガス発生量が少なく且つ溶融加工時の昇華物量の少ないことを意味する。
低ガス性を向上させるにあたっては、離型剤、安定剤、難燃剤及びフィラーを組み合わせて用いればよく、更に、エステル交換反応抑制剤を加えると好ましい。なお、エステル交換反応抑制剤としては、リン酸2水素ナトリウム、酢酸カリウム、トリメチルホスフェート、フェニルホスホン酸などが挙げられる。
離型剤の添加割合は、ポリ乳酸樹脂組成物を基準として0.05〜3.0wt、安定剤の添加割合は、0.05〜5.0wt%、難燃剤の添加割合は、0.05〜5.0wt%、wt%、フィラーの添加割合は、1〜10wt%、エステル交換反応抑制剤の添加割合は0.01〜5.0wt%であればよい。
低ガス性の良好なポリ乳酸樹脂組成物は、電気部品、特にリレー等に好適に用いることができる。
【0137】
(12)制電性:
制電性を向上させるに当たっては、帯電防止剤を添加すればよい。
帯電防止剤の添加割合は、ポリ乳酸樹脂組成物を基準として0.1〜10wt%であればよい。
制電性の良好なポリ乳酸樹脂組成物は、例えば、半導体製造時に用いられるウェハーキャリアー用途として好適に用いることができる。
本発明によって得られるポリ乳酸樹脂組成物は、成形することによってさまざまな成型品、シートとして用いることが可能である。成形の方法としては溶融した後に成形する方法や、圧縮して溶着する方法など通常知られている溶融成形樹脂の成形法をとることができるが、たとえば射出成形、押出成形、ブロー成形、発泡成形、プレス成形などを好適に用いることができる。
本発明によって得られる樹脂は、成形性に優れており、特にその成型品の結晶化度が高い場合には、成形収縮率が低く、耐熱性に優れたものとなる。特に、結晶化度が40%を超える成型品は耐熱性に優れるので好ましい。
【実施例】
【0138】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものでは無い。なお、実施例中の各値は以下の方法に従って求めた。
【0139】
1)BPEの定量:
粉砕した試料、約2gを精秤し、2N水酸化カリウムのメタノール溶液25ミリリットルに加え、還流下4時間かけて、加溶媒分解し、ガスクロマトグラフ分析により、標品を使用した検量線に従いBPEを定量した。
カラム;DURABOND DB−WAX;0.25mm*30m(コート厚み;0.25μm)
キャリヤー;Heガス、100ml/min.
昇温;150℃から230℃まで20℃/minで昇温
【0140】
2)PTT中環状ダイマーの定量:
試料約0.3gを精秤、ヘキサフルオロイソプロパノール5ミリリットルとクロロホルム5ミリリットルの混合溶媒に溶解、溶解後クロロホルム5ミリリットルを加え、さらにアセトニトリル、80ミリリットルを加えた。析出する不溶物を濾別しその濾液を300ミリリットルフラスコに受け、不溶物をさらにアセトニトリル約80ミリリットルで洗浄するとともに、さらに濾液にアセトニトリルを追加し総量を200mlとした。この溶液を高速液体クロマトグラフィーで分析し、環状ダイマーを定量した。
カラム; μ Bondasphere 15μ C−18−100A、3.9*190mm(ウォーターズ社製)、温度45℃
溶離液; 水/アセトニトリル(70/30)容量比、流量1.5ミリリットル/min検出; 紫外線242nm
【0141】
3)酸価、カルボキシル末端基の定量(PTT):
試料約1gを精秤、精製ベンジルアルコール100mlに溶解、窒素気流下、200℃で速やかに溶解、室温に冷却、精製クロロホルム100mlを加え、フェノールレッドを指示薬とし、0.1N水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定する。
【0142】
4)固有粘度(PTT):
常法に従って、オルトクロルフェノールを溶媒として35℃で測定して求めた。
【0143】
5)重量平均分子量(Mw)(ポリ乳酸):
ポリマーの重量平均分子量はGPC(カラム温度40℃、クロロホルム)により、ポリスチレン標準サンプルとの比較で求めた。
【0144】
6)融点、結晶融解ピーク、結晶融解開始温度、結晶融解エンタルピー測定(ポリ乳酸):
TAインストルメンツ製 TA−2920示差走査熱量測定計DSCを用いた。
測定は、試料10mgを窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温から260℃まで昇温した。第一スキャンで、ホモ結晶融解ピーク、ホモ結晶融解(開始)温度、ホモ結晶融解エンタルピーおよびステレオコンプレックス結晶融解ピーク、ステレオコンプレックス結晶融解(開始)温度およびステレオコンプレックス結晶融解エンタルピーを求めた。
【0145】
7)ステレオコンプレックス結晶化度の測定(ポリ乳酸)
本発明において、ステレオコンプレックス結晶化度はDSC(TAインストルメント社製TA−2920)を用いて融解エンタルピーを測定し、そのエンタルピーから下記式(2)に従って求めた。
ステレオコンプレックス結晶化度
= [(ΔHms/ΔHms0)/(ΔHmh/ΔHmh0+ΔHms/ΔHms0)] (2)
(ただし、ΔHms0=203.4J/g、ΔHmh0=142J/g、ΔHms=ステレオコンプレックス融点の融解エンタルピー、ΔHmh=ホモ結晶の融解エンタルピー)
【0146】
8)環状カルボジイミド構造のNMRによる同定およびポリエステル組成物中の環状カルボジイミドの定量:
合成した環状カルボジイミド化合物はH−NMR、13C−NMRによって確認した。NMRは日本電子(株)製JNR−EX270を使用した。溶媒は重クロロホルムを用いた。
【0147】
9)環状カルボジイミドのカルボジイミド骨格のIRによる同定:
合成した環状カルボジイミド化合物のカルボジイミド骨格の有無は、FT−IRによりカルボジイミドに特徴的な2100〜2200cm−1の確認を行った。FT−IRはサーモニコレー(株)製Magna−750を使用した。
【0148】
10)加水分解に対する安定性:
試料を恒温恒湿機にて、80℃、95%RHにて100時間処理したときの還元粘度保持率を評価した。
耐加水分解安定性は、還元粘度保持率が80から90%未満であるとき「合格」、90%から95%未満であるとき「優秀合格」、95%から100%のとき「とりわけ優秀合格」と判断される。
【0149】
11)イソシアネート臭の発生の有無:
260℃、5分間、試料を溶融したとき、官能評価により測定者がイソシアネート臭を感じるかどうかで判定した。イソシアネート臭を感じないとき、合格と判断した。
【0150】
12)作業環境の良否:
樹脂組成物製造時、作業環境がイソシアネート臭により悪化するかどうかにより判定した。悪化しない場合には良と評価した。
【0151】
以下、本発明で使用する剤を記載する。
環状カルボジイミド化合物として以下の剤を製造、使用した。
[製造例1]環状カルボジイミドCC2(MW=516)
【0152】
【化32】

【0153】
o−ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを攪拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物D(ニトロ体)を得た。
【0154】
次に中間生成物D(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物E(アミン体)が得られた。
【0155】
次に攪拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌させた。そこに中間生成物E(0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物F(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
【0156】
次に、攪拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌させる。そこに、25℃で中間生成物F(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を、精製することで、CC2を得た。CC2の構造はNMR、IRにより確認した。
【0157】
次に、以下を合成した。
[製造例2]PTT樹脂:(PTT−1)の製造:
PTT−1は以下の方法により製造した。すなわちエステル化反応槽に1,3−プロパンジオール30.4重量部及びテレフタル酸33.2重量部を仕込み3039hPaの圧力下240℃で4時間エステル化反応を行ない、エステル化反応率95.6%のエステル化反応物を得た。
得られたエステル化反応物40重量部を重縮合反応槽に移送しテレフタル酸1モルに対しテトラブチルチタエート2×10−4モルを加え0.3hPa減圧下245℃で2時間溶融重合を行ない、固有粘度0.65のプレポリマーを得た。得られたプレポリマーを130℃、1時間予備乾燥後、2hPaの圧力下200℃、4hr固相重合を行った後、PTTを2軸押出し機にてシリンダー温度260度で溶融チップ化し、固有粘度1.2、BPE含有量0.5wt%、環状ダイマー0.2モル%、カルボキシル末端基濃度35eq/tonのPTTを得た。
【0158】
[製造例3](ポリ−L−乳酸の製造)
Lラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下攪拌翼のついた反応機中にて、180℃で2時間反応し、その後、減圧して残存するラクチドを除去し、チップ化し、ポリ−L−乳酸を得た。
得られたポリ−L−乳酸の重量平均分子量は13万、ガラス転移点(Tg)63℃、融点は180℃であった。
【0159】
[製造例4](ポリ−D−乳酸の製造)
Dラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下攪拌翼のついた反応機中にて、180℃で2時間反応し、その後、減圧して残存するラクチドを除去し、チップ化し、ポリ−L−乳酸を得た。
得られたポリ−D−乳酸の重量平均分子量は13万、ガラス転移点(Tg)63℃、融点は180℃であった。
【0160】
[製造例5](リン酸塩含有ステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂の製造)
製造例2および3で得られたポリ−L−乳酸ならびにポリ−D−乳酸を各50重量部ずつ量り取り、また、リン酸金属塩(株式会社ADEKA製「アデカスタブ」NA−11)0.5重量部とともにチップを良く混合した後、ラボプラストミルS−15、225℃のスクリュー温度で混練押出して、水槽中にストランドを取り、チップカッターにてチップ化してステレオコンプレックス樹脂を得た。得られたステレオコンプレックス樹脂は、Mwが12.5万、Tmが180℃と220℃に観測され、ステレオコンプレックス結晶化度は95%であった。
【0161】
[実施例1]
製造例5で得られたステレオコンプレックスポリ乳酸50重量部、製造例1で得られたCC2を1重量部、製造例2で得られたPTT樹脂(PTT−1)50重量部を、ラボプラストミルを使い、250℃、送り速度1kg/hrにて混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂のステレオコンプレックス結晶化度は92%であった。
得られた樹脂組成物を、金型温度110℃、型締め時間2分にて射出成形し、成形片を得た。得られた成型品は白色で、結晶化度は33%、ステレオコンプレックス結晶化度は82%、外観は良好であった。組成物製造時イソシアネート臭の発生は感じられなかった。また、260℃、5分間溶融したとき、イソシアネート臭評価は合格であった。また、カルボキシル基濃度は、加水分解に対する安定性試験後も増加することなく、さらに耐加水分解安定性も「とりわけ優秀合格」の範囲であった。
【0162】
[実施例2]
製造例5で得られたステレオコンプレックスポリ乳酸80重量部、製造例1で得られたCC2を1重量部、製造例2で得られたPTT樹脂(PTT−1)20重量部を、ラボプラストミルを使い、250℃、送り速度1kg/hrにて混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂のステレオコンプレックス結晶化度は100%であった。
得られた樹脂組成物を、金型温度110℃、型締め時間1分にて射出成形し、成形片を得た。得られた成型品は白色で、結晶化度は45%、ステレオコンプレックス結晶化度は100%、外観は良好であった。組成物製造時イソシアネート臭の発生は感じられなかった。また、260℃、5分間溶融したとき、イソシアネート臭評価は合格であった。また、カルボキシル基濃度は、加水分解に対する安定性試験後も増加することなく、さらに耐加水分解安定性も「とりわけ優秀合格」の範囲であった。
【0163】
[比較例1]線状ポリカルボジイミド(LA−1)を含有する組成物:
実施例1において、カルボジイミド化合物を線状カルボジイミドLA−1(日清紡績(株)製、「カルボジライト」LA−1)に変更したこと以外は同様にして、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。組成物製造時イソシアネート臭を強く感じ、作業環境は不良と判断した。また260℃、5分間溶融したとき、イソシアネート臭評価は不合格であった。
【0164】
[比較例2]線状カルボジイミド(Sb−I)を含有する組成物:
実施例1において、カルボジイミド化合物を線状カルボジイミドSb−I(ラインケミージャパン(株)製「スタバクゾール」I)に変更したこと以外は同様にして、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。本組成物は製造時、イソシアネート臭の発生が強く、排気装置の設置が必要であった。また260℃、5分間溶融したとき、イソシアネート臭評価は不合格であった。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の樹脂組成物は各種成形品の原料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている下記式(1)で表される環状構造を含み、環状構造を形成する原子数が8〜50である環状カルボジイミド化合物、トリメチレンテレフタレート骨格を主たる構成単位とする芳香族ポリエステルおよびポリ乳酸を含有する、樹脂組成物。
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
【請求項2】
Qは、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基である請求項1記載の樹脂組成物。
【化2】

(式中、ArおよびArは各々独立に、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。RおよびRは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基またはこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。XおよびXは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。sは0〜10の整数である。kは0〜10の整数である。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。Xは、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【請求項3】
D成分の環状構造を含む化合物が、下記式(2)で表される請求項1記載の組成物。
【化3】

(式中、Qaは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
【請求項4】
Qaは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基である請求項3記載の樹脂組成物。
【化4】

(式中、Ara、Ara、Ra、Ra、Xa、Xa、Xa、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。)
【請求項5】
D成分の環状構造を含む化合物が、下記式(3)で表される請求項1記載の樹脂組成物。
【化5】

(式中、Qbは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。)
【請求項6】
Qbは、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基である請求項5記載の樹脂組成物。
【化6】

(式中、Arb、Arb、Rb、Rb、Xb、Xb、Xb、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。)
【請求項7】
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである請求項5記載の樹脂組成物。
【請求項8】
D成分の環状構造を含む化合物が、下記式(4)で表される請求項1記載の樹脂組成物。
【化7】

(式中、Qcは、脂肪族基、芳香族基、脂環族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。)
【請求項9】
Qcは、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基である請求項8記載の樹脂組成物。
【化8】

(式中、Arc、Arc、Rc、Rc、Xc、Xc、Xc、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【請求項10】
およびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである請求項8記載の樹脂組成物。
【請求項11】
ポリ乳酸が、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸の混合物であり、ステレオコンプレックス結晶を含有している、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形体。

【公開番号】特開2011−256338(P2011−256338A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133901(P2010−133901)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】