説明

樹脂組成物およびその成形品

【課題】 機械的強度に優れ、耐熱性があり、しかも光学用途部材に適した光学特性を有する樹脂組成物、および当該樹脂を成形してなる成形体を提供する。
【解決手段】 下記構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含み、屈折率が1.49以上1.57以下のポリカーボネート共重合体と、該ポリカーボネート共重合体に対して0.01以上低い屈折率を示す部分を有する粒子とからなる樹脂組成物。


(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含有するポリカーボネート共重合体と、粒子とからなる樹脂組成物および当該樹脂を成形してなる成形品に関するものであって、耐熱性と熱安定性のいずれも良好で、色相、耐候性および剛性に優れた樹脂組成物に関するものである。そして、当該樹脂組成物を成形してなる、表面硬度が高く、耐候変色性が小さく、照明カバー、照明看板、透過型のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シートなどの光学特性を利用した成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは、ジヒドロキシ化合物を炭酸エステルにより連結させたポリマーであり、その中でも2,2ービス(4ーヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)より得られるポリカーボネートは、耐衝撃性、耐熱性及び透明性に優れた熱可塑性樹脂として幅広い用途があり、無機ガラスに比べ軽量で、生産性にも優れているので、照明カバー、照明看板、透過型のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シート等の、光拡散性が要求される用途にも好適に用いられている。
【0003】
ポリカーボネートは一般的に石油資源から誘導される原料を用いて製造される。近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネートの提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が、気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後の廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな、植物由来モノマーを原料としたポリカーボネートの開発が求められており、植物由来モノマーとしてイソソルビドを使用し、炭酸ジフェニルとのエステル交換により、ポリカーボネートを得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、得られたポリカーボネートは、褐色であり、透明性や光拡散性が望まれる用途には満足できるものではなかった。また、イソソルビドと他のジヒドロキシ化合物との共重合ポリカーボネートとして、ビスフェノールAを共重合したポリカーボネートが提案されており(例えば、特許文献2参照)、更に、イソソルビドと脂肪族ジオールとを共重合することにより、イソソルビドからなるホモポリカーボネートの剛直性を改善する試みがなされている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
一方、脂環式ジヒドロキシ化合物である1,4−シクロヘキサンジメタノールを重合したポリカーボネートも多数提案されているが(例えば、特許文献4、5)これらのポリカーボネートの分子量は充分に高いものではなく、そのためガラス転移温度が低いものが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許第1,079,686号公報
【特許文献2】特開昭56−55425号公報
【特許文献3】国際公開第2004/111106パンフレット
【特許文献4】特開平6−145336号公報
【特許文献5】特公昭63−12896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようにイソソルビドを用いたポリカーボネートの提案はなされているが、これらの文献にて開示されているのは、ガラス転移温度、さらには基本的な機械的特性のみで、透明性や光拡散性など光学的特性の改良について開示されていない。植物由来モノマーとして知られるイソソルビドなどの、特定の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート共重合体について、光拡散性などに代表される光学特性を改良することが望まれていた。
【0008】
本発明の課題は、下記構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含有するポリカーボネート共重合体を使用したポリカーボネート樹脂組成物について、光学的特性を改良することによって、機械的強度に優れ、耐熱性があり、しかも光学用途部材に適した光学特性を有する樹脂組成物、および当該樹脂を成形してなる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑み、本発明者らは、特定構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含み、且つ特定の屈折率を有するポリカーボネート共重合体と、該ポリカーボネート共重合体に対して特定範囲の屈折率を示す部分を有する粒子とからなる樹脂組成物とすることにより、光学特性の中でも光拡散性に優れ、表面硬度が高く、耐候変色性が少なく、また自消性であることを見出し、発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、下記構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含み、屈折率が1.49以上1.57以下のポリカーボネート共重合体と、該ポリカーボネート共重合体に対して0.01以上低い屈折率を示す部分を有する粒子とからなる樹脂組成物に存する。但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。
【0011】
【化1】

【0012】
そして、前記ポリカーボネート共重合体100質量部に対して、前記粒子を0.05質量部以上20質量部以下含有することが好ましく、当該粒子の体積平均粒子径が0.7μm以上30μm以下であることが好ましく、当該粒子が、シリコーン樹脂および架橋ブチルアクリレートから選ばれる部分を少なくとも有することが好ましく、当該粒子がコア/シェル構造であるか、単一構造であることが好ましい。
【0013】
また、前記ポリカーボネート共重合体の鉛筆硬度がHB以上であることが好ましく、ガラス転移温度が80℃以上であることが好ましく、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むことが好ましい。
更に別の本発明の要旨は、本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品に存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の樹脂組成物は、光学特性の中でも光拡散性に優れ、表面高度が高く、耐候変色性が小さく、自消性であって、ガラス転移温度と耐衝撃強度のバランスが良好であり、当該樹脂組成物を成形してなる成形体は、照明カバー、照明看板、透過型のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シート等などに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
本発明の樹脂組成物は、下記構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含み、屈折率が1.49以上1.57以下のポリカーボネート共重合体と、該ポリカーボネート共重合体に対して0.01以上低い屈折率を示す部分を有する粒子とからなる樹脂組成物である。但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。
【0016】
【化2】

【0017】
<粒子>
本発明の樹脂組成物に用いる粒子は、本発明の樹脂組成物に用いるポリカーボネート共重合体に対して0.01以上低い屈折率を示す部分を有する粒子であって、0.01以上低い屈折率を示す部分を有する粒子であれば、単一構造であってもコア/シェル構造を有するものであっても構わない。当該粒子の屈折率(以下、nldと略記することがある)は、温度25℃におけるd線(587.562nm、He)に対する値である。粒子の屈折率は、ベッケ法(標準溶液と比較する方法)により行う。
【0018】
本発明の樹脂組成物中において、ポリカーボネート共重合体に対して0.01以上低い屈折率を示す部分が形成されれば、光学特性のうち光拡散性が良好なものとなるため、粒子とポリカーボネート共重合体との界面は必ずしも明確である必要は無いが、光拡散性の点からポリカーボネート共重合体と非相溶性の粒子であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物における粒子の含有量は、ポリカーボネート共重合体100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以上10質量部以下であって、特には0.8質量部以上8質量部以下で用いられる。粒子の含有量が少なすぎると光学用途に使用した場合、光拡散性が不足し、光源が透けて見えるという問題が生じ、逆に多すぎても光線透過率が低下し、必要な照度や輝度が得られなくなる場合がある。
【0019】
本発明に用いる粒子の体積平均粒子径に特に制限はないが、体積平均粒子径が0.7〜30μmであることが好ましい。体積平均粒子径が0.7μm未満であると、得られた樹脂組成物の光拡散性が低下する虞があり、光源が透けて見えたり、視認性に劣る場合がある。一方で30μmを超えると、添加量に対する拡散効果が低いので、輝度が低下する場合がある。よって、粒子の体積平均粒子径は、1〜20μmであることがより好ましく、2〜10μmであることが更に好ましい。本発明において、体積平均粒子径の測定は、例えば、コールター法(Coulter Multisizer)により行うことができる。
【0020】
本発明に用いる粒子の種類にも特に制限は無く、ポリカーボネート共重合体に対して0.01以上低い屈折率を示す部分を有する粒子であれば、光学特性を調整するのに用いられる従前公知のもの、特には光拡散剤としての利用が知られている従前公知の任意の粒子を採用することができる。
より具体的には、無機又は有機の各種の粒子が使用可能であって、例えば、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、ガラス等に代表される無機粒子や、シリコーン系
樹脂、アクリル系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等の有機粒子が挙げられる。中でも有機粒子が好ましい。
【0021】
有機粒子としては、有機高分子を構成する主鎖同士が架橋した、架橋構造を有する有機粒子が好ましく、中でも本発明の樹脂組成物の加工過程、例えば射出成型時において実用的に変形せず、粒子状態を維持しているものが好ましい。
この様な粒子としては、具体的には例えば、架橋したアクリル系樹脂、シリコーン系樹脂の有機粒子が挙げられ、中でも、アクリル系樹脂としては、部分架橋したメタクリル酸メチルをベースとしたポリマー粒子、ポリ(ブチルアクリレート)のコア/ポリ(メチルメタクリレート)のシェルを有するポリマー粒子、ゴム状ビニルポリマーのコアとシェルを含んだコア/シェル構造を有するポリマーが好ましい。シリコーン系ポリマー粒子としては、コア/シェル構造、単一構造ともに好適である。
【0022】
<ポリカーボネート共重合体>
本発明に用いられる構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含み、屈折率が1.49以上1.57以下のポリカーボネート共重合体は、構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むことを特徴とするものであるが、ここで共重合体とは、複数種のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有するものである。
【0023】
・屈折率
本発明に係るポリカーボネート共重合体の屈折率(以下、nPC と略記することがあ
る)は、温度25℃におけるd線(587.562nm、He)に対する値で、1.49以上1.57以下のものである。nPCは、より具体的にはVブロック法(カルニュー光学社製、形式KPR)により測定された値とする。共重合体の屈折率は、共重合体を構成する構成単位単独の重合体の屈折率と関係があるため、構成単位の選択と共重合比率の調整により、本発明の規定する屈折率の共重合体を得ることが可能となる。
【0024】
・共重合体の構成単位
本発明において共重合体の構成単位の由来となるジヒドロキシ化合物は、複数種のジヒドロキシ化合物を使用するものであるが、構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物が複数種含まれるものであってもよいし、構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物の他に、構造式(1)で表される構造を有さないジヒドロキシ化合物、例えば脂肪族ジヒドロキシ化合物、芳香族ジヒドロキシ化合物、ポリアルキレングリコールなどを用いた共重合体であってもよい。以下、構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ化合物(A)、構造式(1)で表される結合構造を有さないジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ化合物(B)と略記することがある。
【0025】
本発明のポリカーボネート共重合体において、構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の比率は任意であるが、ジヒドロキシ化合物に由来する全構成単位に対して20モル%以上であることが好ましく、より好ましくは30モル%以上であって、更に好ましくは40モル%以上、特には50モル%以上が構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位であることが好ましい。また、共重合体でさえあれば、構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の比率に通常上限は無いが、ジヒドロキシ化合物に由来する全構成単位に対して98モル%以下であることが好ましく、より好ましくは95モル%以下であって、更に好ましくは90モル%以下、特には80モル%以下が構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位であることが好ましい。ジヒドロキシ化合物(B)に由来する構成単位の含有割合が多過ぎると、光学特性等の性能を低下させたりすることがある。
【0026】
・ジヒドロキシ化合物(A)
ジヒドロキシ化合物(A)における「連結基−CH−O−」とは、水素原子以外の原子と互いに結合して分子を構成する構造を意味する。この連結基において、少なくとも酸素原子が結合し得る原子又は炭素原子と酸素原子が同時に結合し得る原子としては、炭素原子が最も好ましい。ジヒドロキシ化合物(A)中の「連結基−CH−O−」の数は、1以上、好ましくは2〜4である。
【0027】
さらに具体的には、ジヒドロキシ化合物(A)としては、例えば、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等で例示されるような、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエ−テル基を有する化合物、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]ジフェニルメタン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−1−フェニルエタン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,4−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,3−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]プロパン、2,2−ビス[(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−tert−ブチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−4−メチルペンタン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]オクタン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]デカン、2,2−ビス[3−ブロモ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−シクロヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン等で例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリ−ル)アルカン類、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[3−シクロヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロペンタン等で例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリ−ル)シクロアルカン類、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエ−テル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル等で例示されるような、ジヒドロキシアルコキシジアリ−ルエ−テル類、4,4’−ビス(2−ヒドロキエトキシフェニル)スルフィド、4,4’−ビス[4−(2−ジヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]スルフィド等で例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリ−ルスルフィド類、4,4’−ビス(2−ヒドロキエトキシフェニル)スルホキシド、4,4’−ビス[4−(2−ジヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]スルホキシド等で例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリ−ルスルホキシド類、4,4’−ビス(2−ヒドロキエトキシフェニル)スルホン、4,4’−ビス[4−(2−ジヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]スルホン等で例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリ−ルスルホン類、1,4−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,3−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,2−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,3−ビス[2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、1,3−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−5,7−ジメチルアダマンタン、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコ−ル、および下記一般式(3)で表されるスピログリコ−ル等の環状エ−テル構造を有する化合物が挙げられる。
【0028】
【化3】

【0029】
これらジヒドロキシ化合物(A)は、単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明において、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0030】
これらのジヒドロキシ化合物(A)のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
前記構造式(1)で表されるジヒドロキシ化合物として、イソソルビドを用いたポリカーボネート共重合体において、イソソルビドに由来する構成単位の比率は任意であるが、ジヒドロキシ化合物に由来する全構成単位に対して20モル%以上であることが好ましく、より好ましくは30モル%以上であって、更に好ましくは40モル%以上、特には50モル%以上がイソソルビドに由来する構成単位であることが好ましい。また、イソソルビドに由来する構成単位の比率に通常上限は無いが、ジヒドロキシ化合物に由来する全構成単位に対して98モル%以下であることが好ましく、より好ましくは95モル%以下であって、更に好ましくは90モル%以下、特には80モル%以下が構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位であることが好ましい。
【0031】
・ジヒドロキシ化合物(B)
本発明においては、ジヒドロキシ化合物としてジヒドロキシ化合物(A)以外のジヒドロキシ化合物である、ジヒドロキシ化合物(B)を用いてもよい。ジヒドロキシ化合物(B)としては、例えば、脂環式ジヒドロキシ化合物、脂肪族ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族ジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジオール類等を、ポリカーボネート共重合体の構成単位となるジヒドロキシ化合物として、ジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(2)で表されるジヒドロキシ化合物とともに用いることができる。
【0032】
本発明に使用できる、脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、好ましくは、通常5員環構造又は6員環構造を含む化合物を用いる。また、6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジヒドロキシ化合物が5員環又は6員環構造であることにより、得られるポリカーボネートの耐熱性を高くすることができる。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は通常70以下であり、好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。この値が大きくなるほど、耐熱性が高くなるが、合成が困難になったり、精製が困難になったり、コストが高価だったりする。炭素原子数が小さくなるほど、精製しやすく、入手しやすくなる。
【0033】
本発明で使用できる5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、具体的には、下記一般式(II)又は(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
HOCH−R−CHOH (II)
HO−R−OH (III)
(式(II)、(III)中、R,Rは、炭素数4〜20のシクロアルキレン基を示す。)
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIa)(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基又は水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0034】
【化4】

【0035】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIb)(式中、nは0又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0036】
【化5】

【0037】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジメタノール又は、トリシクロテトラデカンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIc)(式中、mは0、又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノールなどが挙げられる。
【0038】
【化6】

【0039】
また、上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノールなどが挙げられる。
【0040】
【化7】

【0041】
一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,3−アダマンタンジメタノールなどが挙げられる。
【0042】
【化8】

【0043】
また、上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジオールは、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIIa)(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基又は水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0044】
【化9】

【0045】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオールとしては、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIIb)(式中、nは0又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0046】
【化10】

【0047】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジオール又はトリシクロテトラデカンジオールとしては、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIIc)(式中、mは0、又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6−デカリンジオール、1,5−デカリンジオール、2,3−デカリンジオールなどが用いられる。
【0048】
【化11】

【0049】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジオールとしては、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3−ノルボルナンジオール、2,5−ノルボルナンジオールなどが用いられる。
【0050】
【化12】

【0051】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジオールとしては、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては具体的には、1,3−アダマンタンジオールなどが用いられる。
【0052】
【化13】

【0053】
上述した脂環式ジヒドロキシ化合物の具体例のうち、特に、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類、アダマンタンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類が好ましく、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
【0054】
本発明に使用できる脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
本発明に使用できるオキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリ
コール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0055】
本発明に使用できる芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0056】
本発明に使用できる環状エーテル構造を有するジオール類としては、例えば、スピログリコール類、ジオキサングルコール類が挙げられる。
なお、上記例示化合物は、本発明に使用し得る脂環式ジヒドロキシ化合物、脂肪族ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族ジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジオール類の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらの化合物は、1種又は2種以上をジヒドロキシ化合物(A)とともに用いることができる。
【0057】
これらのジヒドロキシ化合物(B)を用いることにより、用途に応じた柔軟性の改善、耐熱性の向上、成形性の改善などの効果を得ることができる。これらのジヒドロキシ化合物(B)中でも脂環式ジヒドロキシ化合物を用いることが好ましい。
また、本発明に係るポリカーボネート共重合体における、ジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との含有割合については、任意の割合で選択できるが、式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位:脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位=1:99〜99:1(モル%)、特に式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位:脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位=10:90〜90:10(モル%)であることが好ましい。上記範囲よりも式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が多く脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が少ないと着色しやすくなり、逆に式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が少なく脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が多いと分子量が上がりにくくなる傾向がある。
【0058】
脂肪族ジヒドロキシ化合物あるいはポリアルキレングリコールを共重合成分として使用すると、ガラス転移温度の低下が激しく、光拡散性部品としての用途に制約が生じ好ましくない。芳香族ジヒドロキシ化合物を共重合成分として使用すると、式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と反応性が激しく異なり、透明性などが悪化する。式(2)で表されるジヒドロキシ化合物単独のポリカーボネートは、一般的に高分子量のものを得るのが困難である。一方、脂環式ジヒドロキシ化合物を共重合成分として使用する場合は、以下に
示すように式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物との反応性のバランスが良好であり、且つ高分子量化も比較的容易であり、ガラス転移温度の低下も直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物よりも程度が小さく、表面硬度、機械的強度も十分高いという点で望ましい。
【0059】
本発明の樹脂組成物は、光学特性のうち光拡散性に優れるため、照明カバー、照明看板、透過型のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置などの光学用部材に好ましく使用することができ、特に光拡散シート等などに好適に使用することができるが、これらの用途では光源からの熱の影響を受けるため、耐熱性に優れた樹脂組成物であることが好ましく、ポリカーボネート共重合体のガラス転移温度が80℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度を80℃以上にすることにより、耐熱性(使用可能温度)として70℃以上の成形体を得ることができる。
【0060】
ポリカーボネート共重合体のガラス転移温度を80℃以上にするには、たとえば式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位とのポリカーボネート共重合体については、通常、示差走査熱量測定(DSC)を行ったとき、単一のガラス転移温度を与えるため、ポリカーボネート共重合体は、式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物の種類や配合比を調整することで、そのガラス転移温度を、45℃程度から155℃程度まで任意に調整することが可能となる。より具体的にはたとえば、式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率を、100:0〜30:70(モル%)、特に90:10〜40:60(モル%)、さらには85:15〜45:55(モル%)であることが好ましい。上記範囲よりも一般式(2)で表わされるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が多く脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が少ないと着色しやすくなり、逆に一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が少なく脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が多いと分子量が上がりにくく、またガラス転移温度が低下する虞がある。
【0061】
本発明の樹脂組成物を成形して得られた成形体を各種部材として使用するにおいて、特に光学用部材に使用する場合には傷などが付くと光が散乱されたりして好ましくないため、より硬度の高い樹脂組成物が好ましい。具体的には例えばJIS K5600-5-4に規定される鉛筆硬度による評価で、HB以上の硬度を有する組成物が好ましい。樹脂組成物の鉛筆硬度は、用いる樹脂(本発明においてはポリカーボネート共重合体)のガラス転移温度や、還元粘度を適宜調整することにより達成することができる。
【0062】
また、本発明に係るポリカーボネート共重合体の重合度は、溶媒としてフェノールと1,1,2,2,−テトラクロロエタンの重量比1:1の混合溶液を用い、ポリカーボネート共重合体の濃度を1.00g/dlに精密に調整し、温度20.0℃±0.1℃で測定した還元粘度(以下、単に「ポリカーボネート共重合体の還元粘度」と称す。)として、0.40dl/g以上、特に0.40dl/g以上で2.0dl/g以下であるような重合度であることが好ましい。このポリカーボネート共重合体の還元粘度が極端に低いものでは成形した時の機械的強度が弱い。また、ポリカーボネート共重合体の還元粘度が大きくなると、成形する際の流動性が低下し、サイクル特性を低下させ、成形品のひずみが大きくなり熱により変形し易い傾向がある。従って、本発明に係るポリカーボネート共重合体共重合体の還元粘度は0.40dl/g以上2.0dl/g以下、特に0.45dl/g以上1.5dl/g以下の範囲内であることが好ましい。
【0063】
<ポリカーボネート共重合体と粒子の配合方法>
・配合方法
本発明に係るポリカーボネート共重合体と、粒子とを配合するには、例えばタンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法などがあるが、これは特に限定されるものではなく、通常用いられるポリマーブレンド方法であればどのような方法を用いてもよい。
【0064】
こうして得られる本発明の樹脂組成物は、そのまま、または溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、射出成形法、押出成形法等の通常知られている方法で成形し成形体を製造することができる。
本発明に係るポリカーボネート共重合体と、粒子との混和性を高めて安定した物性を得るためには、溶融押出において単軸押出機、二軸押出機を使用するのが好ましい。単軸押出機、二軸押出機を用いる方法は、溶剤等を用いることがなく、環境への負荷が小さく、生産性の点からも好適に用いることができる。 本発明の樹脂組成物の場合は、押出機の
溶融混練温度は通常200〜300℃、好ましくは220〜260℃である。溶融混練温度が200℃より低い温度であると、ポリカーボネート共重合体の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、ポリカーボネート共重合体の劣化が起こりやすくなり、ポリカーボネート共重合体の色が黄変したり、分子量が低下するため強度が劣化したりする。
【0065】
押出機を使用する場合、押出時にポリカーボネート共重合体の焼け、異物の混入を防止するため、フィルターを設置することが望ましい。フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、求められる光学的な精度依存するが、100μm以下が好ましい。特に、異物の混入を嫌う場合は、40μm以下、さらには10μm以下が好ましい。 さらに、ポリカ
ーボネート共重合体の押出は、押出後の異物混入を防止するために、クリーンルーム中で実施することが望ましい。 また、押出された樹脂組成物を冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが望ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの大きさ(目開き)は種々あるが、10〜0.45μmのフィルターのものが好ましい。
【0066】
本発明の樹脂組成物を用いた成形体を成形するには、従前知られるビスフェノールAタイプのポリカーボネートの成形法と同様に行うことができる。シートなどの押出成形においては、例えばダイス温度を230〜280℃に設定し、冷却ロール温度を80〜120℃にて可能である。また、射出成形の場合には金型温度は30℃〜120℃、樹脂温度は220〜290℃となるようにするのが良い。
【0067】
<ポリカーボネート共重合体の製造方法>
本発明に係るポリカーボネート共重合体は、通常知られる重合方法で製造することができ、その重合方法は、ホスゲンを用いた溶液重合法、炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法のいずれの方法でも良いが、重合触媒の存在下に、ジヒドロキシ化合物を、より環境への毒性の低い炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法が好ましい。
【0068】
より具体的には、前記構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物を含む複数種のジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを、重合触媒の存在下反応させることにより製造される。
ジヒドロキシ化合物を、後述する炭酸ジエステルとの反応に供する場合、その形態は特に限定されず、粉末状、フレーク状であっても、溶融状態や水溶液などの液状であってもよい。
【0069】
式(2)で表されるジヒドロキシ化合物のなかで、イソソルビドを用いた場合、イソソ
ルビドは酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管や、製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが肝要である。また、反応に供する直前まで水分が混入しないようにすることも必要である。
イソソルビドが酸化されると、蟻酸をはじめとする分解物が発生する。例えば、これら分解物を含むイソソルビドを用いてポリカーボネート共重合体を製造すると、得られるポリカーボネート共重合体に着色が発生したり、物性を著しく劣化させたりする原因となる。また、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られないこともある。
【0070】
さらに、蟻酸の発生を防止するような安定剤を添加してあるような場合、安定剤の種類によっては、得られるポリカーボネート共重合体に着色が発生したり、物性を著しく劣化させたりする。安定剤としては還元剤や制酸剤が用いられ、このうち還元剤としては、ナトリウムボロハイドライド、リチウムボロハイドライドなどが挙げられ、制酸剤としては水酸化ナトリウム等のアルカリが挙げられるが、このようなアルカリ金属塩の添加は、アルカリ金属が重合触媒ともなるので、過剰に添加し過ぎると重合反応を制御できなくなることもある。
【0071】
酸化分解物を含まないイソソルビドを得るために、必要に応じてイソソルビドを蒸留しても良い。また、イソソルビドの酸化や、分解を防止するために安定剤が配合されている場合も、これらを除去するため、必要に応じて、イソソルビドを蒸留しても良い。この場合、イソソルビドの蒸留は単蒸留であっても、連続蒸留であっても良く、特に限定されない。雰囲気はアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気にした後、減圧下で蒸留を実施する。
【0072】
例えばイソソルビドについて、このような蒸留を行うことにより、蟻酸含有量が20ppm未満、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは3ppm以下、特に好ましくは蟻酸を全く含まないような高純度とすることができる。同時に、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有量が、イソソルビド1モルに対して、金属換算量として10μモル以下、好ましくは5μモル以下、より好ましくは3μモル以下、さらに好ましくは1μモル以下、特に好ましくはアルカリ及び/又はアルカリ土類金属化合物を全く含まないような高純度とすることができる。
【0073】
本発明では、蟻酸含有量が20ppm未満のジヒドロキシ化合物(A)、例えば一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物を用いることが好ましい。さらに、蟻酸含有量は、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは3ppm以下、特に好ましくはジヒドロキシ化合物(A)の分解等により発生する蟻酸を全く含まないものである。かかる高純度のジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(2)で表されるジヒドロキシ化合物を原料として用いることにより、後述する重合反応における問題点が解決され、より着色等が少ない高品質のポリカーボネート共重合体を安定的かつ効率的に製造することができる。
【0074】
なお、イソソルビド中の蟻酸やアルカリ及び/又はアルカリ土類金属化合物含有量の測定方法、イソソルビドの蒸留方法は、実施例の項で後述する。
このように、蟻酸やアルカリ及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有量の少ないジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(2)で表されるジヒドロキシ化合物を、炭酸ジエステルとの反応に供するための具体的な手段としては、特に限定されないが、例えば、次のような方法を採用することができる。
【0075】
高純度のジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(2)で表されるジヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルとの反応直前まで、好ましくは不活性ガス雰囲気又は減圧ないし真空雰囲気といった、酸素の存在しない雰囲気下に保管する。この保管状態から取り出した後、4
0℃、80%RHの環境の保管の場合、通常2週間以内に、より好ましくは1週間以内に、炭酸ジエステルとの反応系に供給することが好ましい。40℃、80%RHの環境の保管であれば、通常2週間以内、好ましくは1週間以内の間、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を、大気中に放置しておいても重合を阻害することがない。40℃、80%RHより温度、湿度が低い場合には、保管期間をより長くすることができる。
【0076】
ここで、不活性ガス雰囲気下とは、窒素、アルゴン等の一種又は二種以上の酸素含有量が1000ppm以下、特に全く酸素を含まない雰囲気下が挙げられ、また減圧雰囲気下とは、13.3kPa以下で酸素含有量100ppm以下の雰囲気下が挙げられる。この保管系内には必要に応じて鉄の粉を主成分とした脱酸素剤、例えばエージレス(三菱ガス化学社製)、オキシータ(上野製薬社製)等の脱酸素剤や、シリカゲル、モレキュラーシーブ、酸化アルミニウム等の乾燥剤を共存させてもよい。
【0077】
また、ジヒドロキシ化合物(A)、例えばイソソルビドが酸化されると、蟻酸をはじめとする分解物が発生するので、発生させないよう、低温で保管することも有効である。
保管温度は40℃以下なら、脱酸素剤を共存させ、不活性ガス雰囲気下で酸素濃度1000ppm以下の環境を保つと、1ヶ月は重合に供することができる。保管温度は40℃以下、好ましくは、25℃以下、さらに好ましくは、10℃以下、特に好ましくは5℃以下である。
【0078】
粉体や、フレーク状のイソソルビドは、湿度は80%RHといった高湿度下でも保管は可能であるが、吸湿による重量変化があるので、水分を吸湿しないよう、アルミ防湿袋などでの密封保管や、不活性ガス雰囲気下での保管が好ましい。
さらに、これら条件は、適宜組合せて用いることができる。
・炭酸ジエステル
本発明に係るポリカーボネート共重合体の溶融重合法による製造で用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般式(4)で表されるものが挙げられる。
【0079】
【化14】

【0080】
(一般式(4)において、A及びA’は、置換基を有していても良い炭素数1〜18の脂肪族基又は置換基を有していても良い芳香族基であり、A及びA’は同一であっても異なっていても良い。)
上記一般式(4)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネートに代表される置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、特に好ましくはジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0081】
炭酸ジエステルは、ジヒドロキシ化合物に対して、0.96〜1.10のモル比率で用いることが好ましく、さらに好ましくは、0.98〜1.04のモル比率である。このモル比が0.96より小さくなると、製造されたポリカーボネート共重合体の末端OH基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化し、また、モル比が1.10より大きくなると、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下し、所望とする分子量のポリカーボネート共重合体の製造が困難となるばかりか、製造されたポリカーボネート共重合体中の残存炭酸ジエステル量が増加し、この残存炭酸ジエステルが、成形時、または成形品の臭気の原因
となり好ましくない。
【0082】
・触媒
また、溶融重合における重合触媒(エステル交換触媒)としては、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用される。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
【0083】
重合触媒として用いられるアルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられる。
【0084】
また、アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0085】
これらのアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
またアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と併用される塩基性ホウ素化合物の具体例としては、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
【0086】
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0087】
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
【0088】
これらの塩基性化合物も1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
上記重合触媒の使用量は、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いる場合、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物との合計1モルに対して、金属換算量として、通常、0.1〜100μモルの範囲内で用い、好ましくは0.5〜50μモルの範囲内であり、さらに好ましくは1〜25μモルの範囲内である。重合触媒の使用量が少なすぎると、所望の分子量のポリカーボネート共重合体を製造するのに必要な重合活性が得られず、一方、重合触媒の使用量が多すぎると、得られるポリカーボネート共重合体の色相が悪化し、副生成物が発生したりして流動性の低下やゲルの発生が多くなり、目標とする品質のポリカーボネート共重合体の製造が困難になる。
【0089】
このような本発明に係るポリカーボネート共重合体の製造に当たり、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物などのジヒドロキシ化合物は、固体として供給しても良いし、加熱して溶融状態として供給しても良いし、水溶液として供給しても良い。これらの原料ジヒドロキシ化合物を溶融状態や、水溶液で供給すると、工業的に製造する際、計量や搬送がしやすいという利点がある。
【0090】
本発明において、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物あるいは共重合成分を重合触媒の存在下で炭酸ジエステルと反応させる方法は、通常、2段階以上の多段工程で実施される。具体的には、第1段目の反応は140〜220℃、好ましくは150〜200℃の温度で0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間実施される。第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げながら反応温度を上げていき、同時に発生するフェノールを反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力が200Pa以下で、210〜280℃の温度範囲のもとで重縮合反応を行う。
【0091】
この重縮合反応における減圧において、温度と反応系内の圧力のバランスを制御することが重要である。特に、温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を狂わせ、重合度が低下することがある。例えば、ジヒドロキシ化合物としてイソソルビドと1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いる場合は、全ジヒドロキシ化合物に対し、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%以上の場合は、1,4−シクロヘキサンジメタノールがモノマーのまま留出しやすくなるので、反応系内の圧力が13kPa程度の減圧下で、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させながら反応させ、さらに、6.67kPa程度までの圧力下で、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させ、最終的に200Pa以下の圧力で、200から250℃の温度で重縮合反応を行うと、十分に重合度が上昇したポリカーボネート共重合体が得られるため、好ましい。
【0092】
また、全ジヒドロキシ化合物に対し、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%より少なくなった場合、特に、モル比が30モル%以下となった場合は、1,
4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%以上の場合と比べて、急激な粘度上昇が起こるので、例えば、反応系内の圧力が13kPa程度の減圧下までは、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させながら反応させ、さらに、6.67kPa程度までの圧力下で、温度を1時間あたり40℃以上の昇温速度、好ましくは1時間あたり50℃以上の昇温速度で上昇させながら反応させ、最終的に200Pa以下の減圧下、220から290℃の温度で重縮合反応を行うと、十分に重合度が上昇したポリカーボネート共重合体が得られるため、好ましい。
【0093】
反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
本発明に係るポリカーボネート共重合体を溶融重合法で製造する際に、着色を防止する目的で、リン酸化合物や亜リン酸化合物を重合時に添加することができる。
リン酸化合物としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸トリアルキルの1種又は2種以上が好適に用いられる。これらは、全ヒドロキシ化合物成分に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、さらに好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することが好ましい。リン化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりする。
【0094】
亜リン酸化合物を添加する場合は、下記に示す熱安定剤を任意に選択して使用できる。特に、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトの1種又は2種以上が好適に使用できる。これらの亜リン酸化合物は、全ヒドロキシ化合物成分に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、さらに好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することが好ましい。亜リン酸化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
【0095】
リン酸化合物と亜リン酸化合物は併用して添加することができるが、その場合の添加量はリン酸化合物と亜リン酸化合物の総量で、先に記載した、全ヒドロキシ化合物成分に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下である。この添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
【0096】
また、このようにして製造された本発明に係るポリカーボネート共重合体には、成形時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。
かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル
フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。 これらの熱安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0097】
・添加剤
かかる熱安定剤は、溶融重合時に添加した添加量に加えて更に追加で配合することができる。即ち、適当量の亜リン酸化合物やリン酸化合物を配合して、ポリカーボネート共重合体を得た後に、後に記載する配合方法で、さらに亜リン酸化合物を配合すると、重合時のヘイズの上昇、着色、及び耐熱性の低下を回避して、さらに多くの熱安定剤を配合でき、色相の悪化の防止が可能となる。
【0098】
これらの熱安定剤の配合量は、ポリカーボネート共重合体を100重量部とした場合、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.2重量部が更に好ましい。
また、本発明に係るポリカーボネート共重合体には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を配合することもできる。
【0099】
かかる酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0100】
これら酸化防止剤の配合量は、ポリカーボネート共重合体を100重量部とした場合、0.0001〜0.5重量部が好ましい。
また、本発明に係るポリカーボネート共重合体には、シート成形時の冷却ロールからのロール離れ、あるいは射出成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤を配合することも可能である。
【0101】
かかる離型剤としては、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィンワックス、蜜蝋、オレフィン系ワックス、カルボキシ基および/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸モノグリセリド、ベヘニン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。
【0102】
なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ベヘニン酸ベヘニルが好ましく用いられる。
高級脂肪酸としては、炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸が好ましい。かかる脂肪酸としては、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。
【0103】
これらの離型剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
かかる離型剤の配合量は、ポリカーボネート共重合体を100重量部とした場合、0.01〜5重量部が好ましい。
また、本発明に係るポリカーボネート共重合体は、紫外線による変色は現行のポリカーボネート共重合体に比較して著しく小さいが、さらに改良の目的で、本願発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤を配合することができる。
【0104】
かかる紫外線吸収剤、光安定剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。
【0105】
これらの紫外線吸収剤、光安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。 かかる配合量は、ポリカーボネート共重合体を100重量部とした場合、0.01〜2重量部が好ましい。
また、本発明に係るポリカーボネート共重合体には、重合体や紫外線吸収剤に基づく成形品の黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としては、現行のポリカーボネート共重合体に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
【0106】
具体的なブルーイング剤としては、例えば一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725]、一般名Solvent Viol
et31[CA.No 68210、一般名Solvent Violet33[CA.
No 60725;、一般名Solvent Blue94[CA.No 61500]

一般名Solvent Violet36[CA.No 68210]、一般名Solv
ent Blue97[バイエル社製「マクロレックスバイオレットRR」]および一
般名Solvent Blue45[CA.No 61110]が代表例として挙げられる。
【0107】
これらのブルーイング剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
これらブルーイング剤は、通常、ポリカーボネート共重合体を100重量部とした場合、0.1×10−4〜2×10−4重量部の割合で配合される。
本発明に係るポリカーボネート共重合体は、上記の他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、周知の種々の添加剤、例えば、耐衝撃性改良剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤を含有していてもよい。
【0108】
・配合方法
本発明に係るポリカーボネート共重合体と、上述のような各種の添加剤とを配合するには、例えばタンブラー 、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バン
バリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法などがあるが、これは特に限定されるものではなく、通常用いられるポリマーブレンド方法であればどのような方法を用いてもよい。
【0109】
こうして得られる本発明に係るポリカーボネート共重合体或いは、これに各種添加剤を添加してなるポリカーボネート共重合体組成物は、そのまま、または溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、粒子を配合することで本発明の樹脂組成物を製造することができる。
本発明に係るポリカーボネート共重合体の混和性を高めて安定した各物性を得るためには、溶融押出において単軸押出機、二軸押出機を使用するのが好ましい。単軸押出機、二軸押出機を用いる方法は、溶剤等を用いることがなく、環境への負荷が小さく、生産性の点からも好適に用いることができる。 本発明に係るポリカーボネート共重合体の場合は
、押出機の溶融混練温度は通常200〜300℃、好ましくは220〜260℃である。溶融混練温度が200℃より低い温度であると、ポリカーボネート共重合体の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、ポリカーボネート共重合体の劣化が起こりやすくなり、ポリカーボネート共重合体や得られる樹脂組成物の色が黄変したり、分子量が低下して強度が劣化したりする虞がある。
【0110】
押出機を使用する場合、押出時に樹脂組成物の焼け、異物の混入を防止するため、フィルターを設置することが望ましい。フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、求められる光学的な精度依存するが、100μm以下が好ましい。特に、異物の混入を嫌う場合は、40μm以下、さらには10μm以下が好ましい。 さらに、この押出は、押出後の
異物混入を防止するために、クリーンルーム中で実施することが望ましい。
【0111】
また、押出された樹脂組成物を冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが望ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの大きさ(目開き)は種々あるが、10〜0.45μmのフィルターのものが好ましい。
【0112】
本発明に係るポリカーボネート共重合体を用いた樹脂組成物を成形してなる拡散性部材の成形には、通常ビスフェノールAタイプのポリカーボネートの成形法と同様に行うことができる。シートなどの押出成形においては、例えばダイス温度を230〜280℃に設定し、冷却ロール温度を80〜120℃にて可能である。また、射出成形の場合には金型温度は30℃〜120℃、樹脂温度は220〜290℃となるようにするのが良い。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。以下において、光拡散性樹脂組成物の特性評価は次の方法により行った。
(1)射出成形
二軸押出機で混練したペレットについて、80℃で4時間予備乾燥したペレットを日本製鋼所製J75EII型射出成形機で、シリンダー温度230℃、成形サイクル45秒、金型温度60℃で、60mm×60mm×3mmtの平板を成形した。
【0114】
(2)ヘイズ測定
日本電色工業社製ヘーズメーターNDH2000を使用し、D65光源にて上記試験片のヘイズ(HAZE(%))を測定した。
(3)引っかき硬度(鉛筆法)試験
コーテック社製引っかき硬度(鉛筆法)試験器を使用し、JIS K5600-5-4に準拠して、上記試験片の鉛筆硬度を6B〜6Hの範囲で測定した。6Bは表面硬度が低く、6Hは表面硬度が高いことを示す。
【0115】
(4)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(メトラー社製「DSC822」)に試料約10mgを用いて、10℃/minの昇温速度で加熱して測定し、JIS K 7121(1987)に準拠して、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた折線との交点の温度である、補外ガラス転移開始温度Tgを求めた。
【0116】
[実施例1〜3,比較例1〜3]
以下の方法で製造したポリカーボネート(以下、「PC樹脂A」と記載することがある)を用いて、表1に示したような組成となるように粒子を含有する、実施例1〜3および比較例1〜3の樹脂組成物をそれぞれ製造した。
イソソルビド(ロケットフルーレ社製)27.7重量部(0.516モル)に対して、1,4−シクロヘキサンジメタノール(イーストマン社製、以下「1,4−CHDM」と略記することがある)13.0重量部(0.221モル)、ジフェニルカーボネート(三菱化学社製、以下「DPC」と略記することがある)59.2重量部(0.752モル)、および触媒として、炭酸セシウム(和光純薬社製)2.21×10−4重量部(1.84×10−6モル)を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。
【0117】
次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を停止し、重合機出口より溶融状態のポリカーボネート共重合体を3ベントおよび注水設備を供えた二軸押出機に連続的に供給した。
【0118】
二軸押出機にて、表1に示した組成となるように各粒子を連続的に添加するとともに、各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を注水脱揮したのち、ペレタイザーによりペ
レット化を行い、ポリカーボネート樹脂組成物を得た。
得られたポリカーボネートについて、上記記載の評価方法により、HAZE、鉛筆硬度、ガラス転移温度を評価した。得られた結果を下記表1に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
(粒子)
・モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「トスパール120」,シリコーン粒子,屈折率:1.40,体積平均粒子径:2μm
・カネカ社製「カネエースMP-90」,コア/シェル構造アクリル系ポリマー粒子,屈折率
:1.49/1.46(ポリ(メチルメタクリレート)のシェル/ポリ(ブチルアクリレート)のコア),体積平均粒子径:2μm
・ガンツ化成社製「ガンツパールGM-0205S」,アクリル粒子,屈折率:1.49,体積平均粒子径:2μm
[比較例4,5]
更に、表1の比較例4,5に示した組成となるように、粒子を含有する樹脂組成物を、ビスフェノールA型ポリカーボネートとして三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロンS3000F(以下、「PC樹脂Bと記載することがある)を用いて、各粒子を二軸押出機に連続的に供給するとともに、各ベント部にて注水脱揮したのち、ペレタイザーによりペレット化を行い製造した。
【0121】
上記記載の評価方法により、HAZE、鉛筆硬度を評価した。得られた結果を表1に示す。
上記から明らかである通り、実施例ではヘイズ、鉛筆硬度のいずれも高く、優れていたのに対し、比較例では、それらのバランスがとれたものが無く、光拡散性樹脂組成物として満足なものが無かった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
特定の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含み、屈折率が1.49以上1.57以下のポリカーボネート共重合体と、該ポリカーボネート共重合体に対して0.01以上低い屈折率を示す部分を有する粒子とからなる、本発明の樹脂組成物は、表面高度が高く、耐候変色性が小さく、自消性であり、ガラス転移温度と耐衝撃強度のバランスが良好なので、照明カバー、照明看板、透過型のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シート等の光拡散性が要求される用途の使用に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含み、屈折率が1.49以上1.57以下のポリカーボネート共重合体と、該ポリカーボネート共重合体に対して0.01以上低い屈折率を示す部分を有する粒子とからなる樹脂組成物。
【化1】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【請求項2】
前記ポリカーボネート共重合体100質量部に対して、前記粒子を0.05質量部以上20質量部以下含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記粒子の体積平均粒子径が0.7μm以上30μm以下である、請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記粒子が、シリコーン樹脂および架橋ブチルアクリレートから選ばれる部分を少なくとも有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記粒子がコア/シェル構造である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記粒子が単一構造である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリカーボネート共重合体の鉛筆硬度がHB以上である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリカーボネート共重合体のガラス転移温度が80℃以上である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリカーボネート共重合体が、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形してなる成形品。

【公開番号】特開2011−105845(P2011−105845A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262008(P2009−262008)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】