説明

樹脂組成物およびその製造方法

【課題】透明性、熱線遮蔽性に優れる樹脂組成物、その製造方法、および、当該樹脂組成物からなる成形体を提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコールおよびアンチモン酸亜鉛を含有する樹脂組成物であって、アンチモン酸亜鉛が樹脂組成物中に平均粒子径60nm以下で分散していることを特徴とする樹脂組成物、その製造方法、および、当該樹脂組成物からなる成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、熱線遮蔽性に優れる樹脂組成物、その製造方法、および、当該樹脂組成物からなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー化を図る目的の一つとして、建築物や乗り物の窓ガラス等に近赤外線を反射または吸収する、いわゆる熱線遮蔽材料を使用することが増えている。特に、体感上のじりじり感や熱感に関係すると考えられる780〜2100nmの波長領域にある熱線を効率よく遮蔽することが望まれている。一方、透明な有機重合体材料が、その軽量性を活かして、ガラスの代わりに電子や電気機器分野、光学機器分野におけるレンズ材、建材分野におけるカーポート屋根材等の種々の分野で広く用いられており、これらの材料に熱線遮蔽性を付与する目的で、樹脂と混合し易い有機物を用いた樹脂組成物が提案されている。例えば、近赤外線吸収材としてフタロシアニン化合物を配合する方法が提案されているが、有機物では耐候性が悪く、長期の使用において効果が損なわれる等、耐久性の問題を抱えていた。
【0003】
一方、透明フィルム状基体の表面に、アルミニウム、銀、金等の金属薄膜をスパッタリングや蒸着により形成してなる熱線反射フィルムを窓に貼付する方法(例えば、特許文献1参照)等が開示されている。しかしながら、金属のスパッタリング薄膜や蒸着膜は、熱線遮蔽性能については優れているものの、透明性が悪く、したがって、窓ガラスに貼付して用いる場合、窓の可視光線透過率が損なわれる上、金属による光沢反射もあるので、外観上好ましくなく、さらに製造コストが高くつくのを免れず、しかも電波特性に支障をきたすおそれがある等の欠点があった。
【0004】
そこで、熱線遮蔽性を有する錫ドープ酸化インジウム(ITO)微粒子またはアンチモンドープ酸化錫(ATO)微粒子を含有した熱線遮蔽フィルムが提案されている(例えば、特許文献2および3参照)。しかし、ITOの使用には資源の枯渇化や価格高騰の問題がある。また、最近、ITO微粒子が人体に悪影響を及ぼすことも報告されている(非特許文献1参照)。一方、ATOの使用には性能不足等の問題がある。
【0005】
一方、上記の熱線遮蔽性を有する微粒子の代替として、アンチモン酸亜鉛を用いた熱線遮蔽フィルムが提案されている。特許文献4には、アンチモン酸亜鉛の粉末を水又は有機溶媒に分散させてから各種の樹脂と混合することが記載されている。しかしながら、このような方法で製造した場合、アンチモン酸亜鉛の一次粒子径は10〜50nmであるが、分散液や樹脂内では一次粒子が凝集した二次凝集状態にあるため、可視光下において光が散乱してヘイズが悪化することが避けられず、高度な透明性が要求される用途においては使用することができなかった。また、アンチモン酸亜鉛をシランカップリング剤で処理することも記載されているが、無水アンチモン酸亜鉛の表面の反応性が低く表面修飾が充分に進行しないために、凝集の発生が避けられず、透明性が不十分であった。
【0006】
さらに、上記のような透明な有機重合体材料の一つとしてポリビニルアルコール(以後、PVAと略称することがある)が挙げられるが、PVAは可視光線を透過し高い透明性を有しているものの、熱線遮蔽性に劣るという問題点があった。この問題を解消するために、PVAをバインダーとしてアンチモン酸亜鉛と混合したキャリアテープが検討された(特許文献5)が、分散状態が充分ではなく、可視光下において光が散乱してヘイズが悪化することが避けられず、高度な透明性が要求される用途においては使用することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−59749号公報
【特許文献2】特開平8−281860号公報
【特許文献3】特開平9−108621号公報
【特許文献4】特開平9−211221号公報
【特許文献5】特開2007−137432号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Aerosol Res.,20(3)、213−218(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、透明性、熱線遮蔽性に優れる樹脂組成物を提供することを目的とするものである。また、そのような樹脂組成物を製造する方法、および、それからなる成形体を提供することも、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記した目的を達成するために鋭意検討を重ねてきた。その結果、上記課題は、ポリビニルアルコールおよびアンチモン酸亜鉛を含有する樹脂組成物であって、アンチモン酸亜鉛が樹脂組成物中に平均粒子径60nm以下で分散していることを特徴とする樹脂組成物を提供することによって解決される。このとき、JIS R3106に準じて測定した波長領域380〜780nmでの可視光透過率が70%以上、波長領域300nm〜2500nmでの日射透過率が80%以下であり、かつ、JIS K7105に準じて測定したヘイズが4.0以下であることが好ましい。
【0011】
さらに上記課題は、アンチモン酸亜鉛の分散液に湿式粉砕処理を施した後、ポリビニルアルコールと混合することを特徴とする樹脂組成物の製造方法を提供することによっても解決される。また、上記の樹脂組成物からなる成形体を提供することによっても解決される。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、透明性、熱線遮蔽性が良好な樹脂組成物およびその成形体を提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、そのような樹脂組成物を簡便な方法で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、PVAとアンチモン酸亜鉛とを含有してなるものである。
【0014】
本発明において使用されるPVAは、ビニルエステルを重合して得られるポリビニルエステル系重合体をケン化することにより製造することができる。
【0015】
ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等を例示することができる。これらの中でも酢酸ビニルが、入手の容易性、PVAの製造の容易性、コスト等の点から好ましく用いられる。
【0016】
上記のPVAは、ビニルエステルの単独重合体のケン化物に限定されず、本発明の効果が損なわれることがない限り、ビニルエステルと少量の他の共重合性単量体との共重合体のケン化物(変性PVAと呼ばれることがある)、PVAの水酸基の一部を架橋したポリビニルアセタール等であってもよい。
【0017】
ビニルエステルとの共重合に用いることができる他の共重合性単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数2〜30のα−オレフィン類;(メタ)アクリル酸およびその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル;不飽和スルホン酸等を挙げることができる。これらの共重合性単量体は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
PVAの水酸基の一部が架橋されたポリビニルアセタールの例としては、ホルマリン、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類でPVAの水酸基の一部を架橋したポリビニルアセタールを挙げることができる。
【0019】
本発明において用いられるPVAの重合度は、1000以上であることが好ましく、1300以上がより好ましく、1500以上がさらにより好ましい。PVAの重合度が1000未満であると、成形性が悪くなるおそれがある。重合度の上限としては特に制限はないが、PVAの製造が工業的に困難であることから10000以下であることが好ましく、8000以下がより好ましく、6000以下がさらにより好ましい。なお、本発明でいうPVAの重合度は、JIS K 6726に準じて測定した重合度を意味する。
【0020】
またPVAのケン化度は、得られるPVAフィルムの耐水性の観点から、97モル%以上であることが好ましく、97.5モル%以上がより好ましく、98モル%以上がさらにより好ましい。PVAのケン化度が97モル%未満であると、得られるPVAフィルムの耐水性が悪くなるおそれがある。なお、PVAのケン化度とは、重合体を構成する構造単位のうちで、ケン化によってビニルアルコール単位に変換され得る単位(典型的にはビニルエステル単位)の全モル数に対して実際にビニルアルコール単位にケン化されている単位の割合(モル%)をいう。PVAのケン化度は、JIS K 6726に記載されている方法に準じて測定することができる。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、熱線遮蔽性を付与するため、アンチモン酸亜鉛を含有する。本発明で用いられるアンチモン酸亜鉛は、酸化亜鉛成分と酸化アンチモン成分を含む無水アンチモン酸亜鉛からなる混合酸化物である。混合酸化物中、酸化亜鉛に対する酸化アンチモンの成分比は、モル比で0.8〜1.2であることが好ましい。アンチモン酸亜鉛の含有量は、透明性、微分散性の点からPVA100重量部に対して10重量部以下であること好ましく、6重量部以下がより好ましい。一方、熱線遮蔽性の点からPVA100重量部に対して0.1重量部以上であることが好ましく、0.5重量部以上がより好ましい。
【0022】
アンチモン酸亜鉛は、樹脂組成物中において微細に分散している必要がある。微細に分散していない場合には、可視光下において光が散乱しヘイズが増加する。また一般に、アンチモン酸亜鉛の含有量が同じである場合、粒子径が百分の一になると、粒子間距離も百分の一になることが知られている[例えば、ナノコンポジットの世界、p22(工業調査会)参照]。一方、樹脂組成物中でアンチモン酸亜鉛の粒子が凝集した場合には、粒子の分布に疎密ができて、熱線を遮蔽する箇所と透過する箇所ができ、結果として熱線遮蔽性能が低下すると考えられる。本発明者らの検討によれば、アンチモン酸亜鉛が樹脂組成物中に平均粒子径60nm以下の微粒子で分散されている場合、アンチモン酸亜鉛が樹脂組成物中に密集した状態となることによって熱線遮蔽性能が向上する。本発明のPVA系樹脂組成物は、言わば、このナノサイズ効果により、少量のアンチモン酸亜鉛の微粒子で、効果的に熱線遮蔽性能を付与することができるものである。アンチモン酸亜鉛の樹脂組成物中での平均粒子径は、より好ましくは50nm以下である。
【0023】
本発明の樹脂組成物には、アンチモン酸亜鉛を平均粒子径60nm以下で分散させるために、必要に応じて表面改質剤を添加することができる。表面改質剤としては特に限定されず、一般的に、分散剤、乳化剤、消泡剤、潤滑剤、浸透剤、洗浄剤、ビルダー、疎水化剤、表面調整剤、粘度調整剤として用いられている化合物等が使用でき、例えば、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子分散剤、カップリング剤等が挙げられる。
【0024】
また、本発明の樹脂組成物には、発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて各種の添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、艶消し剤等が配合されていてもよい。
【0025】
上記の添加剤のうち、可塑剤としては、多価アルコールが好ましく用いられ、その具体例としては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。これらの可塑剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。揮発性と可塑性の観点からグリセリンが好ましい。
【0026】
以下、本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。
アンチモン酸亜鉛を樹脂組成物中に平均粒子径60nm以下、好ましくは50nm以下で分散させるためには、アンチモン酸亜鉛が細かく分散した分散液を予め調製することが好ましい。分散液は市販のゾルとして入手することができるが、その状態では一次粒子が凝集していて、その平均粒子径は100nm前後あるいはそれ以上であることが多い。したがって、最終的に樹脂組成物中にアンチモン酸亜鉛を平均粒子径60nm以下、好ましくは50nm以下で分散させるためには、分散液に対して機械的に湿式粉砕する操作を施すことが好ましい。
【0027】
アンチモン酸亜鉛を、分散液中で機械的に湿式粉砕して細かく分散させるための装置としては、一次粒子が凝集したアンチモン酸亜鉛の粒子を粉砕して分散させることができる装置であれば特に制限はないが、例えば、サンドミル、ボールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、アトライター、ペイントシェーカー、高速攪拌機、超音波分散機、ビーズミル等が挙げられる。効率良く、細かい平均粒子径に到達させるためにはビーズミルが好ましい。ビーズミルを使用する際は、粉砕処理時にビーズを用いて処理を行うが、そのビーズは細かいほど効率よく微粒子化できる。使用するビーズの直径は、0.2mmφ以下が好ましく、0.1mmφ以下がより好ましく、0.05mmφ以下がさらに好ましい。ビーズの直径が0.2mmφより大きい場合、得られる分散液中にアンチモン酸亜鉛の凝集体が残存し、目的とするアンチモン酸亜鉛の微細化が達成できず、高度な透明性が要求される用途においては使用が制限される場合がある。こうして得られる微細化後の分散液中におけるアンチモン酸亜鉛の平均粒子径は60nm以下であり、好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは40nm以下である。60nmを超える場合、最終的に得られる樹脂組成物中に一次粒子が凝集した二次凝集体が多く存在するため、可視光下において光が散乱してヘイズが増大し、高度な透明性が要求される用途において使用が制限される場合がある。
【0028】
次に、上記の微細化後の分散液をPVAと混合する。混合する方法としては特に限定されないが、微細化後の分散液とPVAとを溶融混練により混合しても良いし、PVAを溶剤に溶解した後混合しても良い。混練方法としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー、オープンロール、ニーダー等の公知の混練機を用いることができる。PVAの溶剤としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。そのうちでも、水が環境に与える負荷や回収性の点から好適に使用される。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、上記の混合物から溶剤を除くことにより製造される。このとき、混練物からフィルム、シート等の成形体を直接製造することも可能である。このような成形体の製造方法は特に限定されず、製膜後の厚さや幅が可能な限り均一であれば、従来公知のいずれの方法で製造してもよく、例えば、湿式製膜法、ゲル製膜法、乾式による流延製膜法、押出製膜法、これらの組み合わせによる方法等を採用することができる。これらの製造方法の中でも、押出製膜法が、膜の厚さおよび幅が均一で、物性の良好な成形体が得られることから好ましい。得られた成形物は必要に応じて、乾燥や熱処理が施される。成形物がシートである場合、その厚みは10〜200μm程度とするのが一般的であり、20〜150μm程度とするのが好ましい。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、JIS R3106に準じて測定した波長領域380〜780nmでの可視光透過率が70%以上であり、波長領域300nm〜2500nmでの日射透過率が80%以下であり、かつ、JIS K7105に準じて測定したヘイズが4.0%以下であることが好ましい。樹脂組成物の波長領域380〜780nmでの可視光透過率が70%以上であり、かつ、波長領域300nm〜2500nmでの日射透過率が80%以下であることによって、可視光を透過させながら熱線遮蔽効果を得ることができる。ここで、可視光透過率は日射透過率よりも5%以上高いことが好ましい。また、樹脂組成物のヘイズが4.0%以下であることによって、良好な透明性を得ることができる。
【0031】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、各物性の測定または算出は以下のようにして行った。
【0032】
[分散液中のアンチモン酸亜鉛の分散粒子径]
大塚電子株式会社製のダイナミック光散乱光度計「DLS−7000」を用いて、He−Neレーザー(632.8nm)を用いて、測定角度90°、20℃での分散液中の平均粒子径を測定した。得られた測定結果を用いて、キュムラント法に従い、平均粒子径(nm)を算出した。
【0033】
[可視光透過率・日射透過率]
島津製作所株式会社製の分光光度計「SolidSpec−3700」を用い、作製した成形体について、波長領域280〜2500nmの透過率を測定した。そして、JIS R3106に準じ、380〜780nmまでの可視光透過率(%)を求めた。また、JIS R3106記載の重価係数を用いて300〜2500nmまでの日射透過率(%)を求めた。
【0034】
[ヘイズ]
日本電色工業株式会社製の濁度計「NDH−5000」を用い、作製した成形体について、JIS K7105に準じてヘイズ(%)を測定した。
【実施例1】
【0035】
[分散液の作製]
アンチモン酸亜鉛(化学組成比:ZnSb)の60重量%メタノール分散液(日産化学株式会社製「CX−Z693M−F」)をビーズミル(使用ビーズの径:0.05mmφ)を用いて湿式粉砕処理し、アンチモン酸亜鉛が37nmで分散した分散液(b1)を得た。
【0036】
[樹脂成形物の作製および評価]
平均重合度1700、ケン化度98.5モル%のPVA10重量%水溶液(b2)を作成し、PVA100重量部に対してアンチモン酸亜鉛が5重量部になるように(b1)と(b2)を混合し、60℃の金属ロール上で乾燥して、厚みが100μmの成形体(シート)を得た。得られたシートについて評価した結果を表1に示す。
【実施例2】
【0037】
PVA100重量部に対してアンチモン酸亜鉛が1重量部になるように混合した以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。得られた成形体(シート)について評価した結果を表1に示す。
【0038】
比較例1
分散液(b1)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。得られた成形体(シート)について評価した結果を表1に示す。
【0039】
比較例2
アンチモン酸亜鉛のメタノール分散液に粉砕処理を実施しなかったこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。得られた成形体(シート)について評価した結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示す結果から、本発明の成形体(実施例1〜2)は、高い可視光透過率を保持しながら、日射透過率を低く抑え、かつヘイズがほとんどなく、高い透明性と熱線遮蔽性を兼ね備えていることがわかる。一方、比較例1のようにアンチモン酸亜鉛を含まない場合には、得られた成形体は日射透過率が高く、熱線遮蔽性能が十分ではない。比較例2のように、アンチモン酸亜鉛を含む分散液を粉砕処理しない場合、ヘイズが高く、透明性が十分ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールおよびアンチモン酸亜鉛を含有する樹脂組成物であって、アンチモン酸亜鉛が樹脂組成物中に平均粒子径60nm以下で分散していることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
JIS R3106に準じて測定した波長領域380〜780nmでの可視光透過率が70%以上、波長領域300nm〜2500nmでの日射透過率が80%以下であり、かつ、JIS K7105に準じて測定したヘイズが4.0以下であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
アンチモン酸亜鉛の分散液に湿式粉砕処理を施した後、ポリビニルアルコールと混合する工程を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の樹脂組成物からなる成形体。

【公開番号】特開2011−1413(P2011−1413A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143941(P2009−143941)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】