説明

樹脂組成物およびそれを用いた導電層、および導電層の形成方法

【課題】導電層の抵抗値の上昇を抑えつつ金属のマイグレーションを抑制する樹脂組成物、導電層の形成法、および導電層の提供。
【解決手段】基体樹脂、及び下記一般式(1)



[式中、R1及びR2は、独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アルキル部分が炭素数1〜6のアルキル基であるアルキルウレイド基、カルボキシル基又はアルキル部分が炭素数1〜6のアルキル基であるアルコキシカルボニル基を示す。]で表わされる化合物を含む、導電層又は絶縁層を形成するための樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属のマイグレーションが抑制された樹脂組成物およびそれを用いた導電層、および導電層の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置における取り出し電極等、各種電子機器の導電層の材料として、金属粉末及び熱硬化性樹脂を含む導電性ペーストが用いられている(特許文献1等)。
【0003】
しかし、従来、導電層に電圧を印加した際、当該導電層に含まれる金属が陽極側でイオン化し、クーロン力によってイオン化した金属が陰極側に移動するマイグレーションが問題となっていた。マイグレーションにより移動した金属イオンは、陰極で電子を受け取り金属として析出してしまう。また、各導電層は、絶縁層で隔離されているが、マイグレーションにより金属イオンが絶縁層を通過してショートし、電子機器を損傷しまう場合もある。特に近年では電子機器の小型化が進んでおり、複数の導電層が非常に狭い間隔で配置されるよう回路が設計されているため、このような絶縁層を介したマイグレーションが生じやすくなっている。
【0004】
マイグレーションを防止するため、従来、導電層にベンゾトリアゾール系化合物などのキレート剤を添加することが行われてきた(特許文献2)。しかし、キレート剤を添加すると、導電層の抵抗が大幅に上昇してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−24149号公報
【特許文献2】特開2006−260885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、導電層の抵抗値の上昇を抑えつつ金属のマイグレーションを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような状況の下、本発明者らは、鋭意研究した結果、特定の構造を有するメルカプトテトラゾール化合物を配合した樹脂組成物を用いて導電層及び/又は絶縁層を形成することにより金属のマイグレーションを抑制することができ、かつ導電層の抵抗値が上昇しないかまたはわずかな上昇に留めることができることを見出した。本発明は、上記の新規知見に基づくものである。
【0008】
従って、本発明は、以下の項を提供する。
【0009】
項1.基体樹脂、及び下記一般式(1)
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、R及びRは、独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アルキル部分が炭素数1〜6のアルキル基であるアルキルウレイド基、カルボキシル基又はアルキル部分が炭素数1〜6のアルキル基であるアルコキシカルボニル基を示す。]
で表わされる化合物を含む、導電層又は絶縁層を形成するための樹脂組成物。
【0012】
項2.金属粉をさらに含む、項1に記載の導電層を形成するための樹脂組成物。
【0013】
項3.項1または2に記載の樹脂組成物を用いて、導電パターンを形成する工程を含む、導電層の形成方法。
【0014】
項4.項3に記載された方法を用いて形成された導電層。
【0015】
本発明の樹脂組成物はタッチパネル電極用途等に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂組成物を用いて導電層を形成すると、陽極側で生成された金属イオンが特定の構造を有するメルカプトテトラゾール化合物に捕捉されるため、導電層の抵抗値の上昇を抑えつつ金属のマイグレーションを抑制することができる。また、本発明の樹脂組成物を用いて絶縁層を形成した場合も、上記メルカプトテトラゾール化合物による金属イオンの捕捉により絶縁層を介した導電層間の金属のマイグレーションを抑制することができる。またこの場合も、上記メルカプトテトラゾール化合物が絶縁層から導電層に移動しても抵抗値の上昇はないか又はわずかであるため、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例のマイグレーションの有無を調べるための試験系の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、基体樹脂、及び下記一般式(1)
【0019】
【化2】

【0020】
[式中、R及びRは、独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アルキル部分が炭素数1〜6のアルキル基であるアルキルウレイド基、カルボキシル基又はアルキル部分が炭素数1〜6のアルキル基であるアルコキシカルボニル基を示す。]
で表わされる化合物を含む、導電層又は絶縁層を形成するための樹脂組成物を提供する。
【0021】
前記一般式において示される各基は、具体的には次の通りである:
炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜6の(好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基を挙げることができる。より具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、1−エチルプロピル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3,3−ジメチルブチル、1,2,2−トリメチルプロピル、2−エチルブチル、イソヘキシル、3−メチルペンチル基等が含まれる。
【0022】
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、アルキル部分が前記に列挙した炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基であるアルコキシ基を挙げることができる。
【0023】
アルキル部分が炭素数1〜6のアルキル基であるアルキルウレイド基としては、例えば、アルキル部分が前記に列挙した炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基であるアルキルウレイド基を挙げることができる。
【0024】
アルキル部分が炭素数1〜6のアルキル基であるアルコキシカルボニル基としては、例えば、アルキル部分が前記に列挙した炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基であるアルコキシカルボニル基を挙げることができる。
【0025】
これらのR及びRで示される置換基のなかでも、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基、ヒドロキシル基等が好ましい。
【0026】
好ましい化合物としては、例えば、一般式(1)において、対応するR及びRが共に水素原子の化合物;対応するRが上記炭素数1〜6のアルキル基でありRが水素原子の化合物;対応するR及びRが共に上記炭素数1〜6のアルキル基である化合物;対応するRが上記炭素数1〜6のアルコキシ基でありRが水素原子の化合物;対応するRがヒドロキシル基でありRが水素原子の化合物;対応するRが水素原子でありRが前記アルキル部分が炭素数1〜6のアルキル基であるアルキルウレイド基である化合物;対応するRがカルボキシル基でありRが水素原子の化合物;対応するRが前記アルキル部分が炭素数1〜6のアルキル基であるアルコキシカルボニル基でありRが水素原子の化合物等が挙げられる。
【0027】
一般式(1)で表わされる具体的な化合物としては、例えば、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−(4−メチルフェニル)−5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−(3−メチル−4−エチルフェニル)−5−メルカプト−1H−テトラゾール、4−(5−メルカプト−1H−テトラゾール−1−イル)フェノール、1−[3−(3−メチルウレイド)フェニル]−5−メルカプト−1H−テトラゾール、4−(5−メルカプト−1H−テトラゾール−1−イル)安息香酸、4−(5−メルカプト−1H−テトラゾール−1−イル)安息香酸エチル等が挙げられる。
【0028】
基体樹脂
本発明において用いられる基体樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂等の活性エネルギー線硬化樹脂のいずれか、又はそれらの混合物が用いられ、好ましくは熱硬化性樹脂が用いられる。
【0029】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等を用いることができる。
【0030】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステル−メラミン、メラミン、エポキシ−メラミン、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、その他エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0031】
エポキシ樹脂としては、エポキシ基を分子中に2個以上含有する化合物が挙げられ、公知のものを用いることができる。エポキシ樹脂としては、液状エポキシ樹脂が好ましく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールAD型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0032】
エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピコート806、エピコート1255HX30、エピコート152、エピコート807、エピコート828(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、アデカレジンEP−4100、アデカレジンEP−4901(旭電化工業株式会社製)、エピクロン830、およびエピクロン840(大日本インキ工業株式会社製)等が挙げられる。
【0033】
また、活性エネルギー線硬化樹脂のうち紫外線硬化樹脂としては、少なくとも1個の不飽和結合を有するオリゴマーあるいはプレポリマー、或いはモノマー(単量体)が挙げられる。具体的には、オリゴマーあるいはプレポリマーとしては、ジエチレングリコール/アジピン酸等からなるポリエステルを(メタ)アクリル酸で変性したポリエステル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから得られたエポキシ化合物を(メタ)メタクリル酸で変性したエポキシ(メタ)アクリレート、ポリウレタンを(メタ)アクリル酸で変性したポリウレタン(メタ)アクリレートあるいは不飽和ポリエステル、セルロースポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリ置換スチレン等に重合性不飽和基を導入した誘導体およびこれらの共重合体等が挙げられる。
【0034】
モノマーとしては、例えば、以下の物が挙げられる:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル メタクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル メタクリレート等の含フッ素(メタ)アクリレート;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、2−メチル−3,4−エポキシ−シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のモノマーが挙げられる。
【0035】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを示す。同様に、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを示す。
【0036】
これらの基体樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
基体樹脂の配合量は、特に限定されないが、例えば、本発明の樹脂組成物の質量に対して、3〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。より具体的には、本発明の樹脂組成物に金属粉を配合し、導電層を作製する場合、本発明の樹脂組成物の質量に対して、3〜40質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。本発明の樹脂組成物に金属粉を配合せずに絶縁層を作製する場合、本発明の樹脂組成物の質量に対して、10〜50質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。
【0038】
硬化剤
本発明に係る樹脂組成物には、基体樹脂の種類によって、硬化剤、反応促進剤、反応開始剤等を添加してもよい。熱硬化樹脂であるエポキシ樹脂の硬化剤としては例えば、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド等のアミン系硬化剤、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1、1−ジメチル尿素等の尿素系硬化剤、無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸等の酸無水物系硬化剤、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン酸等の芳香族アミン系(アミンアダクト)硬化剤等が挙げられる。1液での保存の点ではアダクト系やマイクロカプセル系の潜在性硬化剤が好ましい。これらの硬化剤は、一種単独でも、2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0039】
本発明において、硬化剤を用いる場合、その配合量は、例えば、基体樹脂1質量部に対して、0.2〜1.5質量部が好ましく、0.3〜0.8質量部がより好ましい。
【0040】
光重合開始剤
基体樹脂として紫外線硬化樹脂を使用する場合には光開始剤を添加することが好ましい。例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−アクリルベンゾイン等のベンゾイン系化合物、
アントラキノン、メチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物、
アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−アミノアセトフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン等のフェニルケトン系化合物、
ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、ミヒラーズケトン等を挙げることができる。
【0041】
光カチオン重合可能な化合物を使用する場合の光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、混合配位子金属塩等を使用することができる。
光ラジカル重合と光カチオン重合を併用する、いわゆるハイブリッド型材料の場合、それぞれの重合開始剤を混合して使用することができ、また、一種の開始剤で双方の重合を開始させる機能をもつ芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等を使用することができる。
【0042】
メルカプトテトラゾール化合物
本発明に係る樹脂組成物は、上記一般式(1)で表わされるメルカプトテトラゾール化合物を含有する。
【0043】
前記一般式において示される各基は、具体的には以下の通りである。
【0044】
炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を挙げることができる。より具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、1−エチルプロピル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、1,2,2−トリメチルプロピル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、イソヘキシル、3−メチルペンチル基等が含まれる。
【0045】
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、アルキル部分が上記炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基であるアルコキシ基を挙げることができる。
【0046】
より具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、1−エチルプロピルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、1,2,2−トリメチルプロピルオキシ、3,3−ジメチルブトキシ、2−エチルブトキシ、イソヘキシルオキシ、3−メチルペンチルオキシ基等が含まれる。
【0047】
上記一般式(1)で表わされる化合物は、公知であるか、又は公知の方法に準じて合成することができる。
【0048】
本発明の樹脂組成物は、当該メルカプトテトラゾール化合物を配合することによって、通電により発生した金属イオンを捕捉してマイグレーションを防ぐことができる。その際、上記メルカプトテトラゾール化合物のメルカプト基と金属イオンとが結合し、置換基を形成しているものと考えられる。例えば、金属粉として銀粉を用いる場合、メルカプト基(−SH)と銀イオン(Ag+)とがAgS−基を形成しているものと考えられる。
【0049】
基体樹脂が熱硬化樹脂の場合には、硬化のための加熱工程で昇華しない又は昇華しづらいメルカプトテトラゾール化合物が好ましい。
【0050】
メルカプトテトラゾール化合物の配合量は、特に限定されないが、例えば、本発明の樹脂組成物100質量部に対し、0.01〜50質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。また、本発明の樹脂組成物に金属粉を配合する場合、当該金属粉100質量部に対し、0.01〜1質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましい。本発明の樹脂組成物に金属粉を配合しない場合、樹脂組成物100質量部に対し、0.1〜50質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0051】
金属粉
本発明には、金属粉を配合した、導電層を形成するための前記樹脂組成物が含まれる。
【0052】
金属粉の素材としては種々の金属を使用することができ、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、チタン、ステンレス、これらの合金等を用いることができる。体積抵抗率が低いという観点から、銀が好ましい。これらの金属粉は一種単独で、又は二種以上を組合わせて用いてもよい。
【0053】
金属粉としては、公知の形状及び寸法のものを使用することができ、例えば、平均粒径が1μm〜5μm程度の球状又はフレーク状の金属粉、平均粒径が0.05μm〜0.5μm程度の金属微粒子等が挙げられる。また、平均一次粒子径が0.05μm〜0.5μmの金属微粒子が凝集してなる平均粒径が0.5μm〜5μmの凝集状金属粉を用いてもよい。さらに、これらの平均粒径が異なる金属粉を混合して用いてもよい。あるいは、平均粒径が0.05μm以下のナノサイズの金属を使用してもよい。
【0054】
金属粉を配合する場合、その配合量は、充分な導電性が得られる限り特に限定されないが、例えば金属粉の硬化後の塗膜中に占める割合が30〜95質量%となるよう配合するのが好ましく、60〜90質量%となるよう配合するのがより好ましい。
【0055】
その他成分
本発明の樹脂組成物は、溶剤、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤、レベリング剤、基板密着性向上等のための界面活性剤、滑り性向上のための滑剤等、硬度向上等のため無機微粒子(コロイダルシリカ等)、安定剤(ホウ素化合物等)、チクソ剤等を適宜使用してもよい。
【0056】
溶剤としては、特に限定されないが、例えば、具体的には、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート系溶剤;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール系溶剤;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン系溶剤;および、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等のエステル系溶剤;などが挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0057】
導電層及び/又は絶縁層の形成方法
本発明の樹脂組成物を用いて導電層及び/又は絶縁層を形成する方法としては、自体公知の方法を広く使用することができる。例えば、本発明の樹脂組成物を用い、自体公知の方法によりパターンを形成することにより、導電層及び/又は絶縁層を形成することができる。より具体的には、本発明の樹脂組成物を基材にグラビア、フレキソ、シルクスクリーン印刷等により塗布した後、加熱する方法;本発明の樹脂組成物を基材にスプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法等で塗布し、開口パターンを有するマスクを載置し、活性エネルギー線の照射を行い、現像処理、加熱硬化等をする方法等が挙げられる。
【0058】
前記本発明の樹脂組成物を塗布した後、加熱する方法を採用する場合、加熱硬化の温度としては、基材を損傷しない範囲で、例えば、60〜200℃、好ましくは80〜150℃の範囲で設定できる。硬化時間は、例えば、60分以下、好ましくは3〜40分の範囲で設定できる。
【0059】
一方、活性エネルギー線の照射を行う場合、光硬化性樹脂組成物上に所定形状の開口パターンを有するマスクを載置し、活性エネルギー線の照射を行い、現像処理する。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線等が挙げられる。
照射線量は、通常のパターニングに用いる範囲で適宜設定できるが、例えば、30〜100kGy、好ましくは50〜70kGyの範囲で設定できる。活性エネルギー線照射後の塗膜は通常の方法により現像される。 導電層及び/又は絶縁層の膜厚(乾燥時)としては、特に限定されないが、通常、0.5〜100μm、好ましくは1〜50μmの範囲で適宜設定できる。
【0060】
基材としては、電子機器の素子の基材として用いられているものを広く使用することができる。例えば、SUS等の金属、ポリエステル、ポリイミド等の樹脂、ガラス等が挙げられる。また、本発明においては、基材には、上記金属、樹脂、ガラス等の上に導電層、絶縁層等を積層したものも含まれる。
【0061】
以下に、実施例及び比較例を用いて本発明の具体的な実施形態を詳述するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
実施例1
平均粒径が2.0μmの球状銀粉40g、熱硬化性エポキシ樹脂エピクロン840(DIC株式会社製)1.3g、硬化剤アミキュアMY-H(味の素ファインテクノ株式会社)0.6g及び1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール0.02gを、溶剤エチルジグリコールアセテート4.8gとともに混練し、導電性ペースト1を得た。
【0063】
得られた導電性ペースト1を100mm×100mmのPET基材にスクリーン印刷し、130℃で20分間熱風乾燥オーブンで硬化して、膜厚10μmの硬化膜1Aを作製した。
【0064】
実施例2及び3
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールに代えて、1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプト−1H−テトラゾール又は4−(5−メルカプト−1H−テトラゾール−1−イル)フェノールを配合する以外、実施例1と同様にして導電性ペースト及び硬化膜を得た。(それぞれ導電性ペースト2及び硬化膜2Aならびに導電性ペースト3及び硬化膜3Aとする)。
【0065】
実施例4及び5
エピクロン840の配合量を0.7gとし、さらにアクリル樹脂ダイナールBR−75(三菱レイヨン株式会社)又はフェノキシ樹脂PKHP−200(InChem社)を1.0g配合する以外、実施例1と同様にして導電性ペースト及び硬化膜を得た(それぞれ、導電性ペースト4及び硬化膜4A、ならびに導電性ペースト5及び硬化膜5Aとする)。
【0066】
比較例1
平均粒径が2.0μmの球状銀粉40g、熱硬化性エポキシ樹脂エピクロン840(DIC株式会社製1.3g)、硬化剤としてアミキュアMY-H(味の素ファインテクノ株式会社0.6g)を、溶剤 エチルジグリコールアセテート 4.8gとともに混練し、導電性ペースト6を得た。導電性ペースト1に代えて導電性ペースト6を用いる以外、実施例1と同様にして、硬化膜6Aを得た。
【0067】
比較例2及び比較例3
エピクロン840の配合量を0.7gとし、さらにアクリル樹脂ダイナールBR−75又はフェノキシ樹脂PKHP−200を1.0g配合する以外、比較例1と同様にして導電性ペースト及び硬化膜を得た(それぞれ、導電性ペースト7及び硬化膜7Aならびに導電性ペースト8及び硬化膜8Aとする)。
【0068】
比較例4
銀粉、熱硬化性エポキシ樹脂、硬化剤、溶剤に加えて、キレート剤として5−メチルベンゾトリアゾールを0.02g配合した以外、比較例1と同様にして導電性ペースト及び硬化膜を得た(それぞれ、導電性ペースト9及び硬化膜9Aとする)。
【0069】
体積抵抗率測定
得られた硬化膜について、体積抵抗率を以下のようにして測定した。
【0070】
得られた硬化膜のうち、5mm×25mmのベタパターン印刷部について体積抵抗率を測定した。体積抵抗率の測定には、ロレスタGP MCP-T610型を用い四探針法にて測定した。結果を表1に示す。
【0071】
マイグレーション測定
各硬化膜について以下の方法により銀マイグレーションの有無を測定した。
【0072】
実施例1〜5及び比較例1〜4に記載の方法で得られた導電性ペースト1〜9をPET基材上にスクリーン印刷した。このときの印刷パターン例を図1に示す。印刷パターンの膜厚は10μmとする。パターンの端子部を除く櫛型パターン部分に、あらかじめ弱粘着面にPETフィルムを貼合した光学粘着剤 9632T(日東電工株式会社製)の強粘着面をハンディのゴムロールを用いて貼合した。2つの櫛型パターン部分の印刷パターンの幅およびパターン間の距離は、それぞれ70μmとした。パターンの端子部2箇所をそれぞれ+、−側端子とし、半田付けによって銅線を接続した。
こうして得られたサンプルを、温度60℃、湿度90%の恒温高湿槽に入れ、絶縁劣化評価システム絶縁劣化・特性評価システム SIR13(楠本化成株式会社)を用いて、通電試験を実施した。
【0073】
通電条件は+端子側にAC10Vを印加し、−端子側はアース接続した。電流値が10-4アンペアを超えた状態でマイグレーション仮発生と判断し、4回マイグレーション仮発生の時点で完全にマイグレーション発生として通電を終了した。マイグレーションが発生しない場合は240時間まで通電を続けた。導電性ペーストの原料の配合量及び試験結果を下記表1に示す。ここで、導電性ペースト1を用いて得られたサンプルを硬化膜1Bと示し、導電性ペースト2〜9を用いて得られたサンプルをそれぞれ、硬化膜2B〜9Bと示す。
【0074】
【表1】

【0075】
上記のように、メルカプトテトラゾール化合物を配合した場合(硬化膜1B〜5B)、240時間という長時間通電してもマイグレーションの発生がなかった。これに対し、上記キレート剤を使用しない硬化膜(硬化膜6B〜8B)及びキレート剤として、5−メチルベンゾトリアゾールを用いた硬化膜(硬化膜9B)は、25〜130時間という短い時間でマイグレーションが発生してしまった。一方、上記メルカプトテトラゾール化合物を配合した場合(硬化膜1A〜5A)の抵抗値は、キレート剤を配合しない場合(硬化膜6A〜8A)と同程度であり、キレート剤の添加による抵抗値の増加は有意に抑えられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体樹脂、及び下記一般式(1)
【化1】

[式中、R及びRは、独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アルキル部分が炭素数1〜6のアルキル基であるアルキルウレイド基、カルボキシル基又はアルキル部分が炭素数1〜6のアルキル基であるアルコキシカルボニル基を示す。]
で表わされる化合物を含む、導電層又は絶縁層を形成するための樹脂組成物。
【請求項2】
金属粉をさらに含む、請求項1に記載の導電層を形成するための樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂組成物を用いて、導電パターンを形成する工程を含む、導電層の形成方法。
【請求項4】
請求項3に記載された方法を用いて形成された導電層。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−14637(P2013−14637A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146260(P2011−146260)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】