説明

樹脂組成物およびそれを用いた薄膜

【課題】製造方法が比較的容易であり、高いガスバリア特性、特に水蒸気バリア性を発現する事ができる樹脂複合材料を提供することを課題とする。
【解決手段】リチウム交換モンモリロナイトを、アルキルアミン塩を用いて有機化し、得られたリチウム交換有機化モンモリロナイト、イソシアヌル酸ジグリシジルモノアリル及び1,3−ジ−4−ピペリジルプロパンを溶媒中で混合して得られる樹脂組成物、それをキャスト法によって製膜して得られる薄膜、およびその薄膜を用いた太陽電池バックシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水蒸気バリア性、及びガスバリア性に優れた防湿性樹脂に関する。さらに詳しくは、本発明は、化学的に安定で、ガスバリア性を保つことが可能で、太陽電池のバックシートとして好適に用いることができる樹脂組成物およびそれを用いた薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに知られている柔軟性に優れ、ガスバリア性、水蒸気バリア性に優れた太陽電池用防湿フィルムは、有機系、無機系、及び金属を包含するシートに大別される。
【0003】
有機系ガスバリアシートは有機高分子材料をベースとしたものが製造されている。以前はポリ塩化ビニル等のそれ自体がガスバリア特性に優れる樹脂をフィルム化して製造されていたが、塩素系フィルムの環境負荷の問題から最近の有機系ガスバリアフィルムは、一般的に該高分子樹脂フィルムの片面又は両面に、ガスバリア層を形成して製造する。ガスバリア層としては酸化アルミ、酸化ケイ素、および/または窒化ケイ素などが知られており、CVD法及びPVD法などの様々な方式で形成されている。これらガスバリア層を有する有機系シートは比較的高いガスバリア性能を示すがその製造において高真空環境を必要とするため、生産性が高いとは言えない。
【0004】
無機系シートは、マイカやバーミキュライトなどの天然あるいは合成鉱物をシート状に加工したものであり、これらは、高い耐熱性を有し、グランドパッキンとして、ガスシール部材として用いられている。しかし、これらは、緻密に成形できていないため、微小なガス分子の流れるパスを完全に遮断できず、ガスバリア性がそれほど高くはない。
【0005】
また、金属シートは、ガスバリア性は優れているものの、耐候性、電気絶縁性、耐薬品性などに難点があり、その用途が限られる。
一方、種々の高分子樹脂が、成形材料のほか、分散剤、増粘剤、結合剤として、無機材料に配合され、複合ガスバリア材料として用いられている系もある。例えば、ポリアクリル酸などの、分子中に2個以上のカルボキシル基を持つカルボキシル基含有高水素ガス結合性樹脂と、澱粉類などの分子鎖中に2個以上の水酸基を持つ水酸基含有高水素ガス結合性樹脂の混合物と、粘土鉱物などで構成される組成物がある。
【0006】
複合ガスバリア材料においては有機高分子であるプラスチックの耐熱性や、ガスバリア性の向上を目的として、スメクタイト、マイカ、タルク、バーミキュライトなどの種々の粘土をフィラーとして、プラスチックに添加した複合材料も知られている。
最もガスバリア特性の発現において検討されているスメクタイトは、親水性であるため、疎水性のプラスチックに対する親和性が低く、そのままプラスチックに高分散化して複合化することが困難である。そこで、疎水性プラスチックと複合化させる場合は、粘土を改質し、親水性/疎水性をコントロールした変性粘土を用いることが知られている(非特許文献1、特許文献1参照)。
【0007】
変性粘土の製造方法は、二種類ある。その一つは、第四級アンモニウムカチオンあるいは第四級ホスホニウムカチオンによるイオン交換である。これらの有機カチオンの種類、導入するカチオンの割合によって、親水性/疎水性をコントロールすることが可能である(非特許文献2参照)。
【0008】
粘土の層間イオンをリチウム化して、加熱処理することによって、層間のリチウムが、粘土八面体層内に移動し、層間のイオン成分が減少することにより、耐水性が向上する。この耐水性の向上は、層間のイオン性物質のうち、リチウムイオンを90モルパーセント以上にすることによって、顕著に現れる。熱処理は、通常、製膜後350℃以上で行う。熱処理時間は、20分以上、24時間以内である。リチウム交換粘土を用いた複合ガスバリアフィルムは製造が容易で原料が入手しやすく、かつ高いガスバリア特性が得られる。(特許文献2,3参照)。しかしこの方法では高温処理のプロセスが必要であり生産性において不利である。
【0009】
上述の様にこれまでに知られているいずれの有機系、無機系、金属を包含するガスバリアシートおよびこれらの複合ガスバリアシートも、完璧であるとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−40207号公報
【特許文献2】特開2011−1237号公報
【特許文献3】特開2007−277078号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】鬼形正信 SMECTITE 第8巻、第2号、8−13(1998)
【非特許文献2】鬼形正信 SMECTITE 第13巻、第1号、2−15(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、製造方法が比較的容易であり、高いガスバリア特性、特に水蒸気バリア性を発現する事ができる樹脂複合材料を提供することを課題とする。すなわち本発明の樹脂組成物は、これまでの複合材料系の製造過程において必須である高温焼成プロセスに比較してより低温での焼成条件で製造できると同時に、本発明の樹脂組成物を薄膜(シート状あるいはフィルム状)に加工した場合これまでの有機高分子、無機物複合シートに比較して同等またはそれ以上の水蒸気バリア性を示すことを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1) リチウム交換モンモリロナイトを、アルキルアミン塩を用いて有機化し、得られたリチウム交換有機化モンモリロナイト、イソシアヌル酸ジグリシジルモノアリル及び1,3−ジ−4−ピペリジルプロパンを溶媒中で混合して得られる樹脂組成物。
(2) 溶媒が高極性有機溶媒を含むことを特徴とする上記(1)項の樹脂組成物。
(3) 上記(1)または(2)項のいずれかに記載の樹脂組成物をキャスト法によって製膜して得られる薄膜。
(4) 上記(3)項に記載の薄膜を用いた太陽電池バックシート。
【0014】
本発明は、さらに次のような態様を持つものでもよい。
(5)リチウム交換有機化モンモリロナイトを主要構成成分とする樹脂組成物であって、リチウム交換有機化モンモリロナイトと添加物から構成され、添加物が高分子成分である樹脂組成物のうち、リチウム交換有機化モンモリロナイトが市販天然モンモリロナイトの層間ナトリウムイオンをリチウムイオンに交換し、さらに交換されたリチウムイオンを有機アンモニウムイオンに交換したリチウム交換有機化モンモリロナイトである樹脂組成物。
(6)本発明の樹脂組成物を成膜することによって調製した、水蒸気バリア性を有し、その水蒸気透過度が、0.001〜5g/m/day(40℃ 相対湿度90%)であるフィルム。
(7)添加物である高分子成分が、イソシアヌル酸ジグリシジルモノアリルと1,3−ジ−4−ピペリジルプロパンをリチウム交換有機化モンモリロナイト層間で重合する樹脂である樹脂組成物。
(8)前記の樹脂組成物を用いたバリアフィルム。
(9)前記のバリアフィルムからなることを特徴とする太陽電池バックシート。
【発明の効果】
【0015】
本発明は次のような効果を奏する。
(1)本発明の樹脂組成物を使用することにより、耐候性に優れ、ガスバリア性、水蒸気バリア性、電気絶縁性、及び耐水性の要件を全て満たした防湿フィルムを提供することが可能となる。
(2)本発明の防湿フィルムは、例えば太陽電池のバックシートとして、好適に用いることができる。
(3)本発明の防湿フィルムは100℃以下の焼成で低い水蒸気透過率特性を発現することから高温での処理をせずとも水蒸気バリア性を発現する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を詳説する。
本発明の特徴は特許文献3に知られたリチウム交換モンモリロナイトをさらに有機化してリチウム有機化モンモリロナイトを用いることにある。すなわち、リチウム交換モンモリロナイトを有機物化する事によって有機溶媒に難溶なモンモリロナイトの有機溶剤への親和性を向上させ、その層間に有機物に対する親和性(親油化)を付与できる。これによって水に比較的溶けにくいモノマーを用いた重合反応をモンモリロナイト層間で行う事ができるようになりモンモリロナイトとポリマーの解離を防ぎ、均一で良好なフィルムを形成する事ができる。
【0017】
本発明に使用されるリチウム交換モンモリロナイトは、特開2007−277078(特許文献3)に記載の方法で調製することができる。本発明に使用されるリチウム交換モンモリロナイトの調製に使用される天然モンモリロナイトは市販されている物をそのまま使用できる。本発明に使用されるリチウム交換モンモリロナイトの調製には市販のシランカップリング剤を使用することができ、特に3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0018】
本発明に使用されるリチウム交換有機化モンモリロナイトは上述の方法で調製されるリチウム交換モンモリロナイトの層間のリチウムイオンをさらにアルキルアンモニウムイオンに交換して調製される。アルキルアンモニウムイオンへの交換は上述のリチウム交換モンモリロナイトとアルキルアミン塩を混合して無機塩と有機塩を交換する方法で行う。この交換は水中で行うことができる。
【0019】
アルキルアミン塩として使用できるアルキルアミンとしては、例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミン等のアミン化合物、アミノ酸及びその誘導体、窒素含有複素環化合物が挙げられる。さらに、これらの化合物に由来する有機カチオン等の化合物も好適に使用できる。
【0020】
具体的には、オクチルアミン、ドデシルアミン、ラウリルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アリルアミン、ベンジルアミン、アニリン等の1級アミン類、ジラウリルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジステアリルアミン、N−メチルアニリン等の2級アミン類、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の3級アミン類、上記化合物に由来する有機カチオン等が挙げられる。アルキルアミンは、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
特にオクチルアミン、ドデシルアミン、ラウリルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アリルアミン、ベンジルアミンが入手容易である点で好ましい。
【0022】
さらに入手が容易であり、特性が良好である点でドデシルアミンが好ましい。
【0023】
アルキルアミン塩において使用できる酸化合物としては、例えば塩酸や硫化水素等の水素酸、硫酸、硝酸、酢酸や燐酸等のオキソ酸、エチルキサントゲン酸等のチオ酸等が例示される。
特に塩酸、硫酸、硝酸が強酸性で入手容易である点で好ましい。
【0024】
本発明に使用されるリチウム交換有機化モンモリロナイトはリチウム交換モンモリロナイトのリチウムイオンをさらにアルキルアンモニウムイオンに交換したリチウム交換有機化モンモリロナイトである。
本発明の樹脂組成物は上述のリチウム交換有機化モンモリロナイト、イソシアヌル酸ジグリシジルモノアリル及び1,3−ジ−4−ピペリジルプロパンを溶媒中で混合してリチウム交換有機化モンモリロナイトの層間でイソシアヌル酸ジグリシジルモノアリルと1,3−ジ−4−ピペリジルプロパンを重合反応して得られる。
【0025】
本発明のイソシアヌル酸ジグリシジルモノアリルと1,3−ジ−4−ピペリジルプロパンの使用比率は等モルであることが残留モノマーが少ない点で好ましい。
本発明の樹脂組成物中のイソシアヌル酸ジグリシジルモノアリルと1,3−ジ−4−ピペリジルプロパンの重合物(エポキシ樹脂)の樹脂組成物全体に対する重量割合は、50重量パーセント未満であることが好ましく、より好ましくは0.5重量パーセントから50重量パーセントである。さらに好ましくは5重量パーセントから30重量パーセントであり、水蒸気バリア性が良好でかつ製膜が容易である点で10重量パーセントから20重量パーセントの間が好ましい。
【0026】
本発明で使用される高極性有機溶媒を含む溶媒はリチウム交換有機化モンモリロナイトが膨潤し、イソシアヌル酸ジグリシジルモノアリルと1,3−ジ−4−ピペリジルプロパンの溶解性が良好である点でN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン等の極性溶媒が好ましく、より好ましくはN,N−ジメチルアセトアミドである。ここで用いられる溶媒は任意の量の水と混合状態でもよい。
【0027】
上述の方法で得られた樹脂組成物は任意の方法で溶媒を除去して成膜される。これらの溶媒除去方法のうち加熱蒸発法を用いる場合、溶剤が揮発しやすい加温条件下で放置する事で達成される。
【0028】
自立膜を調製する際は分散液を、平坦なトレイ、例えば、真鍮、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)などのトレイなどの支持体に塗布し(キャスト法)、水平を保った状態で、強制送風式オーブン中において、30℃から90℃の温度条件下、好ましくは50℃から70℃の温度条件下で、10分から24時間程度、溶媒を徐々に蒸発させる。
【0029】
バーコータ−等で適切な支持体の上に成膜した後に乾燥し、剥離して自立膜を調製する事もできる。
粘度を調製した後にフィルム状の支持体の上に連続コートしてコーティング層として使用する事も出来る。この場合、樹脂組成物を製造する際に使用した溶剤は支持体を変性させることのない条件で除去する事が好ましい。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、フィルム状、シート状等ガスバリア性の要求される用途に適した形状に成形する限りにおいて制限はない。
【0031】
本発明によって製造されるガスバリアフィルムは水蒸気透過率0.001〜5g/m/dayの優れたバリア特性を示すので各種電気機器のパッケージング、ラミネート、シーリングに使用出来る。本発明のフィルムは、水蒸気バリア性に優れ太陽電池用バックシートとして使用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明の樹脂組成物からなるシートの水蒸気透過率(WVTR)は、Water Vapor Transmission Analyzer 7002(イリノイ社製)を用いて測定した。測定法は等圧法で検出器は五酸化二リンセンサーを用いた。測定した条件は40℃、湿度90%の条件である。
リチウム交換有機化モンモリロナイトの原子組成は、ICP発光分析(IRIS−AP 日本ジャーレルアッシュ製)により分析しNa/Liの比率を測定した。
リチウム交換有機化モンモリロナイトの層間距離はXRD(RINT2200VF 株式会社リガク製)によって測定した。
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の平均分子量は、GPC(PUMP L−7100,RI DETECTOR L−7900,日立製)により測定した。使用したカラムは(TOSOH TSK gels α−2500 and α−5000 東ソー製)である。
【0033】
(実施例1)
リチウム交換有機化モンモリロナイトの調製
オーブンで110℃ 以上の温度で十分乾燥させた精製モンモリロナイト「クニピアF」(商品名、クニミネ工業株式会社製)を300g、アルミナボールとともにボールミル用ポットに入れた。次に、シリル化剤(JNC株式会社製,商品名「サイラエースS330」)6gを加え、ポット内を窒素に置換し、一時間ボールミル処理を行った。得られたモンモリロナイト組成物24 グラムを0.5規定の硝酸リチウム水溶液400mLに加え、振とうにより混合分散させた。2時間振とう分散し、モンモリロナイト組成物の層間イオンをリチウムに交換した。次に、遠心分離により固液分離し、得られた固体を280gの蒸留水と120gのエタノールの混合液で洗浄し、過剰の塩分を除いた。この洗浄操作は二回以上繰り返した。得られた生成物をオーブンで十分に乾燥後、粉砕してリチウム交換モンモリロナイトを得た(参考文献:特許開2007−277078参照)。リチウム交換モンモリロナイト(Na/Li=4:1、モル比)20gを水400mLに分散させ、別途調製したドデシルアミン塩酸塩水溶液(ドデシルアミン(8.82g、東京化成)を12N塩酸(4.8mL、和光純薬)と水100mLから調製した溶液に加えて調製)を混合した。そして溶液を80℃に加熱してドデシルアミンで有機化されたリチウム交換有機化モンモリロナイトの沈殿を得た。この沈殿を吸引ろ過によりろ別し、ろ別した固体部と水mLを80℃中で混合し、沈殿をろ別した。この操作を2回繰り返し、減圧乾燥してリチウム交換有機化モンモリロナイトとした。
【0034】
(実施例2]
リチウム交換有機化モンモリロナイトを用いた樹脂組成物の調製
すり付三方コック(旭硝子株式会社製)のついたすり付試験管(50mL、旭硝子株式会社製)を真空置換、窒素置換を3回繰り返した後、ドデシルアミンで有機化されたリチウム交換有機化モンモリロナイト(3.50g)、1,3−ジ−4−ピペリジルプロパン(0.374g、1.78mmol、東京化成工業株式会社製)、N,N−ジメチルアセトアミド(7.78mL、和光純薬株式会社製)を加えた。混合物を0℃に冷却後、ジグリシジル−モノアリルイソシアヌル酸(0.5g、1.78mmol、四国化成)を加え、80℃で48時間攪拌した。混合溶液をろ別し得た樹脂組成物を真空乾燥したところ収率88%で目的物を得た。
【0035】
樹脂組成物中の分子量の測定は30mLナスフラスコに樹脂組成物(0.5g)、N,N−ジメチルフォルムアミド(5mL)を加え60℃で20時間攪拌し、その上澄み液を0.5mL採取し、GPC(日本分光株式会社製)により測定を行ったところ、数平均分子量4000、分子量分布1.72であった。
【0036】
(実施例3)
リチウム交換有機化モンモリロナイトを用いた樹脂組成物の製膜と膜の水蒸気透過率の測定
リチウム交換有機化モンモリロナイト−イソシアヌル酸ポリマーの製膜は、実施例2で調製された樹脂組成物(3g)をN,N−ジメチルアセトアミド20mLに浸し、ポリプロピレン製バット(150mm×105mm アズワン製)に塗布後、定温乾燥機で70℃で48時間乾燥させることにより行った。得られた膜のWVTRを前述の装置を用いて測定したところ膜厚70μmで2.9(g/m/day)であった。
【0037】
(実施例4)
実施例3で得られた膜を定温乾燥機を用いて350℃で4時間乾燥し膜を得た。
得られた膜のWVTRと膜厚を前述の装置を用いて測定したところ膜厚70μmで0.5(g/m/day)であった。
【0038】
(比較例1)
リチウム交換モンモリロナイトを用いた樹脂組成物の調製及び製膜
すり付三方コックのついたすり付試験管(50mL)を真空置換、窒素置換を3回繰り返した後、リチウム交換モンモリロナイト(3.50g)、1,3−ジ−4−ピペリジルプロパン(0.374g、1.78mmol、東京化成工業株式会社製)、N,N−ジメチルアセトアミド(7.78mL、和光純薬株式会社製)加えた。混合物を0℃に冷却後、ジグリシジル−モノアリルイソシアヌル酸(0.5g、1.78mmol、四国化成製)を加え、80℃で48時間攪拌した。混合溶液をろ別し得た樹脂組成物を真空乾燥し目的物を得た。
リチウム交換モンモリロナイト−イソシアヌル酸ポリマーの製膜は、3gのリチウム交換モンモリロナイト−イソシアヌル酸ポリマー樹脂組成物をN,N−ジメチルアセトアミド20mLに浸し、ポリプロピレン製バット(150mm×105mm アズワン製)に塗布後、定温乾燥機で70℃で48時間乾燥させることにより行った。
この段階で膜構造を維持できなかった。このことから有機化していないリチウム交換モンモリロナイトではモノマーのモンモリロナイト層間への嵌入度が低く良好なコンポジットが得られないことが判った。
【0039】
(比較例2)
リチウム交換モンモリロナイトを用いた樹脂組成物の調製及び製膜
リチウム交換モンモリロナイト4gを蒸留水36gに加え混合分散させ、N,N−ジメチルアセトアミド140gを加え、ホモジナイザーにより3時間攪拌し分散液を得た。一方、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(524mg,株式会社同仁化学研究所製)をN−メチルピロリドン(16g,和光株式会社製)に溶解し、0℃で30分攪拌した。これに1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(456mg,東京化成工業株式会社製)を混合し、30℃で24時間攪拌し、固液比約5重量パーセントのポリイミド酸ペーストを作製した。次に、リチウム交換モンモリロナイト分散液とポリイミド酸を混合し、リチウム交換モンモリロナイト−ポリアミド酸得た。次に、真空脱泡装置により、この混合ペーストの脱気を行った。次に、この混合ペーストをポリプロピレン製バット(150mm×105mm アズワン製)に塗布後40℃で乾燥した。ポリイミド酸リチウム交換モンモリロナイト膜を得た。このポリイミド酸リチウム交換モンモリロナイト膜を定温乾燥機で100℃で4時間乾燥させた。得られた膜のWVTRを前述の装置を用いて測定したところ膜厚70μmで51.0(g/m/day)であった。
実施例3と比較例2の結果からリチウム交換有機化モンモリロナイト−イソシアヌル酸ポリマーを成分とする膜は既知のリチウム交換モンモリロナイト膜−ポリイミド酸ポリマーを成分とする膜に比較して低温での焼成でも高い水蒸気バリア性能を示す事が判った。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の樹脂組成物は、ガスバリア性が要求される様々な用途に利用することができ、耐候性、ガスバリア性、水蒸気バリア性、電気絶縁性、及び耐水性に優れた防湿フィルムを提供することができる。また、本発明の樹脂組成物を用いて製造した防湿フィルムは、例えば太陽電池のバックシートとして、好適に用いることができる。さらには、本発明の薄膜を用いた防湿フィルムは100℃以下の焼成で低い水蒸気透過率特性を発現することから高温での処理をせずとも水蒸気バリア性を発現する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム交換モンモリロナイトを、アルキルアミン塩を用いて有機化し、得られたリチウム交換有機化モンモリロナイト、イソシアヌル酸ジグリシジルモノアリル及び1,3−ジ−4−ピペリジルプロパンを溶媒中で混合して得られる樹脂組成物。
【請求項2】
溶媒が高極性有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の樹脂組成物をキャスト法によって製膜して得られる薄膜。
【請求項4】
請求項3に記載の薄膜を用いた太陽電池バックシート。

【公開番号】特開2013−23502(P2013−23502A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156018(P2011−156018)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】