説明

樹脂組成物およびインク受容層の下地層の形成方法

【課題】 表面平滑性に優れたインク受容層の下地層を形成することが可能な樹脂組成物、および、表面平滑性に優れたインク受容層の下地層の形成方法を提供する。
【解決手段】 光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーと、白色顔料と、界面活性剤とを含み、25℃において、100mPa・sないし2,000mPa・sの粘度を有する樹脂組成物、および、前記樹脂組成物を、スピンコーティング法によって塗布して、塗膜を形成し、前記塗膜に紫外線または電子線を照射して、前記塗膜を硬化させて、インク受容層の下地層を形成することを特徴とするインク受容層の下地層の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物およびインク受容層の下地層の形成方法に関するものであり、さらに詳細には、光記録媒体に、表面平滑性に優れたインク受容層の下地層を形成することが可能な樹脂組成物およびインク受容層の下地層の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光記録媒体は、CD−ROMやDVD−ROMのように、データの追記や書き換えができないタイプの光記録媒体(ROM型光記録媒体)と、CD−RやDVD−Rのように、データの追記はできるが、データの書き換えができないタイプの光記録媒体(追記型光記録媒体)と、CD−RWやDVD−RWのように、データの書き換えが可能なタイプの光記録媒体(書換え型光記録媒体)とに大別される。
【0003】
追記型光記録媒体や書換え型光記録媒体においては、光記録媒体に記録したデータの内容などを、ユーザが、光記録媒体に表示できるようにするため、レーザビームが入射する光入射面に対して、光記録媒体の反対側の表面に、このデータの内容などを、インクジェットプリンタなどを用いて表示または印刷することができるインク受容層を備えた光記録媒体が実用化されている。
【0004】
たとえば、レーザビームが入射する光入射面に対して、光記録媒体の反対側の表面に、白色の下地層とインク受容層がこの順で形成された光記録媒体が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この光記録媒体の下地層は、通常、レーザビームが入射する光入射面に対して、光記録媒体の反対側の表面に、スクリーン印刷法によって、高い粘度を有する樹脂組成物を塗布し、塗膜を硬化させて、形成されているため、下地層の表面に、スクリーン印刷に用いたスクリーンのメッシュ跡が残り、あるいは、下地層の表面にうねりなどが発生して、表面平滑性が悪化することがあった。
【0006】
したがって、鮮明な画像と優れた印字品質を得ることができ、写真に匹敵するような高い品質で画像などを印刷することができる高精度なインクジェットプリンタなどを用いて、下地層の表面に形成されたインク受容層に、画像などを印刷しても、インク受容層の表面平滑性は、下地層の表面平滑性に大きく影響されるため、インク受容層の表面にもまた、メッシュ跡や、うねりなどが生成され、その表面平滑性が低くなるから、このような表面平滑性が低いインク受容層に印刷された画像は画質が低下し、また、画像などの白色部は、通常、白色の下地層の表面を利用するものであるため、画像などの白色部に、下地層の表面に発生したメッシュ跡や、うねりなどが観察され、その結果、印刷された画像などの透明感、光沢感が低く、所望のように、高品質で画像などを印刷することが困難であるという問題があった。
【0007】
さらに、下地層の表面に形成されるインク受容層が透明であるときには、下地層の表面平滑性が低いため、インク受容層を介して見た下地層の外観が著しく悪いという問題があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、光記録媒体に、表面平滑性に優れたインク受容層の下地層を形成することが可能な樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
また、本発明の別の目的は、光記録媒体に、表面平滑性に優れたインク受容層の下地層を形成することが可能なインク受容層の下地層の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
下地層を形成するために用いられる樹脂組成物は、下地層に要求される特性を満たすために、種々の成分を含んでいるから、必然的に、樹脂組成物の粘度が高くなる。とくに、高品質で画像などを印刷する際に要求される高い表面平滑性を有する下地層を形成するために、樹脂組成物が小さな平均粒径を有する成分を含んでいる場合には、樹脂組成物の粘度がきわめて高くなってしまう。したがって、これまで、下地層に要求される特性を保持したまま、下地層を形成するために用いられる樹脂組成物の粘度を低下させることは、困難であると考えられていた。
【0011】
したがって、このような高い粘度を有する樹脂組成物を、スピンコーティング法によって塗布することは困難であり、高い粘度を有する樹脂組成物を塗布することにより適したスクリーン印刷法などによって、塗布して、インク受容層の下地層を形成することが一般的であった。その結果、インク受容層に印刷された画像などを、高品質で印刷するためには、下地層の表面に形成されるインク受容層の表面平滑性などを向上させることが一般的に行われていた(たとえば、特開2003−123323号公報参照。)。
【0012】
しかるに、本発明者は、本発明の前記目的を達成するため、鋭意研究を重ねた結果、インク受容層の下地層を形成するために用いられる樹脂組成物が、光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーと、白色顔料と、界面活性剤とを含んでいる場合には、下地層に要求される特性を保持したまま、スピンコーティング法によって塗布されるのに適した粘度範囲まで、その粘度を低下させることが可能になることを見出した。
【0013】
本発明者はかかる知見に基づいて、さらに研究を重ねた結果、光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーと、白色顔料と、界面活性剤とを含む樹脂組成物が、25℃において、100mPa・sないし2,000mPa・sの粘度を有する場合には、この樹脂組成物を、スピンコーティング法によって塗布して、インク受容層の下地層を形成したときに、形成された下地層の表面に、メッシュ跡やうねりなどが発生することを防止して、形成された下地層の表面平滑性を向上させることができ、したがって、下地層の表面に形成されたインク受容層上に、インクジェットプリンタなどを用いて、画像などを印刷したときには、印刷された画像などの透明感、光沢感が高く、写真画質に匹敵するような所望の高い画質で画像を印刷することが可能になることを見出した。
【0014】
本発明は、かかる知見に基づくものであり、本発明によれば、本発明の前記目的は、光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーと、白色顔料と、界面活性剤とを含み、25℃において、100mPa・sないし2,000mPa・sの粘度を有する樹脂組成物によって達成される。
【0015】
本発明において、25℃における粘度は、JIS K5600−2−3に記載された方法にしたがって、コーンプレート方式でせん断速度が0(1/秒)から300(1/秒)の条件で測定したときの傾き値として定義される。
【0016】
本発明の樹脂組成物は、25℃において、500mPa・sないし2,000mPa・sの粘度を有していることが好ましく、800mPa・sないし1,700mPa・sの粘度を有していることがさらに好ましい。本発明の樹脂組成物が、25℃において、500mPa・sないし2,000mPa・sの粘度を有している場合には、この樹脂組成物を、スピンコーティング法によって塗布して、インク受容層の下地層を形成したときに、形成された下地層の表面に、メッシュ跡やうねりなどが発生することを効果的に防止して、形成された下地層の表面平滑性を、より一層、向上させることができ、したがって、下地層の表面に形成されたインク受容層上に、インクジェットプリンタなどを用いて、画像を印刷したときには、印刷された画像の透明感、光沢感が極めて高く、写真画質に匹敵するような所望の高い画質で画像を印刷することが可能になる。
【0017】
本発明において、前記白色顔料の含有量は、その種類や平均粒径などに応じて、樹脂組成物が所望の粘度を有するように適宜設定されればよいが、前記白色顔料は、100質量部の前記光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーに対して、2質量部ないし20質量部の割合で樹脂組成物に含まれていることが好ましく、5質量部ないし18質量部の割合で樹脂組成物に含まれていることがさらに好ましい。白色顔料が2質量部未満の割合で樹脂組成物に含まれている場合には、樹脂組成物によって形成された下地層の白色度を充分に高めることができず、下地層表面に形成されたインク受容層に印刷された画像の色純度が低くなって、高品質で画像などを印刷することが困難になる。一方、白色顔料が20質量部を超えた割合で樹脂組成物に含まれている場合には、樹脂組成物の粘度を所望の範囲に調整することが困難になり、形成された下地層の表面平滑性が低下し、また、樹脂組成物の硬化性も低下して、生産性が悪化することがある。
【0018】
本発明において、前記界面活性剤の含有量は、その種類などに応じて、樹脂組成物が所望の粘度を有するように適宜設定されればよいが、前記界面活性剤が、100質量部の前記光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーに対して、0.01質量部ないし5質量部の割合で樹脂組成物に含まれていることが好ましく、0.1質量部ないし2質量部の割合で樹脂組成物に含まれていることがさらに好ましい。界面活性剤が0.01質量部ないし5質量部の割合で樹脂組成物に含まれている場合には、白色顔料を樹脂組成物に、より一層、均一に分散させることができ、下地層の表面のレベリング性を、より一層、向上させることが可能になる。
【0019】
本発明において、前記光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーは、とくに限定されるものではないが、樹脂組成物の粘度を所望の範囲に調製できる点で、低粘度であることが好ましく、具体的には、前記光重合性オリゴマー、または、前記光重合性モノマーを重合させた数平均分子量が500ないし3,000のホモポリマーが、25℃において、500mPa・s以下の粘度を有していることがより好ましく、25℃において、400mPa・s以下の粘度を有していることがとくに好ましい。前記光重合性オリゴマー、または、前記光重合性モノマーを重合させた数平均分子量が500ないし3,000のホモポリマーが、25℃において、500mPa・s以下の粘度を有している場合には、樹脂組成物の粘度を所望の範囲に容易に調整することが可能になる。また、前記光重合性オリゴマー、または、数平均分子量が500ないし3,000のホモポリマーが、25℃において、10mPa・s以上の粘度を有していることが好ましい。
【0020】
本発明において、光重合性オリゴマー、または、数平均分子量が500ないし3,000のホモポリマーの粘度は、前記樹脂組成物の粘度と同様にして、測定したときの傾き値である。
【0021】
本発明において、前記光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーは、黄変性を有していないことがとくに好ましい。前記光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーが、黄変性を有していない場合には、形成された下地層が長期間にわたって、強い白色度を維持でき、下地層およびインク受容層を備えた光記録媒体を、長期間にわたって、保存した場合でも、インク受容層上に印刷された画像の高い透明感および光沢感、ならびに、写真画質に匹敵するような所望の高い画質を維持することが可能になる。
【0022】
本発明において、前記光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーは、紫外線を照射することによって、硬化する紫外線重合性オリゴマーまたは紫外線重合性モノマーであることが好ましい。
【0023】
本発明において、白色顔料は、とくに限定されるものではないが、0.1μmないし1.0μmの平均粒径を有していることが好ましく、0.1μmないし0.5μmの平均粒径を有していることがとくに好ましい。白色顔料が、白色を発し、白色顔料として機能するためには、白色顔料は0.1μm以上の平均粒径を有していることが必要であり、また、白色顔料が0.1μmないし1.0μmの平均粒径を有している場合には、白色顔料を樹脂組成物に均一に分散させて、樹脂組成物の粘度を所望の範囲に容易に調整することができるとともに、下地層の表面平滑性を、より一層、向上させることが可能になる。
【0024】
本明細書において、白色顔料の平均粒径は、日機装株式会社製の粒度分布測定装置「マイクロトラック粒子径分布測定装置 HRA(X100)」(商品名)を用いて、溶媒として水を使用して、レーザー回折散乱法によって測定されたメディアン径として定義される。
【0025】
本発明において、白色顔料は、2.0以上の屈折率nを有していることが好ましく、2.3以上の屈折率nを有していることがより好ましい。白色顔料の屈折率nが2.0以上である場合には、下地層の白色度がより強くなり、下地層の表面に形成されたインキ受容層に印刷された画像などの品質をさらに向上させることが可能になる。
【0026】
本発明において、白色顔料として、2.0以上の屈折率nを有している酸化チタンを用いることがさらに好ましい。白色顔料として、酸化チタンを用いた場合には、樹脂組成物により均一に分散させることができ、樹脂組成物の粘度を所望の範囲に容易に調整することができるとともに、下地層の表面平滑性を、より一層、向上させることが可能になる。
【0027】
また、本発明において、酸化チタンは、0.1μmないし1.0μmの平均粒径を有していることが好ましく、0.1μmないし0.5μmの平均粒径を有していることがより好ましく、0.15μmないし0.3μmの平均粒径を有していることがとくに好ましい。酸化チタンが、0.15μmないし0.3μmの平均粒径を有している場合には、樹脂組成物にきわめて均一に分散させることができ、樹脂組成物の粘度を所望の範囲に容易、かつ、確実に調整することができるとともに、下地層の表面平滑性をさらに向上させることができる。
【0028】
本発明において、界面活性剤は、とくに限定されるものではないが、光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーおよび白色顔料に応じて、選択されることが好ましく、たとえば、白色顔料が酸性を有する場合には、カチオン性の界面活性剤を、塩基性を有する場合には、アニオン性の界面活性剤を選択し、かつ、光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーと互いに相溶性のある界面活性剤を選択されることが好ましい。界面活性剤は、このようにして選択されるが、アニオン性の界面活性剤であるアニオン性高分子活性剤であることがとくに好ましい。アニオン性高分子活性剤が樹脂組成物に含まれている場合には、白色顔料を樹脂組成物に、より一層、均一に分散させることができ、下地層の表面のレベリング性を、より一層、向上させることが可能になる。
【0029】
本発明において、樹脂組成物は、光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマー、白色顔料および界面活性剤に加えて、必要に応じて、光重合開始剤、光重合開始助剤、帯電防止剤、重合禁止剤、インク定着剤、酸化防止剤、消泡剤、染料固着剤、顔料、増粘剤、pH調整剤、流動変性剤、抑泡剤、剥離剤、浸透剤、蛍光増白剤などの添加剤、溶剤などを含んでいてもよい。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、光記録媒体のインク受容層の下地層を形成するために用いられる下地層形成用樹脂組成物であることが好ましい。光記録媒体としては、とくに限定されるものではなく、DVD型の光記録媒体でも、レーザビームが透過する光透過層が設けられた次世代型の光記録媒体でもよく、さらには、CD型の光記録媒体であってもよい。また、DVD型の光記録媒体および次世代型の光記録媒体としては、書き換え型の光記録媒体として構成されていてもよく、追記型の光記録媒体として構成されていてもよく、さらには、ROM型の光記録媒体として構成されていてもよい。
【0031】
たとえば、DVD型の光記録媒体の場合には、本発明の樹脂組成物によって、ダミー基板の表面に、下地層が形成され、次世代型の光記録媒体の場合には、本発明の樹脂組成物によって、光透過層とは反対側の支持基板の表面に、下地層が形成される。
【0032】
また、本発明の別の目的は、少なくとも、光透過性を有し、レーザビームが透過する第一の樹脂層と、第二の樹脂層と、前記第一の樹脂層と前記第二の樹脂層との間に、情報層とを備えた光記録媒体に、インク受容層の下地層を形成するインク受容層の下地層の形成方法であって、第二の樹脂層の表面に、前記樹脂組成物を、スピンコーティング法によって塗布して、塗膜を形成し、前記塗膜に紫外線または電子線を照射して、前記塗膜を硬化させて、インク受容層の下地層を形成することを特徴とするインク受容層の下地層の形成方法によって達成される。
【0033】
インク受容層の下地層を形成するために用いられる樹脂組成物は、光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーと、白色顔料と、界面活性剤とを含み、下地層に要求される特性を保持したまま、スピンコーティング法によって塗布されるのに適した粘度を有しているため、この樹脂組成物をスピンコーティング法によって塗布して、インク受容層の下地層を形成することができ、したがって、形成された下地層の表面に、メッシュ跡やうねりなどが発生することがなく、形成された下地層の表面平滑性を高くすることが可能になる。
【0034】
したがって、本発明の樹脂組成物を、スピンコーティング法によって塗布して、下地層を形成した場合に、下地層の表面に形成されたインク受容層上に、インクジェットプリンタなどを用いて、画像を印刷すると、印刷された画像の透明感、光沢感が極めて高く、写真画質に匹敵するような所望の高い画質で画像を印刷することが可能になる。
【0035】
本発明において、本発明の樹脂組成物を、スピンコーティング法によって塗布するときの条件は、とくに限定されるものではない。
【0036】
また、本発明において、紫外線または電子線を本発明の樹脂組成物に照射する条件は、とくに限定されるものではなく、空気中または、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で、常温(25℃)ないし約100℃の温度下で、樹脂組成物が硬化するのに十分な量の紫外線または電子線が照射されればよく、また、紫外線または電子線は、2回または3回以上に分けて、本発明の樹脂組成物に照射されてもよい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、光記録媒体に、表面平滑性に優れたインク受容層の下地層を形成することが可能な樹脂組成物を提供することが可能になる。
【0038】
また、本発明によれば、光記録媒体に、表面平滑性に優れたインク受容層の下地層を形成する方法を提供することが可能になる。
【0039】
したがって、本発明によれば、光記録媒体に、形成された下地層の表面平滑性を高くすることができるから、下地層の表面に形成されたインク受容層上に、インクジェットプリンタなどを用いて、画像を印刷したときには、印刷された画像の透明感、光沢感が高く、写真画質に匹敵するような所望の高い画質で画像を印刷することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の樹脂組成物は、光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーと、白色顔料と、界面活性剤とを含み、25℃において、100mPa・sないし2,000mPa・sの粘度を有している。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、スピンコーティング法によって塗布されて、インク受容層の下地層を形成することができるため、形成された下地層の表面に、メッシュ跡やうねりなどが発生することを防止して、形成された下地層の表面平滑性を向上させることができ、したがって、下地層の表面に形成されたインク受容層上に、インクジェットプリンタなどを用いて、画像を印刷したときには、印刷された画像の透明感、光沢感が高く、写真画質に匹敵するような所望の高い画質で画像を印刷することが可能になる。
【0042】
本発明において、樹脂組成物は、25℃において、500mPa・sないし2,000の粘度を有していることが好ましく、800mPa・sないし1,700mPa・sの粘度を有していることがさらに好ましい。樹脂組成物が、25℃において、500mPa・sないし2,000mPa・sの粘度を有している場合には、下地層の表面に形成されたインク受容層上に、インクジェットプリンタなどを用いて、画像を印刷したときに、印刷された画像の透明感、光沢感が高く、写真画質に匹敵するような所望の高い画質で画像を印刷することが可能になる。
【0043】
本発明において、光重合性オリゴマーは、とくに限定されるものではなく、光重合性オリゴマーとしては、たとえば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)エステルアクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
本発明において、光重合性モノマーは、とくに限定されるものではなく、単官能モノマーであっても、多官能モノマーであってもよい。
【0045】
単官能モノマーとしては、たとえば、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルフォリン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられ、多官能モノマーとしては、たとえば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0046】
これらの光重合性オリゴマー、単官能モノマーおよび多官能モノマーは、1種のみ用いても、2種以上を併用してもよい。
【0047】
これらの光重合性オリゴマーおよび光重合性モノマーは、樹脂組成物の粘度を所望の範囲に調製できる点で、低粘度であることが好ましく、具体的には、光重合性オリゴマー、または、光重合性モノマーを重合させた数平均分子量が500ないし3,000のホモポリマーが、25℃において、500mPa・s以下の粘度を有していることがより好ましく、25℃において、400mPa・s以下の粘度を有していることがとくに好ましい。光重合性オリゴマー、または、光重合性モノマーを重合させた数平均分子量が500ないし3,000のホモポリマーが、500mPa・s以下の粘度を有している場合には、樹脂組成物の粘度を所望の範囲に容易に調整することが可能になる。また、粘度は、25℃において、10mPa・s以上であることが好ましい。
【0048】
さらに、光重合性オリゴマーおよび光重合性モノマーは、黄変性を有していないことがとくに好ましい。この場合には、インク受容層上に印刷された画像の、高い透明感および光沢感、ならびに、写真画質に匹敵するような所望の高い画質を維持することが可能になる。
【0049】
本発明において、光重合性オリゴマーおよび光重合性モノマーは、紫外線を照射することによって、硬化する紫外線重合性オリゴマーまたは紫外線重合性モノマーであることが好ましい。
【0050】
本発明において、樹脂組成物に含まれる白色顔料は、とくに限定されるものではないが、たとえば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、鉛白(塩基性炭酸鉛)、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、マイカ、硫酸バリウム、シリカ、タルク、カリオンクレー、ロー石クレー、ゼオライトなどが挙げられ、白色顔料は、1種のみ用いても、2種以上を併用してもよい。
【0051】
これらの白色顔料は、0.1μmないし1.0μmの平均粒径を有していることが好ましく、0.1μmないし0.5μmの平均粒径を有していることがとくに好ましい。白色顔料が、白色を発し、白色顔料として機能するためには、白色顔料は0.1μm以上の平均粒径を有していることが必要であり、また、白色顔料が0.1μmないし1.0μmの平均粒径を有している場合には、白色顔料を樹脂組成物に均一に分散させて、樹脂組成物の粘度を所望の範囲に容易に調整することができるとともに、下地層の表面平滑性を、より一層、向上させることが可能になる。
【0052】
また、白色顔料は、2.0以上の屈折率nを有していることがより好ましく、このような白色顔料としては、たとえば、酸化チタン(ルチル型:屈折率n=2.76、アナターゼ型:屈折率n=2.52)、チタン酸カリウム(屈折率=n2.68)、酸化ジルコン(屈折率n=2.40)、酸化アンチモン(屈折率n=2.09ないし2.29)、チタン酸鉛(屈折率n=2.70)、硫化亜鉛(屈折率n=2.37ないし2.43)、酸化亜鉛(屈折率n=2.01ないし2.03)などが挙げられる。白色顔料の屈折率nが2.0以上である場合には、下地層の白色度がより強くなり、下地層の表面に形成されたインキ受容層に印刷された画像などの品質をさらに向上させることが可能になる。白色顔料は、2.3以上の屈折率nを有していることがさらに好ましい。
【0053】
このような白色顔料のなかでも、樹脂組成物により均一に分散させることができ、樹脂組成物の粘度を所望の範囲に容易に調整することができるとともに、下地層の表面平滑性を、より一層、向上させることが可能になる点で、白色顔料として、酸化チタンを用いることがさらに好ましい。酸化チタンの平均粒径は、0.1μmないし1.0μmであることが好ましく、0.1μmないし0.5μmであることがより好ましく、0.15μmないし0.3μmであることがとくに好ましい。酸化チタンが、0.15μmないし0.3μmの平均粒径を有している場合には、樹脂組成物にきわめて均一に分散させることができ、樹脂組成物の粘度を所望の範囲に容易、かつ、確実に調整することができるとともに、下地層の表面平滑性をさらに向上させることができる。このような酸化チタンとしては、たとえば、堺化学工業株式会社製のA−190(商品名、平均粒径0.15μm)、堺化学工業株式会社製のR21(商品名、平均粒径0.2μm)、チタン工業株式会社製のクロノスKA−30、KR460(商品名、平均粒径0.3μm)などが挙げられる。
【0054】
白色顔料の含有量は、その種類や平均粒径などに応じて、樹脂組成物が所望の粘度を有するように適宜設定されればよいが、白色顔料は、100質量部の光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーに対して、2質量部ないし20質量部の割合で、樹脂組成物に含まれていることが好ましく、5質量部ないし18質量部の割合で、樹脂組成物に含まれていることがさらに好ましい。白色顔料が2質量部未満の割合で樹脂組成物に含まれている場合には、樹脂組成物の白色度を充分に高めることができず、下地層表面に形成されたインク受容層に印刷された画像の色純度が低くなって、高品質で画像などを印刷することが困難になる。一方、白色顔料が20質量部を超えた割合で樹脂組成物に含まれている場合には、樹脂組成物の粘度を所望の範囲に調整することが困難になり、形成された下地層の表面平滑性が低下し、また、樹脂組成物の硬化性も低下して、生産性が悪化することがある。
【0055】
本発明において、界面活性剤は、とくに限定されるものではなく、たとえば、カチオン性の界面活性剤、アニオン性の界面活性剤、ノニオン性の界面活性剤などが挙げられ、界面活性剤は、1種のみ用いても、2種以上を併用してもよい。
【0056】
これらの界面活性剤は、光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーおよび白色顔料に応じて、選択されることが、好ましい。たとえば、白色顔料が酸性を有する場合には、カチオン性の界面活性剤を、塩基性を有する場合には、アニオン性の界面活性剤を選択し、かつ、光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーと互いに相溶性のある界面活性剤を選択することが好ましい。
【0057】
界面活性剤は、このようにして選択されるが、アニオン性の界面活性剤であるアニオン性高分子活性剤であることがとくに好ましい。アニオン性高分子活性剤が樹脂組成物に含まれている場合には、白色顔料を樹脂組成物に、より一層、均一に分散させることができ、下地層の表面のレベリング性を、より一層、向上させることが可能になる。このようなアニオン性高分子界面活性剤は、たとえば、サンノプコ株式会社のノプコスパース 44−C(商品名)、東邦化学株式会社のRE610(商品名)、日本油脂株式会社製のHKM−50A(商品名)、日本油脂株式会社のAAB−0851(商品名)などが挙げられる。
【0058】
界面活性剤の含有量は、その種類などに応じて、樹脂組成物が所望の粘度を有するように適宜設定されればよいが、界面活性剤が、100質量部の光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーに対して、0.01質量部ないし5質量部の割合で樹脂組成物に含まれていることが好ましく、0.1質量部ないし2質量部の割合で樹脂組成物に含まれていることがさらに好ましい。界面活性剤が0.01質量部ないし5質量部の割合で樹脂組成物に含まれている場合には、白色顔料を樹脂組成物に、より一層、均一に分散させることができ、下地層の表面のレベリング性を、より一層、向上させることが可能になる。
【0059】
本発明の樹脂組成物は、光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマー、白色顔料および界面活性剤に加えて、必要に応じて、光重合開始剤、光重合開始助剤、帯電防止剤、重合禁止剤、インク定着剤、酸化防止剤、消泡剤、染料固着剤、顔料、増粘剤、pH調整剤、流動変性剤、抑泡剤、剥離剤、浸透剤、蛍光増白剤などの添加剤などを含んでいてもよい。
【0060】
光重合開始剤としては、とくに限定されるものではないが、たとえば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどの無色で黄変性を有していないものが好ましく用いられる。これらの光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
光重合開始助剤としては、とくに限定されるものではないが、たとえば、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、または、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルなどのアミン類が好ましく用いられる。これらの光重合開始助剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0062】
本発明の樹脂組成物は、スピンコーティング法によって塗布されるのに適した粘度を有するため、通常は、溶剤などによって、希釈されずに用いられるが、必要に応じて、溶剤などを用いて、本発明の樹脂組成物を希釈してもよい。このとき使用される溶剤としては、とくに限定されるものではないが、たとえば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、カルビトール系溶剤、セロソルブ系溶剤、高級脂肪酸エステル系溶剤などが挙げられる。
【0063】
本発明の樹脂組成物は、光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマー、白色顔料および界面活性剤、必要に応じて、添加剤などを、たとえば、高速分散攪拌機などの攪拌機、ホモゲナイザーなどの乳化分散機などの分散機を用いて、各成分を均一になるまで、攪拌または分散されて、調製される。
【0064】
このようにして調製された本発明の樹脂組成物は、25℃において、100mPa・sないし2,000mPa・sの粘度を有する。したがって、下地層の表面に形成されたインク受容層上に、インクジェットプリンタなどを用いて、画像を印刷したときには、印刷された画像の透明感、光沢感が高く、写真画質に匹敵するような所望の高い画質で画像を印刷することが可能になる。
【0065】
本発明の樹脂組成物は、光記録媒体のインク受容層の下地層を形成するための下地層形成用樹脂組成物として、好ましく用いられる。
【0066】
以下、添付図面に基づいて、本発明の樹脂組成物によって形成された下地層を備えた光記録媒体につき、詳細に説明を加える。
【0067】
図1は、本発明の樹脂組成物によって形成された下地層を備えた光記録媒体10の外観を示す一部切り欠き略斜視図であり、図2は、図1のAで示された部分の略拡大断面図である。
【0068】
図1に示されるように、光記録媒体10は、円盤状に形成され、120mmの外径と、約1.2mmの厚さを有している。
【0069】
図2に示されるように、光記録媒体10は、書き換え型の光記録媒体として構成され、光透過性を有する基板11と、情報層12と、保護層13と、接着層14と、ダミー基板15とを、この順に備えている。
【0070】
本実施態様においては、レーザビームLは、基板11に照射され、基板11の表面によって、光入射面11aが構成されている。
【0071】
図2に示されるように、ダミー基板15の表面には、下地層16が形成され、さらに、下地層16の表面には、インク受容層17が形成されている。
【0072】
基板11は、光記録媒体10の機械的強度を確保する機能を有し、約0.6mmの厚さを有している。基板11の情報層12側の表面には、レーザビームLのガイドトラックとして機能するグルーブ(図示せず)およびランド(図示せず)が、交互に形成されている。
【0073】
基板11を形成するための材料としては、レーザビームLの波長領域において光透過率が十分に高い材料であれば、とくに限定されるものではなく、たとえば、ポリカーボネート樹脂によって、形成される。
【0074】
情報層12は、データが記録される層であり、本実施態様においては、相変化材料を含む記録膜(図示せず)と、レーザビームLを反射する反射膜(図示せず)を備えている。
【0075】
保護層13は、情報層12を物理的および化学的に保護する機能を有している。保護層13を形成するための材料としては、情報層12を物理的および化学的に保護することができれば、とくに限定されるものではなく、たとえば、アクリル系の紫外線硬化型樹脂によって、形成される。
【0076】
接着層14は、基板11、情報層12および保護層13からなる積層体と、ダミー基板15とを接着するための層であり、たとえば、紫外線硬化型接着剤によって、形成される。
【0077】
ダミー基板15は、光記録媒体10に求められる厚さ(約1.2mm)を確保するための支持体として、機能し、約0.6mmの厚さを有している。ダミー基板15を形成するための材料は、とくに限定されるものではないが、たとえば、ポリカーボネート樹脂によって、形成される。
【0078】
下地層16は、インク受容層17に印刷された画像の透明感、光沢感を向上させ、品質をさらに向上させる機能を有し、0.5μmないし10μmの厚さを有していることが好ましく、1μmないし8μmの厚さを有していることがとくに好ましい。下地層16の厚さが0.5μm未満の場合には、十分な白色度を維持することが困難であることがあり、下地層16の厚さが10μmを越えている場合には、紫外線または電子線を照射して、樹脂組成物を硬化させる際に、硬化収縮が大きくなるため、光記録媒体10の平面度を維持することが困難になることがある。
【0079】
本実施態様においては、下地層16は、スピンコーティング法によって、本発明の樹脂組成物で、形成されている。スピンコーティング法によって下地層16を形成する方法は、とくに限定されるものではないが、たとえば、ダミー基板15の表面に、樹脂組成物を、スピンコーティング法によって塗布して、塗膜を形成し、塗膜に紫外線または電子線を照射して、塗膜を硬化させることによって、下地層16を形成することが好ましい。
【0080】
本発明において、ダミー基板15の表面に、樹脂組成物を、スピンコーティング法によって塗布するときの条件は、とくに限定されるものではない。
【0081】
樹脂組成物の塗布量は、とくに限定されるものではないが、0.5μmないし10μmの厚さを有する下地層16が形成されるように、樹脂組成物の塗布量を決定することが好ましい。
【0082】
また、本発明において、紫外線または電子線を樹脂組成物に照射する条件は、とくに限定されるものではなく、空気中または、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で、常温(25℃)ないし約100℃の温度下で、樹脂組成物が硬化するのに十分な量の紫外線または電子線が照射されればよく、また、紫外線または電子線は、2回または3回以上に分けて、樹脂組成物に照射されてもよい。
【0083】
このように、下地層16は、スピンコーティング法によって、本発明の樹脂組成物で、形成されているため、形成された下地層16の表面に、メッシュ跡やうねりなどが発生することを効果的に防止して、下地層16の表面平滑性を、より一層、向上させることができるから、下地層16の表面に形成されたインク受容層17上に、インクジェットプリンタなどを用いて、画像を印刷したときには、印刷された画像などの透明感、光沢感が高く、写真画質に匹敵するような所望の高い画質で画像を印刷することが可能になる。
【0084】
インク受容層17は、インクジェットプリンタなどのインクや染料を受容する機能を有し、インク受容層形成用樹脂組成物によって、10μmないし20μmの厚さに形成されている。
【0085】
インク受容層17を形成するためのインク受容層形成用樹脂組成物は、とくに限定されるものではないが、たとえば、ポリビニルアルコールなどの親水性樹脂などが挙げられる。
【0086】
インク受容層17を形成する方法は、とくに限定されるものではないが、たとえば、下地層16の表面に、インク受容層形成用樹脂組成物を、スピンコーティング法などによって塗布して、形成することができる。
【0087】
インク受容層17の表面17aには、インクジェットプリンタなどを用いて、画像などが印刷される。インク受容層17は、高い表面平滑性を有する下地層16の表面に形成されているため、その表面17aもまた平滑性が高くなり、したがって、下地層16の表面に形成されたインク受容層17の表面17a上に、インクジェットプリンタなどを用いて、画像などを印刷したときには、印刷された画像の透明感、光沢感が高く、写真画質に匹敵するような所望の高い画質で画像などを印刷することが可能になる。
【0088】
インク受容層17に、画像などを印刷する際に使用される水性のインクや染料は、とくに限定されるものではなく、インクジェットプリンタに使用される水性インクの他、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、透写版印刷などに使用されるインクや染料、ペンなどに使用されるインクや染料が挙げられる。
【0089】
以上のように構成された光記録媒体10においては、光入射面11aに、たとえば、650nm程度の波長を有するレーザビームLが照射されて、情報層12にデータが記録され、情報層12に記録されたデータが再生される。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の効果をより明瞭なものとするため、実施例を掲げる。
【0091】
まず、射出成型法により、約0.6mmの厚さと、約120mmの外径を有し、表面にグルーブおよびランド(トラックピッチ(グルーブのピッチ)=約0.74μm)が形成されたポリカーボネート樹脂からなるディスク状の基板を作製した。
【0092】
次いで、同様にして、射出成型法により、約0.6mmの厚さと、約120mmの外径を有し、表面にグルーブおよびランドが形成されていないポリカーボネート樹脂からなるディスク状のダミー基板を作製した。
【0093】
こうして得られた基板を、スピンコーティング装置にセットし、回転させながら、グルーブおよびランドが形成されている側の基板の表面に、記録膜を形成した。
【0094】
さらに、記録膜が形成された基板をスパッタリング装置にセットし、記録膜の表面に、厚さ約150nmの反射膜を形成し、記録膜と反射膜とからなる情報層を形成した。
【0095】
次いで、記録膜と反射膜とからなる情報層が形成された基板を再び、スピンコーティング放置にセットし、回転させながら、反射膜上に、紫外線硬化型アクリル樹脂を滴下して、塗膜を形成し、塗膜に紫外線を照射して、硬化させ、保護層を形成した。さらに、保護層上に、紫外線硬化型接着剤を滴下して、塗膜を形成した。
【0096】
次いで、形成された塗膜の表面に、ダミー基板を貼り合わせ、ダミー基板側から紫外線を照射して、塗膜を硬化させて、接着層を形成し、基板、記録膜、反射膜、保護層、接着層およびダミー基板からなる積層体を作製した。
【0097】
次いで、光重合性オリゴマー(大日本インキ化学工業株式会社製:商品名「TD1000」、25℃における粘度350mPa・s)100質量部、酸化チタン(白色顔料、平均粒径0.2μm、屈折率n2.5、堺化学工業株式会社製:商品名「R−21」)15質量部、および、アニオン性高分子活性剤(界面活性剤、日本油脂株式会社製:商品名「AAB−0851」)0.3質量部を、混合して、しばらく、攪拌し、ゴーリン社製のホモゲナイザー15TR(商品名)を用いて、4,000PSIで、室温(25℃)、大気中で、均一に分散させて、樹脂組成物を調製した。
【0098】
こうして得られた樹脂組成物の粘度を、レオロジ株式会社製の粘度計「MR300」(商品名)を用いて、25℃で、測定したところ、1,500mPa・sであった。
【0099】
次いで、積層体を、ダミー基板が上になるように、再度、スピンコーティング放置にセットし、回転させながら、ダミー基板上の中心部に、硬化後の厚さが3.0μmとなるように、上述のようにして調製した5gの樹脂組成物を吐出して、2,500rpmで、10秒間スピンコーティングして、樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成した。
【0100】
こうして形成した塗膜に、空気中、25℃で、160W/cmの紫外線を照射して、塗膜を硬化させ、インク受容層の下地層を形成した。
【0101】
次いで、ポリビニルアルコール(親水性紫外線硬化性樹脂、クラレ株式会社製:商品名「PVA117」)10質量部、および、純水100質量部を、混合して、しばらく、攪拌し、ゴーリン社製のホモゲナイザー15TR(商品名)を用いて、4,000PSIで、室温(25℃)、大気中で、均一に分散させて、インク受容層形成用樹脂組成物を調製した。
【0102】
次いで、下地層が形成された積層体を、下地層が上になるように、再度、スピンコーティング放置にセットし、回転させながら、下地層の中心部に、乾燥後の厚さが10μmとなるように、上述のようにして調製した5gのインク受容層形成用樹脂組成物を吐出して、300rpmで、10秒間スピンコーティングして、インク受容層形成用樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成した。
【0103】
こうして形成した塗膜に、空気中、25℃で、160W/cmの紫外線を照射して、塗膜を硬化させ、インク受容層を形成した。
【0104】
こうして、DVD型の光記録媒体サンプル#1を作製した。
【0105】
次いで、光重合性オリゴマー(大日本インキ化学工業株式会社製:商品名「TD1000」)に代えて、光重合性オリゴマー(大日本インキ化学工業株式会社製:商品名「SD367」、25℃における粘度89mPa・s)を用いた点を除き、光記録媒体サンプル#1と同様にして、樹脂組成物を調製して、DVD型の光記録媒体サンプル#2を作製した。
【0106】
樹脂組成物の粘度を、光記録媒体サンプル#1と同様にして、測定したところ、800mPa・sであった。
【0107】
次いで、酸化チタン(白色顔料、平均粒径0.2μm、屈折率n2.5、堺化学工業株式会社製:商品名「R−21」)に代えて、酸化チタン(白色顔料、平均粒径0.15μm、屈折率n2.5、堺化学工業株式会社製:商品名「A−190」)を用いた点を除き、光記録媒体サンプル#1と同様にして、樹脂組成物を調製して、DVD型の光記録媒体サンプル#3を作製した。
【0108】
樹脂組成物の粘度を、光記録媒体サンプル#1と同様にして、測定したところ、1,650mPa・sであった。
【0109】
次いで、光記録媒体サンプル#1と同様にして、基板、記録膜、反射膜、保護層、接着層およびダミー基板からなる積層体を作製した。
【0110】
次いで、#420番のスクリーンメッシュを用いたスクリーン印刷によって、積層体のダミー基板の表面に、紫外線硬化性樹脂(大日精化工業株式会社製:商品名「セイカビームSCR−VID F29白」、25℃における粘度は、16,000mPa・s)を、約10μmの厚さに塗布して、塗膜を形成し、塗膜に、紫外線を照射して、塗膜を硬化させ、下地層を形成した。スクリーン印刷によって、紫外線硬化性樹脂を塗布してから、紫外線を照射するまでの時間は1分であった。
【0111】
次いで、光記録媒体サンプル#1と同様にして、インク受容層を形成し、DVD型の光記録媒体比較サンプル#1を作製した。
【0112】
次いで、スクリーン印刷に代えて、スピンコーティング法によって、紫外線硬化性樹脂を塗布した点を除き、光記録媒体比較サンプル#1と同様にして、DVD型の光記録媒体比較サンプル#2を作製した。
【0113】
こうして作製した光記録媒体サンプル#1ないし#3ならびに光記録媒体比較サンプル#1および#2の下地層の表面平滑性を、それぞれ、インク受容を介して、目視にて、評価した。
【0114】
その結果、光記録媒体サンプル#1ないし#3の下地層は、いずれも、うねりなどの起伏が認められず、きわめて高い表面平滑性を有していることが判明した。これに対して、光記録媒体比較サンプル#1の下地層は、スクリーンのメッシュ跡が残り、それによって、うねりが発生しており、表面平滑性が低かった。また、光記録媒体比較サンプル#2は、紫外線硬化性樹脂の25℃における粘度は16,000mPa・sであり、スピンコーティング法によって、均一に塗膜を形成することが困難であり、下地層の表面平滑性はきわめて低かった。
【0115】
次いで、光記録媒体サンプル#1ないし#3ならびに光記録媒体比較サンプル#1および#2を、エプソン株式会社製のインクジェットプリンタ「カラリオPM−G800(染料インク使用、解像度1440dpi)」(商品名)にセットし、高画質対応CD/DVDの設定条件で、各サンプルのインク受容層に、画像を印刷し、光記録媒体サンプル#1ないし#3ならびに光記録媒体比較サンプル#1および#2に印刷された画像を、目視にて、評価した。
【0116】
その結果、光記録媒体サンプル#1ないし#3は、いずれも、印刷された画像の透明感、光沢感がきわめて高く、写真画質に匹敵するようなきわめて高い画質を有していたが、光記録媒体比較サンプル#1は、印刷された画像の透明感、光沢感および画質のいずれもが低く、光記録媒体比較サンプル#2は、印刷された画像の透明感、光沢感および画質のいずれもがきわめて低かった。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録媒体の外観を示す一部切り欠き略斜視図である。
【図2】図2は、図1のAで示された部分の略拡大断面図である。
【符号の説明】
【0118】
10 光記録媒体
11 基板
12 情報層
13 保護層
14 接着層
15 ダミー基板
16 下地層
17 インク受容層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーと、白色顔料と、界面活性剤とを含み、25℃において、100mPa・sないし2,000mPa・sの粘度を有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記白色顔料が、0.1μmないし1.0μmの平均粒径を有する請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、100質量部の前記光重合性オリゴマーまたは光重合性モノマーに対して、0.01質量部ないし5質量部の割合で含まれている請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
少なくとも、光透過性を有し、レーザビームが透過する第一の樹脂層と、第二の樹脂層と、前記第一の樹脂層と前記第二の樹脂層との間に、情報層とを備えた光記録媒体に、インク受容層の下地層を形成するインク受容層の下地層の形成方法であって、前記第二の樹脂層の表面に、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の樹脂組成物を、スピンコーティング法によって塗布して、塗膜を形成し、前記塗膜に紫外線または電子線を照射して、前記塗膜を硬化させて、インク受容層の下地層を形成することを特徴とするインク受容層の下地層の形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−44117(P2006−44117A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230029(P2004−230029)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】