説明

樹脂組成物の製造方法、樹脂組成物および半導体装置

【課題】半導体素子を封止する際の流動性および硬化性に優れた樹脂組成物を得ることができる樹脂組成物の製造方法、樹脂組成物および半導体装置を提供すること。
【解決手段】本発明の樹脂組成物の製造方法は、回路基板110上に設置された半導体チップ120を封止する樹脂組成物であって、その封止の際に、回路基板110と半導体チップ120との間の隙間にも充填される樹脂組成物を製造する製造方法であって、硬化性樹脂の粉末材料および24μmを超える粒子の含有率が1質量%以下である無機充填材の粉末材料を含む原材料を粉砕する粉砕工程と、粉砕後の前記原材料を混練する混練工程とを有し、前記混練工程において、粉砕後の前記原材料1kgあたりに与える混練エネルギーを0.01〜0.5kWh/kgとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の製造方法、樹脂組成物および半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化および軽薄短小化の要求に伴い、これらの電子機器に使用される半導体パッケージも、従来にも増して、小型化かつ多ピン化が進んできている。
【0003】
このような要求に対応する半導体パッケージとして、回路基板と、回路基板上に金属バンプを介して電気的に接続された半導体チップ(半導体素子)とを有し、金属バンプで接合された回路基板と半導体チップ(半導体素子)との隙間(ギャップ)にアンダーフィル材が形成され、さらに、樹脂組成物で構成されるモールド材により封止(被覆)されている所謂フリップチップ型パッケージを備える半導体装置が広く使用されている。さらに、前記アンダーフィル材とモールド材とを別部材とせずに、モールド材により半導体チップ(半導体素子)を封止(被覆)する際に、樹脂組成物が、回路基板と半導体チップ(半導体素子)との間の隙間(ギャップ)にも充填され、一括封止による補強がなされるフリップチップ型パッケージを備える半導体装置が検討されている(例えば、特許文献1参照)。本発明では前記のようにアンダーフィル材とモールド材とを別部材とせずに、モールド材により半導体チップ(半導体素子)を封止(被覆)する際に、樹脂組成物が、回路基板と半導体チップ(半導体素子)との間の隙間(ギャップ)にも充填されることを「一括封止」と呼ぶ。このような一括封止材(モールドアンダーフィル材)を適用することにより、経済的に信頼性の高いフリップチップ型パッケージを備える半導体装置が得られる。
【0004】
また、樹脂組成物は、硬化性樹脂および無機充填材等を有しており、前記一括封止材(モールドアンダーフィル材)は、その樹脂組成物を、例えば、トランスファー成形等により成形して得られる。樹脂組成物が無機充填材を含むことにより、その樹脂組成物と半導体チップとの熱膨張係数差を小さくすることができ、より信頼性の高い半導体パッケージを得ることができる。
【0005】
ところで、樹脂組成物の製造工程には、硬化性樹脂の粉末材料および無機充填材の粉末材料を含む原材料を混練する混練工程があり、その原材料の混練は、1軸型混練押出機、2軸型混練押出機等の押出混練機や、ミキシングロール等のロール式混練機等の混練機で行われている。
【0006】
また、半導体パッケージの小型化、多ピン化により、回路基板側と半導体チップ側とを接続する金属バンプのピッチが小さくなり、これにより、基板と半導体チップとの間の間隙距離が小さくなる。このため、基板と半導体チップとの間に樹脂組成物を充填できるように、微細な無機充填材を用いる必要がある。
【0007】
しかしながら、従来の樹脂組成物の製造方法では、原材料に粗粒をカットした微細な無機充填材が含まれていると、混練工程で十分に混練することができず、そのため、樹脂組成物により半導体チップを封止する際の樹脂組成物の流動性および硬化性が悪化してしまう。これにより、樹脂組成物により半導体チップを封止する際の樹脂組成物の成形性が低下し、また、半導体チップと回路基板との間に樹脂組成物が充填されない部位が生じ、強度が不十分となり、信頼性が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−307645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、半導体素子を封止する際の流動性および硬化性に優れた樹脂組成物を得ることができる樹脂組成物の製造方法、樹脂組成物および半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)〜(9)の本発明により達成される。
(1) 基板上に設置された半導体素子を封止する樹脂組成物であって、その封止の際に、前記基板と前記半導体素子との間の隙間にも充填される樹脂組成物を製造する製造方法であって、
硬化性樹脂の粉末材料および24μmを超える粒子の含有率が1質量%以下である無機充填材の粉末材料を含む原材料を粉砕する粉砕工程と、
粉砕後の前記原材料を混練する混練工程とを有し、
前記混練工程において、粉砕後の前記原材料1kgあたりに与える混練エネルギーを0.01〜0.5kWh/kgとすることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【0011】
(2) 粉砕後の前記原材料の平均粒径は、1〜100μmである上記(1)に記載の樹脂組成物の製造方法。
【0012】
(3) 粉砕後の前記原材料の粒度分布は、粒径250μm以上が2質量%以下、粒径150μm以上、250μm未満が15質量%以下、粒径150μm未満が80質量%以上である上記(1)または(2)に記載の樹脂組成物の製造方法。
【0013】
(4) 粉砕後の前記原材料における前記無機充填材の平均粒径は、0.1〜30μmである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【0014】
(5) 前記原材料は、硬化促進剤を含み、
前記硬化性樹脂は、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂系硬化剤を含む上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【0015】
(6) 前記粉砕工程では、気流式の粉砕装置を用いる上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【0016】
(7) 前記混練工程では、2軸型混練押出機を用いる上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【0017】
(8) 上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法により製造されたことを特徴とする樹脂組成物。
【0018】
(9) 基板と、
基板上に設置された半導体素子と、
前記半導体素子を封止し、その封止の際に、前記基板と前記半導体素子との間の隙間にも充填された上記(8)に記載の樹脂組成物とを有することを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、粗粒をカットした微細な無機充填材を含む場合でも、半導体素子を封止する際の流動性および硬化性に優れた樹脂組成物を提供することができる。これにより、樹脂組成物により半導体素子を封止する際の樹脂組成物の成形性が向上し、また、半導体素子と基板との間に樹脂組成物を確実に充填することができ、製品の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の樹脂組成物の製造方法の実施形態における樹脂組成物の製造工程の一例を示す図である。
【図2】本発明の樹脂組成物の製造方法の実施形態において用いる粉砕装置の構成例を摸式的に示す側面図である。
【図3】図2に示す粉砕装置の粉砕部の内部を摸式的に示す平面図である。
【図4】図2に示す粉砕装置の粉砕部のチャンバを示す断面図である。
【図5】本発明の半導体装置の実施形態を摸式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の樹脂組成物の製造方法、樹脂組成物および半導体装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の樹脂組成物の製造方法の実施形態における樹脂組成物の製造工程の一例を示す図、図2は、本発明の樹脂組成物の製造方法の実施形態において用いる粉砕装置の構成例を摸式的に示す側面図、図3は、図2に示す粉砕装置の粉砕部の内部を摸式的に示す平面図、図4は、図2に示す粉砕装置の粉砕部のチャンバを示す断面図、図5は、本発明の半導体装置の実施形態を摸式的に示す断面図である。
【0023】
以下では、図2および図4中の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」として説明を行う。なお、図2では、ノズル71等の記載は省略され、また、図3では、供給部73等の記載は省略され、また、図4では、ノズル71、72、供給部73等の記載は省略されている。
【0024】
まずは、原材料から半導体チップ(半導体素子)の封止(被覆)用の樹脂組成物を製造するまでの製造工程の全体を説明する。
【0025】
まず、樹脂組成物の原材料である各材料を用意する。
原材料は、硬化性樹脂と、無機充填材(無機粒子)とを有し、さらに必要に応じて、硬化促進剤と、カップリング剤等とを有している。硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂等が挙げられ、硬化剤としてフェノール樹脂系硬化剤を用いたエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラキノン構造を有するエポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。これらのエポキシ樹脂は、得られる樹脂組成物の耐湿信頼性の観点から、イオン性不純物であるNaイオンやClイオンを極力含まないことが好ましい。また、樹脂組成物の硬化性の観点から、エポキシ樹脂(B)のエポキシ当量は、100g/eq以上、500g/eq以下であることが好ましい。
【0027】
本発明の樹脂組成物中のエポキシ樹脂の配合割合の下限値は、樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは7質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有する。また、樹脂組成物中のエポキシ樹脂(B)の上限値は、樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な耐半田性等の信頼性が得ることができる。
【0028】
フェノール樹脂系硬化剤としては、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂などの変性フェノール樹脂;フェニレン骨格又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール化合物、さらには前記ビスフェノール化合物をノボラック化したものなどが挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらのうち、硬化性の点から水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下のものが好ましい。
【0029】
本発明の樹脂組成物中のフェノール樹脂の配合割合の下限値については、特に限定されないが、樹脂組成物の全質量に対して、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。また、フェノール樹脂(A)全体の配合割合の上限値についても、特に限定されないが、全樹脂組成物中に、25質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、良好な耐半田性等の信頼性を得ることができる。
【0030】
なお、フェノール樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)とは、全エポキシ樹脂(B)のエポキシ基数(EP)と、全フェノール樹脂(A)のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が、0.8以上、1.3以下となるように配合することが好ましい。当量比が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物を成形する際、十分な硬化特性を得ることができる。
【0031】
無機充填材としては、例えば、半導体封止材料に係る当業者に公知の無機充填材を使用することができる。例えば、溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミなどが挙げられる。
【0032】
硬化促進剤としては、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂、硬化剤としてフェノール樹脂系硬化剤を使用する場合、エポキシ樹脂のエポキシ基とフェノール性水酸基を2個以上含む化合物のフェノール性水酸基との反応を促進するものであればよく、一般の半導体封止用のエポキシ樹脂組成物に使用されているものを利用することができる。具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物などのリン原子含有硬化促進剤;ベンジルジメチルアミンなどの3級アミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、2−メチルイミダゾールなどのアミジン類、さらには前記3級アミンやアミジンの4級塩などの窒素原子含有硬化促進剤が挙げられ、これらのうち、リン原子含有硬化促進剤が好ましい硬化性を得ることができる。流動性と硬化性とのバランスの観点から、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物がより好ましい。流動性という点を重視する場合にはテトラ置換ホスホニウム化合物が特に好ましく、また樹脂組成物の硬化物熱時低弾性率という点を重視する場合にはホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が特に好ましく、また潜伏的硬化性という点を重視する場合にはホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が特に好ましい。
【0033】
本発明の樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィンなどの1級ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィンなどの2級ホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの3級ホスフィンが挙げられる。
【0034】
本発明の樹脂組成物で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(1)で表される化合物などが挙げられる。
【0035】
【化1】

【0036】
ただし、上記一般式(1)において、Pはリン原子を表す。R3、R4、R5及びR6は芳香族基又はアルキル基を表す。Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。x、yは1〜3の整数、zは0〜3の整数であり、かつx=yである。
【0037】
一般式(1)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(1)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(1)で表される化合物において、リン原子に結合するR3、R4、R5及びR6がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。本発明における前記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどの単環式フェノール類、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、アントラキノールなどの縮合多環式フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類、フェニルフェノール、ビフェノールなどの多環式フェノール類などが例示される。
【0038】
本発明の樹脂組成物で用いることができるホスホベタイン化合物としては、例えば下記一般式(2)で表される化合物などが挙げられる。
【0039】
【化2】

【0040】
ただし、上記一般式(2)において、X1は炭素数1〜3のアルキル基、Y1はヒドロキシル基を表す。iは0〜5の整数であり、jは0〜4の整数である。
【0041】
一般式(2)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、3級ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
【0042】
本発明の樹脂組成物で用いることができるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(3)で表される化合物などが挙げられる。
【0043】
【化3】

【0044】
ただし、上記一般式(3)において、Pはリン原子を表す。R7、R8及びR9は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R10、R11及びR12は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R10とR11が結合して環状構造となっていてもよい。
【0045】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィンなどの芳香環に無置換又はアルキル基、アルコキシル基などの置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基などの置換基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0046】
またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0047】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機3級ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0048】
一般式(3)で表される化合物において、リン原子に結合するR7、R8及びR9がフェニル基であり、かつR10、R11及びR12が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低く維持できる点で好ましい。
【0049】
本発明の樹脂組成物で用いることができるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(4)で表される化合物などが挙げられる。
【0050】
【化4】

【0051】
ただし、上記一般式(4)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R13、R14、R15及びR16は、それぞれ、芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中X2は、基Y2及びY3と結合する有機基である。式中X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。Y4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。X2、及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。Z1は芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。
【0052】
一般式(4)において、R13、R14、R15及びR16としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基及びシクロヘキシル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基などの置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0053】
また、一般式(4)において、X2は、Y2及びY3と結合する有機基である。同様に、X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にY4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基X2及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(4)中の−Y2−X2−Y3−、及び−Y4−X3−Y5−で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、好ましくはカルボキシシル基および/または水酸基を2個以上有する有機酸が例示されるが、より好ましくは芳香環を構成する2個以上の炭素に各々カルボキシル基または水酸基を有する芳香族化合物、さらに好ましくは芳香環を構成する隣接する少なくとも2個の炭素に水酸基を有する芳香族化合物が例示される。
【0054】
プロトン供与体の具体例としては、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトール、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール及びグリセリンなどが挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0055】
また、一般式(4)中のZ1は、芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基などの脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基及びビフェニル基などの芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基及びビニル基などの反応性置換基などが挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基が一般式(4)の熱安定性が向上するという点で、より好ましい。
【0056】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシランなどのシラン化合物、2,3−ジヒドロキシナフタレンなどのプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド−メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイドなどのテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0057】
本発明の樹脂組成物に用いることができる硬化促進剤(D)の配合割合は、全樹脂組成物中0.1質量%以上、1質量%以下であることが好ましい。硬化促進剤(D)の配合量が上記範囲内であると、充分な硬化性、流動性を得ることができる。
【0058】
カップリング剤としては、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシランなどのシラン化合物等が挙げられ、エポキシ樹脂等と無機充填材との間で反応又は作用し、エポキシ樹脂等と無機充填材の界面強度を向上させるものであればよい。
【0059】
エポキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0060】
また、アミノシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−6−(アミノヘキシル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−(トリメトキシシリルプロピル)−1,3−ベンゼンジメタナンなどが挙げられる。アミノシランの1級アミノ部位をケトン又はアルデヒドを反応させて保護した潜在性アミノシランカップリング剤として用いてもよい。また、ウレイドシランとしては、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。また、メルカプトシランとしては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランのほか、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのような熱分解することによってメルカプトシランカップリング剤と同様の機能を発現するシランカップリング剤など、が挙げられる。またこれらのシランカップリング剤は予め加水分解反応させたものを配合してもよい。これらのシランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0061】
本発明の樹脂組成物に用いることができるカップリング剤の配合割合の下限値としては、樹脂組成物中0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。カップリング剤の配合割合の下限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂と無機充填材との界面強度が低下することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、カップリング剤の上限値としては、全樹脂組成物中1.0質量%以下が好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。カップリング剤の配合割合の上限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂(B)と無機充填材(C)との界面強度が低下することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、カップリング剤の配合割合が上記範囲内であれば、樹脂組成物の硬化物の吸水性が増大することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0062】
なお、原材料は、前記材料のうち所定の材料が省略されていてもよく、また、前記以外の材料を含んでいてもよい。他の材料としては、例えば、着色剤、離型剤、低応力剤、難燃剤等が挙げられる。
【0063】
難燃剤としては、例えば、臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、ノンハロ・ノンアンチモン系等が挙げられる。ノンハロ・ノンアンチモン系の難燃剤としては、例えば、有機燐、金属水和物、窒素含有樹脂等が挙げられる。
【0064】
(粉砕(第1の粉砕))
図1に示すように、粉砕装置により、硬化性樹脂の粉末材料および無機充填材の粉末材料を含む原材料を所定の粒度分布となるように粉砕(微粉砕)する。この粉砕工程では、主に、無機充填材以外の原材料が粉砕される。なお、原材料に無機充填材が含まれることにより、粉砕装置の壁面へ原材料が付着するのを抑えることができ、また、比重が重く、容易には溶融しない無機充填材とその他の成分が衝突することで容易かつ確実に、原材料を微細に粉砕することができる。
【0065】
粉砕装置としては、例えば、連続式回転ボールミル、気流式粉砕機(気流式の粉砕装置)等を用いることができるが、気流式粉砕機を用いることが好ましい。本実施形態では、後述する気流式の粉砕装置1を用いる。
【0066】
なお、無機充填材の全部または一部について、表面処理を施してもよい。この表面処理としては、例えば、無機充填材の表面にカップリング剤等を付着させる。無機充填材の表面にカップリング剤を付着させることにより、硬化性樹脂と無機充填材とがなじみ易くなり、樹脂組成物により半導体素子を封止したときの樹脂組成物の強度が高くなり、また、硬化性樹脂と無機充填材との混合性が向上し、樹脂組成物中での無機充填材の分散が容易になる。
なお、この粉砕工程および粉砕装置1については、後に詳述する。
【0067】
(混練)
次に、混練装置により、前記粉砕後の原材料を混練する。この混練装置としては、例えば、1軸型混練押出機、2軸型混練押出機等の押出混練機や、ミキシングロール等のロール式混練機を用いることができるが、2軸型混練押出機を用いることが好ましい。本実施形態では、1軸型混練押出機、2軸型混練押出機を用いる事例にて説明する。なお、この混練工程については、後に詳述する。
【0068】
(脱気)
次に、必要に応じて脱気装置により、前記混練された樹脂組成物に対し脱気を行う。
【0069】
(シート化)
次に、シート化装置により、前記脱気した塊状の樹脂組成物をシート状に成形し、シート状の樹脂組成物を得る。このシート化装置としては、例えば、シーティングロール等を用いることができる。
【0070】
(冷却)
次に、冷却装置により、前記シート状の樹脂組成物を冷却する。これにより、樹脂組成物の粉砕を容易かつ確実に行うことができる。
【0071】
(粉砕(第2の粉砕))
次に、粉砕装置により、シート状の樹脂組成物を所定の粒度分布となるように粉砕し、粉末状の樹脂組成物を得る。この粉砕装置としては、例えば、ハンマーミル、石臼式磨砕機、ロールクラッシャー等を用いることができる。
【0072】
なお、顆粒状または粉末状の樹脂組成物を得る方法としては、上記のシート化工程、冷却工程、粉砕工程を経ずに、例えば、混練装置の出口に小径を有するダイスを設置して、ダイスから吐出される溶融状態の樹脂組成物を、カッター等で所定の長さに切断することにより顆粒状または粉末状の樹脂組成物を得るホットカット法に代表される造粒法を用いることもできる。この場合、ホットカット法等の造粒法により顆粒状または粉末状の樹脂組成物を得た後、樹脂組成物の温度があまり下がらないうちに脱気を行うことが好ましい。
【0073】
(タブレット化)
次に、タブレット状の成形体を製造する場合には成形体製造装置(打錠装置)により、前記粉末状(以下特に断らない場合顆粒状も粉末状の概念に含む)の樹脂組成物を圧縮成形し、成形体(圧縮体)である樹脂組成物を得ることができる。
【0074】
なお、樹脂組成物の製造方法においては、前記タブレット化工程を省略し、粉末状の樹脂組成物を完成体としてもよい。
【0075】
図5に示すように、この樹脂組成物は、例えば、半導体パッケージ(ICパッケージ)(半導体装置)100における半導体チップ(ICチップ)(半導体素子)120の封止に用いられる。樹脂組成物で半導体チップ120を封止するには、樹脂組成物を、例えばトランスファー成形等により成形し、封止材(封止部)140として半導体チップ120を封止する方法が挙げられる。
【0076】
すなわち、半導体パッケージ100は、回路基板(基板)110(図5では後述する封止材140と同じ寸法で記載しているが、寸法は適宜調整可能である)と、回路基板110上に金属バンプ(接続部)130を介して電気的に接続された半導体チップ120とを有しており、樹脂組成物で構成される封止材140により、半導体チップ120が封止されている。また、半導体チップ120を封止する際は、樹脂組成物が、回路基板110と半導体チップ120との間の隙間(ギャップ)にも充填され、その樹脂組成物で構成される封止材140により補強がなされる。
【0077】
ここで、樹脂組成物をトランスファー成形により成形して半導体チップ120を封止する際は、複数の半導体チップ120をまとめて封止するモールドアレイパッケージ(MAP)と呼ばれる方法を用いることが好ましい。この場合は、半導体チップ120を例えば行列状に並べて樹脂組成物で封止した後、個々に切り分ける。このような方法で複数の半導体チップ120をまとめて封止する場合は、半導体チップ120を1個ずつ封止する場合に比べて、樹脂組成物の流動性がさらに良好である必要がある。なお、半導体チップ120を1個ずつ封止してもよいことは、言うまでもない。
【0078】
また、トランスファー成形の際の金型温度は、160〜190℃程度であることが好ましく、樹脂組成物の注入圧力は、3〜12MPa程度であることが好ましい。また、トランスファー成形の際は、金型内を減圧することが好ましい。
【0079】
なお、樹脂組成物は、半導体チップ120と回路基板110との間の間隙距離(ギャップ長)Gが15〜100μm程度の場合に好適に用いることができ、20〜70
μm程度の場合により好適に用いることができる。
【0080】
次に、粉砕装置1について説明する。
なお、当該粉砕装置1は、一例であり、これに限定されるものではない。例えば、各寸法は、一例であり、他の寸法にしてもよい。
【0081】
図2に示す粉砕装置1は、樹脂組成物を製造する際の粉砕工程で使用される粉砕装置である。図2〜図4に示すように、粉砕装置1は、気流により、複数種の粉末材料を含む原材料を粉砕する気流式の粉砕装置であり、原材料を粉砕する粉砕部2と、冷却装置3と、高圧空気発生装置4と、粉砕された原材料を貯留する貯留部5とを備えている。
【0082】
粉砕部2は、円筒状(筒状)をなす部位を有するチャンバ6を備えており、このチャンバ6内において、原材料を粉砕するように構成されている。なお、粉砕の際は、チャンバ6において、空気(気体)の旋回流が生じている。
【0083】
チャンバ6の寸法は、特に限定されないが、チャンバ6の内径の平均値は、10〜50cm程度であることが好ましく、15〜30cm程度であることがより好ましい。なお、チャンバ6の内径は、図示の構成では上下方向に沿って一定であるが、これに限らず、上下方向に沿って変化していてもよい。
【0084】
チャンバ6の底部61には、粉砕された原材料を排出する出口62が形成されている。この出口62は、底部61の中央部に位置している。また、出口62の形状は、特に限定されないが、図示の構成では、円形をなしている。また、出口62の寸法は、特に限定されないが、その直径が3〜30cm程度であることが好ましく、7〜15cm程度であることがより好ましい。
【0085】
また、チャンバ6の底部61には、一端が出口62に連通し、他端が貯留部5に連通する管路(管体)64が設けられている。
【0086】
また、底部61の出口62の近傍には、その出口62の周囲を囲う壁部63が形成されている。この壁部63により、粉砕の際、原材料が不本意に出口62から排出してしまうことを防止することができる。
【0087】
壁部63は、筒状をなしており、図示の構成では、壁部63の内径は、上下方向に沿って一定であり、外径は、上側から下側に向かって漸増している。すなわち、壁部63の高さ(上下方向の長さ)は、外周側から内周側に向かって漸増している。また、壁部63は、側面視で、凹状に湾曲している。これにより、粉砕された原材料は、出口62に円滑に向かって移動することができる。
【0088】
また、チャンバ6の上部の出口62(管路64)に対応する位置には、突起部65が形成されている。この突起部65の先端(下端)は、図示の構成では、壁部63の上端(出口62)よりも上側に位置しているが、これに限らず、突起部65の先端が壁部63の上端よりも下側に位置していてもよく、また、突起部65の先端と壁部63の上端との上下方向の位置が一致していてもよい。
【0089】
なお、壁部63および突起部65の寸法は、それぞれ、特に限定されないが、壁部63の上端(出口62)から突起部65の先端(下端)までの長さLは、−10〜10mm程度であることが好ましく、−5〜1mm程度であることがより好ましい。
【0090】
前記長さLの符号の「−」は、突起部65の先端が壁部63の上端よりも下側に位置することを意味し、「+」は、突起部65の先端が壁部63の上端よりも上側に位置することを意味する。
【0091】
また、チャンバ6の側部(側面)には、後述する高圧空気発生装置4から送出された空気(気体)をそのチャンバ6内に噴出する複数のノズル(第1のノズル)71が設置されている。各ノズル71は、チャンバ6の周方向に沿って配置されている。隣り合う2つのノズル71の間の間隔(角度間隔)は、等しくてもよく、また、異なっていてもよいが、等しく設定されていることが好ましい。また、ノズル71は、平面視で、チャンバ6の半径(ノズル71の先端を通る半径)の方向に対して傾斜するように設置されている。なお、ノズル71の数は、特に限定されないが、5〜8程度であることが好ましい。
【0092】
前記各ノズル71および高圧空気発生装置4により、チャンバ6内に空気(気体)の旋回流を生じさせる旋回流生成手段の主要部が構成される。
【0093】
また、チャンバ6の側部には、高圧空気発生装置4から送出された空気により、原材料をそのチャンバ6内に噴出(導入)するノズル(第2のノズル)72が設置されている。ノズル72がチャンバ6の側部に設置されていることにより、そのノズル72からチャンバ6内に噴出した原材料は、瞬時に、空気の旋回流に乗り、旋回を開始することができる。
【0094】
チャンバ6の側部におけるノズル72の位置は、特に限定されないが、図示の構成では、隣り合う2つのノズル71の間に配置されている。また、ノズル72の上下方向の位置は、ノズル71と同じでもよく、また、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。また、ノズル72は、平面視で、チャンバ6の半径(ノズル72の先端を通る半径)の方向に対して傾斜するように設置されている。
【0095】
例えば、各ノズル71とノズル72とを含めたすべてのノズルは、等間隔(等角度間隔)に配置されている構成とすることができる。この場合は、ノズル72の隣に位置する2つのノズル71の間の間隔は、その他の隣り合う2つのノズル71の間の間隔の2倍になる。また、各ノズル71が等間隔(等角度間隔)に設置され、ノズル72が隣り合う2つのノズル71の中間位置に配置されている構成とすることもできる。粉砕効率という観点では、各ノズル71が等間隔(等角度間隔)に設置され、ノズル72が隣り合う2つのノズル71の中間位置に配置されている構成とすることが好ましい。
【0096】
また、ノズル72の上部には、ノズル72内に連通し、原材料を供給する筒状の供給部(供給手段)73が設置されている。供給部73の上側の端部(上端部)は、その内径が下側から上側に向かって漸増するテーパ状をなしている。また、供給部73の上端の開口(上端開口)は、供給口を構成しており、チャンバ6内の空気の旋回流の中心からずれた位置に配置されている。この供給部73から供給された原材料は、ノズル72からチャンバ6内に供給される。
【0097】
貯留部5は、貯留部5内の空気(気体)を排出する空気抜き部51を有している。この空気抜き部51は、図示の構成では、貯留部5の上部に設けられている。また、空気抜き部51には、空気(気体)を通過させ、原材料を通過させないフィルタが設けられている。そのフィルタとしては、例えば、濾布等を用いることができる。
【0098】
高圧空気発生装置4は、管路81を介して冷却装置3に接続され、冷却装置3は、途中で複数に分岐する管路82を介して前記粉砕部2の各ノズル71およびノズル72に接続されている。
【0099】
高圧空気発生装置4は、空気(気体)を圧縮して高圧の空気(圧縮空気)を送出する)装置であり、送出する空気の流量や圧力を調整し得るよう構成されている。また、高圧空気発生装置4は、送出する空気を乾燥させ、その湿度を低下させる機能を有し、送出する空気の湿度を調整し得るよう構成されている。この高圧空気発生装置4により、前記空気は、ノズル71および72から噴出される前(チャンバ6内に供給される前)に乾燥する。したがって、高圧空気発生装置4は、圧力調整手段および湿度調整手段の機能を有している。
【0100】
冷却装置3は、高圧空気発生装置4から送出された空気をノズル71および72から噴出される前(チャンバ6内に供給される前)に冷却する装置であり、その空気の温度を調整し得るよう構成されている。したがって、冷却装置3は、温度調整手段の機能を有している。この冷却装置3としては、例えば、水冷液体冷媒式の装置、気体冷媒式の装置等を用いることができる。
【0101】
次に、粉砕工程を説明する。
(粉砕工程(第1の粉砕工程))
この粉砕工程では、粉砕装置1により、原材料を所定の粒度分布となるように粉砕(微粉砕)する。すなわち、粉砕装置1により、硬化性樹脂(硬化剤を含んでもよい)および無機充填材等の複数種の粉末材料を含む原材料をさらに微細に粉砕し、所定の粒度分布の原材料を得る。これにより、混練工程において、硬化性樹脂が溶解し易くなり、原材料を容易かつ確実に混練することができ、半導体チップを封止する際の流動性および硬化性に優れた樹脂組成物を製造することができる。
【0102】
ここで、無機充填材は、粒度の細かいものが市販されているため、本工程において粉砕する必要はないが、原材料が無機充填材を含むことにより、粉砕装置1によりその原材料を粉砕する際、チャンバ6の内面に原材料が付着することを抑制することができ、また、比重が重く、容易には溶融しない無機充填材とその他の成分が衝突することで容易かつ確実に、原材料を微細に粉砕することができる。
【0103】
原材料中の無機充填材の含有率は、前記粉砕効率を考慮すると20〜90質量%程度であることが好ましく、50〜88質量%程度であることがより好ましい。
【0104】
この粉砕工程での原材料中の無機充填材の含有率と、最終的な製品(樹脂組成物)中の無機充填材の含有率とは、一致していてもよく、また、異なっていてもよい。なお、最終的な製品中の無機充填材の含有率は、樹脂組成物と半導体チップとの熱膨張係数差を小さくすることができ、より信頼性の高い半導体パッケージを得るために50〜90質量%程度であることが好ましく、75〜88質量%程度であることがより好ましい。
【0105】
また、チャンバ6内に供給する空気の圧力は、0.3MPa以上に設定することが好ましく、0.5〜0.8MPa程度に設定することがより好ましい。
【0106】
前記圧力が前記下限値未満であると、他の条件にもよるが、粉砕能力が不十分となり、原材料を微細に粉砕することができず、目標の粒度分布を得ることができない虞がある。また、前記圧力が大きすぎると、空気抜き部51の構造にもよるが、貯留部5内の内圧が上がり粉砕能力が低下するなどの不具合が生じる。
【0107】
また、チャンバ6内に供給する空気量は、1Nm/分(0℃、1気圧での空気量)以上に設定することが好ましく、3〜5Nm/分程度に設定することがより好ましい。
【0108】
前記空気量が前記下限値未満であると、チャンバ6の内径の平均値等の諸条件によっては、粉砕能力が不十分となり、原材料を微細に粉砕することができず、目標の粒度分布を得ることができない虞がある。また、前記流量が大きすぎると、空気抜き部51の構造にもよるが、貯留部5内の内圧が上がり粉砕能力が低下するなどの不具合が生じる。
【0109】
また、チャンバ6内に供給される空気の温度は、20℃以下に設定することが好ましく、15℃以下に設定することがより好ましく、0〜5℃程度に設定することがさらに好ましい。
【0110】
前記温度が前記上限値を超えると、他の条件にもよるが、粉砕の際に原材料がチャンバ6の内面に付着し、これにより収率が低下してしまう。また、前記温度が低すぎると、結露、吸湿による特性低下が起こる。
【0111】
また、チャンバ6内に供給される空気の湿度は、40%RH以下に設定することが好ましく、0〜15%RH程度に設定することがより好ましい。
【0112】
前記温度が前記上限値を超えると、他の条件にもよるが、粉砕の際に原材料が吸湿し、樹脂組成物の硬化性等の特性が低下し、成形性が悪化してしまう。
【0113】
なお、前記空気の旋回流の流量および湿度は、それぞれ、高圧空気発生装置4において、目標値に調整(設定)することができ、また、前記空気の温度は、冷却装置3において、目標値に調整(設定)することができる。
【0114】
原材料を粉砕する際は、高圧空気発生装置4および冷却装置3を作動させ、供給部73から原材料を供給する。
【0115】
高圧空気発生装置4からは、圧縮された高圧の空気(圧縮空気)が送出され、その空気は、冷却装置3で冷却され、各ノズル71およびノズル72からチャンバ6内に噴出する。これにより、チャンバ6においては、空気の旋回流が生じている。
【0116】
供給された原材料は、前記高圧空気発生装置4から送出された空気により、ノズル72からチャンバ6内に噴出(導入)され、そのチャンバ6内において、前記旋回流により旋回し、粒子同士が衝突することで粉砕される。そして、各粒子は、その質量(粒径)が減少するにつれて、チャンバ6の中心部に向かって集まり、壁部63を乗り越えて、出口62から排出され、管路64内を通り、貯留部5へ移送され、貯留される。
【0117】
一方、貯留部5内に流入した空気は、空気抜き部51から外部に排出される。このため、この粉砕装置1では、サイクロン方式の分気装置を設ける必要がなく、そのサイクロン方式の分気装置を設けないことにより、収率を向上させることができる。
【0118】
この粉砕工程を行うことにより、原材料は、微細に粉砕される。この場合、原材料の粒度分布は、粒径250μm以上が2質量%以下、粒径150μm以上、250μm未満が15質量%以下、粒径150μm未満が80質量%以上とすることが好ましく、粒径250μm以上が1質量%以下、粒径150μm以上、250μm未満が10質量%以下、粒径150μm未満が90質量%以上とすることがより好ましい。これにより、混練工程において、硬化性樹脂が溶融し易くなり、原材料を容易かつ確実に混練することができ、半導体チップを封止する際の流動性および硬化性に優れた樹脂組成物を製造することができる。
【0119】
また、粉砕後の原材料の平均粒径は、1〜100μm程度であることが好ましく、5〜50μm程度であることがより好ましい。これにより、混練工程において、硬化性樹脂が溶融し易くなり、原材料を容易かつ確実に混練することができる。
【0120】
ここで、本発明で使用する粉砕前の無機充填材の平均粒径は、0.1〜30μm程度であることが好ましく、1〜10μm程度であることがより好ましい。また、該無機充填材は、24μmを超える粒子の含有率が1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。なお、無機充填材において、24μmを超える粒子の含有率は、0であってもよい。これにより、回路基板と半導体チップとの間の間隙距離が小さい場合でも、その回路基板と半導体チップとの間に樹脂組成物を充填する際、回路基板と半導体チップとの間に無機充填材が引っ掛かってしまうことを防止することができる。
【0121】
なお、無機充填材や粉砕後の原材料の粒度分布、平均粒径、最大粒径等は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD−7000等)を用いて測定することができる。
【0122】
なお、この粉砕工程に先立って、混合装置により、原材料を混合することが好ましい。この混合装置としては、例えば、回転羽根を有する高速混合装置やドラムミキサー等を用いることができる。
【0123】
また、この粉砕工程と混練工程との間において、混合装置により、粉砕後の原材料を混合することが好ましい。この混合装置としては、例えば、回転羽根を有する高速混合装置やドラムミキサー等を用いることができる。
【0124】
次に、混練工程を説明する。
(混練工程)
この混練工程では、当業者に公知のミキシングロール、単軸型混練押出機、2軸型混練押出機等を使用可能であるが、単軸型混練押出機、2軸型混練押出機が好ましく、2軸型混練押出機がより好ましい。
【0125】
また、前記混練装置などを用いて、粉砕後の原材料1kgあたりに与える混練エネルギーを、0.01〜0.5kWh/kg程度とすることが好ましく、0.05〜0.4kWh/kg程度とすることがより好ましい。本発明の混練エネルギーとは、混練機が材料を定常的に混練している際の電力値を時間あたりの材料の処理量で除した値である。
【0126】
前記混練エネルギーが前記下限値よりも小さいと、原材料を十分に混練することができず、原材料中の樹脂などの有機成分と無機充填材の濡れ性を向上させたり、成分の均一性を十分に得ることができない場合がある。また、前記混練エネルギーが前記上限値よりも大きいと、原材料の反応が急速に進むため、樹脂組成物の流動性の低下など成形性等が低下する虞がある。
【0127】
また、加熱温度は、70〜140℃程度であることが好ましく、90〜130℃程度であることがより好ましい。これにより、原材料を確実に混練することができる。
【0128】
また、混練時間は、2〜20分程度であることが好ましく、5〜15分程度であることがより好ましい。これにより、原材料を確実に混練することができる。
【0129】
以上説明したように、前記樹脂組成物の製造方法によれば、粗粒をカットした微細な無機充填材を含んでいても、半導体チップを封止する際の流動性および硬化性に優れた樹脂組成物を提供することができる。これにより、樹脂組成物により半導体チップを封止する際の樹脂組成物の成形性が向上し、また、半導体チップと回路基板との間に樹脂組成物を確実に充填するための所謂狭いギャップへの回り込み性を確保することができ、半導体パッケージの信頼性を向上させることができる。
【0130】
そして、特に、粉砕装置1を用いて原材料を粉砕し、前記特定の混練エネルギーにて、好ましくは単軸型または2軸型混練押出機を用いて前記粉砕後の原材料を混練することにより、微細な無機充填材を含み、流動性および硬化性に優れた樹脂組成物を容易かつ確実に製造することができる。
【0131】
以上、本発明の樹脂組成物の製造方法、樹脂組成物および半導体装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本発明に、他の任意の工程が付加されていてもよい。
【実施例】
【0132】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
<原材料>
[無機充填材]
・電気化学工業(株)製溶融球状シリカFB−5LDX(平均粒径4.2μm、24μmを越える粒子0.1質量%以下):59.70質量部
・アドマテックス(株)製SO−25H(平均粒径0.5μm、24μmを越える粒子0.1%以下):22.50質量部
【0133】
[硬化性樹脂]
・日本化薬(株)製NC−3000(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、エポキシ当量276g/eq、軟化点57℃):8.33質量部
【0134】
[硬化剤]
・日本化薬(株)製GPH−65(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、水酸基当量196g/eq、軟化点65℃):5.52質量部
【0135】
[カップリング剤]
・チッソ(株)製GPS−M(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン):0.20質量部
・チッソ(株)製S810(γ−メルカプトトリプロピルメトキシシラン):0.20質量部
【0136】
[硬化促進剤]
・硬化促進剤1(下記式(5)で表される硬化促進剤:0.30質量部
【0137】
【化5】

【0138】
[イオン捕捉剤]
・協和化学工業(株)製DHT−4H(ハイドロタルサイト):0.15質量部
【0139】
[離型剤]
・クラリアントジャパン(株)製WE−4M(モンタン酸エステルワックス):0.30質量部
【0140】
[難燃剤]
・住友化学(株)製CL−303(水酸化アルミニウム):2.50質量部
【0141】
[着色剤]
・三菱化学(株)製MA−600(カーボンブラック):0.30質量部
【0142】
<樹脂組成物の製造>
前述した図2に示す粉砕装置1を用い、下記の条件で、前記原材料を粉砕した。粉砕後の原材料の粒度分布および平均粒径は、下記表1に示す通りである。
【0143】
チャンバ内に供給する空気の圧力:0.7MPa
チャンバ内に供給する空気の温度:3℃
チャンバ内に供給する空気の湿度:9%RH
【0144】
次に、2軸型混練押出機を用い、下記の条件で、前記粉砕後の原材料を混練した。
原材料1kgあたりに与える混練エネルギー:0.25kWh/kg
加熱温度:110℃
混練時間:7分
【0145】
次に、前記混練された混練物に対し、脱気、冷却後、粉砕機で粉砕して、粉末状の樹脂組成物を得た。そして、成形体製造装置により、前記粉末状の樹脂組成物を圧縮成形し、樹脂組成物を得た。
【0146】
(実施例2)
原材料を下記のように変更し、下記の条件で、粉砕後の原材料を混練した以外は、前記実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0147】
<原材料>
[無機充填材]
・龍森製溶融球状シリカMUF−6(平均粒径10.6μm、24μmを越える粒子0.1質量%以下):59.70質量部
・アドマテックス(株)製SO−25H:22.50質量部
【0148】
[硬化性樹脂]
・日本化薬(株)製NC−3000:7.13質量部
・三菱化学(株)製YL−6810(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量170g/eq、融点47℃):1.81質量部
【0149】
[硬化剤]
・日本化薬(株)製GPH−65:1.21質量部
・三井化学(株)製XLC−4L(フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、水酸基当量165g/eq、軟化点65℃):3.77質量部
【0150】
[カップリング剤]
・チッソ(株)製GPS−M:0.10質量部
・チッソ(株)製S810:0.20質量部
【0151】
[硬化促進剤]
・硬化促進剤1(上記式(5)で表される硬化促進剤:0.33質量部
【0152】
[イオン捕捉剤]
・協和化学工業(株)製DHT−4H:0.15質量部
【0153】
[離型剤]
・クラリアントジャパン(株)製WE−4M:0.30質量部
【0154】
[難燃剤]
・住友化学(株)製CL−303:2.50質量部
【0155】
[着色剤]
・三菱化学(株)製MA−600:0.30質量部
実施例1に対して、電力値を低減し、原材料の処理量を増やして原材料1kgあたりに与える混練エネルギーを0.09kWh/kgとした。
【0156】
(実施例3)
原材料を下記のように変更し、下記の条件で、粉砕後の原材料を溶融混練した以外は、前記実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0157】
<原材料>
[無機充填材]
・電気化学工業(株)製溶融球状シリカFB−5LDX:70.35質量部
・アドマテックス(株)製SO−25H:15.00質量部
【0158】
[硬化性樹脂]
・三菱化学(株)製YL−6810(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量170g/eq、融点47℃):3.08質量部
・三菱化学(株)製YX−8800(ジヒドロアントラキノン型結晶性エポキシ樹脂、エポキシ当量181g/eq、軟化点109℃):3.08質量部
【0159】
[硬化剤]
・新日鐵化学(株)製SN−485(フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールの水酸基の位置はα位、水酸基当量210g/eq、軟化点87℃):2.77質量部
・住友ベークライト(株)製PR−HF−3(フェノールノボラック樹脂、水酸基当量105g/eq、軟化点80℃):1.85質量部
【0160】
[カップリング剤]
・東レ・ダウコーニング(株)製CF4083(N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン):0.20質量部
【0161】
[硬化促進剤]
・硬化促進剤2(下記式(6)で表される硬化促進剤):0.42質量部
【0162】
【化6】

【0163】
[イオン捕捉剤]
・協和化学工業(株)製DHT−4H:0.15質量部
【0164】
[離型剤]
・クラリアントジャパン(株)製WE−4M:0.15質量部
【0165】
[低応力化剤]
・東レ・ダウコーニング(株)製FZ−3730(シリコーンオイル):0.15質量部
【0166】
[難燃剤]
・住友化学(株)製CL−303:2.50質量部
【0167】
[着色剤]
・三菱化学(株)製MA−600:0.30質量部
【0168】
実施例1とほぼ同様な条件で混練を行い原材料1kgあたりに与える混練エネルギーは0.40kWh/kgとなった。なお、実施例1に対して混練エネルギーが増大したのは、原材料の配合が実施例1と異なるためである。
【0169】
(実施例4)
単軸押出機を用い、下記の条件で、粉砕後の原材料を溶融混練した以外は、前記実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0170】
実施例1に対し、電力値を増やし、原材料の処理量を低減し、原材料1kgあたりに与える混練エネルギーを0.47kWh/kgとした。
【0171】
(実施例5)
回転数150rpmでヘンシェルミキサーにて実施例1と同様の配合の原材料を粉砕し、2軸型混練押出機を用い、下記の条件で、前記粉砕後の原材料を混練した。
【0172】
原材料1kgあたりに与える混練エネルギー:0.39kWh/kg
加熱温度:110℃
混練時間:8分
【0173】
次に、前記混練された混練物に対し、実施例1と同様の手順で、粉末状の樹脂組成物を得、その粉末状の樹脂組成物を圧縮成形し、樹脂組成物を得た。
【0174】
(比較例1)
ヘンシェルミキサーを用い、下記の条件で、原材料を粉砕し、単軸押出機を用い、下記の条件で、前記粉砕後の原材料を溶融混練した以外は、前記実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。
【0175】
ヘンシェルミキサーの回転数:150rpm
単軸押出機混練条件:
実施例4に対し電力値を低減し原材料1kgあたりに与える混練エネルギーを0.003kWh/kgとした。
加熱温度:100℃
混練時間:9分
【0176】
(比較例2)
ヘンシェルミキサーを用い、下記の条件で、原材料を粉砕し、単軸押出機を用い、下記の条件で、前記粉砕後の原材料を溶融混練した以外は、前記実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。
【0177】
ヘンシェルミキサーの回転数:150rpm
単軸押出機混練条件:
実施例4に対し、電力値を増やし原材料1kgあたりに与える混練エネルギーを0.63kWh/kgとした。
加熱温度:100℃
混練時間:9分
【0178】
(比較例3)
原材料のうちの溶融球状シリカFB−5LDXと混練条件を下記のように変更した以外は、前記実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0179】
[無機充填材]
・電気化学工業(株)製球状溶融シリカFB−950(平均粒径38μm、24μmを越える粒子37質量%):59.70質量部
原材料1kgあたりに与える混練エネルギー:0.22kWh/kg
加熱温度:100℃
混練時間:7分
【0180】
[評価]
実施例1〜5、比較例1〜3に対し、それぞれ、下記のようにして樹脂組成物の各評価を行った。その結果は、下記表1に示す通りである。
【0181】
(スパイラルフロー)
低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製KTS−15)を用いて、ANSI/ASTM D 3123−72に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件にて樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。スパイラルフロー値は、70cm以上であれば問題はなく、80cm以上であれば、良好な成形性を得ることができる。
【0182】
(ゲルタイム(硬化性))
175℃に制御された熱板上に、樹脂組成物を載せ、スパチュラで約1回/秒のストロークで練る。樹脂組成物が熱により溶解してから硬化するまでの時間を測定し、ゲルタイムとした。ゲルタイムは、数値が小さい方が、硬化が速いことを示す。
【0183】
(高化式フロー粘度)
島津製作所(株)製のフローテスタCFT−500Cを用いて、温度175℃、荷重40kgf(ピストン面積1cm)、ダイ穴直径0.50mm、ダイ長さ1.00mmの試験条件で溶解した樹脂組成物のみかけの粘度ηを測定した。このみかけの粘度ηは、次の計算式より算出した。なお、Qは単位時間あたりに流れる樹脂組成物の流量である。また、高化式フロー粘度は、数値が小さい方が、低粘度であることを示す。
【0184】
η=(4πDP/128LQ)×10−3(Pa・秒)
η:みかけの粘度
D:ダイ穴直径(mm)
P:試験圧力(Pa)
L:ダイ長さ(mm)
Q:フローレート(cm/秒)
【0185】
(充填性)
フリップチップBGA(基板は厚さ0.36mmのビスマレイミド・トリアジン樹脂/ガラスクロス基板、パッケージサイズは16×16mm、チップサイズは10×10mm、基板とチップとの間隙は70μm)を、低圧トランスファー成形機(TOWA製、Yシリーズ)を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で、樹脂組成物により封止成形した。基板−チップ間の間隙における樹脂組成物の充填性を、超音波探傷機(日立建機My Scorpe)で観察し、未充填が無いものを「○」、未充填があるものを「×」と判断した。
【0186】
(矩形圧(粘度))
低圧トランスファー成形機(NEC(株)製40tマニュアルプレス)を用いて、金型温度175℃、注入速度177cm/秒の条件にて、幅13mm、厚さ1mm、長さ175mmの矩形状の流路に、樹脂組成物を注入し、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定し、樹脂組成物の流動時における最低圧力を測定した。矩形圧は、溶融粘度のパラメータであり、数値が小さい方が、溶融粘度が低く良好である。矩形圧の値は、6MPa以下であれば問題はなく、5MPa以下であれば、良好な粘度を得ることができる。
【0187】
(硬化トルク比)
キュラストメーター(オリエンテック(株)製、JSRキュラストメーターIVPS型)を用い、金型温度175℃にて樹脂組成物の硬化トルクを経時的に測定し、測定開始120秒後の硬化トルク値、300秒後までの最大硬化トルク値を求め、硬化トルク比:(120秒後の硬化トルク値)/(300秒後までの最大硬化トルク値)×100(%)を計算した。キュラストメーターにおける硬化トルクは熱剛性のパラメータであり、硬化トルク比の大きい方が成形直後の熱剛性は良好である。
【0188】
【表1】

【0189】
上記表1から明らかなように、実施例1〜5では、スパイラルフロー、ゲルタイム、高化式フロー粘度、充填性、矩形圧および硬化トルク比のすべてにおいて良好な結果が得られた。
【0190】
これに対し、比較例1は、混練が十分でなく、無機充填材と有機成分との濡れ性や原材料の分散性が悪く、流動性が悪いためスパイラルフローが測定できない上、硬化性も悪く、さらに未充填となった。比較例2では、混練が過剰となり、反応が進み過ぎ、ほぼすべての評価が不可能であった。比較例3では、大きな粒子が含まれる汎用シリカを使用した事例であり、充填性以外は良好であったが、基板とチップとの間隙付近に多数の粗粒シリカがつまり未充填が多発した。
【符号の説明】
【0191】
1 粉砕装置
2 粉砕部
3 冷却装置
4 高圧空気発生装置
5 貯留部
51 空気抜き部
6 チャンバ
61 底部
62 出口
63 壁部
64 管路
65 突起部
71、72 ノズル
73 供給部
81、82 管路
100 半導体パッケージ
110 回路基板
120 半導体チップ
130 金属バンプ
140 封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設置された半導体素子を封止する樹脂組成物であって、その封止の際に、前記基板と前記半導体素子との間の隙間にも充填される樹脂組成物を製造する製造方法であって、
硬化性樹脂の粉末材料および24μmを超える粒子の含有率が1質量%以下である無機充填材の粉末材料を含む原材料を粉砕する粉砕工程と、
粉砕後の前記原材料を混練する混練工程とを有し、
前記混練工程において、粉砕後の前記原材料1kgあたりに与える混練エネルギーを0.01〜0.5kWh/kgとすることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
粉砕後の前記原材料の平均粒径は、1〜100μmである請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
粉砕後の前記原材料の粒度分布は、粒径250μm以上が2質量%以下、粒径150μm以上、250μm未満が15質量%以下、粒径150μm未満が80質量%以上である請求項1または2に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
粉砕後の前記原材料における前記無機充填材の平均粒径は、0.1〜30μmである請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記原材料は、硬化促進剤を含み、
前記硬化性樹脂は、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂系硬化剤を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記粉砕工程では、気流式の粉砕装置を用いる請求項1ないし5のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記混練工程では、2軸型混練押出機を用いる請求項1ないし6のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法により製造されたことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項9】
基板と、
基板上に設置された半導体素子と、
前記半導体素子を封止し、その封止の際に、前記基板と前記半導体素子との間の隙間にも充填された請求項8に記載の樹脂組成物とを有することを特徴とする半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−75939(P2013−75939A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215144(P2011−215144)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】