説明

樹脂組成物を用いた転写材及び成型品の製造方法

【課題】耐摩耗性及び耐薬品性に優れた成型品を低コストで得ることができ、可使期間が長く、転写時に成型品曲面部においてクラックを発生させない保護層を有する転写材及び成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】離型性を有する基体シート上に、(メタ)アクリル当量100〜300g/eq、水酸基価50〜550mgKOH/g、エポキシ当量7000g/eq以上、重量平均分子量5000〜100000のポリマーと、イソシアネート基を含有しない熱硬化剤とを有効成分として含有する熱硬化性及び活性エネルギー線硬化性を有する樹脂組成物により形成された保護層を有してなる転写材及びこれを用いた成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物を用いた転写材及び成型品の製造方法に関し、より詳細には、耐摩耗性を有する熱硬化性及び活性エネルギー線硬化性を有する樹脂組成物を用いたアフターキュアー型の転写材及びこの転写材を使用した耐摩耗性、耐薬品性に優れた成型品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、成型品表面に保護層を形成する方法として、離型性を有する基体シート上に保護層が形成された転写材を成型品表面に接着させた後、基体シートを剥離する転写法がある。また、上記転写材を成形金型内に挟み込み、キャビティー内に樹脂を射出充満させ、冷却して樹脂成形品を得るのと同時にその表面に転写材を接着させた後、基体シートを剥離する成形同時転写法がある。
転写材の保護層としては、一般に熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂等が使用されている。
【0003】
しかし、保護層として熱硬化性樹脂を用い、転写材作製時に加熱して熱硬化性樹脂を架橋硬化させると、一般に成形品に転写した後の成型品表面の耐薬品性、耐摩耗性が劣る。
【0004】
一方、保護層として活性エネルギー線硬化性樹脂を用い、転写材作製時に活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂を架橋硬化させると、樹脂の架橋密度を高めることにより耐摩耗性、耐薬品性を改良することができるが、その反面、保護層が脆くなり、転写時に成型品曲面部に配置される保護層にクラックが発生する。
【0005】
そこで、保護層として活性エネルギー線硬化性樹脂を用いる他の方法として、転写材作製時に活性エネルギー線を、第一段階照射して活性エネルギー線硬化性樹脂を半硬化させておき、転写後に成形品に活性エネルギー線を照射することにより、保護層となる活性エネルギー線硬化性樹脂を完全硬化させる方法が検討されている。
しかし、活性エネルギー線の照射量の制御及び硬化反応の制御が困難であるため、転写材において、適度な半硬化状態を得るのは極めて難しい。
この問題を解決する方法として、特定のポリマーと多官能イソシアネートとを有効成分として含有する活性エネルギー線硬化性樹脂が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。この系ではポリマー中の水酸基と多官能イソシアネートとの付加反応により適度な半硬化状態を達成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−58895号公報
【特許文献2】特開平10−67047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この活性エネルギー線硬化性樹脂においても、その中に含まれる水酸基と多官能イソシアナートとの反応が室温でも進行するため、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としての可使時間が短く、必ずしも満足のいく樹脂組成物及び転写材が実現されていない状況である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、耐摩耗性及び耐薬品性に優れた成型品を低コストで得ることができ、可使期間が長く、転写時に成型品曲面部においてクラックを発生させない転写材の保護層に用いることができる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、これを用いた転写材及び成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の転写材は、離型性を有する基体シート上に、
(メタ)アクリル当量100〜300g/eq、
水酸基価50〜550mgKOH/g、
エポキシ当量7000g/eq以上、
重量平均分子量5000〜100000のポリマーと、イソシアネート基を含有しない熱硬化剤とを有効成分として含有する熱硬化性及び活性エネルギー線硬化性を有する樹脂組成物により形成された保護層を有してなることを特徴とする。
また、本発明の成型品の製造方法は、上記転写材を、
(1)成型品表面に接着させた後、基体シートを剥離するとともに、前記成形品表面に活性エネルギー線を照射することにより、前記成形品表面に保護層を形成するか、又は
(2)成型品金型内に挟み込み、キャビティー内に樹脂を射出充満させて成型品を形成すると同時にその表面に転写材を接着させた後、基体シートを剥離するとともに、前記成形品表面に活性エネルギー線を照射することにより、前記成形品表面に保護層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の樹脂組成物の配合とすることにより2段階での硬化によってより耐摩耗性、耐薬品性、可使期間等に優れた樹脂組成物を提供することができ、このような樹脂組成物を転写材の保護層に用いる場合には、一次硬化により保護層の半硬化を行って、品質を低下させることなく、転写材としての流通を実現することができる。
また、その転写材を成型品の製造に使用して、成形品表面に接着させた後に二次硬化により完全に硬化させることにより、低コストで、耐摩耗性、耐薬品性等に優れた成形品を製造することができる。特に、成形品表面に複雑な曲面がある場合においても、その曲面部におけるクラックの発生を防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、(メタ)アクリル当量100〜300g/eq、水酸基価50〜550mgKOH/g、エポキシ当量7000 g/eq以上、重量平均分子量5000〜100000のポリマーと熱硬化剤とを有効成分として構成される。なお、(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを意味する。(メタ)アクリル当量は、例えば、樹脂組成物を臭化ナトリウムと臭素酸カリウムとの混合溶液と反応させ、ヨウ化カリウム溶液を混合したものを、デンプン溶液を指示薬としてチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する方法が挙げられる。また、水酸基価は、例えば、樹脂組成物をピリジン中で過剰の無水酢酸と反応させ、遊離してくる酢酸を水酸化カリウムで滴定する方法で測定することができる。さらに、エポキシ当量は、例えば、ポリマーの酢酸溶液を酢酸と臭化水素との混合溶液で滴定する方法で測定することができる。重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーにてポリスチレン換算で求めることができる。
ポリマーは、活性エネルギー線照射前後の物理的・化学的要求性能を考慮して、特定の配合とされる。すなわち、活性エネルギー線照射時の硬化性、活性エネルギー線照射後の耐摩耗性及び実際上の合成の容易性等の観点から、(メタ)アクリル当量が100〜300g/eq程度であることが適当であり、150〜300g/eq程度がより好ましい。
【0012】
また、併用する熱硬化剤との反応性、転写材の保護層を構成する場合の熱架橋度及び実際上の合成の容易性等の観点から、ポリマーの水酸基価が50〜550mgKOH/g程度が適当であり、100〜300mgKOH/g程度がより好ましい。熱硬化剤との反応が不十分であったり、熱架橋度が低い場合には、転写材の製造工程において、粘着性が残存したり、耐溶剤性が不足したりすることによって、転写材を刷り重ねたり、巻き取ったりすることが困難になる。
【0013】
ポリマーの安定性、塗工適正、活性エネルギー線照射時の硬化性、活性エネルギー線照射後の耐摩耗性及び実際上の合成の容易性等の観点から、ポリマーのエポキシ当量が7000 g/eq以上であることが適当である。エポキシ当量が7000 g/eq以上であるということは、エポキシ基は分子中にわずかに存在するが、実質的にポリマーの架橋に寄与し得る程度には含有されていないことを意味する。エポキシ当量が小さすぎると合成中にゲル化しやすいために合成が困難となり、さらに、活性エネルギー照射時の硬化性、活性エネルギー線照射後の耐摩耗性が低下する。
【0014】
さらに、転写材の製造工程において、粘着性が残存したり、耐溶剤性が不足したりすることによって、転写材を刷り重ねたり巻き取ったりすることが困難にならず、鮮明な絵柄層を得ることができ、インキの塗布作業性を高め、適当な粘度を得ること等の観点から、ポリマーの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で5000〜100000程度が適当であり、5000〜50000程度がより好ましい。
このようなポリマーとしては、例えば、(1)エポキシ基を有する重合体に不飽和二重結合を有するモノカルボン酸を付加させた反応生成物を利用することができる。エポキシ基を有する重合体としては、グリシジル(メタ)アクリレートの単独重合体、グリシジル(メタ)アクリレートとこれと重合可能なモノマーからなる共重合体等が挙げられる。重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。不飽和二重結合を有するモノカルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2−メタクリロキシエチルコハク酸、2−メタクリロキシエチルフタル酸、2−メタクリロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0015】
また、ポリマーは、(2)水酸基を含有する重合体の側鎖の一部に(メタ)アクリロイル基を導入した反応生成物、(3)カルボキシル基を含有する重合体に水酸基を含有する重合性不飽和単量体を縮合させた反応生成物、(4)カルボキシル基を含有する重合体にエポキシ基を有する重合性不飽和単量体を付加させた反応生成物等であってもよい。
ここで、水酸基を含有する重合体としては、水酸基含有(メタ)アクリレート、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の単独重合体又は共重合体、水酸基含有(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。
【0016】
カルボキシル基を含有する重合体としては、(メタ)アクリル酸の単独重合体又は共重合体、2−メタクリロキシエチルコハク酸の単独重合体又は共重合体等、2−メタクリロキシエチルフタル酸の単独重合体又は共重合体等、2−メタクリロキシエチルヘキサヒドロフタル酸の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。
水酸基を有する重合体不飽和単量体としては、上述の水酸基含有(メタ)アクリレート、これら(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物等が挙げられる。
エポキシ基を有する重合性不飽和単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
これらポリマーは、従来公知の方法によって又は方法に準じて、(メタ)アクリル当量、水酸基価、エポキシ当量、重量平均分子量等が上記の範囲になるように、使用単量体や重合体の種類、これらの使用量等を適宜選択、調整することが必要である。
【0018】
熱硬化剤としては、一般に架橋剤として用いられるものであり、多官能イソシアネート以外の熱硬化剤であることが適当である。例えば、キレート化合物、金属アルコキシド、シランカップリング剤及びその部分加水分解物並びに酸無水物等から選択される1以上の化合物が挙げられ、それらの種類としては特に限定されることなく、公知のものの中から適宜選択することができる。なお、これらの化合物は、イソシアネート基が2以上含有される化合物でないもの、より好ましくは、1以上含有される化合物でないものが適当である。また、別の観点から、熱硬化剤としては、水酸基と反応可能な官能基又は構造を有する化合物であり、イソシアナート基以外の官能基を有することが適当である。このような官能基としては、例えば、アルコキシ基、アルコキシシリル基、酸無水物基等が挙げられる。さらに、水酸基と反応可能な構造としては、金属イオンに配位したβ−ジケトン及びβ−ケトエステル、それらの誘導体等が挙げられる。
【0019】
キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、チタンニウム、ジルコニウムを有するものが挙げられ、配位子としてはβ−ジケトン及びβケトエステルであるアセチルアセトン、アセト酢酸エチル及びその混合物等が好適に用いられる。具体的には、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン等が挙げられる。
金属アルコキシドとしては、例えば、アルミニウム、チタン、ジルコニウムの金属アルコキシドが挙げられる、具体的には、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−sec−ブトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロピキシド、チタン−n−ブトキシド等が挙げられる。
【0020】
シランカップリング剤としては、1分子中にアルコキシ基が3つ以上あるものが好ましく、具体的にはテトラエトキシシラン、テトラエトキシシランオリゴマー、テトラメトキシシラン、テトラメトキシシランオリゴマー、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソプロポキシシランオリゴマー、テトラ−n−ブトキシシランオリゴマー等が挙げられる。また、これらシランカップリング剤は、部分的に加水分解されたものでもよい。加水分解の方法としては、従来公知の方法を使用することができる。
【0021】
酸無水物としては、1分子中に酸無水物基が2つ以上あるものが好ましく、具体的にはスチレン無水マレイン酸共重合体、α−オレフィン無水マレイン酸共重合体、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物等が挙げられる。
熱硬化剤の種類によっては、反応を促進させるために触媒を使用してもよい。触媒は、熱硬化剤として金属アルコキシド又はシランカップリング剤を使用する場合には、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウムのようなカルボン酸のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩;アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムのようなアセチルアセトンのキレート化合物;ブチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルフェニルアミン、ポリアルキレンアミンのような第1級、第2級又は第3級アミン;2−メチルイミダゾール、2,4−ジエチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールのようなイミダゾール;過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アンモニウムのような過塩素酸の金属塩及びアンモニウム塩;アセト酢酸エチルの金属塩;アセチルアセトンとアセト酢酸エチルとが配位した金属塩;オクチル酸錫のような有機金属塩等が挙げられる。熱硬化剤として、酸無水物を用いる場合には、触媒は、トリフェニルホスフィン、第3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール化合物等が挙げられる。
【0022】
ポリマーと熱硬化剤とは、1:0.01〜1:0.8、好ましくは1:0.05〜1:0.5(重量比)となるような割合で配合することが適当である。また、触媒を用いる場合には、触媒を、ポリマーと熱硬化剤との重量に対し、0.1〜20重量%の範囲で使用することが適当である。
なお、本発明の樹脂組成物には、ポリマー及び熱硬化剤以外に、必要に応じて、反応性モノマー、溶剤、着色剤等を配合してもよい。また、樹脂組成物に、活性エネルギー線照射の際に電子線を照射して硬化させる場合には、光重合開始剤を用いることなく充分な効果を発揮することができるが、紫外線を照射する場合には、光重合開始剤と必要に応じて促進剤を添加することが好ましい。
【0023】
反応性モノマーとしては、ラジカル重合可能なものであれば特に限定されないが、1分子中の2以上のラジカル重合可能な官能基を有するものが好ましい。このような化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル;エトキシエタノール、ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール等が挙げられる。
【0024】
着色剤は、活性エネルギー照射時等に樹脂が黄色味を帯びるのを防止するために使用されるものであり、一般的には、ブルーイング剤と呼ばれるものが使用できる。例えば、NICHILON BLUE GL、NICHILON BLUE 3GR(日成化学(株)製)等が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾイン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系開始剤;ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤等が挙げられる。
【0025】
促進剤としては、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルのような3級アミン等が挙げられる。
また、後述するように、樹脂組成物を転写材の保護層として用いる場合には、必要に応じて滑剤を含有させることが好ましい。これにより、保護層の表面が粗面化され、シートとして巻きやすくなり、ブロッキングが生じにくくなるのみならず、擦れや引っ掻きに対する抵抗性を増大させることができる。
【0026】
滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、モンタンワックス等のワックス類;ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系、フルオロアルキル基含有ポリマー等のフッ素系等の合成樹脂等が挙げられる。滑剤を用いる場合には、ブロッキングの防止、摩擦引っ掻き抵抗の増加、樹脂組成物自体の透明性等を考慮して、樹脂組成物の全重量に対して、0.5〜15重量%程度、好ましくは1〜6重量%程度の割合で含有させることが適当である。
さらに、保護層に機能性を付与する目的で、樹脂組成物に、フィラー、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線遮蔽剤等を配合してもよい。これらの物質は、付与する機能に応じて、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
フィラーとしては、無機物及び/又は有機物を用いることができ、特に、無機フィラーを用いることが好ましい。
無機フィラーとしては、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらは微粒子、粉体、スラリー状、ゾル状のいずれの形態でもよい。フィラーを使用することにより、ブロッキングを防止し、保護層の硬度を上昇させることができる。また、フィラーの粒子径が大きいほどブロッキング防止に特に有効であり、粒子径が小さいほど硬度上昇に特に有効である。よって、粒子径は、ブロッキング防止効果を期待する場合には、数μm〜数十μm程度、硬度の上昇を期待する場合には数μm程度以下が適当である。
帯電防止剤としては、界面活性剤、導電性フィラー、導電性ポリマー、イオン性化合物等が挙げられる。
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性イオン系のいずれでもよく、特にカチオン系界面活性剤が好ましい。
導電性フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、インジウムドープ酸化スズ(ITO)等が挙げられる。
導電性ポリマーとしては、例えば、ポリピロール、ポリアニオン、ポリアセチレン、ポリチオフェン等の電子伝導型や、アニオン系、カチオン系、両性イオン系ポリマー等のイオン伝導型が挙げられる。ポリエーテル骨格を有するノニオン系ポリマーも帯電防止剤として使用することが出来る。
【0028】
イオン性化合物としては、例えばリチウムイオン塩が挙げられる。リチウムイオン塩を使用する場合には、ポリエチレングリコール等のポリエーテル骨格を有する化合物を併用するのが好ましい。
なお、帯電防止の十分な効果を有するためには、成型品の表面抵抗が10〜1012Ω・cm程度、好ましくは10〜1011Ω・cm程度に調整することが適当である。
熱安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、イオウ系熱安定剤等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系の紫外線吸収剤が挙げられる。
近赤外線遮蔽剤としては、例えば近赤外線の遮蔽に優れた有機顔料や染料、あるいは近赤外線を吸収する色素が挙げられる。
【0029】
本発明の転写材は、離型性を有する基体シート上に、上記樹脂組成物の熱架橋反応生成物により保護層が形成されて構成される。
離型性を有する基体シートしては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂シート、アルミニウム箔、銅箔、グラシン紙、コート紙、セロハン等のセルロース系シート、あるいは上記各シートの複合体など、通常転写材の基体シートとして用いられるものを使用することができる。また、基体シートの剥離性を改善するために、基体シート表面に離型層を設けてもよい。離型層は、通常、転写後又は成形同時転写後に基体シートを剥離した際に基体シートとともに剥離される層であり、例えば、メラミン樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤、アクリル樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、セルロース誘導体系離型剤、尿素誘導体系離型剤、ポリオレフィン樹脂系離型剤、パラフィン系離型剤及びこれらの複合型離型剤等により形成することができる。離型層は、グラビアコート法、ロールコート法、スプレーコート法、リップコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の印刷法により形成することができる。
【0030】
保護層は、上記樹脂組成物を、上述したコート法及び印刷法等により基体シート上に塗布した後、硬化することにより形成することができる。保護層の膜厚は、耐摩耗性、耐薬品性、保護層形成材料のコスト、箔切れ等と考慮して、一般に、0.5〜30μm程度、好ましくは1〜6μm程度が適当である。硬化は、保護層を加熱することにより行うことが好ましい。これにより、樹脂組成物が熱架橋反応生成物となる。加熱による架橋反応は、活性エネルギー線照射による架橋反応に比べて制御が容易であり、有利である。従って、熱架橋の程度は、用いる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の種類、保護層の厚み、成型品の屈曲率等に応じて適宜調整することができる。例えば、100〜200℃程度の温度範囲で、10〜120秒間程度行うことが適当である。本発明の樹脂組成物は、熱架橋しただけの段階では、完全には架橋硬化していない。すなわち半硬化の状態となり、タックフリーの状態にある。そのため、保護層は成型品の曲面に適応でき、クラックを生じない程度の可とう性を有することになり、保護層上に他の層を刷り重ねたり、転写材を巻き取ったりすることが容易になる。
【0031】
なお、保護層には、上述したように、機能性が付与されていてもよく、これにより、加工する層の数が減少し、製品の歩留まり向上、加工コストの低下を実現することができる。
保護層の上には、通常転写材において転写される機能層、例えば、絵柄層、接着層、アンカー層、低反射層、帯電防止層、紫外線吸収層、近赤外線遮蔽層、電磁波吸収層等の種々の層を1種以上、任意の順序で形成してもよい。なかでも、接着層を基体シートとは反対側の表面に形成することが適当であり、保護層の上に、絵柄層、接着層をこの順に形成することが好ましい。なお、機能層の種類によっては、基体シートと保護層との間に機能層を配置してもよい。これらの層は、公知の材料、方法等により形成することができる。例えば、特開平10−58895号公報、特開平11−123897号公報、特開平2002−046207号公報、WO01/92006号公報等に記載の各機能層及び形成方法を利用することができる。
【0032】
具体的には、絵柄層は、保護層の上に、通常は印刷層として形成する。印刷層の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料又は染料を着色剤として含有する着色インキを用いることが好ましい。絵柄層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法などを用いることができる。特に、多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷法やグラビア印刷法が適当である。単色の場合には、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、リップコート法などのコート法を採用してもよい。絵柄層は、表現したい絵柄に応じて、全面的又は部分的に設けることができる。また、絵柄層は、金属蒸着からなるもの、あるいは印刷層と金属蒸着層との組合せからからなるものであってもよい。
【0033】
接着層は、成型品表面に上記の各層を接着するものである。接着層は、保護層又は絵柄層上等の接着させたい部分に形成する。すなわち、接着させたい部分が全面なら、接着層を全面に形成し、接着させたい部分が部分的なら、接着層を部分的に形成することができる。接着層としては、成型品の素材に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を使用することができる。例えば、成型品の材質がポリアクリル系樹脂の場合にはポリアクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、成型品の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合には、これらの樹脂と親和性のあるポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂を使用すればよい。さらに、成型品の材質がポリプロピレンの場合には、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂が使用可能である。接着層の形成方法としては、上述したコート法、印刷法等を利用することができる。なお、保護層や絵柄層が成型品に対して充分接着性を有する場合には接着層を設けなくてもよい。
【0034】
アンカー層は、転写層間の密着性を高めたり、薬品から成型品や絵柄層を保護するための樹脂層であり、例えば、二液硬化性ウレタン樹脂、メラミン系やエポキシ系などの熱硬化樹脂、塩化ビニル共重合体樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。アンカー層は、上述のコート法、印刷法等を利用して形成することができる。
【0035】
本発明の成形品の製造方法では、まず、上記転写材を成型品表面に接着させるか、あるいは、上記転写材を成型品金型内に挟み込み、キャビティー内に樹脂を射出充満させて成型品を形成すると同時にその表面に転写材を接着させる。
転写材を成形品表面に接着させる場合、転写材、好ましくは接着層側を成型品に重ね、基体シート上から圧力又は熱圧をかけることが適当である。基体フィルム上からの圧力又は熱圧は、耐熱ゴム状弾性体、例えばシリコンラバーを備えたロール転写機、アップダウン転写機等の転写機を用いて行うことができる。この場合の圧力は、5〜200kg/cm2程度が適当である。なお、シリコンゴムラバー表面を80〜250℃程度の温度に加熱することが好ましい。
【0036】
また、射出成型金型は、樹脂成型品を製造する際に通常使用されるものであれば、どのようなものでも利用することができ、例えば、可動型及び固定型の一対の成型用金型が挙げられる。このような成型用金型を用い、転写材を内側にして、つまり、基体シートは固定型に接するように配置する。この際、枚葉の転写材を1枚ずつ送り込んでもよいし、長尺の転写材の必要部分を間欠的に送り込んでもよい。長尺の転写材を使用する場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、転写材の、例えば絵柄層と成型用金型との見当が一致するようにすることが好ましい。また、転写材を間欠的に送り込む際に、転写材の位置をセンサーで検出した後に転写材を可動型と固定型とで固定するようにすれば、常に同じ位置で転写材を固定することができ、例えば絵柄層の位置ズレが生じないので有利である。成型用金型を閉じた後、可動型に設けられたゲートから溶融樹脂を金型内に射出充満させ、成型品を形成するのと同時にその面に転写材を接着させる。樹脂成型品を冷却した後、成型用金型を開いて樹脂成型品を取り出す。
【0037】
その後、基体シートを剥離するとともに、成形品表面に活性エネルギー線を照射する。これにより、保護層を構成する樹脂が完全に架橋して、成形品表面に完全硬化した保護層を形成することができる。なお、ここでは、基体シートを剥離した後に、活性エネルギー線を照射してもよいし、活性エネルギー線を照射した後に、基体シートを剥離してもよい。
基体シートを剥がすと、基体シートと保護層との境界面で剥離が起こる。また、基体シート上に離型層を設けた場合には、基体シートを剥がすと、離型層と保護層との境界面で剥離が起こる。
照射する活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線等が挙げられる。活性エネルギー線の照射量は、用いる樹脂組成物の種類、保護層の膜厚等により適宜調整することができ、例えば、50〜1000mJ/cm2程度が挙げられる。これにより、保護層が成形品の最外層に配置されることとなり、薬品や摩擦から成型品や絵柄層等の機能層を保護することができる。
【0038】
ここで、成型品としては、特に限定されるものではないが、例えば、ワープロ、コンピュータ、テレビ、ディスプレイパネル、携帯電話等の各種のディスプレイ、液晶表示装置等に用いる偏光板の表面、透明プラスチック類からなるサングラスレンズ、度つきめがねレンズ、カメラのファインダーレンズ等の光学レンズ、各種計器の表示部、自動車、電車等の窓ガラス等が挙げられる。
これらの成型品は、特に樹脂成型品、木工製品もしくはこれらの複合製品などを挙げることができる。これらは、透明、半透明、不透明のいずれでもよい。また、成型品は、着色されていても、着色されていなくてもよい。その材料は、上記偏光板の表面、光学レンズ、各種計器の表示部、自動車、電車等の窓ガラス等を構成し得るものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂などの汎用樹脂が挙げられる。また、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリングプラスチックやポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂、シクロオレフィン樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチックを使用することができる。さらに、ガラス繊維や無機フィラー等の補強剤を添加した複合樹脂であってもよい。これらの材料は、単独で用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明の樹脂組成物、転写材及び成形品の製造方法について、実施例に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す「部」及び「%」は重量基準である。また、(メタ)アクリル当量は、ポリマーを臭化ナトリウムと臭素酸カリウムとの混合溶液と反応させた後、ヨウ化カリウム溶液を混合したものをデンプン溶液を指示薬としてチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する方法で測定した。水酸基価は、ポリマーをピリジン中で過剰の無水酢酸と反応させ、遊離してくる酢酸を水酸化カリウムで滴定する方法により測定した。エポキシ当量は、ポリマーの酢酸溶液を酢酸と臭化水素との混合溶液で滴定する方法で測定した。ポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーにてポリスチレン換算で求めた。
【0040】
実施例1:熱硬化性及び活性エネルギー線硬化性ポリマー溶液Aの合成
攪拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた反応装置に、
グリシジルメタアクリレート(以下GMAと略す) 35部
メチルメタクリレート(以下MMAと略す) 15部
ドデシルメルカプタン 0.3部
2,2'−アゾイソブチロニトリル(以下AIBNと略す) 1.5部
酢酸ブチル 200部
を仕込んだ後、窒素気流下で約1時間かけて90℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめ、
GMA 105部
MMA 45部
ドデシルメルカプタン 0.7部
AIBN 2部
からなる混合液を仕込んだ滴下ロートにより、窒素気流下で混合液を約2時間かけて滴下し、3時間90℃に保った後、AIBN2部を仕込み、1時間保温した。その後、120℃に昇温し、2時間保温した。
60℃まで冷却した後、窒素導入管を空気導入管に付け替え、
アクリル酸(以下AAと略す) 71部
メトキノン 0.4部
トリフェニルホスフィン 1部
を仕込み混合し、空気バブリング下にて、110℃まで昇温し、8時間保温した。その後、メトキノン0.3部を仕込み、冷却して、不揮発性分が50%となるように酢酸エチルを加え、ポリマー溶液Aを得た。
このポリマー溶液中に含まれるポリマーは、アクリル当量270g/eq、水酸基価207mgKOH/g、エポキシ当量8000g/eq、重量平均分子量20000であった。
【0041】
実施例2:熱硬化性及び活性エネルギー線硬化性ポリマー溶液Bの合成
実施例1における初期仕込みでのモノマー使用量を、GMA45部及びMMA5部とし、後仕込みでのモノマー使用量をGMA135部及びMMA15部に代え、AAの使用量を92部にした以外は実施例1と同様にしてポリマー溶液Bを得た。
得られたポリマー溶液中に含まれるポリマーは、アクリル当量230g/eq、水酸基価240mgKOH/g、エポキシ当量10000g/eq、重量平均分子量17000であった。
【0042】
実施例3:熱硬化性及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Cの調製
ポリマー溶液A 200部(固形分として100部)
アルミニウムトリスアセチルアセトン 10部
光重合開始剤(イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルス社製、以下同じ) 5部
を混合することで樹脂組成物Cを得た。
【0043】
実施例4:熱硬化性及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Dの調製
ポリマー溶液B 200部(固形分として100部)
テトラエトキシシラン 10部
アルミニウムトリスアセチルアセトネート 5部
光重合開始剤(イルガキュア184) 7部
を混合することで樹脂組成物Dを得た。
【0044】
実施例5:転写材1の作製
基体シートとして厚さ38μmのポリエステルフィルムを用い、基体シート上にメラミン樹脂系離型剤を、グラビア印刷法にて1μmの厚さに塗布し、離型層を形成した。
その上に、樹脂組成物Cからなる保護層をグラビア印刷法にて形成した。保護層の膜厚は5μmとした。150℃で30秒間、加熱することにより保護層を半硬化させ、絵柄層としてアクリル系インキ、接着層としてアクリル樹脂をグラビア印刷法にて順次印刷形成して転写材1を得た。
【0045】
実施例6:転写材2の作製
樹脂組成物として樹脂組成物Dを用いたこと、アンカー層を設け、それにウレタン系インキを使用したこと以外は実施例5と同様にして転写材2を得た。
【0046】
実施例7:成型品1の製造
実施例6の転写材1を用い、成型同時転写法を利用して成型品の表面に転写した後、基体シートを剥がし、紫外線を照射して保護層を完全に架橋硬化した。なお、成型条件は、樹脂温度240℃、金型温度55℃、樹脂圧力約300kg/cm2とした。成型品は、材質をアクリル樹脂とし、縦95mm、横65mm、立ち上がり4.5mm、コーナー部のR2.5mmのトレー状に成型した。紫外線照射条件は、120W/cm、6灯、ランプの高さ10cm、ベルトスピード15m/分とした。
【0047】
実施例8:成型品2の製造
実施例6の転写材2を用いたこと、紫外線照射条件が、120W/cm、2灯、ランプの高さ10cm、ベルトスピード2.5m/分であること以外は、実施例7と同様にした。
【0048】
比較例1
シリコン系樹脂を配合した保護層をグラビア印刷法にて形成した後、転写材作製時に加熱により保護層を完全に架橋硬化させたこと、転写後に紫外線を照射しないことのほかは実施例5及び7と同様に成形品を形成した。
【0049】
比較例2
ウレタンアクリレート(UA−306H、共栄社化学(株)製)70部
反応性モノマー(ライトアクリレートTMP-A、共栄社化学(株)製)30部
光重合開始剤(イルガキュア184) 5部
からなる組成物を保護層として用い、グラビア印刷法にて形成した後、転写箔作製時に紫外線照射により保護層を完全硬化させたこと、転写後に紫外線を照射しないことのほかは実施例5及び7と同様に成形品を形成した。
転写材作製時の紫外線照射条件は、120W/cm、2灯、ランプ高さ10cm、ベルトスピード20m/分とした。
【0050】
比較例3
実施例1における初期仕込みでのモノマー使用量を、GMA25部及びMMA25部、後仕込みでのモノマー使用量を、GMA75部及びMMA75部に代え、AAの使用量を51部にした以外は実施例1と同様にして熱硬化性及び活性エネルギー線硬化性ポリマー溶液Eを得、このポリマー溶液Eを用いた以外は実施例3と同様にして熱硬化性及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Fを得た。
樹脂組成物Fからなる組成物を保護層として用いたこと以外は、実施例5及び7と同様に成形品を形成した。
このポリマーは、アクリル当量350g/eq、水酸基価155mgKOH/g、エポキシ当量10000g/eq、重量平均分子量19000であった。
【0051】
比較例4
実施例1におけるAAの仕込量を67部にした以外は実施例1と同様にして熱硬化性及び活性エネルギー線硬化性ポリマー溶液Gを得、このポリマー溶液Gを用いた以外は実施例3と同様に樹脂組成物Hを得た。
樹脂組成物Hからなる組成物を保護層として用いたこと以外は、実施例5及び7と同様に成型品を形成した。
このポリマーは、アクリル当量280g/eq、水酸基価190mgKOH/g、エポキシ当量6000g/eq、重量平均分子量50000であった。また、このポリマーは、やや糸引き気味であった。
【0052】
比較例5
活性エネルギー線硬化性ポリマー溶液A 200部(固形分として100部)
多官能イソシアネート(コロネートHX、日本ポリウレタン工業(株)社製) 10部
光重合開始剤(イルガキュア184) 5部
を混合することで、熱硬化性及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Iを得た。
樹脂組成物Iからなる組成物を保護層として用いたこと以外は、実施例5及び7と同様に成型品を作成した。
【0053】
試験例
実施例7、8及び比較例1〜5について、それぞれ被膜特性、クラックの有無、耐薬品性、耐摩耗性、可使時間の評価を行った。
(1)被膜特性:転写材作製時における樹脂組成物の被膜特性を目視により判断し、塗膜が平滑なものを○、ややスジが発生するものを△、全面に渡りスジが発生するものを×とした。
(2)クラックの有無:成型品曲面の状態を観察し、目視により判断し、クラック発生無しを○、やや発生を△、かなり発生を×とした。
(3)耐薬品性:ガーゼにメタノールを含浸させ、50往復擦った後の表面状態を目視により判断し、変化無しを○、やや白化を△、全面白化を×とした。
(4)耐摩耗性:#0000のスチールウールを使用し、100g/cm2及び300 g/cm2の荷重をかけ、可動距離2cm、2往復/秒で、10往復後の表面の傷つき具合を目視により判断し、数本しかキズが生じなかったものを○、十数本のキズが生じたものを△、全面キズが生じたものを×とした。
(5)可使時間:樹脂組成物を40℃の恒温槽に放置し、可使時間を測定した。可使時間は、液の粘度が初期の倍になった時点とした。
得られた結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1によれば、実施例7及び8は、耐摩耗性及び耐薬品性に優れ、成型品曲面部においてクラックが発生していない。これに対して、比較例1ではクラック、耐摩耗性、耐薬品性のいずれも満足のいくものではない。比較例2は耐摩耗性、耐薬品性の面で優れているが、クラックが多く発生した。比較例3ではクラックは発生しないものの、耐摩耗性が満足のいくものではなかった。比較例3は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有されるポリマーのアクリル当量が特定範囲を超えているために耐摩耗性が劣っている。比較例4では、エポキシ当量が特定範囲を外れているために被膜特性が悪く、また、組成物の安定性が悪かった。比較例5は、樹脂組成物の安定性が悪く、可使時間が短かった。
一方、実施例7及び8で用いた転写材は、保護層を構成する樹脂組成物が実用に耐えうるだけの可使時間を有しているものであった。
【0056】
本発明によれば、特定の樹脂組成物の配合とすることにより、2段階での硬化によってより耐摩耗性、耐薬品性、可使期間等に優れた樹脂組成物を提供することができ、したがって、このような樹脂組成物を転写材の保護層に用いる場合には、一次硬化により保護層の半硬化を行って、品質を低下させることなく、転写材としての流通を実現することができる。
また、その転写材を成型品の製造に使用して、成形品表面に接着させた後に二次硬化により完全に硬化させることにより、低コストで、耐摩耗性、耐薬品性等に優れた成形品を製造することができる。特に、成形品表面に複雑な曲面がある場合においても、その曲面部におけるクラックの発生を防止することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型性を有する基体シート上に、
(メタ)アクリル当量100〜300g/eq、
水酸基価50〜550mgKOH/g、
エポキシ当量7000g/eq以上、
重量平均分子量5000〜100000のポリマーと、イソシアネート基を含有しない熱硬化剤とを有効成分として含有する熱硬化性及び活性エネルギー線硬化性を有する樹脂組成物により形成された保護層を有してなる転写材。
【請求項2】
前記保護層が、前記樹脂組成物の熱架橋反応生成物により形成された保護層である請求項1に記載の転写材。
【請求項3】
保護層の上に絵柄層及び接着層がこの順に設けられてなる請求項1又は2に記載の転写材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の転写材を成型品表面に接着させた後、基体シートを剥離するとともに、前記成形品表面に活性エネルギー線を照射することにより、前記成形品表面に保護層を形成することを特徴とする成型品の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の転写材を成型品金型内に挟み込み、キャビティー内に樹脂を射出充満させて成型品を形成すると同時にその表面に転写材を接着させた後、基体シートを剥離するとともに、前記成形品表面に活性エネルギー線を照射することにより、前記成形品表面に保護層を形成することを特徴とする成型品の製造方法。

【公開番号】特開2011−168054(P2011−168054A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77121(P2011−77121)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【分割の表示】特願2004−548095(P2004−548095)の分割
【原出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【出願人】(000162076)共栄社化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】