説明

樹脂組成物並びに積層体及びその製造方法

【課題】ポリ乳酸系樹脂を含有する樹脂組成物でありながら、高温の加熱や長時間の加熱による熱履歴を経る場合においても、成形加工性の低下並びに劣化物及び異物の発生を抑制できる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(1)ポリ乳酸系樹脂と、(2)エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーと、(3)フッ素系重合体、ポリアルキレンオキサイド、脂肪酸アミド、及び酸化防止剤からなる群から選択される化合物と、を含有する樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂を含有する樹脂組成物、並びに、該樹脂組成物を含む積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題等に鑑み、植物原料に由来し、生分解性等を有するポリ乳酸系樹脂を含有する樹脂組成物に関する検討が盛んに行われている。
例えば、ポリ乳酸系樹脂を含有する樹脂組成物における成形加工性が改善された樹脂組成物であるとして、乳酸系樹脂(成分(A))及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(成分(B))、並びに/又は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー(成分(C))を含んでなる樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、高い耐衝撃性を有するポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物であるとして、ポリ乳酸系重合体(A)と、ポリ塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、1,2−ポリブタジエン、トランス−1,4−ポリイソプレンから選ばれる一種または二種以上からなる熱可塑性樹脂(B)と、グラフト共重合体(C)とからなる耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
一方、アイオノマーが示す高い物性(耐摩耗性等)に着目し、アイオノマーを含む樹脂組成物に関する検討も行われている。
例えば、高い物性を有する難燃性の再生プラスチック材料であるとして、1種又は複数種のポリマーと、アイオノマー樹脂からなる相溶化剤と、難燃剤と、を含む難燃性プラスチック材料が知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、適切な剥離強度を有するカバーテープのうちの一層として、主成分としてのアイオノマーと界面活性剤とフッ素系ゴムとを含む熱可塑性樹脂層が知られている(例えば、特許文献4参照)。
また、耐傷付き性、耐磨耗性等に優れた重合体組成物であるとして、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、そのアイオノマー又はこれらの組成物から選ばれる樹脂成分100重量部に対し、平均粒径が1〜400μmのフッ素系樹脂粉末を1〜10重量部の割合で配合してなる重合体組成物が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−2773号公報
【特許文献2】特開2005−320409号公報
【特許文献3】特開2003−96318号公報
【特許文献4】特開2004−231208号公報
【特許文献5】特開2005−120268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のポリ乳酸系樹脂を含有する樹脂組成物では、特に、高温の加熱や長時間の加熱による熱履歴が加わる場合(例えば、押出しコーティングによって高温で成形する場合)、成形加工性が低下することや、劣化物(コゲ)や異物が発生する場合があった。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、ポリ乳酸系樹脂を含有する樹脂組成物でありながら、高温の加熱や長時間の加熱による熱履歴が加わる場合(例えば、押出しコーティングによって高温で成形する場合)においても、成形加工性の低下(ドローダウンの低下、ネックインの増大)を抑制でき、劣化物及び異物の発生を抑制できる樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記樹脂組成物を含み、平滑性に優れ、劣化物及び異物の発生が抑制された樹脂層を有する積層体を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記樹脂組成物を用い、押出しコーティングによる成形加工性に優れ、劣化物及び異物の発生を抑制できる積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> (1)ポリ乳酸系樹脂と、(2)エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーと、(3)フッ素系重合体、ポリアルキレンオキサイド、脂肪酸アミド、及び酸化防止剤からなる群から選択される化合物と、を含有する樹脂組成物。
<2> 前記(1)ポリ乳酸系樹脂及び前記(2)アイオノマーの総量を100質量%としたとき、前記(1)ポリ乳酸系樹脂の含有量が99〜1質量%であり、前記(2)アイオノマーの含有量が1〜99質量%であり、前記(3)化合物の含有量が、前記(1)ポリ乳酸系樹脂及び前記(2)アイオノマーの総量に対して100〜10000ppmである<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 押出しコーティングに用いられる<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4> 前記(2)アイオノマーが、二価金属イオンで中和されたエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマーである<1>〜<3>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<5> 基材上に、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂層を有する積層体。
<6> 基材上に、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の樹脂組成物を押出しコーティングして樹脂層を形成する工程を有する積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリ乳酸系樹脂を含有する樹脂組成物でありながら、高温の加熱や長時間の加熱による熱履歴が加わる場合(例えば、押出しコーティングによって高温で成形する場合)においても、成形加工性の低下(ドローダウンの低下、ネックインの増大)を抑制でき、劣化物及び異物の発生を抑制できる樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、前記樹脂組成物を含み、平滑性に優れ、劣化物及び異物の発生が抑制された樹脂層を有する積層体を提供することができる。
また、本発明によれば、前記樹脂組成物を用い、押出しコーティングによる成形加工性に優れ、劣化物及び異物の発生を抑制できる積層体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、(1)ポリ乳酸系樹脂と、(2)エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーと、(3)フッ素系重合体、ポリアルキレンオキサイド、脂肪酸アミド、及び酸化防止剤からなる群から選択される化合物と、を含有する。
一般に、ポリ乳酸系樹脂を含有する樹脂組成物は、特に、高温の加熱や長時間の加熱による熱履歴が加わる場合(例えば、押出しコーティングによって成形する場合)に、成形体に劣化物(コゲ)や異物が発生したり、成形加工性が損なわれる場合がある。
そこで、樹脂組成物を上記本発明の構成とすることにより、ポリ乳酸系樹脂を含有する樹脂組成物でありながら、高温の加熱や長時間の加熱による熱履歴が加わる場合(例えば、押出しコーティングによって高温で成形する場合)においても、成形加工性の低下(ドローダウンの低下、ネックインの増大)並びに劣化物及び異物の発生を抑制できる、という効果が得られる。
従って、本発明の樹脂組成物を用いることで、長時間にわたる熱履歴による劣化物や異物の発生を抑制しながら、平滑性の高いコーティングフィルムを連続的に生産できる。
前記(2)アイオノマー及び前記(3)化合物の少なくとも一方を含まない場合、上記の効果が不十分である。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、前記(1)ポリ乳酸系樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
同様に、本発明の樹脂組成物は、前記(2)エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
同様に、本発明の樹脂組成物は、前記(3)フッ素系重合体、ポリアルキレンオキサイド、脂肪酸アミド、及び酸化防止剤からなる群から選択される化合物を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0011】
前記(1)ポリ乳酸系樹脂及び前記(2)アイオノマーの含有量には特に限定はないが、本発明による効果をより効果的に奏する観点より、前記(1)ポリ乳酸系樹脂及び前記(2)アイオノマーの総量を100質量%としたとき、前記(1)ポリ乳酸系樹脂の含有量が99〜1質量%であり、前記(2)アイオノマーの含有量が1〜99質量%であることが好ましい。
また、前記(3)化合物の含有量には特に限定はないが、本発明による効果をより効果的に奏する観点より、前記(1)ポリ乳酸系樹脂及び前記(2)アイオノマーの総量に対して100〜10000ppmであることが好ましい。
上記の好ましい範囲の中でも、前記(1)ポリ乳酸系樹脂及び前記(2)アイオノマーの総量を100質量%としたとき、前記(1)ポリ乳酸系樹脂の含有量が99〜1質量%であり、前記(2)アイオノマーの含有量が1〜99質量%であり、前記(3)化合物の含有量が、前記(1)ポリ乳酸系樹脂及び前記(2)アイオノマーの総量に対して100〜10000ppmであることが特に好ましい。
【0012】
前記(3)化合物の含有量について、特に好ましい範囲は以下のとおりである。
前記(3)化合物がフッ素系重合体である場合、該フッ素系重合体の含有量は、前記(1)ポリ乳酸系樹脂及び前記(2)アイオノマーの総量に対して200〜2000ppmであることが好ましい。該フッ素系重合体は、上記200〜2000ppmの範囲においても、本発明による効果を効果的に奏することができる。
前記(3)化合物がポリアルキレンオキサイドである場合、該ポリアルキレンオキサイドの含有量は、前記(1)ポリ乳酸系樹脂及び前記(2)アイオノマーの総量に対して500〜5000ppmであることが好ましい。
前記(3)化合物が脂肪酸アミドである場合、該脂肪酸アミドの含有量は、前記(1)ポリ乳酸系樹脂及び前記(2)アイオノマーの総量に対して500〜5000ppmであることが好ましい。
前記(3)化合物が酸化防止剤である場合、該酸化防止剤の含有量は、前記(1)ポリ乳酸系樹脂及び前記(2)アイオノマーの総量に対して500〜5000ppmであることが好ましい。
【0013】
<(1)ポリ乳酸系樹脂>
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂を少なくとも1種含有する。
前記ポリ乳酸系樹脂には特に限定はないが、重合に供するモノマーの質量に換算して、乳酸成分を50質量%以上含むポリマーを好適に用いることができる。
前記ポリ乳酸系樹脂の具体例としては、例えば、(a)ポリ乳酸、(b)乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(c)乳酸と脂肪族多価アルコールと脂肪族多塩基酸とのコポリマー、(d)上記(a)〜(c)の少なくとも2つの組み合わせによる混合物、(e)上記(a)〜(d)と生分解性を有するポリエステル類との混合物が挙げられる。
【0014】
本発明におけるポリ乳酸の原料モノマーである乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸若しくはそれらの混合物、又は、乳酸の環状2量体であるラクタイドを挙げることができる。
特に、L−乳酸とD−乳酸とを混合して用いる場合、得られたポリ乳酸においては、L−乳酸由来の構造単位及びD−乳酸由来の構造単位のいずれか一方の含有量が75質量%以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明におけるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量には特に限定はないが、本発明の効果をより効果的に奏する観点より、3万〜100万が好ましく、5万〜75万がより好ましく、8万〜50万が特に好ましい。
前記ポリ乳酸系樹脂のメルトフローレート(190℃、2160g荷重)としては、成形性の観点より、0.1〜100g/10分が好ましく、0.5〜50g/10分がより好ましく、2〜20g/10分が更に好ましい。
【0016】
−ポリ乳酸系樹脂の製造方法−
前記ポリ乳酸系樹脂の製造方法の具体例としては、例えば、
(A)乳酸又は乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸との混合物を原料として、直接脱水重縮合する方法(例えば、米国特許第5,310,865号に示されている製造方法)、
(B)乳酸の環状二量体(ラクタイド)を溶融重合する開環重合法(例えば、米国特許2,758,987号に開示されている製造方法)、
(C)乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸との環状2量体、例えば、ラクタイドやグリコライドとε−カプロラクトンとを、触媒の存在下、溶融重合する開環重合法(例えば、米国特許4,057,537号に開示されている製造方法)、
(D)乳酸、脂肪族二価アルコール、及び脂肪族二塩基酸の混合物を、直接脱水重縮合する方法(例えば、米国特許5,428,126号に開示されている製造方法)、
(E)ポリ乳酸と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸とのポリマーを、有機溶媒存在下に縮合する方法(例えば、欧州特許公報0712880A2号に開示されている製造方法)、
(F)乳酸を触媒の存在下、脱水重縮合反応を行うことによりポリエステル重合体を製造するに際し、少なくとも一部の工程で、固相重合を行う方法、
等を挙げることができるが、その製造方法には、特に限定されない。
【0017】
また、少量のトリメチロールプロパン、グリセリンのような脂肪族多価アルコールと、ブタンテトラカルボン酸のような脂肪族多塩基酸と、多糖類等のような多価アルコール類と、を共存させて共重合させても良く、また、ジイソシアネート化合物等のような結合剤(高分子鎖延長剤)を用いて分子量を上げてもよい。
【0018】
(ポリエステル類)
前記生分解性を有するポリエステル類とは、後述する脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族二価アルコール及び脂肪族二塩基酸、芳香族二塩基酸を種々組み合わせて製造できる生分解性を有する脂肪族ポリエステル類や芳香族ポリエステルに脂肪族多価カルボン酸や脂肪族多価アルコールなどの成分を共重合させ生分解性を付与した芳香族ポリエステル類を包含する。
前記脂肪族ポリエステル類としては、例えばポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、β−ヒドロキシ酪酸とβ−ヒドロキシ吉草酸とのコポリマー、ポリカプロラクトン等が挙げられる。生分解性を有する芳香族ポリエステル類としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンブチレート(PBT)などをベースとした変性PETや変性PBTが挙げられる。
【0019】
特に、ポリブチレンサクシネート及びポリブチレンサクシネートアジペート(ビオノーレ、商品名、昭和高分子社製)、ポリカプロラクトン(プラクセル、商品名、ダイセル社製)、変性PET(バイオマックス、商品名、デュポン社製)、変性PBT(エコフレックス、商品名、BASF社製)は、既に容易且つ安価に入手可能で好ましい。
また、これらのポリエステル類は、ジイソシアネート等の結合剤によってポリマー鎖が延長されたものであってもよく、また、少量のトリメチロールプロパン、グリセリンのような脂肪族多価アルコール、ブタンテトラカルボン酸のような脂肪族多塩基酸、多糖類等のような多価アルコール類を共存させて、共重合されたものでもよい。
また、本発明においては、発明の目的を損なわない範囲で生分解性を有するポリエステル類を軟質化材として用いてもよい。
ポリエステル類の製造方法としては、PETやPBTの製造方法やポリ乳酸の製造方法と同様な方法を用いることができ、その方法は限定されない。
【0020】
(脂肪族ヒドロキシカルボン酸)
前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等を挙げることができ、さらに、脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状エステル、例えば、グリコール酸の2量体であるグリコライドや6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンを挙げることができる。これらは、単独で又は二種以上組合せて使用することができる。
【0021】
(脂肪族二価アルコール)
前記脂肪族二価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ一ル、1,4−ベンゼンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上の組合せて使用することができる。
【0022】
(脂肪族二塩基酸)
前記脂肪族二塩基酸の具体例としては、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、フェニルコハク酸、1,4−フェニレンジ酢酸等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上の組合せて使用することができる。
【0023】
市場で入手可能なポリ乳酸系樹脂として、三井化学株式会社の商品名レイシアで販売されている、H−100、H−140、H−400、H−360、H−280、M−151S、Q04,Q52などがある。また、ネイチャーワークス社の商品名インジオ(Ingeo)で販売されている、7032D、4043D、3052D、2003D、7001D、8052Dなどがある。
【0024】
<(2)エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー>
本発明の樹脂組成物は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーの少なくとも1種を含有する。
前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーとしては、例えば、ベースポリマーとしてのエチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体が金属イオンによって中和されたアイオノマー(即ち、ベースポリマーとしてのエチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体のカルボン酸基が金属イオンによって架橋された構造のアイオノマー)を好適に用いることができる。
【0025】
前記ベースポリマーとしてのエチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸から選ばれるモノマーとを少なくとも共重合成分として共重合させた重合体であり、必要に応じて、不飽和カルボン酸以外のモノマーが共重合されてもよい。
前記エチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体は、本発明の効果をより効果的に奏する観点より、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸共重合体との2元ランダム共重合体とするのが好ましい。
【0026】
前記α,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル(マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等)、無水マレイン酸モノエステル(無水マレイン酸モノメチル、無水マレイン酸モノエチル等)等の炭素数4〜8の不飽和カルボン酸またはハーフエステルが挙げられる。
中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0027】
共重合されても良いα,β−不飽和カルボン酸以外のモノマーとしては、α,β−不飽和カルボン酸と炭素数1〜8のアルキルとのエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ノルマルブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ノルマルブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、等)等がある。そのほかに、一酸化炭素、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなども共重合可能なモノマーである。当然ながら、これらの共重合可能なモノマーは、1種又は2種以上組み合わせて共重合されてもよい。
【0028】
エチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体中におけるα,β−不飽和カルボン酸に由来する構成単位の重合比率(質量比)は、1〜25質量%が好ましく、より好ましくは2〜20質量%である。
【0029】
本発明におけるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーとしては、前述のベースポリマーに含まれるカルボン酸基が金属イオンによって架橋された構造のアイオノマーを用いることができる。
前記金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどの1価金属イオン、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅、亜鉛などの2価金属イオン、アルミニウム、鉄などの3価金属イオン等が挙げられる。中でも、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、2価金属イオンが好ましい。
【0030】
前記アイオノマーの中和度は、5〜90%が好ましく、10〜80%がより好ましい。
中和度は、5%以上であると押出加工性をより向上させることができ、90%以下であると成形時の流動性の点で有利である。
ここで、中和度は、前記エチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体(ベースポリマー)中に含まれる全カルボン酸基のうち、金属イオンによって中和されているカルボン酸基の割合(%)を指す。
【0031】
また、前記アイオノマーのメルトフローレート(190℃、2160g荷重)としては、成形性や機械的特性の観点より、0.01〜100g/10分が好ましく、0.1〜50g/10分がより好ましく、0.5〜20g/10分が更に好ましい。
【0032】
前記エチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体または前記エチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーの具体例としては、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体あるいはこれらをベースポリマーとするアイオノマーが挙げられる。
市販品として、例えば、三井・デュポンポリケミカル社製の商品名ハイミラン(Himilan)シリーズ、商品名ニュクレル(Nucrel)シリーズ、米国デュポン社製の商品名サーリン(Surlyn)シリーズ等を使用することができる。また、共重合されても良いα,β−不飽和カルボン酸以外のモノマーも含むエチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体としては、米国デュポン社製の商品名エルバロイ(Elvaloy)シリーズ、バイネル(Bynel)シリーズ等を使用することができる。
【0033】
前記「ニュクレル」の銘柄としては、例えば、AN4214C、N0903HC、N0908C、N410、N1035、N1050H、N1108C、N1110H、N1207C、N1214、N1525、N1560、N0200H、AN4311、AN4213C、N035C等が挙げられる。
また、前記「ハイミラン」の銘柄としては、例えば、1554、1554W、1555、1557、1601、1605、1650、1652、1652 SR、1652 SB、1702、1705、1706、1707、1855、1856等が挙げられる。
【0034】
前記エチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体は、例えば、エチレン及びα,β−不飽和カルボン酸(及び、必要に応じ他の不飽和モノマー)を高圧ラジカル重合法で共重合させることにより作製することができる。また、そのアイオノマーは、例えば、常法に従って前記エチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体の中和反応により作製することができる。
【0035】
次に、前記(3)化合物である、フッ素系重合体、ポリアルキレンオキサイド、脂肪酸アミド、酸化防止剤について説明する。
【0036】
<フッ素系重合体>
本発明におけるフッ素系重合体としては、主骨格にフッ素原子を含むフッ素系重合体を好適に用いることができる。
本発明におけるフッ素系重合体としては、例えば、一分子中に、ビニル基と、該ビニル基に直接結合した、フッ素原子、フルオロアルキル基及びフルオロアルコキシ基の少なくとも1つと、を有する化合物(フッ素系モノマー)の少なくとも1種を重合させて得られたフッ素系重合体を挙げることができる。
前記フッ素系モノマーの例としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、1,2−ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルを挙げることができる。
本発明におけるフッ素系重合体は、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、及びテトラフルオロエチレンの少なくとも1種を重合させて得られた単独重合体又は共重合体を含むことが好ましい。さらに、本発明におけるフッ素系重合体は、該単独重合体及び該共重合体からなる群から選択された2種以上の混合物であってもよい。
また、本発明におけるフッ素系重合体としては、前記フッ素系モノマーと、非フルオロビニルモノマー(エチレン、プロピレン等)と、の共重合体を用いることもできる。
【0037】
ところで、フッ素系重合体には、常温ではゴム弾性領域にあり、高温になっても融点を示さないエラストマー性能を示すもの(以下、「フッ素ゴム」ということがある)と、明確に融点を示す樹脂性能を示すもの(以下、「フッ素樹脂」ということがある)の二種類がある。
本発明におけるフッ素系重合体としては、フッ素ゴム及びフッ素樹脂のいずれであってもよいが、本発明の効果をより効果的に奏する観点からは、フッ素樹脂が好ましい。
【0038】
ここで、前記フッ素ゴムと前記フッ素樹脂との相違点について、更に詳細に説明する。
フッ素樹脂及びフッ素ゴムは、どちらも分子中にフッ素原子を含む高分子であるが、両者には次に説明するように相違点がある。
【0039】
一般に、「ゴム」(あるいは「エラストマー」)と呼ばれる物質は、ゴム状態においてエントロピー弾性(ゴム弾性)を示す高分子である。ゴム状態とは、物質がとりうる状態のうち、アモルファス(非結晶、無定形)な高分子液体の状態であると定義される。特定の物質のゴム状態は、その物質のガラス転移温度(Tg)より高温側にある。エントロピー弾性(ゴム弾性)とは、変形されてエントロピーが小さくなった系がエントロピーが大きい未変形の状態に自発的に戻ろうとすることに基づく弾性である。エントロピー弾性は、通常、数100%に及ぶ伸びと、106 N/m2 程度の小さな弾性率と、を有するものとされている。物理的な高分子の絡み合いによって恒久的な弾性を示す物質は少なく、多くは架橋という方法で弾性化している。ASTMの定義で言うと、エントロピー弾性とは、物質を無希釈状態で室温(18〜29℃)において長さを2倍に伸ばし、且つ緩める前に1分間そのまま保持しても、1分後には元の長さの1.5倍未満に収縮するということになっている。
【0040】
前記「ゴム」に対して、「樹脂」は無定形な高分子ではなく、結晶性を持ち、そして室温(25℃)において上記のエントロピー弾性を示さない高分子である。簡単に言うと、高分子物質のうち、ゴムでないものは全て樹脂と考えて差し支えない。
もう少し詳しく言うと、無定形高分子(ゴム)の場合、ガラス転移点(Tg)を示すが融点を示さず、樹脂は融点を示すがガラス転移点が分かりにくくなってきて、理論的には結晶性樹脂になるとTgを示さなくなる。一般に、Tg以下の温度の高分子はガラスのような性質を持ち、硬くて壊れやすくなる。
【0041】
現在工業的に利用されているフッ素ゴムは限られており、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体及びテトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が主である。これらは、Tgが−35℃から−5℃ぐらいであって、常温(25℃)ではゴム弾性領域にあり、そして高温にしても融点を示さない。
【0042】
フッ素ゴムと違って融点を示すフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(TFE/P)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体(THV)等が挙げられる。
フッ素樹脂は、フッ素ゴムに比べて耐熱性がよく、しかも、ステアリン酸塩系の滑剤と併用された場合にその滑剤との相互作用(反応)を低減することができる。
【0043】
本発明において、フッ素系重合体としてフッ素樹脂を用いる場合、該フッ素樹脂は、100〜300℃の範囲内の融点を示すことが好ましい。
該フッ素樹脂の融点が100℃以上であると、樹脂組成物の作製時や成形時において該フッ素樹脂を溶融させ易くなるため、樹脂組成物又は成形体中における該フッ素樹脂の分散性をより向上させることができる。即ち、樹脂組成物又は成形体中に該フッ素樹脂をより均一性よく分散でき、樹脂組成物又は成形体中における該フッ素樹脂の分散粒径をより小さくすることができる。
該フッ素樹脂の融点が300℃以下であると、樹脂組成物の作製温度や成形体の成形温度をより低くすることができるため、樹脂組成物の作製時や成形時における、ポリ乳酸系樹脂やエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーの分解をより効果的に抑制できる。
【0044】
本発明におけるフッ素樹脂の融点のより好ましい範囲は、110〜230℃である。
先に例として挙げたフッ素樹脂のうちで、融点が100〜300℃のものは、FEP、PCTFE、ETFE、PVDF、TFE/P、THV等である。
更にこれらの中で、融点が110〜230℃であるものは、PVDF、TFE/P、THV等である。
中でも、安定性の観点からは、THVが最適である。
THVは、本発明の樹脂組成物にステアリン酸系滑剤を含有させる場合において、ステアリン酸系滑剤との反応性も良好である。
【0045】
また、本発明におけるフッ素系重合体は、必要に応じ、無機又は有機の滑剤やアンチブロッキング剤と併用してもよい。
【0046】
本発明の樹脂組成物が上記で説明したフッ素系重合体(とくにフッ素樹脂)を含むことにより、熱安定性に劣るポリ乳酸系樹脂を含む樹脂組成物(コンパウンド)の製造時や加工時などにおいて、熱履歴による劣化物(コゲ)の発生を低減でき、熱履歴による異物の発生低減でき、成形加工性の低下が抑制される(例えば、平滑なフィルムを連続的に生産できる)という効果を示す。
【0047】
このようなフッ素系重合体として商業的に入手できるものとして、例えば以下のような製品が知られている。
例えば、スリーエム社の商品名ダイナロンで知られている以下のシリーズが知られている。
FX5911:フッ素含有量が69質量%、融点が120℃のテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド3元共重合体(フッ素樹脂)
FX5920:ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元重合体(フッ素ゴム)
FX5920A:ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元重合体(フッ素ゴム)97質量%、ポリエチレングリコールおよび炭酸カルシウムおよび酸化チタンを合計3質量%
FX9613:ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元重合体90質量%、タルク6質量%、炭酸カルシウム2質量%、酸化ケイ素2質量%の混合物
【0048】
また、デュポンエラストマー株式会社の商品名バイトンフリーフローで示される以下のシリーズが知られている。
10:フッ素ゴム100質量%、
GB PL200:フッ素ゴムとフッ素樹脂とのアロイ
GB:GBPL200 50質量%、MFR1.0g/10分の線状低密度ポリエチレン 50質量%
SC:複数のフッ素系重合体とエチレンコポリマーとのアロイ
RC:SCとワックスの混合物
【0049】
なお、ここで例示したのは市場で容易に入手できる製品の一例であり、本発明におけるフッ素系重合体はこれらの商品には限定されない。
【0050】
<ポリアルキレンオキサイド>
本発明におけるポリアルキレンオキサイドの原料モノマーであるアルキレンオキサイド又はアルキレングリコールとしては、炭素数2〜6のアルキレンオキサイド又は炭素数2〜6のアルキレングリコールが挙げられる。
前記炭素数2〜6のアルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチルオキサイド、ヘキシルオキサイド等、が挙げられる。
前記炭素数2〜6のアルキレングリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ブチレングリコール、ペンチルグリコール、ヘキシルグリコール等、が挙げられる。
本発明におけるポリアルキレンオキサイドとしては、入手しやすく、取扱いやすいことから、ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)が好ましい。
【0051】
また、本発明におけるポリアルキレンオキサイドのモル質量には特に限定はないが、本発明の効果をより効果的に奏する観点より、200〜2万が好ましく、1000〜1万がより好ましく、2000〜8000が特に好ましい。
【0052】
また、本発明の樹脂組成物にポリアルキレンオキサイドが含まれる場合、該樹脂組成物には、ポリアルキレンオキサイドが1種のみ含まれていてもよいし2種以上含まれていてもよい。
【0053】
<脂肪酸アミド>
本発明における脂肪酸アミドは、脂肪酸(RCOOH;ここでRはアルキル基である)から誘導されるアミド化合物であり、具体的には、RCONH〔Rはアルキル基である〕で示される第一アミド、(RCO)NH〔Rはアルキル基である〕で示される第二アミド、又は(RCO)N〔Rはアルキル基である〕で示される第三アミドを用いることができる。
本発明における脂肪酸アミドとして、具体的には、ステアロアミド(stearamide)、オレイル・アミド(oleyl amide)、エルシル・アミド(erucyl amide)、ベヘン・アミド(behen amide)、エチレンビス・ステアロアミド(ethylenebis(stearamie) )、ステアリル・オレイルアミド(stearyl oreylamide)、N−ステアリル・エルクアミド(N−stearyl−erucamide)、N−オレイル・パルミトアミド(N−oleyl−palmitamide)などが挙げられる。
【0054】
また、本発明の樹脂組成物に脂肪酸アミドが含まれる場合、該樹脂組成物には、脂肪酸アミドが1種のみ含まれていてもよいし2種以上含まれていてもよい。
【0055】
<酸化防止剤>
本発明における酸化防止剤としては、フェノール構造を有したラジカル連鎖反応禁止剤を用いることができる。
本発明における酸化防止剤として、具体的には、2,6−t−ブチル−p−クレゾール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル}2,4,8,10−テトラオキサスピロ{5,5}ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン、ビス{3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グリコールエステル、トコフェロール、ペンタエリスリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。これらフェノール系酸化防止剤を1種または2種以上組み合わせて用いても良い。
【0056】
また、本発明の樹脂組成物に酸化防止剤が含まれる場合、該樹脂組成物には、酸化防止剤が1種のみ含まれていてもよいし2種以上含まれていてもよい。
【0057】
本発明の樹脂組成物には、前記成分に加え、さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、耐候安定剤、滑剤、防雲剤などの添加剤を添加してもよい。
【0058】
また、本発明の樹脂組成物は、上記以外の他のポリマーを含んでいてもよい。
他のポリマーとしてはポリオレフィンを用いることができ、具体的には、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、エチレンと共重合するエチレン以外のα−オレフィン(プロピレン、ブテン、へキセン、オクテン等)の量を多くして結晶性を低下させるか実質結晶性を示さないエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー、ホモポリプロピレン、プロピレン系共重合体(プロピレンとプロピレン以外のα―オレフィンとの共重合体)、ポリブテン、及びその他オレフィン系(共)重合体、並びにこれらのポリマーブレンド等を挙げることができる。
【0059】
本発明の樹脂組成物の調製は、既述の各成分を同時に又は逐次にドライブレンド又はメルトブレンドすることにより行なえる。
ドライブレンドによる場合は、成形機中で各成分が溶融可塑化されて均一に溶融混合され、メルトブレンドによる場合は、単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサーなどの各種ミキサー、ロール、各種ニーダーなどを用いて溶融混合される。混合性の点では、メルトブレンドが好ましい。混合順序には、特に制限はない。
【0060】
本発明の樹脂組成物は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリスチレン、ポリブテン、ポリプロピレン、ポリエチレン、紙、アルミニウム箔、金属蒸着フィルム等の各種基材上に、押出しコーティングにより付与して樹脂層を形成する用途に使用することができる。即ち、基材上に、樹脂組成物を押出しコーティングして樹脂層を形成する工程を有する積層体の製造方法に用いることができる。このような製造方法により、基材上に、本発明の樹脂組成物を含む樹脂層を有する積層体を得ることができる。得られた積層体における樹脂層は、平滑性に優れ、劣化物(コゲ)及び異物の発生が抑制される。
本発明の樹脂組成物は、特に、加工温度200〜270℃の条件の押出しコーティングに用いることで、本発明の効果がより効果的に奏される。
ここで、加工温度とは、押出しコーティング時における樹脂組成物のT−ダイ直下の樹脂温度をさす。
【0061】
基材上には、接着剤を介して付与してもよいし、基材表面に直接付与してもよい。接着剤としては、高圧法低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂や、ポリエステルポリオールあるいは2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリエステルウレタンポリオールのいずれかの単体又はその混合物に架橋剤を配合して得られる接着剤組成物等の公知のアンカーコート剤を選択することができる。
【0062】
なお、本発明の樹脂組成物を付与する基材の表面は、接着力を向上させるために、例えばコロナ放電処理等の公知の表面処理を予め施してもよい。また、樹脂加工時にオゾン処理等の公知の処理を施してもよい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
〔実施例1〕
<樹脂組成物の調製>
以下に示す組成の各成分を、二軸押出機(30mmφ)により、樹脂温度180℃、スクリュー回転数150rpmの条件にて溶融混練し、樹脂組成物を得た。
−組成−
(1)ポリ乳酸系樹脂〔三井化学(株)製、商品名レイシア、型番H−100、MFR(190℃、2160g荷重)8g/10分)〕 … 75質量部
(2)エチレン・メタクリル酸共重合体アイオノマー〔メタクリル酸含量10質量%のエチレン・メタクリル酸共重合体の亜鉛アイオノマー(亜鉛カチオンによる中和度73%、MFR(190℃、2160g荷重)1.0g/10分)〕 … 25質量部
(3)フッ素系重合体〔住友スリーエム(株)製、商品名ダイナマーFX5911(フッ素含有量69質量%、融点120℃のテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド3元共重合体)〕
… 上記ポリ乳酸と上記アイオノマーとの合計量に対して500ppm
【0065】
<積層体の作製>
基材としてクラフト紙(50g/m)上に、上記で得られた樹脂組成物を押出しコーティングして20μm厚及び30μm厚の樹脂層を形成することにより、樹脂層/基材フィルムの構成の積層フィルムを得た。
上記押出しコーティングは、押出しコーティング機として65mmφラミネーター(スクリューはスリーステージタイプ)を用い、樹脂温度260℃、加工速度60m/min及び80m/minの条件で行った。
【0066】
<評価>
上記押出しコーティングにおいて、成形加工性の評価(ドローダウンの測定、ネックインの測定、及び、押出し時の加工安定性の確認)を行った。
更に、上記押出しコーティングによって得られた樹脂層を目視で観察し、コゲ(劣化物)及び異物の発生の有無を確認した。
以上の評価結果を下記表1に示す。
【0067】
〔実施例2〕
実施例1の樹脂組成物の調整において、ポリ乳酸系樹脂を〔三井化学(株)製、商品名レイシア、型番H−140、MFR(190℃、2160g荷重)6g/10分)〕に変更したこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製した。
得られた樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして積層フィルムを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
評価結果を下記表1に示す。
【0068】
〔実施例3〕
実施例2の樹脂組成物の調製において、ポリ乳酸系樹脂とアイオノマーとの合計量に対して500ppmの量のフッ素系重合体を、ポリ乳酸系樹脂とアイオノマーとの合計量に対して2500ppmのポリエチレングリコール(PEG4000)(モル質量3500g/モル)変更したこと以外は実施例2と同様にして樹脂組成物を調製した。
得られた樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして積層フィルムを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
評価結果を下記表1に示す。
【0069】
〔実施例4〕
実施例2の樹脂組成物の調製において、ポリ乳酸系樹脂とアイオノマーとの合計量に対して500ppmの量のフッ素系重合体を、ポリ乳酸系樹脂とアイオノマーとの合計量に対して2500ppmの酸化防止剤〔BASF社製、商品名イルガノクス1010、テトラキス−{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン〕に変更したこと以外は実施例2と同様にして樹脂組成物を調製した。
得られた樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして積層フィルムを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
評価結果を下記表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
〜表1の説明〜
・ネックイン:80m/min×20μm厚加工時の樹脂積層体両端のネックイン値(mm)
・ドローダウン:ネックイン測定時の押出量における最大引取り速度(m/min)
【0072】
表1に示すように、実施例1〜4の樹脂組成物は、高いドローダウン及び低いネックインを示し、押出し時の加工安定性に優れ、コゲ(劣化物)及び異物の発生が抑制されていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ポリ乳酸系樹脂と、
(2)エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーと、
(3)フッ素系重合体、ポリアルキレンオキサイド、脂肪酸アミド、及び酸化防止剤からなる群から選択される化合物と、
を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記(1)ポリ乳酸系樹脂及び前記(2)アイオノマーの総量を100質量%としたとき、前記(1)ポリ乳酸系樹脂の含有量が99〜1質量%であり、前記(2)アイオノマーの含有量が1〜99質量%であり、
前記(3)化合物の含有量が、前記(1)ポリ乳酸系樹脂及び前記(2)アイオノマーの総量に対して100〜10000ppmである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
押出しコーティングに用いられる請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(2)アイオノマーが、二価金属イオンで中和されたエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマーである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
基材上に、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂層を有する積層体。
【請求項6】
基材上に、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を押出しコーティングして樹脂層を形成する工程を有する積層体の製造方法。

【公開番号】特開2012−136609(P2012−136609A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288908(P2010−288908)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】