説明

樹脂組成物及びこれからなる光学材料成形体

【課題】フィルム状に成形した際の光弾性係数の絶対値が小さく、かつ、耐熱性に優れた光学材料を得ることができる樹脂組成物を提供する。この樹脂組成物を用いて得られる光学材料成形体を提供する。
【解決手段】(1)正の光弾性定数を示す硬化型樹脂、(2)負の光弾性定数を示す成分を有した樹脂、及びラジカル重合開始剤として(3)紫外線重合開始剤を含み、フィルム状に成形した際の光弾性定数の絶対値が2×10-12/Pa以下であることを特徴とする樹脂組成物であり、また、この樹脂組成物からなる光学材料成形体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光弾性定数の絶対値が小さく、かつ、高耐熱性を有したフィルムを得ることができる樹脂組成物、及びこれを用いて得られる光学材料成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイの大型化、高画質化に伴い、これまで用いられてきた透明材料に加え、より高度に光学特性が付与された光学材料が求められている。
【0003】
一般に、液晶表示装置を構成する光学材料において、偏光を制御する偏光子以外の光学材料は複屈折の小さい材料が求められる。しかしながら、高分子などの分極率をもつ化合物からなる成形材料は、外力が加わることによって複屈折が発生し、外力の偏りによって複屈折の分布が生じる。例えば、偏光子とそれを挟む2枚の偏光板保護フィルムからなる偏光板については、液晶表示装置を構成した際、装置を稼動したときに内部で発生する熱によって偏光子が収縮する。そのため、これを抑える偏光板保護フィルムに不均一に応力が加わり、偏光板保護フィルムには不均一な応力複屈折が生じる。この複屈折は光の透過率(明るさ)に直に作用するため、表示される画像に明るさや色のムラを発生させて画質の低下をもたらす。そこで、光学材料を組み入れた装置が稼動した際に引き起こすような外力による複屈折の変化、即ち光弾性定数の絶対値が小さい材料が求められている。
【0004】
また、近年では液晶プロジェクターや車載用表示装置用途として偏光板の更なる高耐久化が望まれており、特に液晶プロジェクターではTACの黄変や焼けといった深刻な問題が発生するため、より耐熱性が高いフィルムが望まれている。
【0005】
なお、光弾性定数の小さい材料としてアモルファスポリオレフィン(非特許文献1参照)や、アクリル系樹脂(特許文献1参照)が知られている。しかしながら、これらを光学材料向けに使用すると、いずれも主成分が熱可塑樹脂であるため耐熱性が問題になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−169622号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】化学総覧、No.39、1998(学会出版センター発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、フィルム状に成形した際の光弾性係数の絶対値が小さく、かつ、耐熱性に優れた光学材料を得ることができる樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、この樹脂組成物を用いて得られる光学材料成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、従来技術を鑑みて、光学材料における表示ムラと耐熱性の問題を同時に解決できる樹脂組成物について鋭意検討した結果、正の光弾性定数を示す硬化型樹脂に負の光弾性定数を示す成分を有した樹脂を配合して、フィルム成形した際の光弾性定数が所定の値になるようにすることで、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、(1)正の光弾性定数を示す硬化型樹脂、(2)負の光弾性定数を示す成分を有した樹脂、及びラジカル重合開始剤として(3)紫外線重合開始剤を含み、フィルム状に成形した際の光弾性定数の絶対値が2×10-12/Pa以下であることを特徴とする樹脂組成物である。
また、本発明は、上記樹脂組成物からなる光学材料成形体である。
【0011】
先ず、光弾性定数Cに関しては下式(1)により定義されるものである。
C[/Pa]=Δn/σ (1)
【0012】
ここで、式中のCは光弾性定数であり、σは応力[Pa]、Δnは応力付加時の複屈折、nxは伸張方向と平行な方向の屈折率、nyは伸張方向と垂直な方向の屈折率をそれぞれ示し、Δn=nx−nyである。光弾性定数の値がゼロに近いほど、外力による複屈折の変化が小さいことを示している。
【0013】
上記光弾性定数Cは、一般に形のあるものに力を加えた際、横軸に力、縦軸に複屈折をプロットした時の傾き(係数)で表され、その測定は公知の方法によることができる。本発明における(1)正の光弾性定数を示す硬化型樹脂、(2)負の光弾性定数を示す成分を有した樹脂、及びこれら共に(3)紫外線重合開始剤を含んだ本発明の樹脂組成物の光弾性定数Cは、それぞれ以下のようにして測定することができる。なお、樹脂組成物を得る際、その配合設計段階において、各成分をフィルム状に成形してあらかじめその光弾性定数を測定しておき、各成分の配合割合に応じた加成則によって樹脂組成物としたときの値を予測することもできる。また、(2)の樹脂など、文献等で既知なものはその値を用いてもよい。
【0014】
先ず、(1)の硬化型樹脂、(2)の樹脂、及び本発明の樹脂組成物について、それぞれ透明なガラス板に挟みプレス圧成形により厚みを調整し紫外線照射後、10mm×40mm×0.08mmのサイズに整角した短冊状(フィルム状)の試験片を用意した。次いで、それぞれの短冊状試験片を分光エリプソメーター(日本分光社製 M−220)のロードセルに固定し、長辺を引張方向に荷重0kgfから0.4kgfを逐次加えながら伸長し、その荷重を加えた際の位相差値を測定した。荷重をフィルム断面積で割った応力値(kgf/m2)と縦軸に位相差値をプロットした傾き(係数)によって光弾性定数を算出することができ、本発明で言う光弾性定数[C]に関しては下式(2)、(3)により求めることができる。
Δn=C×σ (2)
Δn=nx−ny (3)
(式中、C:光弾性定数[/Pa]、σ:応力[kgf/m2]、Δn:応力付加時の複屈折、nx:伸張方向と平行な方向の屈折率、ny:伸張方向と垂直な方向の屈折率)
【0015】
本発明の樹脂組成物において、「(1)正の光弾性定数を示す硬化型樹脂」の光弾性定数は、1.0×10-12/Pa以上5.0×10-12/Pa以下であるのがよく、好ましくは1.0×10-12/Pa以上3.0×10-12/Pa以下であるのがよい。
【0016】
上記(1)の硬化樹脂として、具体的には、篭型シルセスキオキサン、ジシクロペンタニルジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を例示することができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
また、本発明の樹脂組成物において、「(2)負の光弾性定数を示す成分を有する樹脂」の光弾性定数は、−4.5×10-12/Pa以上0×10-12/Pa以下であるのがよく、好ましくは−4.5×10-12/Pa以上−1.0×10-12/Pa以下であるのがよい。この値が低いほど、樹脂組成物における含有量を低減させることができるため望ましい。
【0018】
上記(2)負の光弾性定数を示す成分を有する樹脂のうち、「(2)負の光弾性定数を示す成分」としては、メタクリル酸メチルを単独重合したものが好ましいが、それ以外にも、例えばメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステルより選ばれる1種以上の単量体を重合したものであってもよい。
【0019】
本発明における(2)負の光弾性定数を示す成分を有した樹脂としては、これらの成分が重合したものを用いることができるが、更に他の単量体を共重合させたものを用いることもできる。すなわち、上記「(2)負の光弾性定数を示す成分」に対して、負の光弾性定数を維持する範囲で、これら(2)負の光弾性定数を示す成分と他の共重合可能な単量体が共重合したものであってもよい。上記(2)負の光弾性定数を示す成分と共重合可能な単量体としては、他のメタクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アルキルエステル類、スチレン及びメチルスチレン等のアルキル置換スチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレンのようなα−アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類が挙げられる。なお、(2)負の光弾性定数を示す成分と他の共重合可能な単量体との共重合体の光弾性定数は、それぞれの単独重合体の光弾性定数が既知であれば、それぞれの単独重合体の光弾性定数と重合比から加成則によって共重合体の光弾性定数を予測することができる。
【0020】
また、上記のような(2)負の光弾性定数を示す成分を有した樹脂が、(1)の硬化樹脂とラジカル重合反応可能な官能基、例えば、アクリル基、メタクリル基、ビニル基等を有していてもよい。これらの官能基が(1)の硬化樹脂と反応すると、本発明の樹脂組成物の光弾性定数が正にシフトする傾向にあるため、(2)負の光弾性定数を示す成分を有した樹脂の官能基あたりの分子量(以下官能基当量)は100から100,000であることが好ましく、より好ましくは1000から100,000である。官能基当量が小さい場合は、正に光弾性定数が増加するが、負の光弾性定数を示す樹脂の配合割合を増やすなどによって調整が可能である。
【0021】
(2)負の光弾性定数を示す成分を持つ樹脂の分子量は、10,000以上100,000以下であるのがよく、好ましくは10,000以上60,000以下であるのがよい。分子量がこの範囲より大きいと(1)硬化樹脂との配合が困難になって、樹脂組成物を用いて成形体を得る際の成形性が著しく低下するおそれがある。
【0022】
本発明の樹脂組成物において、(1)正の光弾性定数を示す硬化型樹脂と(2)負の光弾性定数を示す成分を有した樹脂との重量配合比(1):(2)は、好ましくは50〜97:3〜50の範囲であるのがよく、より好ましくは65〜90:10〜35の範囲であるのがよい。(2)成分が多くなると、(1)の硬化樹脂との配合が困難になり、樹脂組成物を用いて成形体を得る際の成形性が著しく低下するおそれがある。
【0023】
また、本発明の樹脂組成物においては、ラジカル重合開始剤として(3)光重合開始剤を配合する。光重合開始剤の添加量は樹脂組成物の合計100重量部に対して(3)光重合開始剤は0.1重量部〜3重量部の範囲であることが好ましい。この範囲に満たないと架橋が不十分になって弾性率が低下し、光弾性定数が所定値より増加してしまうおそれがある。反対にこの範囲を超えて含有しても更なる反応率の向上は望めない。
【0024】
上記(3)光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾイル系、ベンゾフェノン系、チオキサンソン系、アシルホスフィンオキサイド系等の化合物を好適に使用することができる。具体的には、トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、チオキサンソン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、カンファーキノン、ベンジル、アンスラキノン、ミヒラーケトン等を例示することができる。また、光重合開始剤と組み合わせて効果を発揮する光開始助剤や鋭感剤を併用することもできる。
【0025】
なお、上述した成分の他に、例えば偏光板保護フィルムとしての機能を低下させない範囲で、各種添加剤を添加することができる。各種添加剤として、有機/無機フィラー、可塑剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、発泡剤、核剤、着色剤、架橋剤、分散助剤、樹脂成分等を例示することができる。
【0026】
本発明において、上述した(1)の硬化型樹脂、(2)の樹脂、及び(3)紫外線重合開始剤を配合して得られた樹脂組成物は、フィルム状に成形した際の光弾性定数の絶対値が2×10-12/Pa以下となるようにする。この光弾性定数の絶対値が2×10-12/Pa以下であれば、例えば偏光板保護フィルムとした際に液晶表示装置で表示される画像の明るさや色のムラを発生させることがなく、良質な画質を得ることができる。また、(1)の硬化性樹脂を配合して光照射によって成形硬化させることで、偏光板保護フィルムをはじめとして、得られた成形体を光学材料に使用した際の耐熱性を維持することができる。なお、本発明における樹脂組成物をフィルム状にした際の光弾性定数は−2〜2×10-12/Paの範囲であれば光学的に優れた効果を得ることができるが、偏光板保護フィルムとしての機械特性、寸法安定性等の観点から、より好ましくは−1〜1×10-12/Paの範囲である。すなわち、この範囲より負の方向に大きくなると引張方向と直交する軸での位相差が発生し、液晶表示時にムラが発生しやすい傾向にあり、また正の方向に大きくなると引張方向と平行な軸での位相差が発生し、液晶表示時にムラが発生しやすい傾向にある。
【0027】
本発明の樹脂組成物を用いて、光照射によって樹脂共重合体(成形体)を得る方法としては、例えば、少なくとも片面が透明素材である石英ガラス等で構成された金型内に注入し、紫外線ランプで紫外線を照射して重合硬化を行い、金型から脱型させることで所望の形状の成形体を製造する方法が挙げられる。金型を用いない場合には、例えば移動するスチールベルト上にドクターブレードやロール状のコーターを用いて本発明の樹脂組成物を塗布し、上記の紫外線ランプで重合硬化させることで、シート状の成形体を製造する方法等を例示することができる。
【0028】
光照射によって共重合体(成形体)を製造する場合、波長10〜400nmの紫外線や波長400〜700nmの可視光線を照射することで、好適に成形体を得ることができる。用いる光の波長は特に制限されるものではないが、特に波長200〜400nmの近紫外線が好適に用いられる。紫外線発生源として用いられるランプとしては、低圧水銀ランプ(出力:0.4〜4W/cm)、高圧水銀ランプ(40〜160W/cm)、超高圧水銀ランプ(173〜435W/cm)、メタルハライドランプ(80〜160W/cm)、パルスキセノンランプ(80〜120W/cm)、無電極放電ランプ(80〜120W/cm)等を例示することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の樹脂組成物によれば、光弾性定数の絶対値が小さく、高耐熱性を有する成形体を得ることができ、専ら光学材料として好適である。得られた成形体は、例えば高温環境下で使用する車載用タッチパネル用途、液晶表示装置用途などに用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の実施例に使用した篭型シルセスキオキサン及びメタクリル酸メチル重合体は、下記の合成例に示した方法で得たものである。
【0031】
(合成例1:篭型シルセスキオキサン樹脂の調製)
メタクリロイル基を全てのケイ素原子上に有した篭型シルセスキオキサン樹脂を得る方法は、公知である合成方法(特開2006-089685号公報)を参考に以下のようにして行った。
【0032】
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、溶媒として2−プロパノール(IPA)40mlと塩基性触媒として5%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH水溶液)を装入した。滴下ロートにIPA 15mlと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MTMS:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製SZ6300)12.69gを入れ、反応容器を撹拌しながら、室温でMTMSのIPA溶液を30分かけて滴下した。MTMS滴下終了後、加熱することなく2時間撹拌した。2時間撹拌後溶媒を減圧下で溶媒を除去し、トルエン50mlで溶解した。反応溶液を飽和食塩水で中性になるまで水洗した後、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで加水分解生成物(シルセスキオキサン)を8.6g得た。このシルセスキオキサンは種々の有機溶剤に可溶な無色の粘性液体であった。
【0033】
次に、撹拌機、ディンスターク、冷却管を備えた反応容器に上記で得られたシルセスキオキサン20.65gとトルエン82mlと10%TMAH水溶液3.0gを入れ、徐々に加熱し水を留去した。更に130℃まで加熱しトルエンを還流温度で再縮合反応を行った。このときの反応溶液の温度は108℃であった。トルエン還流後2時間撹拌した後、反応を終了とした。反応溶液を飽和食塩水で中性になるまで水洗した後、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで目的物であるかご型シルセスキオキサン(混合物)を18.77g得た。得られたかご型シルセスキオキサンは種々の有機溶剤に可溶な無色の粘性液体であった。
【0034】
再縮合反応後の反応物の液体クロマトグラフィー分離後の質量分析を行ったところアンモニウムイオンが付いた分子イオンが確認され、構成比率はT8:T10:T12及びその他が約2:4:1:3であり、かご型構造を主たる成分とするシリコーン樹脂であることが確認できた。なお、T8は下記一般式(1)で表され、T10は下記一般式(2)で表され、T12は下記一般式(3)で表され、それぞれのRはメタクリロキシプロピル基を示す。
【化1】

【0035】
(合成例2:メタクリル酸メチル重合体の調製)
メタクリル酸メチル16.7重量部およびトルエン83.3重量部に過酸化ベンンゾイル0.01重量部を添加し、85℃、2時間で重合反応を行った。
【0036】
得られた反応溶液にラジカル重合反応を停止させる目的でエタノールを添加し30分攪拌後、反応溶液のトルエンが約34重量部になるまで減圧留去した。得られた重合体/トルエン溶液をメタノール中に滴下し精製を行い、メタクリル酸メチル重合体(以下PMMAと言う:数平均分子量34000)を得た。
【0037】
(実施例1)
ジシクロペンタニルジアクリレート:94.5重量部、PMMA:5.5重量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:0.02重量部を混合し、樹脂組成物を得た。光重合開始剤以外の配合組成を表1に示す。
【0038】
次に透明なガラス板を用いて、上記樹脂組成物を厚さ0.08mmになるようにプレス圧成形し、3kW/cmの高圧水銀ランプを用い、8800mJ/cm2の積算露光量(365nm換算)で硬化させ、所定の厚みとしたシート状の樹脂成形体を得た。この際、アクリル基の反応率を後述する測定手順により測定した。結果を表2に示す。
【0039】
上記で得られたシート状の樹脂成形体から10mm×40mmの小片を切り出し、前述の測定方法に従って光弾性定数を測定したところ、光弾性定数は1.64×10-12/Paであった。なお、ジシクロペンタニルジアクリレート単独の硬化成形物の実測値は2.08×10-12/Paであり、既知のPMMAの光弾性定数が−3.8×10-12/Pa(出典:高分子学会編,フォトニクスポリマー,p40,2004(共立出版))であることからほぼ想定どおりの光弾性定数を有する硬化成形物が得られていることがわかった。
【0040】
(実施例2〜7、比較例1〜3)
表1に示す配合組成の重量部及び積算露光量とした他は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の光弾性定数は表2に示す。
【0041】
表中の略号は下記のとおりである。なお、全ての配合に対して、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製IRGQUA184)を0.02重量部添加した。また、表1に示す配合を設定するに際し、下記A〜Hの各成分の光弾性定数について、A、B及びFについては事前に実施例1記載の測定方法に従って測定し、それぞれA:2.08×10-12/Pa、B:2.95×10-12/Pa、F:−0.52×10-12/Paであった。Eについては前述の文献値より−3.8×10-12/Paであり、G及びHについてはEと同じ構造であることからEと同様に−3.8×10-12/Paとし、C及びDについては事前に光弾性定数は未知であった。
【0042】
A:ジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学(株)製ライトアクリレートDCP-A)
B:篭型シルセスキオキサン樹脂
C:トリメチロールプロパントリメタクリレート(共栄社化学(株)製ライトエステルTMP)
D:ジペンタエリスリトール ヘキサアクリレート(日本化薬(株)製DPHA)
E:PMMA
F:メタクリル−スチレン共重合体(東洋スチレン社(株)製MS750)
G:メタクリル樹脂アクリレート(日立化成(株)製ヒタロイド7988)
H:メタクリル樹脂アクリレート(新中村化学(株)製)
【0043】
【表1】

【0044】
測定に使用した装置:
<反応率測定>レーザラマン分光装置:日本分光製レーザラマン分光光度計NRS-3100
<光弾性定数測定>分光エリプソメーター M−220(日本分光社製)
【0045】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)正の光弾性定数を示す硬化型樹脂、(2)負の光弾性定数を示す成分を有した樹脂、及びラジカル重合開始剤として(3)紫外線重合開始剤を含み、フィルム状に成形した際の光弾性定数の絶対値が2×10-12/Pa以下であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
(1)正の光弾性定数を示す硬化型樹脂と(2)負の光弾性定数を示す成分を有した樹脂との配合比が50〜97重量部:3〜50重量部であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(1)正の光弾性定数を示す硬化型樹脂の光弾性定数が1×10-12/Pa以上5×10-12/Pa以下である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(2)負の光弾性定数を示す成分としてアクリル系樹脂を有する請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(2)負の光弾性定数を示す成分を有した樹脂の分子量が10,000以上100,000以下である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂組成物合計100重量部に対して(3)光重合開始剤を0.1〜3重量部の範囲で含有する請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる光学材料成形体。

【公開番号】特開2012−246363(P2012−246363A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117850(P2011−117850)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】