説明

樹脂組成物及びその製造方法、並びに成形体及びその製造方法

【課題】高透明性、高強度及び高弾性率を有する樹脂組成物、該樹脂組成物からなる成形体および、該樹脂組成物とそれからなる成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】セルロースもしくはハロゲン化セルロース、カルボキシル基導入セルロース、酸ハライド基導入セルロース、アルデヒド基導入セルロースのいずれかとアリール基含有化合物を反応させて得られた、セルロースを構成するブドウ糖残基のC6位にアリール基を有する変性セルロース繊維を好ましくはナノ繊維の状態で分散させたエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びその製造方法、並びに成形体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂の熱線膨張係数の低減、または弾性率、曲げ強度等の機械的強度を上げるために球状フィラーや繊維状フィラーを配合することが広く行われている。そのような中近年セルロースを利用したプラスチック代替品は多く報告されている。例えばセルロースを高圧ホモジナイザーと呼ばれる装置を用いて極めて高い圧力でフィブリル状物質を高度に微細化して得られたセルロースミクロフィブリルを充填材として利用する方法、その他マイクロフリュイダイザー法、グラインダー法、凍結乾燥法、強剪断力混練法、ボールミル粉砕法によりダウンサイジングしたミクロフィブリルを充填材として利用する複合材があげられる。これらの充填材を用いると比較的強度の高い成形体が得られるという報告がされている。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献2においては、セルロースのC6位のメチロールをN−オキシル化合物を使用して酸化処理し、アルデヒド基やカルボキシル基を導入することで、セルロースミクロフィブリルを水中に分散させる技術が開示されている。しかしながら、前記技術により得られたセルロースミクロフィブリルは、繊維表面に水酸基を多数有するため親水性が高いことから、フェノール樹脂やエポキシ樹脂のような疎水性の樹脂と配合すると凝集体を形成しやすく、ナノスケールで均一に分散しない。それゆえ樹脂組成物として使用しようとした場合、透明性が低いことや機械的強度が不十分であるなど、充分な性能を得ることが困難な場合がある。
【0004】
一方、エポキシ樹脂は優れた接着性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、機械特性などを有することから、シリカ粒子などの球状フィラーや、カーボン繊維、ガラス繊維などの繊維状フィラーとの樹脂組成物が、自動車用部品、表示体部品、回路基板、半導体封止剤など幅広く用いられており、セルロース繊維を充填剤として用いることで、高透明、高強度及び高弾性の成形体が得られると考えられている。
特許文献3に記載されているように、有機オニウム化合物により表面処理をした微細セルロースを用いたエポキシ樹脂複合体が報告されているが、必ずしも分散性が十分でなく、透明性、機械的強度が満足できるものではなかった。
そこで、本発明者らは鋭意検討の結果、従来の課題を解決し得る技術として、疎水性の樹脂に高度なレベルで分散し、高透明性、高強度及び高弾性率の成形体を提供し得る樹脂組成物が得られることを見出し本発明に至ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−201695号公報
【特許文献2】特開2008−1728号公報
【特許文献3】特開2010−59304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高透明性、高強度及び高弾性率を有する成形体、該成形体を提供し得る樹脂組成物、及び該樹脂組成物、成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は下記の[1]〜[14]に記載の本発明により達成される。
【0008】
[1] C6位にアリール基を有する変性セルロース繊維と、エポキシ樹脂と、を含む樹脂組成物。
【0009】
[2] 前記C6位にアリール基を有する変性セルロース繊維が、分子中に下記式(1−A)、(1−B)、および(1−C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維である、[1]記載の樹脂組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

(前記式(1−A)、(1−B)、(1−C)中、X、Xはアリール基であり、アリール基の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アラルキル基、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、X、Xは同一であっても異なっていてもよい。a、b、cは1以上の整数である。)
【0010】
[3] 前記式(1−A)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維が、下記式(2)の繰り返し単位を含む化合物と、アリール基を有する化合物とを接触させることにより得られるものである[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
【化4】

(前記式(2)中、Yは水酸基、またはハロゲン基を表す。dは1以上の整数である。)
【0011】
[4] 前記式(1−B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維が、下記式(3)の繰り返し単位を含む化合物と、アリール基を有する化合物とを接触させることにより得られるものである[1]ないし[3]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化5】

(前記式(3)中、Yは水酸基、またはハロゲン基を表す。eは1以上の整数である。)
【0012】
[5] 前記式(1−C)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維が、下記式(4)の繰り返し単位を含む化合物と、アリール基を有する化合物とを接触させることにより得られるものである[1]ないし[3]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化6】

(前記式(4)中、fは1以上の整数である。)
【0013】
[6] 前記式(3)および/または式(4)の繰り返し単位を含む化合物が、天然セルロースとN−オキシル化合物とを接触させることにより誘導される化合物である[4]または[5]に記載の樹脂組成物。
【0014】
[7] 前記変性セルロース繊維の含有率が、前記樹脂組成物全体に対して0.1〜99.9質量%である[1]ないし[6]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0015】
[8] 前記エポキシ樹脂が、アリール基を有するエポキシ樹脂である[1]ないし[7]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0016】
[9] 前記エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、または、ビフェニル型エポキシ樹脂から少なくとも1つ選ばれるものである[1]ないし[8]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0017】
[10] 下記式(2)、式(3)、および式(4)の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む化合物と、アリール基を有する化合物を用いて、式(1−A)、(1−B)、および(1−C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得る第1の工程と、該変性セルロース繊維とエポキシ樹脂とを接触させて樹脂組成物を得る第2の工程を有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【化7】

(前記式(2)中、Yは水酸基、またはハロゲン基を表す。dは1以上の整数である。)
【化8】

(前記式(3)中、Yは水酸基、またはハロゲン基を表す。eは1以上の整数である。)
【化9】

(前記式(4)中、fは1以上の整数である。)
【化10】

【化11】

【化12】

(前記式(1−A)、(1−B)、(1−C)中、X、Xはアリール基であり、アリール基の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アラルキル基、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、X、Xは同一であっても異なっていてもよい。a、b、cは1以上の整数である。)
【0018】
[11] [1]ないし[9]のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて得られる成形体。
【0019】
[12] 厚み30μmにおける全光線透過率が70%以上である[11]記載の成形体。
【0020】
[13] 曲げ強度が50N以上である[11]または[12]に記載の成形体。
【0021】
[14] [1]ないし[9]のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いることを特徴とする成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高透明性、高強度及び高弾性率を有する成形体、該成形体を提供し得る、樹脂組成物、及び該樹脂組成物、成形体の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物はC6位にアリール基を有する変性セルロース繊維と、エポキシ樹脂と、を含む樹脂組成物である。本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維はアリール基を有することから疎水化されており、このため疎水性のエポキシ樹脂との親和性が高いという特徴を有する。エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂などのビスフェノール型のエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型のエポキシ樹脂、フェニレン骨格、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂などが例示されるが、アリール基を有する変性セルロース繊維と親和性の高いエポキシ樹脂であれば何ら限定されないものである。
【0024】
本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維は、分子中に式(1−A)、(1−B)、および(1−C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維である。
【化13】

【化14】

【化15】

(前記式(1−A)、(1−B)、(1−C)中、X、Xはアリール基であり、アリール基の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アラルキル基、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、X、Xは同一であっても異なっていてもよい。a、b、cは1以上の整数である。)
【0025】
本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維では、変性セルロース繊維を構成する分子の繰返し単位に式(1−A)、(1−B)、および(1−C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含むものであればよい。
本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維を用いた樹脂組成物では、該変性セルロース繊維の(1−A)、(1−B)、(1−C)で表される繰り返し単位が、アリール基を有することで、アリール基を有するエポキシ樹脂と高度なレベルで親和性を発現し、エポキシ樹脂への優れた分散性を発現し、本発明の課題である、高透明性、高強度及び高弾性率を実現し得るものである。
【0026】
本発明の樹脂組成物に用いる、分子中に下記式(1−A)、(1−B)、および(1−C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維における、繰り返し単位(1−A)、(1−B)、(1−C)について説明する。
【0027】
式(1−A)、(1−B)、および(1−C)中の置換基であるX、Xはアリール基であり、後述する変性セルロース製造工程で、芳香族親電子置換反応に活性な芳香環を有するアリール基を有する化合物に由来するものが好ましいが、具体的にはアリール基の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アラルキル基、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、さらに前記アルキル基、アラルキル基の炭素上の水素原子はヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。アリール基としては、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、キシリル基などのアルキル基が置換したフェニル基、ベンジルフェニル基、ヒドロキシフェニルメチレンフェニル基などのアラルキル基が置換したフェニル基、フェノール、カテコール、レゾルシン、アニリン、アニソールなどのヘテロ原子を含む基が置換したフェニル基などが例示される置換、または無置換の単環式芳香族基、ナフチル基、アントラニル基、ナフトール基、ジヒドロキシナフタレンなどの置換、または無置換の縮合多環式芳香族基、ビフェニル基、フェニルフェノール基、ビフェノール基などの置換、または無置換の多環式芳香族基、さらに、本発明のアリール基には、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、またアニリン樹脂、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂などのフェノール樹脂、などアリール基を有する樹脂のアリール基の芳香環を構成する炭素原子とセルロースのC6位のメチロールに由来する炭素原子((1−A)においてはメチレンの炭素、(1−B)においてはカルボニル炭素、(1−C)においてはメチン炭素)が結合したものも含まれるが、特にフェノール樹脂、アニリン樹脂などの水酸基、アミノ基などの電子供与基が置換したアリール基を有する樹脂が好ましいものである。
また、前記ヘテロ原子を含む基は酸素、窒素、リン、イオウなどのヘテロ原子が含まれる基であればよいが、水酸基、アミノ基などのヘテロ原子を含む電子供与基が好適である。
【0028】
また本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、4〜1000nmであることが好ましく、4〜200nmであることがより好ましい。前記の平均繊維径の範囲内だと、セルロース繊維特有の優れた特性が現れやすくなり、樹脂組成物における透明性および強度の向上につながる。また本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維の長さについては特に限定されないが、繊維の平均長さが100nm以上であれば補強効果が得られやすく、強度向上が図れる。
【0029】
本発明の樹脂組成物に用いる、分子中に式(1−A)で表わされる繰り返し単位を含む変性セルロース繊維の合成方法は特に限定されないが、好適な方法としては、例えば式(2)の繰り返し単位を含む化合物と、アリール基を有する化合物とを接触させることによって得ることができる。式(2)の繰り返し単位を含む化合物におけるYが水酸基である場合、例えばYの水酸基は塩化チオニル、塩化オキサリル、三臭化リンなどのハロゲン化剤を用いた公知の方法によりハロゲン化することができ、アリール基を有する化合物は、芳香環を有していることから、ルイス酸などの触媒存在下で、前記Yであるハロゲン化アルキルと、前記アリール基を有する化合物の芳香環とを、フリーデルクラフツアルキル化反応することで式(1−A)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維を得ることができる。
また、Yが水酸基の場合でも、強酸などの適切な触媒存在下、前記アリール基を有する化合物と式(2)の繰り返し単位を含む化合物とを接触させるなどの適切な方法を用いてもよい。
【0030】
なお、本発明におけるアリール基を有する化合物のアリール基は、前記式(1−A)、(1−B)、および(1−C)中の置換基であるX、Xのアリール基に対応するものであり、本発明の樹脂組成物に用いる、アリール基を有する化合物は、変性セルロース繊維製造工程で、芳香族親電子置換反応に活性なアリール基を有する化合物であるが、具体的にはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどのアルキル基置換ベンゼン、ジフェニルメタン、ヒドロキシフェニルフェニルメタンなどのアラルキル基置換ベンゼン、フェノール、アニリン、アニソールなどのヘテロ原子を含む基が置換したベンゼンなどが例示される置換、または無置換の単環式芳香族、ナフタレン、アントラセン、ナフトール、ジヒドロキシナフタレンなどの置換、または無置換の縮合多環式芳香族、ビフェニル、フェニルフェノール、ビフェノールなどの置換、または無置換の多環式芳香族に加え、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、さらにはアニリン樹脂、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂などのフェノール樹脂など、アリール基を有する樹脂のアリール基の芳香環を構成する炭素原子とセルロースのC6位のメチロールに由来する炭素原子((1−A)においてはメチレンの炭素、(1−B)においてはカルボニル炭素、(1−C)においてはメチン炭素)が結合しうる樹脂が含まれるが、フェノール樹脂、アニリン樹脂などの水酸基、アミノ基などの電子供与基が置換したアリール基を有する樹脂が好ましい。
【0031】
また、本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維における式(1−A)で表される繰り返し単位の含有量は、原料のセルロースC6位のメチロールを有する繰り返し単位を100とした場合、3〜37モル%であることが好ましく、5〜37モル%であることがより好ましい。前記下限値以上だと、変性による高分散性の効果が十分に発現し、前記上限値以下だと、極性が適度となる。ただし、本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維に前記(1−A)以外の繰り返し単位である(1−B)、および/または(1−C)を含む場合は、(1−A)は含まなくともよい。
【0032】
本発明の樹脂組成物に用いる、分子中に式(1−B)で表わされる繰り返し単位を含む化合物の合成方法は特に限定されないが、好適な方法としては、式(3)の繰り返し単位を含む化合物と、アリール基を有する化合物とを公知の方法で接触させることによって得られるものである。式(3)の繰り返し単位を含む化合物におけるYが水酸基であった場合、例えばYの水酸基は塩化チオニル、塩化オキサリル、三臭化リンなどのハロゲン化剤を用いた公知の方法によりハロゲン化することができ、アリール基を有する化合物は、芳香環を有していることから、ルイス酸などの触媒存在下で、前記Yであるハロゲン化アシルと、前記アリール基を有する化合物の芳香環とを、フリーデルクラフツアシル化反応することで式(1−B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維を得ることができる。
【0033】
なお、前記アリール基を有する化合物は、前記分子中に式(1−A)で表わされる繰り返し単位を含む変性セルロース繊維の合成方法で説明したものと同様である。
また、本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維における式(1−B)で表される繰り返し単位の含有量は、原料のセルロースC6位のメチロールを有する繰り返し単位を100とした場合、3〜37モル%であることが好ましく、5〜37モル%であることがより好ましい。3モル%以上だと、変性による高分散性の効果が十分に発現し、37モル%以下だと、極性が適度となる。ただし、本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維に前記(1−B)以外の繰り返し単位である(1−A)、および/または(1−C)を含む場合は、(1−B)は含まなくともよい。
【0034】
本発明の樹脂組成物に用いる、分子中に式(1−C)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維は、式(4)の繰り返し単位を含む化合物と、アリール基を有する化合物を、公知の方法で接触させることで得ることができる。式(4)の繰り返し単を含む化合物に含まれるアルデヒド基と、硫酸やシュウ酸などの酸触媒、必要に応じてジメチル硫酸やトリフルオロメタンスルホン酸などの強酸触媒下で、アリール基を有する化合物の芳香環と縮合することで、式(1−C)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維を得ることができる。
なお、前記アリール基を有する化合物は、前記分子中に式(1−A)で表わされる繰り返し単位を含む変性セルロース繊維の合成方法で説明したものと同様である。
【0035】
また、本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維における式(1−C)で表される繰り返し単位の含有量は、原料のセルロースC6位のメチロールを有する繰り返し単位を100とした場合、3〜37モル%であることが好ましく、5〜37モル%であることがより好ましい。3モル%以上だと、変性による高分散性の効果が十分に発現し、37モル%以下だと、極性が適度となる。ただし、本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維に前記(1−C)以外の繰り返し単位である(1−A)、および/または(1−B)を含む場合は、(1−C)は含まなくともよい。
なお、本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維における式(1−A)、(1−B)、および(1−C)で表される繰り返し単位が並存する場合の合計含有量は、原料のセルロースC6位のメチロールを有する繰り返し単位を100とした場合、式(1−A)、(1−B)、および(1−C)で表される繰り返し単位の総量が3〜37モル%であることが好ましく、5〜37モル%であることがより好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物に用いる、分子中に式(1−A)、(1−B)、および(1−C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維に用いる原料のセルロース繊維について説明する。
本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維に用いる原料のセルロース繊維は、分子中にβグルコースがグリコシド結合により重合した構造が含まれていれば何ら限定されないが、針葉樹や広葉樹から得られる精製パルプ、コットンリンターやコットンリントより得られるセルロース、バロニアやシオグサなどの海草より得られるセルロース、ホヤより得られるセルロース、バクテリアの生産するセルロースなどの天然セルロース、前記天然セルロースを微細化した再生セルロースを使用することが出来る。しかしながら特に力学強度の観点からは高結晶性のものが好ましく、その点で再生セルロースよりも天然セルロースより得られる繊維を用いることが好ましい。
【0037】
また本発明の樹脂組成物に用いる、式(1−A)、(1−B)、および(1−C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維の合成における好ましい原料として、式(2)の繰り返し単位を含む化合物のうち、Yが水酸基である化合物に前記原料のセルロース繊維をいる場合、式(2)の繰り返し単位を含む化合物のうち、Yがハロゲンである化合物の前駆体として前記原料のセルロース繊維を用いる場合、式(3)の繰り返し単位を含む化合物の前駆体として前記原料のセルロース繊維を用いる場合、式(4)の繰り返し単位を含む化合物の前駆体として前記原料のセルロース繊維を用いる場合には、必要に応じて、機械的に解繊処理を施した、機械処理されたセルロース繊維を用いることが好ましい。解繊することで、前記の変性に必要な種々の工程において、反応試剤との接触面積を高め、反応率を向上させることができる。原料のセルロース繊維を解繊する方法としては特に限定されず公知の方法を使用することが出来、例えば媒体撹拌ミル処理装置、振動ミル処理装置、高圧ホモジナイザー処理装置、超高圧ホモジナイザー処置装置などの繊維を解繊する機能を有する装置を用いて繰り返し処理する方法などがある。また、エレクトロスピニング法、スチームジェット法、APEX(登録商標)技術(Polymer Group.Inc)法などを採用することが出来る。
【0038】
前記機械処理されたセルロース繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、4nm〜5μmであることが好ましく、4〜1000nmであることがより好ましい。前記の平均繊維径の範囲内だと、セルロースC6位のメチロールに係るハロゲン化反応や後述する酸化反応、本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維の繰り返し単位へ誘導する反応が円滑に行われるため好ましい。
【0039】
本発明の樹脂組成物に用いる、分子中に下記式(1−A)、(1−B)、および(1−C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維のうち、(1−B)、および(1−C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得るために用いられる、式(3)のYが水酸基である繰り返し単位を含む化合物、または式(3)のYがハロゲンである繰り返し単位を含む化合物の前駆体としての式(3)のYが水酸基である繰り返し単位を含む化合物、さらには式(4)の繰り返し単位を含む化合物は、前記原料のセルロース繊維とN−オキシル化合物とを接触させることにより誘導することができるが、好ましくは、天然セルロース、より好ましくは前記機械処理された天然セルロース繊維を用いて、水中においてN−オキシル化合物を酸化触媒とし、共酸化剤を作用させることにより該天然セルロースを酸化して得られた酸化処理されたセルロース繊維であることが好ましい。
【0040】
前記酸化処理されたセルロース繊維における式(3)のYが水酸基である繰り返し単位を含む化合物と式(4)の繰り返し単位を含む化合物の合計含有量は、原料のセルロースC6位のメチロールを有する繰り返し単位を100とした場合、3〜37モル%であることが好ましく、5〜37モル%であることがより好ましい。3モル%以上だと、変性セルロース合成が円滑に実施でき、37モル%以下だと、極性が適度となる。
【0041】
次に、本発明の樹脂組成物と該樹脂組成物を得る方法について説明する。
本発明の樹脂組成物は、以上に説明した本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維と、アリール基を有するエポキシ樹脂とを含むことを特徴とする。
本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維はアリール基を有しており、このため分子内にアリール基を有するエポキシ樹脂との親和性がよいという特徴を有する。
本発明に用いるエポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を1つ以上有する化合物が含まれ、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂などのビスフェノール型のエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型のエポキシ樹脂、フェニレン骨格、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂、カルド骨格を有するエポキシ樹脂、ポリシロキサン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式多官能エポキシ樹脂、水添ビフェニル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA骨格を有する脂環式エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独または2種類以上を混合した物を含むものであるが、特にアリール基を有するエポキシ樹脂が好ましい。中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、および/または、ビフェニル型エポキシ樹脂が、樹脂組成物おける透明性および強度の向上させることができるため好ましい。
【0042】
本発明における樹脂組成物においては、樹脂組成物全体に対して、変性セルロース繊維の質量分率が0.1%から99.9%であることが好ましく、0.1%から75%であることがさらに好ましい。前記の変性セルロース繊維の質量分率の範囲内だと、樹脂組成物おける透明性および強度の向上が特に優れるものとなる。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、従来の熱硬化性樹脂に使用される各種添加剤、例えば硬化剤、若しくは硬化触媒、モンタン酸エステル系ワックスなどの離型剤、変性セルロース繊維とエポキシ樹脂との界面強化のために、カップリング剤、特性を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、他の無機フィラー等の充填剤等を配合することもできる。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、変性セルロース繊維と、エポキシ樹脂とを含むことを特徴とするが、該樹脂組成物の製造方法は、前記式(2)、式(3)、および式(4)の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む化合物と、アリール基を有する化合物を用いて、式(1−A)、(1−B)、および(1−C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得る第1の工程と、該変性セルロース繊維とエポキシ樹脂とを接触させて樹脂組成物を得る第2の工程を有することを特徴とするものである。本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維は、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶剤中に分散することができ、この状態で該変性セルロース繊維とエポキシ樹脂とを接触させて、エポキシ樹脂に変性セルロース繊維が均一に分散した透明性の高い樹脂組成物を得ることが可能となる。変性セルロース繊維を有機溶剤中に分散させる際は、必要に応じてホモジナイザーなどの分散装置を用いて変性セルロース繊維の解繊処理を施すことが好ましく、エポキシ樹脂に変性セルロース繊維を均一に分散させる際においても、必要に応じてホモジナイザーなどの分散装置を用いて変性セルロース繊維の解繊処理することがより好ましい。前記の変性セルロース繊維とエポキシ樹脂とを接触させて樹脂組成物を得る方法は一例であり、例えば、エポキシ樹脂と本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維を溶媒を用いないで、二軸混練機やロール、ニーダーなどで混合・分散するなど、必要に応じて適切な方法を採用することは何ら差し支えない。
【0045】
また本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を用いて得られるものであるが、太陽電池用基板、有機EL用基板、電子ペーパー用基板、液晶表示素子用プラスチック基板、光学シート、光学フィルムなどの光学特性が重要な特性である成形体、として用いる場合、厚さ30μmにおける全光線透過率が70%以上であることが好ましく、さらに好ましくは80%以上であり、最も好ましくは88%以上である。
【0046】
本発明の樹脂組成物をダッシュボードやインスツルメントパネルなどの自動車用内装部品などの機械的強度が重要な特性である成形体として用いる場合、JIS K 7171の評価方法に従い、厚み1mm、幅10mmの試験片を用いた場合の曲げ強度が50N以上であることが好ましい。
【0047】
本発明の樹脂組成物の他の用途としては、透明性を生かして各種光導波路や透明基板、などにも使用できる。価格が比較的安価であるがゆえにPCや各種電気電子装置におけるハウジングや筐体用樹脂としても使用可能である。また、高強度及び高弾性を生かして自動車用の各種構造材や部品用樹脂などにも利用可能である。
またセルロースは生物由来の材料であり、生物由来の疎水性樹脂と併用することで生分解性のある強靭な樹脂を得ることができ、そのときは環境負荷が小さくかつ機械的特性も良好な樹脂材料を得ることができるため、生体に吸収されることが前提の生体内埋め込み用部品や、廃棄問題化している各種の消費材にも適用可能である。たとえば文具、玩具、スポーツ用品、衝撃吸収材、壁等である。
【0048】
本発明の樹脂組成物を用いる成形体の製造方法としては、従来からの溶融注型による成形方法を用いることができ、太陽電池用基板、有機EL用基板、電子ペーパー用基板、液晶表示素子用プラスチック基板、光学シート、光学フィルムなどの光学特性が重要な特性である成形体、もしくはダッシュボードやインスツルメントパネルなどの自動車用内装部品などの機械的強度が重要な特性である成形体として用いる場合は、トランスファー成形、コンプレッション成形、インジェクション成形などの成形方法を用いることが好ましい。
【実施例】
【0049】
本発明を実施例に基づいて説明するが、構造の解析および特性評価方法は、以下の通りである。
【0050】
(a)FT−IR
フーリエ変換赤外分光光度計IRPrestige−21(株式会社島津製作所製)でFT−IRスペクトルを測定した。
【0051】
(b)NMR
FT−NMR装置ECA−400(日本電子株式会社製)で固体体NMR法による13C−NMRを測定した。
【0052】
(c)全光線透過率
ヘイズメーターNDH−2000(日本電色社製)で全光線透過率を測定した。
【0053】
(d)曲げ強度
JIS K 7171に準拠し、伸展間距離36mm、クロスヘッド速度1mm/分、23℃、相対湿度60%下で株式会社オリエンテック社製UCT−30T型テンシロンで測定した。
【0054】
(作製例1)
乾燥質量で2質量部相当分の未乾燥のパルプ(主に1000nmを超える繊維径の繊維から成る)、0.025質量部のTEMPO(2,2,6,6‐テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル)および0.25質量部の臭化ナトリウムを水150質量部に分散させた後、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1質量部のパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が0.19質量部となるように次亜塩素酸ナトリウムを加えて反応を開始した。反応中は自動滴定装置を用い、0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保った。pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なし、0.5Mの塩酸水溶液でpH7に中和し反応物をろ過した後、十分な量の水による水洗、ろ過を6回繰り返し、固形分量2質量%の水を含浸させた酸化処理されたセルロース繊維を得た。
【0055】
次に、酸化処理されたセルロース繊維に水を加え0.2質量%混合液とした。
この混合液を高圧ホモジナイザー(ノロ・ソビア社製、15−8TA)型)を用いて圧力20Mpaで10回処理し、酸化処理されたセルロース繊維の分散水溶液を得た。
また、乾燥させて得られた膜状のセルロースの広角X線回折像から、セルロースI型結晶構造を有するセルロースから成ることが示され、また同じ膜状セルロースのATRスペクトルのパターンからカルボニル基の存在が確認され、上述した方法により評価したセルロース中のアルデヒド基の量およびカルボキシル基の量はそれぞれ0.31mmol/g(原料のセルロース繊維のC6位のメチロールを100とした場合のアルデヒドへの変性率は5モル%に相当)、および1.67mmol/g(原料のセルロース繊維のC6位のメチロールを100とした場合のカルボキシル基への変性率は28モル%に相当)であった。
【0056】
(作製例2)
原料のセルロース繊維「セリッシュ(ダイセル化学工業)KY100G(セルロース分濃度10質量%)」に水を加え、0.2質量%とした。この混合液を高圧ホモジナイザー(ノロ・ソビア社製、15−8TA)型)を用いて圧力20Mpaで10回処理し、機械処理されたセルロース繊維の分散水溶液を得た。
【0057】
(実施例1)
作製例1で得られた前記セルロース繊維の分散水溶液を、1Mの塩酸を用いてpH1に調整し24時間攪拌することで、酸化処理されたセルロース繊維の凝集物を得た。次に該凝集物をアセトンで洗浄し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)で洗浄した。酸化処理されたセルロース繊維の凝集物にNMPを加え前記酸化処理されたセルロース濃度0.2質量%とし、超音波ホモジナイザー(ヒールッシャー社製、UP400S)を用いて30分間処理し、酸化処理されたセルロース繊維のNMP分散液を得た。
酸化処理されたセルロース繊維のNMP分散液を3つ口セパラブルフラスコに移し、窒素気流化において氷水浴中で10℃以下に冷却しながら、塩化チオニルを前記NMP分散液中の酸化処理されたセルロース繊維のC6位のメチロール由来の炭素数と当モル滴下した。さらに3つ口セパラブルフラスコをオイルバスに移し、窒素気流化70℃で4時間反応させた後、後処理を行い、式(2)、式(3)、および式(4)の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む化合物(ただし、この場合式(2)、式(3)のYが塩素、および(4)の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む化合物と考えられる)を得た後、超音波ホモジナイザーを使用して0.2質量%のNMP溶液を作製した。
【0058】
次にアリール基を有する化合物として、フェノール(和光純薬株式会社)(前記式(2)、式(3)、および式(4)の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む化合物におけるC6位のメチロール由来の炭素数と当モル)を、脱水NMPに5質量%となるように加えた混合液を乾燥管をつけた3つ口セパラブルフラスコに入れ、攪拌しながら窒素雰囲気下で0℃に冷却しておき、フェノールの1.5倍モルの無水塩化アルミニウムを加え、混合物を30分間撹拌した。その後式(2)、式(3)、および式(4)の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む化合物の0.2質量%のNMP溶液を滴下し、30分間撹拌後、室温に昇温し12時間撹拌した。反応終了後、減圧ろ過して不溶分を除去し、ろ液を大過剰のトルエンに再沈し、析出物をろ過した後、該析出物をNMPにホモジナイザーを使用して溶解・分散させ、大過剰の水に3回再沈することで粗生成物の精製を行い、本発明の変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、フェノールの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したフェノールが観測され、C6位にアリール基を有する変性セルロース繊維であることが確認された。
【0059】
前記のデータから本実施例で得られた変性セルロース繊維は、少なくとも(1−B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であることが確認された。
前記変性セルロース繊維にNMPを加え該セルロース濃度0.2質量%の混合液とした。この混合液を超音波ホモジナイザー(ヒールッシャー社製、UP400S)を用いて30分間処理し、変性セルロース繊維のNMP分散液を得た。
その後、前記分散液中の変性セルロース繊維150質量部に対してビスフェノールA型エポキシ樹脂JER828(ジャパンエポキシレジン社製)と芳香族アミン系硬化剤ジアミノフェニルメタン(スリーボンド社製)の当量配合物を850質量部配合、撹拌し、変性セルロース繊維が均一に分散した混合物を得た。得られた前記混合物を離型処理したシャーレに注ぎ、減圧下において、温度80℃の熱板上で8時間脱溶媒処理をし、さらに150℃で2時間プレス成形し、30μmの樹脂組成物のフィルム、および厚み1mm、幅10mmのテストピースを得た。
30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は82%であった。厚み1mm、幅10mmのテストピースの曲げ強度を測定した結果、74Nであった。
【0060】
(実施例2)
作製例1で得られたセルロース繊維の分散水溶液を100℃で減圧し濃度1質量%に濃縮した。この濃縮した分散水溶液にアリール基を有する化合物として、原料セルロースのC6位のメチロール由来の炭素数と当モルのフェノール(和光純薬株式会社)、および前記フェノール100質量部に対して2質量部の硫酸を加えて、窒素気流下に4時間還流した。その後、減圧下に脱水し、水蒸気蒸留により脱フェノールを行った後、残る反応物をNMPで希釈後前記ホモジナイザーで分散し、該NMP分散液の質量に対し、大過剰の水で再沈を行った。この操作を3回繰り返し、変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、フェノールの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したフェノールが観測され、C6位にアリール基を有する変性セルロース繊維であることが確認された。
【0061】
前記のデータから本実施例で得られた変性セルロース繊維は、少なくとも(1−C)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であることが確認された。
次に前記少なくとも(1−C)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂JER828を用いる樹脂組成物のフィルムの作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は79%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は70Nであった。
【0062】
(実施例3)
作製例2で得られた機械処理されたセルロース繊維の分散水溶液を、1Mの塩酸を用いてpH1に調整し24時間攪拌することで、機械処理されたセルロース繊維の凝集物を得た。該凝集物をアセトンで洗浄し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)で洗浄した。セルロース繊維の凝集物にNMPを加え固形分濃度0.2質量%とし、超音波ホモジナイザー(ヒールッシャー社製、UP400S)を用いて30分間処理し、機械処理されたセルロース繊維のNMP分散液を得た。
前記NMP分散液を3つ口セパラブルフラスコに移し、窒素気流化において氷水浴中で10℃以下に冷却しながら、塩化チオニル(和光純薬株式会社)を前記NMP分散液中の機械処理されたセルロース繊維のC6位のメチロール由来の炭素数と当モル滴下した。さらに3つ口セパラブルフラスコをオイルバスに移し、窒素気流化70℃で4時間反応させた後、後処理を行い、式(2)の繰り返し単位を含む化合物を得た後、超音波ホモジナイザーを使用して0.2質量%のNMP溶液を作製した。
【0063】
次にアリール基を有する化合物として、フェノール(和光純薬株式会社)(2)の繰り返し単位を含む化合物におけるC6位のメチロール由来の炭素数と当モル)を、脱水NMPに5質量%となるように加えた混合液を乾燥管をつけた3つ口セパラブルフラスコに入れ、攪拌しながら窒素雰囲気下で0℃に冷却しておき、フェノールの1.5倍モルの無水塩化アルミニウムを加え、混合物を30分間撹拌した。その後式(2)を含む化合物の0.2質量%のNMP溶液を滴下し、30分間撹拌後、室温に昇温し12時間撹拌した。反応終了後、減圧ろ過して不溶分を除去し、ろ液を大過剰のトルエンに再沈し、析出物をろ過した後、該析出物をNMPにホモジナイザーを使用して溶解・分散させ、大過剰の水に3回再沈することで粗生成物の精製を行い、分子中に式(1−A)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、フェノールの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したフェノールが観測された。
【0064】
前記のデータから本実施例で得られた変性セルロース繊維は、少なくとも(1−A)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であることが確認され
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂JER828を用いる樹脂組成物のフィルムの作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は76%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は70Nであった。
【0065】
(実施例4)
実施例1と同様の操作で得られた、変性セルロース繊維のNMP分散液を用い、前記分散液中の変性セルロース繊維150質量部に対してフェノールノボラック型エポキシ樹脂JER152(日本化薬社製)と芳香族アミン系硬化剤ジアミノフェニルメタン(スリーボンド社製)の当量配合物を850質量部配合し撹拌し、変性セルロース繊維が均一に分散した混合物を得た。得られた前記混合物を離型処理したシャーレに注ぎ、減圧下において、温度80℃の熱板上で8時間脱溶媒処理をし、さらに150℃で2時間プレス成形し、30μmの樹脂組成物のフィルム、および厚み1mm、幅10mmのテストピースを得た。
30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は80%であった。厚み1mm、幅10mmのテストピースの曲げ強度を測定した結果、75Nであった。
【0066】
(実施例5)
実施例1と同様の操作で得られた、変性セルロース繊維のNMP分散液を用い、前記分散液中の変性セルロース繊維150質量部に対してフェノールアラルキル型エポキシ樹脂NC3000(日本化薬社製)とビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂MEH−7851SS(明和化成社製)の当量配合物を850質量部配合し撹拌し、変性セルロース繊維が均一に分散した混合物を得た。得られた前記混合物を離型処理したシャーレに注ぎ、減圧下において、温度80℃の熱板上で8時間脱溶媒処理をし、さらに150℃で2時間プレス成形し、30μmの樹脂組成物のフィルム、および厚み1mm、幅10mmのテストピースを得た。
30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は78%であった。厚み1mm、幅10mmのテストピースの曲げ強度を測定した結果、73Nであった。
【0067】
(実施例6)
実施例1と同様の操作で得られた、変性セルロース繊維のNMP分散液を用い、前記分散液中の変性セルロース繊維150質量部に対してビフェニル型エポキシ樹脂YX4000(ジャパンエポキシレジン社製)とフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂XLC−LL(三井化学社製)の当量配合物を850質量部配合し撹拌し、変性セルロース繊維が均一に分散した混合物を得た。得られた前記混合物を離型処理したシャーレに注ぎ、減圧下において、温度80℃の熱板上で8時間脱溶媒処理をし、さらに150℃で2時間プレス成形し、30μmの樹脂組成物のフィルム、および厚み1mm、幅10mmのテストピースを得た。
30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は79%であった。厚み1mm、幅10mmのテストピースの曲げ強度を測定した結果、72Nであった。
【0068】
(実施例7)
実施例1におけるアリール基を有する化合物として、ベンゼン(和光純薬株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作で変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、ベンゼンの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したベンゼンが観測された。
前記のデータから本実施例で得られた変性セルロース繊維は、少なくとも(1−B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であることが確認された。
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂JER828を用いる樹脂組成物のフィルムの作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は84%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は71Nであった。
【0069】
(実施例8)
実施例1におけるアリール基を有する化合物として、トルエン(和光純薬株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作で変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、トルエンの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したトルエンが観測された。
【0070】
前記のデータから本実施例で得られた変性セルロース繊維は、少なくとも(1−B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であることが確認された。
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂JER828を用いる樹脂組成物のフィルムの作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は84%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は73Nであった。
【0071】
(実施例9)
実施例1におけるアリール基を有する化合物として、o−フェニルフェノール(和光純薬株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作で変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、フェニルフェノールの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したフェニルフェノールが観測された。
前記のデータから本実施例で得られた変性セルロース繊維は、少なくとも(1−B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であることが確認された。
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂JER828を用いる樹脂組成物のフィルムの作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は80%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は71Nであった。
【0072】
(実施例10)
実施例1におけるアリール基を有する化合物として、ナフタレン(和光純薬株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作で変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、ナフタレンの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したナフタレンが観測された。
前記のデータから本実施例で得られた変性セルロース繊維は、少なくとも(1−B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であることが確認された。
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂JER828を用いる樹脂組成物のフィルムの作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は78%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は72Nであった。
【0073】
(実施例11)
実施例1におけるアリール基を有する化合物として、ビスフェノールA(和光純薬株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作で変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、ビスフェノールAの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したビスフェノールAが観測された。
前記のデータから本実施例で得られた変性セルロース繊維は、少なくとも(1−B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であることが確認された。
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂JER828を用いる樹脂組成物のフィルムの作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は85%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は74Nであった。
【0074】
(比較例1)
実施例3と同様の操作で機械処理されたセルロース繊維のNMP分散液を得た。
次に前記機械処理されたセルロース繊維のNMP分散液を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂JER828を用いる樹脂組成物のフィルムの作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は37%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は28Nであった。
【0075】
(比較例2)
実施例1と同様の操作で酸化処理されたセルロース繊維のNMP分散液を得た。
次に前記酸化処理されたセルロース繊維のNMP分散液を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂JER828を用いる樹脂組成物のフィルムの作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は48%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は56Nであった。
【0076】
(比較例3)
特許文献3(特開2010−59304号公報)の[実施例1]に記載されている方法で有機オニウム処理された乾燥した微細修飾セルロース繊維を得た。
次に前記微細修飾セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に微細修飾セルロース繊維の0.2質量%NMP分散液を得た後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂JER828を用いる樹脂組成物のフィルムを作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は66%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は59Nであった。
【0077】
実施例1〜11は本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維を用いた樹脂組成物であり、高い光線透過率と曲げ強度を示すという結果となった。
比較例1は本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維を用いず、機械処理されたセルロース繊維とビスフェノールA型エポキシ樹脂による樹脂組成物であるが、光線透過率と曲げ強度が本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維を用いた樹脂組成物と比較して半分以下となった。
比較例2は本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維を用いず、酸化処理されたセルロース繊維とビスフェノールA型エポキシ樹脂による樹脂組成物であるが、光線透過率と曲げ強度が本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維を用いた樹脂組成物と比較して低い結果となった。
比較例3は本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維を用いず、有機オニウム処理された微細修飾セルロース繊維とビスフェノールA型エポキシ樹脂による樹脂組成物であるが、光線透過率と曲げ強度が本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維を用いた樹脂組成物と比較して低い結果となった。
以上のことから、本発明により高透明、高強度を有する成形体、該成形体を提供し得る、樹脂組成物、及び該樹脂組成物、成形体の製造方法を提供できることが確認された。本発明の樹脂組成物に用いる変性セルロース繊維は、樹脂中に高度なレベルで均一に分散していることから高充填が可能となり、高度なレベルで均一に分散しているセルロース繊維から推定される効果として、高弾性を発現し得る。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の樹脂組成物は高透明性、高強度及び高弾性率であることから、光学特性が重要な特性である太陽電池用基板、有機EL用基板、電子ペーパー用基板、液晶表示素子用プラスチック基板、光学シート、光学フィルムなどの光学部品、機械的強度が重要な特性であるダッシュボードやインスツルメントパネルなどの自動車部品、絶縁性の高い樹脂であることから、半導体封止材などの半導体材料に有用に使用することが出来る。
また、高強度及び高弾性率であることに加え、セルロースの軽量性や生物由来の材料による環境負荷低減効果から、鉄道、航空機、船等の輸送用機器の部品、住宅やオフィスにおけるサッシ、壁板及び床板などの建材、柱あるいは鉄筋コンクリートにおける鉄筋のような構造部材、電子回路、パソコン及び携帯電話等の家電製品の筐体(ハウジング)、文具等の事務用機器、家具、使い捨て容器等の生活用品、スポーツ用品、玩具など家庭内で使用される小物、看板、標識などの野外設置物、防弾盾、防弾チョッキなどの衝撃吸収部材、ヘルメットなどの護身用具、人工骨、医療用品、研磨剤、防音壁、防護壁、振動吸収部材、工具、板ばねなどの機械部品、楽器、梱包材などにも使用することが出来、本発明の有用性は高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C6位にアリール基を有する変性セルロース繊維と、エポキシ樹脂と、を含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記C6位にアリール基を有する変性セルロース繊維が、分子中に下記式(1−A)、(1−B)、および(1−C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維である、請求項1記載の樹脂組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

(前記式(1−A)、(1−B)、(1−C)中、X、Xはアリール基であり、アリール基の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アラルキル基、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、X、Xは同一であっても異なっていてもよい。a、b、cは1以上の整数である。)
【請求項3】
前記式(1−A)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維が、下記式(2)の繰り返し単位を含む化合物と、アリール基を有する化合物とを接触させることにより得られるものである請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
【化4】

(前記式(2)中、Yは水酸基、またはハロゲン基を表す。dは1以上の整数である。)
【請求項4】
前記式(1−B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維が、下記式(3)の繰り返し単位を含む化合物と、アリール基を有する化合物とを接触させることにより得られるものである請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化5】

(前記式(3)中、Yは水酸基、またはハロゲン基を表す。eは1以上の整数である。)
【請求項5】
前記式(1−C)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維が、下記式(4)の繰り返し単位を含む化合物と、アリール基を有する化合物とを接触させることにより得られるものである請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化6】

(前記式(4)中、fは1以上の整数である。)
【請求項6】
前記式(3)および/または式(4)の繰り返し単位を含む化合物が、天然セルロースとN−オキシル化合物とを接触させることにより誘導される化合物である請求項4または請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記変性セルロース繊維の含有率が、前記樹脂組成物全体に対して0.1〜99.9質量%である請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂が、アリール基を有するエポキシ樹脂である請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、または、ビフェニル型エポキシ樹脂から少なくとも1つ選ばれるものである請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
下記式(2)、式(3)、および式(4)の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む化合物と、アリール基を有する化合物を用いて、式(1−A)、(1−B)、および(1−C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得る第1の工程と、該変性セルロース繊維とエポキシ樹脂とを接触させて樹脂組成物を得る第2の工程を有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【化7】

(前記式(2)中、Yは水酸基、またはハロゲン基を表す。dは1以上の整数である。)
【化8】

(前記式(3)中、Yは水酸基、またはハロゲン基を表す。eは1以上の整数である。)
【化9】

(前記式(4)中、fは1以上の整数である。)
【化10】

【化11】

【化12】

(前記式(1−A)、(1−B)、(1−C)中、X、Xはアリール基であり、アリール基の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アラルキル基、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、X、Xは同一であっても異なっていてもよい。a、b、cは1以上の整数である。)
【請求項11】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて得られる成形体。
【請求項12】
厚み30μmにおける全光線透過率が70%以上である請求項11記載の成形体。
【請求項13】
曲げ強度が50N以上である請求項11または請求項12に記載の成形体。
【請求項14】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いることを特徴とする成形体の製造方法。

【公開番号】特開2012−177012(P2012−177012A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39817(P2011−39817)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】