説明

樹脂組成物及びその製造方法、成形品並びに電気製品

【課題】電気製品の筐体材料に要求されるような、高い耐熱性を実現することができる生分解性樹脂組成物及びその製造方法、樹脂組成物の成形品、並びにこの成型形品を用いた電気製品を提供する。
【解決手段】樹脂組成物は少なくとも1種の生分解性を示す多糖類と補強材とを含有し、補強材が、多糖類100重量部に対して42〜100重量部含有される。多糖類は、セルロース、澱粉、キチン、キトサン、デキストラン、若しくはこれらの誘導体、これらを含む共重合体のから選ばれる少なくとも1種である。セルロースの誘導体は、エステル化セルロースである。澱粉の誘導体は、エステル化澱粉である。補強材は、無機フィラー、有機フィラーから選ばれる少なくとも1種である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性を示す樹脂組成物及びその製造方法、樹脂組成物を成形してなる成形品、並びにこの成形品を含む電気製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から各種の合成樹脂材料が開発、提供され、種々の産業分野における使用量は年々増加し、生産量は年間1000万トン近くに及ぶ。その結果として、合成樹脂の廃棄量も増大し、その処理が大きな社会問題となっている。廃棄された樹脂をそのまま焼却処理することは、有害ガスが発生したり、大きな燃焼熱により焼却炉の損傷を起こしたりすることがあり、環境へ大きな負荷を与えることとなっている。
【0003】
これまでに知られている廃棄樹脂の処理方法としては、例えば熱分解や化学分解により廃棄樹脂を低分子化したものを焼却したり、埋め立てたりする方法がある。しかし、焼却処理は二酸化炭素の排出を伴うために、地球温暖化を招くおそれがある。また、焼却樹脂中に硫黄、窒素またはハロゲンなどが含有されている場合には、焼却処理することは有害排出ガスによる大気汚染の一因になる。一方、樹脂を埋め立てる場合、現在用いられているほとんどの樹脂は、長期間分解されずにそのままの状態で残存するため、土壌汚染の原因になる。
【0004】
そこで、このような問題に対応するために、天然素材系のバイオセルロースや澱粉主体のプラスチック、低置換度セルロース系エステル、微生物による天然ポリエステル、化学合成による脂肪族ポリエステル樹脂等が、生分解性を示すプラスチックとして、その製造、用途が検討されつつある。生分解性樹脂は、微生物などにより生化学的に二酸化炭素及び水などに分解されるので、自然環境へ廃棄された場合においても容易に分解して低分子量化し、環境に対して無害な化合物に変化する。そのため、生分解性樹脂を使用することによって、廃棄に伴う地球環境に対する悪影響を低減させることができる。このような理由から、今までに日用雑貨品、衛生用品または遊戯用品などを主とした使い捨て製品に対して実用化が進められている。
【0005】
ところで、生分解性樹脂は、既存の合成樹脂に比べて耐熱性に乏しいというデメリットがある。このため、生分解性樹脂の耐熱性を向上させる方法が活発に研究されており、例えばリン酸系、ソルビトール系等の結晶核剤の添加によって結晶化速度を向上させて、耐熱性(弾性率)を向上させる方法(例えば、特許文献1参照)等がこれまでに提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−278374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、生分解性樹脂の応用範囲の拡大に伴って、さらなる耐熱性の向上が要求されている。特に近年、廃棄量の極めて多い電気製品の筐体や構造材に用いられる合成樹脂の生分解性樹脂での置き換えが検討されているが、電気製品に適用される場合には、これまで生分解性樹脂が利用されている使い捨て用品等に比べて、極めて厳しい耐熱性仕様を満足しなければならない。例えば小型のオーディオ製品における耐熱性の仕様は、100℃の貯蔵弾性率が1×108Pa以上とされており、既存の生分解性樹脂ではこのような耐熱性を満足することは困難である。
【0008】
そこで本発明はこのような従来の実状に鑑みて提案されたものであり、例えば電気製品の筐体材料に要求されるような、高い耐熱性を実現することができる樹脂組成物及びその製造方法、樹脂組成物の成形品、並びにこの成形品を用いた電気製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、生分解性を示す高分子の中でも耐熱性のある多糖類と補強材との2元系とすることによって、高い耐熱性を示す生分解性樹脂組成物を実現し得るとの知見を得、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る樹脂組成物は、少なくとも1種の生分解性を示す多糖類と補強材とを含有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る成形品は、少なくとも1種の生分解性を示す多糖類と補強材とを含有する樹脂組成品を成形してなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る電気製品は、少なくとも1種の生分解性を示す多糖類と補強材とを含有する樹脂組成物を成形してなる成形品を、構成要素として含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る樹脂組成物の製造方法は、少なくとも1種の生分解性を示す多糖類と補強材とを複合することを特徴とする。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、生分解性を示す高分子の中でも高い耐熱性を示す多糖類とともに補強材を含有することによって、多糖類の有する耐熱性と補強材による耐熱性向上効果との相乗作用により、耐熱性のさらなる向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多糖類と補強材とを含有することにより、成形したときに例えば電気製品の筐体材料に利用可能な程度の高い耐熱性を実現し、且つ廃棄時の自然環境への悪影響が少ない樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、多糖類と補強材とを含有する樹脂組成物を成形することにより、例えば電気製品の筐体材料に利用可能な程度の高い耐熱性を実現し、且つ廃棄時の自然環境への悪影響が少ない成形品を提供することができる。
【0015】
また、本発明によれば、多糖類と補強材とを含有する成形品を構成要素の一部とすることにより、高い耐熱性を備え、且つ廃棄時の自然環境への悪影響が少ない電気製品を提供することができる。
【0016】
また、本発明によれば、例えば電気製品の筐体材料に利用可能な程度の高い耐熱性を実現し、且つ廃棄時の自然環境への悪影響が少ない樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1〜3、比較例1及び比較例2の貯蔵弾性率を示す特性図である。
【図2】実施例4、比較例2及び比較例3の貯蔵弾性率を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の樹脂組成物及びその製造方法、成形品並びに電気製品について詳細に説明する。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、生分解性を示す高分子化合物としての多糖類と、補強材とを含有するものである。生分解性を有する高分子化合物(以下、「生分解性高分子化合物」という)とは、使用後は自然界において微生物が関与して低分子化合物、すなわち最終的に水と二酸化炭素に分解する化合物(生分解性プラスチック研究会、ISO/TC−207/SC3)のことをいう。
【0020】
樹脂組成物に含まれる多糖類としては、セルロース、澱粉、キチン、キトサン、デキストラン若しくはそれら誘導体のいずれか、又はそれらのうち少なくとも一種を含む共重合体等を挙げることができる。また多糖類へは、熱可塑性を付与するために種々の可塑剤を添加することも可能である。
【0021】
上記セルロースの誘導体としては例えばエステル化セルロースを例示でき、具体的なエステル化セルロースとしては、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネート等の有機酸エステル、硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース等の無機酸エステル、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロース等の混成エステル、及びポリカプロラクトングラフト化セルロースアセテート等のセルロースエステル誘導体等の少なくとも一つを含む共重合体等を例示できる。これらエステル化セルロースは、単独、又は2種以上混合して使用できる。
【0022】
本発明で用いられるエステル化セルロースは、公知の方法に従って製造することができる。エステル化セルロースは、セルロースを完全にアセチル化した後、部分ケン化することで製造することができる。さらに製造したエステル化セルロースには、成形加工性を上げるために可塑剤の添加を行う。可塑剤としては、生分解性が良好で可塑効果の優れた可塑剤であれば、特に限定されないが、低分子量のエステル系可塑剤が好ましく、リン酸エステル又はカルボン酸エステル等がより好ましい。
【0023】
具体的なリン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート(TPP)及びトリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等をあげることができる。
【0024】
また、具体的なカルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル、クエン酸エステル等を代表なものとしてあげることができる。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート、(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が含まれる。
【0025】
その他、カルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等、種々のトリメリットエステルが含まれる。
【0026】
また、グリコール酸エステルも使用でき、具体的には、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等がある。中でも、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート等が好ましい。これらの可塑剤は単独で又は二種以上併用してもかまわない。
【0027】
化工澱粉である澱粉置換誘導体は、公知の方法に従って製造することができる。化工澱粉である澱粉置換誘導体の基本的な製造方法としては、エステル化であり、それらの反応により製造された澱粉エステルは、低置換度の水系反応エステル化澱粉(澱粉エステル)として、以前より知られている。(「澱粉科学ハンドブック」(1997年7月20日)(株)朝倉書店p550)また、高置換度の澱粉エステルに関しては、酸無水物をピリジン中でジメチルアミノピリジンやアルカリ金属を触媒として反応させる方法("スターチケミストリー&テクノロジー"・ウィスラー著,Academic Press発行、p332〜336)、酸無水物中で、アルカリ金属水酸化物水溶液を触媒として、100℃以上の高温で反応される方法(特表平5−508185号公報、Die Starke1972 の3月号p73等参照)、更には、「ビニルエステルを使用して、非水有機溶媒中で反応させる方法」(特開平8−188601号公報参照)等が知られている。また、原料である澱粉に天然脂肪酸等を添加し、エーテル化、グラフト重合反応させ、化工澱粉である澱粉置換誘導体を得てもよい。さらに、これらの澱粉置換誘導体(澱粉エステル)に通常の熱可塑性プラスチック(熱可塑性樹脂)のような成形加工性(例えば、射出成形、押出し成形、延伸成形等)を持たせるために、可塑剤を添加してもよい。
【0028】
さらに、可塑剤を無使用、又は少量使用の熱可塑化可能な澱粉置換誘導体(例えば、特開2000−159802号公報参照)であってもよい。上記内容は、同一澱粉分子上の反応性水酸基の水素が、炭素数6〜24の長鎖炭化水素含有基及び短鎖炭化水素含有基で置換されてなり(長鎖・短鎖炭化水素含有基がともにアシル基である場合を除く。)、長鎖炭化水素含有基及び短鎖炭化水素含有基の置換度が調整されて、生分解性を保持しながら自己熱可塑性を有する澱粉置換誘導体についてのものである。
【0029】
澱粉エステル等の澱粉に添加される可塑剤としては、澱粉エステルと相溶性の高い可塑剤が好ましく、下記各種可塑剤(主としてエステル型)を使用可能である。例えばフタル酸エステル系では、ジメチル・ジエチル・ジブチル等のフタル酸エステル、及び、エチルフタロイルエチルグリコレート、ブチルフタロイルブチルグリコレート等、脂肪族エステル系では、オレイン酸、アジピン酸、ステアリン酸のメチル・エチル・ブチル・イソプロピル等、多価アルコールエステル系では、スークロールアセテート、ジエチルグリコールベンゾエート、トリアセチン(トリアセチルグリセリン)、トリプロピオニン(トリプロピオニルグリセリン)、アセチルジグリセリン等、オキシ酸エステルでは、アセチルリシノール酸メチル、アセチルクエン酸トリエチル等、燐酸エステルでは、燐酸トリブチル、燐酸トリフェニル等、エポキシ可塑剤では、エポキシ化大豆油、エポキシ化ヒマシ油、アルキルエポキシステアレート等、高分子系可塑剤では、各種液状ゴム、テルペン類、リニアポリエステル等、これらの中で、特に、アセチルクエン酸トリエチル、エチルフタロイルエチルグリコレート、トリアセチン、トリプロピオニン等のエステル型可塑剤が好ましく使用される。
【0030】
本発明で使用する補強材としては、無機フィラー、有機フィラー等のフィラーが挙げられる。無機フィラーとしては、例えば炭素、二酸化珪素の他、アルミナ、シリカ、マグネシア、又はフェライト等の金属酸化微粒子、例えばタルク、マイカ、カオリン、ゼオライト等の珪酸塩類、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、又はフラーレン等の微粒子等が挙げられる。また、無機フィラーとしては、ガラスマイクロビーズ、炭素繊維、チョーク、例えばノボキュライト(novoculite)のような石英、アスベスト、長石、雲母等が挙げられる。また、有機フィラーとしては、例えばエポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、又はテフロン(登録商標)樹脂が挙げられる。中でも、炭素、二酸化珪素が好ましい。ただし、補強材としては、上記に限定されず、汎用的に使用されている無機フィラー、有機フィラー等のフィラーをいずれも使用できる。また、補強材は上記の材料を単独で又は2種以上混合して使用してもかまわない。
【0031】
補強材の添加量は、1又は複数種の多糖類樹脂100重量部に対し、1〜150重量部、好ましくは、40〜100重量部である。補強材の量が過大であると、樹脂との相溶性が悪く、溶融混練が困難となり、また過小であると、耐熱性の向上が見られないおそれがある。
【0032】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、多糖類と補強材とを複合する公知の方法を用いてよい。例えば、エステル化セルロース、澱粉置換誘導体であるエステル化澱粉等の多糖類単体、複数種の多糖類樹脂等に対し、上述した補強材を溶融混練することにより製造する方法が好適な例として挙げられる。上記溶融混練による製造方法としては、エステル化セルロース単体、澱粉置換誘導体であるエステル化澱粉単体、複数種の多糖類樹脂等を溶融する前又は溶融する時に、補強材を添加し、混合することにより行われる。
【0033】
本発明にかかる樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、性能向上のための他の添加剤を適宜使用することができる。他の添加剤としては、例えば加水分解制御剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等の他、滑剤、ワックス類、着色剤等が挙げられるが、これらに限定されない。これら添加剤は、単独で用いても、複数の組み合わせて用いてもかまわない。
【0034】
加水分解制御剤等の加水分解抑制剤は、生分解性高分子化合物の加水分解を抑制する添加剤等であれば、特に限定されない。加水分解抑制剤としては、例えば生分解性高分子化合物中の活性水素と反応性を有する化合物が挙げられる。上記化合物を加えることで、生分解性高分子化合物中の活性水素量を低減させ、活性水素が触媒的に生分解性高分子鎖を加水分解することを防ぐことができる。ここで、活性水素とは、酸素、窒素等と水素との結合(N−H結合やO−H結合)における水素のことであり、かかる水素は炭素と水素の結合(C−H結合)における水素に比べて反応性が高い。より具体的には、生分解性高分子化合物中の例えばカルボキシル基:−COOH、水酸基:−OH、アミノ基:−NH2、又はアミド結合:−NHCO−等における水素等が挙げられる。
【0035】
上記生分解性高分子化合物中の活性水素と反応性を有する化合物としては、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、オキソゾリン系化合物等が適用可能である。特にカルボジイミド化合物は、生分解性高分子化合物と溶融混練でき、少量の添加で加水分解性をより抑制できるために好ましい。
【0036】
上記カルボジイミド化合物は分子中に一個以上のカルボジイミド基を有する化合物であり、ポリカルボジイミド化合物をも含む。上記カルボジイミド化合物の製造方法としては、例えば、触媒として、例えば、O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)ホスホロチオエート、O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−(メチルチオ)フェニル)ホスホロチオエート、O,O−ジエチル−O−2−イソプロピル−6−メチルピリミジン−4−イルホスホロチオエート等の有機リン系化合物、又は、例えばロジウム錯体、チタン錯体、タングステン錯体、パラジウム錯体等の有機金属化合物を用い、各種ポリマーイソシアネートを約70℃以上の温度で、無溶媒又は不活性溶媒(たとえば、ヘキサン、ベンゼン、ジオキサン、クロロホルム等)中で脱炭酸重縮合により製造する方法を挙げることができる。
【0037】
このカルボジイミド化合物に含まれるモノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ナフチルカルボジイミド等を例示することができ、これらの中でも、特に工業的に入手が容易であるジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドが好ましい。
【0038】
上記生分解性高分子化合物中の活性水素と反応性を有する化合物であるイソシアネート化合物としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジクロロ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート又は3,3'−ジメチル−4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0039】
上記イソシアネート化合物は、公知の方法で容易に製造することができ、また市販品を適宜使用することができる。市販のポリイソシアナート化合物としては、コロネート(日本ポリウレタン製;水添ジフェニルメタンジイソシアネート)又はミリオネート(日本ポリウレタン製)等の芳香族イソシアネートアダクト体が適用可能である。なかでも、本発明にかかる組成物を溶融混練で製造する場合は、液状より固形物、例えばイソシアネート基をマスク剤(多価脂肪族アルコール、芳香族ポリオール等)でブロックしたポリイソシアネート化合物の使用が好ましい。
【0040】
上記生分解性高分子化合物中の活性水素と反応性を有する化合物であるオキサゾリン系化合物としては、例えば、2,2'−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−p−フェニレンビス(4,4'−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−m−フェニレンビス(4,4'−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、又は2,2'−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等が挙げられる。また、加水分解抑制剤は、上記化合物を単独で又は2種以上使用してもかまわない。
【0041】
上記酸化防止剤としては、例えばフェノール系、アミン系、リン系、イオウ系、ヒドロキノン系、又はキノリン系酸化防止剤等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール類、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のC2-10アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、例えばトリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のジ又はトリオキシC2-4 アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、例えばグリセリントリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のC3-8 アルカントリオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、例えばペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のC4-8 アルカンテトラオールテトラキス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、例えばn−オクタデシル−3−(4',5'−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、ステアリル−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート、ジステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンムアミド)、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、又は1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン等が挙げられる。
【0042】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N,N'−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、又はN−フェニル−N'−シクロヘキシル−1,4−フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0043】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2−t−ブチルフェニル)フェニルホスファイト、トリス[2−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル]ホスファイト、トリス[2,4−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル]ホスファイト、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−フェニルフェニル)ホスファイト等のホスファイト化合物;トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルビニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルフェニル−p−アニシルホスフィン、p−アニシルジフェニルホスフィン、p−トリルジフェニルホスフィン、ジ−p−アニシルフェニルホスフィン、ジ−p−トリルフェニルホスフィン、トリ−m−アミノフェニルホスフィン、トリ−2,4−ジメチルフェニルホスフィン、トリ−2,4,6ットリメチルフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−oッアニシルホスフィン、トリ−p−アニシルホスフィン、又は1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン等のホスフィン化合物等が挙げられる。
【0044】
ヒドロキノン系酸化防止剤としては、例えば、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン等が挙げられ、キノリン系酸化防止剤としては、例えば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン等が挙げられ、イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等が挙げられる。中でも、好ましい酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤(特に、ヒンダードフェノール類)、例えば、ポリオール−ポリ[(分岐C3-6 アルキル基及びヒドロキシ基置換フェニル)プロピオネート]等が挙げられる。また酸化防止剤は単独で又は2種以上使用してもかまわない。
【0045】
上記熱安定剤としては、例えばポリアミド、ポリ−β−アラニン共重合体、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、メラミン、シアノグアニジン、メラミン−ホルムアルデヒド縮合体等の塩基性窒素含有化合物等の窒素含有化合物;有機カルボン酸金属塩(ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム等)、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等)、金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等)、金属炭酸塩等のアルカリ又はアルカリ土類金属含有化合物;ゼオライト;又はハイドロタルサイト等が挙げられる。特に、アルカリ又はアルカリ土類金属含有化合物(特にマグネシウム化合物やカルシウム化合物等のアルカリ土類金属含有化合物)、ゼオライト、又はハイドロタルサイト等が好ましい。また熱安定剤は単独で又は2種以上使用してもかまわない。
【0046】
上記紫外線吸収剤としては、従来公知のベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリチレート系又はシュウ酸アニリド系等が挙げられる。例えば、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシオクトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシドデシロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシベンジロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2'−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2'−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、又は[2,2'−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシオクトキシベンゾフェノン)−メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。また紫外線吸収剤は単独で又は2種以上使用してもかまわない。
【0047】
上記滑剤としては、例えば、流動パラフィン等の石油系潤滑油;ハロゲン化炭化水素、ジエステル油、シリコン油、フッ素シリコン等の合成潤滑油;各種変性シリコン油(エポキシ変性、アミノ変性、アルキル変性、ポリエーテル変性等);ポリオキシアルキレングリコール等の有機化合物とシリコンとの共重合体等のシリコン系潤滑性物質;シリコン共重合体;フルオロアルキル化合物等の各種フッ素系界面活性剤;トリフルオロ塩化メチレン低重合物等のフッ素系潤滑物質;パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等のワックス類;高級脂肪族アルコール、高級脂肪族アミド、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸塩、又は二硫化モリブデン等が挙げられる。これらの中でも、特に、シリコン共重合体(樹脂にシリコンをブロックやグラフトにより重合させたもの)の使用が好ましい。シリコン共重合体としては、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリブチラール系樹脂、メラミン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂等に、シリコンをブロック又はグラフト重合させたものであればよく、シリコングラフト共重合体を用いるのが好ましい。これらの潤滑物質は、単独で又は2種以上使用してもかまわない。
【0048】
上記ワックス類としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス等のオレフィン系ワックスやパラフィンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ミクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、脂肪酸アミド系ワックス、高級脂肪族アルコール系ワックス、高級脂肪酸系ワックス、脂肪酸エステル系ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス等が挙げられる。これらのワックス類は、単独で又は2種以上使用してもかまわない。
【0049】
上記着色剤としては、無機顔料、有機顔料又は染料等が挙げられる。無機顔料としては、例えばクロム系顔料、カドミウム系顔料、鉄系顔料、コバルト系顔料、群青、又は紺青等が挙げられる。また、有機顔料や染料の具体的な例としては、例えばカーボンブラック;例えばフタロシアニン銅のようなフタロシアニン顔料;例えばキナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッドのようなキナクリドン顔料;例えばハンザイエロー、ジスアゾイエロー、パーマネントイエロー、パーマネントレッド、ナフトールレッドのようなアゾ顔料;例えばスピリットブラックSB、ニグロシンベース、オイルブラックBWのようなニグロシン染料、オイルブルー、ピグメントイエロー、ピグメントブルー、ピグメントレッド等又はアルカリブルー等が挙げられる。また着色剤は単独で又は2種以上使用してもかまわない。
【0050】
本発明にかかる樹脂組成物に対し、公知の処理を行ってもよい。たとえば、本発明にかかる樹脂組成物中の生分解性高分子化合物の加水分解を抑制するために、本発明にかかる樹脂組成物に対し、活性エネルギー線を照射させてもよい。
【0051】
上記活性エネルギー線源としては、例えば電磁波、電子線又は粒子線及びこれらの組み合わせが挙げられる。電磁波としては、紫外線(UV)、エックス線等が挙げられ、粒子線としては、陽子、中性子等の素粒子の線が挙げられる。中でも特に、電子加速器の使用による電子線照射が好ましい。
【0052】
上記活性エネルギー線は、公知の装置を用いて照射することができる。例えば、UV照射装置、電子加速器等が挙げられる。照射線量及び照射強度としては、本発明にかかる樹脂組成物において、効果的に生分解性高分子化合物の加水分解を遅延する範囲であれば、とくに限定されない。例えば、電子線の場合、加速電圧が、約100〜5000kV程度が好ましく、照射線量としては、約1kGy程度以上であることが好ましい。
【0053】
本発明にかかる樹脂組成物を成形して得られる成形品は、種々の用途に応用可能である。成形品の成形方法としては、例えば、圧空成形、フィルム成形、押出成形又は射出成形等が挙げられ、中でも特に射出成形が好ましい。より具体的には、押出成形は、常法に従い、例えば単軸押出機、多軸押出機、タンデム押出機等の公知の押出成形機を用いて行うことができる。また、射出成形は、常法に従い、例えばインラインスクリュ式射出成形機、多層射出成形機、二頭式射出成形機等の公知の射出成形機にて行うことができる。また、本発明の樹脂組成物を成形して成形品を製造する方法としては、特に限定されず、公知の成形方法をいずれも利用できる。
【0054】
本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品は、樹脂組成物中に多糖類と補強材とを含むことにより極めて高い耐熱性を示し、例えば電気製品の一種である小型オーディオ製品等に要求される耐熱性である、100℃での貯蔵弾性率が1×108Pa以上であるという要求をも満足することができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、これまで耐熱性の点で生分解性樹脂の適用が困難であった電気製品の一部に適用されて好適である。
【0055】
具体的な電気製品としては、例えばDVD(デジタルバーサタイルディスク)プレーヤー、CD(コンパクトディスク)プレーヤー、MD(ミニディスク)プレーヤー、アンプ等の据置型のAV機器、スピーカー、車載用AV/IT機器、電子書籍を含めたPDA、ビデオデッキ、プロジェクター、テレビ受信機器、モニター、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、プリンター、ラジオ、ラジカセ、システムステレオ、マイク、ヘッドフォン、キーボード、ヘッドフォンステレオ、携帯型CDプレーヤー、携帯型MDプレーヤー、いわゆるシリコンオーディオプレーヤー等の携帯型音楽機、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、パソコン及びパソコン周辺機器、据え置き型のゲーム機器、携帯型ゲーム機器、携帯電話、電話機、ファクシミリ、コピー機、エンターテイメントロボット等が挙げられ、本発明の成形品はこれら電気製品の筐体として利用することができる。また、本発明の成形品は、電気製品の筐体等だけでなく、電気製品を構成する部品、構造材等の他の構成要素にも使用できる。本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品を電気製品の構成要素とすることで、この電気製品は、充分な耐熱性を示すとともに、生分解性を示すことから合成樹脂に比べて廃棄時に自然環境に与える悪影響を軽減することができる。
【0056】
また、本発明の樹脂組成物からなる成形品の用途は、この限りではなく、生分解性を示すことから日用雑貨品、衛生用品または遊戯用品などを主とした使い捨て製品はもちろん、梱包材、自動車用途、工業製品用途等のあらゆる用途に適用可能である。
【実施例】
【0057】
以下に、本発明の実施例について詳細に述べるが、本発明はこれに限定されないことは言うまでもない。
【0058】
(試料の調整)
エステル化セルロースであるセルロースアセテート(15300−22、ダイセルファイケム株式会社製)(A)と、澱粉置換誘導体であるエステル化澱粉(CPR−M3(フィラー添加無し)、日本コーンスターチ株式会社製)(B)と、補強材であるタルク(PKP−80、富士タルク株式会社製)(D)とを溶融混練法により混合した。
【0059】
混練条件としては、混練機としてミニマックス−ミックスルーダ(東洋精機社製)を使用し、ノズル温度を170〜175℃、トルクを4〜6kg、滞留時間を3秒以内とし、混練により(A)(B)の樹脂に対し、(D)の添加を施した。得られた樹脂複合体をペレット化した後に、170℃で300kg/cm2のプレスを行い、厚さ1mmの板材に成形し、測定試験片として7mm×50mmのサイズに切り出し、耐熱性を確認するために貯蔵弾性率の測定を行った。
【0060】
以下に曲げ弾性率の測定方法を示す。
測定装置:(レオメトリック社製)粘弾性アナライザー
試験片:長さ50mm×幅7mm×厚さ1mm
周波数:6.28(rad/s)
測定開始温度:25℃
測定最終温度:160℃
昇温速度:5(℃/min)
歪:0.05%
【0061】
<実施例1>
(A)セルロースアセテート15300−22を100重量部に対して、補強材である(D)タルクを100重量部添加した系である。
【0062】
<実施例2>
(A)セルロースアセテート15300−22を100重量部に対して、補強材である(D)タルクを66重量部添加した系である。
【0063】
<実施例3>
(A)セルロースアセテート15300−22を100重量部に対して、補強材である(D)タルクを42重量部添加した系である。
【0064】
<実施例4>
(B)エステル化澱粉CPR−M3を100重量部に対して、補強材である(D)タルクを65重量部添加した系である。
【0065】
<比較例1>
(A)セルロースアセテート15300−22単体の系であり、実施例1〜3に対する比較例である。
【0066】
<比較例2>
(B)エステル化澱粉CPR−M3単体の系であり、実施例4に対する比較例である。
【0067】
<比較例3>
代表的な脂肪族ポリエステル生分解性樹脂である、ポリ乳酸の射出グレード(C)レイシアH100J(三井化学株式会社製)単体の系である。
【0068】
以上のように作製した試料の組成一覧(組成;重量部)を、下記の表1に示す。また、貯蔵弾性率が1×108Pa以上である温度が、樹脂単体系である比較例1〜2に比べ実施例1〜4でどれだけ向上したかを比較した結果を、表1中の(E)に記載する。
【0069】
また、実施例1〜実施例3、比較例1及び比較例2の貯蔵弾性率の測定結果を図1に、実施例4、比較例2及び比較例3の貯蔵弾性率の結果を図2に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
図1及び表1から、60℃付近で急激に貯蔵弾性率が低下するポリ乳酸単体(比較例3)に比べ、多糖類の一種であるエステル化セルロースを単体で用いた比較例1では、耐熱性の向上が見られた。さらに、補強材であるタルクを添加した実施例1〜3では、貯蔵弾性率が1×108Pa以上を示す温度が比較例1に比べて10℃以上上昇しており、耐熱性がさらに向上した。特に、エステル化セルロースと補強材とを重量比で1:1の割合で混合した実施例1では、比較例1に比べて耐熱性が20℃以上向上しており、極めて高い耐熱性を示すことがわかった。
【0072】
また、図2及び表2から、60℃付近で急激に貯蔵弾性率が低下するポリ乳酸単体(比較例3)に比べ、多糖類の一種であるエステル化澱粉を単体で用いた比較例2では、耐熱性の向上が見られた。(ただし、比較例1であるエステル化セルロール単体に比べると耐熱性は低かった。)さらに、補強材であるタルクを添加した実施例4では、貯蔵弾性率が1×108Pa以上を示す温度が、比較例2に比べて17℃以上上昇しており、耐熱性がさらに向上することがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の生分解性を示す多糖類と補強材とを含有し、
上記補強材が、上記多糖類100重量部に対して42〜100重量部含有される樹脂組成物。
【請求項2】
セルロースアセテートとタルクとを含有し、
上記タルクが、上記セルロースアセテ−ト100重量部に対して42〜100重量部含有される樹脂組成物。
【請求項3】
上記タルクが、上記セルロースアセテ−ト100重量部に対して66〜100重量部含有される請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の生分解性を示す多糖類と補強材とを含有し、
上記補強材が、上記多糖類100重量部に対して42〜100重量部含有される樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項5】
セルロースアセテートとタルクとを含有し、
上記タルクが、上記セルロースアセテ−ト100重量部に対して42〜100重量部含有される樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項6】
少なくとも1種の生分解性を示す多糖類と補強材とを含有し、
上記補強材が、上記多糖類100重量部に対して42〜100重量部含有される樹脂組成物を成形してなる成形品を、構成要素として含む電気製品。
【請求項7】
セルロースアセテートとタルクとを含有し、
上記タルクが、上記セルロースアセテ−ト100重量部に対して42〜100重量部含有される樹脂組成物を成形してなる成形品を、構成要素として含む電気製品。
【請求項8】
少なくとも1種の生分解性を示す多糖類と補強材とを複合し、
上記補強材が、上記多糖類100重量部に対して42〜100重量部含有される樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
セルロースアセテートとタルクとを複合し、
上記タルクが、上記セルロースアセテ−ト100重量部に対して42〜100重量部含有される樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−189655(P2010−189655A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98714(P2010−98714)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【分割の表示】特願2003−403480(P2003−403480)の分割
【原出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】