説明

樹脂組成物及びその製造方法並びに発泡電線

【課題】本発明は、充填剤として窒化ホウ素を用いた場合に、微細な気泡が均一に分布した発泡体を得ることに好適な樹脂組成物及び上記樹脂組成物の製造方法並びに上記樹脂組成物から形成される発泡体を提供する。
【解決手段】フッ素樹脂(A)及び発泡核剤(B)を含有する樹脂組成物の製造方法であって、発泡核剤(B)を粉砕及び/又は分級する工程(1)、上記発泡核剤(B)とフッ素樹脂とから混合物を得る工程(2)、上記混合物に剪断力Sを加えて混練し、ペレット(I)を得る工程(3)、並びに、上記ペレット(I)及び希釈用樹脂に剪断力Sを加えて混練し、目的の樹脂組成物のペレット(II)を得る工程(4)を含むものであり、上記工程(2)の混合方法は、機械的攪拌を用いる方法であり、上記剪断力Sは、上記剪断力Sよりも低いものでないことを特徴とする樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂との親和性が低い充填剤を含有する樹脂組成物及び樹脂組成物製造方法、並びに、発泡電線等に好適に用いることができる樹脂組成物及び上記樹脂組成物を製造する方法並びに上記樹脂組成物から得られる発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂に充填剤を添加する効果は、充填剤粒子の形状、粒径及び化学的性質等により大きく影響を受ける。一般的に充填剤の分散性の向上は、機械的強さ、例えば、引張強さ、剛性、硬度等に効果を発揮する。また、充填剤の分散性の向上は、熱伝導性、耐薬品性、加工性等の改良にも大きな効果を発揮する。
【0003】
充填剤の分散性を向上させるため、フッ素樹脂との親和性が低い充填剤は、フッ素樹脂との親和性をもたせるために、例えば、シランカップリング剤による処理、フッ素化処理等によって表面改質することが行われてきた。
【0004】
しかしながら、充填剤表面の改質に用いる装置は複雑であり、また、充填剤の製造コストが高くなる問題があった。そこで、フッ素樹脂との親和性が低い充填剤を表面改質することなく、フッ素樹脂中に均一に分散させる方法が求められていた。
【0005】
例えば、電子信号の伝達等に用いられる導電線は、確実な伝達を保つために絶縁されていることが必要である。このような絶縁は、樹脂を溶融させ、導電線の周囲に押し出して被覆材を形成させること等により行われている。このような樹脂としては、誘電率が低く、軽量性、耐熱性、難燃性、無煙性等に優れていることから、フッ素樹脂が好適に用いられる。
【0006】
導電線の被覆材としては、電気的特性を向上させるべく誘電率の低下が望まれており、低誘電率化のためには被覆材を発泡体にすることが効果的である。樹脂を材料とする発泡体は、通常、溶融させた樹脂の中に気体を存在させて成形する発泡成形により得られる。発泡体中の気泡は、得られる発泡体の形状や特性を均一なものにするため、微細であって均一に分布していることが好ましい。
【0007】
気泡の細小化や均一分布化を目的として、発泡成形時に気泡を発生させる起点となるように、樹脂中に発泡核剤を存在させる方法がある。フッ素樹脂等の樹脂に加える発泡核剤としては、熱的に安定で化学的に不活性であり、低毒性であって、添加による誘電率変化が僅少である等の優れた電気的性質を有すること等から、窒化ホウ素(BN)を用いることが好ましい。
【0008】
フッ素樹脂等の樹脂に発泡核剤としてBNを配合して発泡体を得る方法として、BNについては、例えば次のような開示がある。
【0009】
特開平8−12796号公報には、発泡核剤としてセラミックス又はその原料とゼオライトの組み合わせのうち、BNとゼオライトの組み合わせが好適であることが開示されている。
【0010】
特開昭63−24503号公報及び特開昭63−110508号公報には、発泡核剤としてBNを用いる方法が開示されている。
【0011】
特開昭59−11340号公報には、表面積が5〜10m/gであるBNを発泡核剤として添加する方法が開示されている。
【0012】
特公平6−89166号公報、米国特許第4877815号公報及び米国特許第5023279号公報には、8.6m/gの表面積を有するBNをスルホン酸及びホスホン酸並びにこれらの酸の塩と併用することが開示されている。
【0013】
特公平7−121999号公報及び特開平1−172431号(米国特許第4764538号)公報には、表面積が約8m/gであるBNを金属陽イオン及び多原子陰イオンからなり特定の関係式を満たす熱的に安定な無機塩、例えば四ホウ酸ナトリウムと併用することが開示されている。
【0014】
米国特許第3072583号公報には、フッ素樹脂発泡体の形成において、BNは平均粒子径が10μm未満のものが好ましく、樹脂とBNとを適切なミルで粉砕することが開示されている。
【0015】
特開平10−195216号公報には、脱炭酸により発泡可能な樹脂粉末、BN及び金属塩を混合してブレンドを得、圧縮機次いでハンマーミル等のグラインダーを用いて粗砕して粉体を生成させるか、ブレンドからペレットミルを用いてペレットを生成させ、押出機に供給する方法が開示されており、ブレンドはHENSCHELミキサー(Purnell International社製)の使用が好ましいとされている。
【0016】
特開平10−45931号公報には、加工可能なフッ素重合体物質とBNに加え、スルホン酸若しくはホスホン酸又はこれらの酸塩、並びに/又は、多原子アニオン含有無機塩を組み合せて用いる発泡方法であって、BN結晶が最終寸法まで成長しており、平均粒子寸法が12μm以下である方法が開示されており、このBNは、個々の結晶を破壊する機械的粉砕ではなく、成長した個々のクリスタリットのアグロメレーションが生じる場合は脱アグロメレーションされたものであると記載されている。
【0017】
しかしながら、樹脂に核剤を配合して発泡体を得るこれらの各方法に関し、核剤原料の粒度分布、更には樹脂組成物中の核剤の粒度分布に注目しているものはない。
【0018】
近年の情報関連技術の発達に伴う通信速度の上昇により、一時に取り扱われる情報伝達量が増大し、電気的特性が更に向上された被覆材料が要望されているところ、これらの従来技術では不充分であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
発明の要約
本発明の目的は、上記の現状に鑑み、フッ素樹脂との親和性が低い充填剤を均一に分散させてなる樹脂組成物及び上記樹脂組成物の製造方法を提供することにあり、さらには、上記充填剤として発泡核剤を用いた場合に、微細な気泡が均一に分布した発泡体を得ることに好適な樹脂組成物及び上記樹脂組成物の製造方法並びに上記樹脂組成物から形成される発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、フッ素樹脂(A)、及び、上記フッ素樹脂(A)との親和性が低い充填剤(X)を含有する樹脂組成物であって、上記充填剤(X)は、d99が15μm以下であることを特徴とする樹脂組成物である。
【0021】
本発明は、フッ素樹脂(A)及び発泡核剤(B)を含有する樹脂組成物であって、上記発泡核剤(B)は、d99が15μm以下であることを特徴とする樹脂組成物である。
【0022】
上記d99は、10μm以下であることが好ましい。
【0023】
任意の切断面における単位面積当りに上記発泡核剤(B)が占める面積の変動が15%以下であることが好ましい。
【0024】
上記発泡核剤(B)は、窒化ホウ素であることが好ましい。
【0025】
上記発泡核剤(B)は、上記樹脂組成物の0.1〜2重量%であることが好ましい。
【0026】
上記樹脂組成物は、発泡電線に用いられるものであることが好ましい。
【0027】
本発明は、上記樹脂組成物を製造するための樹脂組成物製造方法であって、充填剤を粉砕及び/又は分級する工程(1)、上記充填剤とフッ素樹脂とから混合物を得る工程(2)、上記混合物に剪断力Sを加えて混練し、ペレット(I)を得る工程(3)、並びに、上記ペレット(I)及び希釈用樹脂に剪断力Sを加えて混練し、目的の樹脂組成物のペレット(II)を得る工程(4)を含むものであり、上記剪断力Sは、上記剪断力Sよりも低いものでないことを特徴とする樹脂組成物製造方法である。
【0028】
本発明は、また、上記樹脂組成物を製造する樹脂組成物製造方法であって、発泡核剤を粉砕及び/又は分級する工程(1)、上記発泡核剤とフッ素樹脂とから混合物を得る工程(2)、上記混合物に剪断力Sを加えて混練し、ペレット(1)を得る工程(3)、並びに、上記ペレット(I)及び希釈用樹脂に剪断力Sを加えて混練し、目的の樹脂組成物のペレット(II)を得る工程(4)を含むものであり、上記剪断力Sは、上記剪断力Sよりも低いものでないことを特徴とする樹脂組成物製造方法である。
【0029】
発明の詳細な開示
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、フッ素樹脂(A)及び上記フッ素樹脂(A)との親和性が低い充填剤(X)を含有するものである。
【0031】
本明細書において、上記フッ素樹脂(A)とは、上記本発明の樹脂組成物製造方法で原料として用いられるフッ素樹脂に由来するものを意味する。上記フッ素樹脂(A)は、即ち、上記フッ素樹脂を原料として、工程(2)における充填剤との混合、並びに、工程(3)及び工程(4)における混練を少なくとも経て、本発明の樹脂組成物に存在するものである。
【0032】
本明細書において、上記「フッ素樹脂との親和性が低い充填剤(X)」とは、パーフルオロポリエーテル油の液面に散布したときに、上記液面から1cm沈降するのに要する時間(以下、「沈降時間」という。)が15秒〜150秒である充填剤を意味する。
【0033】
上記充填剤(X)は、沈降に15秒以上要するものであれば、塊状になり、目視による観測が可能になる。上記沈降時間は、上記充填剤(X)の最初の一粒目が1cm沈降するのに要する時間である。
【0034】
上記沈降時間の測定方法は、以下の通りである。
【0035】
50mlガラスビーカー(胴外径46mmφ,全高61mm)に市販のパーフルオロポリエーテル油(S−65、ダイキン工業社製)を50ml正確に入れ、0.05g±0.005gの試料を液面に散布する。必要な散布時間を5秒以下にし、散布終了後、速やかにストップウォッチを用いて時間の測定を行い、試料が上記パーフルオロポリエーテル油の液面より1cm沈降するのに要する時間を沈降時間とする。
【0036】
上記充填剤(X)としては特に限定されず、例えば、グラファイト、炭素繊維、コークス、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス、タルク、マイカ、雲母、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、リン酸カルシウム等が挙げられる。上記充填剤(X)の形状としては特に限定されず、繊維状、針状、粉末状、粒状、ビーズ状等が挙げられる。
【0037】
上記充填剤(X)は、本発明の樹脂組成物中の分布状態においてd99が15μm以下のものである。15μmを超えると、樹脂組成物に含まれる充填剤(X)の粒子が比較的大きく不均一になるので、樹脂組成物から得られる成形体の厚さ等の形状が一定しなくなりやすい。好ましくは、10μm以下である。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、このように充填剤(X)として粗粒を殆ど含まないものである。従って、従来の樹脂組成物は、充填剤として粒子径が例えば50〜100μmである凝集体を含むものが得られていたのに対し、本発明の樹脂組成物は、充填剤(X)の微粒子が微細かつ均一に分布した成形体を得ることができるものである。
【0039】
上記充填剤(X)は、d50が5μm以下であることが好ましい。5μmを超えると、得られる成形体の厚さ等の形状が一定しなくなりやすい。より好ましくは、3μm以下である。
【0040】
本明細書において、上記d99及び上記d50は、それぞれ次の方法により決定されるものである。まず、後述する樹脂組成物製造方法により本発明の樹脂組成物としてペレットを得、ミクロトームを用いて10μm程度の厚さにスライスする。得られる薄片を各種の光学顕微鏡を用いて500〜3000倍程度で観察する。
【0041】
そして観察像を画像処理にかけ、上記充填剤(X)の粒子面積に関するヒストグラムを作成する。得られたヒストグラムについて、小さい粒子面積範囲から順に加算していき、分布関数を得、その分布関数が50%となるときの粒子径をd50とし、99%となるときの粒子径をd99とする。
【0042】
上記充填剤(X)は、上述したように、本発明の樹脂組成物製造方法で原料として用いられる充填剤に由来し、原料として用いられるフッ素樹脂との混合及び混練を少なくとも経て、本発明の樹脂組成物に存在するものである。従って、上記充填剤(X)は、上記混合や混練の条件等により、上記原料として用いられる充填剤と同じであってもよいし、上記混合や混練により加えられ得る主として物理的な変化を受けたものであってもよい。
【0043】
上記充填剤(X)は、本発明の樹脂組成物の0.05〜30重量%であることが好ましい。0.05重量%未満であると、得られる成形体において微細かつ均一に分散した粒子が得られにくくなり、30重量%を超えると、含有率の増加に伴い充填剤(X)の微粒子同士の合一が起こり、充填剤(X)の微粒子が微細かつ均一に分散した成形体を得ることが困難となる。より好ましい下限は、0.1重量%であり、より好ましい上限は、25重量%である。
【0044】
本発明の樹脂組成物に含有されるフッ素樹脂(A)は、各樹脂の融点以上の温度における溶融粘度が、溶融押出し、射出成形等の通常のプラスチックに適用される加工法を使用し得る程度に低く、例えば5kg荷重、200〜400℃の任意の温度で測定したメルトフローレートが0.5〜40g/10分程度のものである。上記フッ素樹脂(A)は、溶融加工可能であることが必要である。
【0045】
上記フッ素樹脂(A)は、上述したように、本発明の樹脂組成物製造方法で原料として用いられるフッ素樹脂に由来し、原料としての充填剤との混合及び混練を少なくとも経て、本発明の樹脂組成物に存在するものである。従って、上記フッ素樹脂(A)は、上記混合や混練の条件等により、上記原料として用いられるフッ素樹脂と同じであってもよいし、上記混合や混練により加えられ得る主として物理的な変化を受けたものであってもよい。
【0046】
上記原料として用いられるフッ素樹脂は、溶融加工可能性については上記混合や混練により通常維持されるので、溶融加工可能なものであれば特に限定されず、例えば、後述の発泡核剤(B)を含有する樹脂組成物において例示したフッ素樹脂等が挙げられる。
【0047】
上記原料として用いられるフッ素樹脂としては、単量体成分として、各フッ素樹脂の本質的性質を損なわない範囲の量で、その他の単量体等も用いることができる。上記その他の単量体としては特に限定されず、後述の発泡核剤(B)を含有する樹脂組成物において例示したもの等が挙げられる。
【0048】
上記原料として用いられるフッ素樹脂は、単量体成分を通常の重合方法、例えば乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、気相重合等の各方法を用いて重合することにより合成することができる。上記重合反応において、メタノール等の連鎖移動剤を使用することもある。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、上記フッ素樹脂(A)とともに、その他の熱可塑性樹脂を含有するものであってもよい。上記その他の熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、後述の発泡核剤(B)を含有する樹脂組成物において例示したもの等が挙げられる。
【0050】
本発明の樹脂組成物は、上述の充填剤(X)、フッ素樹脂(A)及び必要に応じて用いられるその他の熱可塑性樹脂とともに、添加剤等のその他の成分を含有するものであってもよい。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、上記充填剤(X)の微粒子が、上記フッ素樹脂(A)等から構成されるマトリックス中に均一又はほぼ均一に分布している構造を有することが好ましい。
【0052】
上記充填剤(X)の微粒子が、上記フッ素樹脂(A)等から構成されるマトリックス中に均一又はほぼ均一に分布している構造を有することは、例えば、上記樹脂組成物の任意の切断面を複数とる場合、単位面積当りに占める上記充填剤(X)の面積の値が、上記切断面間でばらつきが小さいことにより表すことができる。
【0053】
上記樹脂組成物は、即ち、任意の切断面における単位面積当りに上記充填剤(X)が占める面積の変動が15%以下、特に12%以下、更には10%以下であることが好ましい。上記切断面は少なくとも200個以上作製し、上記測定に供すべきである。尚、上記充填剤(X)が占める面積の値は、上記各単位面積において、上記充填剤(X)の各微粒子が占める面積の合計である。
【0054】
上記単位面積当りに上記充填剤(X)が占める面積の値は、例えば上記樹脂組成物からなる上記ペレット(II)を、任意の箇所でミクロトーム等を用いて10μm程度の厚さにスライスする等の方法により切断し、得られる切断面について500〜3000倍程度の光学観察を行い、得られる観察像を画像処理を行うことで容易に得られる。
【0055】
上記の任意の切断面における単位面積当りに充填剤(X)が占める面積の変動とは、複数の上記切断面について単位面積に上記充填剤(X)が占める面積の値を測定し、後述の式(I)によって求められるものである。
【0056】
上記充填剤(X)としては、発泡核剤(B)を好適に用いることができる。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、フッ素樹脂(A)及び発泡核剤(B)を含有するものである。
【0058】
本明細書において、上記フッ素樹脂(A)とは、上記本発明の樹脂組成物製造方法で原料として用いられるフッ素樹脂に由来するものを意味する。上記フッ素樹脂(A)は、即ち、上記フッ素樹脂を原料として、工程(2)における発泡核剤との混合、並びに、工程(3)及び工程(4)における混練を少なくとも経て、本発明の樹脂組成物に存在するものである。
【0059】
上記発泡核剤(B)は、上述の充填剤(X)に含まれる概念である。
【0060】
本明細書において、上記発泡核剤(B)とは、上記本発明の樹脂組成物製造方法で原料として用いられる発泡核剤に由来するものを意味する。上記発泡核剤(B)は、即ち、上記発泡核剤を原料として、工程(2)における上記フッ素樹脂との混合、並びに、工程(3)及び工程(4)における混練を少なくとも経て、本発明の樹脂組成物に存在するものである。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、上記発泡核剤(B)を分散させた上記フッ素樹脂(A)を溶融させ、得られる溶融樹脂の中に気体を成形時に存在させ、上記発泡核剤(B)を起点として気泡を形成させながら成形する発泡成形を行うことによって発泡体を得ることができるものである。
【0062】
上記発泡核剤(B)は、このように、溶融させた上記フッ素樹脂(A)の中に気体を成形時に存在させて発泡成形する際に、上記溶融させたフッ素樹脂(A)中に存在し、気泡形成の起点として機能し得るものである。
【0063】
上記発泡核剤(B)は、材質としては、発泡成形時に気泡形成の起点となり得るものであれば特に限定されないが、例えば、窒化ホウ素、タルク、セリサイト、珪藻土、窒化珪素、ファインシリカ、アルミナ、ジルコニア、石英粉、カオリン、ベントナイト、酸化チタン等が挙げられる。均一に分布した微細な気泡を形成させることができ、また、熱的安定性、化学的安定性、電気的性質、非着色性、無毒性等において優れる点から、これらのうち、窒化ホウ素が好ましい。
【0064】
上記発泡核剤(B)は、樹脂組成物中の分布状態においてd99が15μm以下のものである。15μmを超えると、得られる発泡体における気泡が比較的大きく不均一になるので、得られる発泡体の厚さ等の形状が一定しなかったり、キャパシタンスの低下や不均一化を招いて電気的特性が低下したり、断熱性等の発泡体としての特性が悪化する。好ましくは、10μm以下である。
【0065】
本発明の樹脂組成物は、このように発泡核剤(B)として粗粒を殆ど含まないものである。従って、従来の発泡体形成用の樹脂組成物は、発泡核剤として粒子径が例えば50〜100μmである凝集体を含み、その結果、比較的大きい気泡を有し、気泡分布の均一性に欠ける発泡体が得られていたのに対し、本発明の樹脂組成物は、微細な気泡が均一に分布した発泡体を得ることができるものである。
【0066】
上記発泡核剤(B)は、d50が5μm以下であることが好ましい。5μmを超えると、得られる発泡体における気泡が比較的大きくなり、誘電率、キャパシタンス等の電気的特性や、断熱性等の発泡体としての特性が悪化することがある。より好ましくは、3μm以下である。
【0067】
本明細書において、上記d99及び上記d50は、それぞれ次の方法により決定されるものである。まず、後述する樹脂組成物製造方法により本発明の樹脂組成物としてペレットを得、ミクロトームを用いて10μm程度の厚さにスライスする。得られる薄片を各種の光学顕微鏡を用いて500〜3000倍程度で観察する。
【0068】
そして観察像を画像処理にかけ、上記発泡核剤(B)の粒子面積に関するヒストグラムを作成する。得られたヒストグラムについて、小さい粒子面積範囲から順に加算していき、分布関数を得、その分布関数が50%となるときの粒子径をd50とし、99%となるときの粒子径をd99とする。
【0069】
上記発泡核剤(B)は、上述したように、本発明の樹脂組成物製造方法で原料として用いられる発泡核剤に由来し、原料として用いられるフッ素樹脂との混合及び混練を少なくとも経て、本発明の樹脂組成物に存在するものである。従って、上記発泡核剤(B)は、上記混合や混練の条件等により、上記原料として用いられる発泡核剤と同じであってもよいし、上記混合や混練により加えられ得る主として物理的な変化を受けたものであってもよい。
【0070】
上記発泡核剤(B)は、本発明の樹脂組成物の0.1〜2重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、得られる発泡体において微細な気泡が得られにくくなり、2重量%を超えると、含有率の増加に見合って泡の合一が起こり微細な気泡を多く均一に得ることが困難となる。
【0071】
本発明の樹脂組成物に含有されるフッ素樹脂(A)は、各樹脂の融点以上の温度における溶融粘度が、溶融押出し、射出成形等の通常のプラスチックに適用される加工法を使用し得る程度に低く、例えば5kg荷重、200〜400℃の任意の温度で測定したメルトフローレートが0.5〜40g/10分程度のものである。上記フッ素樹脂(A)は、現在通常用いられている発泡成形方法に適用することができるものが好ましく、現在の発泡成形方法は、通常、樹脂中で気泡を生じさせ発泡体を形成するものであるので、溶融加工可能であることが必要である。
【0072】
上記フッ素樹脂(A)は、上述したように、本発明の樹脂組成物製造方法で原料として用いられるフッ素樹脂に由来し、原料としての発泡核剤との混合及び混練を少なくとも経て、本発明の樹脂組成物に存在するものである。従って、上記フッ素樹脂(A)は、上記混合や混練の条件等により、上記原料として用いられるフッ素樹脂と同じであってもよいし、上記混合や混練により加えられ得る主として物理的な変化を受けたものであってもよい。
【0073】
上記原料として用いられるフッ素樹脂は、溶融加工可能性については上記混合や混練により通常維持されるので、溶融加工可能なものであれば特に限定されず、例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕、テトラフルオロエチレン/フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体〔ETFE〕、クロロトリフルオロエチレン/エチレン共重合体〔ECTFE〕、ポリビニリデンフルオライド〔PVdF〕、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、テトラフルオロエチレン/ビニリデンフルオライド共重合体〔VT〕、ポリビニルフルオライド〔PVF〕、テトラフルオロエチレン/ビニリデンフルオライド/クロロトリフルオロエチレン共重合体〔VTC〕、テトラフルオロエチレン/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が挙げられる。
【0074】
上記テトラフルオロエチレン/フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体のコモノマーであるフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕としては特に限定されないが、例えば、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕等が挙げられる。特にPPVEを用いたものは、PFAという名称で知られている。これらは1種又は2種以上を用いることができ、PMVEを用いた場合は、クラック性が悪くなるので、PPVEを併用することが好ましい。
【0075】
優れた電気特性を有することから、パーフルオロ樹脂が好ましい。中でもPFA、FEPが好ましい。上記原料として用いられるフッ素樹脂は、共重合体である場合、各コモノマーの含有率としては特に限定されない。
【0076】
上記原料として用いられるフッ素樹脂としては、単量体成分として、各フッ素樹脂の本質的性質を損なわない範囲の量で、その他の単量体等も用いることができる。上記その他の単量体としては特に限定されず、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、パーフルオロアルキルエチレン、パーフルオロ(アルキルアリルエーテル)等から適宜選択することができる。上記その他の単量体を構成するパーフルオロアルキル基としては、炭素数1〜10であるものが好ましい。
【0077】
上記原料として用いられるフッ素樹脂は、単量体成分を通常の重合方法、例えば乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、気相重合等の各方法を用いて重合することにより合成することができる。上記重合反応において、メタノール等の連鎖移動剤を使用することもある。
【0078】
本発明の樹脂組成物は、上記フッ素樹脂(A)とともに、その他の熱可塑性樹脂を含有するものであってもよい。上記その他の熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂等の汎用樹脂;ナイロン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等のエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
【0079】
本発明の樹脂組成物は、上述の発泡核剤(B)、フッ素樹脂(A)及び必要に応じて用いられるその他の熱可塑性樹脂とともに、添加剤等のその他の成分を含有するものであってもよい。
【0080】
上記その他の成分としては特に限定されず、例えば、ガラス繊維、ガラス粉末、アスベスト繊維等の充填剤や、補強剤、安定剤、潤滑剤、顔料、その他の添加剤等が挙げられる。上記その他の成分としては、また、ナトリウム、カリウム及びカルシウムの四ホウ酸塩;炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、硫酸カリウム等のその他の無機塩等が挙げられる。
【0081】
上記その他の成分としては、スルホン酸及びホスホン酸並びにそれらの塩であってもよく、これらは、場合によりシクロアルキル基及び/又はエーテル酸素を含有してもよい部分的又は全体的にフッ素化された脂肪族スルホン及びホスホン酸の遊離酸及び塩、並びに、芳香族環が場合によりアルキル、フッ素−含有アルキル及び/又はヒドロキシル基で置換されていてもよい芳香族のスルホン酸及びホスホン酸の遊離酸及び塩を含むものである。
【0082】
本発明の樹脂組成物は、上記発泡核剤(B)の微粒子が、上記フッ素樹脂(A)等から構成されるマトリックス中に均一又はほぼ均一に分布している構造を有することが好ましい。上記発泡核剤(B)の微粒子がこのように分布していると、上記樹脂組成物から得られる発泡体として気泡が均一に分布しているものが得られやすい。
【0083】
上記発泡核剤(B)の微粒子が、上記フッ素樹脂(A)等から構成されるマトリックス中に均一又はほぼ均一に分布している構造を有することは、例えば、上記樹脂組成物の任意の切断面を複数とる場合、単位面積当りに占める上記発泡核剤(B)の面積の値が、上記切断面間でばらつきが小さいことにより表すことができる。
【0084】
上記樹脂組成物は、即ち、任意の切断面における単位面積当りに上記発泡核剤(B)が占める面積の変動が15%以下、特に12%以下、更には10%以下であることが好ましい。上記切断面は少なくとも200個以上作製し、上記測定に供すべきである。尚、上記発泡核剤(B)が占める面積の値は、上記各単位面積において、上記発泡核剤(B)の各微粒子が占める面積の合計である。
【0085】
上記単位面積当りに上記発泡核剤(B)が占める面積の値は、例えば上記樹脂組成物からなる上記ペレット(II)を、任意の箇所でミクロトーム等を用いて10μm程度の厚さにスライスする等の方法により切断し、得られる切断面について500〜3000倍程度の光学観察を行い、得られる観察像を画像処理を行うことで容易に得られる。
【0086】
上記の任意の切断面における単位面積当りに発泡核剤(B)が占める面積の変動とは、複数の上記切断面について単位面積に上記発泡核剤(B)が占める面積の値を測定し、下式(I)によって求められるものである。ここで、上記方法により得られた測定値をx、x、…、xとし、μをこれら測定値の平均値とする。
【0087】
【数1】

【0088】
本発明の樹脂組成物製造方法は、上述の本発明の樹脂組成物を製造するものであり、充填剤を粉砕及び/又は分級する工程(1)、上記充填剤とフッ素樹脂とから混合物を得る工程(2)、上記混合物を剪断力Sを加えて混練し、ペレット(I)を得る工程(3)、並びに、上記ペレット(I)及び希釈用樹脂を剪断力Sを加えて混練し、ペレット(II)を得る工程(4)を含むものであり、上記剪断力Sは、上記剪断力Sよりも低いものでないことを特徴とするものである。
【0089】
本発明の樹脂組成物製造方法における上記充填剤は、本発明の樹脂組成物について上述したように、フッ素樹脂(A)との親和性が低い充填剤(X)が由来するものである。
【0090】
上記粉砕は、上記充填剤の平均粒子径が5μm以下となるように行うことが好ましい。3μm以下まで粉砕を行うことで、本発明の樹脂組成物を比較的容易に得られる場合がある。一方、粉砕によって上記充填剤の平均粒子径を0.5μm未満としても、工業的困難性に対して著しい効果は確認されない。粉砕後の上記充填剤の平均粒子径の好ましい下限は、0.5μmであり、より好ましい下限は、1μmであり、より好ましい上限は、3μmである。
【0091】
上記粉砕は、得られる上記充填剤が上記範囲内の平均粒子径を有することとなる方法により行うことが好ましい。具体的には、粉砕機の種類や粉砕の条件を適宜選択して行う。上記粉砕機としては、例えば、ジェットミル、ハンマーミル、ボールミル、ピンミル等を用いることができる。また、分級により、上記範囲内の平均粒子径を有する上記充填剤を得ることもできる。
【0092】
上記工程(2)は、上記工程(1)により得られた充填剤と、フッ素樹脂とから混合物を得るものである。上記工程(2)は、後続の工程(3)におけるペレット化に先立ち、上記充填剤と上記フッ素樹脂との予備混合を行うものである。
【0093】
上記フッ素樹脂は、本発明の樹脂組成物における上記フッ素樹脂(A)が由来するものとして、本発明の樹脂組成物製造方法で原料として用いられるフッ素樹脂として、既に説明したものである。
【0094】
上記混合物を得るための混合の方法としては、例えば、従来公知の方法等を用いることができるが、上記混合に付す上記充填剤は、上記工程(1)により平均粒子径が比較的小さく、従って表面積の比較的大きい微粒子として得られるものであり、一般的に凝集しやすいので、上記充填剤の凝集を起しにくい混合方法が好ましい。
【0095】
上記混合の方法として、例えば特開平10−45931号公報に開示されているように、ポリエチレン製袋等の容器に上記充填剤と上記フッ素樹脂とを入れて震盪する等の方法により混合を試みる場合、上記充填剤は凝集しやすいので、得られる混合体において、上記充填剤は例えばd99が15μmを超えるような比較的粒子径の大きい粗粒を含むものとなり、均一分布性に欠け、充分に混合されたものとならない。このような混合体は、充填剤(X)の微粒子を微細かつ均一に分散させた樹脂組成物を得ることが困難となるので、好ましくない。
【0096】
本発明において上記混合の方法としては、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、Vブレンダー、ボールミル等を用いる方法が挙げられる。上記充填剤の凝集を抑制して粒子径が比較的大きい粗粒を含むこととなるのを防止し、均一分布性を高める点から、例えば、ヘンシェルミキサーを用いる方法等の機械的攪拌を用いる方法が好ましい。
【0097】
上記工程(3)は、上記工程(2)により得られた混合物を剪断力Sを加えて混練し、ペレット(I)を得るものである。
【0098】
上記ペレット(I)は、マスターバッチペレットと称されることがある。
【0099】
上記剪断力Sを加えて混練する方法としては特に限定されないが、通常、単軸スクリュー押出機又は2軸スクリュー押出機等の従来公知の溶融混練機を用いる方法によることができる。
【0100】
上記剪断力Sは、適切な溶融混練機を用い、混練温度、回転数等の操作条件を適宜選択すること等により、調整することができる。上記剪断力Sは、例えば二軸押出機を用いる場合、押出温度、押出量、スクリュー回転数等を調節したり、スクリューセグメントの構成を適宜選択したりすることによって調整することができる。
【0101】
上記工程(4)は、上記工程(3)により得られたペレット(I)及び希釈用樹脂を、剪断力Sを加えて混練し、ペレット(II)を得るものである。
【0102】
上記ペレット(II)は、プレミックスペレットと称されることがある。
【0103】
本明細書において、上記希釈用樹脂とは、上記充填剤(X)を含有しない溶融加工可能な樹脂を意味する。上記希釈用樹脂は、上記フッ素樹脂又はその他の熱可塑性樹脂であることが好ましく、上記工程(2)で用いたフッ素樹脂と同一又は異なるフッ素樹脂であってよい。上記その他の熱可塑性樹脂としては、例えば、本発明の樹脂組成物に含有し得るものとして既に説明したその他の熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられる。上記希釈用樹脂は、上記工程(2)で用いたフッ素樹脂と同一のものであることがより好ましい。
【0104】
上記ペレット(II)中の上記フッ素樹脂及び上記希釈用樹脂の合計含有量は、上記ペレット(II)中の上記充填剤の含有量に対し、一度に配合するのではなく、上記工程(3)と上記工程(4)の少なくとも2段階に分けて配合する。上記充填剤の微粒子は、このように段階的な配合により、上記フッ素樹脂及び上記希釈用樹脂の中に充分に混合させ、均一に分布させることができる。
【0105】
上記希釈用樹脂の添加量は、得られる樹脂組成物において上記充填剤が所望濃度を有するように調整されるが、上記ペレット(I):上記希釈用樹脂の重量比が1:2〜1:7となるように添加することが好ましい。上記希釈用樹脂の重量比が1:2未満であると、得られる樹脂組成物において上記充填剤の分布の均一性が悪化する場合があり、1:7を超えると、上記樹脂組成物中の上記充填剤の含有率が低下し、上記充填剤の分散性に劣り、引っ張り強さ、剛性、硬度等の機械的強度が低下する場合がある。
【0106】
上記充填剤は、好ましくは上記樹脂組成物の0.1〜30重量%となるように、上記希釈用樹脂の添加量を考慮して、上記工程(2)において適切な量を配合する。上記充填剤は、当然のことながら、上記ペレット(I)における濃度の方が上記ペレット(II)における濃度よりも高いものとなる。
【0107】
上記剪断力Sは、上記剪断力Sよりも低いものでないようにする。上記剪断力Sは、即ち、上記剪断力Sと同等又は上記剪断力Sよりも高いものに設定するが、上記充填剤の微粒子の凝集を防止し、本発明の樹脂組成物において上記充填剤(X)が容易に上述の特定範囲内のd99の値を有する点から、上記剪断力Sよりも高いことが好ましい。
【0108】
本発明の樹脂組成物製造方法は、上記従来の方法において加えられていた剪断力のうち、最初に加える剪断力を低くすることにより、上記充填剤の微粒子を上記樹脂組成物中に均一に分散させることを可能にするものである。
【0109】
上記剪断力Sは、上記剪断力Sと同様の方法により、上記剪断力Sよりも低いものとならないように調整することができる。
【0110】
上記剪断力Sを二軸押出機を用いて比較的高いものにする方法としては、例えば、押出量の増加による方法、スクリュー回転数の増加による方法等が挙げられる。上記剪断力Sは、二軸押出機の押出温度を低下させることによっても高くすることができ、これは、上記フッ素樹脂の溶融時の粘度にもよるが、押出温度を低下させると上記フッ素樹脂の溶融粘度が高くなることによる。
【0111】
上記剪断力Sは、二軸押出機のスクリューセグメントの構成を変えることによっても制御することができる。例えばニーディングディスクを増やすこと等によってこれを高めることができる。更に種々のニーディングディスクを組み合わせることにより、上記剪断力Sを更に高めることができる。
【0112】
本発明の樹脂組成物製造方法において、上記ペレット(II)は、更に、所望により、例えば従来公知の方法による粉砕等により粉末にしてもよく、分級等により粒子サイズを整えてもよい。このように、本発明の樹脂組成物製造方法により得られる樹脂組成物は、ペレット、粉末等の形態の如何を問わないが、後述の発泡体形成のためには、通常、上記ペレット(II)のままでよい。
【0113】
本発明の樹脂組成物に含有し得るとして既に説明した添加剤等の上記その他の成分は、その性質等に応じ、本発明の樹脂組成物製造方法において、上記工程(2)、上記工程(3)及び/若しくは上記工程(4)、又は、上記ペレット(II)を粉末にする工程等のその他の工程において添加することができる。
【0114】
上述の本発明の樹脂組成物製造方法は、上記充填剤が発泡核剤である場合、特に好ましく用いることができる。
【0115】
本発明の樹脂組成物製造方法は、上述の本発明の樹脂組成物を製造するものであり、発泡核剤を粉砕及び/又は分級する工程(1)、上記発泡核剤とフッ素樹脂とから混合物を得る工程(2)、上記混合物を剪断力Sを加えて混練し、ペレット(I)を得る工程(3)、並びに、上記ペレット(I)及び希釈用樹脂を剪断力Sを加えて混練し、ペレット(II)を得る工程(4)を含むものであり、上記剪断力Sは、上記剪断力Sよりも低いものでないことを特徴とするものである。
【0116】
上記粉砕は、上記発泡核剤の平均粒子径が5μm以下となるように行うことが好ましい。3μm以下まで粉砕を行うことで、本発明の樹脂組成物を比較的容易に得られる場合がある。一方、粉砕によって上記発泡核剤の平均粒子径を1μm未満としても、工業的困難性に対して著しい効果は確認されない。粉砕後の上記発泡核剤の平均粒子径のより好ましい下限は、1μmであり、より好ましい上限は、3μmである。
【0117】
上記粉砕は、得られる上記発泡核剤が上記範囲内の平均粒子径を有することとなる方法により行うことが好ましい。具体的には、粉砕機の種類や粉砕の条件を適宜選択して行う。上記粉砕機としては、例えば、ジェットミル、ハンマーミル、ボールミル、ピンミル等を用いることができる。また、分級により、上記範囲内の平均粒子径を有する上記発泡核剤を得ることもできる。
【0118】
上記工程(2)は、上記工程(1)により得られた発泡核剤と、フッ素樹脂とから混合物を得るものである。上記工程(2)は、後続の工程(3)におけるペレット化に先立ち、上記発泡核剤と上記フッ素樹脂との予備混合を行うものである。
【0119】
上記フッ素樹脂は、本発明の樹脂組成物における上記フッ素樹脂(A)が由来するものとして、本発明の樹脂組成物製造方法で原料として用いられるフッ素樹脂として、既に説明したものである。
【0120】
上記混合物を得るための混合の方法としては、例えば、従来公知の方法等を用いることができるが、上記混合に付す上記発泡核剤は、上記工程(1)により平均粒子径が比較的小さく、従って表面積の比較的大きい微粒子として得られるものであり、一般的に凝集しやすいので、上記発泡核剤の凝集を起しにくい混合方法が好ましい。
【0121】
上記混合の方法として、例えば特開平10−45931号公報に開示されているように、ポリエチレン製袋等の容器に上記発泡核剤と上記フッ素樹脂とを入れて震盪する等の方法により混合を試みる場合、上記発泡核剤は凝集しやすいので、得られる混合体において、上記発泡核剤は例えばd99が15μmを超えるような比較的粒子径の大きい粗粒を含むものとなり、均一分布性に欠け、充分に混合されたものとならない。このような混合体は、微細な気泡が均一に分布した発泡成形体を得ることが困難となるので、好ましくない。
【0122】
本発明において上記混合の方法としては、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、Vブレンダー、ボールミル等を用いる方法が挙げられる。上記発泡核剤の凝集を抑制して粒子径が比較的大きい粗粒を含むこととなるのを防止し、均一分布性を高める点から、例えば、ヘンシェルミキサーを用いる方法等の機械的攪拌を用いる方法が好ましい。
【0123】
上記工程(3)は、上記工程(2)により得られた混合物を剪断力Sを加えて混練し、ペレット(I)を得るものである。
【0124】
上記ペレット(I)は、マスターパッチペレットと称されることがある。
【0125】
上記剪断力Sを加えて混練する方法としては特に限定されないが、通常、単軸スクリュー押出機又は2軸スクリュー押出機等の従来公知の溶融混練機を用いる方法によることができる。
【0126】
上記剪断力Sは、適切な溶融混練機を用い、混練温度、回転数等の操作条件を適宜選択すること等により、調整することができる。上記剪断力Sは、例えば二軸押出機を用いる場合、押出温度、押出量、スクリュー回転数等を調節したり、スクリューセグメントの構成を適宜選択したりすることによって調整することができる。
【0127】
上記工程(4)は、上記工程(3)により得られたペレット(I)及び希釈用樹脂を、剪断力Sを加えて混練し、ペレット(II)を得るものである。
【0128】
上記ペレット(II)は、プレミックスペレットと称されることがある。
【0129】
本明細書において、上記希釈用樹脂とは、上記発泡核剤(B)を含有しない溶融加工可能な樹脂を意味する。上記希釈用樹脂は、上記フッ素樹脂又はその他の熱可塑性樹脂であることが好ましく、上記工程(2)で用いたフッ素樹脂と同一又は異なるフッ素樹脂であってよい。上記その他の熱可塑性樹脂としては、例えば、本発明の樹脂組成物に含有し得るものとして既に説明したその他の熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられる。上記希釈用樹脂は、上記工程(2)で用いたフッ素樹脂と同一のものであることがより好ましい。
【0130】
上記ペレット(II)中の上記フッ素樹脂及び上記希釈用樹脂の合計含有量は、上記ペレット(II)中の上記発泡核剤の含有量に対し、一度に配合するのではなく、上記工程(3)と上記工程(4)の少なくとも2段階に分けて配合する。上記発泡核剤の微粒子は、このように段階的な配合により、上記フッ素樹脂及び上記希釈用樹脂の中に充分に混合させ、均一に分布させることができる。
【0131】
上記希釈用樹脂の添加量は、得られる樹脂組成物において上記発泡核剤が所望濃度を有するように調整されるが、上記ペレット(I):上記希釈用樹脂の重量比が1:2〜1:7となるように添加することが好ましい。上記希釈用樹脂の重量比が1:2未満であると、得られる樹脂組成物において上記発泡核剤の分布の均一性が悪化する場合があり、1:7を超えると、上記樹脂組成物中の上記発泡核剤の含有率が低下し、上記樹脂組成物から得られる発泡体における気泡の微細化が不充分となり、低誘電率化等の発泡体としての特性に劣る場合があり、また、上記発泡核剤の分散性に劣る場合がある。
【0132】
上記発泡核剤は、好ましくは上記樹脂組成物の0.1〜2重量%となるように、上記希釈用樹脂の添加量を考慮して、上記工程(2)において適切な量を配合する。上記発泡核剤は、当然のことながら、上記ペレット(I)における濃度の方が上記ペレット(II)における濃度よりも高いものとなる。
【0133】
上記剪断力Sは、上記剪断力Sよりも低いものでないようにする。上記剪断力Sは、即ち、上記剪断力Sと同等又は上記剪断力Sよりも高いものに設定するが、上記発泡核剤の微粒子の凝集を防止し、本発明の樹脂組成物において上記発泡核剤(B)が容易に上述の特定範囲内のd99の値を有する点から、上記剪断力Sよりも高いことが好ましい。
【0134】
従来、樹脂と発泡核剤のような無機物、フィラー等の一般的な充填剤との混合物に剪断力Sを加えてペレット(マスターバッチペレット)を得た後、このペレットに、上記一般的な充填剤を含まない樹脂を加え、剪断力Sを加えてペレット化する方法は用いられている。この際、一般的な充填剤と樹脂との混合を充分に行わせることを目的として、通常は上記剪断力Sは上記剪断力Sよりも高く設定される。しかしながら、上記従来の方法を適用すると、このような剪断力Sを加えることにより、発泡核剤等の充填剤粒子がかえって凝集してしまうこととなり、微細な発泡核剤等の充填剤粒子を樹脂中に均一に分布させることの妨げとなっていた。
【0135】
本発明の樹脂組成物製造方法は、上記従来の方法において加えられていた剪断力のうち、最初に加える剪断力を低くすることにより、上記発泡核剤の微粒子を上記樹脂組成物中に均一に分散させることを可能にするものである。
【0136】
上記剪断力Sは、上記剪断力Sと同様の方法により、上記剪断力Sよりも低いものとならないように調整することができる。
【0137】
上記剪断力Sを二軸押出機を用いて比較的高いものにする方法としては、例えば、押出量の増加による方法、スクリュー回転数の増加による方法等が挙げられる。上記剪断力Sは、二軸押出機の押出温度を低下させることによっても高くすることができ、これは、上記フッ素樹脂の溶融時の粘度にもよるが、押出温度を低下させると上記フッ素樹脂の溶融粘度が高くなることによる。
【0138】
上記剪断力Sは、二軸押出機のスクリューセグメントの構成を変えることによっても制御することができる。例えばニーディングディスクを増やすこと等によってこれを高めることができる。更に種々のニーディングディスクを組み合わせることにより、上記剪断力Sを更に高めることができる。
【0139】
本発明の樹脂組成物製造方法において、上記ペレット(II)は、更に、所望により、例えば従来公知の方法による粉砕等により粉末にしてもよく、分級等により粒子サイズを整えてもよい。このように、本発明の樹脂組成物製造方法により得られる樹脂組成物は、ペレット、粉末等の形態の如何を問わないが、後述の発泡体形成のためには、通常、上記ペレット(II)のままでよい。
【0140】
本発明の樹脂組成物に含有し得るとして既に説明した添加剤等の上記その他の成分は、その性質等に応じ、本発明の樹脂組成物製造方法において、上記工程(2)、上記工程(3)及び/若しくは上記工程(4)、又は、上記ペレット(II)を粉末にする工程等のその他の工程において添加することができる。
【0141】
本発明の樹脂組成物は、発泡体形成に用いられる。
【0142】
上記発泡体形成の方法としては特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができ、例えば、溶融した上記フッ素樹脂(A)(溶融樹脂)に可溶性であるガスを使用し、発泡操作用に設計されたスクリュー押出機に本発明の樹脂組成物を投入し、連続的なガス射出法を用いる方法等が挙げられる。
【0143】
上記ガスとしては、例えば、クロロジフルオロメタン、窒素、二酸化炭素等のガス又は上記ガスの混合物を用いることができ、加圧気体として押出機内の溶融樹脂中に導入してもよいし、化学的発泡剤を溶融樹脂中に混和させることにより発生させてもよい。上記ガスは、上記押出機内の溶融樹脂中に溶解する。
【0144】
上記溶融樹脂中に溶解したガスは、溶融物の圧力が押出ダイを出る時に突如低下することにより、溶融液から出て来るが、このとき溶融液中に散在している上記発泡核剤(B)を起点として微細な気泡が形成される。押出機から押し出された押出物は、次いで、水中に導入される等の方法により冷却されて固化し、発泡体は気泡の成長を停止する。
【0145】
得られる発泡体は、本発明の樹脂組成物の溶融固化体及び気泡を含有するものであって、上記気泡が、平均直径が10〜40μmである微細な形状を有し、上記溶融固化体中に均一に分布しているものである。このような発泡体の構造は、上述のように、本発明の樹脂組成物中における発泡核剤(B)が、粒子径の比較的大きい粗粒を含有せず、均一に分布していることに起因して得られるものである。
【0146】
上記発泡体は、上記構造を有するので、誘電率が低く、安定したキャパシタンスを呈し、軽量であり、後述の成形体として線径、厚さ等の大きさが安定した形状を得ることができる。上記発泡体中の気泡の総容積は、例えば上記押出機中のガスの挿入量の調節等により、あるいは、溶解するガスの種類を選択することにより、用途に応じて適宜調整することができる。
【0147】
上記発泡体は、上記押出機からの押出時に用途に応じて成形された成形体として得られる。上記成形の方法としては加熱溶融成形であれば特に限定されず、例えば、押出し発泡成形、射出発泡成形、金型発泡成形等が挙げられる。
【0148】
上記成形体の形状としては特に限定されず、例えば、発泡電線等の被覆材;線材等のフィラメント状;シート状;フィルム状;ロッド状;パイプ状等の種々の形状にすることができる。上記成形体は、例えば、電気的絶縁材;断熱材;遮音材;浮遊材等の軽量構造材;クッション等の緩衝材等として用いることができる。
【0149】
上記成形体は、発泡電線の被覆材として特に好適に用いることができる。上記発泡電線は、導電線とこれを覆う被覆材とからなるものであって、コンピューター及びその周辺機器を接続するケーブル類、例えばLAN用ケーブルを含むものである。上記発泡電線は、通常、上述の押出機からの押出時に押出物が導電線を覆うように成形することにより得られる。
【0150】
本発明の樹脂組成物は、含有する発泡核剤(B)として、d99が15μm以下であることから比較的粒子径の大きい粗粒を含まないので、上記樹脂組成物から形成された発泡体において、微細な気泡が均一に分布した構造を得ることができる。このような構造の発泡体は、誘電率が低く、線径、厚さ等が一定した形状を有する成形体として得ることができる。従って、本発明の樹脂組成物は、発泡電線の被覆材等の発泡体の形成に好適に用いることができる。
【0151】
上記樹脂組成物から得られることを特徴とする発泡体も、また、本発明の一つである。
【0152】
上記樹脂組成物を含有することを特徴とする発泡電線も、また、本発明の一つである。
【0153】
本発明の樹脂組成物製造方法は、上述のように、粉砕により上記発泡核剤を適切な粒子径を有するものとし、第1のペレット化において低剪断力をかけ、第2のペレット化において高剪断力をかけることから、発泡核剤の微粒子を凝集させることなく上記樹脂組成物中に均一に混合することができる。この結果、得られる樹脂組成物は、微細な気泡が均一に分布している発泡体を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0154】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0155】
実施例1〜4
(プレミックスペレットの作成)
窒化ホウ素(BN、グレードSHP−325、平均粒子径10.3μm、カーボランダム社製)をジェットミルを用いて粉砕し、平均粒子径が2μmの粉砕BNを得た。この粉砕BNを、FEP粉体(融点255℃、メルトフローレート(MFR):22g/10分)及び粉砕BNの合計量の5重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサー(FM75E、三井鉱山社製)を用いて1640rpmで10分間混合した。得られた混合粉体を二軸押出機を用いてマスターバッチペレットを作成した。次に、このマスターバッチペレットに対し、プレミックスペレット中のBN濃度が0.75重量%となるように、上記FEP粉体をペレット化したもの(希釈用樹脂、融点255℃、MFR:23g/10分)を加えてドライブレンドし、二軸押出時の剪断力を表2に示すようにマスターバッチペレット作成時と同等以上のものにして、プレミックスペレットを作成した。用いた二軸押出機の温度条件を表1に示し、押出し条件を表2に示す。
【0156】
【表1】

【0157】
BNの粉砕の前と後の平均粒子径は、それぞれHELOS&RODOSレーザー回折式粒度分布測定装置(日本電子社製)を使用した。乾式分散ユニットを装着し、焦点距離100mm、分散圧0.1Mpaの条件で測定したときの体積分布の分布関数が50%となる値を平均粒子径とした。
【0158】
樹脂の融点は、RDC220(セイコー電子社製)を使用した。昇温速度10℃/分で測定したときのピークトップの値を樹脂の融点とした。
【0159】
樹脂のMFRは、MELT INDEXER H TYPE C−5059D2−1(東洋精機社製)を用い、372℃、5kg荷重にて測定したときの値とした。
【0160】
(評価)
上記により得られたプレミックスペレット中の発泡核剤(BN)について、下記評価を行った。結果を表2に示す。
【0161】
1.プレミックスペレット中のBNの粒子径(d50及びd99)の測定
プレミックスペレットをスタンダードロータリーミクロトームHM330(MICROM社製)を用い、厚さ10μmの薄片にスライスし、この薄片から高精細デジタルマイクロスコープVH−6300(KEYENCE社製)を用いて3000倍の画像を得た。
【0162】
この画像を画像処理にかけ、発泡核剤の粒子径とその粒子径における面積を得、横軸に粒子径、縦軸にその粒子径をもつ核剤の面積割合をとったヒストグラムを作成した。この時、ヒストグラムの横軸である粒子径は、この倍率における測定の限界のため、0.4μm以上の発泡核剤を対象とした。0.4〜1μmは0.2μm毎に区切り、1〜10μmは1μm毎に切り、10〜100μmは10μm毎に区切った。このヒストグラムの分布関数が50%となる粒子径をd50とし、99%となる粒子径をd99とした。
【0163】
2.発泡核剤の変動の測定
200個のプレミックスペレットをスタンダードロータリーミクロトームHM330(MICROM社製)を用いて10μmの薄片にスライスし、この薄片についてデシタルマイクロスコープVH−6300(KEYENCE社製)を用いて撮影した3000倍の写真を、画像処理にかけ、単位面積当たりの核剤が占める面積を測定し、下式により算出した。
【0164】
【数2】

【0165】
比較例1
プレミックスペレット作成時の二軸押出機の剪断力をマスターバッチペレット作成時よりも弱い条件で行ったこと以外は、実施例1と同様の方法でプレミックスペレットを作成した。プレミックスプレットを得るための押出し条件及び得られたプレミックスペレットの評価結果を表2に示す。
【0166】
比較例2
ヘンシェルミキサーを用いることの代わりに、粉砕BNとFEP粉体とをポリエチレン製袋内で手による震盪を行って混合したこと以外は、実施例1と同様の方法でプレミックスペレットを作成した。プレミックスプレットを得るための押出し条件及び得られたプレミックスペレットの評価結果を表2に示す。
【0167】
比較例3
BN(グレードSHP−325、カーボランダム社製)を粉砕しないこと以外は、実施例1と同様の方法でプレミックスプレットを作成した。プレミックスプレットを得るための押出し条件及び得られたプレミックスペレットの評価結果を表2に示す。
【0168】
実施例5
BNとして昭和電工社製グレードUHP−1(平均粒子径10.5μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でプレミックスペレットを作成した。プレミックスプレットを得るための押出し条件及び得られたプレミックスペレットの評価結果を表2に示す。
【0169】
実施例6
BNを粉砕して平均粒子径を4μmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でプレミックスペレットを作成した。プレミックスプレットを得るための押出し条件及び得られたプレミックスペレットの評価結果を表2に示す。
【0170】
【表2】

【0171】
表2から、プレミックスペレット中のBNは、実施例1〜6では何れもd99が10μm未満の値であり、切断面の単位面積当りに占めるBNの面積の変動が10%と低いのに対し、高剪断力の後に低剪断力をかけた比較例1では、d99が15μm以上であり、分散性にも劣ることがわかった。比較例1では、プレミックスペレット作成中にBNの再凝集が起こったものと考えられる。表2から、また、粉砕BNとFEP粉体とを手で震盪して混合した比較例2では、プレミックスペレット中のBNは、d99が20μm以上であり、分散度もかなり劣ることがわかった。比較例2では、粉砕BNとFEP粉体との予備混合が不充分なために、ペレット化時にBNの再凝集が起こったものと考えられる
【0172】
実施例7
実施例1〜6及び比較例1〜3で作成したプレミックスペレットの発泡電線成形を行った。装置及び成形条件を表3に示す。
【0173】
【表3】

【0174】
得られた各発泡電線について、下記測定を行った。結果を表4に示す。
【0175】
1.平均泡径
電線断面のSEM画像をとり、画像処理により各泡の直径を算出し、算術平均することにより、平均泡径を求めた。
【0176】
2.電線外径
LASER MICRO DIAMETER LDM−303H−XY(タキカワエンジニアリング社製)を用いて電線外径を測定した。表4中の±は、測定の最大値と最小値を表す。
【0177】
3.キャパシタンス
CAPAC 300 19C(Zumbach社製)を用いてキャパシタンスを測定した。表4中の±は、測定の最大値と最小値を表す。
【0178】
【表4】

【0179】
表4から、実施例1〜6で得たBNのd99が15μm以下であり均一に分散したプレミックスペレットから得られた発泡電線は、平均泡径が小さく、成形安定性が良好であるのに対し、比較例1〜3による発泡電線は、平均泡径が大きく、成形安定性に劣ることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明の樹脂組成物は、上述の構成からなることから、フッ素樹脂との親和性が低い充填剤(X)を上記フッ素樹脂中に均一に分散することができ、特に、上記発泡核剤(B)として粒子径の比較的大きい粗粒を含まないので、微細な気泡が均一に分布している発泡体を得ることができる。本発明の樹脂組成物製造方法は、上述の構成からなることから、上記発泡核剤等の上記充填剤の微粒子を凝集させることなく上記樹脂組成物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂(A)及び発泡核剤(B)を含有する樹脂組成物の製造方法であって、
発泡核剤(B)を粉砕及び/又は分級する工程(1)、前記発泡核剤(B)とフッ素樹脂とから混合物を得る工程(2)、前記混合物に剪断力Sを加えて混練し、ペレット(I)を得る工程(3)、並びに、前記ペレット(I)及び希釈用樹脂に剪断力Sを加えて混練し、目的の樹脂組成物のペレット(II)を得る工程(4)を含むものであり、
前記工程(2)の混合方法は、機械的攪拌を用いる方法であり、
前記剪断力Sは、前記剪断力Sよりも低いものでない
ことを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
発泡核剤(B)は、窒化ホウ素、タルク、セリサイト、珪藻土、窒化珪素、ファインシリカ、アルミナ、ジルコニア、石英粉、カオリン、ベントナイト、又は、酸化チタンである請求項1記載の樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−1733(P2012−1733A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177172(P2011−177172)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【分割の表示】特願2008−30669(P2008−30669)の分割
【原出願日】平成14年6月26日(2002.6.26)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】