説明

樹脂組成物及びそれを含む被膜形成材料

【課題】高温恒湿条件下においても絶縁信頼性に優れる樹脂組成物及びそれを含む被膜形成材料を提供する。
【解決手段】樹脂(A)と、無機微粒子(B)と、ヒンダードフェノール系化合物(C)とを含む、樹脂組成物。ヒンダードフェノール系化合物(C)の含有量が、樹脂成分の全固形分量に対して0.1重量%から5重量%であり、樹脂(A)が、ポリカーボネート骨格を含むポリウレタンか、あるいはポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、変性されたポリイミド樹脂、変性されたポリアミドイミド樹脂、及び変性されたポリアミド樹脂からなる群から選択される樹脂から成る組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷機、ディスペンサ、スピンコータなどの塗布方法に用いて好適な樹脂組成物及び該樹脂組成物を含む被膜形成材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の分野においては、小型化、薄型化、高速化への対応から、耐熱性、電気特性及び耐湿性に優れる樹脂としてエポキシ樹脂に代わり、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂が使用されている。これらの樹脂は、樹脂構造が剛直であり、そのため、基材表面の薄膜形成に用いた場合、薄膜硬化後の基材が大きく反り、形成された硬化膜は柔軟性に欠け、屈曲性に劣る間題がある。そこで、硬化薄膜形成による基材の低反り性、硬化薄膜の柔軟性を改善するために、樹脂を変性して可撓化及び低弾性率化したポリアミドイミド樹脂が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示)。これら樹脂に、耐熱性、耐湿性の向上のためにフィラーを添加している。
【0003】
近年、電子機器の小型化、薄型化、高速化が進み、FPC(Flexible Printed Circuit:屈曲性のある回路基板)、TAB(Tape Automated Bonding:半導体チップと回路基板をテープ状のフィルムを介して接合する実装技術)及びCOF(Chip On Film:フィルム状のプリント配線板の上にドライバーICを実装したもの)などの技術がある。これらの技術に見られるように、フレキシブル配線板の配線ピッチはより一層精細化し、それにともなって配線厚みも薄膜化してきている。
【0004】
従来、前記配線間の絶縁信頼性を維持するために、配線上には、通常、絶縁性の熱硬化性樹脂ペーストが塗布、硬化されて、絶縁保護膜が形成されている。しかし、前述の高精細化を実現するために40μmピッチ以下のファインピッチ配線とした場合、従来の熱硬化性樹脂ペーストを用いて絶縁保護膜を形成していても、この絶縁保護膜の高温耐湿性が十分でなく、高温高湿条件下で配線に電圧を印加すると、配線間の絶縁性が低下してしまい、長時間にわたって絶縁信頼性を維持できないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−106960号公報
【特許文献2】特開平08−012763号公報
【特許文献3】特開平07−196798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、高温恒湿条件下においても絶縁信頼性に優れる樹脂組成物及びそれを含む被膜形成材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明にかかる樹脂組成物は、樹脂(A)と、無機微粒子(B)と、ヒンダードフェノール系化合物(C)とを含むことを特徴とする。
【0008】
また、前記ヒンダードフェノール系化合物(C)は、下記一般式(1)で表される構造を含むものであることが好ましい。
【0009】
【化1】

【0010】
また、前記ヒンダードフェノール系化合物(C)の含有量としては、該樹脂組成物の全固形分量に対して0.1重量%から5重量%であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の樹脂組成物は、前記樹脂(A)が、ポリカーボネート骨格を含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明の樹脂組成物は、前記樹脂(A)が、下記一般式(2)で表されるポリウレタン構造を含むことが好ましい。
【0013】
【化2】

(式中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基であり、Xは、二価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数である。)
【0014】
また、前記樹脂(A)としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、変性されたポリイミド樹脂、変性されたポリアミドイミド樹脂、及び変性されたポリアミド樹脂からなる群から選択されることが好ましい。
【0015】
また、本発明の樹脂組成物は、さらに溶剤(D)を含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明の樹脂組成物は、さらにエポキシ樹脂(E)を含むことが好ましい。
【0017】
また、本発明の樹脂組成物は、フレキシブル配線板の被膜形成用樹脂組成物であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の被膜形成材料は、前記本発明の樹脂組成物を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の樹脂組成物及び被膜形成材料は、印刷性、作業性及び絶縁信頼性に優れ、また、高温耐湿性、表面濡れ性の良好な被膜を形成することができるという特性を有しており、電子部品用オーバーコート材、液状封止材、エナメル線用ワニス、電気絶縁用含浸ワニス、積層板用ワニス、摩擦材料用ワニス、プリント基板分野などにおける層間絶縁膜、表面保護膜、ソルダレジスト膜、接着層などや、半導体素子などの電子部品における各種被膜形成に好適に用いることができる。特にCOF用途のフレキシブル配線板の保護膜に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の樹脂組成物は、樹脂(A)と、無機微粒子(B)と、ヒンダードフェノール系化合物(C)とを含むことを特徴とする。さらに、溶剤(D)、エポキシ樹脂(E)を含むことが好ましい。以下に本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
(樹脂(A))
樹脂組成物から形成する硬化被膜の耐熱性、電気特性、耐湿性、耐溶剤性及び耐薬品性を向上させるためには、樹脂の主鎖中に耐熱性を向上できる成分を導入することが挙げられ、樹脂(A)としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂もしくはポリアミド樹脂又はこれらの骨格を有する樹脂が好ましい。中でも、可撓化及び低弾性率化の観点から、ポリカーボネート骨格及び/又はウレタン結合を有する樹脂が好ましい。また、高耐熱性化の観点から、イミド結合を含む樹脂がより好ましい。
【0021】
本発明において、(A)成分として使用することができる「ポリカーボネート骨格を含む樹脂」は、通常、1,6−ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオール等を、末端にカルボキシル基を有する化合物、酸無水物を有する化合物及び/又は末端にイソシアネート基を有する化合物と反応させることで得られる。
【0022】
また、本発明において、(A)成分として使用することができる「イミド結合を含む樹脂」は、通常、(a)成分:酸無水物基を有する三価のポリカルボン酸及びその誘導体、並びに酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸から選ばれる1種以上の化合物と、(b)成分:イソシアネート化合物又はアミン化合物とを反応させて得られる。
【0023】
上記(a)成分として用いる「酸無水物基を有する三価のポリカルボン酸及びその誘導体」は、特に限定されないが、例えば、下記式(3)及び(4):
【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

(式(3)及び(4)中、R’は、水素、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、Yは、−CH−、−CO−、−SO−、又は−O−である)
で示される化合物を使用することができる。
【0026】
上記(a)成分として用いられる「酸無水物基を有する三価のポリカルボン酸」としては、耐熱性、コスト面等から、トリメリット酸無水物が、特に好ましい。
【0027】
上記(a)成分として用いられる「酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸」も、特に限定されないが、例えば、下記式(5):
【0028】
【化5】

(式(5)中、Yは、下記式(6):
【0029】
【化6】




で示される複数の基から選ばれる一種である)で示されるテトラカルボン酸二無水物を使用することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
また、これらの他に必要に応じて、酸成分として、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸等)等を併用することができる。この場合、分子鎖中にアミド結合も形成される。
【0031】
上記(b)成分として用いられるイソシアネート化合物は、例えば、下記式(7):
【0032】
【化7】

(式(7)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基であり、Xは、二価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数である)で示される「ポリカーボネート骨格及びウレタン結合を有する化合物」を用いることができる。
【0033】
上記式(7)で示される「ポリカーボネート骨格及びウレタン結合を有する化合物」は、下記式(8):
【0034】
【化8】

(式(8)中、Rは、炭素数1〜18のアルキレン基であり、mは、1〜20の整数である)で示されるカーボネートジオール類と、下記式(9):
OCN−X−NCO (9)
(式中、Xは、二価の有機基である)で示されるジイソシアネート類とを反応させることにより得られる。
【0035】
上記式(9)中のXで示される二価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基、又は非置換若しくはメチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基で置換されているフェニレン基等のアリーレン基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、より好ましくは1〜18である。ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、水添ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイル基等の芳香族環を2つ有する基も好ましいものとして挙げられる。
【0036】
上記の式(8)で示されるカーボネートジオール類としては、例えば、α,ω−ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、α,ω−ポリ(3−メチル−ペンタメチレンカーボネート)ジオール等が挙げられ、市販されているものとしては、ダイセル化学株式会社製の商品名「PLACCEL CD−205,205PL,205HL,210,210PL,210HL,220,220PL,220HL」等が挙げられる。これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
また、上記式(9)で示されるジイソシアネート類としては、例えば、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジエチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメトキシジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,4’−ジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート化合物及びこれらの水添物;ジフェニルエーテル−4、4’−ジイソシアネート;ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート;トリレン−2,4−ジイソシアネート;トリレン−2,6−ジイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート;p−キシリレンジイソシアネート;ナフタレン−2,6−ジイソシアネート;4,4’−〔2,2ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネート類において、式(9)中のXが芳香族環を有する芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
また、上記式(9)で示されるジイソシアネート類としては、本発明の目的の範囲内で、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式イソシアネート、あるいは三官能以上のポリイソシアネートを使用することができる。
【0039】
上記式(9)で示されるジイソシアネート類は、経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、アルコール、フェノール、オキシム等があるが、特に制限はない。
【0040】
上記式(8)で示されるカーボネートジオール類と上記式(9)で示されるジイソシアネート類との配合割合は、水酸基数とイソシアネート基数の比率が、イソシアネート基/水酸基=1.01以上になるようにすることが好ましい。
【0041】
上記式(8)で示されるカーボネートジオール類と式(9)で示されるジイソシアネート類との反応は、無溶剤あるいは有機溶剤の存在下で行うことができる。反応温度は、60〜200℃とすることが好ましく、より好ましくは80〜180℃である。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件等により適宜選択することができる。例えば、1〜5L(リットル)のフラスコスケールで2〜5時間とすることができる。
【0042】
このようにして得られる化合物(b−1)(イソシアネート化合物)の数平均分子量は、500〜10,000であることが好ましく、1,000〜9,500であることがより好ましく、1,500〜9,000であることが特に好ましい。数平均分子量が500未満であると、反り性が悪化する傾向があり、10,000を超えると、イソシアネート化合物の反応性が低下し、ポリイミド樹脂化することが困難となる傾向がある。
【0043】
なお、本発明において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値とする。また、本発明の数平均分子量及び分散度は、以下のように定義される。
a)数平均分子量(M
=Σ(N)/N=ΣX
(X=分子量Mの分子のモル分率=N/ΣN
b)重量平均分子量
=Σ(N)/ΣN=ΣW
(W=分子量Mの分子の重量分率=N/ΣN
c)分子量分布(分散度)
分散度=M/M
【0044】
上記(b)成分のイソシアネート化合物として、化合物(b−1)以外の化合物(以下、化合物(b−2)とする)を使用することもできる。化合物(b−2)としては、化合物(b−1)以外のイソシアネート化合物であれば、特に限定されず、例えば、式(9)で示されるジイソシアネート類、三価以上のポリイソシアネート類等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。化合物(b−2)のイソシアネート化合物の数平均分子量の好ましい範囲は、上記の化合物(b−1)と同様である。
【0045】
特に耐熱性の点から、化合物(b−1)と化合物(b−2)とを併用することが好ましい。なお、化合物(b−1)及び化合物(b−2)をそれぞれ単独で用いる場合は、フレキシブル配線板用の保護膜としての柔軟性、反り性の改善等の点から、化合物(b−1)を使用することが好ましい。
【0046】
化合物(b−2)としては、その総量の50〜100重量%が芳香族ポリイソシアネートであることが好ましく、耐熱性、溶解性、機械特性、コスト面等のバランスを考慮すれば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
【0047】
化合物(b−1)と化合物(b−2)を併用する場合、化合物(b−1)/化合物(b−2)の当量比で0.1/0.9〜0.9/0.1とすることが好ましく、0.2/0.8〜0.8/0.2とすることがより好ましく、0.3/0.7〜0.7/0.3とすることが特に好ましい。当量比がこの範囲にあると、良好な低反り性、密着性と、良好な耐熱性等の膜特性をともに得ることができる。
【0048】
上記(b)成分のうちアミン化合物としては、上記(b)成分のイソシアネート化合物におけるイソシアナト基をアミノ基に転換した化合物が挙げられる。イソシアナト基のアミノ基への転換は、公知の方法により行うことができる。アミン化合物の数平均分子量の好ましい範囲は、上記の化合物(b−1)と同様である。
【0049】
また、(a)成分である「酸無水物基を有する三価のポリカルボン酸又はその誘導体及び/又は酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸」の配合割合は、(b)成分中のイソシアネート基の総数に対する(a)成分中のカルボキシル基と酸無水物基の総数の比が、0.6〜1.4となるようにすることが好ましく、0.7〜1.3となるようにすることがより好ましく、0.8〜1.2となるようにすることが特に好ましい。この比が0.6未満又は1.4を超えると、ポリイミド結合を含む樹脂の分子量を高くすることが困難となる傾向がある。
【0050】
なお、(a)成分として前記式(3)で示される化合物、(b)成分として化合物(b−1)を用いた場合、次の式(10):
【0051】
【化9】

(式(10)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基であり、Xは二価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数である。)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂を得ることができる。
【0052】
また、(a)成分として前記式(4)で示される化合物、(b)成分として化合物(b−1)を用いた場合、次の式(11):
【0053】
【化10】

(式(11)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基であり、Xは二価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数であり、Yは、−CH−、−CO−、−SO−、又は−O−である)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂を得ることができる。
【0054】
また、(a)成分として前記式(5)で示される化合物、(b)成分として化合物(b−1)を用いた場合、次の式(12):
【0055】
【化11】

(式(12)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基であり、Xは二価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数であり、Yは、前記式(6)で示される複数の基から選ばれる基である)で示される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂を得ることができる。
【0056】
このように、(A)成分である樹脂(A)は、下記一般式(2)で表されるポリウレタン構造を含むことが、特に可撓化及び低弾性率化の観点から好ましい。
【0057】
【化12】

(式中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基であり、Xは、二価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数である。)
【0058】
本発明において、(A)成分として使用される「イミド結合を含む樹脂」の製造方法における(a)成分:酸無水物基を有する三価のポリカルボン酸及びその誘導体、並びに酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸から選ばれる1種以上の化合物と、(b)成分:イソシアネート化合物又はアミン化合物との反応は、有機溶剤、好ましくは非含窒素系極性溶剤の存在下に、遊離発生してくる炭酸ガスを反応系より除去しながら加熱縮合させることにより行うことができる。
【0059】
上記非含窒素系極性溶剤としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどの含硫黄系溶剤;γ−ブチロラクトン、酢酸セロソルブなどのエステル系溶剤;シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0060】
上記溶剤の内から生成する樹脂を溶解する溶剤を選択して使用するのが好ましい。合成後、そのままペーストの溶剤として好適なものを使用することが好ましい。高揮発性であって、低温硬化性を付与でき、かつ効率良く均一系で反応を行うためには、γ−ブチロラクトンが最も好ましい。
【0061】
また、溶剤の使用量は、生成する樹脂の0.8〜5.0倍(重量比)とすることが好ましい。0.8倍未満では、合成時の粘度が高すぎて、攪拌不能により合成が困難となる傾向があり、5.0倍を超えると、反応速度が低下する傾向がある。
【0062】
反応温度は、80〜210℃とすることが好ましく、100〜190℃とすることがより好ましく、120〜180℃とすることが特に好ましい。80℃未満では反応時間が長くなり過ぎ、210℃を超えると反応中に三次元化反応が生じてゲル化が起こり易い。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件により適宜選択することができる。
【0063】
また、必要に応じて、三級アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、スズ、亜鉛、チタニウム、コバルト等の金属又は半金属化合物等の触媒存在下に反応を行っても良い。
【0064】
また、合成終了後に、樹脂末端のイソシアネート基をアルコール類、ラクタム類、オキシム類、カルボン酸類、酸無水物類等のブロック剤でブロックすることもできる。なお、(A)成分としては熱硬化性樹脂を併用することが好ましい。
【0065】
このようにして得られた樹脂の数平均分子量は、15,000〜50,000であることが好ましく、20,000〜45,000であることがより好ましく、25,000〜40,000であることが特に好ましく、その時の分散度は1.5〜3.5が好ましく、2.0〜3.0がより好ましい。数平均分子量が15,000未満であると、スズメッキ後の膜特性が低下する傾向があり、数平均分子量が50,000を超えると、非含窒素系極性溶剤に溶解しにくくなり、合成中に不溶化しやすい。また、作業性に劣る傾向がある。
【0066】
本発明の樹脂組成物で用いる(A)成分の樹脂は、GPC法で測定した数平均分子量が上記の範囲内であれば、分子量が異なる樹脂を2以上混合しても良い。
また、異なる数平均分子量の樹脂のうち、最小分子量は、数平均分子量で15,000以上であることが好ましい。数平均分子量が15,000未満になると耐湿性や耐熱性が低下する傾向があり、好ましくない。一方、異なる数平均分子量の樹脂のうち、最大分子量は、数平均分子量で50,000未満であることが好ましい。数平均分子量が50,000を超えると樹脂の粘性が高くなり、無機フィラー及び/又は有機フィラーの混合性やスクリーン印刷等の作業性が低下する傾向があり、好ましくない。
【0067】
本発明で用いられる数平均分子量が異なる樹脂を2以上混合する際の混合比は、GPC法で測定した数平均分子量が上記の範囲内であれば、特に制限なく混合できる。また、樹脂溶液の濃度も制限なく選択できる。
【0068】
前記樹脂(A)の本発明の樹脂組成物中の含有量は、本発明の(B)無機微粒子を除く樹脂組成物の全固形分量100重量部中の、50〜99重量部であることが好ましく、より好ましくは60〜98重量部、さらに好ましくは70〜95重量部である。樹脂(A)の含有量が50重量部未満では、耐熱性及び信頼性等が低下する傾向となり、99重量部を超えると、硬化性等が低下する傾向となる。
【0069】
(無機微粒子(B))
本発明の樹脂組成物に配合する無機微粒子(B)は、上述の樹脂(A)の溶液中に分散してペーストを形成するものであれば、特に制限はない。このような無機微粒子としては、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、酸化タンタル(Ta)、ジルコニア(ZrO)、窒化珪素(Si)、チタン酸バリウム(BaO・TiO)、炭酸バリウム(BaCO)、チタン酸鉛(PbO・TiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、酸化ガリウム(Ga)、スピネル(MgO・Al)、ムライト(3Al・2SiO)、コーディエライト(2MgO・2Al/5SiO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、チタン酸アルミニウム(TiO−Al)、イットリア含有ジルコニア(Y−ZrO)、珪酸バリウム(BaO・8SiO)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO)、硫酸カルシウム(CaSO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO)、硫酸バリウム(BaSO)、有機ベントナイト、カーボン(C)、ハイドロタルサイトなどを使用することができ、これらの1種又は2種以上を使用することもできる。これらの中でも、印刷後のペーストの流れ出し抑制の観点からはシリカが好ましく、硬化膜の絶縁信頼性向上の観点からは硫酸バリウムが好ましい。
【0070】
本発明の樹脂組成物に配合する無機微粒子(B)としては、平均粒子径50μm以下、最大粒子径100μm以下の粒子径をもつものが好ましく用いられる。平均粒子径が50μmを超えると、後述するチキソトロピー係数が1.1以上のペーストが得られにくくなり、最大粒子径が100μmを超えると、樹脂組成物の塗膜の外観、密着性が不十分となる傾向がある。平均粒子径は、より好ましくは、30μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは1μm以下であり、最大粒子径はより好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、特に好ましくは40μm以下である。
【0071】
(B)成分として用いる無機微粒子の含有量は、(A)成分100重量部に対して10〜200重量部とすることが好ましく、20〜180重量部とすることがより好ましく、30〜150重量部とすることが特に好ましく、50〜120重量部とすることが最も好ましい。(B)成分の含有量が10重量部未満では、ペーストの粘度及びチキソトロピー係数が低くなり、ペーストの糸引きが増加するとともに印刷後のペーストの流れ出しが大きくなり、膜厚も薄膜化する傾向があり、スズメッキ後の被膜端部の状態及び電気特性が劣る傾向になる。また、(B)成分の含有量が200重量部を超えると、ペーストの粘度及びチキソトロピー係数が高くなり、ペーストの基材への転写性が低下するとともに印刷膜中のボイド及びピンホールが増加する傾向がある。
【0072】
前記無機微粒子(B)を樹脂溶液に分散させる方法としては、通常、塗料分野で行われているロール練り、ミキサー混合などが適用され、十分な分散が行われる方法であれば、特に分散方法は限定されない。
【0073】
(ヒンダードフェノール系化合物(C))
本発明の樹脂組成物に配合するヒンダードフェノール系化合物(C)としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリトール・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、2,4,−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0074】
上記ヒンダードフェノール系化合物の中でも、ペンタエリスリトール・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましく、ペンタエリスリトール・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]は、IRGANOX1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。また、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]は、IRGANOX1035(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0075】
また、本発明の樹脂組成物に配合するヒンダードフェノール系化合物(C)は、下記一般式(1)で表される構造を含むものであることが好ましい。
【0076】
【化13】

【0077】
上記ヒンダードフェノール系化合物は単独で使用してもよいが、場合によっては数種類を併用してもよく、含有量は樹脂組成物の(B)無機微粒子を除く樹脂固形分量に対して、好ましくは0.1重量%から5重量%とされるが、より好ましくは0.5重量%から3重量%である。0.1重量%より低いと効果は発現しにくく、5重量%より多いと印刷性や作業性が低下する傾向にある。
【0078】
また、本発明の樹脂組成物は、上記ヒンダードフェノール系化合物以外のナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン系、モノフェノール系、ポリフェノール系、チオビスフェノール系、フェノール系・亜リン酸エステル系、有機硫黄系化合物等を併用して用いることもできる。
【0079】
((D)成分:溶剤)
本発明の樹脂組成物において、(D)成分として種々の溶剤を用いることができる。溶剤としては、非含窒素系極性溶剤として、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどの含硫黄系溶剤;γ−ブチロラクトン、酢酸2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸セロソルブなどのエステル系溶剤;シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;リモネンなどのモノテルペン系溶剤等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
上記溶剤の内、印刷性の観点からは、γ−ブチロラクトンを用いることが好ましい。
【0080】
(その他の樹脂成分)
本発明の樹脂組成物において、熱硬化性を向上させるために、任意に(E)成分として各種エポキシ樹脂を添加することもできる。硬化剤としてのエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「エピコート828」等)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製の商品名「YDF−170」等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「エピコート152,154」;日本化薬株式会社製の商品名「EPPN−201」;ダウケミカル社製の商品名「DEN−438」等)、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製の商品名「EOCN−125S,103S,104S」等)、多官能エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「Epon1031S」;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製の商品名「アラルダイト0163」;ナガセ化成株式会社製の商品名「デナコールEX−611,EX−614,EX−614B,EX−622,EX−512,EX−521,EX−421,EX−411,EX−321」等)、アミン型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「エピコート604」;東都化成株式会社製の商品名「YH434」;三菱ガス化学株式会社製の商品名「TETRAD−X」、「TERRAD−C」;日本化薬株式会社製の商品名「GAN」;住友化学株式会社製の商品名「ELM−120」等)、複素環含有エポキシ樹脂(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製の商品名「アラルダイトPT810」等)、脂環式エポキシ樹脂(UCC社製の「ERL4234,4299,4221,4206」等)等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上組合せて使用することができる。これらのエポキシ樹脂のうち、1分子中にエポキシ基を3個以上有するアミン型エポキシ樹脂は、耐溶剤性、耐薬品性、耐湿性の向上の点で特に好ましい。
【0081】
これらのエポキシ樹脂の含有量は、(A)成分として用いる「樹脂」100重量部に対して好ましくは1〜50重量部、より好ましくは2〜45重量部、さらに好ましくは3〜40重量部とされる。エポキシ樹脂の含有量が1重量部未満では、硬化性、耐溶剤性、耐薬品性、耐湿性が低下する傾向にあり、50重量部を超えると、耐熱性及び粘度安定性が低下する傾向にある。
【0082】
さらに、これらのエポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を1個だけ有するエポキシ化合物を含んでいてもよい。このようなエポキシ化合物は、(A)成分として用いる「樹脂」100重量部に対して0〜20重量部の範囲で使用することが好ましい。このようなエポキシ化合物としては、n−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等がある。また、3,4−エポキシシクロヘキシル、メチル(3,4−エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物を使用することができる。
【0083】
上記エポキシ樹脂の添加方法としては、添加するエポキシ樹脂を(A)成分として用いる「樹脂」を溶解する有機溶剤と同一の有機溶剤に溶解してから添加してもよく、また、直接添加してもよい。
【0084】
(その他の添加剤)
本発明の樹脂組成物に添加する消泡剤またはレベリング剤としては、「KS−602A」、「KS−603」、「KS−608」、「FA600」(以上、信越化学工業株式会社製:商品名)、「BYK−A506」、「BYK−A525」、「BYK−A530」、「BYK−A500」、「BYK−A500」、「BYK−A501」、「BYK−A515」、「BYK−A555」、「Byketol−OK」(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製:商品名)、「ARUFON UP−1000」(東亜合成株式会社製:商品名)等が好適に使用されるが、特に種類の制限をするものではない。上記消泡剤、レベリング剤等は単独で使用してもよいが、場合によっては数種類を併用してもよく、含有量は樹脂組成物の樹脂固形分量に対して好ましくは0.05重量%から1重量%とされるが、より好ましくは0.05重量%から0.5重量%である。含有量が0.05重量%未満になると、脱泡性や成膜性が低下する傾向にある。含有量が1重量%を超えると脱泡性は向上するが形状保持性が低下する傾向にある。
【0085】
本発明の樹脂組成物は、各種被膜形成材料として好適に用いられる。この樹脂組成物には、塗工時の作業性及び被膜形成前後の膜特性を向上させるため、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、染料又は顔料等の着色剤類、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤等を添加することもできる。
【0086】
(被膜形成材料)
本発明による樹脂組成物は、被膜形成用樹脂組成物あるいは被膜形成材料として好適に用いられる。被膜形成材料としては、例えば、電子部品用オーバーコート材、液状封止材、エナメル線用ワニス、電気絶縁用含浸ワニス、注型ワニス、マイカ、ガラスクロス等の基材と組み合わせたシート用ワニス、MCL積層板用ワニス、摩擦材料用ワニス、プリント基板分野などにおける層間絶縁膜、表面保護膜、ソルダレジスト層、接着層などに使用できる。また、被膜形成用樹脂組成物あるいは被膜形成材料は、半導体素子などの電子部品にも使用でき、特に、樹脂組成物を形成する前に配線パターン部がスズめっき処理されたCOF用途のフレキシブル配線板の保護膜に有用である。
【0087】
本発明による樹脂組成物を、配線パターン部がスズめっき処理されたCOF用途のフレキシブル配線板の保護膜に用いる場合、熱硬化の加熱温度条件は、スズめっき層の拡散を防ぎ、かつ保護膜として好適な反り性、柔軟性を得る観点から、80〜130℃であることが好ましく、90〜120℃であることが特に好ましい。また、熱硬化の加熱時間は、スズめっき層の拡散を防ぎ、かつ保護膜として好適な反り性、柔軟性を得る観点から、60〜150分であることが好ましく、80〜120分であることが特に好ましい。
【0088】
本発明に被膜形成材料は、本発明の樹脂組成物そのもの、あるいは本発明の樹脂組成物に必要に応じて他の成分を添加してもよい。
【0089】
本発明の樹脂組成物を含む被膜形成材料は、適度な濡れ性を有することが好ましい。かかる濡れ性を、本発明の被膜形成材料の硬化塗膜に対する液状封止材の接触角にて定義すると、前記硬化塗膜上に滴下した液状封止材との接触角を35°以下にすることが好ましい。液状封止材との接触角が35°より大きくなると、液状封止材の濡れ広がりが不十分になり、例えば、半導体の被覆に用いた場合では、IC接続部周辺部を十分に覆うことができなくなる。封止材との接触角は接触角測定器(共和界面科学社製)で測定できる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
攪拌機、油水分離器付き冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた5リットルの四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオール(ダイセル化学株式会社製、商品名「PLACCEL CD−220」)1000.0g(0.50モル)と、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート250.27g(1.00モル)と、γ−ブチロラクトン833.51gとを仕込み、140℃まで昇温した。140℃で5時間反応させ、ジイソシアネートを得た。
【0091】
続いて、この反応液(ジイソシアネート)に無水トリメリット酸288.20g(1.50モル)と、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート125.14g(0.50モル)と、γ−ブチロラクトン1361.14gとを仕込み、160℃まで昇温した後、6時間反応させて、数平均分子量が18,000の樹脂(ポリカーボネート骨格を含む樹脂(A))を得た。得られた樹脂をγ−ブチロラクトンで希釈し、粘度160Pa・s、不揮発分52重量%の樹脂溶液を得た。
【0092】
得られた樹脂溶液の樹脂分100重量部に対して、(E)成分としてアミン型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名「YH−434」、エポキシ当量約120、エポキシ基4個/分子)10重量部と、γ−ブチロラクトンを加え、粘度100Pa・s、不揮発分52重量%の樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液1270g(樹脂固形分量660g)に、無機微粒子(B)としてシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名「アエロジル380」、平均粒子径0.2μm以下)30.8g、及び硫酸バリウム粒子(堺化学工業株式会社製、商品名「B−30、平均粒子径0.3μm」)92.6gを加え、まず粗混練し、次いで高速3本ロールを用いて3回混練を繰り返して本混練を行い、均一にシリカ微粒子が分散した樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物に、(C)成分としてIRGANOX1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製商品名)を0.66g添加後、自公転式攪拌機で3分間攪拌し樹脂組成物を得た。
【0093】
実施例2
実施例1においてIRGANOX1010の添加量を6.7gとした以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、樹脂組成物を得た。
【0094】
実施例3
実施例1においてIRGANOX1010の添加量を35gとした以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、樹脂組成物を得た。
【0095】
実施例4
実施例2においてIRGANOX1010を6.7g添加時にIRGANOX1035((C)成分、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名)を2.1g添加した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、樹脂組成物を得た。
【0096】
実施例5
実施例2においてIRGANOX1010を6.7g添加時にIRGANOX1035を11g添加した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、樹脂組成物を得た。
【0097】
実施例6
実施例1においてIRGANOX1010の添加量を45gとした以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、樹脂組成物を得た。
【0098】
比較例1
実施例1においてIRGANOX1010を使用しない以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、樹脂組成物を得た。
【0099】
上記の実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の特性を下記の方法で測定し、結果を表1に示した。
(1)印刷性
35μmの銅箔上に、得られた樹脂組成物を印刷機(ニューロング株式会社製 商品名:LZ−045)とメッシュ版(株式会社ムラカミ製 150メッシュ)で印刷速度100mm/secで10mm角を印刷し、空気雰囲気中90℃で30分乾燥後、空気雰囲気中120℃で60分加熱硬化して得られた樹脂被膜について万能投影機(ニコン株式会社製 倍率50倍)で樹脂被膜表面状態を、○:表面に凹凸なし、×:表面に凹凸ありとして評価した。
(2)絶縁信頼性試験
L/S=15μm/15μmの銅配線パターンにおいて、銅配線にスズめっきしたスパッタリング基材上に、得られた樹脂組成物を硬化後の膜厚が10μmになるように印刷し、120℃、60分間で熱硬化を行った。得られた樹脂被膜を、温度120℃、湿度85%の環境下に設置し、DC60Vの電圧を連続して印加し、100時間後の絶縁抵抗の保持性を評価した。100時間後の絶縁抵抗が、10Ω以上であったものを○、10Ω未満であったものを×とした。
(3)封止材との濡れ性(接触角)
厚さ35μmの電解銅箔の粗面又は厚さ50μmのポリイミドフィルム上に、得られた樹脂組成物を塗布し、90℃で15分乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で60分加熱し、得られた塗膜(厚さ20〜30μm)上に、エポキシ系封止材〔日立化成工業株式会社製商品名CEL−C−5020〕を10μl滴下し、硬化膜との接触角を接触角測定器(共和界面科学製)を用いて測定した。また、万能投影機(ニコン株式会社製 倍率50倍)を用いて、封止材と硬化膜の界面を観察した。観察基準は下記の通りである。
○:封止材と硬化膜の境界なし、 ×:封止材と硬化膜の境界あり
【0100】
【表1】

【0101】
表1に示すように、(C)ヒンダードフェノール系化合物の含有量が0.1重量%から5重量%である実施例1〜5は、温度120℃、湿度85%の環境下に設置しDC60Vの電圧を100時間連続して印加し続けても絶縁抵抗は維持され絶縁信頼性は良好であり、また、封止材との接触角も小さく、濡れ性、印刷性とも良好であることがわかった。一方、(C)ヒンダードフェノール系化合物が配合されていない比較例1は絶縁抵抗が50時間で低下してしまうなど、絶縁信頼性に問題があることがわかった。また、(C)ヒンダードフェノール系化合物の含有量が6重量%である実施例6は、絶縁信頼性は良好であるが、封止材との接触角が35°より大きくなるなど、封止材との濡れ性が低下することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の樹脂組成物及びその樹脂被膜は温度120℃、湿度85%、電圧60Vの環境下でも100時間以上安定した絶縁抵抗を示すなど、絶縁信頼性が著しく向上した。よって、本発明のスクリーン印刷用樹脂組成物及び被膜形成材料は、上記の優れた特性を有し、電子部品用オーバーコート材、液状封止材、エナメル線用ワニス電気絶縁用含浸ワニス、積層板用ワニス、摩擦材料用ワニス、プリント基板分野などにおける層間絶縁膜、表面保護膜、ソルダレジスト膜、接着層などや、半導体素子などの電子部品に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)と、無機微粒子(B)と、ヒンダードフェノール系化合物(C)とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
ヒンダードフェノール系化合物(C)が、下記一般式(1)の構造を有すことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】

【請求項3】
ヒンダードフェノール系化合物(C)の含有量が、樹脂成分の全固形分量に対して0.1重量%から5重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂(A)が、ポリカーボネート骨格を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂(A)が、下記一般式(2)で表されるポリウレタン構造を含むことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の樹脂組成物。
【化2】

(式中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基であり、Xは、二価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数である。)
【請求項6】
樹脂(A)が、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、変性されたポリイミド樹脂、変性されたポリアミドイミド樹脂、及び変性されたポリアミド樹脂からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらに溶剤(D)を含むことを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらにエポキシ樹脂(E)を含むことを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
フレキシブル配線板の被膜形成用樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9いずれかに記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする被膜形成材料。

【公開番号】特開2009−185242(P2009−185242A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28895(P2008−28895)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】