説明

樹脂組成物及びそれを用いたフレキシブル配線板の保護膜の製造方法

【課題】 印刷性良好であり、高温高湿下において安定した電気特性を得ることができ、更に配線間を流れ出すレジストや溶剤を低減することができる樹脂組成物、これを用いたフレキシブル配線板などの電子部品に好適で、信頼性の高い電子部品が得られるフレキシブル配線板の保護膜の製造方法を提供する。
【解決手段】 (A)酸無水物基又はカルボキシル基を有する樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)表面被覆されていないハイドロタルサイトを含むフィラーと、を含有する樹脂組成物。前記(A)成分が、ポリカーボネート骨格を有するポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂のイソシアネート残基と、酸無水物基を有する3価以上のポリカルボン酸またはその誘導体とを反応させて得られた樹脂であると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びそれを用いたフレキシブル配線板の保護膜の製造方法に関し、特に、スクリーン印刷機、ディスペンサ、スピンコータ、などの塗布方法に適したチクソトロピー性を有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の分野においては、小型化、薄型化、高速化への対応から、耐熱性、電気特性及び耐湿性に優れる樹脂として、エポキシ樹脂に代わり、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂が使用されている。これらの樹脂は、樹脂構造が剛直であり薄膜基材に用いた場合、硬化後の基材が大きく反り、硬化膜は柔軟性に欠け、屈曲性に劣る問題がある。
【0003】
そこで、低反り性、柔軟性を改善するために、樹脂を可撓化及び低弾性率化し変性されたポリアミドイミド樹脂(特許文献1、特許文献2及び特許文献3)が提案されている。これらの樹脂では、印刷性や作業性を向上させるために、無機フィラーや有機フィラー等を樹脂溶液に分散させている。また、基材と樹脂やフィラーと樹脂同士の密着性を向上させるために、各種カップリング剤や表面処理剤等の添加剤が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−106960号公報
【特許文献2】特開平08−012763号公報
【特許文献3】特開平07−196798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1から3記載の被膜形成材料は、高温高湿下で通電した場合、電気特性を低下することが懸念される。
また、近年、配線のファイン化に伴い、レジストや溶剤の配線間の流れ出しが問題となっている。
上記課題は、例えばレジストを高粘度にして印刷することで改善傾向となるが、消泡、レベリング性などに難があり印刷性に不具合を生じる。
また、配線のファイン化に伴い、高温高湿下の電気特性が不安定となる。
上記課題は、例えばフィラー中にハイドロタルサイトやシリカを含有させることで改善効果が見られたが、樹脂溶液中へのハイドロタルサイトの分散が困難であり、印刷性との両立の面から高充填化が困難であった。
この課題は、例えばカップリング剤の使用によりやや改善するものの、カップリング剤がアウトガスとして発生し、アンダーフィル材の濡れ性やACF(異方導電フィルム)接着性に不具合を生じさせる。
【0006】
本発明は、印刷性良好であり、高温高湿下において安定した電気特性を得ることができ、更に配線間を流れ出すレジストや溶剤を低減することができる樹脂組成物を提供することにある。また、この樹脂組成物を用いて、フレキシブル配線板などの電子部品に好適に用いることができ、信頼性の高い電子部品が得られるフレキシブル配線板の保護膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、[1](A)酸無水物基又はカルボキシル基を有する樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)表面被覆されていないハイドロタルサイトを含むフィラーと、を含有する樹脂組成物に関する。
また、本発明は、[2](A)酸無水物基又はカルボキシル基を有する樹脂が、下記一般式(1)で表される構造を有する上記[1]に記載の樹脂組成物に関する。接着性、低反り性及び保護膜を低弾性率化できる観点から下記一般式(1)で表される構造を有すると好ましい。
【0008】
【化1】

(一般式(1)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキレン基を示し、Xは、炭素数1〜20のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に1〜30の整数を示す)
また、本発明は、[3]前記(A)成分が、ポリカーボネート骨格を有するポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂のイソシアネート残基と、酸無水物基を有する3価以上のポリカルボン酸またはその誘導体とを反応させて得られる樹脂である上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物に関する。
また、本発明は、[4]前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、1〜250質量部である上記[1]〜[3]の何れかに記載の樹脂組成物に関する。電気特性の観点から、この範囲が好ましく、30〜200質量部がより好ましく、50〜150質量部が更に好ましい。
また、本発明は、[5]銅箔をポリイミド基材に積層したフレキシブルプリント基板の保護膜に用いる前記[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物に関する。
また、本発明は、[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物を、フレキシブル配線板の予めSnメッキ処理された配線パターン部に印刷し、80〜130℃で加熱して保護膜を形成する、フレキシブル配線板の保護膜の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、印刷性良好であり、高温高湿下において安定した電気特性を得ることができ、更に配線間を流れ出すレジストや溶剤を低減することができる。この樹脂組成物はフレキシブル配線板などの電子部品に好適に用いることができ、信頼性の高い電子部品が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる樹脂組成物及びフレキシブル配線板の保護膜の製造方法の一実施の形態を詳細に説明する。なお、この一実施の形態により本発明が制限されるものではない。
本発明の樹脂組成物は、(A)酸無水物基又はカルボキシル基を有する樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)表面被覆されていないハイドロタルサイトを含むフィラーと、を含有する。
【0011】
〔(A)成分:酸無水物基又はカルボキシル基を有する樹脂〕
(A)成分である「酸無水物基又はカルボキシル基を有する樹脂」としては、ブタジエン構造やシリコーン構造を有するエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリブタジエン、水添加ポリブタジエン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロ樹脂、ポリシリコーン、メラミン樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の樹脂の主鎖及び/又は側鎖に酸無水物基及び/又はカルボキシル基を導入したものが挙げられる。これらは、単独又は2種類以上組み合わせて使用することができる。また、酸無水物基又はカルボキシル基を有する樹脂と酸無水物基又はカルボキシル基を有さない樹脂を併用することもできる。
【0012】
上記カルボキシル基を導入する方法としては、ブタジエン構造やシリコーン構造を有するエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリブタジエン、水添加ポリブタジエン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロ樹脂、ポリシリコーン、メラミン樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド樹脂等の合成過程において、ラジカル重合、縮重合又はイオン重合可能なカルボキシル基を有する化合物を用いることで得ることができる。
【0013】
また、上記酸無水物基を導入する方法としては、ブタジエン構造やシリコーン構造を有するエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリブタジエン、水添加ポリブタジエン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロ樹脂、ポリシリコーン、メラミン樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド樹脂等に含有させたエポキシ残基、イソシアネート残基、水酸基残基及びカルボキシル基等と下記一般式(2)及び/又は一般式(3)で表される化合物とを反応させて得ることができる。
【0014】
【化2】

(一般式(2)中、Zは有機基を表し、Wは、水酸基、イソシネート基、カルボキシル基、エポキシ基、グリシジル基を表す。)
【0015】
【化3】

(一般式(3)中、Zは有機基を表す。)
【0016】
樹脂の末端及び又は側鎖に酸無水物基及び/又はカルボキシル基を導入することにより、後述する(B)成分であるエポキシ樹脂と反応性が高くなるため、貼り付き性(接着性)を向上することができる。
【0017】
また、本発明で用いる(A)成分の樹脂は、主にフレキシブル基板にも対応させるため、可撓性及び低弾性率であることが好ましい。(A)成分の樹脂を可撓性及び低弾性率にするためには、樹脂の主鎖に可撓性を向上できる成分を導入することが挙げられ、そのような成分としては、例えば、ポリブタジエン骨格、シリコーン樹脂骨格及び/又はポリカーボネート骨格が好ましい。
【0018】
また、硬化膜の耐熱性、電気特性、耐湿性、耐溶剤性及び耐薬品性を向上させるためには、樹脂の主鎖中に耐熱性を向上できる成分を導入することが挙げられ、そのような成分としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド若しくはポリアミド又はこれらの骨格が好ましい。中でも、可撓化、低弾性率化及び高耐熱性化の観点から、ポリカーボネート骨格及びイミド骨格が好ましい。
【0019】
本発明において、(A)成分として使用することができる「酸無水物基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂」は、通常、1,6−ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオール等と、カルボキシル基を有する化合物、酸無水物を有する化合物及び/又はイソシアネート基を有する化合物とを反応させることで得られる。
【0020】
また、本発明において、(A)成分として使用することができる「酸無水物基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂」は、例えば、(a)成分:酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸及びその誘導体、並びに酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸から選ばれる1種以上の化合物と、(b)成分:イソシアネート化合物又はアミン化合物とを反応させて得られる。
【0021】
上記(a)成分である「酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸及びその誘導体」は、特に限定されないが、例えば、下記式(4)及び(5):
【0022】
【化4】

【0023】
【化5】

(一般式(4)及び(5)中、R'は、水素、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、Y1は、−CH2−、−CO−、−SO2−、又は−O−である)で示される化合物を使用することができる。
【0024】
上記(a)成分の「酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸」としては、耐熱性、コスト面等から、トリメリット酸無水物が、特に好ましい。
他方の「酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸」としては、特に限定されないが、例えば、下記式(6):
【0025】
【化6】

(一般式(6)中、Y2は、下記式(7):
【0026】
【化7】

で示される複数の基から選ばれる基である)で示されるテトラカルボン酸二無水物を使用することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
また、これらのほかに必要に応じて、酸成分として、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸等)等を併用することができる。この場合、分子鎖中にアミド結合も形成される。
【0028】
上記(b)成分として用いられるイソシアネート化合物は、例えば、下記一般式(8):
【0029】
【化8】


(一般式(8)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキレン基であり、Xは二価の有機基であり、具体的には、炭素数1〜20のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に1〜30の整数である)で示されるジイソシアネート類を用いることができる(以下、化合物(b−1)と記す場合もある)。
【0030】
上記一般式(8)で示される化合物(b−1)は、下記一般式(9):
【0031】
【化9】

(一般式(9)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキレン基であり、mは1〜30の整数である)で示されるカーボネートジオール類と、下記一般式(10):
【0032】
【化10】

(一般式(10)中、Xは、二価の有機基である)で示されるジイソシアネート類とを反応させることにより得られる。
【0033】
上記一般式(10)中のXで示される二価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基、又は非置換若しくはメチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基で置換されているフェニレン基等のアリーレン基が挙げられる。上記アルキレン基の炭素数は、より好ましくは1〜18である。ジフェニルメタン−4,4'−ジイル基、ジフェニルスルホン−4,4'−ジイル基等の芳香族環を2つ有する基も好ましいものとして挙げられる。
【0034】
上記の一般式(9)で示されるカーボネートジオール類としては、例えば、α,ω−ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、α,ω−ポリ(3−メチル−ペンタメチレンカーボネート)ジオール等が挙げられ、市販されているものとしては、ダイセル化学株式会社製の商品名「PLACCEL CD−205,205PL,205HL,210,210PL,210HL,220,220PL,220HL」等が挙げられる。これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
また、上記一般式(10)で示されるジイソシアネート類としては、例えば、ジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート;3,2'−、3,3'−、4,2'−、4,3'−、5,2'−、5,3'−、6,2'−又は6,3'−ジメチルジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート;3,2'−、3,3'−、4,2'−、4,3'−、5,2'−、5,3'−、6,2'−又は6,3'−ジエチルジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート;3,2'−、3,3'−、4,2'−、4,3'−、5,2'−、5,3'−、6,2'−又は6,3'−ジメトキシジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,3'−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,4'−ジイソシアネート;ジフェニルエーテル−4、4'−ジイソシアネート;ベンゾフェノン−4,4'−ジイソシアネート;ジフェニルスルホン−4,4'−ジイソシアネート;トリレン−2,4−ジイソシアネート;トリレン−2,6−ジイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート;p−キシリレンジイソシアネート;ナフタレン−2,6−ジイソシアネート;4,4'−〔2,2ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネート類において、一般式(10)中のXが芳香族環を有する芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
また、一般式(10)で示されるジイソシアネート類としては、本発明の目的の範囲内で、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式イソシアネート、あるいは三官能以上のポリイソシアネートを使用することができる。
【0037】
上記一般式(10)で示されるジイソシアネート類は、経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、アルコール、フェノール、オキシム等があるが、特に制限はない。
【0038】
上記一般式(9)で示されるカーボネートジオール類と上記一般式(10)で示されるジイソシアネート類との配合割合は、水酸基数とイソシアネート基数の比率が、イソシアネート基/水酸基=1.01以上になるようにすることが好ましい。
【0039】
上記一般式(9)で示されるカーボネートジオール類と上記一般式(10)で示されるジイソシアネート類との反応は、無溶媒あるいは有機溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、60〜200℃とすることが好ましく、より好ましくは80〜180℃である。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件等により適宜選択することができる。例えば、1〜5L(リットル)のフラスコスケールで2〜5時間とすることができる。
【0040】
このようにして得られる化合物(b−1)(イソシアネート化合物)の数平均分子量は、500〜10,000であることが好ましく、1,000〜9,500であることがより好ましく、1,500〜9,000であることが特に好ましい。数平均分子量が500未満であると、反り性が悪化する傾向があり、10,000を超えると、イソシアネート化合物の反応性が低下し、ポリイミド樹脂化することが困難となる傾向がある。
【0041】
なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値とする。また、本発明の数平均分子量及び分散度は、以下のように定義される。
a)数平均分子量(Mn
n=Σ(Nii)/Ni=ΣXii
(Xi=分子量Miの分子のモル分率=Ni/ΣNi
b)重量平均分子量
w=Σ(Nii2)/ΣNii=ΣWii
(Wi=分子量Miの分子の重量分率=Nii/ΣNii
c)分子量分布(分散度)
分散度=Mw/Mn
【0042】
上記(b)成分のイソシアネート化合物として、化合物(b−1)以外の化合物(以下、化合物(b−2)とする)を使用することもできる。化合物(b−2)としては、化合物(b−1)以外のイソシアネート化合物であれば、特に限定されず、例えば、上記一般式(9)で示されるジイソシアネート類、三価以上のポリイソシアネート類等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。化合物(b−2)のイソシアネート化合物の数平均分子量の好ましい範囲は、上記化合物(b−1)と同様である。
【0043】
特に耐熱性の点から、化合物(b−1)と化合物(b−2)とを併用することが好ましい。なお、化合物(b−1)及び化合物(b−2)をそれぞれ単独で用いる場合は、フレキシブル配線板用の保護膜としての柔軟性、反り性の改善等の点から、化合物(b−1)を使用することが好ましい。
【0044】
化合物(b−2)としては、その総量の50〜100質量%が芳香族ポリイソシアネートであることが好ましく、耐熱性、溶解性、機械特性、コスト面等のバランスを考慮すれば、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
【0045】
化合物(b−1)と化合物(b−2)を併用する場合、化合物(b−1)/化合物(b−2)の当量比で0.1/0.9〜0.9/0.1とすることが好ましく、0.2/0.8〜0.8/0.2とすることがより好ましく、0.3/0.7〜0.7/0.3とすることが特に好ましい。当量比がこの範囲にあると、良好な低反り性、密着性と良好な耐熱性等の膜特性をともに得ることができる。
【0046】
上記(b)成分のうちアミン化合物としては、上記(b)成分のイソシアネート化合物におけるイソシアナト基をアミノ基に転換した化合物が挙げられる。イソシアナト基のアミノ基への転換は、公知の方法により行うことができる。アミン化合物の数平均分子量の好ましい範囲は、上記化合物(b−1)と同様である。
【0047】
また、(a)成分である「酸無水物基を有する三価のポリカルボン酸又はその誘導体及び/又は酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸」の配合割合は、(b)成分中のイソシアネート基の総数に対する(a)成分中のカルボキシル基と酸無水物基の総数の比が、0.6〜1.4となるようにすることが好ましく、0.7〜1.3となるようにすることがより好ましく、0.8〜1.2となるようにすることが特に好ましい。この比が0.6未満又は1.4を超えると、ポリイミド結合を含む樹脂の分子量を高くすることが困難となる傾向がある。
【0048】
なお、(a)成分として前記一般式(2)で示される化合物、(b)成分として化合物(b−1)を用いた場合、次の一般式(11):
【0049】
【化11】

【0050】
また、(a)成分として前記一般式(5)で示される化合物、(b)成分として化合物(b−1)を用いた場合、次の一般式(12):
【0051】
【化12】

(一般式(12)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキレン基であり、Xは二価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立に1〜30の整数であり、Y1は、−CH2−、−CO−、−SO2−、又は−O−である)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂を得ることができる。
【0052】
また、(a)成分として前記一般式(6)で示される化合物、(b)成分として化合物(b−1)を用いた場合、次の一般式(13):
【0053】
【化13】

(一般式(13)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキレン基であり、Xは二価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立に1〜30の整数であり、Y2は、前記式(7)で示される複数の基から選ばれる基である)で示される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂を得ることができる。
【0054】
本発明において、(A)成分として使用される「酸無水物基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂」の製造方法における(a)成分:酸無水物基を有する三価のポリカルボン酸及びその誘導体、並びに酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸から選ばれる1種以上の化合物と、(b)成分:イソシアネート化合物又はアミン化合物との反応は、有機溶媒、好ましくは非含窒素系極性溶媒の存在下に、遊離発生してくる炭酸ガスを反応系より除去しながら加熱縮合させることにより行うことができる。
【0055】
上記非含窒素系極性溶媒としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどの含硫黄系溶媒;γ−ブチロラクトン、酢酸セロソルブなどのエステル系溶媒;シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0056】
上記溶媒の内から生成する樹脂を溶解する溶剤を選択して使用するのが好ましい。合成後、そのままペーストの溶媒として好適なものを使用することが好ましい。高揮発性であって、低温硬化性を付与でき、かつ効率良く均一系で反応を行うためには、γ−ブチロラクトンが最も好ましい。
【0057】
また、溶媒の使用量は、生成するイミド結合を含む樹脂の0.8〜5.0倍(質量比)とすることが好ましい。0.8倍未満では、合成時の粘度が高すぎて、攪拌不能により合成が困難となる傾向があり、5.0倍を超えると、反応速度が低下する傾向がある。
【0058】
反応温度は、80〜210℃とすることが好ましく、100〜190℃とすることがより好ましく、120〜180℃とすることが特に好ましい。80℃未満では反応時間が長くなり過ぎ、210℃を超えると反応中に三次元化反応が生じてゲル化が起こり易い。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件により適宜選択することができる。
【0059】
また、必要に応じて、三級アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、スズ、亜鉛、チタニウム、コバルト等の金属又は半金属化合物等の触媒存在下に反応を行っても良い。
【0060】
前述のように得られるポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂は、イソシアネート残基を有するものであり、前記イソシアネート残基を前記一般式(2)及び/又は前記一般式(3)の化合物で反応させることにより、酸無水物基を有する樹脂を得ることができ、後述の(B)成分であるエポキシ樹脂との反応性が向上し、ポリイミド基材への貼り付き性を低減できる。
【0061】
また、前記一般式(2)及び/又は前記一般式(3)の化合物以外に、本発明の効果を損ねない程度にアルコール類、ラクタム類、オキシム類等のブロック剤を併用することもできる。
【0062】
前記一般式(2)及び/又は前記一般式(3)の化合物としては、下記式(14)で示されるテトラカルボン酸二水物(無水ピロメリット酸)が好ましい。
【0063】
【化14】

【0064】
上記無水ピロメリット酸の添加量は全イソシアネート量に対し、10〜20%の範囲内である。添加量が20%を超えると粘度制御が困難となり、作業性が低下する。また、10%未満では、硬化後にポリイミドフィルムとの貼り付きが生じやすい。
【0065】
また、本発明において、(A)成分として使用できる酸無水物基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂のその他のものとしては、例えば、一般式(9)、一般式(10)及び下記一般式(15)を混合し、前記(b−1)を合成する時と同様の条件で反応させて得ることができる。このようにして得られる樹脂は、下記一般式(16)で表される繰り返し構造を含むカルボキシル基を有するウレタン樹脂であり、後述の(B)成分であるエポキシ樹脂との反応性が向上し、ポリイミド基材への貼り付き性を低減できる。
前記のようにして得られるカルボキシル基を有するウレタン樹脂は、イソシアネート残基を有する場合、前記イソシアネート残基を一般式(2)、一般式(3)、アルコール類、ラクタム、オキシム類等を用いて反応させても良い。
一般式(15)で表される化合物としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。
【0066】
【化15】

(一般式(15)中、Rは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
【0067】
【化16】

(一般式(16)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキレン基であり、Rは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基であり、Xは二価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立に1〜30の整数である。)
【0068】
このようにして得られた樹脂の数平均分子量は、15,000〜50,000であることが好ましく、20,000〜45,000であることがより好ましく、25,000〜40,000であることが特に好ましく、その時の分散度は1.5〜3.5が好ましく、2.0〜3.0がより好ましい。数平均分子量が15,000未満であると、硬化膜とポリイミドフィルムとの貼り付きが生じやすい傾向にあり、数平均分子量が50,000を超えると、樹脂の粘性が高くなり、無機フィラー及び/又は有機フィラーの混合性やスクリーン印刷等の作業性が低下する傾向があるので、好ましくない。
【0069】
((B)成分:エポキシ樹脂)
本発明の樹脂組成物において、熱硬化性を向上させるために各種エポキシ樹脂を添加する。硬化剤としてのエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「エピコート828」等)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製の商品名「YDF−170」等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「エピコート152、154」;日本化薬株式会社製の商品名「EPPN−201」;ダウケミカル社製の商品名「DEN−438」等)、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製の商品名「EOCN−125S,103S,104S」等)、多官能エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「Epon1031S」;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製の商品名「アラルダイト0163」;ナガセ化成株式会社製の商品名「デナコールEX−611,EX−614,EX−614B,EX−622,EX−512,EX−521,EX−421,EX−411,EX−321」等)、アミン型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「エピコート604」;東都化成株式会社製の商品名「YH434」;三菱ガス化学株式会社製の商品名「TETRAD−X」、「TERRAD−C」;日本化薬株式会社製の商品名「GAN」;住友化学株式会社製の商品名「ELM−120」等)、複素環含有エポキシ樹脂(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製の商品名「アラルダイトPT810」等)、脂環式エポキシ樹脂(UCC社製の「ERL4234,4299,4221,4206」等)等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上組合せて使用することができる。これらのエポキシ樹脂のうち、1分子中にエポキシ基を3個以上有するアミン型エポキシ樹脂は、耐溶剤性、耐薬品性、耐湿性の向上の点で特に好ましい。
【0070】
これらのエポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を1個だけ有するエポキシ化合物を含んでいてもよい。このようなエポキシ化合物は、(A)成分である「イミド結合を含む樹脂」全量に対して0〜20質量%の範囲で使用することが好ましい。このようなエポキシ化合物としては、n−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等がある。また、3,4−エポキシシクロヘキシル、メチル(3,4−エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物を使用することができる。
【0071】
これらのエポキシ樹脂の使用量は、(A)成分として用いる「酸無水物基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂」100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは2〜45質量部、さらに好ましくは3〜40質量部とされる。エポキシ樹脂の配合量が1質量部未満では、樹脂組成物の硬化性、耐溶剤性、耐薬品性、耐湿性が低下する傾向にあり、50質量部を超えると、耐熱性及び粘度安定性が低下する傾向にある。
【0072】
上記エポキシ樹脂の添加方法としては、添加するエポキシ樹脂を(A)成分として用いる「酸無水物基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂」を溶解する有機溶剤と同一の有機溶剤に溶解してから添加してもよく、また、直接添加してもよい。
【0073】
〔(C)成分:ハイドロタルサイトを含むフィラー〕
本発明における(C)成分として用いられるフィラーは、表面被覆されていないハイドロタルサイトを含むものである。表面被覆されていないハイドロタルサイトを含めたフィラーの含有量は、前記(A)成分100質量部に対して、1〜250質量部とすることが好ましく、30〜200質量部とすることがより好ましく、50〜150質量部とすることが特に好ましい。この(C)成分の含有量がこれよりも少ない場合、樹脂組成物ペーストの粘度及びチキソトロピー係数が低くなり、ペーストの糸引きが増加するとともに印刷後のペーストの流れ出しが大きくなり、樹脂組成物の膜厚も薄膜化する傾向があり、硬化膜の電気特性が劣る傾向になる。また、(C)成分の含有量がこれより多い場合、樹脂組成物ペーストの粘度及びチキソトロピー係数が高くなり、ペーストの基材への転写性が低下するとともに印刷膜中のボイド及びピンホールが増加する傾向となる。
【0074】
((C)成分の粒径)
本発明の樹脂組成物に用いる(C)成分:フィラーは、平均粒子径50μm以下、最大粒子径100μm以下の粒子径であることが好ましい。平均粒子径が50μmを超えると、後述するチキソトロピー係数が1.1以上の樹脂組成物ペーストが得られにくくなり、最大粒子径が100μmを超えると、樹脂組成物の塗膜の外観、密着性が不十分となる傾向がある。この(C)成分の平均粒子径は、より好ましくは、30μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは1μm以下である。また、この(C)成分の最大粒子径は、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、特に好ましくは40μm以下である。平均粒子系が小さすぎると粘度が上昇するので、0.01μm以上であることが好ましいが、制限するものではない。
【0075】
(ハイドロタルサイト)
ハイドロタルサイト(hydrotalcite)は、下記一般式(17)で表される複水酸化物である。
【0076】
【化17】

(一般式(17)中、Mは、Mg2+、Fe2+、Zn2+、Ca2+、Li2+、Ni2+、Co2+、Cu2+を示し、Mは、Al3+、Fe3+、Mn3+を示し、xは2〜5の整数を示し、nは正の整数を示す。)
これらの中でも、下記の化学組成式で表されるマグネシウムとアルミニウムの化合物が特に好ましく、HT−P(堺化学株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
MgAl(OH)16CO・4H
このようなハイドロタルサイトは、有機化合物又はシリカ等で表面処理して用いることが一般的であるが、このように表面処理されたハイドロタルサイトを用いた場合、電気特性が劣る。
【0077】
本発明の樹脂組成物に添加するフィラーの成分としてハイドロタルサイトは、制酸剤の作用があり、酸無水物基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂を含む樹脂組成物の増粘を軽減できる効果がある。また、ハイドロタルサイトは、炭酸基が解離して炭酸イオン(CO2−)を生成し、この炭酸イオンが樹脂組成物中に含まれる塩化物イオン(Cl)及び/又は硫酸イオン(SO)と置換する作用を有している。塩化物イオン(Cl)及び/又は硫酸イオン(SO)が硬化膜中に存在すると絶縁信頼性に悪影響を及ぼすが、前記炭酸イオンとの置換作用により絶縁信頼性を向上することができる。しかし、過剰な配合量は印刷外観上不具合を生じ、好ましくない。さらに、本発明の樹脂組成物にハイドロタルサイトを配合することにより、本発明の樹脂組成物の硬化膜により保護した配線板において、通電後の電極の黒膨れを軽減することができるという効果が得られる。また、ハイドロタルサイトは、難燃性を良好にできるという効果も得られる。
【0078】
表面被覆されていないハイドロタルサイトの含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜80質量部とすることが好ましく、5〜60質量部とすることがより好ましく、30〜50質量部とすることが特に好ましい。表面被覆されていないハイドロタルサイトの含有量が1質量部未満となると、樹脂組成物の増粘軽減効果が不十分になる、及び電極の黒膨れが発生する傾向があり、80質量部以上では樹脂組成物の印刷外観の不具合などの影響がでてくる傾向がある。
【0079】
また、表面被覆されていないハイドロタルサイトの(C)成分中の含有量は、10質量%〜60質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましく、30〜50質量%であることが特に好ましい。(C)成分中の表面被覆されていないハイドロタルサイトの含有量が10質量%未満となると、樹脂組成物の増粘軽減効果が不十分となり、50質量%を超えると、樹脂組成物の印刷外観の不具合などの影響がでてくる。
【0080】
本発明に用いる(C)成分におけるハイドロタルサイト以外のフィラー成分としては、無機フィラーおよび/または有機フィラーを用いることができる。まず、無機フィラーについて説明する。
【0081】
ハイドロタルサイトは前述のように無機フィラーの一種であるが、このハイドロタルサイト以外の無機フィラーとしては、例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、チタニア(TiO2)、酸化タンタル(Ta25)、ジルコニア(ZrO2)、窒化ケイ素(Si34)、チタン酸バリウム(BaO・TiO2)、炭酸バリウム(BaCO3)、チタン酸鉛(PbO・TiO2)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、酸化ガリウム(Ga23)、スピネル(MgO・Al23)、ムライト(3Al23・2SiO2)、コーディエライト(2MgO・2Al23/5SiO2)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、チタン酸アルミニウム(TiO2−Al23)、イットリア含有ジルコニア(Y23−ZrO2)、ケイ酸バリウム(BaO・8SiO2)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸カルシウム(CaSO4)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO2)、硫酸バリウム(BaSO4)、有機ベントナイト、カーボン(C)等を使用することができ、これらの1種又は2種以上を使用することもできる。
【0082】
これら無機フィラーの中でも特に、電気特性(絶縁信頼性等)をも良好にできる観点から、硫酸バリウム、タルクを用いることが好ましい。また、印刷性、作業性の観点から硫酸バリウムを用いることが好ましい。
【0083】
一方の有機フィラーとしては、アミド結合、イミド結合、エステル結合又はエーテル結合を有する耐熱性樹脂の微粒子が好ましい。このような耐熱性樹脂としては、耐熱性と機械特性の観点から好ましくはポリイミド樹脂若しくはその前駆体、ポリアミドイミド樹脂若しくはその前駆体、又はポリアミド樹脂の微粒子が用いられる。
【0084】
上記有機フィラーとして用いられる耐熱性樹脂は、以下のようにして製造することができる。
まず、上記耐熱性樹脂の一つであるポリイミド樹脂は、(c)芳香族テトラカルボン酸二無水物と(d)芳香族ジアミン化合物とを反応させて得ることができる。
(c)芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ビスフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2',3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テロラクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、4,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリテート無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリテート無水物)、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられ、これらを混合して用いてもよい。
【0085】
上記(c)芳香族テトラカルボン酸二無水物には、目的に応じて芳香族テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物を、芳香族テトラカルボン酸二無水物の50モル%を超えない範囲で用いることができる。このようなテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス{エキソービシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物}スルホン、ビシクロ−(2,2,2)−オクト(7)−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0086】
次に、上記(d)芳香族ジアミン化合物としては、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4'−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルケトン、3,4'−ジアミノジフェニルケトン、4,4'−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4′−ジアミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,4'−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、3,3'−〔1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスアニリン、3,4'−〔1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスアニリン、4,4'−〔1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスアニリン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン等が挙げられ、これらを混合して用いてもよい。
【0087】
上記(d)芳香族ジアミン化合物には、目的に応じて芳香族ジアミン化合物以外のジアミン化合物を芳香族ジアミン化合物の50モル%を超えない範囲で用いることができる。このようなジアミン化合物としては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0088】
上記(c)芳香族テトラカルボン酸二無水物と上記(d)芳香族ジアミン化合物とは、ほぼ等モルで反応させることが、耐熱性の点で、好ましい。
【0089】
(c)芳香族テトラカルボン酸二無水物と(d)芳香族ジアミン化合物との反応は、有機溶媒中で行う。この場合の有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ2(1H)−ピリミジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素化合物;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類;ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコ−ルジメチル(又はジエチル、ジプロピル、ジブチル)エーテル、トリエチレングリコール(又はジエチル、ジプロピル、ジブチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はジエチル、ジプロピル、ジブチル)エーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類;ブタノール、オクチルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノメチル(又はモノエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はモノエチル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチル(又はモノエチル)エーテル等のアルコール類;フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、シクロヘキサン等の炭化水素類;トリクロロエタン、テトタクロロエタン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等が用いられる。これらの有機溶媒は、単独又は混合して用いられる。溶解性、低吸湿性、低温硬化性、環境安全性等を考慮するとラクトン類、エーテル類、ケトン類等を用いることが好ましい。
【0090】
反応温度は80℃以下、好ましくは0〜50℃で行う。反応が進行するにつれ反応液は徐々に増粘する。この場合、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。このポリアミド酸を部分的にイミド化してもよく、これもポリイミド樹脂の前駆体に含まれる。
【0091】
上記ポリイミド樹脂は、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環して得られる。脱水閉環は、120℃〜250℃で熱処理する方法(熱イミド化)や脱水剤を用いて行う方法(化学イミド化)で行うことができる。120℃〜250℃で熱処理する方法の場合、脱水反応で生じる水を系外に除去しながら行うことが好ましい。この際、ベンゼン、トルエン、キシレン等を用いて水を共沸除去してもよい。
【0092】
脱水剤を用いて脱水閉環を行う方法は、脱水剤として無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸等の酸無水物、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物等を用いるのが好ましい。このとき必要に応じてピリジン、イソキノリン、トリメチルアミン、アミノピリジンイミダゾール等の脱水触媒を用いてもよい。脱水剤又は脱水触媒は、芳香族テトラカルボン酸二無水物1モルに対し、それぞれ1〜8モルの範囲で用いることが好ましい。
【0093】
前記ポリアミドイミド樹脂又はその前駆体は、前記ポリイミド樹脂又はその前駆体の製造において、芳香族テトラカルボン酸二無水物の代わりに、トリメリット酸無水物又はトリメリット酸無水物誘導体(トリメリット酸無水物のクロライド等)等の三価のトリカルボン酸無水物又はその誘導体を使用して製造することができる。また、芳香族ジアミン化合物及びその他のジアミン化合物の代わりに、アミノ基以外の残基がそのジアミン化合物に対応するジイソシアネート化合物を使用して製造することもできる。使用できるジイソシアネート化合物としては、前記芳香族ジアミン化合物又はその他のジアミン化合物とホスゲン又は塩化チオニルを反応させて得られるものがある。
【0094】
前記ポリアミド樹脂は、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、これらのジクロライド、酸無水物等の誘導体と前記した芳香族ジアミン化合物又はこれと他のジアミン化合物を反応させることにより製造することができる。
【0095】
前記エステル結合を有する耐熱性樹脂としては、例えばポリエステル樹脂が挙げられ、ポリエステル樹脂としては、上記のテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、これらのジクロライド、酸無水物等の誘導体と1,4−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールF、ビスフェノールA、4,4′−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール化合物を反応させて得られるものがある。
【0096】
また、前記ポリアミドイミド樹脂としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、イソフタル酸ジヒドラジドを必須成分として含有する芳香族ジアミン化合物とを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂が好ましく用いられる。芳香族テトラカルボン酸二無水物及び芳香族ジアミン化合物としては、前記のものが用いられる。イソフタル酸ジヒドラジドの芳香族ジアミン化合物中のモル比は1〜100モル%とすることが好ましい。1モル%未満では変性ポリアミドイミド樹脂に対する耐溶解性が低下する傾向にあり、イソフタル酸ジヒドラジドの含有量が多いと、耐湿性が低下する傾向にあるので、10〜80モル%がより好ましく、20〜70モル%が特に好ましく用いられる。このポリアミドイミド樹脂は芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物との配合比、使用有機溶媒、合成法等を前記ポリイミド樹脂の合成と同様にして得ることができる。
【0097】
トリメリット酸無水物及び必要に応じてジカルボン酸とポリイソシアネートを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂は、加熱することにより有機溶剤に不溶性になりやすく、このポリアミドイミド樹脂からなる有機微粒子を使用することもできる。このポリアミドイミド樹脂の製造方法については、前記したポリアミドイミド樹脂の製造方法と同様にして製造することができる。
【0098】
上記樹脂を(C)成分:フィラーとして用いるための微粒子化の方法としては、例えば、非水分散重合法(例えば、特公昭60−48531号公報、特開昭59−230018号公報を参照)、沈殿重合法(例えば、特開昭59−108030号公報、特開昭60−221425号公報を参照)、樹脂溶液から改修した粉末を機械粉砕する方法、樹脂溶液を貧触媒に加えながら高せん断下に微粒子化する方法、樹脂溶液の噴霧溶液を乾燥して微粒子を得る方法、洗剤又は樹脂溶液中で溶剤に対して溶解性の温度依存性を持つ樹脂を析出微粒子化する方法等がある。
【0099】
前述したように、本発明に用いる(C)成分:フィラー(ハイドロタルサイトを含有する無機微粒子及び/又は有機微粒子)としては、平均粒子径50μm以下、最大粒子径100μm以下の粒子径をもつものが好ましく用いられる。平均粒子径が50μmを超えると、後述するチキソトロピー係数が1.1以上のペーストが得られにくくなり、最大粒子径が100μmを超えると、樹脂組成物の塗膜の外観、密着性が不十分となる傾向がある。平均粒子径は、より好ましくは、30μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは1μm以下であり、最大粒子径はより好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、特に好ましくは40μm以下である。
【0100】
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、(A)成分である樹脂を有機溶剤に溶解して樹脂溶液とし、(C)成分である「ハイドロタルサイトを含む無機微粒子及び/又は有機微粒子」を分散させ、さらに(B)成分であるエポキシ樹脂を添加混合して製造することができる。
【0101】
本発明の樹脂組成物において、(C)成分として用いる「ハイドロタルサイトを含む無機微粒子及び/又は有機微粒子」の含有量は、前述したように、(A)成分100質量部に対して1〜250質量部とすることが好ましく、30〜200質量部とすることがより好ましく、50〜100質量部とすることが特に好ましい。(C)成分の含有量がこれよりも少ない場合、樹脂組成物ペーストの粘度及びチキソトロピー係数が低くなり、該ペーストの糸引きが増加するとともに印刷後の該ペーストの流れ出しが大きくなり、樹脂組成物の膜厚も薄膜化する傾向があり、電気特性が劣る傾向になる。また、(C)成分の含有量がこれより多い場合、樹脂組成物ペーストの粘度及びチキソトロピー係数が高くなり、該ペーストの基材への転写性が低下するとともに印刷膜中のボイド及びピンホールが増加する傾向がある。
【0102】
(A)成分の樹脂を溶解する有機溶剤としては、前述のように、非含窒素系極性溶媒として、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどの含硫黄系溶媒;γ−ブチロラクトン、酢酸セロソルブなどのエステル系溶媒;シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。生成する樹脂により溶解性が異なるので、樹脂を溶解可能な溶剤を選択して使用する。
【0103】
熱硬化性樹脂((A)成分)の溶液に(C)成分:ハイドロタルサイトを含む無機及び/又は有機の微粒子を分散させる方法としては、通常、塗料分野で行われているロール練り、ミキサー混合等が適用され、十分な分散が行われる方法であれば良い。
【0104】
本発明の樹脂組成物には、塗工時の作業性及び被膜形成前後の膜特性を向上させるため、消泡剤、レベリング剤等の界面活性剤類、染料又は顔料等の着色剤類、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤を添加することもできる。
【0105】
本発明の樹脂組成物は、回転型粘度計での粘度が25℃で20Pa・s〜80Pa・sであり、特に30〜50Pa・sであることが好ましい。また、チキソトロピー係数が1.1以上であることが好ましい。粘度が20Pa・s未満であると、印刷後のペーストの流れ出しが大きくなるとともに膜厚が薄膜化する傾向があり、粘度が80Pa・sを超えると、ペーストの基材への転写性が低下するとともに印刷膜中のボイド及びピンホールが増加する傾向がある。またチキソトロピー係数が1.1未満であると、ペーストの糸引きが増加するとともに印刷後のペーストの流れ出しが大きくなり、膜厚も薄膜化する傾向がある。
【0106】
ここで、樹脂組成物の粘度は、E型粘度計(東機産業株式会社製、RE80U型)を用いて、試料量0.2mL又は0.5mLで測定した回転数10rpmの粘度として表される。またペーストのチキソトロピ−係数(TI値)はE型粘度計(東機産業株式会社製、RE80U型)を用いて、試料量0.2mL又は0.5mLで測定した回転数1rpmと10rpmのペーストのみかけ粘度、η1とη10の比η1/η10として表される。
【0107】
本発明は、また上記の樹脂組成物を、フレキシブル配線板の配線パターンにスクリーン印刷した後、熱硬化させて硬化膜を形成し、保護膜としたフレキシブル配線板に好適に使用できる。特に、配線パターン部がスズメッキ処理されたフレキシブル配線板の表面の保護膜用途に適している。熱硬化の条件は、スズメッキ層の拡散を防ぎ、かつ保護膜として好適な低反り性、柔軟性を得る観点から、好ましくは、80℃〜130℃、特に好ましくは90℃〜120℃であるが、この範囲には限定されず、例えば、50〜200℃、中でも、50〜140℃の範囲で硬化させることもできる。また、加熱時間は、メッキ層の拡散を防ぎ、かつ保護膜として好適な低反り性、柔軟性を得る観点から、60〜150分、好ましくは、80〜120分であるが、この範囲には限定されず、1〜1,000分、例えば、5〜300分、中でも、10〜150分の範囲で硬化させることもできる。
【0108】
〔フレキシブル配線板用保護膜〕
本発明で用いるフレキシブル配線板用保護膜は、上述した樹脂組成物を含み、各種電気製品や電子部品の被膜形成材料としてスクリーン印刷、ディスペンサ、スピンコートなどの塗布方法に好適に用いられる。特に、スクリーン印刷に好適に用いられる。
【0109】
本発明による樹脂組成物は、例えば、半導体素子、プリント基板分野などの電子部品用オーバーコート材、液状封止材、層間絶縁膜、表面保護膜、ソルダレジスト層、接着層などとして好適に用いられる。また、エナメル線用ワニス、電気絶縁用含浸ワニス、注型ワニス、マイカ、ガラスクロス等の基材と組み合わせたシート用ワニス、金属箔張り積層板用ワニス、摩擦材料用ワニスなどにも使用できる。また、樹脂被膜が回路基板等から剥離することなく、基材と樹脂同士の密着性及び印刷作業性に優れるため、信頼性の高い電子部品が得られる。
【実施例】
【0110】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0111】
合成例1
〔高分子樹脂の合成〕
攪拌機、油分分離機付冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた3リットルの四つ口フラスコに、γ-ブチロラクトン61.72g、プラクセルCD−220(ダイセル化学工業株式会社製、1,6−ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオールの商品名)74.64g(0.37モル)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート125.14g(0.46モル)トルエンジイソシアネート58.4g(0.34モル)を仕込み、150℃まで昇温した。150℃で4時間反応させた。
【0112】
次いで、無水トリメリット酸88.4g(0.46モル)を仕込み70℃で3時間反応させた。次いで再び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート6.76g(0.027モル)トルエンジイソシアネート0.0034g(0.00002モル)を仕込み、120℃で1時間、180℃で3時間反応させた。反応後、γ-ブチロラクトンを341.6g仕込み冷却し、2−ブタノンオキシム(和光純薬工業株式会社製)を9.5g(0.11モル)を仕込み、120℃で3時間反応させて、数平均分子量38,000の樹脂を得た。数平均分子量は、反応時間毎に反応溶液を少量採取し、ガードナー製の気泡粘度計による粘度変化率を観察することで調整することができる。得られた樹脂をγ-ブチロラクトンで希釈し、不揮発分50質量%のポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
【0113】
(実施例1)
合成例1で得られた数平均分子量が38,000のポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂溶液を用い、その樹脂分100質量部に対して、消泡剤(A)(楠本化成工業株式会社製 商品名:ディスパロン230)0.2質量部を混合し、20℃で30分間攪拌した。更に、硫酸バリウム(堺化学工業株式会社製 商品名:B−31)を50質量部、表面未処理のハイドロタルサイト(堺化学株式会社製 商品名:HT−1R−NC)40質量部、シリカ(日本アエロジル株式会社製 商品名:R−974)10質量部を予めγ-ブチロラクトンを溶媒とする樹脂溶液中にビーズミルで分散したものを配合し、必要に応じてγ−ブチロラクトン等の溶剤を加えて20℃で1時間攪拌し、更に、アミン型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製 商品名:YH−434L)を10質量部加え、20℃で1時間攪拌し、ポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂組成物を得た。
【0114】
(実施例2)
実施例1においてハイドロタルサイトを60質量部にした以外は、実施例1と全く同様の操作を行いポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂組成物を得た。
【0115】
(実施例3)
実施例1において表面未処理のハイドロタルサイトを、ブチルカルビトールアセテートを溶媒とする樹脂溶液に分散した以外は、実施例1と全く同様の操作を行いポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂組成物を得た。
【0116】
(実施例4)
実施例1において表面未処理のハイドロタルサイトを、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを溶媒とする樹脂溶液に分散した以外は、実施例1と全く同様の操作を行いポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂組成物を得た。
【0117】
(比較例1)
実施例1において表面未処理のハイドロタルサイトを配合しない以外は実施例1全く同様の操作を行ない、ポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂組成物を得た。
【0118】
(比較例2)
実施例1において表面未処理のハイドロタルサイトの代わりに脂肪酸で表面処理されたハイドロタルサイト(堺化学工業株式会社製 商品名:HT−P)を40質量部配合した以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂組成物を得た。
【0119】
(比較例3)
比較例2と同様に脂肪酸で表面処理されたハイドロタルサイト、そしてブチルカルビトールアセテートを溶媒とする樹脂溶液に分散した以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂組成物を得た。
【0120】
(比較例4)
実施例1において表面未処理のハイドロタルサイトの代わりにシリカで表面処理されたハイドロタルサイト(堺化学工業株式会社製 商品名:HT−1R)を40質量部配合した以外は、実施例1と全く同様の操作を行ない、ポリカーボネート変性ポリアミド樹脂組成物を得た。
上記の実施例1〜4及び比較例1〜4で得られたポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂組成物の特性を下記の方法で分散性、消泡時間、レべリング性、凝集物、ブリード、電気特性を測定し、その測定結果を纏めて表1に示した。
【0121】
<分散性>
実施例1〜4及び比較例1〜4のポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂溶液に、フィラー分散液、アミン型エポキシ樹脂を攪拌機で20℃で1時間混合してから、静止した状態で2時間後、溶剤中のフィラーの状態を目視で確認し下記のより分散性を評価した。
分散性の評価は、分散が均一である場合は「○」、沈殿もしくは溶剤上に堆積している場合は「×」とした。
【0122】
<消泡時間>
得られたポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂組成物を、18μmの銅箔を用いた銅回路(回路幅が30μm)上に、印刷機(ニューロング株式会社製、商品名:LS−34GX)に装着したメッシュ版(株式会社ムラカミ製、150メッシュ)で印刷速度100mm/secで30mm角を印刷し、印刷直後から完全に消泡するまでの時間を拡大率10倍の顕微鏡で測定した。
【0123】
<レベリング性>
上記消泡時間測定で用いた印刷機の印刷条件で塗布した膜を3分間放置後、120℃、1時間熱硬化したときの膜の平滑性を拡大率25倍の顕微鏡で評価した。
評価は平滑である場合を「○」、平滑でなくムラが発生している場合は「×」とした。
【0124】
<凝集物>
上記した印刷機の印刷条件で塗布した膜を3分間放置後、120℃、1時間熱硬化し、拡大率100倍の顕微鏡で凝集物を観察した。評価は、10μm以上の凝集物が10個未満である場合を「○」、10個以上である場合を「×」とした。
【0125】
<ブリード>
上した印刷機の記印刷条件で塗布した膜を3分間放置後、120℃、1時間で熱硬化し、印刷エッジ部分の銅回路際に流れ出した長さを樹脂被膜量を目盛り付きの拡大率100倍の顕微鏡で測定した。
【0126】
<電気特性>
ポリイミド基材上にライン幅15μm、スペース幅15μmで、くし型状にスズメッキされた銅電極を覆うように、得られたポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂組成物を印刷機(ニューロング株式会社製 商品名:LS−34GX)に装着したメッシュ版(株式会社ムラカミ製 150メッシュ)で印刷速度100mm/secで印刷し、空気雰囲気下で120℃、60分加熱硬化させポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂被膜付きポリイミド基材くし型電極を得た。得られたポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂被膜付きポリイミド基材くし型電極を連続抵抗測定機(IMV株式会社製 商品名:Ion Migration Tester MIG−8600)と不飽和型プレッシャークッカ(株式会社平山製作所製 商品名:HAST PC−422R8D)を用いて温度120℃、湿度85%RH、印加電圧60Vの条件で通電した時の抵抗(10Ω以上)の保持時間を測定した。
【0127】
【表1】

【0128】
表1に示した結果から、次のことが判った。
表面被覆されていないハイドロタルサイトをγ-ブチロラクトンを溶媒とする樹脂溶液に分散した樹脂組成物は印刷性良好であり、且つ高温高湿下において安定した電気特性を得ることができ、更に配線間を流れ出すレジストや溶剤を低減することができる。
これに対し、比較例2の脂肪酸で表面処理したフィラーは、分散性が非常に悪く、均一な膜厚に塗布できず各測定項目を評価できなかった。そして、同じ脂肪酸で表面処理したフィラーを用い分散溶媒を変えた比較例3では、分散性は良好であるが、ブリードやマイグレーションによる電気特性に劣り、比較例4のシリカで表面処理したフィラーを用いた場合、電気特性に劣った。
【0129】
以上説明したように、本発明による樹脂組成物は、各種電気製品や電子部品の被膜形成材料としてスクリーン印刷、ディスペンサ、スピンコートなどの塗布方法に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸無水物基又はカルボキシル基を有する樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)表面被覆されていないハイドロタルサイトを含むフィラーと、を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
(A)酸無水物基又はカルボキシル基を有する樹脂が、下記一般式(1)で表される構造を有する請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】

(一般式(1)中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキレン基を示し、Xは、炭素数1〜20のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に1〜30の整数を示す)で表される構成単位を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、ポリカーボネート骨格を有するポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂のイソシアネート残基と、酸無水物基を有する3価以上のポリカルボン酸またはその誘導体とを反応させて得られた樹脂である請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、1〜250質量部である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
銅箔をポリイミド基材に積層したフレキシブルプリント基板の保護膜に用いる請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物を、フレキシブル配線板の予めSnメッキ処理された配線パターン部に印刷し、80〜130℃で加熱して保護膜を形成する、フレキシブル配線板の保護膜の製造方法。

【公開番号】特開2010−235638(P2010−235638A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81726(P2009−81726)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】